特許第6486665号(P6486665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486665
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】絶縁抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/18 20060101AFI20190311BHJP
   H02S 50/10 20140101ALI20190311BHJP
【FI】
   G01R27/18
   H02S50/10
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-237599(P2014-237599)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-99276(P2016-99276A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 健明
(72)【発明者】
【氏名】中沢 政博
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−127983(JP,A)
【文献】 特開2012−233843(JP,A)
【文献】 特開2012−26916(JP,A)
【文献】 特開2009−2857(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02466320(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R27/00−27/32
G01R31/00−31/36
H01L31/04−31/06
H02S10/00−10/40
H02S30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極間から直流電圧を出力する測定対象における接地部位に接続される第1測定用端子と、前記正極および前記負極のうちの一方の電極に接続される第2測定用端子と、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間に流れる電流の電流値を測定する電流測定部と、検査用直流電圧を生成して前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間から出力可能な電圧生成部と、処理部とを備え、
前記処理部は、前記第1測定用端子の前記接地部位への接続および前記第2測定用端子の前記一方の電極への接続を検出する接続検出処理を実行して、当該第1測定用端子および当該第2測定用端子がいずれも接続されていることを検出したときに、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第1電流値を取得すると共に、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第2電流値を取得し、当該取得した第1電流値および第2電流値と、前記検査用直流電圧の電圧値とに基づいて前記測定対象の絶縁抵抗値を算出する絶縁抵抗測定処理を実行する絶縁抵抗測定装置であって、
前記処理部は、前記接続検出処理において、第1検出処理および第2検出処理の双方を実行可能に構成され、
前記第1検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第1検出電流値として取得すると共に予め規定された第1しきい値電流値と比較して当該第1検出電流値が当該第1しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、
前記第2検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第2検出電流値として取得すると共に予め規定された第2しきい値電流値と比較して当該第2検出電流値が当該第2しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、
前記第1検出処理において前記第1検出電流値が前記第1しきい値電流値未満のときに前記第2検出処理を実行する絶縁抵抗測定装置。
【請求項2】
正極および負極間から直流電圧を出力する測定対象における接地部位に接続される第1測定用端子と、前記正極および前記負極のうちの一方の電極に接続される第2測定用端子と、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間に流れる電流の電流値を測定する電流測定部と、検査用直流電圧を生成して前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間から出力可能な電圧生成部と、処理部とを備え、
前記処理部は、前記第1測定用端子の前記接地部位への接続および前記第2測定用端子の前記一方の電極への接続を検出する接続検出処理を実行して、当該第1測定用端子および当該第2測定用端子がいずれも接続されていることを検出したときに、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第1電流値を取得すると共に、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第2電流値を取得し、当該取得した第1電流値および第2電流値と、前記検査用直流電圧の電圧値とに基づいて前記測定対象の絶縁抵抗値を算出する絶縁抵抗測定処理を実行する絶縁抵抗測定装置であって、
前記処理部は、前記接続検出処理において、第1検出処理および第2検出処理のうちのいずれか一方を実行可能に構成され、
前記第1検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第1検出電流値として取得すると共に予め規定された第1しきい値電流値と比較して当該第1検出電流値が当該第1しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、
前記第2検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第2検出電流値として取得すると共に予め規定された第2しきい値電流値と比較して当該第2検出電流値が当該第2しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出する絶縁抵抗測定装置。
【請求項3】
前記第2測定用端子は、等価的に基準電位に規定され、
前記電圧生成部は、生成した前記検査用直流電圧を正側出力端子および負側出力端子間から出力可能に構成され、
前記第1測定用端子と前記正側出力端子との間に接続された抵抗値RLIMの電流制限抵抗と、
前記正側出力端子と前記基準電位との間に接続された抵抗値RDIVの分圧抵抗を有して当該分圧抵抗に印加される電圧を分圧して出力する電圧分圧部と、
前記第1測定用端子に一端が接続された抵抗値RDCHの放電抵抗と、
前記負側出力端子および前記放電抵抗の他端のうちの任意の一方を前記基準電位に選択的に接続する切替接続部とを備え、
前記各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHは、下記式(a)を満たすように予め規定され、
前記処理部は、前記絶縁抵抗測定処理において、
前記切替接続部を制御して前記放電抵抗の前記他端を前記基準電位に接続すると共に前記電流測定部で測定される前記第1電流値としての電流値Ioffを取得し、かつ前記電圧分圧部から出力される電圧に基づいて前記基準電位を基準とする前記第1測定用端子の電圧の電圧値Voffを測定する第1測定処理と、
前記切替接続部を制御して前記負側出力端子を前記基準電位に接続すると共に前記電圧生成部を制御して前記検査用直流電圧を生成させ、前記電流測定部で測定される前記第2電流値としての電流値Ionを取得し、かつ前記電圧分圧部から出力される電圧に基づいて前記分圧抵抗に印加される前記電圧の電圧値Vonを測定する第2測定処理と、
下記式(b)に基づいて前記測定対象についての前記一方の電極と前記接地部位との間の絶縁抵抗値Rを算出する抵抗算出処理とを実行する請求項1または2記載の絶縁抵抗測定装置。
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM ・・・(a)
=(Von−Voff−Ion×RLIM)/(Ion−Ioff) ・・・(b)
【請求項4】
前記電圧生成部の出力抵抗値がRTHに規定され、
前記出力抵抗値RTHおよび前記各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHは、下記式(c)を満たすように予め規定されている請求項記載の絶縁抵抗測定装置。
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM+RDIV//RTH ・・・(c)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極および負極間から直流電圧を出力する測定対象における一方の電極と接地部位との間に接続されて、検査用直流電圧を測定対象に出力していないときに測定される電気量(電流や電圧)と、検査用直流電圧を測定対象に出力しているときに測定される電気量とに基づいて測定対象における一方の電極と接地部位との間の絶縁抵抗値を測定する絶縁抵抗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の絶縁抵抗測定装置として、本願出願人は下記の特許文献1に開示された絶縁抵抗測定装置を既に提案している。この絶縁抵抗測定装置は、測定対象としての太陽光発電ユニットの絶縁抵抗値(一対の出力端子のうちの一方の出力端子と接地部位との間の絶縁抵抗値)を、一対の出力端子を短絡することなく測定可能に構成されている。
【0003】
この絶縁抵抗測定装置は、まず、太陽光発電ユニットの一対の出力端子のうちのいずれか一方の出力端子と、接地部位とに接続される。次いで、この状態において絶縁抵抗測定装置は、開始スイッチが操作されると、検査処理を実行して太陽光発電ユニットの一方の出力端子と接地部位との間の絶縁状態を検査する。次いで、絶縁抵抗測定装置は、太陽光発電ユニットに対して検査用電圧を印加(出力)して、この状態において太陽光発電ユニットの一方の出力端子と接地部位との間に流れる電流の電流値(第1の電流値)を測定する。続いて、絶縁抵抗測定装置は、太陽光発電ユニットに対する検査用電圧の印加(出力)を停止し、この状態において太陽光発電ユニットの一方の出力端子と接地部位との間に流れる電流の電流値(第2の電流値)を測定する。最後に、絶縁抵抗測定装置は、第1の電流値から第2の電流値を差し引き、この差し引きによって得られる電流値(太陽光発電ユニットによる太陽光発電によって生じた電圧の影響を除外した電流値)と、検査用電圧の電圧値とに基づいて、太陽光発電ユニットの絶縁抵抗値を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−127983号公報(第7−8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の絶縁抵抗測定装置には、以下のような改善すべき課題が存在している。すなわち、この絶縁抵抗測定装置では、開始スイッチが操作されたときには、上記したような2つの電流値(第1の電流値および第2の電流値)の測定を含む処理を無条件に実行する。したがって、この絶縁抵抗測定装置には、絶縁抵抗測定装置の太陽光発電ユニットへの接続が完了する前に開始スイッチが操作されたとき(つまり、開始スイッチが不適切なタイミングで操作されたとき)には、上記の2つの電流値の測定において正しくない電流値を測定することになるため、太陽光発電ユニットの絶縁抵抗値を正確に演算(測定)することができないという改善すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を改善するためになされたものであり、開始スイッチの操作タイミングに拘わらず測定対象の正確な絶縁抵抗値を測定し得る絶縁抵抗測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項記載の絶縁抵抗測定装置は、正極および負極間から直流電圧を出力する測定対象における接地部位に接続される第1測定用端子と、前記正極および前記負極のうちの一方の電極に接続される第2測定用端子と、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間に流れる電流の電流値を測定する電流測定部と、検査用直流電圧を生成して前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間から出力可能な電圧生成部と、処理部とを備え、前記処理部は、前記第1測定用端子の前記接地部位への接続および前記第2測定用端子の前記一方の電極への接続を検出する接続検出処理を実行して、当該第1測定用端子および当該第2測定用端子がいずれも接続されていることを検出したときに、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第1電流値を取得すると共に、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第2電流値を取得し、当該取得した第1電流値および第2電流値と、前記検査用直流電圧の電圧値とに基づいて前記測定対象の絶縁抵抗値を算出する絶縁抵抗測定処理を実行する絶縁抵抗測定装置であって、前記処理部は、前記接続検出処理において、第1検出処理および第2検出処理の双方を実行可能に構成され、前記第1検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第1検出電流値として取得すると共に予め規定された第1しきい値電流値と比較して当該第1検出電流値が当該第1しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、前記第2検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第2検出電流値として取得すると共に予め規定された第2しきい値電流値と比較して当該第2検出電流値が当該第2しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、前記第1検出処理において前記第1検出電流値が前記第1しきい値電流値未満のときに前記第2検出処理を実行する。
【0009】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置は、正極および負極間から直流電圧を出力する測定対象における接地部位に接続される第1測定用端子と、前記正極および前記負極のうちの一方の電極に接続される第2測定用端子と、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間に流れる電流の電流値を測定する電流測定部と、検査用直流電圧を生成して前記第1測定用端子および前記第2測定用端子間から出力可能な電圧生成部と、処理部とを備え、前記処理部は、前記第1測定用端子の前記接地部位への接続および前記第2測定用端子の前記一方の電極への接続を検出する接続検出処理を実行して、当該第1測定用端子および当該第2測定用端子がいずれも接続されていることを検出したときに、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第1電流値を取得すると共に、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値としての第2電流値を取得し、当該取得した第1電流値および第2電流値と、前記検査用直流電圧の電圧値とに基づいて前記測定対象の絶縁抵抗値を算出する絶縁抵抗測定処理を実行する絶縁抵抗測定装置であって、前記処理部は、前記接続検出処理において、第1検出処理および第2検出処理のうちのいずれか一方を実行可能に構成され、前記第1検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧の生成を停止させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第1検出電流値として取得すると共に予め規定された第1しきい値電流値と比較して当該第1検出電流値が当該第1しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出し、前記第2検出処理では、前記電圧生成部に対して前記検査用直流電圧を生成させた状態において前記電流測定部で測定される前記電流の前記電流値を第2検出電流値として取得すると共に予め規定された第2しきい値電流値と比較して当該第2検出電流値が当該第2しきい値電流値以上のときに、前記第1測定用端子および前記第2測定用端子がいずれも接続されていると検出する。
【0010】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置は、請求項1または2記載の絶縁抵抗測定装置において、前記第2測定用端子は、等価的に基準電位に規定され、前記電圧生成部は、生成した前記検査用直流電圧を正側出力端子および負側出力端子間から出力可能に構成され、前記第1測定用端子と前記正側出力端子との間に接続された抵抗値RLIMの電流制限抵抗と、前記正側出力端子と前記基準電位との間に接続された抵抗値RDIVの分圧抵抗を有して当該分圧抵抗に印加される電圧を分圧して出力する電圧分圧部と、前記第1測定用端子に一端が接続された抵抗値RDCHの放電抵抗と、前記負側出力端子および前記放電抵抗の他端のうちの任意の一方を前記基準電位に選択的に接続する切替接続部とを備え、前記各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHは、下記式(a)を満たすように予め規定され、前記処理部は、前記絶縁抵抗測定処理において、前記切替接続部を制御して前記放電抵抗の前記他端を前記基準電位に接続すると共に前記電流測定部で測定される前記第1電流値としての電流値Ioffを取得し、かつ前記電圧分圧部から出力される電圧に基づいて前記基準電位を基準とする前記第1測定用端子の電圧の電圧値Voffを測定する第1測定処理と、前記切替接続部を制御して前記負側出力端子を前記基準電位に接続すると共に前記電圧生成部を制御して前記検査用直流電圧を生成させ、前記電流測定部で測定される前記第2電流値としての電流値Ionを取得し、かつ前記電圧分圧部から出力される電圧に基づいて前記分圧抵抗に印加される前記電圧の電圧値Vonを測定する第2測定処理と、下記式(b)に基づいて前記測定対象についての前記一方の電極と前記接地部位との間の絶縁抵抗値Rを算出する抵抗算出処理とを実行する。
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM ・・・(a)
=(Von−Voff−Ion×RLIM)/(Ion−Ioff) ・・・(b)
【0011】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置は、請求項記載の絶縁抵抗測定装置において、前記電圧生成部の出力抵抗値がRTHに規定され、前記出力抵抗値RTHおよび前記各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHは、下記式(c)を満たすように予め規定されている。
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM+RDIV//RTH ・・・(c)
【発明の効果】
【0014】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置では、処理部が、接続検出処理を実行して、第1測定用端子および第2測定用端子がいずれも測定対象に接続されていることを検出したときに、測定対象の絶縁抵抗値を測定(算出)する絶縁抵抗測定処理を実行する。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、絶縁抵抗測定装置の測定対象への接続が完了する前に、処理部が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない第1電流値および第2電流値に基づいて正しくない絶縁抵抗値を測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができる。また、この絶縁抵抗測定装置では、処理部が、接続検出処理において、第1検出処理および第2検出処理の双方をこの順で実行する。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、例えば、測定対象から出力される直流電圧のような低い電圧(一例として太陽光発電ユニットから出力される直流電圧)に起因して流れる電流の第1検出電流値が第1しきい値電流値以上となるような極めて低い抵抗値で測定対象が第1測定用端子および第2測定用端子に接続されている場合だけでなく、検査用直流電圧のようなある程度高い電圧に起因して流れる電流の第2検出電流値が第2しきい値電流値以上となるような抵抗値(絶縁抵抗値の測定を阻害するほどの大きさではない抵抗値)で測定対象が第1測定用端子および第2測定用端子に接続されている場合についても、絶縁抵抗値の測定を可能にすることができる。
【0015】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置では、処理部が、接続検出処理を実行して、第1測定用端子および第2測定用端子がいずれも測定対象に接続されていることを検出したときに、測定対象の絶縁抵抗値を測定(算出)する絶縁抵抗測定処理を実行する。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、絶縁抵抗測定装置の測定対象への接続が完了する前に、処理部が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない第1電流値および第2電流値に基づいて正しくない絶縁抵抗値を測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができる。また、この絶縁抵抗測定装置では、例えば極めて低い抵抗値で測定対象が第1測定用端子および第2測定用端子に接続されている場合についてのみ絶縁抵抗値の測定を実施する構成でもよいときには、接続検出処理において第1検出処理だけを実行する構成とする。また、極めて低い抵抗値で測定対象が第1測定用端子および第2測定用端子に接続されているか否かに拘わらす、絶縁抵抗値の測定を阻害するほどの大きさではない抵抗値で測定対象が第1測定用端子および第2測定用端子に接続されている場合に絶縁抵抗値の測定を実施する構成でもよいときには、接続検出処理において第2検出処理だけを実行する構成とする。
【0016】
したがって、これらのいずれの構成を採用した絶縁抵抗測定装置でも、絶縁抵抗測定装置の測定対象への接続が完了する前に、処理部が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない第1電流値および第2電流値に基づいて正しくない絶縁抵抗値を測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができる。
【0017】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置では、電流制限抵抗、電圧分圧部および放電抵抗の各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHが上記式(a)を満たすように予め規定された状態で、つまり、放電抵抗が接続されている状態において測定対象の直流電圧に起因して流れる電流の電流値と、放電抵抗が切り離されている状態において測定対象の直流電圧に起因して流れる電流の電流値とが揃えられた状態で、処理部が、上記式(b)に基づいて絶縁抵抗値Rを算出する。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、放電抵抗を内蔵する構成においても、絶縁抵抗測定装置の測定対象への接続が完了する前に、処理部が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない第1電流値および第2電流値に基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止しつつ、絶縁抵抗値Rを精度良く算出することができる。
【0018】
請求項記載の絶縁抵抗測定装置では、電圧生成部の出力抵抗値RTH、および電流制限抵抗、電圧分圧部および放電抵抗の各抵抗値RLIM,RDIV,RDCHが上記式(c)を満たすように予め規定された状態で、つまり、放電抵抗が接続されている状態において測定対象の直流電圧に起因して流れる電流の電流値と、放電抵抗が切り離され、かつ検査用直流電圧が生成されている状態において測定対象の直流電圧に起因して流れる電流の電流値とが揃えられた状態で、処理部が、上記式(b)に基づいて絶縁抵抗値Rを算出する。したがって、この絶縁抵抗測定装置によれば、放電抵抗を内蔵する構成においても、絶縁抵抗測定装置の測定対象への接続が完了する前に、処理部が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない第1電流値および第2電流値に基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止しつつ、絶縁抵抗値Rを精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】絶縁抵抗測定装置1の構成図である。
図2】正極Pと接地極Eから内部を見たときの太陽光発電ユニット2の等価回路である。
図3】検査用直流電圧Vmを停止させ、かつ放電抵抗16を接続した状態での絶縁抵抗測定装置1および太陽光発電ユニット2の等価回路である。
図4】検査用直流電圧Vmを出力させ、かつ放電抵抗16を切り離した状態での絶縁抵抗測定装置1および太陽光発電ユニット2の等価回路である。
図5】メインルーチン50のフローチャートである。
図6】接続検出処理60のフローチャートである。
図7】接続断検出処理70のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、絶縁抵抗測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、絶縁抵抗測定装置の構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示す絶縁抵抗測定装置としての絶縁抵抗測定装置1は、第1測定用端子11、第2測定用端子12、電圧生成部13、電流制限抵抗14、電圧分圧部15、放電抵抗16、切替接続部17、電流測定部18、記憶部19、処理部20および操作部21を備えて、測定対象2についての絶縁抵抗値Rを測定する。また、本例での絶縁抵抗測定装置1は、電圧生成部13の出力回路を保護するためのサーミスタ(一例として、正温度係数サーミスタ)31を備えているが、省略することもできる。
【0023】
また、本例の絶縁抵抗測定装置1では、正極および負極間から直流電圧を出力するものを測定対象2とする。以下では、この測定対象2の一例として、正極Pおよび負極N間から直流電圧Vp(発明の理解を容易にするため、この電圧の電圧値もVpで表すものとする)を出力する太陽光発電ユニットを挙げて説明する(以下、「太陽光発電ユニット2」ともいう)。
【0024】
この太陽光発電ユニット2では、図1に示すように、接地部位としての接地極Eが接地される(接地電位に接続される)。また、この太陽光発電ユニット2では、正極Pと接地極Eとの間の抵抗値(未知)をR1とし、負極Nと接地極Eとの間の抵抗値(未知)をR2としたときに、正極Pと接地極Eから見た太陽光発電ユニット2の等価回路は、図2に示すように表される。つまり、この等価回路は、太陽光発電によって太陽光発電ユニット2から出力される電圧(直流電圧)をVpとしたときに、正極Pと接地極Eとの間に直流電圧Vpと絶縁抵抗値Rとが直列に接続された回路となる。なお、絶縁抵抗値Rは、上記した各絶縁抵抗値R1,R2の並列合成抵抗値(R1//R2)となる。また、この等価回路は、負極Nと接地極Eから見た太陽光発電ユニット2の等価回路と同じである。なお、記号「//」は、その両側に記載された2つの抵抗値の並列合成抵抗値を示す記号を意味する。
【0025】
第1測定用端子11は、太陽光発電ユニット2における接地部位EにプローブPL1を介して接続される。第2測定用端子12は、太陽光発電ユニット2における正極Pおよび負極Nのうちの一方の電極(図1中では正極P)にプローブPL2を介して接続される。なお、第1測定用端子11にプローブPL1を含めて、これら全体を第1測定用端子11とみなすこともでき、また第2測定用端子12にプローブPL2を含めて、これら全体を第2測定用端子12とみなすこともできる。また、第2測定用端子12は、電流測定部18を介して絶縁抵抗測定装置1内の基準電位に規定された部位(内部グランドG)に接続される)。電流測定部18は、一般的に内部抵抗が極めて小さい構成を有している。これにより、第2測定用端子12は、等価的に内部グランドGに接続される(基準電位に規定される)。
【0026】
電圧生成部13は、処理部20によって制御されることにより、検査用直流電圧Vm(発明の理解を容易にするため、この電圧の電圧値もVmで表すものとする)を生成して、正側出力端子13aおよび負側出力端子13b間から出力可能に構成されている。本例では一例として、電圧生成部13は、内部グランドGから電気的に分離された出力回路(フローティング回路として構成された回路)で検査用直流電圧Vmを生成し、この出力回路の一対の出力端子としての正側出力端子13aおよび負側出力端子13bから出力する。また、負側出力端子13bは、切替接続部17のa端子に接続されている。この構成により、電圧生成部13は、生成した検査用直流電圧Vmを、負側出力端子13bの電位(切替接続部17のa端子の電位)を基準とした電圧として両出力端子13a,13b間から出力する。
【0027】
電流制限抵抗14は、第1測定用端子11と正側出力端子13aとの間に接続されている。また、電流制限抵抗14は、抵抗値RLIM(既知)に規定されている。この場合、本例の絶縁抵抗測定装置1は、上記したように電圧生成部13を保護するためのサーミスタ31(抵抗値RTH(既知))を備えているため、電流制限抵抗14における電圧生成部13側の一端は、このサーミスタ31を介して正側出力端子13aに出力される。なお、サーミスタ31を省略したときには、電圧生成部13側の一端は、正側出力端子13aに直接接続される。
【0028】
電圧分圧部15は、正側出力端子13a(本例ではサーミスタ31を備えているため、サーミスタ31と電流制限抵抗14との接続点)と内部グランドGとの間に接続された分圧抵抗(図1では一例として直列接続された抵抗値がそれぞれ既知の2つの抵抗15a,15b)を有して、この分圧抵抗に印加される電圧を分圧して分圧電圧Vdi(発明の理解を容易にするため、この電圧の電圧値もVdiで表すものとする)として出力する。また、この分圧抵抗は、全体の抵抗値(抵抗15a,15bの直列合成抵抗値)が抵抗値RDIV(既知)に規定されている。
【0029】
放電抵抗16は、一端が第1測定用端子11に接続され、他端が切替接続部17のb端子に接続されている。また、放電抵抗16は、抵抗値RDCH(既知)に規定されている。切替接続部17は、a端子、b端子およびc端子を備え、a端子およびb端子のうちの任意の一方をc端子に接続可能に構成されている。また、c端子は内部グランドGに接続されている。この構成により、切替接続部17は、a端子に接続されている負側出力端子13bおよびb端子に接続されている放電抵抗16の他端のうちの任意の一方を内部グランドG(基準電位)に選択的に接続する。
【0030】
電流測定部18は、一対の入力端子を備え、本例では一例として、一方の入力端子が第2測定用端子12に接続され、他方の入力端子が内部グランドGに接続されることにより、第2測定用端子12と内部グランドGとの間に接続されている。また、電流測定部18は、一般的な電流計と同様にして、一対の入力端子間の抵抗値が極めて小さい状態(ゼロΩに近い状態)に構成されて、第1測定用端子11および第2測定用端子12に太陽光発電ユニット2が接続されている状態において両測定用端子11,12間に流れる電流Iの電流値(後述するIoff,Ion)を正確に測定する。また、電流測定部18は、第1測定用端子11および第2測定用端子12に太陽光発電ユニット2が正常な状態で接続されているか否かを検出するために、両測定用端子11,12間に流れる電流Iの電流値(後述するId1,Id2)を正確に測定する。また、電流測定部18は、測定した電流値を示す電流データDiを処理部20に出力する。
【0031】
記憶部19は、半導体メモリやハードディスク装置で構成されて、処理部20のための動作プログラムが予め記憶されている。この動作プログラムには、太陽光発電ユニット2の絶縁抵抗値Rを測定(演算)するための式(b)としての下記の式(1)が、既知である抵抗値RLIM,RDIV,RDCH,RTHおよび抵抗15a,15bの各抵抗値と共に含まれている。また、記憶部19には、接続検出の際に使用される第1しきい値電流値Ith1および第2しきい値電流値Ith2が記憶されている。また、記憶部19には、処理部20で測定した電圧値や電流値や抵抗値などが記憶される。
=(Von−Voff−Ion×RLIM)/(Ion−Ioff) ・・・(1)
【0032】
以下、この式(1)について、図3,4に示す絶縁抵抗測定装置1と太陽光発電ユニット2の等価回路に基づいて説明する。なお、図3は、放電抵抗16の他端が切替接続部17を介して内部グランドGに接続された状態で、かつ絶縁抵抗測定装置1から太陽光発電ユニット2への検査用直流電圧Vmの出力を停止しているとき(Vmがoffのとき)の等価回路である。なお、電圧生成部13の負側出力端子13bは切替接続部17によって内部グランドGから切り離されて、フローティング状態となっている。このため、この等価回路には、電圧生成部13の構成は含まれていない。
【0033】
また、図4は、放電抵抗16の他端が切替接続部17によって内部グランドGから切り離され、一方、電圧生成部13の負側出力端子13bが切替接続部17によって内部グランドGに接続された状態において、電圧生成部13から太陽光発電ユニット2へ検査用直流電圧Vmを出力しているとき(Vmがonのとき)の等価回路である。このため、この等価回路には、検査用直流電圧Vmおよびサーミスタ31が含まれている。
【0034】
図3の等価回路から、電流測定部18で測定される電流Iの電流値(Vmがoffのときのこの等価回路での第1電流値としての電流値をIoffとする)を求めると、下記式(2)のように表される。なお、この場合の電流値Ioffは、太陽光発電によって太陽光発電ユニット2から出力される直流電圧Vpに起因して、太陽光発電ユニット2および絶縁抵抗測定装置1に流れる電流Ip1の電流値Ip1となる。
Ioff=Ip1=Vp/[R+RDCH//(RLIM+RDIV)] ・・・(2)
【0035】
また、下記式(3)は、この図3の等価回路での複数の電圧成分に着目して得られる式である。これらの電圧成分のうちの電圧値Voffは、この等価回路の状態において、絶縁抵抗測定装置1の処理部20が、電圧分圧部15から出力される分圧電圧Vdiの電圧値Vdiと、電圧分圧部15を構成する抵抗15a,15bの各抵抗値と、電流制限抵抗14の抵抗値RLIMとに基づいて算出する電流制限抵抗14と電圧分圧部15の直列接続回路の両端間の電圧値(内部グランドGの電位(基準電位)を基準とする電圧値)である。なお、この電圧値Voffは、第1測定用端子11の電圧値でもある。
Vp−R×Ip1=−Voff ・・・(3)
【0036】
図4の等価回路には、直流電圧Vpに起因して流れる電流Ip2(発明の理解を容易にするため、この電流の電流値もIp2で表すものとする)と、検査用直流電圧Vmに起因して流れる電流Im(発明の理解を容易にするため、この電流の電流値もImで表すものとする)とが流れる。これにより、電流測定部18で測定される電流Iの電流値(検査用直流電圧Vmがonのときのこの等価回路での第2電流値としての電流値をIonとする)は、これら2つの電流Ip2,Imの合成電流値(Ip2+Im)となる。
【0037】
この場合、電流値Ip2は、以下の式(4)で表される。
Ip2=Vp/(R+RLIM+RDIV//RTH) ・・・(4)
【0038】
また、下記式(5)は、この図4の等価回路での複数の電圧成分に着目して得られる式である。これらの電圧成分のうちの電圧値Vonは、この等価回路の状態において、絶縁抵抗測定装置1の処理部20が、電圧分圧部15から出力される分圧電圧Vdiの電圧値Vdiと、電圧分圧部15を構成する抵抗15a,15bの各抵抗値(電圧分圧部15の分圧値)とに基づいて算出する電圧分圧部15の両端間電圧(電圧分圧部15への印加電圧)の電圧値である。
Von+Vp=Ion×(R+RLIM) ・・・(5)
【0039】
ところで、図3,4に示すそれぞれの等価回路において、太陽光発電によって太陽光発電ユニット2から出力される直流電圧Vpに起因して流れる各電流Ip1,Ip2は同じ値(Ip1=Ip2)になるように揃えられなければならない。この場合、電流Ip1,Ip2についての上記式(2),(4)に着目すると、それぞれの分子がVpで共通であることから、それぞれの分母が同一となることで、各電流Ip1,Ip2が同一になる。そこで、上記式(2),(4)のそれぞれの分母を同一にするという条件から、下記式(6)が成り立ち、この式(6)から最終的に式(c)としての下記式(7)が導かれる。
[R+RDCH//(RLIM+RDIV)]=(R+RLIM+RDIV//RTH) ・・・(6)
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM+RDIV//RTH ・・・(7)
【0040】
本例の絶縁抵抗測定装置1では、絶縁抵抗測定装置1を構成する各電流制限抵抗14、電圧分圧部15、放電抵抗16およびサーミスタ31の各抵抗値RLIM,RDIV,RDCH,RTHが上記の式(7)を満たすように予め規定されることで、各電流Ip1,Ip2が同一になるように設定されている。
【0041】
また、上記した2つの式(3),(5)に着目して、各式に含まれている直流電圧Vpを消去することにより、下記の式(8)が導かれ、電流値Ip1が電流値Ioffであることから、この式(8)中の電流値Ip1を電流値Ioffに置き換えることで、絶縁抵抗値Rを表す上記の式(1)が導出される。
=(Von−Voff−Ion×RLIM)/(Ion−Ip1) ・・・(8)
【0042】
また、この式(8)の分母としての(Ion−Ip1)に着目すると、上記したように電流値Ionは各電流Ip2,Imの合成電流値(Ip2+Im)であり、しかも、この絶縁抵抗測定装置1では、上記したように上記の式(7)を満たすように各抵抗値RLIM,RDIV,RDCH,RTHが予め規定されることで、各電流Ip1,Ip2が同一になるように設定されている。したがって、本例の絶縁抵抗測定装置1では、電流値Ionから電流値Ip1を減算することで、式(8)の分母、すなわち式(1)の分母は電流値Imのみとなることから、太陽光発電によって太陽光発電ユニット2から出力される直流電圧Vpに起因して、太陽光発電ユニット2および絶縁抵抗測定装置1に流れる各電流Ip1,Ip2の影響がキャンセル可能になっている。
【0043】
処理部20は、A/D変換器およびCPUなどを含むコンピュータで構成されて、記憶部19に記憶されている動作プログラムに従って動作することで、測定対象2の絶縁抵抗値Rxを測定する図5に示すメインルーチン50(後述する開始指示検出処理、接続検出処理60および絶縁抵抗測定処理などを含むルーチン)を実行する。操作部21には不図示の測定開始キー(開始スイッチ)が配設されている。また、操作部21は、この測定開始キーに対する操作が行われる都度、処理部20に対する測定開始信号S1の出力と、この測定開始信号S1の出力の停止とを繰り返すように構成されている。
【0044】
次いで、太陽光発電ユニット2についての絶縁抵抗値Rを測定する絶縁抵抗測定装置1の動作について説明する。
【0045】
この絶縁抵抗測定装置1では、起動状態に移行したときに処理部20は、まず、切替接続部17に対する制御を実行して、実線で示すようにb端子をc端子に接続することで、放電抵抗16の他端を内部グランドGに接続し、また、電圧生成部13に対する制御を実行して、検査用直流電圧Vmの生成を停止させる。次いで、図5に示すメインルーチン50を開始する。
【0046】
このメインルーチン50では、処理部20は、最初に、操作部21から測定開始信号S1が出力されているか否かを検出する開始指示検出処理を実行する(ステップ51)。処理部20は、この開始指示検出処理において測定開始信号S1の出力を検出したときには、接続検出処理60を実行する。この構成により、オペレータは、絶縁抵抗測定装置1が接続検出処理60を開始していない状態において、操作部21の測定開始キーを操作することにより、絶縁抵抗測定装置1に対してこの処理を開始させることが可能になっている。この接続検出処理60は、図5に示すように、絶縁抵抗値Rを測定するための後述の抵抗算出処理(ステップ54)の実行に先立って実行される。
【0047】
この接続検出処理60では、図6に示すように、処理部20は、最初に、第1検出処理を実行する。この第1検出処理では、処理部20は、まず、接続検出処理60の実行を開始してからの経過時間tpの計測を開始すると共に、電流測定部18から出力されている電流データDiを入力して、この入力した電流データDiに基づいて、電流測定部18において電流Iが検出されているか否か(電流測定部18に電流Iが流れているか否か)を判別する(ステップ61)。
【0048】
具体的には、処理部20は、このステップ61では、電流データDiに基づいて、電流Iの電流値Id1(検査用直流電圧Vmの生成を停止させているときの第1検出電流値。以下、第1検出電流値Id1ともいう)を測定(算出)して、記憶部19から読み出した第1しきい値電流値Ith1と比較する。処理部20は、この比較の結果、第1検出電流値Id1が第1しきい値電流値Ith1以上のときには、電流測定部18において電流Iが検出されている(電流測定部18に電流Iが流れている)と判別する。
【0049】
この場合、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されているときには、図3に示すように、絶縁抵抗測定装置1と太陽光発電ユニット2とに亘り、かつ太陽光発電ユニット2からの直流電圧Vpおよび絶縁抵抗測定装置1の電流測定部18を含む電流経路が形成される。この電流経路において電流測定部18には直流電圧Vpに起因した電流Ip1が流れ得るが、この電流Ip1の電流値(上記の第1検出電流値Id1)は、太陽光発電ユニット2の接続状態が良好なときには、接続状態が不良なときや、接続されていない状態のときと比較して、大きくなる。この絶縁抵抗測定装置1では、第1しきい値電流値Ith1は、接続状態が不良なときの電流Ip1の電流値よりも若干大きな電流値(例えば、150nA程度)に予め規定されている。
【0050】
これにより、処理部20は、このステップ61において、電流Ip1が検出されている(電流測定部18に電流Ip1が流れている)と判別したときには、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が正常に接続されていると判別して、この第1検出処理、および接続検出処理60を完了させる。
【0051】
一方、処理部20は、このステップ61において、電流Ip1が検出されていない(電流測定部18に電流Ip1が流れていないか、流れていたとしても電流値が極めて小さい)と判別したときには、計測している経過時間tpが予め規定された一定時間T1(例えば、1秒程度)以上となったか否か(つまり、ステップ61の処理を開始してからこの一定時間T1が経過したか否か)を判別する処理(ステップ62)を実行しつつ、このステップ61を繰り返す。
【0052】
処理部20は、このステップ61,62を繰り返し実行している間に、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が正常に接続されることで、ステップ61において電流Ip1が検出されたと判別したときには、この第1検出処理、および接続検出処理60を完了させる。一方、処理部20は、このステップ61,62を繰り返し実行している間に、ステップ61において電流Ip1が検出されたと判別することなく、経過時間tpが一定時間T1以上になったとステップ62において判別したときには、第1検出処理を完了させて、第2検出処理を開始する。
【0053】
この第2検出処理では、処理部20は、検査用直流電圧Vmを出力する処理を実行する(ステップ63)。この処理では、処理部20は、まず、切替接続部17に対する制御を実行して、破線で示すようにa端子をc端子に接続することで、電圧生成部13の負側出力端子13bを内部グランドGに接続する。これにより、放電抵抗16は、内部グランドGから切り離される。次いで、処理部20は、電圧生成部13に対する制御を実行して、検査用直流電圧Vmを生成させる。これにより、電圧生成部13の正側出力端子13aおよび負側出力端子13b間から、内部グランドGの電位(基準電位)を基準とする検査用直流電圧Vm(太陽光発電ユニット2の直流電圧Vpよりも高電圧)が第1測定用端子11と第2測定用端子12との間に出力される。
【0054】
続いて、処理部20は、電流測定部18から出力されている電流データDiを入力して、この入力した電流データDiに基づいて、電流測定部18において電流Iが検出されているか否か(電流測定部18に電流Iが流れているか否か)を判別する(ステップ64)。
【0055】
具体的には、処理部20は、このステップ64では、電流データDiに基づいて、電流Iの電流値Id2(検査用直流電圧Vmを生成を停止させているときの第2検出電流値。以下、第2検出電流値Id2ともいう)を測定(算出)して、記憶部19から読み出した第2しきい値電流値Ith2と比較する。なお、本例では一例として、第2しきい値電流値Ith2は、第1しきい値電流値Ith1と同じ値に規定されているが、異なる値に規定することもできる。処理部20は、この比較の結果、第2検出電流値Id2が第2しきい値電流値Ith2以上のときには、電流測定部18において電流Iが検出されている(電流測定部18に電流Iが流れている)と判別する。
【0056】
この場合、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されているときには、図4に示すように、絶縁抵抗測定装置1と太陽光発電ユニット2とに亘り、かつ太陽光発電ユニット2からの直流電圧Vp、絶縁抵抗測定装置1からの検査用直流電圧Vmおよび電流測定部18を含む電流経路が形成される。この電流経路において電流測定部18には、直流電圧Vpに起因した電流Ip2に加えて、検査用直流電圧Vmに起因した電流Imが流れ得る。
【0057】
このため、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されていないときには、そもそも電流Ip2および電流Imのいずれも流れないため、電流データDiに基づいて算出される電流Iの第2検出電流値Id2は第2しきい値電流値Ith2以上となることはないが、第1測定用端子11および第2測定用端子12の太陽光発電ユニット2との接触抵抗の抵抗値が、極めて良好な接触状態(太陽光発電ユニット2の直流電圧Vpのような低い電圧に起因して流れる電流Iの第1検出電流値Id1であっても第1しきい値電流値Ith1以上となるような極めて低い抵抗値となる状態)のときの抵抗値よりも若干大きいために第1検出処理では電流Ip1が検出されていないと判別されたが、絶縁抵抗値Rの測定を阻害するほどの大きさではない場合には、算出される上記の第2検出電流値Id2が第2しきい値電流値Ith2以上となる場合がある。
【0058】
この絶縁抵抗測定装置1では、処理部20は、このように第2検出電流値Id2が第2しきい値電流値Ith2以上となっているときにも、電流Iが検出されている(電流測定部18に電流Iが流れている)と判別する。つまり、処理部20は、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が絶縁抵抗値Rの測定可能な状態で接続されていると判別して、この第2検出処理を完了させる。本例では、処理部20は、この第2検出処理の実行を開始したときには、ステップ64において、電流Iが検出されていると判別するまで(電流Iの第2検出電流値Id2が第2しきい値電流値Ith2以上となるまで)、この第2検出処理を継続する。
【0059】
処理部20は、第2検出処理を完了させた後(つまり、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が絶縁抵抗値Rの測定可能な状態で接続されていることが検出できた後)は、電圧生成部13に対する制御を実行して、検査用直流電圧Vmの生成を停止させ(ステップ65)、次いで、放電処理(ステップ66)を実行する。この放電処理では、処理部20は、切替接続部17に対する制御を実行して、実線で示すようにb端子をc端子に接続することで、電圧生成部13の負側出力端子13bを内部グランドGから切り離すと共に放電抵抗16を内部グランドGに接続する。これにより、絶縁抵抗測定装置1および太陽光発電ユニット2は、図4に示す等価回路の状態から図3に示す等価回路の状態に移行する。
【0060】
一般的な太陽光発電ユニット2では、正極Pと接地極Eとの間、および負極Nと接地極Eとの間には容量成分がそれぞれ存在している。したがって、上記したステップ63において太陽光発電ユニット2に出力された検査用直流電圧Vmにより、これらの容量成分が充電されている。これらの容量成分が充電されたままでは、絶縁抵抗値Rの正確な測定に好ましくない影響を与えるが、上記したように放電抵抗16が内部グランドGに接続されることで、第1測定用端子11が放電抵抗16を介して内部グランドGに接続されるため、太陽光発電ユニット2の容量成分が放電されて、太陽光発電ユニット2は絶縁抵抗値Rの正確な測定が可能な状態に移行する。処理部20は、ステップ66の状態を予め規定された時間だけ維持した後に(つまり、太陽光発電ユニット2の容量成分が十分に放電された後に)、接続検出処理60を完了させて、図5に示すメインルーチン50に戻る。
【0061】
メインルーチン50に戻った後に処理部20は、第1測定処理を実行する(ステップ52)。この第1測定処理では、処理部20は、電流測定部18から出力されている電流データDiを入力すると共に、この入力した電流データDiに基づいて、太陽光発電によって太陽光発電ユニット2から出力されている直流電圧Vpに起因して、太陽光発電ユニット2および絶縁抵抗測定装置1に流れる(つまり、電流測定部18に流れる)電流Iの電流値(上記した図3に示す等価回路での電流値Ioff)を測定(算出)して、記憶部19に記憶させる。
【0062】
また、処理部20は、電圧分圧部15から出力される分圧電圧Vdiを入力すると共に、A/D変換器でデジタルデータに変換し、この変換されたデジタルデータで示される分圧電圧Vdiの電圧値Vdiと、電圧分圧部15を構成する抵抗15a,15bの各抵抗値と、電流制限抵抗14の抵抗値RLIMとに基づいて、電流制限抵抗14と電圧分圧部15の直列接続回路の両端間の電圧値Voff(第1測定用端子11の電圧値でもある)を測定(算出)して、記憶部19に記憶させる。これにより、第1測定処理が完了する。
【0063】
次いで、処理部20は、第2測定処理を実行する(ステップ53)。この第2測定処理では、処理部20は、まず、切替接続部17に対する制御を実行して、破線で示すようにa端子をc端子に接続することで、電圧生成部13の負側出力端子13bを内部グランドGに接続する。これにより、放電抵抗16は、内部グランドGから切り離される。次いで、処理部20は、電圧生成部13に対する制御を実行して、検査用直流電圧Vmを生成させる。これにより、電圧生成部13の正側出力端子13aおよび負側出力端子13b間から、内部グランドGの電位(基準電位)を基準とする検査用直流電圧Vmが出力される。
【0064】
この際に、処理部20は、電圧分圧部15から出力される分圧電圧Vdiを入力すると共に、A/D変換器でデジタルデータに変換し、この変換されたデジタルデータで示される分圧電圧Vdiの電圧値Vdiと、電圧分圧部15を構成する抵抗15a,15bの各抵抗値とに基づいて、電圧分圧部15の両端間の電圧値Vonを測定(算出)する。また、処理部20は、この測定している電圧値Vonが予め規定された電圧値で維持されるように、電圧生成部13に対して検査用直流電圧Vmの電圧値Vmを変化させる動作を実行させる。これにより、絶縁抵抗測定装置1および太陽光発電ユニット2は、図4に示す等価回路の状態に移行する。また、処理部20は、一定に維持された状態での電圧値Vonを記憶部19に記憶させる。また、絶縁抵抗測定装置1では、このようにしてサーミスタ31における第1測定用端子11側の端子(出力側の端子)の電圧でもある電圧値Vonが一定に制御される構成のため、サーミスタ31を電圧生成部13の出力ラインに配置された出力抵抗としてみなすこともできる(つまり、サーミスタ31の抵抗値RTHを電圧生成部13の出力抵抗値としてみなすこともできる)。
【0065】
また、処理部20は、この状態において、電流測定部18から出力されている電流データDiを入力すると共に、この入力した電流データDiに基づいて、太陽光発電ユニット2から出力されている直流電圧Vpに起因して太陽光発電ユニット2および絶縁抵抗測定装置1に流れる電流Ip2の電流値Ip2と、電圧生成部13から出力されている検査用直流電圧Vmに起因して太陽光発電ユニット2および絶縁抵抗測定装置1に流れる電流Imの電流値Imとの合成電流値(Ip2+Im)を電流値Ionとして測定(算出)して、記憶部19に記憶させる。これにより、第2測定処理が完了する。
【0066】
続いて、処理部20は、抵抗算出処理を実行する(ステップ54)。この抵抗算出処理では、処理部20は、記憶部19に記憶されている各電流値Ioff,Ionおよび各電圧値Voff,Vonと、動作プログラム中に規定されている抵抗値RLIMおよび式(1)とに基づいて、式(1)で表される絶縁抵抗値Rを算出して、記憶部19に記憶させる。
【0067】
次いで、処理部20は、出力処理を実行する(ステップ55)。この出力処理では、処理部20は、絶縁抵抗測定装置1の不図示の出力部に、算出した絶縁抵抗値Rを出力する。これにより、出力部が表示装置で構成されているときには、表示装置の画面上に絶縁抵抗値Rが表示される。また、出力部が外部装置へのデータ送信を実行可能なインターフェース回路で構成されているときには、算出した絶縁抵抗値Rはインターフェース回路を介して外部装置に出力(送信)される。この場合、外部装置としては、絶縁抵抗測定装置1の外部に設けられた表示装置であってもよいし、絶縁抵抗測定装置1に装着される外部メモリであってもよい。
【0068】
続いて、処理部20は、操作部21から測定開始信号S1が出力されているか否かを検出する開始指示検出処理を実行する(ステップ56)。処理部20は、この開始指示検出処理において測定開始信号S1の出力を検出したときには、ステップ53に移行することで、絶縁抵抗値Rの測定(算出)を繰り返す(ステップ53〜ステップ56を繰り返し実行する)。
【0069】
一方、処理部20は、この開始指示検出処理において測定開始信号S1の出力を検出しなかったときには、メインルーチン50を完了させる。この構成により、オペレータは、絶縁抵抗測定装置1がメインルーチン50を開始している状態において、操作部21の測定開始キーを操作することにより、絶縁抵抗測定装置1に対してメインルーチン50を終了させることが可能になっている。
【0070】
また、処理部20は、絶縁抵抗値Rの測定(算出)を繰り返している(ステップ53〜ステップ56を繰り返し実行している)ときに、この絶縁抵抗値Rの測定(算出)動作を定期的に(例えば1ms間隔で)中断して、図7に示す接続断検出処理70を実行する。この接続断検出処理70では、処理部20は、まず、上記したステップ64のときと同様にして、検査用直流電圧Vmの太陽光発電ユニット2への出力状態における電流Iの第2検出電流値Id2を電流データDiに基づいて測定(算出)し、この第2検出電流値Id2と第2しきい値電流値Ith2とを比較することにより、電流測定部18において電流Iが検出されている(電流測定部18に電流Iが流れている)か否かを判別する(ステップ71)。
【0071】
処理部20は、このステップ71において、電流Iが検出されていると判別したとき(つまり、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されていると判別したとき)には、この接続断検出処理70を完了させて、絶縁抵抗値Rの測定(算出)動作を再開する。
【0072】
一方、ステップ71において、電流Iが検出されていないと判別したとき(つまり、第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されていないと判別したとき)には、報知処理を実行する(ステップ72)。
【0073】
この報知処理では、処理部20は、例えば、太陽光発電ユニット2が接続されていないことを示すデータ(未接続の旨を示すデータ)を出力部に対して出力する。この場合、出力部は、例えば表示装置で構成されているときには、太陽光発電ユニット2が接続されていないことを示すマークなどを画面上に表示することで、接続状態にあった太陽光発電ユニット2が接続されていない状態に移行したことをオペレータに報知する。
【0074】
この報知処理の実行後に、処理部20は、メインルーチン50に戻り、絶縁抵抗値Rの測定(算出)動作を中止して、接続検出処理60を実行する(接続検出処理60に移行する)ことで(ステップ73)、接続断検出処理70を完了させる。処理部20は、この接続検出処理60を開始することで、第1測定用端子11および第2測定用端子12間への太陽光発電ユニット2の再度の接続の有無の検出を開始する。
【0075】
このように、この絶縁抵抗測定装置1では、処理部20が、接続検出処理60を実行して、第1測定用端子11および第2測定用端子12がいずれも太陽光発電ユニット2に接続されていること(第1測定用端子11および第2測定用端子12間に太陽光発電ユニット2が接続されていること)を検出したときに、太陽光発電ユニット2の絶縁抵抗値Rを測定(算出)する絶縁抵抗測定処理を実行する。
【0076】
したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、絶縁抵抗測定装置1の太陽光発電ユニット2への接続(第1測定用端子11および第2測定用端子12間への太陽光発電ユニット2の接続)が完了する前に操作部21の測定開始キーに対する操作が行われて、処理部20への測定開始信号S1の出力が開始されていたとしても、処理部20が絶縁抵抗測定処理を開始することがないため、正しくない電流値Ioff,Ionに基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができる。
【0077】
また、この絶縁抵抗測定装置1では、処理部20が、接続検出処理60において、上記した第1検出処理および第2検出処理の双方をこの順で実行する。したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、例えば、太陽光発電ユニット2の直流電圧Vpのような低い電圧に起因して流れる電流Iの第1検出電流値Id1が第1しきい値電流値Ith1以上となるような極めて低い抵抗値で太陽光発電ユニット2が第1測定用端子11および第2測定用端子12に接続されている場合だけでなく、検査用直流電圧Vmのようなある程度高い電圧に起因して流れる電流Iの第2検出電流値Id2が第2しきい値電流値Ith2以上となるような抵抗値(絶縁抵抗値Rの測定を阻害するほどの大きさではない抵抗値)で太陽光発電ユニット2が第1測定用端子11および第2測定用端子12に接続されている場合についても、絶縁抵抗値Rの測定を可能にすることができる。
【0078】
なお、上記の絶縁抵抗測定装置1では、接続検出処理60において第1検出処理および第2検出処理の双方を実行するというより好ましい構成を採用しているが、極めて低い抵抗値で太陽光発電ユニット2が第1測定用端子11および第2測定用端子12に接続されている場合についてのみ絶縁抵抗値Rの測定を実施する構成でもよいときには、接続検出処理60において第1検出処理だけを実行する構成とすることもできる。また、極めて低い抵抗値で太陽光発電ユニット2が第1測定用端子11および第2測定用端子12に接続されているか否かに拘わらす、絶縁抵抗値Rの測定を阻害するほどの大きさではない抵抗値で太陽光発電ユニット2が第1測定用端子11および第2測定用端子12に接続されている場合に絶縁抵抗値Rの測定を実施する構成でもよいときには、接続検出処理60において第2検出処理だけを実行する構成とすることもできる。
【0079】
これらのいずれの構成を採用した絶縁抵抗測定装置1でも、絶縁抵抗測定装置1の太陽光発電ユニット2への接続が完了する前に操作部21の測定開始キーに対する操作が行われて、処理部20への測定開始信号S1の出力が開始されていたとしても、処理部20が絶縁抵抗測定処理を開始することはないため、正しくない電流値Ioff,Ionに基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができるという効果を奏することができる。
【0080】
また、この絶縁抵抗測定装置1では、電圧生成部13の出力抵抗値でもあるサーミスタ31の抵抗値RTH、および各抵抗14,15,16の抵抗値RLIM,RDIV,RDCHが上記式(7)を満たすように予め規定された状態で、つまり、各電流Ip1,Ip2の値が揃えられた状態で、処理部20が、上記式(1)に基づいて絶縁抵抗値Rを算出(測定)する。したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、放電抵抗16を内蔵する構成においても、正しくない電流値Ioff,Ionに基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止しつつ、絶縁抵抗値Rを精度良く算出することができる。
【0081】
なお、上記の例では、電圧生成部13の正側出力端子13aと、電流制限抵抗14および電圧分圧部15の接続点との間にサーミスタ31を配置する構成を採用しているが、上記したようにこのサーミスタ31を省く構成を採用することもできる。詳細な説明については省略するが、この構成においての上記式(7)に対応する式は、式(7)中の抵抗値RTHをゼロとして得られる式(a)としての下記式(9)となる。
DCH//(RLIM+RDIV)=RLIM ・・・(9)
【0082】
したがって、このサーミスタ31を省略した構成の絶縁抵抗測定装置1でも、各抵抗14,15,16の抵抗値RLIM,RDIV,RDCHを上記式(9)を満たすように予め規定することにより、各電流Ip1,Ip2の値を揃えることができるため、放電抵抗16を内蔵する構成においても、正しくない電流値Ioff,Ionに基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止しつつ、処理部20が、上記式(1)に基づいて絶縁抵抗値Rを精度良く算出(測定)することができる。
【0083】
また、放電抵抗16を内蔵する構成の絶縁抵抗測定装置1を例に挙げて説明したが、背景技術で説明したような放電抵抗16を内蔵しない構成の絶縁抵抗測定装置においても、接続検出処理60を実行して、第1測定用端子11および第2測定用端子12がいずれも太陽光発電ユニット2に接続されていることを検出したときに、太陽光発電ユニット2の絶縁抵抗値Rを測定(算出)する絶縁抵抗測定処理を実行するようにすることにより、絶縁抵抗測定装置1の太陽光発電ユニット2への接続が完了する前に操作部21の測定開始キーに対する操作が行われて、処理部20への測定開始信号S1の出力が開始されていたとしても、絶縁抵抗測定処理を開始することはないため、正しくない電流値Ioff,Ionに基づいて正しくない絶縁抵抗値Rを測定(算出)するという事態の発生を確実に防止することができる。
【0084】
また、測定対象2の一例として太陽光発電ユニット2を例に挙げて説明したが、この絶縁抵抗測定装置1は、太陽光発電ユニット2以外にも、正極および負極間から直流電圧を出力するもの(例えば、電池)などを測定対象2として、その絶縁抵抗を測定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 絶縁抵抗測定装置
2 太陽光発電ユニット
11 第1測定用端子
12 第2測定用端子
13 電圧生成部
13a 正側出力端子
13b 負側出力端子
14 電流制限抵抗
15 電圧分圧部
16 放電抵抗
17 切替接続部
18 電流測定部
20 処理部
21 操作部
E 接地極
Id1 第1検出電流値
Id2 第1検出電流値
Ioff,Ion 電流値
Ith1 第1しきい値電流値
Ith2 第2しきい値電流値
N 負極
P 正極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7