(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486721
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置
(51)【国際特許分類】
B61F 5/10 20060101AFI20190311BHJP
B61F 5/22 20060101ALI20190311BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20190311BHJP
F16F 9/05 20060101ALI20190311BHJP
B60G 99/00 20100101ALN20190311BHJP
【FI】
B61F5/10 D
B61F5/22 C
F16F15/04 A
F16F9/05
!B60G99/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-41567(P2015-41567)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-159809(P2016-159809A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀越 和義
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−121521(JP,A)
【文献】
特開平04−266632(JP,A)
【文献】
特開2012−192820(JP,A)
【文献】
独国特許発明第19701713(DE,C1)
【文献】
英国特許出願公開第02177475(GB,A)
【文献】
特表2008−542111(JP,A)
【文献】
特開2006−064512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/10
B61F 5/22
B60G 99/00
F16F 9/05
F16F 15/04
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円環状かつ半径方向内側に開放端を有するC字断面形状のゴムベローズと、該ゴムベローズの開放端を上下方向から挟んで密閉する一対の対向面板と、該対向面板の一方又は双方に開口する通気口とを備える空気ばねと、
前記通気口を介して前記空気ばね内室と連通する吸排気配管と、
該吸排気配管に対する圧縮空気の供給源及び吸排気弁と、
該吸排気弁の制御装置とを含み、
前記吸排気配管内に、前記空気ばね内室ヘと向けて光を照射する光波測距義が配置され、
前記制御装置は、前記光波測距義の検知信号に応じて前記吸排気弁を制御する制御ロジックを備えることを特徴とする鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置。
【請求項2】
前記吸排気配管には、前記対向面板のうち上面板の通気口と連通する吸気座を含み、該吸気座にエルボが形成され、
前記光波測距義は、前記吸排気配管の中間部に設けられた分岐部に、その光の出射方向が前記吸気座の前記エルボの一端側開口へ向けて光を照射するようにして配置され、
前記吸気座のエルボには、前記光波測距義から照射される光の経路を前記下面板へ向けて屈折させる反射板が配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置。
【請求項3】
前記光波測距義と前記反射板とが、前記吸気座に連結される管部材に固定されていることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置。
【請求項4】
前記吸排気配管には、前記上面板の通気口と連通する吸気座を含み、該吸気座にエルボが形成され、
前記光波測距義は、前記エルボに、その光の出射方向が前記下面板へ向けて光を照射するようにして、配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置。
【請求項5】
前記吸排気配管には、前記上面板の通気口と連通する吸気座と、前記下面板の下方に積層される平面視円環状の積層ゴムの内側空間と、前記下面板に形成され前記積層ゴムの内側空間と連通する通気口と、前記積層ゴムの内側空間を塞ぐ端板と、該端板に設けられた通気口と、該端板に設けられた通気口に連通する補助空気室とを含み、該補助空気室には前記端板に設けられた通気口と連通する通気路が形成され、
前記光波測距義は、前記補助空気室の通気路に、その光の出射方向が、前記端板の通気口、前記積層ゴムの内側空間及び前記下面板の通気口を介して、前記上面板へ向けて光を照射するようして、配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置に関し、特に、空気ばね高さを検知して、空気ばね高さを適切に調整する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車に対し車体を支持するための機構として、空気ばねが広く実用化されている。空気ばねは、一つの台車毎に左右二か所に設けられており、乗客数の変動や、曲線上での車両停止時等、空気ばねに負荷される荷重が変化する場合においても、空気ばねの高さを適切に調整することで、車体がまくら木と平行な姿勢を維持することが可能となる。又、曲線区間の走行中に、左右の空気ばねの高さを調整することで車体を旋回中心側へと意図的に傾け、乗員に掛る遠心力を軽減させるように制御することも可能である。このように、空気ばねに高さ調整機能を与えることで、鉄道車両の走行性能や乗員の快適性を高めることが可能となる。
【0003】
鉄道車両用台車の空気ばねと空気ばね高さ調整装置は、従来、
図4に示されるような構成を有している。
図4(a)に示される鉄道車両用台車10の空気ばね12は、概略的には、
図4(b)に示されるように、平面視円環状かつ半径方向内側に開放端を有するC字断面形状のゴムベローズ14と、ゴムベローズ14の開放端を上下方向から挟んで密閉する一対の対向面板(上面板、下面板)16、18とからなるダイヤフラム形をなしており、対向面板16、18の一方又は双方に開口する通気口(上面板通気口、下面板通気口)20、22を備えている。
又、空気ばね高さ調整装置24は、空気ばね12の上面板通気口20を介して空気ばね12の内室と連通する吸排気配管26と、吸排気配管26に対する圧縮空気の供給源28(
図1参照)及び吸排気弁30と、吸排気弁30の制御装置32とを含んでいる。
【0004】
空気ばね12の下面板18の更に下方には、平面視円環状の積層ゴム34が配置されている。そして、
図4の例では、積層ゴム34の内側空間と下面板通気口22とが連通している。又、積層ゴム34の内側空間を塞ぐ端板36と、端板に設けられた通気口(端板通気口)38と、端板通気口38に連通する補助空気室40とを備えている。補助空気室40は、鉄道車両用台車10の台車枠10a内部に構成されている。
吸排気弁30は、鉄道車両の車体11(
図4(a)に概略的に示す。)側に固定されており、吸排気弁30の操作ハンドル30aと鉄道車両用台車10の台車枠10aとがリンク42によって接続されている。そして、空気ばね12の高さが変化して、車体11と鉄道車両用台車10との距離が変化することで、制御装置32は、リンク42を介して吸排気弁30を機械的に作動させることで、機械式の空気ばね高さ検知機構が構成されている。
【0005】
具体的には、車体11と鉄道車両用台車10との距離が定常状態よりも増大し、空気ばね12の高さが定常状態よりも高くなると、吸排気弁30の操作ハンドル30aはリンク42によって引き下げ方向に作動し、吸排気弁30の排気ポートが開放される。空気ばね12の内室の空気は、吸排気配管26から吸排気弁30の排気ポートを介して排気され(符号Ao)、空気ばね12の高さが減少する。そして、車体11と鉄道車両用台車10との距離が定常状態へと復帰するに従い、吸排気弁30の操作ハンドル30aはリンク42によって定常位置に戻され、吸排気弁30の排気ポートが閉じられ、排気が停止する。
一方、車体11と鉄道車両用台車10との距離が定常状態よりも減少し、空気ばね12の高さが定常状態よりも低くなると、吸排気弁30の操作ハンドル30aはリンク42によって持ち上げ方向に作動し、吸排気弁30の給気ポートが開放される。これにより、圧縮空気の供給源28(
図1参照)から空気ばね12の室内へと圧縮空気が供給される(符号Ai)。そして、空気ばね12の高さが増大し、車体11と鉄道車両用台車10との距離が定常状態へと復帰するに従い、吸排気弁30の操作ハンドル30aはリンク42によって定常位置に戻され、吸排気弁30の給気ポートが閉じられ、空気ばねへの給気が停止する。
【0006】
なお、
図4の例と異なり、空気ばね12の内部に非接触式の高さ測定機構や光学式高さセンサ等を設置した事例もある(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−266632号公報
【特許文献2】特開平8−121521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、
図4に示される、機械式の空気ばね高さ検知機構が構成された従来の制御装置32は、部品数の増大や複雑化を招くものである。特に、心皿を排したボルスタレス台車に採用された場合には、車体11に対する鉄道車両用台車10の回転方向の移動に伴い、空気ばね12にねじれ・変形が生じるため、この時の変位を吸収するためにリンク42を構成する部材が長大となり、制御装置32の構成をより複雑なものとしている。
一方、空気ばね12の内部に非接触式の高さ測定機構や光学式高さセンサ等の高さ検知手段を設置した例は、空気ばね12には高い気密性が要求されることから、空気ばね12自体の構造が複雑化し、空気ばね及び高さ検知手段のメンテナンスが困難になるといった問題がある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置において、空気ばねの構造及び制御装置の複雑化を来すことなく、空気ばね高さを検知して、空気ばね高さを適切に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0011】
(1)平面視円環状かつ半径方向内側に開放端を有するC字断面形状のゴムベローズと、該ゴムベローズの開放端を上下方向から挟んで密閉する一対の対向面板と、該対向面板の一方又は双方に開口する通気口とを備える空気ばねと、前記通気口を介して前記空気ばね内室と連通する吸排気配管と、該吸排気配管に対する圧縮空気の供給源及び吸排気弁と、該吸排気弁の制御装置とを含み、前記吸排気配管内に、前記空気ばね内室ヘと向けて光を照射する光波測距義が配置され、前記制御装置は、前記光波測距義の検知信号に応じて前記吸排気弁を制御する制御ロジックを備える鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置(請求項1)。
【0012】
本項に記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、空気ばね内部に光波測距義を設置することなく、吸排気配管内に配置し、光波測距義から吸排気配管の管内空間を介して、空気ばね内室ヘと向けて光を照射することにより、空気ばねの対向面板の距離、即ち、空気ばねの高さを計測するものである。そして、制御装置は、光波測距義の検知信号に応じて吸排気弁を制御する制御ロジックを備えることで、空気ばねの高さ調整が適切に行われるものである。光波測距義には、例えば、レーザー式の光学センサ等が用いられる。
【0013】
(2)上記(1)項において、前記吸排気配管には、前記対向面板のうち上面板の通気口と連通する吸気座を含み、該吸気座にエルボが形成され、前記光波測距義は、前記吸排気配管の中間部に設けられた分岐部に、その光の出射方向が前記吸気座の前記エルボの一端側開口へ向けて光を照射するようにして、配置され、前記吸気座のエルボには、前記光波測距義から出射される光の光路を前記下面板へ向けて屈折させる反射板が配置されている鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、光波測距義を、空気ばね内部に設置することなく吸排気配管の中間部に設けられた分岐部に配置し、光波測距義から吸排気配管の管内空間を介して、空気ばね内室へと向けて光を照射するものである。又、空気ばねの対向面板のうち上面板の通気口と連通する吸気座には、エルボが形成されており、このエルボに反射板が設置される。光波測距義の光の出射方向は、吸気座のエルボの一端側開口へ向けて光を出射するように設定されており、吸気座のエルボに配置された反射板により、光波測距義から出射される光を下面板へ向けて屈折させることで、光波測距義から出射される光は、下面板に照射される。下面板に照射された光は下面板によって反射され、再び吸気座のエルボに配置された反射板へと向かう。そして、下面板によって反射された光は、反射板によって光波測距義へ向けて光が反射され、光波測距義はこの反射光を受光し、空気ばねの高さが計測されるものである。
【0014】
(3)上記(2)項において、前記光波測距義と前記反射板とが、前記吸気座に連結される管部材に固定されている鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置(請求項3)。
本項に記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、光波測距義と反射板とが、吸気座に連結される管部材に固定されることによって、光波測距義と反射板とは、この管部材ごと吸気座に対して着脱される。又、この管部材に光波測距義と鏡とが一体に固定されることで、管部材ごと、吸排気配管を構成する他の管部材に対する着脱と、光波測距義及び鏡の位置決めとを行うものとなる。光波測距義と反射板との位置関係が管部材によって固定されることから、光波測距義から出射された光が反射板によって反射され光路変更される方向を、管部材を吸気座に対し適切に連結させることのみによって、最適に設定するものとなる。
【0015】
(4)上記(1)項において、前記吸排気配管には、前記上面板の通気口と連通する吸気座を含み、該吸気座にエルボが形成され、前記光波測距義は前記エルボに、その光の出射方向が、前記下面板へ向けて光を照射するようにして配置されている鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置(請求項4)。
本項に記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、光波測距義を、空気ばね内部に設置することなく上面板の通気口と連通する吸気座のエルボに配置し、光波測距義から吸排気配管の管内空間を介して、空気ばね内室へと向けて光を照射するものである。そして、光波測距義の光の出射方向が、下面板へ向けて光を照射するようにして配置され、光波測距義から出射される光は、吸排気配管を介して空気ばね内室へと向かい、下面板に照射される。下面板に照射された光は下面板によって反射され、再び吸気座のエルボに配置された光波測距義へと向かう。そして、光波測距義はこの反射光を受光し、空気ばねの高さが計測されるものである。
【0016】
(5)上記(1)項において、前記吸排気配管には、前記上面板の通気口と連通する吸気座と、前記下面板の下方に積層される平面視円環状の積層ゴムの内側空間と、前記下面板に形成され前記積層ゴムの内側空間と連通する通気口と、前記積層ゴムの内側空間を塞ぐ端板と、該端板に設けられた通気口と、該端板に設けられた通気口に連通する補助空気室とを含み、該補助空気室には前記端板に設けられた通気口と連通する通気路が形成され、前記光波測距義は、前記補助空気室の通気路に、その光の出射方向が前記積層ゴムの内側空間及び前記下面板に形成された通気口を介して、前記上面板へ向けて光を照射するようして、配置されている鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置(請求項5)。
本項に記載の鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、光波測距義を、空気ばね内部に設置することなく補助空気室の通気路に配置し、光波測距義から吸排気配管の管内空間を介して、空気ばね内室へと向けて光を照射するものである。そして、光波測距義の光の出射方向が、上面板へ向けて光を照射するようにして配置されることで、光波測距義から照射される光は、補助空気室の通気路から、端板に設けられた通気口、積層ゴムの内側空間及び下面板に形成された通気口を介して空気ばね内室へと向かい、上面板に照射される。上面板に照射された光は上面板によって反射され、再び補助空気室の通気路に配置された光波測距義へと向かう。そして、光波測距義はこの反射光を、下面板に形成された通気口及び積層ゴムの内側空間を通して受光し、空気ばねの高さが計測されるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明はこのように構成したので、空気ばねの構造及び制御装置の複雑化を来すことなく、空気ばね高さを検知し、空気ばね高さを適切に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置の、応用例に係る吸気座の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置の、更に別の応用例の模式図である。
【
図4】(a)は従来の空気ばね高さ調整装置を備える鉄道車両用台車の側面図であり、(b)は従来の空気ばね高さ調整装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは、相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0020】
本発明の実施の形態に係る鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置は、
図1に示されるように、空気ばね12と、空気ばね12の上面板16の通気口20を介して空気ばね12の内室と連通する吸排気配管26と、吸排気配管26に対する圧縮空気の供給源28及び吸排気弁30と、吸排気弁30の制御装置33とを含むものである。本説明では、補助空気室40を含む場合には(
図3、
図4参照)、空気ばね12と補助空気室40とを連通する配管系統も含めて、空気ばね12に対し圧縮空気を吸排気するすべての配管系統が、吸排気配管26に含まれる。
【0021】
空気ばね12は、平面視円環状かつ半径方向内側に開放端を有するC字断面形状のゴムベローズ14と、ゴムベローズ14の開放端を上下方向から挟んで密閉する一対の対向面板16、18と、上面板16に開口する上面板通気口20及び下面板18に開口する下面板通気口22とを含むものである。
吸排気配管26は金属管により構成されており、空気ばね12の上面板通気口16と連通する吸気座44を含んでいる。すなわち、吸気座44は、吸排気配管26の構成部材である。又、吸気座44には、上面板16の通気口20と連通するためのエルボ44aが形成されており、鉄道車両の車体11側に固定されている。
【0022】
給気座44と接続する吸排気配管26を構成する管部材26Aは、吸気座44から直線状に延び、吸気座44と対向する端部に、分岐部(T継手)46が配置されている。そして、分岐部46から分岐した枝管26Bが、圧縮空気の供給源28に接続されている。又、分岐部46の給気座44と対向する開口部には、光波測距義48が、光Lの出射方向を、吸気座44に設けられたエルボ44aの一端側開口へ向けるようにして、配置されている。
【0023】
更に、吸気座44のエルボ44aには、光波測距義48から照射される光Lの光路を下面板18へ向けて屈折させるための、反射板50が配置されている。反射板50には鏡等光の反射率が高いものが用いられる。又、反射板50は、エルボ44aの屈折部分に、エルボ44aにおける圧縮空気の流通を阻害することのないように配置されている。エルボ44a内部における反射板50の設置方法は適宜選択可能であるが、例えば、エルボ44aの一旦側開口から、適切な取り付けブラケットと共にエルボ44a内部に挿入され、接着等により固定される。又は、エルボ44aに対して反射板50を容易に設置可能とするために、吸気座44を複数の部品からなる分割構造とすることとしても良い。
【0024】
なお、光波測距義48と反射板50とが、いずれも吸気座44に連結される管部材26Aに対し固定されるように構成すれば、光波測距義48と反射板50とは、管部材26Aと一体に、吸気座44及び枝管26Bに対して着脱可能となる。この場合、管部材26Aの反射板50が取り付けられた側の端部は、吸気座44のエルボ44a内まで挿入される。
又、管部材26Aに対する反射板50の固定方法は、例えば、管部材26Aの端部を斜めに切り落として形成される傾斜面に、反射板50を固定する等が挙げられる。更に、固定された反射板50と対向する管部材26Aの管壁に開口を設けることで、圧縮空気の流通路を確保することも可能となる。更に、分岐部46に対する光波測距義48の固定方法は、適切なブラケットや継手を用いることで、分岐部46に対して着脱可能とする。
又、反射板50による光Lの反射方向の調整を適切に行うために、吸気座44と管部材26Aとの接続部には、管部材26Aの周方向の角度調整が容易な、ブシュねじ、ユニオン継手等を用いた適切な継手構造が採用される。
【0025】
又、
図1の例において、吸排気弁30は電磁弁であり、制御装置33は、光波測距義48の検知信号に応じて吸排気弁30を制御する、制御ロジック33aを備える電子演算器により構成されている。又、
図1中に符号52で示される要素は、光波測距義48からの検知信号を適宜増幅し、制御装置33に送信するための、中継リレーである。なお、制御装置33は、例えば鉄道車両の制御装置内に、当該機能部を設定することとしても良い。
下面板18の光の反射面は、光Lが効率的に反射されるように、黒色よりも明度の高い色で構成されるか、若しくは、表面に、縞模様、同心円模様、メッシュ模様等が描かれていることが望ましい。
【0026】
そして、制御装置33により、光波測距義48からの検知信号を受けて、空気ばね12の高さXが適切な状態よりも高いことが確認されると、吸排気弁30を排気ポートの開放位置に切り換える。空気ばね12の内室の空気は、吸排気配管26から吸排気弁30の排気ポートを介して排気され、空気ばね12の高さが減少する。そして、制御装置33は、空気ばね12の高さXが適切な状態へと減少したことを、光波測距義48からの検知信号から把握すると、吸排気弁30を排気ポートの閉じ位置に切り換えることで、空気ばね12からの排気が停止する。
【0027】
一方、制御装置33は、光波測距義48からの検知信号を受けて、空気ばね12の高さXが適切な状態よりも低いことが確認されると、吸排気弁30を給気ポートの開放位置へと切り換える。これにより、アキュムレータ等の圧縮空気の供給源28から空気ばね12の内室へと圧縮空気が供給され、空気ばね12の高さXが増大する。又、制御装置33は、空気ばね12の高さXが適切な状態まで増大したことを、光波測距義48からの検知信号から把握すると、吸排気弁30を給気ポートの閉じ位置に切り換えることで、空気ばね12への給気が停止する。
【0028】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。即ち、空気ばね高さ調整装置24は、光波測距義48を、空気ばね12の内部に設置することなく吸排気配管26内に配置し、光波測距義48から吸排気配管26の管内空間を介して、空気ばね12内室ヘと向けて光Lを照射することにより、空気ばね12の対向面板16、18の距離X、即ち、空気ばね12の高さを計測するものである。そして、制御装置33は、光波測距義48の検知信号に応じて吸排気弁30を制御する制御ロジック33aを備えることで、空気ばね12の高さ調整が適切に行われるものである。
【0029】
図1の例では、吸排気配管26の中間部に設けられた分岐部46に光波測距義48を配置し、光波測距義48から吸排気配管26の管内空間を介して、空気ばね12の内室へと向けて光Lを照射するものである。又、空気ばね12の対向面板のうち上面板16の通気口20と連通する吸気座44には、エルボ44aが形成されており、このエルボ44aに反射板50が設置される。光波測距義48の光の出射方向は、吸気座44のエルボ44aの一端側開口へ向けて光Lを照射するように設定されており、吸気座44のエルボ44aに配置された反射板50により、光波測距義48から照射される光Lを下面板18へ向けて屈折させることで、光波測距義48から照射される光Lは、吸排気配管26を介して空気ばね12の内室へと向かい、下面板18に照射される。下面板18に照射された光Lは下面板18によって反射され、再び吸気座44のエルボ44aに配置された反射板50へと向かう。そして、下面板18によって反射された光Lは、反射板50によって光波測距義48へ向けて反射され、光波測距義48はこの反射光Lを受光し、空気ばね12の高さを正確に計測することが可能となる。
【0030】
更に、光波測距義48と反射板50とが、吸気座44に連結される管部材26Aに固定されることによって、光波測距義48と反射板50とは、この管部材26Aごと吸気座44に対して着脱される。又、この管部材26Aに光波測距義48と鏡50とが一体に固定されることで、管部材26Aごと、吸排気配管26を構成する他の管部材(枝管26B)に対する光波測距義48及び鏡50の着脱と、光波測距義48及び鏡50の位置決めとを行うことが可能となる。すなわち、光波測距義48と反射板50との位置関係が管部材26Aによって固定されることから、光波測距義48から照射された光Lが反射板50によって反射され光路変更される方向を、管部材26を吸気座44に対し適切に連結させることのみによって、最適に設定することが可能となる。
【0031】
以上のごとく、本発明の実施の形態によれば、空気ばね12の構造及び制御装置33の複雑化を来すことなく、空気ばね高さXを検知し、空気ばね高さを適切に調整することが可能となる。又、制御装置33を介して、例えば、鉄道車両の運転台や運転司令室に空気ばね高さ情報を表示することも可能となり、各車両の台車毎の空気ばね12の状態をリアルタイムで把握することも可能となる。又、空気ばね12の内部構造の複雑化を来すものでもなく、良好なメンテナンス性を確保することが可能となる。
【0032】
図2には、
図1に示される鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置の応用例に用いられる吸気座44が示されている。
本例は、
図1の吸気座44のエルボ44aに配置された反射板50に換えて、管部材26Aの分岐部(T継手)46に配置された光波測距義48を、このエルボ44aに配置したものである。そして、吸気座44のエルボ44aに配置された光波測距義48から、下面板18(
図1参照)へ向けて光Lを照射するものである。
なお、吸気座44のエルボ44aにおける圧縮空気の連通状態が確保されるように、光波測距義48の迂回路が形成されるものとする。その他の構成は、
図1の例と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0033】
図2に示される例においても、空気ばね12内部に光波測距義48を設置することなく、上面板16の通気口20と連通する吸気座44のエルボに配置された光波測距義48から、吸排気配管26の管内空間を介して、空気ばね12内室へと向けて光Lを照射するものである。そして、光波測距義48の光Lの出射方向が、下面板18へ向けて光Lを照射するようにして配置されることで、光波測距義48から出射される光Lは、吸排気配管26を介して空気ばね12内室へと向かい、下面板18に照射されるものである。下面板18に照射された光Lは下面板18によって反射され、再び吸気座44のエルボ44aに配置された光波測距義48へと向かう。そして、光波測距義48はこの反射光Lを受光し、空気ばね12の高さLを計測することが可能となる。その他、
図1の例と同様の作用効果については、詳しい説明を省略する。
【0034】
図3には、
図1に示される鉄道車両用台車の空気ばね高さ調整装置の、別の応用例が示されている。この例では、上面板16の上面板通気口20と連通する吸気座44と、下面板18の下方に積層される平面視円環状の積層ゴムの内側空間34aと、下面板18に形成され積層ゴム34の内側空間34aと連通する下面板通気口22と、積層ゴム34の内側空間34aを塞ぐ端板36と、端板36に設けられた端板通気口38と端板通気口38に連通する補助空気室40とを含み、補助空気室40には端板通気口38と連通する通気路40aが形成されている。
そして、光波測距義48は、補助空気室40の通気路40aに、光Lの出射方向が積層ゴム34の内側空間34a及び下面板通気口22を介して、上面板16へ向けて光を照射するようして、配置されている。光波測距義48は、通気路40aの密閉性が確保される適切な手法により、補助空気室40の通気路40aに対して着脱自在に設置される。
【0035】
図3に示される例においても、光波測距義48を、空気ばね12の内部に設置することなく補助空気室40の通気路40aに配置し、光波測距義48から吸排気配管26の管内空間を介して、空気ばね12内室へと向けて光Lを照射するものである。そして、光波測距義48の光Lの出射方向が、上面板16へ向けて光Lを照射するようにして配置されることで、光波測距義48から照射される光Lは、補助空気室40の通気路40aから、端板36に設けられた通気口38、積層ゴム34の内側空間34a及び下面板18に形成された通気口22を介して、空気ばね12の内室へと向かい、上面板16に照射される。上面板16に照射された光Lは上面板16によって反射され、再び補助空気室40の通気路40aに配置された光波測距義48へと向かう。そして、光波測距義48はこの反射光Lを、下面板18に形成された通気口20及び積層ゴム34の内側空間34aを通して受光し、空気ばね12の高さX(
図1参照)を計測することが可能となる。その他、
図1の例と同様の作用効果については、詳しい説明を省略する。
【0036】
なお、
図3の例では、光波測距義48から出射される光Lの光軸の延長線上に、上面板16の反射面が存在するように、例えば、上面板通気口20の室内側端部を、図示のごとく中心部に反射面が残されるように分岐ないし環状の開口端20aとすることが望ましい。
又、特にボルスタレス台車に採用する場合において、空気ばね12の空気室と積層ゴム34とを連通する下面板通気口22の中心と、光波測距義48から出射される光Lの光軸とが、大きくずれることによる光の通過阻止を防ぐため、下面板通気口22をより大きくすることが望ましい。
【符号の説明】
【0037】
10:鉄道車両用台車、 10a:台車枠、 12:空気ばね、 14:ゴムベローズ、 16:対向面板(上面板)、 18:対向面板(下面板)、 20:通気口(上面板通気口)、 22:通気口(下面板通気口)、 24:空気ばね高さ調整装置、 26:吸排気配管、 26A:管部材、 26B:枝管、 28:圧縮空気の供給源、 30:吸排気弁、 33:制御装置、 33a:制御ロジック、 34:積層ゴム、 34a:内部空間、 36:端板、 38:通気口(端板通気口)、 40:補助空気室、 42:リンク、 44:吸気座、 44a:エルボ、 46:分岐部、 48:光波測距義、 50:反射板