(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物の建築に用いられる木材には、建築基準法に適合した木質系の部材、すなわちJAS(日本農業規格)集成材又はJAS製材、すなわちJAS材を用いる必要がある。上記特許文献に開示された技術を用いて建築材を補強するために、JAS材に鉄筋等を挿入してしまうと、そのJAS材は、建築基準法に適合した部材とはいえなくなるので、建築資材として用いるのに適さなくなる。
【0005】
建築基準法に適合しない木材を建築に用いる場合には、その建物に関して国土交通大臣から特別な認可を受けるか、建築業者が木材を用いる工法について国土交通大臣から特別な認可を受ける必要がある。このような認可を得るための手続は、非常に煩雑である。
【0006】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、建築基準法に適合しつつ、曲げ強度及び曲げ剛性を向上することができる木質系部材、木質系部材の製造方法及び建築物の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る木質系部材は、
材長方向に直交する断面が多角形状であり、
JAS材または建築基準法に適合
する木質系の部材と、
前記材長方向に延びる前記部材の側面に貼り合わされる木質系の平板と、
を備え、
前記平板には、前記材長方向に延びる溝部が形成され、
木質系の材料よりも堅い補強部材が前記溝部に挿入され
るとともに、接着剤が前記溝部に封入さ
れ、
前記溝部の開口の少なくとも一部を塞ぐ小木板が挿入され、
前記溝部の底面が、前記補強部材の側面に沿って湾曲した曲面又は多角面であるとともに、
前記補強部材の断面における下半分は前記溝部に密着しており、
前記溝部の内壁上部と前記補強部材の上部と前記小木板との間に形成される領域に、前記補強部材よりも小径の小補強部材が挿入されている。
【0011】
前記部材は、集成材又は製材である、
こととしてもよい。
【0012】
前記補強部材は、
異形鉄筋又はアラミドロッドである、
こととしてもよい。
【0013】
この発明の第2の観点に係る木質系部材の製造方法は、
材長方向に延びる溝部を有する木質系の平板を製作する第1の工程と、
前記溝部に、木質系の材料よりも堅い補強部材を挿入する第2の工程と、
前記溝部に、接着剤を封入する第3の工程と、
材長方向に直交する断面が多角形状であり
JAS材または建築基準法に適合
する木質系の部材の材長方向に延びる側面に沿って前記平板を貼り合わせる第4の工程と、
を含
み、
前記第1の工程では、前記溝部の底面を、前記補強部材の側面に沿って湾曲した曲面又は多角面となるように、かつ、前記補強部材の断面における下半分が前記溝部に密着するように加工し、
前記第2の工程では、前記溝部の内壁上部と前記補強部材の上部との間に形成される領域に、前記補強部材よりも小径の小補強部材を挿入し、
前記第3の工程では、接着剤の封入後に、前記溝部の開口の少なくとも一部を塞ぐ小木板を挿入する。
【0014】
前記第3の工程では、
前記溝部に接着剤を封入する前に、前記溝部の内壁全面に接着剤を薄く塗布し、塗布された接着剤を硬化させるプライマー処理を行う、
こととしてもよい。
【0015】
前記第3の工程では、
接着剤を封入した後、土台と抑え板により前記平板を挟み込んで、接着剤の浸透による前記平板の湾曲を防止する、
こととしてもよい。
【0016】
前記第1の工程では、
平板状の木質系の基材に、
前記基材よりも細幅の複数の部材を、間隔を置いて貼り合わせることにより、前記溝部を有する平板を製作する、
こととしてもよい。
【0018】
この発明の第3の観点に係る建築物の補強方法は、
材長方向に延びる溝部を有する木質系の平板を製作する第1の工程と、
前記溝部に、木質系の材料よりも堅い補強部材を挿入する第2の工程と、
前記溝部に、接着剤を封入する第3の工程と、
JAS材または建築基準法に適合
する建築物の柱又は梁の材長方向に延びる側面に前記平板を貼り合わせる第4の工程と、
を含
み、
前記第1の工程では、前記溝部の底面を、前記補強部材の側面に沿って湾曲した曲面又は多角面となるように、かつ、前記補強部材の断面における下半分が前記溝部に密着するように加工し、
前記第2の工程では、前記溝部の内壁上部と前記補強部材の上部との間に形成される領域に、前記補強部材よりも小径の小補強部材を挿入し、
前記第3の工程では、接着剤の封入後に、前記溝部の開口の少なくとも一部を塞ぐ小木板を挿入する。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、建築基準法に適合した木質系の部材に補強が施された平板を貼り合わせることにより木質系部材を構成している。このようにすれば、その木質系部材について、建築基準法に適合しつつ、曲げ強度及び曲げ剛性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、この発明の実施の形態1に係る木質系部材100は、JAS集成材1と、平板2とを備える。木質系部材100は、建築基準法に適合した木質系のJAS集成材1の材長方向に延びる側面に平板2を貼り合わせることにより、構成されている。
【0023】
JAS集成材1は、建築基準法に適合した一方向(材長方向)に延びる木質系の部材である。JAS集成材1は、材長方向に直交する断面が矩形状である。JAS集成材1は、スギ、ベイマツ、カラマツ、ゴム等の木材小片(ラミナ)を接着剤で接着して得られる板材である。ここでは、ラミナにスギ材が用いられているものとする。JAS集成材1としてスギ材を用いれば、本発明の効果がより顕著になる。接着剤としては、例えばユリア系樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂又はレゾルシノール樹脂等の接着剤を用いることができる。ラミナの板厚は45mmであり、ラミナの短手方向の幅は、105mm以上210mm以下とすることができる。
【0024】
平板2は、JAS集成材1の材長方向に延びる側面に貼り合わされる木質系の平板である。平板2の短手方向の幅は、JAS集成材1と同じである。平板2は、
図1及び
図2に示すように、平板2Aと平板2Bとが接着剤で貼り合わされることにより形成されている。接着剤には、上述したものと同様な接着剤が用いられる。
【0025】
平板2Aには、材長方向に延びる溝部3が形成されている。
図2に示すように、この実施の形態では、溝部3の底面は平面となっている。溝部3の位置、深さは、平板2A、2Bが貼り合わされて形成される平板2の外面から補強部材4までの距離(厚み)が、一定の距離以上となるように定められている。
【0026】
溝部3には、木質系の材料よりも堅い補強部材4が挿入されている。補強部材4は、円柱状の部材である。補強部材4は、溝部3から突出することのないように、溝部3に嵌め込まれる。補強部材4としては、例えば、異形鉄筋D10〜D25が用いられる。
【0027】
さらに、溝部3には、接着剤が封入される。封入された接着剤が硬化して溝部3に封入部5が形成されている。このような接着剤としては、例えばエポキシ系樹脂の接着剤が用いられる。封入部5の表面は、平板2Aの表面と面一となっている。
【0028】
溝部3に補強部材4が挿入され、接着材が挿入されて封入部5が形成された平板2Aは、溝部3の開口が形成された面において、平板2Bと貼り合わされている。これにより、平板2が形成される。平板2では、外面から補強部材4(異形鉄筋)までの厚みが一定の厚み以上となっている。これにより、木質系部材100が耐火性の観点から建築基準法の基準に適合したものとなる。
【0029】
平板2の積層方向の木質系部材100の板厚は、300mm以上1000mm以下とすることができる。この木質系部材100は、建築物の柱又は梁として用いられる。
【0030】
続いて、木質系部材100の製造方法について説明する。
【0031】
図3に示すように、まず、材長方向に延びる溝部3を有する長方形状の木質系の平板2Aを製作する(ステップS1;第1の工程)。具体的には、
図4(A)に示すように、エンドミルを用いて平板2Aを切削し、平板2Aの材長方向に延びる溝部3を形成する。この溝部3の長さ、深さ及び幅は、補強部材4が入るような大きさであって、補強部材4から木質系部材100の外面までの厚みが、建築基準法に適合する厚み以上となるように設定されている。
【0032】
続いて、プライマー処理を行う(ステップS2)。ここでは、
図4(B)に示すように、溝部3の内壁全面に接着剤を薄く塗布し、所定時間置いて、塗布された接着剤を硬化させる。このプライマー処理は、平板2Aが湾曲するのを抑制するために行われる。エポキシ系の接着剤は粘性が低いため、塗布された後、毛細管現象により平板2Aの内壁から繊維質である平板2Aの内部に幾分か浸透する。木の内部に浸透した接着剤は硬化すると収縮する。接着剤の浸透量が多くなると、接着剤の収縮により、平板2Aが変形するおそれがある。この実施の形態では、この変形を抑制するため、先に、接着剤を溝部3の内壁に薄く塗布し、浸透後硬化させてから、溝部3に接着剤を充填し、封入部5を形成する。このようにすれば接着剤の平板2Aの内部への浸透量を少なくして、平板2Aの変形を抑制することができる。
【0033】
続いて、溝部3に、木質系の材料よりも堅い補強部材4を挿入する(ステップS3;第2の工程)。これにより、
図4(C)に示すように、補強部材4(異形鉄筋)が溝部3に設置される。
【0034】
続いて、溝部3に、接着剤を封入して硬化させ、封入部5を形成する(ステップS4;第3の工程)。ここで、上述のようにエポキシ樹脂等の接着剤が溝部3に充填される。エポキシ系の接着剤は粘性が低いため、溝部3に流れ込むと溝部3全体に行き渡る。流れ込んだ接着剤が硬化することにより、
図4(D)に示すように、溝部3に封入部5が形成される。
【0035】
続いて、平板2Aと平板2Bとを接着剤を用いて貼り合わせて、平板2を製作する(ステップS5)。これにより、
図2に示す平板2が製作される。
【0036】
さらに、接着剤を用いて平板2を、建築基準法に適合したJAS集成材1の側面に沿って貼り合わせる(ステップS6:第4の工程)。これにより、
図1に示す木質系部材100が製作される。
【0037】
図5には、この実施の形態に係る木質系部材100における曲げ強度の特性が示されている。
図5のグラフでは、横軸は、
図2に示す木質系部材100全体の断面積(
図1に示す断面積)に対する補強部材4の断面積の割合pt(%)を表している。
図6に示すように、木質系部材100の積層方向の厚みをDとし、幅をBとし、補強部材4の断面積の2本の合計をatとすると、割合ptは、以下の式で表される。
pt(%)=at/(B×D)
【0038】
図5において、縦軸は、補強部材4を付加したことによる、曲げ強度の増加率(倍率)を表している。縦軸では、補強部材4が挿入されていない場合の曲げ強度が1.0として示されている。
図5に示すように、補強部材4の占める面積の割合ptが大きくなればなるほど、木質系部材100の曲げ強度の増加率がほぼ線形的に増加している。例えば、異形鉄筋の割合を3.5%とすれば、曲げ強度の増加率は3.5倍となる。
【0039】
図7には、この実施の形態に係る木質系部材100における曲げ剛性の特性が示されている。
図7のグラフでは、横軸は、
図2に示す木質系部材100全体の断面積に対する補強部材4の断面積の割合pt(%)を表している。また、縦軸は、補強部材4を付加したことによる曲げ剛性の増加率(倍率)を表している。縦軸では、補強部材4が挿入されていない場合の曲げ剛性が1.0として示されている。
【0040】
白丸は、クリープを無視した場合の曲げ剛性の増加率を表し、黒丸はクリープを考慮した場合(クリープ係数2.0)の曲げ剛性の増加率を表している。なお、クリープとは、物体に持続応力が作用すると、時間の経過とともに歪みが増大する現象である。
図7に示すように、クリープを無視しても、クリープを考慮しても、補強部材4の占める面積が大きくなればなるほど、木質系部材100の曲げ剛性の増加率がほぼ線形的に増加している。例えば、クリープを考慮した場合、補強部材4の割合が3.5%の場合の曲げ剛性は、約10.0倍まで増加する。
【0041】
JAS集成材1の断面二次モーメントをIwとし、補強部材4(異形鉄筋)の集成材図心軸に対する断面二次モーメントをIsとし、JAS集成材1の曲げヤング係数Ewに対する補強部材4(異形鉄筋)のヤング係数Esの比をn(=31.5)とする。この場合、木質系部材100の断面2次モーメントIeは、以下の式で表される。
Ie=Iw+(n−1)・Is
このように、木質系部材100の断面2次モーメントIeは、補強部材4により、JAS集成材1の断面二次モーメントIwよりも大きくなる。
【0042】
図8には、木質系部材100と曲げ強度及び曲げ剛性と等価の木質系部材の一例が示されている。
図8に示すように、この実施の形態に係る木質系部材100では、幅広の木質系の平板2’をJAS集成材1に付加した木質系部材と同等の曲げ強度及び曲げ剛性が得られるようになる。
【0043】
以上詳細に説明したように、この実施の形態によれば、木質系部材100は、建築基準法に適合した木質系のJAS集成材1に、補強部材4が挿入された平板2を貼り合わせることにより形成されている。このようにすれば、木質系部材100について、建築基準法に適合しつつ、曲げ強度及び曲げ剛性を向上することができる。
【0044】
なお、この実施の形態では、JAS集成材1を、建築基準法に適合する基材とした。しかし、本発明はこれには限られない。JAS集成材1に代えて、一本の木材から得られる製材を用いてもよい。
【0045】
また、補強部材4として、異形鉄筋に代えて、アラミドロッドを用いてもよい。
【0046】
実施の形態2.
上述の実施の形態1に係る木質系部材100では、溝部3の底面は、平面であった。しかしながら、本発明はこれには限られない。この実施の形態に係る木質系部材100では、
図9に示すように、溝部3の底面が、補強部材4の側面に沿って湾曲した曲面となっている。
【0047】
溝部3の底面を補強部材4の側面に沿ったものとすれば、補強部材4と溝部3の底面との間の隙間を小さくすることができるので、接着剤の充填量を少なくすることができる。このようにすれば、高価な接着量の使用量を少なくして、木質系部材100の製造コストを低減することができる。
【0048】
木質系部材100の製造工程の流れは、上記実施の形態1と同じである(
図3参照)。ただし、この実施の形態では、ステップS1(平板2Aの製作)において、溝部3の底面が、補強部材4の側面に沿って湾曲した曲面となるように加工する。この加工は、ルータエンドミルという工具を用いて行われる。
【0049】
なお、
図10に示すように、溝部3の底面は、補強部材4の側面に沿って湾曲した多曲面であってもよい。このようにしても、接着剤の充填量を少なくして、木質系部材100の製造コストを低減することができる。さらに、平板2Aに発生する応力の集中も緩和することができる。
【0050】
以上説明したように、この実施の形態に係る木質系部材100では、溝部3の底面の形状を補強部材4の側面の形状に合わせることにより、接着剤の量を少なくして、木質系部材100の製造コストを低減することができる。
【0051】
実施の形態3.
上述の実施の形態1、2に係る木質系部材100では、溝部3に挿入されるのは補強部材4のみであった。しかし、本発明はこれには限られない。この実施の形態に係る木質系部材100では、
図11に示すように、溝部3の内壁と補強部材4との間に形成される空間に、補強部材4よりも小径の小補強部材8が挿入されている。小補強部材8としては、異形鉄筋又はアラミドロッドを用いることができる。
【0052】
小補強部材8を溝部3内に挿入すれば、補強部材4と溝部3の底面との間の隙間を小さくすることができるので、接着剤の充填量を少なくすることができる。このようにすれば、高価な接着量の使用量を少なくして、木質系部材100の製造コストを低減することができる。また、小補強部材8により、木質系部材100の曲げ強度及び曲げ剛性がさらに増大する。
【0053】
木質系部材100の製造工程の流れは、上記実施の形態1と同じである(
図3参照)。ただし、この実施の形態では、ステップS3(補強部材4の挿入)において、補強部材4の挿入前に溝部3の底面に小補強部材8を設置し、その後に補強部材4を溝部3に挿入すればよい。
【0054】
以上説明したように、この実施の形態に係る木質系部材100では、溝部3の内壁と補強部材4との間に小補強部材8を挿入することにより、その分だけ接着剤の量を少なくすることができる。この結果、木質系部材100の製造コストを低減することができる。
【0055】
実施の形態4.
上述の実施の形態3に係る木質系部材100では、溝部3に挿入されるのは補強部材4及び小補強部材8のみであった。しかし、本発明はこれには限られない。この実施の形態に係る木質系部材100では、
図12に示すように、溝部3の開口の少なくとも一部を塞ぐ小木板9が溝部3に挿入されている。このような小木板9を溝部3の開口部分に挿入すれば、溝部3への接着剤の充填量を少なくすることができるうえ、溝部3内の封入部5と、平板2A、2Bを接着する接着剤とが接触する部分を短くすることができるので、平板2Aと平板2Bとの接着の信頼性を向上することができる。
【0056】
木質系部材100の製造工程の流れは、上記実施の形態1と概略同じである(
図3参照)。ただし、この実施の形態では、ステップS4(封入部5の形成)において、溝部3に接着剤が充填し硬化する前に、小木板9が溝部3に挿入される。
【0057】
図13(A)〜
図13(C)には、溝部3への小木板9の挿入方法が示されている。この工程は、まず、
図13(A)に示すように、補強部材4が挿入され、接着剤が充填された溝部3に小木板9が嵌め込まれる。小木板9が溝部3に挿入されると、溝部3に充填された接着材の一部が溝部3からあふれ出す。この状態で接着剤が硬化された後、
図13(B)に示すように、溝部3からはみ出した、接着剤及び小木板9の部分をフライス盤で削って上面を平らにする。このようにして
図13(C)に示す平板2Aが製作される。
【0058】
以上説明したように、この実施の形態に係る木質系部材100では、溝部3の開口に小木板9を挿入することにより、溝部3に封入される接着剤の量を少なくすることができるうえ、溝部3に封入される接着剤と、平板2Bとを接着する接着剤との接触面積をできるだけ少なくして、それらの接着の信頼性を向上することができる。
【0059】
実施の形態5.
上述の実施の形態1に係る木質系部材100では、溝部3に挿入されるのは補強部材4及び小木板9のみであった。しかし、本発明はこれには限られない。この実施の形態に係る木質系部材100では、
図14に示すように、補強部材4及び小木板9のほか、補強部材4と小木板9との間に小補強部材8が挿入されている。
【0060】
木質系部材100の製造工程の流れは、上記実施の形態1と概略同じである(
図3参照)。ただし、この実施の形態では、ステップS3(補強部材4の挿入)において、小補強部材8が溝部3に挿入され、ステップS4(封入部5の形成)において、溝部3に接着剤が充填し硬化する前に、小木板9が溝部3に挿入される。
【0061】
以上説明したように、この実施の形態に係る木質系部材100では、溝部3の開口に小木板9を挿入し、小木板9と補強部材4との間に小補強部材8を挿入することにより、溝部3に封入される接着剤の量を少なくすることができるうえ、木質系部材100の曲げ強度及び曲げ剛性をさらに向上することができる。
【0062】
実施の形態6.
上述の実施の形態1に係る木質系部材100では、エンドミルを用いた切削により平板2Aに溝部3を形成した。しかしながら、本発明はこれには限られない。
図15に示すように、溝部3は、基材10の上に複数の角材11を組み合わせて配置することにより、形成されるようにしてもよい。
【0063】
木質系部材100の製造工程の流れは、上記実施の形態1と概略同じである(
図3参照)。ただし、ステップS1(平板2Aの製作)では、まず、
図16(A)及び
図16(B)に示すように、平板状の木質系の基材10に、基材10よりも細幅の複数の角材11を、間隔を置いて接着剤により貼り合わせる。さらに、
図16(C)を用いてルータエンドミルを用いて溝部3の底面を曲面に加工することにより、溝部3を有する平板2Aを製作する。
【0064】
このようにすれば、木材の切削量をできるだけ少なくして木くずを少なくし、高価な木材の効率的な活用が可能となる。
【0065】
実施の形態7.
上述の各実施の形態1では、プライマー処理を行って、接着剤の硬化による平板2Aの湾曲を抑制した。しかしながら、本発明はこれには限られない。例えば、ステップS4の封入部5の形成において、溝部3に充填された接着剤が硬化するまで、
図17に示すような固定具を用いて、平板2Aを固定して、平板2Aの湾曲を抑制するようにしてもよい。
【0066】
図17に示すように、平板2Aは、土台20の上に置かれ、平板2Aは、土台20と抑え板21との間に挟まれている。土台20と、抑え板21との間は、2本のネジ22が挿通されており、ネジ22にはボルト23が取り付けられている。これらのボルト23の調節により、土台20と抑え板21とで平板2Aを抑え込む力を調整可能である。この実施の形態では、この固定台を用いて、接着材が硬化して封入部5が形成されるまでの平板2の湾曲を抑制する。
【0067】
以上説明したように、この実施の形態では、固定台を用いて平板2Aの湾曲を抑制するので、フラットな平板2を製作して、製作された平板2をJAS集成材1に確実に取り付けることができる。
【0068】
実施の形態8.
上述の各実施の形態では、建築前の木質系部材100を補強した。しかしながら本発明はこれには限られない。建築物の柱又は梁の側面に平板2を貼り付けることにより、建築物を補強するようにしてもよい。
【0069】
図18には、建築物の補強方法の流れが示されている。
図18に示すように、ステップS1からステップS5まで、すなわち平板2を製作する処理は、上記実施の形態1における
図3の流れと同じである。ステップS5終了後、すなわち、平板2が製作されると、製作された平板2は、建築物の柱又は梁に貼り合わされる(ステップS16;第4の工程)。これにより、建築物の耐震強度が向上する。
【0070】
このように、すでに建築された建築物の柱又は梁を補強するのに、平板2を適用することも可能である。
【0071】
なお、上記各実施形態では、平板2に挿入される補強部材4の数を2つとしたが、
図19(A)に示すように、3つとしてもよい。補強部材4の数に制限はない。また、
図19(B)に示すようにJAS集成材1の片側だけに平板2を取り付けるようにしてもよい。さらに、
図19(C)及び
図19(D)に示すように、平板2Aを2段以上に積層するようにしてもよい。また、
図19(E)及び
図19(F)に示すように、JAS集成材1に対する平板2Aを外側にして、平板2Bを内側に配置するようにしてもよい。いずれにしても、補強部材4は、木質系部材100のできるだけ外側に配置されているのが望ましい。
【0072】
図20に示すように、木質系部材100は、断面が矩形状のものには限られない。十字型、ト型、L型断面の柱用の部材にも適用可能である。また、RG梁部材、2G・3G梁部材、FG梁部材などの梁用の部材にも適用可能である。
【0073】
本発明の木質系部材100は、建築基準法に適合した部材に平板2を付加するだけの構成であるので、全体の強度計算が非常に容易であるという利点もある。
【0074】
上記実施の形態では、補強部材4を円柱状の部材としたが、これには限られない。補強部材4は、角材や他の形状の棒材であってもよい。
【0075】
なお、上記実施の形態では、平板2を貼り合わせるJAS集成材1の断面の矩形状としたが、これには限られない。元の部材は、多角形状の柱材であればよい。このような柱材には、十字型、ト型、L型断面の部材も含まれる。
【0076】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。