(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486623
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための末端カバー及び排ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20190311BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
F02B39/00 G
F04D29/42 K
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-161096(P2014-161096)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34550(P2015-34550A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】10 2013 013 235.5
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ショーラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・グリースハーバー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ベーメ
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−041982(JP,A)
【文献】
特表2010−506091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための末端カバー(13)であって、前記末端カバーを介して、空気を導く圧縮機インペラを、前記排ガスターボチャージャの給油されたアセンブリから分離することが可能であり、前記末端カバーは、シャフトのための通路開口部(17)を含む基体部(16)を有している末端カバーにおいて、
前記基体部(16)上には、複数の環状かつ同心の突起(22)が前記通路開口部(17)に隣接した領域に形成されていることを特徴とする末端カバー(13)。
【請求項2】
前記1つ又は各突起(22)が、周方向に通っており、前記基体部(16)から出発して軸方向に延在していることを特徴とする請求項1に記載の末端カバー。
【請求項3】
前記突起(22)の軸方向伸びは、前記突起(22)の自由端がそれぞれ、前記末端カバーに対向する圧縮機インペラの輪郭(23)から略同一の距離を有するように寸法設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の末端カバー。
【請求項4】
径方向に見て、隣接する突起(22)間の距離が、前記突起(22)の径方向厚さ以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の末端カバー。
【請求項5】
圧縮機及びタービンを有する排ガスターボチャージャであって、前記圧縮機は、圧縮機インペラハウジングを有する圧縮機インペラを含み、前記タービンは、タービンインペラハウジングを有するタービンインペラを含み、前記圧縮機インペラと前記タービンインペラとは、軸受ハウジングに取り付けられたシャフトを通じて連結され、前記圧縮機インペラの末端カバーは、空気を導く圧縮機インペラを、前記排ガスターボチャージャの給油されたアセンブリから分離する、排ガスターボチャージャにおいて、
前記末端カバー(13)の基体部(16)上には、前記圧縮機インペラ(10)に対向する複数の環状かつ同心の突起(22)が、前記基体部(16)に形成された、前記シャフトのための通路開口部に隣接した領域に形成されていることを特徴とする排ガスターボチャージャ。
【請求項6】
前記1つ又は各突起(22)が、周方向に通っており、前記基体部(16)から出発して前記圧縮機インペラ(10)の軸方向に延在していることを特徴とする請求項5に記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記突起(22)の軸方向伸びは、前記突起(22)の自由端がそれぞれ、前記末端カバーに対向する圧縮機インペラの輪郭(23)から略同一の距離を有するように寸法設定されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の排ガスターボチャージャ。
【請求項8】
径方向に見て、隣接する突起(22)間の距離が、前記突起(22)の径方向厚さ以上であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の排ガスターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための末端カバーに関する。本発明はさらに、請求項6のプリアンブルに記載の排ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、排ガスターボチャージャの基本的な構造が知られている。当該特許文献に記載された排ガスターボチャージャは、圧縮機インペラ及び圧縮機インペラハウジングを有する圧縮機と、タービンインペラ及びタービンインペラハウジングを有するタービンとを含んでおり、圧縮機インペラとタービンインペラとは、軸受ハウジング内に取り付けられたシャフトを用いて連結されている。特許文献1によると、末端カバーはそれぞれ、タービンの領域と圧縮機の領域との両方に設けられており、圧縮機インペラのための末端カバーは、空気を導く圧縮機インペラを、排ガスターボチャージャの給油されたアセンブリから分離し、タービンインペラに配設された末端カバーは同様に、排ガスを導くタービンインペラを、排ガスターボチャージャの給油されたアセンブリから分離する。圧縮機インペラをタービンインペラに連結するシャフトは、一方では圧縮機インペラの末端カバーの通路開口部(passage opening)を通って、他方ではタービンインペラの末端カバーの通路開口部を通って延在する。
【0003】
排ガスターボチャージャの運転中は、圧縮機インペラが破損する危険性が存在する。特に、圧縮機インペラが破損した場合、圧縮機インペラの破片が圧縮機インペラの末端カバーを破損する可能性があり、その結果、給油されたアセンブリの油が空気を導く圧縮機インペラの領域に流入する可能性がある。これは、オイルミスト爆発につながり得る。
【0004】
したがって、このようなオイルミスト爆発の危険性を減らすことができるような排ガスターボチャージャ又は排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための末端カバーの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010038524号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから出発して、本発明は、排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための新型の末端カバーと、そのような末端カバーを有する排ガスターボチャージャとを創出するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、請求項1に記載の末端カバーによって解決される。本発明によると、圧縮機インペラに対向する少なくとも1つの環状の突起が、末端カバーの基体部(basic body)上に形成されている。末端カバーの基体部上に形成され、圧縮機インペラに対向する環状の1つ又は各突起は、圧縮機インペラのための末端カバーを補剛する。圧縮機インペラが破損した場合に、オイルミスト爆発が生じ得るような状態で末端カバーが損傷する危険性は減少している。環状の1つ又は各突起は、圧縮機インペラの破片の運動エネルギーを吸収し、当該運動エネルギーをそらすことができる。
【0008】
優位には、1つ又は各突起は、周方向に通っており、基体部から出発して、圧縮機インペラの軸方向に延在している。圧縮機インペラの末端カバー上の1つ又は各突起の当該構成は、末端カバーの特に有利な補剛を提供する。
【0009】
有利なさらなる発展形態によると、圧縮機インペラに対向する複数の環状かつ同心の突起が基体部に形成されている。これによって、末端カバーは最適に補剛され得る。
【0010】
優位には、突起の軸方向伸びは、突起の自由端がそれぞれ、末端カバーに対向する圧縮機インペラの輪郭から略同一の距離を有するように寸法設定されている。優位には、隣接する突起間の距離は、径方向に見て、少なくとも突起の径方向厚さに相当する。それによって、圧縮機インペラの故障の際に形成され得る破片の運動エネルギーは、最適に吸収され得る。
【0011】
本発明に係る排ガスターボチャージャは、請求項6に規定されている。
【0012】
本発明の好ましいさらなる発展形態は、下位請求項及び以下の説明から得られる。本発明の例示的な態様は、図面を用いてより詳細に説明されるが、当該図面に限定されるものではない。示されているのは以下の図面である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る排ガスターボチャージャの圧縮機インペラのための末端カバーの横断面図である。
【
図3】本発明に係る末端カバーの領域における本発明に係る排ガスターボチャージャの横断面を詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、排ガスターボチャージャの圧縮機の圧縮機インペラのための末端カバーと、当該末端カバーを有する排ガスターボチャージャとに関する。
【0015】
排ガスターボチャージャの基本的な構造は、当業者によく知られており、例えば特許文献1からも知られている。
【0016】
完全を期して、ここでは、排ガスターボチャージャが圧縮機及びタービンを含むことが指摘される。当該圧縮機は、圧縮機インペラ及び圧縮機インペラハウジングを含む。当該タービンは、タービンインペラ及びタービンインペラハウジングを含む。圧縮機の圧縮機インペラとタービンのタービンインペラとは、軸受ハウジング内に取り付けられたシャフトを通じて連結される。
【0017】
排ガスターボチャージャの圧縮機の圧縮機インペラには、圧縮機側の末端カバーが配設されており、排ガスターボチャージャのタービンのタービンインペラには、タービン側の末端カバーが配設されている。それによって、各インペラは、排ガスターボチャージャの油を導く領域、例えば油を導く軸受ハウジングから分離される。
【0018】
図3は、圧縮機インペラ10、シャフト12のための軸受ハウジング11及び圧縮機側の末端カバー13の領域における排ガスターボチャージャの細部の横断面を概略的に示している。圧縮機インペラ10は、止め輪14によってシャフト12に取り付けられており、圧縮機インペラ10と止め輪14との間には、末端カバー13に隣接して、ピストンリング15が設けられている。
【0019】
圧縮機インペラ10のための末端カバー13は、空気を導く圧縮機インペラ10を、軸受ハウジング11に対して、及び、したがって排ガスターボチャージャの油を導くアセンブリに対して、分離かつ密封している。末端カバー13は、シャフト12のための通路開口部17を有する基体部16を備え、シャフト12は、圧縮機インペラ10をタービンインペラに連結する。
【0020】
末端カバー13の基体部16は、段のある外側輪郭を有しており、当該外側輪郭上には、図示された例示的態様では、図示されていないシールリングを受容するための複数の溝18が形成されており、当該溝は、末端カバー13の軸受ハウジング11に対する密封を確実にする。
【0021】
基体部16の外側輪郭の外径が最大の箇所に位置する溝18と、基体部16の外側輪郭の外径が中間の箇所に位置する溝18との間には、溝19が形成されており、溝19は、隣接する軸受ハウジング11と共に、冷却媒体が流れる冷却導管20を画定する。
【0022】
優位には水が冷却媒体として用いられるので、基体部16の外側輪郭の外径が中間の箇所に位置する溝18と、基体部16の外側輪郭の外径が最小の箇所に位置する溝18と間に漏れ溝21が形成される。当該漏れ溝は、基体部16の外側輪郭の外径が中間の箇所に位置するシールが機能しなくなった場合に、冷却水がターボチャージャの油を導く領域に流入することを防止する。
【0023】
本発明によると、圧縮機インペラ10に対向する少なくとも1つの環状の突起22が、末端カバー13の基体部16に形成されている。図示されている好ましい例示的態様では、3つの環状の突起22が存在し、当該突起は周方向に通っており、同心円状に互いを囲んでいる。
【0024】
基体部16から出発して、突起22は、圧縮機インペラ10の方向に延在しており、突起22の軸方向Aにおける伸びは、突起22の自由端がそれぞれ、末端カバー13に対向する圧縮機インペラの輪郭23から略同一の距離を有するように寸法設定されている。
【0025】
径方向Rに見ると、隣接する突起22間の距離はそれぞれ、少なくとも突起22の径方向厚さに相当する。
【0026】
圧縮機インペラ10にとって、破損の危険性は、ピストンリング15が配置されている領域が最も大きい。故障の際に当該領域で形成される圧縮機インペラ10の破片は、該当する場合、圧縮機インペラ10の運動エネルギーの結果として、最初は径方向外側に飛ばされ、次に、突起22の内少なくとも1つの領域に到達する。そのとき、突起22は、当該破片の運動エネルギーを吸収するために、径方向において弾性的に変形可能であり、かつ、突起22は、プロセスにおいて、破片を軸方向に、すなわち圧縮機インペラ10の方向にそらすものである。
【0027】
したがって、圧縮機インペラ10の破片は、圧縮機インペラ10の末端カバー13をもはや貫通することはできないので、圧縮機インペラ10の故障の際に、末端カバー13の機能性が維持される。その結果、依然として、排ガスターボチャージャの油を導く領域を、空気を導く領域から分離することが可能であり、油が排ガスターボチャージャの空気を導く領域に流入し、オイルミスト爆発を生じさせる危険がなくなる。
【0028】
同心円状に互いを囲んでいる突起22は、末端カバー13の基体部16の領域に形成されており、径方向Rに見て、シャフト12のための通路開口部17と、基体部16の外側輪郭の外径が最小の箇所に配置された溝18との間に配置されている。
【0029】
末端カバー13の構成ゆえに、比較的費用効率の良い鋳鉄材料から当該末端カバーを製造することが可能である。そのような鋳鉄材料の末端カバーは、容易かつ費用効率良く製造され得る。
【符号の説明】
【0030】
10 圧縮機インペラ
11 軸受ハウジング
12 シャフト
13 末端カバー
14 止め輪
15 ピストンリング
16 基体部
17 通路開口部
18 溝
19 溝
20 冷却導管
21 漏れ溝
22 突起
23 圧縮機インペラの輪郭