(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記素材を吸着してから前記第1の所定位置まで前記吸着パッドを上昇させる速度を、前記第1の所定位置から前記第2の所定位置まで前記吸着パッドを上昇させる速度よりも遅くなるように制御する、
請求項1に記載の素材分離装置。
前記吸着パッドを前記第1の所定位置に所定時間停止してから前記第2の所定位置まで上昇させる際における停止状態からの前記吸着パッドの加速度を変更する入力が行われる第2入力部を更に備え、
前記制御部は、前記入力された加速度で前記停止状態から前記吸着パッドを上昇させるように制御する、
請求項1〜3のいずれかに記載の素材分離装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す素材分離装置では、エアシリンダによって吸着パッドが駆動されているため、簡単な吸着パッドの動作しか実行できずダブルブランクの発生を十分に低減できなかった。
本発明の目的は、上記従来の素材分離装置の課題を考慮し、ダブルブランクの発生をより低減可能な素材分離装置および素材分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る素材分離装置は、載置部と、ブロー部と、吸着部と、駆動部と、制御部と、を備える。載置部には、積層された複数枚のシート状の素材が配置される。ブロー部は、載置部に載置された複数枚の素材にエアーを吹き付けて最上面の素材の少なくとも一部を浮遊させる。吸着部は、複数の吸着パッドを有し、エアーが吹き付けられた状態の最上面の素材を上方から吸着パッドにより吸着して保持する。駆動部は、電動モータを有し、電動モータを用いて各々の吸着部を上下方向に駆動する。制御部は、素材を吸着した吸着パッドを第1の所定位置に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッドを第1の所定位置に所定時間停止してから吸着パッドを第2の所定位置まで上昇させるように制御する。
【0007】
電動モータを備えることにより、素材を吸着した吸着パッドを駆動部により第1の所定位置に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッドを第1の所定位置に所定時間停止してから吸着パッドを駆動部により第2の所定位置まで上昇させる制御を行うことが出来る。
そして、このような制御を行うことにより、特に非磁性体の素材(例えば、アルミニウムのシート)においてダブルブランクの発生を低減できる。尚、ダブルブランクとは、素材が2枚だけでなく、3枚以上移動される場合も含む。
また、エアーによって最上面以外の素材も浮上する場合があり、エアーを停止した状態で吸着パッドを所定時間停止することによって、最上面以外の素材が落下する時間を確保できるため分離し易くなる。
【0008】
第2の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、制御部は、素材を吸着してから第1の所定位置まで吸着パッドを上昇させる速度を、第1の所定位置から第2の所定位置まで吸着パッドを上昇させる速度よりも遅くなるように制御する。
このように制御することにより、素材を吸着してから第1の所定位置まで吸着パッドを上昇させる速度を遅くできるため素材が分離し易くなる。
また、第1の所定位置から第2の所定位置まで吸着パッドを上昇させる速度を速くできるため処理速度を向上できる。
【0009】
第3の発明に係る素材分離装置は、第1の発明に係る素材分離装置であって、第1入力部を更に備える。第1入力部は、素材を吸着してから第1の所定位置まで吸着パッドを上昇させる際の速度または加速度を変更する入力が行われる。制御部は、入力された速度または加速度で吸着パッドを上昇させるように制御する。
【0010】
このように、第1入力部を備えることにより、素材の種類および状態に合わせて、ユーザが速度または加速度を変更できるため、適切な条件で素材の分離動作を行える。例えば素材に塗布されている防錆油の粘度が高く素材の分離が行い難い場合には、速度を遅くまたは加速度を小さく変更することにより、ダブルブランクの発生を低減できる。
また、防錆油の粘度が低く素材の分離が行い易い場合には速度を速くまたは加速度を大きくできるため、処理速度を上げることが出来る。
【0011】
第4の発明に係る素材分離装置は、第1〜3のいずれかの発明に係る素材分離装置であって、第2入力部を更に備える。第2入力部は、吸着パッドを第1の所定位置に所定時間停止してから第2の所定位置まで上昇させる際における停止状態からの吸着パッドの加速度を変更する入力が行われる。制御部は、入力された加速度で停止状態から吸着パッドを上昇させるように制御する。
【0012】
このように、第2入力部を備えることにより、素材の種類および状態に合わせて、ユーザが加速度を変更できるため、適切な条件で素材の分離動作を行える。すなわち、防錆油等の条件により素材の分離が行い難い場合には、加速度を小さく変更することにより、素材のダブルブランクの発生を低減できる。また、素材の分離が行い易い条件の場合には加速度を大きくできるため、処理速度を上げることが出来る。
【0013】
第5の発明に係る素材分離方法は、電動モータによって吸着パッドを上下に駆動する素材分離装置を用いた素材分離方法であって、ブロー工程と、吸着工程と、第1上昇工程と、停止工程と、第2上昇工程とを備える。ブロー工程は、積層された複数枚のシート状の素材にエアーを吹き付けることによって最上面の素材の少なくとも一部を浮遊させる。吸着工程は、エアーが吹き付けられた状態の最上面の素材を上方から吸着パッドにより吸着して保持する。第1上昇工程は、素材を吸着した吸着パッドを第1の所定位置まで上昇させる。停止工程は、エアーを停止させた状態で吸着パッドを第1の所定位置に所定時間停止する。第2上昇工程は、所定時間停止した吸着パッドを第2の所定位置まで上昇させる。
【0014】
このような動作を行うことにより、特に非磁性体の素材においてダブルブランクの発生を低減できる。
また、エアーによって最上面以外の素材も浮上する場合があり、エアーを停止した状態で吸着パッドを所定時間停止することによって、最上面以外の素材が落下する時間を確保できるため分離し易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダブルブランクの発生をより低減可能な素材分離装置および素材分離方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施の形態の素材分離装置について図面を参照しながら以下に説明する。
(1.素材分離装置の構成)
図1は、本実施の形態の素材分離装置1の構成を示す図である。図に示すように、素材分離装置1は、主に載置部2と、ブロー部3と、吸着部4と、吸着パッド駆動部5と、位置検出部6と、操作部9と、制御部10とを備える。
【0018】
素材分離装置1は、複数枚のシート状の素材が積層されたスタックから一枚の素材を分離する。素材分離装置1で分離するシート状の素材としては、例えばアルミニウム、マグネシウム等の非磁性体材料が挙げられる。本実施の形態では、アルミシートを例に挙げて説明する。
素材分離装置1は、アルミシート11が積層されたスタック12から一枚のアルミシート11を吸着部4によって吸着して上方のコンベア100へと移動する。コンベア100は、吸着機能を備えており、素材分離装置1によって分離されたアルミシート11を吸着して保持しながら次の作業装置(例えばプレス装置)に向けて搬送する。
【0019】
操作部9は、吸着部4の吸着パッド411(詳しくは後述する)の上昇移動の際の速度の入力等が行われる。制御部10は、位置検出部6による検出および操作部9からの入力に基づいて、載置部2、ブロー部3、吸着部4および吸着パッド駆動部5を制御する。
以下、構成について順に説明する。
【0020】
(2.載置部)
載置部2は、載置台21と、載置台21を昇降駆動する載置台駆動部22とを有する。
載置台21には、アルミシート11が複数枚積層されたスタック12が載置される。載置台駆動部22は、載置台21を昇降駆動する。
載置台駆動部22は、
図1に示すように載置台21の左右に配置されており、載置台21を昇降可能に支持する。
載置台駆動部22は、図示しない油圧シリンダ、油圧シリンダに接続された油圧回路および油圧回路に作動油を供給するポンプ等を有している。制御部10が載置台駆動部22の油圧回路のバルブおよびポンプ等を制御することによって、載置台21が昇降駆動する。
【0021】
(3.ブロー部)
ブロー部3は、空気を吐出する複数のノズル31と、高圧空気を生成するエアーコンプレッサ32と、ノズル31とエアーコンプレッサ32の間の流路に設けられたバルブ33とを有する。複数のノズル31は、スタック12の上端近傍であって左右に対向して配置されている。ノズル31は、スタック12の上端近傍の側方に向けて高圧空気を吐出し、最上面のアルミシート11を浮遊させる。エアーコンプレッサ32は、複数のノズル31に圧縮空気を供給する。バルブ33は、エアーコンプレッサ32とノズル31の間に設けられている。エアーコンプレッサ32は常時駆動されており、制御部10によりバルブ33がオンされるとノズル31から圧縮空気が吐出され、バルブ33がオフされるとノズル31からの圧縮空気の吐出が停止される。
【0022】
(4.吸着部)
吸着部4は、
図1における左右方向および紙面奥行方向に複数並んで配置された吸着パッド部41と、それぞれの吸着パッド部41に接続されたバルブ42と、すべてのバルブ42に接続された真空ポンプ43(
図1参照)とを有する。なお、
図1では、図を見やすくするためにすべての吸着パッド部41に対するバルブ42は記載していない。
【0023】
図2(a)および
図2(b)は、吸着パッド部41および吸着パッド駆動部5の構成を示す部分断面図である。
図2(a)は、吸着パッド部41が上方に移動した状態を示す図であり、
図2(b)は、吸着パッド部41が下方に移動した状態を示す図である。
図2に示すように、吸着パッド部41は、アルミシート11に吸着する吸着パッド411と、吸着パッド部41の上端に接続されたパッド支持部材412と、パッド支持部材412の上端が接続されたチューブ接続部413と、チューブ接続部413の上側に配置された駆動接続部414と、を有している。
【0024】
吸着パッド411は、ゴムなどによって形成されており、アルミシート11に吸着する。パッド支持部材412は、中空の円筒状の部材であり、吸着パッド411の内側空間と繋がっている。チューブ接続部413には、バルブ42に繋がっているチューブ44が接続される。バルブ42は真空ポンプ43と接続されている。吸着パッド411をアルミシート11の上面に当接させ、真空ポンプ43を動作させることによって、吸着パッド411の内側空間の空気が、パッド支持部材412、チューブ接続部413、チューブ44およびバルブ42を介して真空ポンプ43によって吸引される。これによって、アルミシート11は吸着パッド411に吸着されて保持される。
駆動接続部414は、チューブ接続部413と吸着パッド駆動部5の間を接続する。
【0025】
(5.吸着パッド駆動部)
吸着パッド駆動部5は、複数のサーボモータ50と、サーボモータ50の回転駆動を上下方向の駆動に変換する変換部51とを有する。サーボモータ50、変換部51、および吸着パッド部41の順に上から配置されている。
【0026】
サーボモータ50は、吸着パッド部41ごとに設けられ吸着パッド部41を上下動させる駆動源として用いられる。サーボモータ50は、その回転軸501が鉛直方向と一致するように配置されている。
変換部51は、サーボモータ50と同軸上に配置されたボールネジ511と、ナット512と、ナット512の回転方向の動きを規制する規制部513と、規制部513と接続されている円筒部514と、ボールネジ511、ナット512、規制部513、および円筒部514を覆うハウジング515とを主に有する。
【0027】
ハウジング515は、円筒形状であって、上端にサーボモータ50が配置されている。サーボモータ50の回転軸501は、ベアリング53によってハウジング515に回転可能に支持されている。
ボールネジ511は、鉛直方向に沿って配置されており、回転軸501と連結し同軸上に配置されている。ナット512はボールネジ511に挿通されており、ナット512の内側のネジ部と、ボールネジ511の表面のネジ部が螺合している。
【0028】
規制部513は、ナット512と連結して設けられており、ボールネジ511の回転によってナット512が供回りすることを防ぐ。例えば、ハウジング515の内周面が平面視において四角形状に形成されており、規制部513もハウジング515の内周に沿って四角形状に形成されている。
円筒部514は、ボールネジ511の周囲にボールネジ511と非接触に配置されている。円筒部514の上端は、規制部513に接続されており、下端は駆動接続部414と接続されている。
【0029】
なお、複数のハウジング515は、支持フレーム8(
図1参照)によって載置部2の上方に支持されている。
以上のような構成によって、サーボモータ50を駆動すると、ボールネジ511が一方向に回転する。
図2(b)に示すように、規制部513によって供回りが規制されたナット512がボールネジ511の回転に伴って下方に移動する。そして、規制部513を介してナット512と連結している円筒部514が下方に移動し、吸着パッド部41が下方に移動する。
また、ボールネジ511の回転方向を逆にすることによって、吸着パッド部41は上方に移動する。
【0030】
(6.位置検出部)
位置検出部6は、光電センサであり、
図1に示すように光を発する投光部61と、投光部61から投光した光を受光する受光部62とを有する。投光部61と受光部62は、スタック12の上端位置に設けられており、スタック12を左右方向から挟むように配置されている。
投光部61からの光がスタック12によって遮られ受光部62が受光しなくなると、スタック12の最上面がシート分離位置に達したことを検出して制御部10へと信号を送信する。ここで、シート分離位置とは、最上面のアルミシート11の分離動作が開始される位置のことである。
【0031】
(7.制御部)
制御部10は、載置台駆動部22の油圧シリンダ、油圧回路およびポンプ等を制御し、載置台21を昇降移動する。制御部10は、位置検出部6による検出に基づいて、載置台21を停止してエアーコンプレッサ32を駆動してノズル31からアルミシート11に向けてエアーを吹き付ける。
【0032】
また、制御部10は、サーボモータ50を駆動して、吸着パッド411を下方に移動し、吸着パッド411を停止させた後、真空ポンプ43およびバルブ42を駆動してアルミシート11を吸着パッド411に吸着させる。
制御部10は、記憶部13を有している。記憶部13には、吸着パッド411の初期設定のモーション(後述する
図4参照)などが記憶されている。
【0033】
制御部10は、初期設定のモーションに基づいて制御を行い、スタック12からのアルミシート11の分離動作を行う。また、ユーザが操作部9に入力した値に基づいて初期設定のモーションの一部を変更し、変更したモーションで制御を行ってアルミシート11の分離動作を行う。操作部9については、本実施の形態の素材分離装置1の動作を説明した後に説明する。
【0034】
(8.動作)
次に、本実施の形態の素材分離装置1の動作を説明するとともに、素材分離方法の一例についても説明する。
図3は、アルミシートの分離動作を説明するためのフロー図である。また、
図4は、吸着パッド411の初期設定のモーションを示す図であり、初期設定のモーションでアルミシートの分離動作を行った際の吸着パッド411の位置と移動速度の変化を示す。
図5(a)〜(d)は、吸着パッド411とアルミシート11の挙動の一例を説明するための図である。
【0035】
ステップS10において、制御部10は、載置台駆動部22を駆動し、載置台21を上昇させる。次に、ステップS20において、位置検出部6によってスタック12の上端がシート分離位置に達したことが検出されると、ステップS30において、制御部10は、載置台21の上昇を停止する。
次に、ステップS40において、制御部10は、ブロー部3のバルブ33をオンしてエアーをノズル31から噴出する。この動作によって、
図5(a)に示すようにスタック12の最上面のアルミシート11および最上面よりも下側の数枚のアルミシート11が浮遊する。本実施の形態の素材分離装置1では、左右にノズル31が設けられており、アルミシート11の全体が浮遊する。
【0036】
次に、ステップS50において、制御部10は、バルブ42をオンして吸着パッド411の内側の空気の吸引を開始する。
次に、ステップS60において、制御部10は、サーボモータ50を駆動して吸着パッド411を搬送位置から吸着位置まで第1の速度V1で下降させ、
図5(b)に示すように浮遊状態の最上面のアルミシート11に吸着パッド411を押し付ける。この吸着パッド411の下降は、
図4の時刻t0〜t1の区間Aに相当する。また、吸着位置が、
図4においてh0として示されている。また、搬送位置がh2として示されている。
【0037】
吸着パッド411を第1の速度V1で下降させる場合、吸着パッド411が順に加速、一定速および減速移動するようにサーボモータ50が制御される。すなわち、搬送位置(h2)で停止状態の吸着パッド411は第1の速度V1に達するまで加速しながら下降する。この第1の速度V1までの加速が、区間A1として示されている。次に、サーボモータ50が一定速度で回転し、吸着パッド411は第1の速度V1で区間A2の間下降する。区間A2の後、吸着パッド411は減速しながら下降し、吸着位置(h0)で停止する。吸着位置(h0)は、
図5(b)に示す吸着パッド411の位置に相当する。
【0038】
次に、ステップS70において、アルミシート11を吸着させるために、吸着パッド411は、アルミシート11に押し付けた状態(時刻t1の位置)で時刻t2まで吸着位置(h0)に保持される。この吸着パッド411の状態の保持が、
図4において、時刻t1〜t2の区間Bとして示されている。
次に、制御部10は、ステップS80において、
図5(c)に示すように吸着パッド駆動部5を駆動して吸着パッド411を一時停止位置まで第2の速度V2で上昇させる。この吸着パッド411の上昇は、
図4の時刻t2〜t3の区間Cに相当する。また、一時停止位置は、
図4においてh1と示されている。
【0039】
この区間Cにおいても区間Aと同様に、吸着パッド411が加速、一定速および減速移動するようにサーボモータ50が制御される。
すなわち、区間C1に示すように吸着位置(h0)で停止状態の吸着パッド411は第2の速度V2に達するまで加速しながら上昇する。次に、サーボモータ50が一定速度で回転し、吸着パッド411は第2の速度V2で区間C2の間上昇する。区間C2の後、吸着パッド411は減速しながら上昇し、一時停止位置(h1)で停止する。
【0040】
なお、この区間Cにおける第2の速度V2は、区間Aの第1の速度V1、および区間Eの第3の速度V3(後述する)よりも遅いために、
図4の速度変化のグラフに示すように加速する区間C1および減速する区間C3が短時間になっている。
次に、制御部10は、ステップS90において吸着パッド411が一時停止位置(h1)に到達すると、ステップS100において、バルブ33をオフしてエアーブローを停止する。
【0041】
続いて、制御部10は、ステップS110において、吸着パッド411を一時停止位置に所定時間停止する。これによって、最上面のアルミシート11以外のエアーブローによって浮遊していたアルミシート11(
図5(c)参照)が、
図5(d)に示すように落下する。この吸着パッド411の一時停止は、
図4の時刻t3〜t4の区間Dに相当する。
次に、制御部10は、ステップS120において吸着パッド411を第3の速度V3で搬送位置まで上昇させる。搬送位置(h2)に到達すると、制御部10は、吸着パッド411の移動を停止する(ステップS130)。そして、吸着パッド411に吸着されたアルミシート11はコンベア100に吸着される。この吸着パッド411の上昇時間は、
図4において時刻t4〜t5の区間Eに相当する。
【0042】
この区間Eにおいても区間Aおよび区間Cと同様に、吸着パッド411が加速、一定速および減速移動するようにサーボモータ50が制御される。
すなわち、区間E1に示すように一時停止位置(h1)で停止状態の吸着パッド411は第3の速度V3に達するまで加速しながら上昇する。次に、サーボモータ50が一定速度で回転し、吸着パッド411は第3の速度V3で区間E2の間上昇する。区間E2の後、区間E3において吸着パッド411は減速しながら上昇し、搬送位置(h2)で停止する。また、本実施の形態では、第3の速度V3は、第1の速度V1と向きが反対であるが同じ速度に設定されている。なお、第1の速度V1と第3の速度の大きさは異なっていても良い。
【0043】
ステップS130の後、制御部10は、ステップS140において、バルブ42をオフして吸着パッド411によるアルミシート11の吸着を解除する。吸着が解除されたアルミシート11は、コンベア100によって搬送される。
以上のようにして、積層された複数枚のアルミシート11から一枚のアルミシート11だけが分離されて搬送される。
【0044】
なお、
図5(a)〜(d)に示すアルミシート11の挙動は一例を示すだけであり、
図5(b)の時点で最上面のアルミシート11のみ引き上げられ、他のアルミシート11が浮遊しない場合もある。また、
図5(c)では、吸着パッド411の一時停止位置(h1)への上昇に従って最上面のアルミシート11につられて他のアルミシート11も上昇しているが、上昇しない場合もある。
【0045】
(9.操作部)
図1に示す操作部9は、例えばタッチパネル等で構成されており、第1入力部91と第2入力部92を有する。
第1入力部91は、タッチパネルの画面上に形成されており、区間Cにおける第2の速度V2が入力可能である。
【0046】
例えば、第1入力部91は、パーセンテージで表示されており、初期に設定されている第2の速度V2を100%として、高速または低速に設定できる。
第2入力部92は、タッチパネルの画面上に形成されており、区間E1における加速度を入力可能である。上述したように区間E1における加速度とは、一時停止位置(h1)での停止状態から第3の速度V3に達するまでの吸着パッド411の加速度である。例えば、第2入力部92は、第3の速度V3に達するまでの時間を入力可能である。第2入力部92に入力する時間を長くすることにより、加速度を小さくでき、第2入力部92に入力する時間を短くすることにより、加速度を大きく出来る。
【0047】
第1入力部91に入力する値を小さくすると、アルミシート11を吸着した後の吸着パッド411の引き上げ速度を遅く出来る。このため、最上面のアルミシート11に下側のアルミシート11がつられてあがることを抑制できる。
また、第2入力部92に入力する時間を長くして加速度を小さくすることによって、一時停止位置からの吸着パッド411の引き上げの加速が遅くなる。これにより、一時停止後であっても最上面のアルミシート11につられて一時停止位置に位置するアルミシート11が最上面のアルミシート11に引きずられることを抑制できる。
【0048】
すなわち、
図4に示す初期設定のモーションでは、アルミシート11のダブルブランクが発生する場合には、より小さい値を第1入力部91に入力し、より長い時間を第2入力部92に入力することによって、アルミシート11の分離性を向上できる。
また、ユーザが、所定の素材および条件において第1入力部91及び第2入力部92に入力する値を変化して試すことにより、ダブルブランクが発生しない最大の速度および加速度で素材の分離を行うことができるため、処理速度を向上することが出来る。
【0049】
図6は、より小さい値を第1入力部91に入力し、より長い時間を第2入力部92に入力した場合の吸着パッド411の位置及び速度の変化を示す図である。
図6には、比較のため初期設定の吸着パッド411の位置の変化を示すグラフが二点鎖線で示されている。
図6に示すように、第2の速度V2が遅い速度V2´に設定されたため、吸着位置(h0)から一時停止位置(h1)に到達するまでの区間C´の時間(時刻t2〜t3´)が初期設定での時間(時刻t2〜t3)に比べて長くなる。詳細には、第2の速度V2が遅く変更されたため、区間C2´は区間C2よりも長くなる。一方、第2の速度V2が遅く変更されたため加速および減速に要する時間が短くなり、区間C1´は区間C1よりも短くなり、区間C3´は区間C3よりも短くなる。
【0050】
なお、区間Dにおける時刻t3´〜t4´の間の時間は、初期設定の時刻t3〜t4と同じである。
また、第2入力部92により長い時間を入力することによって加速度が小さくなり、
図5の区間E1´に示すように、区間E2´に示す第3の速度V3に達するまでの時間が初期設定の区間E1よりも長くなる。そのため、区間E´の時間(時刻t4´〜t5´)は、初期設定の時間(時刻t4〜t5)よりも長くなる。
【0051】
(10.主な特徴)
(10−1)
本実施の形態の素材分離装置1は、載置部2と、ブロー部3と、吸着部4と、吸着パッド駆動部5(駆動部の一例)と、制御部10と、を備える。載置部2には、積層された複数枚のアルミシート11(シート状の素材の一例)が載置される。ブロー部3は、載置部2に載置された複数枚のアルミシート11にエアーを吹き付けて最上面の素材の少なくとも一部を浮遊させる。吸着部4は、複数の吸着パッド411を有し、エアーが吹き付けられた状態の最上面のアルミシート11を上方から吸着パッド411により吸着して保持する。吸着パッド駆動部5は、サーボモータ50(電動モータの一例)を有し、サーボモータ50を用いて各々の吸着部4を上下方向に駆動する。制御部10は、アルミシート11を吸着した吸着パッド411を一時停止位置(h1)(第1の所定位置の一例)に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッド411を一時停止位置(h1)に所定時間停止してから吸着パッド411を搬送位置(h2)(第2の所定位置の一例)まで上昇させるように制御する。
【0052】
サーボモータ50を備えることにより、アルミシート11を吸着した吸着パッド411を吸着パッド駆動部5により一時停止位置(h1)に上昇させ、エアーを停止させた状態で吸着パッド411を一時停止位置(h1)に所定時間停止してから吸着パッド411を吸着パッド駆動部5により搬送位置(h2)まで上昇させる制御を行うことが出来る。
そして、このような制御を行うことにより、アルミシートなどの特に非磁性体の素材においてダブルブランクの発生を低減できる。
また、エアーによって最上面以外のアルミシート11も浮上する場合があり、エアーを停止した状態で吸着パッド411を所定時間停止することによって、最上面以外のアルミシート11が落下する時間を確保できるため分離し易くなる。
【0053】
(10−2)
本実施の形態の素材分離装置1では、制御部10は、アルミシート11を吸着してから一時停止位置(h1)まで吸着パッド411を上昇させる第2の速度V2を、一時停止位置(h1)から搬送位置(h2)まで吸着パッド411を上昇させる第3の速度V3よりも遅くなるように制御する。
このように制御することにより、アルミシート11を吸着してから一時停止位置(h1)まで吸着パッド411を上昇させる速度を遅くできるため素材が分離し易くなる。
また、一時停止位置(h1)から搬送位置(h2)まで吸着パッド411を上昇させる速度を速くできるため処理速度を向上できる。
【0054】
(10−3)
本実施の形態の素材分離装置1は、第1入力部91を更に備える。第1入力部91は、アルミシート11を吸着してから一時停止位置(h1)まで吸着パッド411を上昇させる際の第2の速度V2を変更する入力が行われる。制御部10は、入力された第2の速度V2で吸着パッド411を上昇させるように制御する。
【0055】
このように、第1入力部91を備えることにより、アルミシート11の状態に合わせて、ユーザが速度または加速度を変更できるため、適切な条件で素材の分離動作を行える。例えば、防錆油の粘度等の条件に合わせてアルミシート11の分離が行い難い場合には、第2の速度V2を遅く変更することにより、アルミシート11のダブルブランクの発生を低減できる。
また、素材の分離が行い易い条件の場合には第2の速度V2を速くできるため、処理速度を上げることが出来る。
【0056】
(10−4)
本実施の形態の素材分離装置1は、第2入力部92を更に備える。第2入力部92は、吸着パッド411を一時停止位置(h1)に所定時間停止してから搬送位置(h2)まで上昇させる際における停止状態からの吸着パッド411の加速度を変更する入力が行われる。制御部10は、入力された加速度で停止状態から吸着パッドを上昇させるように制御する。
【0057】
このように、第2入力部92を備えることにより、アルミシート11の状態に合わせて、ユーザが加速度を変更できるため、適切な条件で素材の分離動作を行える。例えば、防錆油の粘度等の条件に合わせてアルミシート11の分離が行い難い場合には、加速度を小さく変更することにより、アルミシート11のダブルブランクの発生を低減できる。また、アルミシート11の分離が行い易い条件の場合には加速度を大きくできるため、処理速度を上げることが出来る。
【0058】
(10−5)
本実施の形態の素材分離方法は、サーボモータ50(電動モータの一例)によって吸着パッド411を上下に駆動する素材分離装置を用いた素材分離方法であって、ステップS40(ブロー工程の一例)と、ステップS60、S70(吸着工程の一例)と、ステップS80、S90(第1上昇工程の一例)と、ステップS100、S110(停止工程の一例)と、ステップS130、S140(第2上昇工程の一例)とを備える。ステップS40(ブロー工程の一例)は、積層された複数枚のアルミシート11(シート状の素材の一例)にエアーを吹き付けることによって最上面のアルミシート11の少なくとも一部を浮遊させる。ステップS60、S70(吸着工程の一例)は、エアーが吹き付けられた状態の最上面のアルミシート11を上方から吸着パッド411により吸着して保持する。ステップS80、S90(第1上昇工程の一例)は、アルミシート11を吸着した吸着パッド411を一時停止位置(h1)(第1の所定位置の一例)まで上昇させる。ステップS100、S110(停止工程の一例)は、エアーを停止させた状態で吸着パッド411を一時停止位置に所定時間停止する。ステップS130、S140(第2上昇工程の一例)は、所定時間停止した吸着パッド411を搬送位置(第2の所定位置の一例)まで上昇させる。
【0059】
このような動作を行うことにより、特に非磁性体の素材においてダブルブランクの発生を低減できる。
また、エアーによって最上面以外の素材も浮上する場合があり、エアーを停止した状態で吸着パッド411を所定時間停止することによって、最上面以外の素材が落下する時間を確保できるため分離し易くなる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施の形態の素材分離装置1では、第1入力部91において第2の速度V2を変更できるように構成されているが、速度ではなく加速度を変更するようにしてもよい。すなわち、第2の速度V2に到達するまでの区間C1における加速度を変更する入力が行われてもよい。
【0061】
(B)
上記実施の形態では、第1入力部91および第2入力部92が設けられているが、どちらか一方のみが設けられていてもよい。ただし、アルミシート11を吸着した直後の区間Cにおける引き上げ速度の変更の方が、区間E1における加速度の変更よりもアルミシート11の分離に効果があると考えられるため、第1入力部91が設けられているほうが好ましい。
【0062】
(C)
上記実施の形態の素材分離装置1では、シート状の素材の一例としてアルミシート11が用いられているが、アルミシート11に限られるものではなくマグネシウムシート等であってもよい。
また、素材の種類によって分離性が異なる場合には、素材の種類に応じて第1入力部91および第2入力部92に入力する値を変更することによって、ダブルブランクを抑制し、出来るだけ処理速度を上げることが出来る。
【0063】
(D)
上記実施の形態では、第1入力部91および第2入力部92は、タッチパネルによって数値を入力できるように構成されているが、スライダーまたはダイヤル等によって速度及び加速度の数値を変更できるように構成されていてもよい。
(E)
上記実施の形態では、第1入力部91には、初期設定の速度の割合(%)の値を入力しているが、これに限らず、速度の値を入力してもよい。更に、時刻t3を入力するようにしてもよく、要するに速度を変更できる値でありさえすればよい。
【0064】
(F)
上記実施の形態では、第2入力部92には、第3の速度V3に達するまでの時間を入力しているが、これに限らず、加速度の値を入力してもよい。また、第1入力部91のように、初期設定の加速度の値を100%として割合(%)を入力するようにしてもよく、要するに加速度を変更できる値でありさえすればよい。
【0065】
(G)
上記実施の形態では、電動モータの一例としてサーボモータを用いたが、インバータモータなどを用いても良い。
(H)
上記実施の形態では、載置台駆動部22に油圧シリンダが用いられていると説明したが、サーボモータが用いられてもよい。