特許第6486618号(P6486618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6486618ジヒドロケルセチン及び水溶性食物繊維含有粉末組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486618
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】ジヒドロケルセチン及び水溶性食物繊維含有粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20190311BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20190311BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A23L33/10
   A23L2/00 K
   A23L2/52
   A61K31/353
   A61P17/18
   A61P39/06
   A61P13/10
   A61P13/00
   A61P1/04
   A61P27/02
   A61K9/14
   A61K9/08
   A61K47/40
   A61K47/36
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-126770(P2014-126770)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-3229(P2016-3229A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】藤村 岳史
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220079(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/162489(WO,A1)
【文献】 特開2008−118933(JP,A)
【文献】 特表2015−514435(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110334(WO,A1)
【文献】 特表2014−504505(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110328(WO,A1)
【文献】 特開2008−092869(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0325906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
A23L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部含む粉末組成物。
【請求項2】
25℃における水溶液中のジヒドロケルセチンの溶解量が1mg/ml以下のジヒドロケルセチンを用い、ジヒドロケルセチンを1mg/ml以上と難消化性デキストリンを溶解含有させた水溶液であって、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部含む水溶液。
【請求項3】
飲料の形態である請求項に記載の水溶液。
【請求項4】
ジヒドロケルセチン含有組成物に、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部添加することを特徴とするジヒドロケルセチンの溶解性を改善する方法。
【請求項5】
ジヒドロケルセチン含有組成物の水溶液に、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部添加することを特徴とするジヒドロケルセチンの沈殿防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジヒドロケルセチンと水溶性食物繊維含有粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年フラボノイド化合物の一種であるケルセチン(クェルセチンとも表記される)の代謝物であるジヒドロケルセチンが注目されている。ジヒドロケルセチンは、ロシア東部の内陸、コルィマ地方とアニュイ地方のユカギール人や、ヴェルホヤンスク周辺のヤクート人の伝統的な冬季の食品であるカラマツ(落葉松)の樹皮をはぎ落とした形成層や木部の煮汁中に存在することが知られている。
ジヒドロケルセチンは、フェニルアラニンからケルセチンが生合成される過程の中間産物であることが知られている。ジヒドロケルセチンは、タキシフォリンとも呼ばれている。
ジヒドロケルセチンの作用効果は、活性酸素消去(特許文献1)、美白作用(特許文献2)、膀胱機能改善及び排尿障害治療(特許文献3)ウレアーゼ阻害(特許文献4)、ドライアイの軽減(特許文献5)などの用途が提案されている。
ジヒドロケルセチンの供給源としてはオウギの葉(特許文献1)、あるいはシベリア又は、ダフリアカラマツの辺材の抽出物などがある。
ジヒドロケルセチンを含む組成物は、前記のオウギの葉抽出物以外に、ナトリウム及びエタノールを含む調味料組成物(特許文献6)、ルチンを含む組成物(特許文献7)などが提案されている。
現在、ジヒドロケルセチンは、健康食品サプリメントや化粧品に広く利用されている。そしてこのような用途に適した原料としてジヒドロケルセチンを80%以上含むシベリアカラマツ抽出物の粉末が販売されている。
しかしジヒドロケルセチンは水溶性が低く、飲料や食品に配合する場合、高濃度に溶解させることができず、取り扱いにくい性質を有している。ジヒドロケルセチンの溶解度は、温度依存性があり、25℃で1mg/ml以下、90℃では52mg/mlといわれている(Taxifolia LTDホームページ参照)。
また、ジヒドロケルセチンのようなフラボノイドは、配糖体化することで水への溶解度が向上することが知られている。たとえば、特許文献8にはα−グルコシル化することで難水溶性ヘスペリジンの溶解度を改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−65074号公報
【特許文献2】特開平7−223933号公報
【特許文献3】特開2003−128566号公報
【特許文献4】特開2004−91338号公報
【特許文献5】特表2013−510095号公報
【特許文献6】特開2008−283877号公報
【特許文献7】特開2008−92869号公報
【特許文献8】特許第3060227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ジヒドロケルセチンの溶解性が改善されたジヒドロケルセチン含有粉末組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ジヒドロケルセチンの溶解性について研究を進めたところ、水に難溶性のジヒドロケルセチンの溶解性を難消化性デキストリンが改善することを見いだした。さらにこのような作用は各種水溶性食物繊維特有であることを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部含む粉末組成物。
(2)25℃における水溶液中のジヒドロケルセチンの溶解量が1mg/ml以下のジヒドロケルセチンを用い、ジヒドロケルセチンを1mg/ml以上と難消化性デキストリンを溶解含有させた水溶液であって、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部含む水溶液。
(3)飲料の形態である()に記載の水溶液。
(4)ジヒドロケルセチン含有組成物に、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部添加することを特徴とするジヒドロケルセチンの溶解性を改善する方法。
(5)ジヒドロケルセチン含有組成物の水溶液に、ジヒドロケルセチン1質量部あたり難消化性デキストリンを0.1〜10質量部添加することを特徴とするジヒドロケルセチンの沈殿防止方法。
【発明の効果】
【0007】
ジヒドロケルセチンの溶解性が改善した粉末組成物が提供される。また従来困難であった25℃のジヒドロケルセチンの溶解量が1mg/ml以上である水溶液が提供される。さらにまた、本発明によりジヒドロケルセチンの水溶性の改善方法及びジヒドロケルセチンを含む水溶液におけるジヒドロケルセチンの沈殿防止方法が提供される。
また、ジヒドロケルセチンを高濃度に溶解した飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ジヒドロケルセチンの水溶液の紫外部(200〜380nm)の吸光スペクトルである。ジヒドロケルセチンの吸収極大波長は290nm付近と言われているため、ジヒドロケルセチン溶解度が上がると、スペクトルの吸光度は上昇し、低下すると下降することを模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ジヒドロケルセチンと水溶性食物繊維を含有する粉末組成物に係る発明である。
本発明に用いるジヒドロケルセチンは、ケルセチンの2位および3位に水素が添加された、下記構造式(1)(平面構造式)で表される化合物である。2位および3位の立体配置により4種類の立体異性体が存在するが、本発明においてはすべての立体異性体およびその混合物を包含する。
【0010】
【化1】
【0011】
ジヒドロケルセチンについては、背景技術に説明したようにシベリア又は、ダフリアカラマツの辺材から抽出されたジヒドロケルセチンを成分として含む組成物が一般に市販、流通しており、これを本発明に用いることができる。この組成物はジヒドロケルセチンを80%以上含むものである。また、特許文献1(特開平6−65074号公報)に開示されたオウギの葉から抽出されたフラボノ配糖体混合物から分離されたタキシフォリンを用いることもできる。
ジヒドロケルセチンは、油溶性の化合物であり、水にはわずかしか溶解しない。ジヒドロケルセチンの溶解度は温度依存性があり、25℃における溶解度は1mg/ml以下、90℃における溶解度は52mg/mlである。
【0012】
ジヒドロケルセチンを水溶液とする際には、加熱して溶解することで、90℃の溶解度を52mg/mlとすることができる。しかし、この水溶液は温度が低下するとジヒドロケルセチンが析出してしまう。また市販されているシベリアカラマツから抽出したジヒドロケルセチン含有組成物は約90%(規格88%以上)のジヒドロケルセチンを含有している粉末(商品名:ラビトール 株式会社アメティス)である。この粉末の水への溶解性はきわめて低く、精製されたタキシフォリンの25℃の溶解度である1mg/mlよりもさらに低い。
この粉末のジヒドロケルセチン1質量部あたり水溶性食物繊維の粉末を0.1〜10質量部を均質に混合することで、当該粉末を溶解すると粉末中のジヒドロケルセチンの25℃における溶解度をジヒドロケルセチンのみを溶解させる場合に比して1.3〜4倍の濃度に改善することができる。
なお、水溶性食物繊維の配合量が0.1質量部以下の場合、溶解性改善効果がなく10質量%を超えるとジヒドロケルセチンの溶解度が頭打ちとなってしまう。
【0013】
本発明で言う水溶性食物繊維としては、グアー豆酵素分解物、グルコマンナン、βグルカン、難消化性デキストリン、難消化性グルカン、ポリデキストロース、イヌリン、アガロース、アルギン酸ナトリウム 、カラギーナン、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン、アラビノガラクタンを例示できる。好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロース、特に好ましく、難消化性デキストリンが特に好ましい。また広義の水溶性食物繊維である環状構造を持つ高分子デキストリン(商品名:クラスターデキストリン)やシクロデキストリンも本発明に用いることができる。
【0014】
本発明のジヒドロケルセチン及び水溶性食物繊維を含む粉末組成物は、水溶液又は飲料などの水媒体に溶解したとき、水溶液中に溶解するジヒドロケルセチンの25℃の濃度を1mg/ml以上にすることができる。またジヒドロケルセチンの濃度を最高で同じく25℃で4mg/mlとすることができる。
【0015】
さらにまた、ジヒドロケルセチンを高濃度に加温溶解した水溶液又は飲料中に水溶性食物繊維を溶解したジヒドロケルセチンの1質量部あたり0.1〜10質量部添加して、撹拌し溶解させることにより、室温(25℃)に液温が低下しても、水溶液又は飲料中にジヒドロケルセチンが析出することを抑制することができる。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の効果を確認した試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0017】
試験例
<試験例1:ジヒドロケルセチンの溶解度の指標としての吸光度測定(予備試験)>
ジヒドロケルセチンの溶解度の指標として吸光度を使用可能か否か評価した。
1.試験方法
ジヒドロケルセチンの水溶液は黄色透明な水溶液となる。15mL遠沈管にジヒドロケルセチン(ジクベルチン:株式会社DHQ)及び難消化性デキストリン(ファイバーソル2:松谷化学工業株式会社製)を秤量し、蒸留水を5gとなるように加えた。転倒混和したのち、卓上超音波洗浄機(SHARP社製 UT-205)で10分間ソニケーションした後、25℃で1時間保温した。
HITACHI社製Himac CT6Dを使用し、3000rpmで10分間遠心分離した後、上清を2mLマイクロチューブ(エッペンドルフ社製)に移し、16200Gで10分間超遠心分離した(HITACHI社製CF15RXII)。上清を新しいマイクロチューブに移し、SHIMADZU社製UV-2450で波長400nmから200nmの波長域の吸光度を測定し、スペクトログラフィーを得た。
【0018】
2.結果
図1にジヒドロケルセチンを定量とし、難消化性デキストリンを増加させた際に得られるスペクトロメトリーを示す。
難消化性デキストリンによって溶解性が上昇し、吸光度が上昇することが確認できた。
【0019】
<試験例2:ジヒドロケルセチンの溶解性改善試験>
1.試験方法
ジヒドロケルセチン(ジクベルチン:株式会社DHQ)、難消化性デキストリン(ファイバーソル2:松谷化学工業株式会社製)を用いてジヒドロケルセチンの溶解度に及ぼす難消化性デキストリンの効果を評価した。
下記表1の比率でジヒドロケルセチンと難消化性デキストリンの粉末を混合し、予備試験と同様にして試験溶液を調整し、400〜200nmの波長で吸光度を測定した。
【0020】
【表1】
【0021】
難消化性デキストリンを含まない場合の溶液の極大波長における吸光度比を1とし、難消化性デキストリン添加した際の相対吸光度(吸光度比)を求めた。
【0022】
2.結果
表1に示すとおり難消化性デキストリンを含まない場合を1とすると難消化性デキストリンの添加量が増大するにつれ、溶解度が上昇した。25℃の温度での水へのジヒドロケルセチンの溶解度は1mg/mlとされている。難消化性デキストリンを添加することで、無添加の4倍量、4mg/mlの濃度のジヒドロケルセチン水溶液を得ることができた。
【0023】
<試験例3:各種多糖類のジヒドロケルセチンの溶解度に及ぼす効果>
1.試験方法
水溶性食物繊維として試験例1、2に用いた難消化性デキストリン(ファイバーソル2:松谷化学工業株式会社製)とは平均分子量の異なる難消化性デキストリン(パインファイバーC:松谷化学株式会社製)、ポリデキスロース(スターライトIII:Tate&Lyle製)、アラビノガラクタン(レジスエイド:ロンザジャパン製)、環状構造を持つ高分子デキストリン(クラスターデキストリン:グリコ栄養食品株式会社製)、非水溶性食物繊維としてセルロース(セオラスFD-301:旭化成株式会社製)、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ:松谷化学工業株式会社製)、α−シクロデキストリン(CAVAMAX(登録商標)w6:株式会社シクロケム)それぞれ125mgをジヒドロケルセチン粉末(ジクベルチン)125mgに粉混合した。それぞれの粉末を15mL遠沈管採取し、蒸留水を5gとなるように加えた。転倒混和したのち、卓上超音波洗浄機(SHARP社製 UT-205)で10分間ソニケーションした後、25℃で1時間保温した。次いで、HITACHI社製Himac CT6Dを使用し、3000rpmで10分間遠心分離した後、上清を2mLマイクロチューブ(エッペンドルフ社製)に移し、16200Gで10分間超遠心分離した(HITACHI社製CF15RXII)。上清を新しいマイクロチューブに移し、SHIMADZU社製UV-2450で400〜200nmの波長域の吸光度を測定し、試験例1と同様にジヒドロケルセチンの溶解性を試験した。
【0024】
2.結果
試験結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
水溶性食物繊維である難消化性デキストリン、環状高分子デキストリン(クラスターデキストリン)、シクロデキストリン、アラビノガラクタン、ポリデキストロースはジヒドロケルセチンの溶解性を改善した。しかし非水溶性食物繊維であるセルロース及び非食物繊維のトウモロコシ澱粉はジヒドロケルセチンの溶解性を悪化させた。
以上の試験1〜3により、水溶性食物繊維はジヒドロケルセチンの水への溶解性を改善することが明らかとなった。またジヒドロケルセチンの溶解性は、水溶性食物繊維の混合量に応じて改善することが判明した。
図1