(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486645
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】揮散器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20190311BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20190311BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20190311BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
B65D85/00 A
A61L9/12
B65D83/00 F
A01M1/20 D
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-215658(P2014-215658)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-78935(P2016-78935A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 厚
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−036292(JP,A)
【文献】
特開2001−261080(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/047978(WO,A1)
【文献】
実開平07−018736(JP,U)
【文献】
特開2001−031160(JP,A)
【文献】
特開2009−000102(JP,A)
【文献】
特開平03−150202(JP,A)
【文献】
特開2010−215273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
A01M 1/20
A61L 9/12
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液状薬剤を収容可能であって、上部に開口部を有する容器と、
前記液状薬剤を吸収し、前記開口部上方から突出するように配置される揮散体と、
前記揮散体を覆うように配置されるキャップと、を備え、
前記揮散体は、本体と、前記本体から径方向外側に平面視放射状に延出する複数のフィンとを有し、
前記キャップは、前記揮散体の上方に配置される頂部と、前記揮散体の径方向外側を囲むように配置される底部と、前記頂部と前記底部とを連結し平面視放射状に配置される複数のフィンと、を備え、
前記キャップのフィンの数と前記揮散体のフィンの数とが異なる、揮散器。
【請求項2】
前記キャップのフィンの数は、前記揮散体のフィンの数よりも多い、請求項1に記載の揮散器。
【請求項3】
前記キャップの各フィンの側壁部は、前記頂部から前記底部に向かってねじれる形状を有する、請求項1又は2に記載の揮散器。
【請求項4】
前記キャップの各フィンの側壁部は、前記頂部から前記底部に向かって波打つ形状を有する、請求項1又は2に記載の揮散器。
【請求項5】
前記容器の首部に装着され、中心に開口を有するフランジをさらに備え、
前記フランジは、前記開口の径方向外側に周設され前記揮散体を載置可能な第1の載置部と、前記第1の載置部の径方向外側に周設され前記キャップを載置可能な第2の載置部と、を備える請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の揮散器。
【請求項6】
前記揮散体と前記キャップとの間に配置され、前記揮散体を覆う揮散防止カバーと、
前記容器の首部の径方向内側に装着され、前記揮散体を載置可能な平坦部を有する内側フランジと、
前記容器の首部の径方向外側に螺合して装着され、前記キャップを装着可能な装着部を有する外側フランジと、をさらに備え、
前記外側フランジは、前記内側フランジの平坦部の上方に、前記首部に向かって延出する縁部を有し、前記縁部と前記平坦部との間で前記揮散防止カバーを挟持する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の揮散器。
【請求項7】
前記容器内に配置され、前記液状薬剤を吸収する吸液芯をさらに備え、前記吸液芯の上端は、前記揮散体の一部と接触している、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の揮散器。
【請求項8】
前記揮散体は、前記液状薬剤に直接接触するように一部が前記容器内に配置されている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状薬剤を揮散させる揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部屋やトイレ等で液状薬剤を揮散させる揮散器が知られている。このような揮散器として、例えば、特許文献1には、容器に液状薬剤を吸い上げる吸液芯を挿入し、その上部に平板状の揮散体とこの揮散体を覆う筒状のカバーとを設けた芳香放散器が開示されている。このカバーには、気流を内部に取りこんで芳香を外部に拡散するための揮散孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−261080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなカバーに揮散孔を設けた従来の揮散器では、カバーの揮散孔以外の部分に流れる気流は反射されて内部に取り入こめない。一方で揮散孔の開口面積を大きくすることにも限界がある。そのため液状薬剤の揮散効率を高められないという問題がある。
【0005】
さらに、近年、揮散器は、インテリアの一つとして部屋を演出する小道具としての使い方も求められるようになっている。しかしながら、カバーに揮散孔を設けた従来の揮散器ではデザイン上の制約が多く、こうした美観向上の要請には十分に応えることはできなかった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、揮散効率を高めると共に視認性及び美観を向上させることのできる揮散器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の好ましい一態様によれば、内部に液状薬剤を収容可能であって、上部に開口部を有する容器と、前記液状薬剤を吸収し、前記開口部上方から突出するように配置される揮散体と、前記揮散体を覆うように配置されるキャップと、を備え、
前記揮散体は、本体と、前記本体から径方向外側に平面視放射状に延出する複数のフィンとを有し、前記キャップは、前記揮散体の上方に配置される頂部と、前記揮散体の径方向外側を囲むように配置される底部と、前記頂部と前記底部とを連結し平面視放射状に配置される複数のフィンと、を備え
、前記キャップのフィンの数と前記揮散体のフィンの数とが異なる、揮散器を構成する。
【0008】
上記構成によれば、容器内の液状薬剤は、揮散体に吸収されたのち、気化して周囲に揮散される。ここで、揮散体を覆うように配置されるキャップは、複数のフィンを備えている。フィンはキャップの頂部と底部とを連結し、平面視放射状に配置されるので、フィンとフィンとの間の開口に向かう気流はもちろん、フィンの側壁部(径方向に沿ってフィンの主面を構成する面)に向かって流れる気流も当該開口に導かれる。これにより、カバーに揮散孔を設けた従来の揮散器に比して、実質的な開口面積が増大し、揮散体への効率的な空気の取り込み、取り出しが可能になる。ひいては、揮散効率が向上する。
【0009】
加えて、キャップが平面視放射状に配置される複数のフィンで構成されるので、カバーに揮散孔を設けた従来の揮散器に比して、キャップに奥行きすなわち3次元的な広がりを持たせることができる。また個々のフィンの形状、配置によるデザイン上の自由度も広がり、美観の面でも従来の揮散器とは一線を画したものとすることができる。
【0010】
なお、本発明において、「放射状」とは、ある点又は部分を中心に等間隔又は異なる間隔で四方八方に直線状又は曲線状(例えば、らせん状、波状)に伸びた状態を示す。
【0012】
また、上記構成によれば、揮散体
の複数のフィンにより揮散体の表面積が増加するので、揮散体から蒸発する液状薬剤の量を増加させることができる。また揮散体の
フィンの側壁部にあたる気流は、
フィンの角度に応じて反射される。そのためキャップから内部に取り込まれた気流に、より複雑な空気の乱れを生じさせることができる。これにより液状薬剤の蒸発量をさらに増加させ、またキャップと揮散体との間の空間に空気が滞留することを抑制することができる。
【0013】
加えて、この揮散器は、キャップの複数のフィンの奥に、揮散体の複数の
フィンがさらに配置されるので、より複雑な3次元構造を有する。また揮散体の個々の
フィンの形状、配置により、従来の板状の揮散体に比べてデザイン上の自由度も広がる。
【0015】
また、上記構成によれば、キャップのフィンの数と揮散体の
フィンの数とが異なることにより、キャップの各フィン間の角度と、揮散体の各
フィン間の角度とが異なることになる。これによる視覚的な効果に加えて、キャップの内部に取り込む気流に、より複雑な空気の乱れを生じさせることができる。
【0016】
好ましくは、前記キャップの
各フィンの径方向側面は、前記頂部から前記底部に向かってねじれる又は波打つ形状を有するようにしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、当該ねじれる又は波打つ形状のフィンにより、キャップの内部に取り込まれる気流に、さらに複雑な空気の乱れを生じさせることができる。
【0018】
好ましくは、前記容器の首部に装着され、中心に開口を有するフランジをさらに備え、前記フランジは、前記開口の径方向外側に周設され前記揮散体を載置可能な第1の載置部と、前記第1の載置部の径方向外側に周設され前記キャップを載置可能な第2の載置部と、を備えるようにしてもよい。
【0019】
上記構成によれば、首部に装着したフランジに、揮散体及びキャップを順に載置するだけで容易に組み立てができる。またキャップ及び揮散体の取り外しも逆の手順で行えばいいので、容器の液状薬剤、吸液芯の交換等も容易に行うことができる。またキャップ及び揮散体をそれぞれフランジ上で自由に回動させ位置決めすることができる。これにより、例えば、揮散体に凸部が設けられている場合には、キャップのフィンと揮散体の凸部との互いの角度を容易に調整することができる。
【0020】
好ましくは、前記揮散体と前記キャップとの間に配置され、前記揮散体を覆う揮散防止カバーと、前記容器の首部の径方向内側に装着され、前記揮散体を載置可能な平坦部を有する内側フランジと、前記容器の首部の径方向外側に螺合して装着され、前記キャップを装着可能な装着部を有する外側フランジと、をさらに備え、前記外側フランジは、前記内側フランジの平坦部の上方に、前記首部に向かって延出する縁部を有し、前記縁部と前記平坦部との間で前記揮散防止カバーを挟持する、ようにしてもよい。
【0021】
上記構成によれば、揮散防止カバーは、揮散体とキャップとの間に配置され、揮散体を覆うように配置されるので、揮散器の出荷時や不使用時等に揮散体から液状薬剤が揮散することを防止することができる。この揮散防止カバーは、外側フランジの縁部と内側フランジの平坦部との間で挟持される。外側フランジは、容器の首部に螺合して装着されるので、外側フランジの首部に対するねじ嵌めを緩めることで、外側フランジの縁部と内側フランジの平坦部との間隔が広がる。これにより、揮散防止カバーを揮散器から容易に取り外すことができる。
【0022】
好ましくは、前記容器内に配置され、前記液状薬剤を吸収する吸液芯をさらに備え、前記吸液芯の上端は、前記揮散体の一部と接触している、ようにしてもよい。
【0023】
上記構成によれば、容器内に配置される吸液芯が液状薬剤を吸収する。吸収された液状薬剤は、吸液芯の上端から揮散体が接触する部分を通って揮散体に含浸される。揮散体と吸液芯とが別体であるので、例えば出荷時や不使用時等に、揮散体と吸液芯とを物理的に引き離せば、揮散体へ液状薬剤がさらに含浸することを防ぐことができる。
【0024】
好ましくは、前記揮散体は、前記液状薬剤に直接接触するように一部が前記容器内に配置されている、ようにしてもよい。
【0025】
上記構成によれば、揮散体は液状薬剤を容器内から直接吸い上げて揮散させる。この場合上述したような吸液芯を必要としないので部品点数を減らすことができるとともに、組立も容易になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、揮散効率を高めると共に視認性及び美観を向上させることのできる揮散器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る揮散器の斜視図である。
【
図3】同揮散器の揮散体を示す図であり(A)は平面図(B)は斜視図である。
【
図4】同揮散器のキャップを示す図であり(A)は平面図(B)は斜視図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る揮散器の要部断面図である。
【
図6】同揮散器の揮散体を示す図であり(A)は平面図(B)は斜視図である。
【
図7】本発明の変形例に係る揮散器の斜視図である。
【
図8】本発明の変形例に係るキャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態に係る揮散器を説明する。以下の説明では、容器の底部が存在する方を下側とし、容器の首部が存在する方を上側とする。また説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0029】
<第1の実施形態>
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る揮散器1は、容器2、吸液芯3、フランジ4、揮散体5、キャップ6と、を備えている。
【0030】
容器2は、上側から順に、首部20、胴部22、底部24が一体に形成されており、内部に液状薬剤を貯留するための有底ボトル状のボトル壁を構成している。容器2の液状薬剤としては、例えば、芳香液、消臭液、防臭液、防虫液、防カビ液等の一種又は複数種を混合したものがある。容器2は、胴部22の径が最も太く、首部20及び底部24に向かって縮径する紡錘形状をしている。胴部22は、首部20から底部24に向かって上下方向斜めに波状に湾曲して形成された谷部220と、谷部220間を滑らかに連結し容器の径方向外側に隆起する山部222とから構成されている。容器2は、例えば無色透明(又は有色透明)のプラスチック(又はガラス)等から形成されており、上記胴部22の形状と相まって、一見すると香水瓶のような美観を奏する。
【0031】
図1に示すように、容器2の首部20には、上方に開口した開口部(図示せず)が設けられており、この開口部には内キャップ(図示せず)が内嵌される。内キャップの中央部には棒状の吸液芯3が挿通され当該内キャップにより吸液芯3が保持される。吸液芯3は、例えば吸液性を有するパルプや合成樹脂等の繊維により形成されている。吸液芯3は容器2の例えば中心軸上に配置され、その下端は容器2の底部24に接触し、その上端は内キャップの上方に伸びて、フランジ4に載置される揮散体5の底面に接触する。吸液芯3は、吸収した液状薬剤を容器2の下から上に導いて揮散体5に浸透させる。
【0032】
図1に示すように、容器2の首部20には、フランジ4が装着される。
図2に示すように、フランジ4は、首部20の外周縁にねじ込んで取り付けられる取付部40と、取付部40の上方に連結する幅広の円環部42とを備え、フランジ4の中心の開口44を吸液芯3が挿通するようになっている。フランジ4は、例えばプラスチックで形成されている。
【0033】
円環部42には、フランジの開口44から径方向外側に向かって順に、第1の載置部420及び第2の載置部422が形成されている。第1の載置部420及び第2の載置部422は、それぞれ容器2の中心軸と同一の中心軸を有する円環状の平坦面からなり、揮散体5及びキャップ6の載置面として機能する。第1の載置部の外周縁には、その外周縁から垂直方向上方に向かって隆起する側壁424が形成されており、揮散体5の径方向の移動が規制されるようになっている。また第2の載置部422の内周縁及び外周縁には、それぞれから垂直方向上方に隆起する側壁426、428が形成されており、キャップ6の径方向の移動が規制されるようになっている。
【0034】
上記構成により、フランジ4の載置面に揮散体5及びキャップ6を順に載置するだけで容易に取り付け及び位置決めが可能である。揮散体5及びキャップ6の取り外しも逆の手順で行えばよいので、液状薬剤、吸液芯3の交換等も極めて容易に行うことができる。
【0035】
図1に示すように、フランジ4の第1の載置部420上には、揮散体5が載置される。
図3(A)及び(B)に示すように、揮散体5は、円筒状の本体50と、本体50の中心から平面視放射状に延出する複数の凸部52とから構成されている。本体50及び凸部52はいずれもその上面及び底面は平坦面を有し、上下方向いずれの面でも第1の載置部420に載置可能である。揮散体5は、第1の載置部420上に載置された状態で、揮散体5の下面の中心に吸液芯3の上端が当接するようになっている。
【0036】
各凸部52は、周方向に互いに45度離間して、8本配置されている。各凸部52は、2つの側壁部520(上面と下面とを連結し径方向に延びる面を構成する)と、2つの側壁部520の間を径方向外側に膨らんだ滑らかな曲面で連結する端部522とを有する。揮散体5は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、パルプ等の1種若しくは2種以上を混合した繊維束を押出形成することにより、吸液性を有するよう多孔質に成形される。
【0037】
吸液芯3を介して揮散体5の内部に浸透した液状薬剤は、揮散体5の表面から気化して外部に揮散する。揮散体5は、凸部52を有することで、その表面積が従来の板状又は筒状の揮散体に比べて格段に大きいため、揮散体5から蒸発する液状薬剤の量を増加させることができる。別の観点からみれば、より小さな容積で、従来の揮散体と同じ揮散量を得ることができる。すなわち、揮散体5を小型化できる。
【0038】
また揮散体5の各凸部52は、キャップ6から内部に取り込まれた気流を側壁部520により反射させる。これにより、例えば板状の揮散体に比べて、キャップ6から内部に取り込まれた空気により複雑な気流の乱れを生じさせることができる。これにより、空気を揮散体5のより多くの箇所に導き、液状薬剤の蒸発量を増加させることができ、またキャップ6と揮散体5との間に空気が滞留することを抑制することができる。
【0039】
図1に示すように、キャップ6が揮散体5を覆うように、フランジ4上に載置される。
図4(A)及び(B)に示すように、キャップ6は、円錐状の頂部60と、環状の底部62と、頂部60と底部62とを連結し平面視放射状に配置される複数のフィン64とから構成されている。キャップ6は、透明のプラスチックで形成される。キャップ6は、例えば、インジェクション成形により成形される。フランジ4の第2の載置部422に載置された状態で、頂部60は揮散体5の本体50上に配置され、底部62は揮散体5の凸部52を囲むように配置される。これにより、キャップ6は、揮散体5のカバーとしての機能を有する。すなわち、キャップ6は、液状薬剤が浸透した揮散体5に人や物体が直接接触することや、風によって揮散体5が飛ばされ容器から落ちてしまうことを防止する。
【0040】
キャップ6の各フィン64は、周方向に互いに30度離間して12本配置されている。各フィン64の間には、空気を取り出し入れするための開口66が形成されている。各フィン64は、略「くの字」形状(頂部60から底部62に向かうに従って一旦幅狭になりその後再び幅広となる形状)をした平坦面で構成される2つの側壁部640と、この2つの側壁部640の間を平坦面で連結する端部642とから構成されている。端部642の幅(2つの側壁部640の間の距離)は、キャップ6がカバーとしての剛性を保つために十分であれば、できるだけ細くすることが好ましい。これにより、互いに隣接するフィン64とフィン64との間隔すなわち開口66を大きくすることができる。
【0041】
上述したキャップ6の構造により、開口66に直接向かう気流はもちろん、フィン64の側壁部640に向かって流れる気流も開口66に導くことが可能である。すなわち、カバーに揮散孔を設けた従来の揮散器に比して、実質的な開口面積が増大する。そのため揮散体5への効率的な空気の取り込みが可能になり、また揮散体5から蒸発する液状薬剤の効率的な取り出しが可能になる。
【0042】
上述のとおり、キャップ6には、周方向に互いに30度離間した12本のフィン64が配置されており、一方、揮散体5には、周方向に互いに45度離間した8本の凸部52が配置されている。キャップ6と揮散体5とで互いのフィンまたは凸部の数が異なるので、キャップ6に流れる空気の大部分は、少なくとも一度はフィン64の側壁部640又は凸部52の側壁部520にて反射されることになる。これにより、キャップ6に取り込む気流により複雑な乱れを生じさせることができ、空気を揮散体5のより多くの箇所に導きくことができる。ひいては、液状薬剤の蒸発量を増加させ、キャップ6と揮散体5との間に空気が滞留することを抑制することができる。
【0043】
また、揮散体5及びキャップ6はそれぞれフランジ4上で自由に回動させ位置決めすることができるので、キャップ6のフィン64と揮散体5の凸部52との互いの相対角度を、例えば揮散器1が置かれた場所の気流の状況に応じて調整することができる。
【0044】
揮散器1の上側部分は、キャップ6及び揮散体5がそれぞれフィンまたは凸部を有するので、視覚的に奥行きのある3次元構造を有する。そして、揮散体5及びキャップ6の空気の取り込み、取り出し効率がよいので、双方が小型化されている。より具体的には、本実施の形態においては、揮散体5の径方向の大きさは、容器2の最狭部を構成する首部20の開口径よりわずかに小さく、であり、キャップ6の径方向の大きさは、首部20の開口径よりわずかに大きく、容器2の胴部22の径よりも小さくなっている。すなわち、揮散体5及びキャップ6の径方向の大きさが容器2の首部20の径と同程度となっており、これと揮散体5の凸部及びキャップ6のフィンによる奥行きのある3次元構造と相まって、揮散器1の上部は、香水瓶のキャップのような美観を奏する。上述したとおり容器2は香水瓶のような美観を奏するので、双方を合わせると、香水瓶とそのキャップのような美観を奏し、揮散器1は、従来の揮散器とは一線を画する高いインテリア性を有する。
【0045】
なお、キャップ6のフィンのほうが揮散体5の凸部よりも枚数よりも多いので、キャップ6のフィン64が揮散体5の凸部52の一部を視覚的に遮蔽する。キャップ6は揮散体5よりも材質、形状によるデザイン上の制限がより少ないので、揮散体5をより見栄えのよいキャップ6の背後に隠すようにすることができ、当該視覚的な遮蔽効果により、揮散器1の全体としての美観を一層向上させることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、
図5及び
図6を用いて、本発明の第2の実施形態に係る揮散器10について説明する。ここでは、第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明は省略する。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る揮散器10の上部をその中心軸を含む平面で切った要部断面図であり、容器2の首部20、吸液芯3、揮散体5A、キャップ6A、内側フランジ7、外側フランジ8及び揮散防止カバー9が示されている。
【0048】
揮散体5Aには、
図6に示すように、中心軸に吸液芯3を挿通するための貫通孔54が設けられている。本実施形態では、吸液芯3は、揮散体5Aの貫通孔54の下半分まで挿通され、吸液芯3の上部外周面が揮散体5Aの内壁に接触している(
図5参照)。これにより、第1の実施の形態(吸液芯3の上面が揮散体5の底面に接触する)に比べて、吸液芯3と揮散体5Aとの接触面積が大きくなり、液状薬剤を効率よく揮散体5Aに吸い上げることができる。
【0049】
揮散体5Aは、吸液芯3と内側フランジ7とによって位置決め固定されている。より具体的には、揮散体5Aは、内側フランジ7の上面に設けられた平坦部70上に揮散体5Aの底面端部が載置されるとともに、容器2の中心軸に沿って立設する吸液芯3により位置決め固定されている。
【0050】
内側フランジ7は、その外周に嵌合部72設けられている。この嵌合部72が首部20の内周壁に嵌合することで、内側フランジ7が容器2に強固に(回動や取り外しが容易ではない状態で)固定される。内側フランジ7は、嵌合部72の径方向内側に、下方向に向かって縮径する漏斗状の漏斗部74と、この漏斗部74の下部に連結し、吸液芯3の直径よりわずかに大きな径を有する管76とを有する。幅広径の漏斗部74及び吸液芯3の径に対応して設けられた管76により、吸液芯3を容器2内に容易に位置決めして固定することができる。また、この漏斗部74及び管76の構造により、液状薬剤の補充も容易になる。漏斗部74には空気孔740が設けられており、容器2内の液状薬剤が減少することに伴う容器2内の圧力変化を調整するようになっている。
【0051】
キャップ6Aは、装着部60Aをその底部に有し、この装着部60Aが、外側フランジ8の溝部80内に挿入されて係合することにより、キャップ6Aが外側フランジ8に装着される。外側フランジ8は、その内周壁に、ねじ切り加工された装着部82を有し、この装着部82が、同じくねじ切り加工された首部20の外周壁に螺合することで、外側フランジ8が容器2に装着される。外側フランジ8は、装着部82の上部に連結し、径方向内側に延出する縁部84をさらに有する。
【0052】
揮散防止カバー9は、揮散体5Aと、キャップ6Aとの間に配置される。揮散防止カバーは筒状の周壁90、上面壁92、周壁90の下端から径方向外側に突出する蓋部94を有し、揮散体5Aの底面を除く外周面全体を覆う。そのため、キャップ6Aを介して内部に取り込まれる空気が揮散体5Aに触れることを防止できる。これにより、揮散器10の出荷時や長期間の不使用時等に揮散体5Aから液状薬剤が揮散することを防止することができる。
【0053】
揮散防止カバー9の蓋部94は、内側フランジ7の平坦部70と外側フランジ8の縁部84との間で挟持され、これにより揮散防止カバー9が揮散器10に固定される。もちろん、揮散防止カバー9は、揮散器10の使用時には取り外す必要がある。この点、本実施の形態の構造では、揮散防止カバー9の取り外しは容易である。すなわち、外側フランジ8を回動させて装着部82の容器2の首部20に対するねじ嵌めを緩めることで、外側フランジ8は、容器2に対して上方向に移動する。すると、内側フランジ7の平坦部70と外側フランジ8の縁部84の間隔が広がるので、揮散防止カバー9の蓋部94の抑えが解除される。これにより、揮散防止カバー9を揮散器10から容易に取り外すことができる。
【0054】
<変形例>
以上本発明の実施形態を示したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な態様での実施が可能である。
【0055】
例えば、上記では吸液芯を介して液状薬剤を揮散体に吸い上げる構成を示したが、揮散体に液状薬剤が吸収される限りこれに限定されるものではない。例えば、
図7の揮散器100に示すように、揮散体5Bの一部を容器内に設けて液状薬剤と直接接触させるようにしてもよい。この場合、揮散体5Bが吸液芯としても機能し液状薬剤を直接吸い上げて揮散させることができる。吸液芯が不要となるので、部品点数を削減することができ、組立も容易になる。
図7に示すように、本変形例では、揮散体揮散体5Bが容器2の底部24まで伸びているので、揮散体5Bは、容器2の首部22に内嵌された内キャップ(図示せず)と容器2の底部24とで位置決め固定することができる。
【0056】
また例えば、キャップの頂部、底部及びフィンの形状等は揮散体への開口が必要なだけ確保される限り、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、キャップの頂部は円錐形状としたが、これを円環形状として、上部から空気を取り込むようにしてもよい。また例えば、キャップのフィンの形状、配置、枚数も適宜設定可能である。例えば、
図8に示すように、キャップ6Bのフィン64Bを等間隔に7枚設け、各フィン64Bの側壁部640Bを軸方向に対して捻じれたねじれ面で構成してもよい。このようにフィンを構成することで、キャップ6Bの内部に向かう気流を軸方向に旋回させ、取り込んだ気流にさらなる乱れを生じさせることができる。当該変形例以外にも、例えば、フィンの側壁部を波状(山と谷を有する曲面)又は複数の段からなる階段状等にしてもよい。
【0057】
また例えば、揮散体の形状も適宜変更可能である。例えば、揮散体のフィンの側壁部の形状を、軸方向に対してねじれる又は波打つ形状などにしてもよいし、また、液状薬剤の蒸発に十分な表面積が確保される限り、揮散体にフィン自体を設けず、例えば円筒状にしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1、10、100……揮散器、2……容器、20……首部、22……胴部、220……谷部、224……山部、24……底部、3……吸液芯、4……フランジ、40……取付部、42……円環部、420……第1の載置部、422……第2の載置部、424、426、428……側壁、44……開口、5、5A、5B……揮散体、50……本体、52……凸部、520側壁部、522……端部、54……貫通孔、6/6A/6B……キャップ、60/60B……頂部、60A……装着部、62/62B……底部、64/64B……フィン、640/640B……側壁部、642/642B……端部、66……開口、7……内側フランジ、70……平坦部、72……嵌合部、74……漏斗部、76……管、8……外側フランジ、80溝部、82……装着部、84……縁部、9……揮散防止カバー、90……周壁、92……上面壁、94……蓋部