特許第6486738号(P6486738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486738
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】VEGFR3発現低下改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/074 20060101AFI20190311BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190311BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   A61K36/074
   A61P7/10
   A61P43/00 111
   !C12N15/11ZNA
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-56221(P2015-56221)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175855(P2016-175855A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩章
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】深田 紘介
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−104873(JP,A)
【文献】 特開2000−239138(JP,A)
【文献】 特開2006−241106(JP,A)
【文献】 Chem Pharm Bull., 1996, Vol.44 No.4, p.847-849
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
A61P
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を含有することを特徴とするVEGFR3発現低下改善剤。
【請求項2】
請求項1記載のVEGFR3発現低下改善剤を含有することを特徴とするむくみ改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を含有することを特徴とするVEGFR3発現低下改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の真皮内に存在する毛細リンパ管は、末梢組織に漏出した組織液やタンパク質、小腸より吸収された脂肪を回収し、又、老廃物の排出を行うことにより、体内の組織液の循環を維持している。このような組織液の循環は、体液の恒常性維持や組織の生理活性に必要不可欠といえる。
【0003】
毛細リンパ管は、一層のリンパ管内皮細胞から成る。リンパ管内皮細胞には、特異的に発現する膜貫通型受容体チロシンキナーゼであるVEGFR3があり、VEGFR3を活性化する因子として血管内皮増殖因子−C(VEGF−C)が同定されている。このVEGF−C/VEGFR3を介したシグナル伝達の結果、リンパ管内皮細胞が増殖・遊走後に新たなリンパ管の形成が促進される(リンパ管新生)。
【0004】
VEGF−Cを含むVEGFファミリーは複数の因子で構成される。VEGF−Aは、血管形成促進に働く一方で、リンパ管に対してはその機能を悪化させる働きを持ち、VEGF−Bは血管特異的に働くとされている。VEGF−Cはリンパ管特異的に作用し、リンパ管新生を促進する主要な因子であることが知られている。
【0005】
リンパ管の機能が低下した際に引き起こされる症状としてむくみがある。
【0006】
むくみとは、体内の組織液が適切に排出されないことが原因となり、組織間隙に余分な水分やタンパク質が蓄積して膨張するために生じるものであり、長時間の座位及び立位等により日常的に自然発生しやすいものである。むくみを長時間放置しておくと、美容上好ましくないだけではなく、肥満につながるセルライトが蓄積する等、人体に様々な悪影響をもたらすと考えられる。
【0007】
従来、むくみを解消する方法としては、薬剤の塗布又はマッサージ等の体外からの物理的力によりリンパ液の流れを促進し、体内の組織液の循環を活発化させることがよく知られている。むくみ改善効果を持つ薬剤には、植物抽出物等を含む化粧料や食品があり、例えば、茯苓を有効成分とするむくみ改善剤(特許文献1)、α−グリコシル化ルチンを有効成分とするむくみ改善用食品(特許文献2)等の技術が報告されている。
【0008】
一方、VEGF−Cが減少した皮膚においては浮腫が発生すること(非特許文献1)や、VEGFR3中和抗体を用いてVEGF−CのVEGFR3への結合を阻害するとリンパ管の数が顕著に減少し、浮腫が発生すること(非特許文献2)が報告されている。又、炎症がリンパ浮腫の原因になり得ることも知られている(特許文献3)。逆に、紫外線による炎症や浮腫が、VEGF−Cの投与によるVEGFR3の活性改善により回復することも示されている(非特許文献1及び2)。このように、様々な刺激によりVEGF−C/VEGFR3シグナル伝達が低下するとむくみが発生し、そのようなシグナル伝達低下を改善することがむくみ改善につながると考えられている。
【0009】
VEGF−C/VEGFR3シグナル伝達低下を改善する技術として、キョウニンエキス、ニンジンエキス、カノコソウエキス、サンザシエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、及びイリス根エキスから成る群から選定される1又は複数種の薬剤を含有することを特徴とするVEGF−C産生促進剤(特許文献4)、S−ラクトイルグルタチオン及び/又はその塩を含有することを特徴とするむくみ改善剤(特許文献5)等の報告がある。
【0010】
一方、赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物については、生体の遺伝子損傷抑制剤(特許文献6)、血栓症改善剤(特許文献7)、美白剤(特許文献8)、高血圧抑制剤(特許文献9)等の技術が開示されている。又、温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物については、美白剤(特許文献10)、幹細胞の未分化維持剤及び増殖促進剤(特許文献11)、発毛促進剤(特許文献12)、皮膚のしわ形成防止・改善剤(特許文献13)等の技術が開示されている。しかし、赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物について、VEGFR3発現低下改善効果及びむくみ改善効果の報告はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許4052750
【特許文献2】特開2007−130020
【特許文献3】WO2007/013603
【特許文献4】特許5105890
【特許文献5】特許5384285
【特許文献6】特開2002−322081
【特許文献7】特許4643936
【特許文献8】特許4808580
【特許文献9】特開2008−255041
【特許文献10】特許3742084
【特許文献11】特開2011−211956
【特許文献12】特開2013−71927
【特許文献13】特開2014−43413
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J Invest Dermatol.,(2009),Volume 129,pp1292−1298
【非特許文献2】J Invest Dermatol.,(2006),Volume 126,pp920−922
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
日常生活においては、皮膚は常に紫外線や乾燥、温度変化等の外界からの刺激にさらされた状態にある。そのような刺激によりリンパ管がダメージを受け、VEGF−C/VEGFR3シグナル伝達が阻害されてリンパ管の機能が低下すると、体内における組織液回収が滞り、新たなむくみ症状を引き起こすことが予想される。
【0014】
しかし、マッサージやむくみ改善剤、むくみ改善用食品等は、水分循環を活性化してむくみを解消するため、むくみ発生の原因となるリンパ管の機能低下に直接働きかけるものではなく、一時的なむくみ改善効果しか得られないという問題点があった。
【0015】
又、リンパ管機能低下の改善にはVEGF−C/VEGFR3シグナル伝達の正常化が重要であり、VEGF−C産生促進によりむくみを改善する技術が報告されているが、外界からの様々な刺激によりVEGFR3発現が低下した状態では、その効果は十分に発揮されないという問題点があった。
【0016】
本発明は、VEGFR3発現低下を改善する優れた効果を有する組成物を提供することを課題とする。VEGFR3発現低下を改善することにより、リンパ管機能を活性化し、むくみを改善することができると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、この問題点を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物に優れたむくみ改善効果が得られることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち、本発明は、温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を含有することを特徴とするVEGFR3発現低下改善剤である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を用いることにより、外界からの刺激によってダメージを受けたリンパ管内皮細胞膜上におけるVEGFR3の発現低下を改善することができ、リンパ管機能の活性化により炎症の関与しないむくみも改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に用いられる赤霊芝及び黒霊芝は、生薬「霊芝」に用いられる担子菌であり、マンネンタケ科(Ganodermataceae)、マンネンタケ属(Ganoderma)に属する。又、マンネンタケ属のキノコについては、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」に、赤霊芝(霊芝)、黒霊芝(黒芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。赤霊芝の一種として、鹿角霊芝も挙げられる。赤霊芝、鹿角霊芝の学名は(Ganoderma lucidum)であり、黒霊芝の学名は(G.atrum、G.japonicum、G.sinense)である。一般的には赤霊芝、鹿角霊芝、黒霊芝等が多く流通している。これらは広く中国や日本市場等で流通しているものを用いることができるし、自生品や栽培品を用いても良い。又、菌糸体の培養物も用いることができる。これらはそのまま用いても良いし、乾燥や粉砕したものも用いることができる。
【0021】
本発明における赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物の抽出は、超臨界状態又はその近傍の状態にある二酸化炭素により、既知の抽出方法に従って実施することができる。
【0022】
本発明における抽出条件は、温度約20〜150℃及び圧力約1〜80MPa、好ましくは温度約30〜60℃及び圧力約10〜50MPaの範囲内で、目的に応じた温度及び圧力を採用することができる。抽出時間や二酸化炭素の供給量は、目的に応じて適宜選択できる。
【0023】
更に、本発明において共溶媒(エントレーナー)として有機溶媒を用いることもできる。共溶媒としては、エタノール、アセトン等が挙げられる。中でも、安全性の面からエタノールが好ましい。
【0024】
抽出は、例えば、上記抽出条件の二酸化炭素を連続的に吹き込むことによって行うことができる。次いで、抽出物を含有する二酸化炭素流体を分離槽に導き、常用されている方法、例えば、圧力を下げる方法、温度を変化させる方法等で分離する。この際、分離槽には抽出された溶質を吸着できる吸着剤や、溶解や分散させることができる媒体(溶剤、基剤)等を充填しておくこともでき、抽出条件に応じた適当な分離手段を採用できる。分離された二酸化炭素は液化槽に輸送して再利用することができる。
【0025】
上記抽出物は、抽出物のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、脱臭、乾燥等の処理をして用いても良い。更には、カラム精製等を行って有効成分を濃縮や単離しても良い。
【0026】
本発明の抽出法によれば、赤霊芝等に含有されるガノデリン酸等のトリテルペン類も効果的に抽出できる。特に、エントレーナーを用いればこの効果は顕著である。
【0027】
本発明で用いる温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物の含有量は、含有するむくみ改善剤に対し、赤霊芝抽出物及び黒霊芝抽出物の合計量として、固形物に換算して0.001重量%以上、好ましくは0.01〜5重量%の含有が良い。赤霊芝抽出物と黒霊芝抽出物とを併用する場合の含有量比率は、特に限定されないが、赤霊芝抽出物1に対して、黒霊芝抽出物が重量比0.33〜3であると、VEGFR3の発現及びむくみの改善が顕著であるので、好ましい。更に好ましくは、赤霊芝抽出物1に対して、黒霊芝抽出物が重量比1である。添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0028】
本発明のむくみ改善剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては皮膚外用剤としての適用が有効である。
【0029】
皮膚外用剤の場合には、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分の他、通常の化粧料及び薬剤に配合されている水性成分、粉体、油剤、保湿剤、アルコール類、pH調整剤、防腐剤、色素、増粘剤、香料等を適宜配合することができると共に、常法に従って製造することができる。皮膚外用剤の形態の具体例としては、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、軟膏、浴用剤、ゲル剤、ペースト剤、エッセンス、パック等が挙げられる。
【0030】
本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
製造例1 赤霊芝の超臨界抽出物
内容積5Lの抽出槽に霊芝(赤霊芝)の粉砕物1kgを仕込み、これに超臨界二酸化炭素(圧力25MPa、温度60℃、二酸化炭素供給量15m)を約4.5時間供給し、抽出槽に接続した分離槽(温度40℃、圧力4MPa)に導いて炭酸ガスと抽出物を分離し、抽出物を10.0g得た。
【0032】
製造例2 黒霊芝の超臨界抽出物
製造例1において赤霊芝を黒霊芝に変え、製造例1と同様に処理して抽出物を10.8g得た。
【実施例2】
【0033】
処方例1 クリーム
成分 含有量(重量%)
1.赤霊芝の超臨界抽出物(製造例1) 0.05
2.黒霊芝の超臨界抽出物(製造例2) 0.05
3.スクワラン 5.5
4.オリーブ油 3.0
5.ステアリン酸 2.0
6.ミツロウ 2.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.モノステアリン酸グリセリン 2.5
11.香料 0.1
12.1,3−ブチレングリコール 8.5
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.25
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜10を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分12〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分11を加え、更に30℃まで冷却してクリームを得た。
【0034】
比較例1 従来のクリーム
処方例1において、赤霊芝及び黒霊芝の超臨界抽出物をスクワランに置き換えたものを従来のクリームとした。
【0035】
処方例2 クリーム
成分 含有量(重量%)
1.赤霊芝の超臨界抽出物(製造例1) 0.05
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.25
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却してクリームを得た。
【0036】
処方例3 軟膏
成分 含有量(重量%)
1.赤霊芝の超臨界抽出物(製造例1) 0.005
2.黒霊芝の超臨界抽出物(製造例2) 0.015
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とした。成分7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とした。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して軟膏を得た。
【0037】
処方例4 軟膏
成分 含有量(重量%)
1.黒霊芝の超臨界抽出物(製造例2) 0.04
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とした。成分6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とした。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して軟膏を得た。
【0038】
処方例5 ゲル剤
成分 含有量(重量%)
1.赤霊芝の超臨界抽出物(製造例1) 0.75
2.黒霊芝の超臨界抽出物(製造例2) 0.25
3.エタノール 5.0
4.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
5.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5と、成分6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0039】
以下、本発明を効果的に説明するために、実施例3として本発明の実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例3】
【0040】
実験例1 LYVE−1及びPROX−1陽性の内皮細胞(HDMEC)におけるVEGFR3の発現変化
本研究では、外部からの刺激の一例として、炎症性サイトカインIL−1αがリンパ管の特異的マーカーであるLYVE−1及びPROX−1を発現している内皮細胞におけるVEGFR3 mRNA発現に与える影響について検討した。
HDMECを60mm dishに1×10個播種し、コンフルエントになった時点で10ng/mlのIL−1αを添加し、同時に、赤霊芝及び黒霊芝の超臨界抽出物を添加した。培養後、RNAiso plus(TAKARA)を用いて総RNAの抽出を行った。mRNA発現量の測定は、細胞から抽出した総RNAを基にしてリアルタイムRT−PCR法により行った。リアルタイムRT−PCR法には、SYBR Select Master Mix(ライフテクノロジーズ)を用いた。即ち、500ngの総RNAを逆転写反応後、PCR反応(95℃:15秒間、60℃:60秒間、40cycles)を行った。その他の操作は定められた方法に従い、mRNAの発現量を内部標準であるGAPDH mRNAの発現量に対する割合として求めた。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0041】
VEGFR3用のプライマーセット
GCGTCATCGCTGTCTTCTTCT(配列番号1)
CAGGTAGCCCGTCTTGATGTC(配列番号2)
GAPDH用のプライマーセット
TGCACCACCAACTGCTTAGC(配列番号3)
TCTTCTGGGTGGCAGTGATG(配列番号4)
【0042】
得られた結果を表1に示した。HDMECにIL−1αを添加すると、VEGFR3 mRNAの発現量が減少した。IL−1αに加え、赤霊芝又は黒霊芝の超臨界抽出物をそれぞれ添加すると、VEGFR3 mRNAの発現量は回復方向に変化した。IL−1αに加え、赤霊芝及び黒霊芝の超臨界抽出物を同時に添加すると、単独での添加よりも、VEGFR3 mRNAの発現量は更に顕著に回復した。従って、赤霊芝又は黒霊芝の超臨界抽出物には、それぞれにリンパ管機能低下によるむくみの原因となるVEGFR3の減少を改善する作用があることが示された。加えて、赤霊芝及び黒霊芝の超臨界抽出物は、併用することによりVEGFR3の減少を更に効果的に改善する作用があることが示された。
【0043】
【表1】
【0044】
実験例2 使用試験
処方例1及び比較例1のクリームを調製し、実際に使用した場合の効果について検討した。普段からむくみで悩んでいる女性被験者15名(20−50代)を対象に、右ふくらはぎには処方例1のクリームを、又、左ふくらはぎには比較例1のクリームを毎日朝夕の2回塗布してもらい、1ヶ月間の使用試験を行った。評価方法は、使用1ヶ月後に朝夕の左右ふくらはぎ最大周囲長をそれぞれ測定し、朝夕のふくらはぎ最大周囲長の差をむくみ量とした。その平均値を求め、比較例1と処方例1を1ヶ月間使用した後の、むくみ量を比較した。又、同時に使用感アンケートを行い、むくみへの影響について評価した。
【0045】
得られた結果を表2及び表3に示す。処方例1を使用した場合、比較例1の使用に比べて明らかにむくみ量が小さく、むくみが軽減されていることが分かる。加えて、使用感アンケートからも、処方例1塗布によるむくみ改善効果の実感が高いことが確認できた。従って、本発明の温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を含有することを特徴とするVEGFR3発現低下改善剤は、ヒトにおける使用試験において、優れたむくみ改善効果を示すことが明らかとなった。尚、試験期間中、皮膚のトラブルは無く、安全性についても問題はなかった。又、処方例2のクリーム、処方例3及び4の軟膏、処方例5のゲル剤についても同様の試験を行い、顕著なむくみ改善効果が認められた。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0048】
温度範囲20〜150℃、圧力範囲1〜80MPaの状態にある二酸化炭素により抽出された赤霊芝抽出物及び/又は黒霊芝抽出物を用いることにより、外界からの刺激によってダメージを受けたリンパ管内皮細胞膜上におけるVEGFR3の発現低下を改善することができる。本発明により、VEGFR3の発現低下に伴うリンパ管の機能低下及びこれに伴い発生する炎症の関与しないむくみを予防、改善する剤を提供することができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]