(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の二重結合濃度が、0.090mol/100g以上0.220mol/100g以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性エレメント。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について具体的に説明する。
【0012】
[感光性エレメント]
本実施形態における感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に積層された感光性樹脂層とを含む感光性エレメントであって、
該感光性樹脂層は、(a)アクリル系樹脂、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び(c)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物で構成され、
該感光性樹脂組成物は、以下の特性:
(1)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物に関して測定されるテント膜破れ率が35%以下であること;及び
(2)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物のライン/スペース=100μm/100μmのレジストパターンに関して測定されるサイドエッチが12μm以下であること、
を満足する、感光性エレメントである。
【0013】
本実施形態において、感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物は、特定の組成を有し、また特定のテント膜破れ率及びサイドエッチ量を与える。
【0014】
本実施形態において、感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物に関して測定されるテント膜破れ率は、35%以下であり、好ましくは1〜35%、より好ましくは1〜30%、更に好ましくは1〜20%である。また本実施形態において、感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物のライン/スペース=100μm/100μmのレジストパターンに関して測定されるサイドエッチは、12μm以下であり、好ましくは2〜12μm、より好ましくは2〜11μm、更に好ましくは2〜10.5μmである。
なお、本開示において、テント膜破れ率、サイドエッチ、その他のパラメータ値は、特に断りの無い限り、後述の実施例における測定方法に準じて測定される値である。
【0015】
本実施形態においては上述の通り、感光性エレメントに含まれる感光性樹脂組成物が特定のテント膜破れ率と特定のサイドエッチ量とを満足することができるため、テンティング性を確保しつつ、しかもエッチング後の欠け、断線、及び、スルーホール欠損を低減し、歩留りを向上させ得る。
感光性樹脂層が適度な柔軟性及び薬液耐性を有することは、回路パターン形成の一連の工程において良好な耐性を与え、このことが製品の安定生産につながり、歩留り向上に寄与し得る。即ち、上述した特定の方法による露光・現像後に形成されたレジストパターンが優れた柔軟性及び薬液耐性を有するような感光性エレメントを用いることにより、レジストパターンの銅張積層板に対する適切な密着状態が維持された状態で、エッチング時等に用いる薬液が意図しない位置において銅表面を侵食することを抑制し得る。その結果、エッチング後の欠け、断線、及び、スルーホール欠損を低減し得、歩留りを向上させ得る。
そして、このような特定のテント膜破れ率と特定のサンドエッチ量とを両立するような、柔軟性及び薬液耐性を有する感光性樹脂層は、例えば後述するような感光性樹脂組成物を用いることにより、好ましくは、該感光性樹脂組成物において各成分を後述の好ましい例を参照して調整することにより、実現され得るが、特にこれらの組成に限定されるものではない。
【0016】
以下、感光性エレメントの各要素の例示の態様を説明する。
【0017】
<支持体>
支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明な基材が好ましい。このような支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、及びセルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムとしては、必要に応じ延伸されたものも使用可能である。ヘーズは5以下のものが好ましい。フィルムの厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要から、10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0018】
<保護層>
本発明の感光性エレメントは、必要により、感光性樹脂層の支持体と反対側の表面に保護層を有していてもよい。感光性エレメントに用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、支持体よりも保護層の方が充分小さく容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、及びポリプロピレンフィルム等が保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることができる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0019】
<感光性樹脂層>
感光性樹脂層は感光性樹脂組成物で構成される。感光性樹脂組成物は、(a)アクリル系樹脂、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(本開示で、(b)化合物ともいう。)、及び、(c)光重合開始剤を少なくとも含む。
【0020】
(a)アクリル系樹脂
(a)アクリル系樹脂は、典型的には、カルボキシル基含有単量体を共重合成分として含む、重量平均分子量が5,000〜500,000の熱可塑性共重合体であることが好ましい。(a)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るという観点から5,000以上が好ましく、一方で、現像性を維持するという観点から500,000以下が好ましい。重合平均分子量は、より好ましくは、20,000〜100,000であり、70,000〜90,000が特に好ましい。(a)アクリル系樹脂は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。本実施形態において、2種類以上の樹脂を併用した場合における(a)アクリル系樹脂の重量平均分子量とは、それぞれの樹脂の重量平均分子量と配合割合とから算出される加重平均である。
【0021】
本実施形態における(a)アクリル系樹脂は、例えば、下記の第一の単量体及び第二の単量体を共重合することにより得られる。
【0022】
第一の単量体としては、分子中にカルボン酸を含まない単量体が挙げられる。本実施形態における第一の単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられ、スチレンやα−メチルスチレンが好ましく、ポジパターンのスペース幅、及び解像性の観点から特にスチレンが好ましい。これらの成分を複数種用いてもよい。
【0023】
第二の単量体としては、分子中にカルボキシル基を含有する単量体が挙げられる。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステル等が挙げられる。中でも、適切な現像速度の観点から特に(メタ)アクリル酸が好ましい。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを示す。以下同様である。これらの成分を複数種用いてもよい。
【0024】
さらに(a)アクリル系樹脂は、上記の重合成分以外の共重合成分を含んでいてもよい。その例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類や、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、サイドエッチおよびテント膜破れ率低減の観点から、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
特に、ドライフィルムレジストの厚みを均一に維持し、現像液に対する耐性を得るとともに現像性を維持するという観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びアクリル酸n−ブチルを含み又はこれらから成る共重合成分から得られる樹脂、及び、メタクリル酸メチル、メタクリル酸及びスチレンを含み又はこれらから成る共重合成分から得られる樹脂、並びにこれら樹脂のブレンド物が好ましく、中でもこれら樹脂であって重合平均分子量が70,000以上90,000以下であるものがより好ましい。
【0026】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の(a)アクリル系樹脂の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは20質量%〜80質量%の範囲であり、より好ましくは25質量%〜70質量%の範囲であり、さらに好ましくは40質量%〜60質量%の範囲である。この含有量は、アルカリ現像性を維持するという観点から20質量%以上であることが好ましく、一方で、露光によって形成されるレジストパターンがレジストとしての性能を十分に発揮するという観点から80質量%以下であることが好ましい。
【0027】
(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物
本実施形態における上記(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の例としては、例えば、ビスフェノールA構造を有する化合物が挙げられる。ビスフェノールA構造を有する化合物を用いることは、テンティング性、追従性、及び解像性の観点から好ましい実施形態である。具体例としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均6モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドとを付加したポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAの両側にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキサイドと平均15モルのエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートが好ましい。追従性、及び解像性の観点から、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレートが特に好ましく、テンティング性の観点から、重量平均分子量1500以上のビスフェノールA部分を含有するジメタクリレートが特に好ましい。
【0028】
(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の二重結合濃度とは、感光性樹脂層100gに対する二重結合のモル数(光重合性化合物のモル数×分子中に含まれる二重結合の数)である。好ましくは0.090mol/100g以上0.220mol/100g以下、より好ましくは0.090mol/100g以上0.150mol/100g以下、更に好ましくは0.090mol/100g以上0.120mol/100g以下である。二重結合濃度が0.090mol/100g以上であることはサイドエッチの観点から好ましく、0.220mol/100g以下、特に0.120mol/100g以下であることはテント膜やぶれ率の観点から好ましい。
【0029】
本実施形態において、(b)化合物は、上記以外の例として、下記一般式(I):
【化2】
{式中、R
1及びR
2は、各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは二価の有機基であり、Xはエチレンオキサイド基であり、Yは炭素数3〜8のアルキレンオキサイド基であり、Wは炭素数4以上のアルキレンオキサイド基であり、n
1、n
2、n
6及びn
7は、各々独立に0〜20の整数であり、n
3及びn
4は、各々独立に0〜100の整数であり、n
5は、1〜100の整数であり、n
8は、1〜50の整数であり、そしてX、Y、W、−(C
2H
4O)−及び−(C
3H
6O)−の繰り返し単位の配列は、ランダムで構成されていてもよいし、ブロックで構成されていてもよいし、それらの組み合わせの構造でもよい。}で表される化合物を含むことが好ましい。
【0030】
前記一般式(I)中、Zは、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソホロン基、トリレン基、ジフェニルメタン基、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、α,α’−ジメチル−o−キシリレン基、α,α’−ジメチル−m−キシリレン基、α,α’−ジメチル−p−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−o−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−m−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−p−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−o−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレン基、及びシクロヘキシレン基が挙げられる。これらの基は置換基(例えばメチル基、エチル基などのアルキル基、および置換フェニル基、置換トリル基などのアリーレン基等)を更に有してもよい。感光性樹脂組成物に含まれ得るバインダーやモノマーとの相溶性の観点から、特にヘキシレン基及びイソホロン基が好ましい。
【0031】
Wの炭素数は好ましくは4〜60、より好ましくは4〜50である。好ましいWの例は、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソホロン基である。
【0032】
n
1、n
2、n
6及びn
7は、各々独立に0〜20の整数であり、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。n
3及びn
4は、各々独立に0〜100の整数であり、n
5は、1〜100の整数である。n
3、n
4及びn
5は、各々独立に、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは55以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。n
8は、1〜50の整数であり、好ましくは40以下、より好ましくは35以下である。
【0033】
中でも、前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、重量平均分子量が2000であるポリテトラメチレングリコール、ヒドロキシエチルアクリレートの反応により得られる、重量平均分子量が12000であるウレタンプレポリマーやイソホロンジイソシアネート、重量平均分子量が2000であるポリテトラメチレングリコール、ヒドロキシエチルアクリレートの反応により得られる、重量平均分子量が12000であるウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0034】
前記一般式(I)で表される化合物の分子量は、テント性及び現像性の観点から500〜30,000であることが好ましく、1,000〜20,000であることがより好ましい。該分子量を500以上にすることはテント性を向上させる点で好ましく、一方で、該分子量を30,000以下にすることは、現像液による硬化膜の膨潤を防ぐ点で好ましい。
【0035】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の上記一般式(I)で表される化合物の配合量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%とするとき、0.1〜32質量%であることが好ましい。テント性を得るという観点から、該配合量は0.1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、一方で、解像性と密着性と耐エッチング性の観点から、該配合量は32質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。該配合量のさらに好ましい範囲は5〜25質量%であり、特に好ましい範囲は7〜20質量%である。
【0036】
本実施形態において、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、
a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーと、
b)ポリイソシアネートと、
の付加重合により得られるポリウレタンの末端イソシアネート基に対して、
c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物、
を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、かつ
前記a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーが、下記一般式(II):
【化3】
{式中、Wは炭素数4以上のアルキレンオキサイド基を表し、n
9及びn
10は各々独立に0〜100の整数であり、n
11は1〜100の整数であり、そして−(W)−、−(C
2H
4O)−及び−(C
3H
6O)−の繰り返し単位から成る構造は、ランダムで構成されていてもよいし、ブロックで構成されていてもよいし、それらの組み合わせの構造でもよい。}
で示される化合物であることが好ましい。
【0037】
上記一般式(II)で示される化合物は、炭素数が4以上のアルキレンオキサイド基を繰り返し単位の一つとして有するポリアルキレングリコール化合物である。
【0038】
Wの炭素数は好ましくは4〜60、より好ましくは4〜50である。好ましいWの例は、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソホロン基である。
好ましい構造には、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)に代表される化合物が挙げられる。また、PTMGの末端水酸基を利用してブロック共重合又はランダム共重合によりプロピレンオキシド基を導入したグリコール化合物や、エチレングリコールとテトラメチレングリコールとのランダム共重合体の両末端にポリエチレングリコールをブロック共重合することにより得られるグリコール化合物等のPTMG誘導体も挙げられる。
【0039】
上記一般式(II)において、n
9及びn
10は、各々独立に0〜100の整数であり、n
11は、1〜100の整数である。n
9、n
10及びn
11は、各々独立に、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは55以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0040】
前記a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーは、上記一般式(II)で示される化合物を、50質量%以上100質量%以下含有することがレジストパターンの密着性を向上させる点から好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%以下である。更に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0041】
前記b)ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α’−ジメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’−トリメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネート化合物の芳香環に水添した化合物、例えばm−キシリレンジイソシアネートの水添物(例えば三井武田ケミカル製タケネート600)等も挙げられる。
【0042】
c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物の具体的な例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オリゴテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
ポリウレタンプレポリマーのエチレン性不飽和結合濃度は、2×10
-4mol/100g以上5×10
-2mol/100g以下が好ましい。感光性樹脂組成物を十分に架橋させてエッチング耐性を確保する点から2×10
-4mol/100g以上が好ましく、硬化膜を柔らかく保ちテンティング性を確保する点から5×10
-2mol/100g以下が好ましい。
【0044】
ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量は1,500以上50,000以下が好ましい。テンティング性を維持する点から1,500以上が好ましく、エッチング耐性を維持する点から50,000以下が好ましい。より好ましくは5,000以上30,000以下である。更に好ましくは9,000以上25,000以下である。
【0045】
ポリウレタンプレポリマーの含有量は感光性樹脂組成物の全固形分質量に対して10質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上65質量%以下、更に好ましくは25質量%以上60質量%以下である。良好なテンティング性を確保する点から上記含有量は10質量%以上が好ましく、エッチング耐性を確保する点から70質量%以下が好ましい。ポリウレタンプレポリマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記ポリウレタンプレポリマーは、例えば特開平11−188631号公報の実施例に開示されている方法で作成することができる。具体的には、a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマー100重量部に対してb)ポリイソシアネートを5〜50重量部付加重合させる。得られたポリウレタン100重量部に対して、c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内に共に有する化合物を5〜30重量部の割合で反応を行う。
【0047】
本実施形態では、感光性樹脂組成物は、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物として、下記一般式(III):
【化4】
{式中、R
3及びR
4は、各々独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは二価の有機基であり、Vは炭素数1〜3のアルキレンオキサイド基であり、Wは炭素数4以上のアルキレンオキサイド基であり、n
12及びn
14は、各々独立に0〜20の整数であり、n
13及びn
15は、各々独立に1〜50の整数であり、V及びWの繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよく、ブロックである場合、V及びWのいずれがウレタン基側であってもよい。}で表される化合物を含むことが好ましい。
【0048】
前記一般式(III)中、Zは、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、イソホロン基、トリレン基、ジフェニルメタン基、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、α,α’−ジメチル−o−キシリレン基、α,α’−ジメチル−m−キシリレン基、α,α’−ジメチル−p−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−o−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−m−キシリレン基、α,α,α’−トリメチル−p−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−o−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレン基、及びシクロヘキシレン基が挙げられる。これらの基は置換基(例えばメチル基、エチル基などのアルキル基、および置換フェニル基、置換トリル基などのアリーレン基等)を更に有してもよい。感光性樹脂組成物に含まれ得るバインダーやモノマーとの相溶性の観点から、特にヘキシレン基及びイソホロン基が好ましい。
【0049】
中でも、前記一般式(III)で表される化合物の好ましい例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリエチレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物、イソホロンジイソシアネートとポリプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物、イソホロンジイソシアネートとポリエチレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等が挙げられる。
【0050】
前記一般式(III)で表される化合物の分子量は、テント性及び現像性の観点から500〜3,000であることが好ましく、1,000〜2,500であることがより好ましい。該分子量を500以上にすることはテント性を向上させる点で好ましく、一方で、該分子量を3,000以下にすることは、現像液による硬化膜の膨潤を防ぐ点で好ましい。
【0051】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中の上記一般式(III)で表される化合物の配合量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量を100質量%とするとき、0.1〜32質量%であることが好ましい。テント性を得るという観点から、該配合量は0.1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、一方で、耐エッチング性の観点から、該配合量は32質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。該配合量のさらに好ましい範囲は5〜25質量%であり、特に好ましい範囲は7〜20質量%である。
【0052】
本実施形態における(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物として使用できる上記以外の例としては、少なくとも1つの末端エチレン性不飽和基を有する既知の化合物が挙げられる。
【0053】
具体的な例として、例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(例えば日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ペンタエリスリトールに平均4モルのエチレンオキサイドを付加したグリコールのテトラアクリレート、ペンタエリスリトールに平均15モルのエチレンオキサイドを付加したグリコールのテトラアクリレート、ペンタエリスリトールに平均35モルのエチレンオキサイドを付加したグリコールのテトラアクリレート、トリメチロールプロパンに平均3モルのエチレンオキサイドを付加したトリアクリレート(新中村化学製A−TMPT−3EO、製品名)、トリメチロールプロパンに平均9モルのエチレンオキサイドを付加したトリアクリレート、トリメチロールプロパンに平均15モルのエチレンオキサイドを付加したトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の重量平均分子量が、900以上15,000であることは、好ましい本実施形態である。本実施形態において、2種類以上の化合物を併用した場合における(b)化合物の重量平均分子量とは、それぞれの化合物の重量平均分子量と配合割合とから算出される加重平均である。(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の重量平均分子量は、追従性、テンティング性、ポジパターンのスペース幅、解像性、及び剥離性を向上させる観点から900以上15,000以下が好ましく、さらに好ましくは1,200以上5,000以下であり、最も好ましくは1,400以上2,900以下である。
【0055】
上記(a)アクリル系樹脂と、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物とを組み合わせることは、サイドエッチ、テンティング性、追従性、ポジパターンのスペース幅、及び解像性の観点から好ましい実施形態であり、サイドエッチ、及びテンティング性においては特に高い効果が得られる。
【0056】
本実施形態の感光性樹脂組成物中の(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、5質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。この含有量は、硬化不良、及び現像時間の遅延を抑えるという観点から5質量%以上であることが好ましく、一方で、コールドフロー及び硬化レジストの剥離遅延を抑えるという観点から60質量%以下であることが好ましい。また、この含有量は、15質量%〜60質量%の範囲であることがより好ましく、30〜50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0057】
(c)光重合開始剤
(c)光重合開始剤は、光によりモノマーを重合させる化合物である。本実施形態において、感光性樹脂組成物は典型的にはネガ型である。本実施形態では、感光性樹脂層に良好な追従性、テンティング性、及び解像性を与えるという観点から、(c)光重合開始剤が、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び/又はアクリジン化合物を含むことが好ましく、アクリジン化合物を含むことが特に好ましい。
【0058】
ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(以下、トリアリールイミダゾリル誘導体の二量体、又はトリアリールイミダゾリル二量体ともいう)の例としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体(以下、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビスイミダゾール、ともいう)、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体は、解像性に対して高い効果を有する光重合開始剤であり、好ましく用いられる。感光性樹脂組成物中のヘキサアリールビスイミダゾール誘導体の含有量は、剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜4質量%であることがより好ましい。
【0059】
アクリジン化合物としては、下記一般式(IV):
【化5】
{式中、Rは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルキレン基、フェニル基又はベンジル基であり、かつmは、1又は2である。}
で表される化合物が挙げられる。(c)光重合開始剤として使用されるアクリジン化合物の好ましい例としては、アクリジン、9−フェニルアクリジン、1,6−ビス(9−アクリジニル)ヘキサン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,8−ビス(9−アクリジニル)オクタン、1,9−ビス(9−アクリジニル)ノナン、1,10−ビス(9−アクリジニル)デカン、1,11−ビス(9−アクリジニル)ウンデカン、1,12−ビス(9−アクリジニル)ドデカン等のアクリジン誘導体が挙げられる。
【0060】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中のアクリジン化合物の含有量は、0.1質量%〜2質量%の範囲であることが好ましい。この含有量を0.1質量%〜2質量%の範囲に調整することは、良好な剥離特性を得るという観点から好ましい。また、この含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.4質量%〜1.2質量%の範囲であることがより好ましく、0.5質量%〜1.2質量%の範囲であることが更に好ましく、0.8質量%〜1.2質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0061】
ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体とアクリジン化合物との併用は、感度、解像度の観点から好ましい。また、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体及び/又はアクリジン化合物と、例えば、N−アリールアミノ酸、有機ハロゲン化合物、光増感剤等の追加の光重合開始剤とを併用することは、サイドエッチおよびテント膜破れ率低減の観点から好ましい。
【0062】
N−アリールアミノ酸の例としては、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等が挙げられる。中でも、感度の観点からN−フェニルグリシンが特に好ましい。感光性樹脂組成物中のN−アリールアミノ酸の含有量は、剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。
【0063】
有機ハロゲン化合物の例としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンジル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、及びクロル化トリアジン化合物が挙げられ、中でも特にトリブロモメチルフェニルスルフォンが、サイドエッチおよびテント膜破れ率低減の観点から好ましく用いられる。感光性樹脂組成物中の有機ハロゲン化合物の含有量は、剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜3質量%であることがより好ましい。
【0064】
光増感剤の例としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、及び3−クロロ−2−メチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾインオキシム、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類が挙げられる。感光性樹脂組成物中の光増感剤の含有量は、剥離特性及び/又は感度を向上させるという観点から、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜3質量%であることがより好ましい。
【0065】
また、本実施形態では、感光性樹脂組成物は、光増感剤としてピラゾリン化合物を含有することも好ましい。ピラゾリン化合物としては、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン及び1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリンが、感度の観点から好ましい。
【0066】
(c)光重合開始剤は、上記で列挙したような化合物の1種類を単独で使用するか、又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(a)アクリル系樹脂、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び(c)光重合開始剤を必須成分とするが、必要に応じて、添加剤(例えば発色染料、ベース染料、可塑剤、酸化防止剤、及び安定化剤等)を含有してもよい。
【0068】
さらに、本実施形態の感光性樹脂組成物は、ロイコクリスタルバイオレットを発色染料として含有することが好ましい。一般に、ロイコクリスタルバイオレットは、下記式(V):
【化6】
で表される化合物(CAS番号:603−48−5)又はその誘導体である。本実施形態では、ロイコクリスタルバイオレットを含有させることにより、良好な発色性と剥離特性を得ることができるため好ましい。
【0069】
本実施形態では、感光性樹脂組成物中のロイコクリスタルバイオレットの含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.2質量%〜2.0質量%であることが好ましい。この含有量を0.2質量%〜2.0質量%の範囲に調整することは、感光性樹脂組成物に良好な発色性を付与して認識し易くするとともに、剥離時間を短縮するという観点から好ましい。また、この含有量は、さらに剥離時間を短縮するという観点から、0.6質量%〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0070】
ベース染料としては、例えば、ベーシックグリーン1[CAS番号(以下、同じ):633−03−4](例えば、Aizen Diamond Green GH、商品名、保土谷化学工業製)、マラカイトグリーンシュウ酸塩[2437−29−8](例えばAizen Malachite Green、商品名、保土谷化学工業製)、ブリリアントグリーン[633−03−4]、フクシン[632−99−5]、メチルバイオレット[603−47−4]、メチルバイオレット2B[8004−87−3]、クリスタルバイオレット[548−62−9]、メチルグリーン[82−94−0]、ビクトリアブルーB[2580−56−5]、ベーシックブルー7[2390−60−5](例えば、Aizen Victoria Pure Blue BOH、商品名、保土谷化学工業製)、ローダミンB[81−88−9]、ローダミン6G[989−38−8]、ベーシックイエロー2[2465−27−2]等が挙げられる。中でもベーシックグリーン1、マラカイトグリーンシュウ酸塩、及びベーシックブルー7が好ましく、色相安定性及び露光コントラストを向上させるという観点からベーシックグリーン1が特に好ましい。
【0071】
感光性樹脂組成物中のベース染料の含有量は、好ましくは感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.001質量%〜3質量%の範囲であり、より好ましくは0.01質量%〜2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.01質量%〜1.2質量%の範囲である。この含有量は、良好な着色性を得るという観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、一方で、感度を維持するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0072】
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォンアミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、ビスフェノールAの両側にそれぞれプロピレンオキサイドを付加したプロピレングリコール、ビスフェノールAの両側にそれぞれエチレンオキサイドを付加したエチレングリコール等が挙げられる。
【0073】
本実施形態では、追従性及び剥離性の観点から、感光性樹脂組成物は、スルフォンアミド化合物を含有することが好ましく、p−トルエンスルフォンアミドを含有することがより好ましい。
【0074】
感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、好ましくは感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、0.1質量%〜50質量%であり、より好ましくは、1質量%〜20質量%である。この含有量は、現像時間の遅延を抑え、硬化膜に柔軟性を付与するという観点から0.1質量%以上であることが好ましく、一方で、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下であることが好ましい。
【0075】
酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:TPP)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名2112)、トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:1178)、及びビス(モノノニルフェニル)−ジノニルフェニルフォスファイト(例えば旭電化工業社製、商品名:329K)等が挙げられる。
【0076】
感光性樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは0.01質量%〜0.8質量%の範囲であり、より好ましくは0.01質量%〜0.3質量%の範囲である。この含有量が0.01質量%以上である場合、感光性樹脂組成物の色相安定性に優れる効果が良好に発現し、感光性樹脂組成物の露光時における感度が良好になる。一方で、この含有量が0.8質量%以下である場合、発色性が抑えられるために色相安定性が良好になるとともに、密着性も良好になる。
【0077】
安定化剤は、感光性樹脂層の熱安定性及び/又は保存安定性を向上させるという観点から、使用されることが好ましい。安定化剤としては、ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類から成る群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0078】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
【0079】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、及びビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0080】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0081】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、及びグリシジル基を有するアルキレンオキシド化合物の、感光性樹脂組成物中の合計含有量は、感光性樹脂組成物の固形分総量に対して、好ましくは、0.01質量%〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。この合計含有量は、感光性樹脂組成物に良好な保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、一方で、感度を良好に維持するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0082】
<感光性樹脂組成物調合液>
本実施形態において用いる感光性樹脂組成物は、これに溶媒を添加して形成した感光性樹脂組成物調合液の形態で感光性エレメントの製造に用いることができる。感光性樹脂組成物調合液を支持体上に塗布し、ついで、添加した溶媒を加熱留去することにより感光性樹脂層を得ることが好ましい。好適な溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように、溶媒を感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0083】
本実施形態の感光性エレメントにおける感光性樹脂層の厚みは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは7〜60μmである。厚みが薄いほど解像度は向上し、また、厚いほど膜強度が向上するので、用途に応じて適宜選択することができる。
【0084】
[感光性エレメントの製造方法]
支持体、感光性樹脂層、及び必要により保護層を順次積層して、感光性エレメントを作製できる。具体的な方法としては、従来知られている方法を採用することができる。
本発明の別の態様は、支持体と、該支持体上に積層された感光性樹脂層とを含む感光性エレメントの製造方法であって、
該支持体上に、感光性樹脂層を形成する工程を含み、
該感光性樹脂層は、(a)アクリル系樹脂、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び(c)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物で構成され、
該感光性樹脂組成物は、以下の特性:
(1)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物に関して測定されるテント膜破れ率が35%以下であること;及び
(2)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物のライン/スペース=100μm/100μmのレジストパターンに関して測定されるサイドエッチが12μm以下であること、
を満足する、感光性エレメントの製造方法を提供する。なお上記感光性樹脂組成物の好ましい態様の詳細は前述のとおりである。
【0085】
例えば、感光性樹脂層を形成するために用いる感光性樹脂組成物を、前述の感光性樹脂組成物調合液にしておき、まず支持体上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥させ、支持体上に該感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層を積層する。次いで、必要により、該感光性樹脂層上に保護層を積層することにより感光性エレメントを作製することができる。
【0086】
本発明の別の態様は、前述した感光性樹脂組成物をも提供する。すなわち本発明の別の態様は、(a)アクリル系樹脂、(b)分子内に少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、及び(c)光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物であって、以下の特性:(1)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物に関して測定されるテント膜破れ率が35%以下であること;及び(2)該感光性樹脂組成物の厚み30μmの硬化物のライン/スペース=100μm/100μmのレジストパターンに関して測定されるサイドエッチが12μm以下であること、を満足する、感光性樹脂組成物を提供する。
【0087】
<レジストパターン形成方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明の一態様に係る感光性エレメントを露光及び現像して得られるレジストパターンを提供する。本発明の別の態様はまた、該感光性エレメントを基板にラミネートするラミネート工程、該感光性エレメントの感光性樹脂層を露光する露光工程、及び該感光性樹脂層の未露光部を現像液で除去する現像工程を含む、パターン形成方法を提供する。以下に、本発明の一態様に係る感光性エレメントを用いてレジストパターンを形成する具体的な方法の一例を示す。
【0088】
まず、ラミネート工程において、ラミネーターを用いて基板上に感光性樹脂層を形成する。具体的には、感光性エレメントが保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光性樹脂層を基材表面に加熱圧着しラミネートする。基板の材質としては銅、ステンレス鋼(SUS)、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられる。この場合、感光性樹脂層は基板表面の片面だけにラミネートするか、又は必要に応じて両面にラミネートしてもよい。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、該加熱圧着を2回以上行うことにより、得られるレジストパターンの基板に対する密着性が向上する。この時、圧着には二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用してもよいし、基板と感光性樹脂層との積層物を何回か繰り返してロールに通し圧着してもよい。
【0089】
次に、露光工程において、露光機を用いて感光性樹脂層を活性光に露光する。露光は必要ならば支持体を剥離した後に行うことができる。フォトマスクを通しての露光の場合、露光量は、光源照度及び露光時間により決定され、光量計を用いて測定してもよい。
【0090】
露光工程においては、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光においてはフォトマスクを使用せず基材上に直接描画装置によって露光する。光源としては波長350nm〜410nmの半導体レーザー又は超高圧水銀灯等が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、露光光源の照度及び基板の移動速度によって決定される。
【0091】
次に、現像工程において、露光後の感光性樹脂層における未露光部を、現像装置を用いて現像液により除去する。露光後、感光性樹脂層上に支持体がある場合にはこれを除く。続いてアルカリ水溶液から成る現像液を用いて未露光部を現像除去し、レジスト画像を得る。アルカリ水溶液としては、Na
2CO
3、又はK
2CO
3等の水溶液が好ましい。これらは感光性樹脂層の特性に合わせて選択されるが、0.2質量%〜2質量%の濃度のNa
2CO
3水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。なお、現像工程における現像液の温度は、20℃〜40℃の範囲で一定温度に保つことが好ましい。
【0092】
上述の工程によってレジストパターンが得られるが、場合によっては、さらに100℃〜300℃の加熱工程を行うこともできる。この加熱工程を実施することにより、更なる耐薬品性向上が可能となる。加熱には、熱風、赤外線、又は遠赤外線等の方式の加熱炉を用いることができる。
【0093】
本発明の別の態様は、上記感光性エレメントを基板にラミネートするラミネート工程、該感光性エレメントの感光性樹脂層を露光する露光工程、該感光性樹脂層の未露光部を現像液で除去してレジストパターンを形成する現像工程、及び該レジストパターンが形成された基板をエッチングするエッチング工程を含む、回路基板の形成方法をも提供する。
【0094】
また、本発明は、上述した感光性エレメントを用いて、金属板又は金属皮膜絶縁板である基板の上に感光性樹脂層を形成するラミネート工程、該感光性樹脂層を露光する露光工程、該感光性樹脂層の未露光部を現像液で除去することによってレジストパターンを形成する現像工程、及び該レジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする導体パターン形成工程を順に含む、導体パターンの製造方法も提供する。すなわち、本実施形態の導体パターンの製造方法は、基板として金属板又は金属皮膜絶縁板を用い、上述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、以下の導体パターン形成工程を経ることにより実施される。導体パターン形成工程においては、上述したような方法でレジストパターンが形成された基板において、現像により露出した基板表面(例えば銅面)に公知のエッチング法又はめっき法を用いて導体パターンを形成する。
【0095】
更に、導体パターンを製造した後、レジストパターンを、現像液よりも強いアルカリ性を有する水溶液により基板から剥離する剥離工程を更に行うことにより、所望の配線パターンを有するプリント配線板を得ることができる。プリント基板の製造においては、基板として好ましくは銅張積層板又はフレキシブル基板を用いる。剥離用のアルカリ水溶液(以下、「剥離液」ともいう。)について特に制限はないが、2質量%〜5質量%の濃度の、NaOH又はKOHの水溶液が一般的に用いられる。剥離液には少量の水溶性溶媒を加えることが可能である。剥離工程における該剥離液の温度は、40℃〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0096】
なお、基板として銅、銅合金、又は鉄系合金等の金属板を用いて、前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に以下の工程を経ることにより、リードフレームを製造できる。まず、現像により露出した基板をエッチングして導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、所望のリードフレームを得る。
【0097】
また、上述のレジストパターン形成方法によって形成されるレジストパターンは、サンドブラスト工法により基板に加工を施す時の保護マスク部材として使用することができる。このときの基板としては、例えば、ガラス、シリコンウエハー、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、セラミック、サファイア、金属材料等が挙げられる。これら基板上に、前述のレジストパターン形成方法と同様の方法によって、レジストパターンを形成する。その後、形成されたレジストパターン上からブラスト材を吹き付けて、目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、基板上に残存したレジストパターン部分をアルカリ剥離液等で基板から除去する剥離工程を経て、基板上に微細な凹凸パターンを有する基板を製造できる。上記のサンドブラスト処理工程に用いるブラスト材としては公知のものを使用でき、例えば、SiC、SiO
2、Al
2O
3、CaCO
3、ZrO、ガラス、ステンレス等の粒径2μm〜100μm程度の微粒子が用いられる。
【0098】
基板として大規模集積化回路(LSI)の形成が終了したウェハを用いて、これに前述のレジストパターン形成方法によってレジストパターンを形成した後に、以下の工程を経ることによって、半導体パッケージを製造できる。まず、現像により露出した開口部に銅、はんだ等の柱状のめっきを施して、導体パターンを形成する工程を行う。その後、レジストパターンを上述のプリント配線板の製造方法と同様の方法で剥離する剥離工程を行って、更に、柱状めっき以外の部分の薄い金属層をエッチングにより除去する工程を行うことにより、所望の半導体パッケージを得る。
【0099】
また、上述の感光性樹脂組成物は、プリント配線板の製造、ICチップ搭載用リードフレーム製造、メタルマスク製造等の金属箔精密加工、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、又はチップ・サイズ・パッケージ(CSP)等のパッケージの製造、チップ・オン・フィルム(COF)又はテープオートメイテッドボンディング(TAB)等のテープ基板の製造、半導体バンプの製造、ITO電極又はアドレス電極、電磁波シールド等のフラットパネルディスプレイの隔壁の製造に利用されることができる。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。まず、評価方法について示す。
【0101】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)の検量線を用いて測定した重量平均分子量を意味する。重量平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、以下の条件で測定した。
示差屈折率計:RI−1530
ポンプ:PU−1580
デガッサー:DG−980−50
カラムオーブン:CO−1560
カラム:順にKF−8025、KF−806M×2、KF−807
溶離液:THF
【0102】
(サイドエッチ評価、テント膜やぶれ率評価)
【0103】
<基板整面>
サイドエッチ評価のための基板としては、35μm銅箔を積層した0.4mm厚の銅張積層板を用いた。また、テント膜破れ率評価のための基板としては、35μm銅箔を積層した0.7mm厚の銅張積層板に、直径6mmのスルーホールを1008穴有する基板を用いた。これら基板は、ジェットスクラブ研磨機を用いた表面処理により整面した後、下記ラミネートに供した。
【0104】
<ラミネート>
後述の手順で作製した感光性エレメントの保護層を剥がしながら、60℃に予熱した銅張積層板にホットロールラミネーター(旭化成(株)製、AL−70)により、ロール温度105℃でラミネートした。エアー圧力は0.35MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。
【0105】
<露光>
直接描画式露光装置(日本オルボテック株式会社製、ParagonUltra100、主波長355nm)を用いて直接描画式露光方法により露光した。サイドエッチ評価用基板は、L(ライン)/S(スペース)=100μm/100μmのパターンで露光し、テント膜破れ率評価用基板は全面露光した。
【0106】
露光量は、ストーファー21段ステップタブレットをマスクとして同露光機にて露光し、下記<現像>において説明する方法により現像したときの残膜限界段数が7段となる値とした。
【0107】
<現像>
支持体を剥離した後、アルカリ現像機(フジ機工製、ドライフィルム用現像機)を用いて30℃の1質量%Na
2CO
3水溶液を所定時間スプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を最小現像時間の2倍の時間で溶解除去した。この際、未露光部分の感光性樹脂層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間を最小現像時間とした。上記条件にて現像した後、アルカリ現像機に付属する水洗槽を通し、エアーナイフで水切り処理を行うことで、評価基板を得た。水洗時間については、サイドエッチ評価用基板は、最少現像時間の2分の1とし、テント膜やぶれ率評価用基板については、最少現像時間の3倍の時間とした。
【0108】
<サイドエッチ評価>
形成したL(ライン)/S(スペース)=100μm/100μmのレジストパターンの、レジストボトム幅を光学顕微鏡により測定した。次に、このレジストパターン形成済基板を、塩銅エッチング装置(東京化工機製)により塩酸3mol/l、塩化第二銅250g/l、50℃において最小エッチング時間の1.3倍の時間でエッチングした。この際、基板上の銅箔が完全に溶解除去されるときの時間を最小エッチング時間とした。得られたエッチング後基板に残されたレジストを、3質量%、50℃のNaOH剥離液にて剥離し、得られた銅パターンのトップ幅を光学顕微鏡により測定した。
得られた値から、下記式によりサイドエッチの値(μm)を得た。
サイドエッチ(μm)= {(レジストボトム幅) − (銅トップ幅)} / 2
【0109】
<テント膜破れ率評価>
テント膜が破れていたテント穴数を計測し、全テント穴に対する破れ率を算出した。
【0110】
[実施例1]
表1に示す化合物を、表2に示す組成割合(単位は質量部)で配合した約55質量%のMEK溶液1を作製した。この溶液を、十分に攪拌、混合して、支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で3分間乾燥させて感光性樹脂層を形成した。乾燥後の感光性樹脂層の厚みは30μmであった。なお、表2に示す組成における質量部は、固形分量である。
次いで、感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない側の表面上に、保護層として22μm厚のポリエチレンフィルムを貼り合わせて感光性エレメント1を得た。
次いで、感光性エレメント1から保護層及び支持体を剥がして得た感光性樹脂層をMEKに溶解して、約55質量%のMEK溶液2を得た。MEK溶液1をMEK溶液2に代えた他は上記の手順を繰り返して、感光性エレメント2を得た。この感光性エレメント2を、評価用の感光性エレメントとした。
[実施例2〜7、比較例1〜11]
表1に示す化合物を表2に示す組成割合(単位は質量部)で配合し、実施例1と同様の手順で評価用の感光性エレメントを得た。
実施例1〜7及び比較例1〜11の評価結果を表2に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
表2の結果から分かるように、実施例1〜7の感光性エレメントは、そのテント膜破れ率、及びサイドエッチ量が特定の範囲に設定されているため、テンティング性を確保しつつ、しかもエッチング後の欠け、断線、及び、スルーホール欠損を低減して歩留りを向上させ得る感光性エレメントである。