(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486698
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】手術支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20190311BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20190311BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20190311BHJP
B33Y 99/00 20150101ALI20190311BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B5/055 380
A61B6/03 360G
B33Y99/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-11102(P2015-11102)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-135177(P2016-135177A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】512082680
【氏名又は名称】イーグロース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081536
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 巌
(72)【発明者】
【氏名】今西 勁峰
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−056299(JP,A)
【文献】
Megumi Nakao,Volumetric Surgical Planning System for Fibular Transfer in Mandibular Reconstruction,35th Annual International Conference of the IEEE EMBS,2013年 7月 3日,p.3367-3370
【文献】
岩井聡一,下顎骨切除に対する新しい腓骨皮弁再建システムの有用性,口腔腫瘍 22巻4号,2010年,128〜133頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/10 − 34/37
A61B 5/055
A61B 6/03
B33Y 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断層画像情報取得部と、メモリと、ボリュームレンダリング演算部と、輪郭検出部、形状誤差算出部およびディスプレイを備え、前記メモリは、前記断層画像情報取得部に接続され、断層画像情報のボクセル情報を格納し、前記ボリュームレンダリング演算部は、前記メモリに接続され、前記ボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直の方向において前記ボクセル情報をサンプリングし、前記ディスプレイに、前記ボリュームレンダリング演算部の演算結果を表示できるように構成し、手術の対象とする患部を除去する前に前記患部 の断層画像を撮影し、さらに前記患部に移植する別の部位の骨を採取するに先立って、前記骨を含む断層画像を撮影し、前記患部の切除すべき部分の輪郭を表示した部分に、移植すべき前記骨の輪郭が保てるように画像上において移植した時の形状画像を表示し、前記移植した骨が前記輪郭内に仮置きした状態において、前記移植の骨の外形と、患者の移植対象部との形状誤差を、前記形状誤差算出部において算出し、前記形状誤差が 前記ディスプレイにより表示され、前記ディスプレイに表示された前記患部、ならびに移植すべき前記骨に対して、切除指示等の、移植計画指示が入力されることを特徴とする手術シミュレーション装置。
【請求項2】
患部に移植する別の部位の骨の輪郭および移植対象の患部の輪郭を表示し、移植骨長、移植前表面積、移植後表面積および再建率等の形状指標をリアルタイムに算出し、ユーザに提示可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレーション装置。
【請求項3】
患部に移植するための別の部位の骨を採取するに先立って、前記骨を含む断層画像を撮影し、前記骨に付随する少なくとも血管が認識できるように撮影条件を設定した画像を同時に撮影し、血管と前記骨を一緒に認識できる画像を移植用の画像として用いたことを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレーション装置。
【請求項4】
前記位置誤差を利用することで、ユーザが入力した移植配置に対し、部分的に周辺に位置する切断面の配置位置または腓骨回転角を自動探索することで、より位置誤差の少ない配置を手術者に提示することを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレーション装置。
【請求項5】
ユーザが立案した移植計画に基づき、実際の手術の際に骨切りおよび移植用のサージカルガイドの形状を三次元プリンタで印刷可能なフォーマットを出力可能であることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術のシミュレーションを行う手術支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、適切な手術を行うために、手術支援装置による手術のシミュレーションが活用されている。従来の手術支援装置は、例えば、X線CT画像やMRI画像(核磁気共鳴画像)、によって撮影された画像の断層画像情報を蓄積する断層画像情報取得部と、断層画像情報取得部に接続されたメモリと、メモリに接続されたボリュームレンダリング演算部と、ボリュームレンダリング演算部の演算結果を表示するディスプレイと、ディスプレイに表示された表示対象物に対して切除・変形などの指示を行う入力部とを備えていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、断層画像を用いて生成される3次元ボリューム画像データを用いて術前に切除部位を確認し、仮想的に切削することが開示されている。また非特許文献1には切除した部分に腓骨から骨を移植する時の移植シミュレーションに関する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/118208
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】口腔腫瘍 22巻4号 128〜133頁 “下顎骨切除に対する新しい腓骨皮弁再建システムの有用性”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の手術支援装置では、以下に示すような問題点を有している。すなわち、上記特許文献1の公報に開示された手術支援装置では、単に切除を行うことができるが、切除した部分に別の組織を移植するシミュレーションはできなかった。
【0007】
また非特許文献1には、
図1において、3Dシミュレーション骨切り面の決定が示され、3D画像を用いてシミュレーションする手法が開示されている。非特許文献1の
図1で開示されている方法では、Fまで作業を行った後、骨切り面を修正したい場合に、再度Bにもどってやり直さなければならず、その煩わしさや切除部に移植する骨の大きさなどの決定に際し、目分量による曖昧さが存在する。
【0008】
本発明の課題は、術具を用いて切除される切除部位に別の部位から切り取った組織の形状を合致させるため、移植元の組織の部位を定め、切り取り寸法を決定し、患者の移植前の姿と、移植後の姿の差を演算させながら、最適解を追求し、移植作業のシミュレーションをインタラクティブに行うことができる手術支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の発明に係る。
1. 対象となる患者の患部を除去し、患者の別の部位の骨を採取し患部の元の位置に移植する際に、患部の輪郭を3D画像上において表示し、移植した骨との位置誤差を算出し、モニタ上に表示し、位置誤差の大きさを画像上に対応させて表示したことを特徴とする手術シミュレーション装置。
2. 切除対象部の輪郭および移植した骨の輪郭を3D画像上において検出し、移植骨長、移植前表面積、移植後表面積および再建率等の形状指標をリアルタイムに算出し、ユーザに提示可能にしたことを特徴とする1に記載の手術シミュレーション装置。
3. 別の部位の骨を採取するに先立って、骨を含む断層画像を撮影し、骨に付随する少なくとも血管が認識できるように撮影条件を設定した画像を同時に撮影し、血管と骨を一緒に認識できる画像を移植用の画像として用いたことを特徴とする1に記載の手術シミュレーション装置。
4. 前記位置誤差を利用することで、ユーザが入力した移植配置に対し、部分的に周辺に位置する切断面の配置位置または腓骨回転角を自動探索することで、より位置誤差の少ない配置を手術者に提示することを特徴とする1に記載の手術シミュレーション装置。
5. ユーザが立案した移植計画に基づき、実際の手術の際に骨切りおよび移植用のサージカルガイドの形状を三次元プリンタで印刷可能なフォーマットを出力可能であることを特徴とする1に記載の手術シミュレーション装置。
【0010】
本発明では腓骨から取りだした骨を下顎骨切断面に移植するシミュレーションを行う場合、患者の元の下顎骨の輪郭をCTなどの断層画像より算出し、移植した骨を当てはめた状態との差分を自動で算出し、最適な切除と移植をインタラクティブに行うことができるものである。
【0011】
そしてこの目的を達成するために、本発明の切除移植シミュレーション装置は、断層画像情報取得部と、メモリと、ボリュームレンダリング演算部と、ディスプレイと、入力部と、輪郭検出部、形状誤差算出部、色情報設定部と、を備えている。メモリは、断層画像情報取得部に接続されており、断層画像情報のボクセル情報を格納する。ボリュームレンダリング演算部は、メモリに接続されており、ボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直の方向においてボクセル情報をサンプリングする。ディスプレイは、ボリュームレンダリング演算部の演算結果を表示する。入力部は、ディスプレイに表示された表示対象物に対する切除指示、移植計画指示を入力する。
【0012】
切除範囲は、マウスなどの入力によって定義された複数の切断平面等によって定義され、メモリへ転送される。システムは切除される範囲とそれ以外の範囲を異なる表示方法でユーザに視覚的に提示する。以上のように、スライス情報を3次元画像に変換し、ディスプレイ上において、切除すべき部分を画像を観察することによって判断し、切除すべき部分を決定する。ここで、上記スライス画像としては、例えば、X線CTやMRI等の医用機器を用いて取得された2次元画像が含まれる。
【0013】
次に、ディスプレイ上において、切除した部分に移植するための骨部の形状、分割数を、移植候補である骨部の断層画像より得て、同じくスライス情報を3次元画像に変換した画像を観察することにより決定する。本発明はこの時、切除した部分に移植するために移植する骨の個数、形状を決定するために、画像上においてシミュレーションを実施し、移植作業を短時間で最も安全・最適に行うためのシミュレーションおよび評価方法を提案するものである。移植候補決定部は、ユーザの入力(平行移動、回転含む)に基づいて、前記切除範囲に移植すべき骨に対し、その採取すべき範囲、切断面の角度および移植先への配置箇所を算出する。
【0014】
患者の患部を切除したシミュレーション画像から輪郭を算出した輪郭検出部は、一定の密度でレイキャスティング走査によって、切除前の形状における移植前表面点、および移植後の形状における移植後表面点をそれぞれ検出する。また、腫瘍の浸食等によって、切除前形状に大きな欠損や変形がある場合に対し、ユーザの入力による輪郭の補足や、正常な形状を保っている顔面の反対側の顎骨輪郭で代用することも可能である。
【0015】
形状誤差算出部は、前記の移植前表面点に対応する移植後表面点間の距離誤差をそれぞれ求め、統計的にこれらの平均誤差、最大誤差等の形状評価指標値を算出する。また移植前表面点すべてによって構成される移植前表面積、移植後表面点すべてによって構成される移植後表面積をそれぞれ求めることによって、再建率等も算出する。
【0016】
ボリュームラベル設定部では、元の形状に対する移植後表面点それぞれの誤差等の評価指標値に基づき、ボリュームレンダリングに用いられるボクセルラベルに変換し、メモリに転送する。ここで、ボクセルラベルは、誤差の大小、復元度合い等を示すための情報であってボクセル情報と同じ構成を有し、初期状態では、ボクセルラベルとして決誤差がない場合は0.5)に設定される。
【0017】
色情報設定部は予めユーザまたは本システムによって決定されたルールに基づき、評価指標値を視覚的にフィードバックするための色情報を算出するためのカラールックアップテーブルを生成し、メモリに転送する。
【0018】
ボリュームレンダリング演算部は、メモリに格納されているボクセル情報等に基づいて、視線に対して垂直で、かつZ方向の間隔が一定の複数枚のスライス情報を3次元画像としてディスプレイに表示させる。また、ボリュームラベル設定部によってメモリに転送したボクセルラベルおよび色情報設定部によってメモリに転送されたカラールックアップテーブルに基づいて、3次元画像の各ボクセルに着色し、ユーザに現在の移植配置計画の優劣を視覚的にフィードバックする。
【0019】
前記形状誤差算出部における距離誤差の算出、およびボリュームレンダリング演算は並列演算手法を導入可能であり、汎用GPU等の演算デバイスを用いて実時間で算出することにより、ユーザは計画の優劣を確認しながら試行錯誤を行うことができ、ユーザ利便性の向上に大きく貢献する。
【0020】
移植手術用ガイド形状生成部では、ユーザが決定した移植計画に基づき、切除器具を補助するためのサージカルガイドの形状を自動または半自動で設計し、三次元プリンタで印刷可能なフォーマット等で出力する。
【発明の効果】
【0021】
患部である切除すべき切除部位に、別の部位から切り取った組織を移植し、移植後の形状を合致させるため、移植元の組織の部位を定め、切り取り寸法を決定し、移植作業のシミュレーション実際の手術に用いるためのサージカルガイド設計を行うことができる手術支援プログラムを提供することができ、複雑な移植手術を短時間に安全に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパーソナルコンピュータ(移植シミュレーション装置)を含む手術支援システムの構成を示す図。
【
図2】ボリューム空間と形状誤差に基づいた着色の指定を示す概念図。
【
図3】形状誤差算出するための検出方向決定方法を示す画像。
【
図6】移植時の元の顎形状と移植した骨から形成した形状との差を示す画像。
【0023】
本発明の一実施形態に係る移植シミュレーション装置について、
図1〜
図6を用いて説明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す移植シミュレーション装置は、パーソナルコンピュータ1に専用ソフトウエアを持たすことにより動作する。移植シミュレーション装置1は、ディスプレイ2と、入力部(キーボード入力3、マウス入力4、およびタブレット入力5)と、を備えている。キーボード入力3は、キーボードタイプのものである。また、マウス入力4は、マウスタイプのものである。タブレット入力5は、タブレットタイプのものである。
【0025】
断層画像情報取得部6には、ボクセル情報抽出部7を介して、断層画像情報部8が接続されている。つまり、断層画像情報部8では、CTあるいはMRIから断層画像情報が供給され、この断層画像情報がボクセル情報抽出部7により、ボクセル情報として抽出される。そして、このボクセル情報が、断層画像情報取得部6を介して、メモリ9のボクセル情報格納部10に格納される。
【0026】
メモリ9は、パーソナルコンピュータ1内に設けられており、ボクセル情報格納部10以外にボクセルラベル格納部11、色情報格納部12を備えている。
【0027】
また、メモリ9には、ボリュームレンダリング演算部13が接続されている。
ボリュームレンダリング演算部13は、メモリ9のボクセル情報格納部10に格納されているボクセル情報、およびボクセルラベル格納部11に格納されているボリュウム空間14を構成するボクセルラベル、色情報格納部12に格納されている色情報に基づいて、視線に対して垂直で、かつZ方向の間隔が一定の複数枚のスライス情報を算出する。そして、ボリュームレンダリング演算部13は、その演算結果を3次元画像としてディスプレイ2に表示する。また、ボリュームレンダリング演算部13には、バス16を介して、レイキャスティング走査距離を測定する輪郭検出部15が接続されている。
【0028】
輪郭検出部15には、輪郭線生成部17と形状誤差算出部18とが接続されている。形状誤差算出部18は、ボクセルラベル格納部11と、ボクセルラベル設定部19に接続されている。
【0029】
バス16には、上記以外に、色情報格納部12、ウィンドウ座標変換部20が接続されている。また、ウィンドウ座標変換部20はマウスなどの2次元入力を3次元に変換し、輪郭検出部15と色情報設定部21に情報を供給する。色情報設定部21は、色情報格納部12に接続されている。
【0030】
以上のような構成を有する移植シミュレーション装置を用いて、
図3a、
図3bおよび
図3cは、動作説明を行うための図面を示す。
【0031】
実際の手術においては、移植シミュレーション装置を用いる前に、まず次のように手術計画を策定する。
【0032】
最初に顎骨の患部を手術により取り除き、本人の腓骨から骨を移植する形状情報を、顎骨の患部を除去する前の顎骨の立体モデルから得る。
図3は本発明に係る顎骨の切除部の輪郭線などの指定方法を示す説明図、
図4は下顎骨の患部を示す説明図、
図5は腓骨を切断するときの説明図、および
図6は切除部に腓骨から移植する部分をはめ込むときの断面説明図である。
【0033】
(1)顎骨の患部を除去する前の患者の頭部をCTスキャンなどの撮像手段によって撮像
し、顎骨の撮像データ(スライス情報)を得る。
(2)患部を除去する前の撮像データを基に、顎骨の仮想3次元モデルを作成する。
(3)作製された顎骨の仮想3次元モデルから、想定される患部の形状と同じ形状の仮想患部を除去する。
【0034】
前記顎骨と、仮想患部を除去した顎骨の仮想立体モデルを使用して施術者が移植のシミュレーションを行う。このシミュレーションの結果から、必要であればチタンメッシュトレイや人工骨による形状の補正を行う。このように、施術者が移植のシミュレーションを行うことにより、骨芯の形状的な不具合を実際の移植前に把握し補正できると共に、施術者にとっては移植の手順などがより具体的にイメージできるので、移植手術の正確性や迅速性に大きく寄与することができる。
【0035】
図3aにおいて、患者の下顎部を含む断層画像が取得され、断層画像情報部8からの断層画像情報が入手され、これがボクセル情報抽出部7に供給される。
【0036】
次に、ボクセル情報抽出部7でボクセル情報が抽出される。ボクセル情報は、断層画像情報取得部6を介して、メモリ9のボクセル情報格納部10に格納される。ボクセル情報格納部10に格納されるボクセル情報は、例えば、I(x,y,z,α)で構成される点の情報である。このとき、Iは当該点の輝度情報であり、x,y,zは座標点を示し、αは透明度情報である。
【0037】
次に、
図3aにおいて、ボリュームレンダリング演算部13により、ボクセル情報格納部10に格納されているボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直で、かつ間隔が一定の複数のスライス情報を算出し、スライス情報群を取得する。そして、スライス情報群は、ボリュームレンダリング演算部13内に少なくとも一時的に格納される。例えば前記スライス情報群は2mm間隔で生成される。
【0038】
図2は10に格納されたボクセル情報の集団、ボリューム空間の説明の図面である。
図2aにおいて、14がボリューム空間で、患者の下顎のCT画像から得られたボリュームデータ24と、ボクセルラベルの集合22と移植した骨27が移植前の形状である輪郭線に対して陥没しているか、突出しているかを示す。そのため、23に示すボクセル空間のカラーラベルを変化させて、25に示す通り、誤差に応じた色相を表示している。(
図2a、2b)
【0039】
色の表示を行うため、各スライス情報に示された下顎下縁接平面定義時の4点からなるガイド線31に対して輪郭検出部15は一定間隔で垂直方向にスキャンし、表面の輪郭を検出し、17の輪郭生成部に格納する。その結果は、
図3b表面の輪郭線(黄色線)36により示される。(
図3)
【0040】
図3cにおいて、3D表示した下顎の形状と、輪郭から垂直方向にスキャンする法線を一緒に示した。移植前の顎骨形状と移植後の骨の形状誤差はこれらの法線に基づいて算出される。なお、
図3cでは法線の間隔は粗く表示されているが、実際にはより高い精度で形状誤差を算出するため、0.5mm以下の間隔で法線を配置してスキャンに用いることが可能である。法線を密にすればするほど、演算量は増大するが、それぞれの法線に基づく誤差は独立に算出可能であることから、本発明ではGPGPU等の並列演算技術を利用することで、これらの誤差を高速に算出可能であり、インタラクティブなシミュレーションが可能である。
【0041】
下顎骨40のスライス情報群から生成した3D画像上に、
図4に示す如く患部41が示されている。この場合患部41は例えばガン化した領域を示しており、周辺とともに切除の対象になっている。
【0042】
移植する骨は腓骨から切り出され、下顎画像と同様に、患者の腓骨のCT画像が取得され、断層画像情報部8からの断層画像情報が入手され、これがボクセル情報抽出部7に供給され記憶される。そして同様の手順でスライス情報群として、ボクセル情報格納部10に格納される。
【0043】
図5に示す通り、腓骨のスライス情報群を用いて3Dレンダリング画像が生成される。本実施例では腓骨45は、切断され42の腓骨A,43の腓骨B,44の腓骨C、となる。これらの腓骨には図示しないが、血管が付随しており、移植後口腔内の血管に接続される。実施例では表示していないが、腓骨の断層画像は骨を撮影できるCTだけではなく、血管が表示できる条件のもとに撮像されたCT,あるいはMRI画像を重畳して示すこともできる。
【0044】
図6に示すように、下顎の患部が除去されて輪郭だけになった部分に、分割された腓骨42,43,44が元の輪郭を保てるように移植される。この時、輪郭線に対して、移植した骨が輪郭内に仮置きされ、移植の骨の外形が、元の患者の下顎外形との形状誤差が18の形状誤差算出部において算出され、19のボクセルラベル設定部により表示される。
【0045】
前記表示の方法としては、例えば色相によって表示させる。そして誤差が大きい時は赤、少なくなって時は緑に、
図6に示す通り、色相を変化させて表示する。なお、色相を変化させる代わりに、色度、色濃度、あるいはコントラストを変化させてもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、切除工具等の仮想術具を用いて下顎部移植に対する手術のシミュレーションを実施する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
前記形状誤差の評価指標を利用することで、ユーザが入力した移植配置に対し、部分的に周辺(切断面の配置位置または腓骨回転角等)を自動探索することで、より最適な解をインタラクティブにユーザへ提示することができ、短時間で高品質な手術計画を立案可能なインタフェースを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の手術支援装置は、各種手術を実施する際の手術支援装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 パーソナルコンピュータ(移植シミュレーション装置)
2 ディスプレイ(表示部)
3 キーボード(入力部)
4 マウス(入力部)
5 タブレット(入力部)
6 断層画像情報取得部
7 ボクセル情報抽出部
8 断層画像情報部
9 メモリ
10 ボクセル情報格納部
11 ボクセルラベル格納部
12 色情報格納部
13 ボリュームレンダリング演算部(輪郭、距離算出部、シミュレーション部)