(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態における水分除去装置100を示す図である。
図1(a)は、水分除去装置100の斜視図である。
図1(b)は、水分除去装置100の断面図である。水分除去装置100は、建造物30に含まれる水分を蒸気化して除去するものであり、床部10と、吸気部20とを備える。
【0017】
床部10は、建造物30の建物面31(例えば、床)に設置するものであり、
図1(b)に示すように、複数の凸部11を有する凸部材12と、防水層部13とを備える構成が一例として想定される。凸部材12は、平面状の平面部材の一方の面(凸部材底面15)に複数の凸部11を設けた態様が一例として想定される。また、凸部11は、例えば、平面部材上に概ねマトリクス状に配置されたものが一例として想定されるが、凸部11の配置態様はこれに限るものではない。
【0018】
そして、凸部材12におけるそれぞれの凸部11内には、空気が密封された空気密封空間14がある。この空気密封空間14が断熱材としての役割を果たす。なお、断熱性能を向上させるため、空気密封空間14内部の空気が動かない空気となるように空気密封空間14を形成させる。すなわち、空気密封空間14は、空気の対流が生じにくい大きさ、形状にして断熱材としての機能を向上させることが想定される。本発明においては、床部10における凸部材12に断熱材としての機能があるため、従来の硬質ウレタンフォーム断熱材のような一般的な断熱材を用いなくてもよい場面が増えてくる。また、仮に断熱材をいれるにしても断熱材の厚さを薄くすることができ、施工を容易にし、コストの低減に資する。
【0019】
また、凸部材12を形成する材質として、例えば、ポリプロピレン等の樹脂が想定されるが、これに限るものではない。また、凸部材12は、樹脂ではなく、金属・その他の硬質性防水材質により形成されていてもよい。すなわち、凸部材12は、硬質性防水材質により形成されることが好ましい。従来の硬質ウレタンフォーム断熱材のような一般的な断熱材は、熱・湿気の多い場所ではその断熱性能が短期間で劣化するが、上記のような硬質性防水材質で形成される本発明の凸部材12であれば、熱・湿気の多い場所であってもその断熱性能が短期間で劣化することはなく、長期間、断熱性能を維持することができる。
【0020】
床部10は、建造物30の建物面31の上に設置される。被設置面としての建物面31には、床部10の凸部材12における凸部11の面が設置される。床部10を建物面31に設置すると、床部10の凸部11が建物面31と接し、凸部11が設けられた凸部材底面15と、建物面31との間に空間が形成される。凸部材底面15と建物面31とにより形成される空間内は、建造物30の内部における水分による蒸気により充填される。この空間を蒸気通路40として蒸気は移動する。以上のように、床部10を建物面31に設置すると、建造物30における被設置面である建物面31と、凸部材底面15とにより蒸気が移動するのに十分な広さを有する蒸気通路40が形成される。
【0021】
防水層部13は、凸部材12の他方の面(凸部材上面)に防水素材により形成された層部分である。防水層部13は、例えば、凸部材12の凸部材上面16に塗膜防水処理を行うことにより形成させることが一例として想定される。塗膜防水処理として、例えばウレタン塗膜、又は水性アクリル塗膜による処理が一例として想定されるが、これに限るものではない。また、防水層部13は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されたシート状の部材により形成させるものであってもよい。
【0022】
床部10のその他の構造として、様々な態様が想定されるが、いずれにしても、本発明において床部10は、建物面31と接する面に突起形状の凸部11が複数設けられ、建物面31に設置すると建物面31と凸部材底面15との間に形成される空間を蒸気通路とする構成の全てを含むものである。床部10における凸部材12については
図2においてさらに説明する。
【0023】
以上のように、床部10における凸部材12は、建物面31と伴に蒸気通路40を形成すると同時に、熱・湿気を原因とする短期間の性能低下を招かない断熱材としての役割を果たすという優れた効果を奏する。
【0024】
なお、床部10が設置される建物面31として、例えば、コンクリート製建造物の屋上や、住宅のベランダ(
図5参照)等が一例として挙げられるが、これに限るものではなく、その他の場所であってもよい。
【0025】
水分除去装置100は、新築の建造物に設置する場合と、既存の建造物に設置する場合とがある。水分除去装置100を新築の建造物に設置する場合、新築の建造物の下地面に直接床部10を設置することが想定され、上記建造物30の建物面31は下地面となる。建造物30の下地面に床部10を設置することにより、本発明の水分除去装置100を建造物30の防水断熱構造として当初から組み込むことができる。
【0026】
一方、既存の建造物に水分除去装置100を設置する場合、既存の建造物の防水層の表面に直接床部10を設置することが想定され、上記建造物30の建物面31は防水層の表面となることが想定される。通常、建造物には防水層が床表面に配置されていることが多いからである。しかしながら、防水層が床表面に配置されている場合、建造物30に含まれる水分は建物面31を通じて蒸気通路40へ移動しにくい。この場合、防水層に穴を開ける等して、防水層よりもさらに下の層と蒸気通路40とを連通させる通路である連通路32を形成することが好ましい。どの層と蒸気通路40とを連通させれば建造物30の内部における水分を除去しやすいかは、建造物の構造によって変わってくるため、建造物の構造に基づいて決定する。
【0027】
また、防水層が劣化等の理由によりクラックしている場合は、そのクラック部分が連通路32としての役割を担い、そこから水分が蒸気として移動可能であるため、改めて連通路32を形成させなくてもよい。なお、クラック部分のみでは連通路32としての役割を担いきれない場合、改めて連通路32を形成させてもよい。以上のようにすれば、除去したい建造物30に含まれる水分を効率良く蒸気通路40に移動させることができる。以上のように本発明によれば、新築の建造物、既存の建造物にいずれにも容易に設置することができる。
【0028】
吸気部20は、蒸気通路40内に吸気流を発生させて、被設置面である建造物30の表面等を通じて建造物30に含まれる蒸気化した水分を外部へ排出するものである。吸気部20は、例えば吸気部20の下端部の外周縁20aにおいて床部10と連結される。これにより、蒸気通路40と、吸気部20とが連通した状態になる。そして、吸気部20は、例えば、蒸気排出通路部21と、蒸気通路40内に吸気流を発生させて蒸気を吸気して外部に向かって排出するファン22と、ファン駆動部23とを備える。
【0029】
蒸気排出通路部21は、ファン22により吸気された蒸気を外部へ誘導する通路を備えたものである。蒸気排出通路部21の一例として、
図1(a)、
図1(b)に示すように、蒸気通路40からファン22により吸気された蒸気の通路である蒸気通路21aと、ファン22により排出された蒸気の通路である蒸気通路21bとにより構成されたものが一例として挙げられる。蒸気通路21aは、例えば筒状部材により構成することが一例として挙げられる。この場合、その筒状部材の上端部にファン22を設け、筒状部材の下端部の外周縁20aを床部10と連結させる。ファン22が駆動すると、蒸気通路40に存在する蒸気は、蒸気通路21aに相当する上記筒状部材の方向へ誘導され、その筒状部材の内部を通って筒状部材の外部へ排出される。
【0030】
蒸気通路21bは、例えば筒状部材により構成することが一例として挙げられる。蒸気通路21bを構成する筒状部材は、一方の底面(上面)が閉じた筒状部材になっている。蒸気通路21bを構成する筒状部材の径は、蒸気通路21aを構成する筒状部材の径より大きい。そして、蒸気通路21bを構成する筒状部材は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、筒状部材の軸をほぼ同じくし、蒸気通路21aを構成する筒状部材の周囲を覆うような態様で設けられている。これにより、ファン22から排出された蒸気は、蒸気通路21bを構成する筒状部材により誘導されて、外部に排出される。
【0031】
ファン駆動部23は、ファン22を駆動させるものであり、例えばファン制御部23aと、太陽電池23bと、蓄電部23cとを備える。ファン制御部23aは、太陽電池23bにおいて生成された電力によりファン22を駆動させる。この際におけるファン22の駆動態様は様々な態様が挙げられる。
【0032】
ファン22の駆動態様の一つとして、ファン22を所定の回転数以下で回転させる駆動態様が挙げられる。この場合、ファン制御部23aは、ファン22に供給する電力を所定の電力以下にして、残りの電力を蓄電部23cにおいて蓄電させる。なお、ファン22に供給する最大の電力がファン22の上記所定の回転数に相当することが想定される。
【0033】
そして、太陽電池23bにおいて生成される電力が天候の状態により所望の量に達しなくなった場合、ファン制御部23aは、蓄電部23cに蓄電された電力をも用いてファン22を駆動させる。なお、蓄電部23cにおいて蓄電される電力は、太陽電池23bにおいて生成された電力に限るものではなく、その他のもの(例えば、建造物30に付設された電源装置)から供給された電力であってもよい。この場合、太陽電池23bにおいて生成される電力がファン22の駆動に十分な電力でなくとも、蓄電部23cが電力不足を補うことになる。
【0034】
ファン22の駆動態様を上記のようにすれば、太陽電池23bで生成された電力を効率よく使用することができる。また、ファン22の回転数を所定回転数以下とするため、ファン22の寿命をのばすことができる。さらに、天候の状態が悪い時でも、蓄電部23cにより十分な電力をファン22に供給することができる。
【0035】
なお、ファン22の駆動態様は上記以外の駆動態様であってもよい。また、上記において電力の供給元は太陽電池23b及び蓄電部23cの2つあるが、いずれか一つであってもよく、そのような構成も本発明の範囲に含まれる。また、上記において電力の供給元は、上記太陽電池23b及び蓄電部23cではなく、建造物30に付設された電源装置・その他の電源装置であってもよく、そのような構成も本発明の範囲に含まれる。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態における床部10における凸部材12の構造の一例を示す図である。
図2(a)は、凸部材12の平面図である。凸部材12の態様として、上記述べたように、例えば、平面状の部材の少なくとも一方の面に突起形状の凸部11を複数設けた樹脂製の部材としての態様が一例として挙げられる。そして、凸部材12における凸部11は、概ね円錐形状又は円錐台形状とすることが一例として想定され、
図2(a)においては円形状の部分が複数あるが、これら一つ一つが凸部11に相当する。なお、凸部材12における凸部11の形状はその他の形状であってもよい。
【0037】
凸部材12における凸部11は、
図2(a)に示すように、例えば、概ねマトリクス状に配置させることが一例として挙げられるが、これに限るものではなく、その他の配置態様であってもよい。上記概ねマトリクス状に配置とは、縦横方向にランダムに配置されたマトリクス状に近い状態の配置をも含むものである。凸部材12に面状の力(例えば、
図2(a)の紙面に垂直方向、又は
図2(b)の矢印C方向から加わる人の体重)が加えられた場合に凸部11が潰れないような強度を凸部材12に持たせる必要がある。したがって、この配置の仕方は上記強度の観点から様々な態様が想定され、本発明においては様々な配置の全てをも含む。また、上記強度の観点においては凸部材12を構成する材質についても考慮する。また、上記記強度の観点に加えて、例えば、蒸気を効率良く流せるかどうかの観点をも含めて配置を決めてもよい。
【0038】
以上のように配置された凸部11は蒸気通路40の中では柱に相当する部分になる。そして、蒸気は、例えば、
図2(a)に示す矢印に示すように、凸部11間をすり抜けて吸気部20が吸気する方向へ移動する。
【0039】
図2(b)は、
図2(a)に示す凸部材12における楕円領域BのA−A断面図である。なお、
図2(b)において凸部材12の底面側を凸部材12の凸部材底面、凸部材12の上側を凸部材12の凸部材上面と呼ぶこととする。凸部材12は、
図2(b)に示すように、凸部材12の凸部材底面15において突起しており、その突起した凸部11の形状として、上記説明したように概ね円錐形状又は円錐台形状が一例として挙げられる。
【0040】
また、凸部材12は、
図2(b)に示すように、凸部材12の凸部11内部に空気密封空間14を有している。空気密封空間14内の空気は、高い熱抵抗を有するように、対流をしない動かない空気としての状態が好ましい。このため、空気密封空間14は、凸部材上面16から伝導される熱に対して高い断熱性能を有する断熱材としての役割を果たしている。なお、空気密封空間14の形状は、例えば、空気の対流が生じない形状、又は空気の対流が生じにくい形状であれば、どのような形状であってもよい。空気密封空間14内で空気の対流が生じなければ、熱抵抗が高くなるからである。
【0041】
以上のように、従来の凸部を有する水分除去装置と異なり、凸部材12は、建物内の余計な水分の通路を形成すると同時に、高い断熱性能を有する断熱材としての役割も果たす。しかも、既に説明したように、断熱材としての凸部材12は、熱・湿気に強い断熱材であり、従来の硬質ウレタンフォーム断熱材のような一般的な断熱材の熱・湿気に弱いという欠点を克服するものである。
【0042】
図3は、本発明における別の実施の形態である水分除去装置200及び300の断面図である。なお、以下において、符号は違っても
図1及び
図2において用いた名称と同様の名称のものは同様の機能を有するものであり、可能なかぎり
図1及び
図2において説明したことを適用することができる。
【0043】
図3(a)は、水分除去装置200における床部210の断面図である。床部210は、防水層部213と、凸部材212aと、凸部材212bとが順に積み重なったものである。床部210は、床部10に凸部材を1つ多く積み重ねたものである。
図3(a)のように床部210を構成すれば、空気密封空間を有する凸部材が2層になるため、より断熱効果の高い床部を提供することができる。また、
図3(a)のように床部210を構成すれば、凸部材により構成される空間が2つでき、蒸気通路が2層構造になる。この2層構造の蒸気通路間を連通させれば(例えば、2層間に連通路を設ける)、より十分な広さの蒸気通路を構成することができる。
【0044】
以上のように、本発明の床部210を用いれば、建物内部の水分を除去する蒸気通路を形成させることができるのと同時に、従来の断熱材を用いなくても十分に断熱性能の高い床部を構成させることができる。特に、「次世代省エネルギー基準」によれば、その基準をクリアする断熱材の厚さは厚くなってきているところ、凸部材212a及び凸部材212bにより断熱材の厚さを薄くすることが期待される。また、本発明の床部210が従来の断熱材と違って熱・湿気に強い断熱材である点も本発明の床部210が優れた点である。
【0045】
図3(b)は、水分除去装置300における床部310の断面図である。床部310は、防水層部313と、凸部材312aと、断熱材317と、凸部材312bとが順に積み重なったものである。床部310は、床部210に断熱材317を1つ挿入したものである。
図3(b)のように床部310を構成すれば、床部210と同様に凸部材により構成される空間が2つでき、蒸気通路が2層構造になる。この2層構造の蒸気通路間を連通させれば(例えば、2層間に連通路を設ける)、より十分な広さの蒸気通路を構成することができる。また、空気密封空間を有する凸部材が2層になるため、床部210と同様により断熱効果の高い床部を提供することができる。また、床部310では、断熱材317があり、凸部材312a及び凸部材312b以上の断熱性能が得られる。
【0046】
なお、床部210及び床部310の構造は一例であって、例えば、防水層部と、3つ以上の凸部材を連続して積み重ねて層構造とした床部や、3つ以上の凸部材と、防水層部、断熱材等の別の部材とを任意の順番に積み重ねて層構造とした床部も本発明の範囲に含まれる。さらに、以上に準じて凸部材を用いた様々な組み合わせの床部も本発明の範囲に含まれる。これによれば、蒸気通路を3層以上の構造とした床部を形成させることができる。
【0047】
図4は、本発明の実施の形態における水分除去システム400及び500を示す図である。
図4(a)は、水分除去システム400を示す図である。なお、
図4(a)において矢印は、空気の流れを表すものである。水分除去システム400は、水分除去装置410と、外気取入れ装置420とを備える。水分除去装置410は、
図1乃至
図3までで説明したものと同じものであり、既に説明済みであるため、その説明を省略する。外気取入れ装置420は、外部から空気を取り入れるものである。外気取入れ装置420は、
図4(a)に示すように、蒸気排出通路部21とほぼ同様の構造である。
【0048】
すなわち、外気取入れ装置420は、水分除去装置410により生じた空気の流れにより、外部から空気を取り入れて床部411へ空気を誘導する通路を備えた構造をしている。外気取入れ装置420の一例として、
図4(a)に示すように、外部から吸気された空気の通路である空気通路421aと、蒸気通路440へ空気を誘導する通路である空気通路421bとにより構成されたものが挙げられる。
【0049】
空気通路421a及び空気通路421bは、例えば筒状部材により構成することが一例として挙げられる。空気通路421aを構成する筒状部材の径は、空気通路421bを構成する筒状部材の径より大きい。そして、空気通路421aを構成する筒状部材は、
図4(a)に示すように、筒状部材の軸を同じくし、空気通路421bを構成する筒状部材の周囲を覆うような態様で設けられる。空気通路421bを構成する筒状部材の下端部の外周縁を床部411と連結させる。
【0050】
以上のように構成された水分除去システム400の動作について以下説明する。水分除去装置410における(図示しない)ファンが回転することにより、
図4(a)の矢印に示す空気の流れが、水分除去システム400全体に生じる。すると、蒸気通路440中の蒸気は吸気部412に向かって移動して外部に排出される。また、この空気の流れにより外気取入れ装置420は外部から空気を取り入れ、蒸気通路440に空気を供給する。
【0051】
また、水分除去システム400による空気の流れは、建造物430の建物面内部431に含まれる水分を蒸気化させることを促進させる。このため、建造物430に含まれる水分の含水率を低下させることが容易にできる。本発明では、蒸気通路として十分な広さを確保できるため、容易に蒸気通路内に十分な空気の流れを作り出すことができる。このため、従来の水分除去システムよりも、水分除去を効率よく、短時間で行うことができる。
【0052】
図4(b)は、水分除去システム500を示す図である。なお、
図4(b)において矢印は、空気の流れを表すものである。水分除去システム500は、水分除去装置510と、外気取入れ装置520とを備える。水分除去装置510は、
図1乃至
図3までで説明したものと同じものであり、既に説明済みであるため、その説明を省略する。外気取入れ装置520も、外気取入れ装置520と同様で、外部から空気を取り入れるものである。外気取入れ装置520は、
図4(b)に示すように、建造物530の一部と、上下方向に伸びる床部511aとを用いて構成されている。
【0053】
すなわち、外気取入れ装置520は、建造物530の床の立ち上がり部531及び部材522で構成される空気通路521aと、建造物530の床の立ち上がり部531及び床部511aで構成される空気通路521bとにより構成されている。建造物530の床の立ち上がり部531と、部材522とで上面が閉じた筒状部材を形成しており、建造物530の床の立ち上がり部531と、上下方向に伸びる床部511aとで筒状部材を形成している。そして、前者の筒状部材(空気通路521a)は後者の筒状部材(空気通路521b)の周囲及び上面を覆うように配置されている。また、後者の筒状部材(空気通路521b)は建造物530の床方向に伸びる床部511bと連結され、蒸気通路40と連通した状態にある。これにより、外部から吸気された空気は、順に空気通路521a、空気通路521bを通って蒸気通路540に流れていく。そして、水分除去装置510により蒸気と伴に外部に排出される。
【0054】
以上のように構成された水分除去システム500の動作について以下説明する。水分除去装置510における(図示しない)ファンが回転することにより、
図4(b)の矢印に示す空気の流れが、水分除去システム500全体に生じる。すると、蒸気通路540中の蒸気は吸気部512に向かって移動して外部に排出される。また、この空気の流れにより外気取入れ装置520は外部から空気を取り入れ、蒸気通路540に空気を供給する。
【0055】
また、水分除去システム500による空気の流れは、建造物530の床532に含まれる水分を蒸気化させることを促進させる。このため、建造物530に含まれる水分の含水率を低下させることが容易にできる。本発明では、蒸気通路として十分な広さを確保できるため、容易に蒸気通路内に十分な空気の流れを作り出すことができる。このため、従来の水分除去システムよりも、水分除去を効率よく、短時間で行うことができる。
【0056】
なお、
図4において建造物430及び530のおける床431及び532に、
図1で説明した連通路を設ける態様も本発明に含まれる。連通路を設けるか否かは、建造物430及び530のおける床431及び532の状態や構造等によって決定される。
【0057】
図5は、本発明の実施の形態における水分除去装置600を住宅700のベランダ710に取り付けた様子を示す図である。
図5に示すように、ベランダ710の床711に床部610を敷く。そして、吸気部620の下端部を床部610と連結させる。なお、ベランダ710の床711に住宅700の1階天井720と蒸気通路640とを連通させる連通路712を設けておくと、住宅700内の湿気等の水分が床部610の蒸気通路640に流れ込みやすくなるため、連通路712を床711に設けるようにしてもよい。
【0058】
また、水分除去装置600において吸気部620における太陽電池621は、吸気部620の上面ではなく、太陽光を受光しやすいベランダ710の柵713に取り付けてある。また、水分除去装置600において吸気部620における蓄電部622は、例えば住宅に設けられた家庭用電源730からも充電可能な態様にしてもよい。また、水分除去装置600に対する電力の供給は、太陽電池621や蓄電部622の代わりに家庭用電源730に直接行わせるようにしてもよい。また、
図4で説明した外気取入れ装置520及び620に相当するものを住宅700にいずれかに設けてもよい。外気取入れ装置520及び620に相当するものは、住宅700に適した構造のものでよい。
【0059】
水分除去装置600においては、さらに湿度センサ631を備えている。この湿度センサ631が所定の閾値湿度を検出すると、吸気部620における(図示しない)ファンが駆動し、住宅700内の蒸気が蒸気通路640を通じて外部へ排出される。なお、
図5において湿度センサ631は1階天井720に取り付けられているが、どの場所に取り付けるものであっても本発明に含まれる。また、湿度センサ631の代わりに、もしくは湿度センサ631に加えて(図示しない)温度センサを取り付けるようにしてもよい。温度センサの場合も同様に、温度センサが所定の閾値温度を検出した場合に(図示しない)ファンが駆動するようにする。このように構成すれば、吸気部620における(図示しない)ファンを常時駆動させなくとも、所望の室内環境を実現することができ、ファンの寿命の長期化や省電力化に資する。
【0060】
以上
図1乃至
図5に基いて説明したように、本発明は、建物面と伴に凸部材に建物内部の水分の除去する通路である蒸気通路を形成させると同時に、凸部材に空気密封空間を形成させて動かない空気の層を設け、高い断熱性能を持たせた点が従来にない点である。さらに、水分除去装置を構成する凸部材は、硬質性防水材質により形成させるため、熱・湿気により短期間に断熱性能を低下させられることがない点も従来にない点である。
【0061】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。