(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態の半導体素子用のプローバチャック及びプローバについて、図面を参照して説明する。
【0017】
[プローバチャック]
図1に示すように、プローバチャック1は、ウエハW上に形成された半導体素子の電気的な検査を行うために用いられ、半導体素子が形成されたウエハWを保持する。プローバチャック1は、シグナル層としてのチャックトップ10と、チャックトップ10の下方に配置されるガード層11と、ガード層11の下方に配置されるグランド層12と、第1の絶縁部13と、第2の絶縁部14と、を有する。各部10〜14は、円盤状をなし、積層構造をなしている。なお、
図1において、チャックトップ10、ガード層11及びグランド層12は、位置関係を明示するために、厚みを誇張して図示している。
【0018】
図1に示すように、チャックトップ10は、導電材料で形成され、ウエハWが載置される。ガード層11は、導電材料で形成され、チャックトップ10の下方に配置されている。グランド層12は、導電材料で形成され、ガード層11の下方に配置されている。チャックトップ10、ガード層11及びグランド層12を構成する導電材料は、導電材料であれば、適宜利用可能である。例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、チタン、白金またはパラジウムなどの金属材料が挙げられる。
【0019】
第1の絶縁部13は、絶縁材料で形成され、チャックトップ10とガード層11との間に配置され、チャックトップ10とガード層11とを絶縁する。本実施形態では、第1の絶縁部13は、1枚の板材で構成されているが、これに限定されない。第1の絶縁部13は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。
【0020】
第2の絶縁部14は、絶縁材料で形成され、ガード層11とグランド層12との間に配置され、ガード層11とグランド層12とを絶縁する。本実施形態では、第2の絶縁部14は、1枚の板材で構成されているが、これに限定されない。第2の絶縁部14は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。
【0021】
本実施形態では、第1の絶縁部13および第2の絶縁部14は、アルミナや窒化珪素等のセラミックが用いられているが、絶縁材料であれば、これ以外も利用可能である。
【0022】
図2に示すように、チャックトップ10の径r1は、ガード層11の径r2よりも小さい。これにより、シグナル層としてのチャックトップ10をガード層11で電気的に保護でき、より一層低リーク評価に好ましくなる。グランド層12の径r3はガード層11の径r2以上あればよい。本実施形態では、グランド層12の径r3はガード層11の径r2よりも大きくしてある。すなわち、チャックトップ10の径r1<ガード層11の径r2<グランド層12の径r3、となる。このように導電層(チャックトップ10、ガード層11、グランド層12)の全ての径が異なるので、配線の引き出しを容易にしてある。勿論、チャックトップ10の径r1<ガード層11の径r2≦グランド層12の径r3でもよい。
【0023】
図2に示すように、第1の絶縁部13及び第2の絶縁部14の径r4は、チャックトップ10、ガード層11及びグランド層12の径よりも大きい寸法に設定されている。これにより、各々の絶縁板材(13、14)の周縁には、導電層が介在しない領域が形成されている。本実施形態では、第1の絶縁部13および第2の絶縁部14は、いずれも接着要素が接触しない状態で機械的固定要素15によって固定されている。具体的には、第1〜2の絶縁部(13、14)は、ネジ(締着具)によって固定される。
【0024】
本明細書において、「接着要素」は、接着剤やテープなどの接着手段を意味する。「機械的固定要素による固定」は、ネジ、ボルト、ナットなどの締着具による締着、突起と孔との嵌合、係合爪と溝との嵌合など、構造物の干渉による固定を意味する。
【0025】
[プローバ]
次に、上記プローバチャック1を備える、半導体素子検査用のプローバ3について
図3を用いて説明する。なお、この明細書において、鉛直方向をZ軸、水平方向のうち或る方向をX軸、水平方向のうちX軸に直交する方向をY軸として説明する。
【0026】
プローバ3は、上記プローバチャック1と、接離機構3Xと、を有する。接離機構3Xは、プローバチャック1とプローブカード4との少なくとも一方を相対的に移動させて、プローバチャック1に保持されるウエハWとプローブカード4の針4aとを接離させる。本実施形態では、接離機構3Xは、θXYステージ31と、Zステージ32と、を有する。
【0027】
θXYステージ31は、チャック1をZ軸回りに回転可能に且つX軸Y軸に沿って移動可能に支持する。Zステージ32は、プローブカード4が取付け可能であり、取付けられたプローブカード4の針4aをZ軸に沿って移動させる。本実施形態では、チャックをθXY方向に移動させる機構(θXYステージ31)と、プローブカード4をZ方向に移動させる機構(Zステージ32)とが別々に設けられているが、一体にしてもよい。
【0028】
図3に示すように、プローブテストの際には、テスタ5とプローブカード4とが接続され、シグナル層(チャックトップ10)、ガード層11及び第2のガード層2が同電位に印加され、グランド層12が接地される。プローバ3は、テスト対象となる半導体素子に対して針4aが接触するように、接離機構3Xの駆動を制御し、素子の検査が実施される。
【0029】
<第2実施形態>
以下、本開示の第2実施形態の磁気メモリ用のプローバチャック及びプローバについて、図面を参照して説明する。第1実施形態と同じ構造について、第1実施形態で用いた説明及び図面を引用して説明する。
【0030】
[プローバチャック]
図4に示すように、磁気メモリ用のプローバチャック101は、ウエハW上に形成された磁気メモリの電気的な検査を行うために用いられ、磁気メモリが形成されたウエハWを保持する。
【0031】
磁気メモリの検査には、
図4に示すように、磁気メモリ(ウエハW)に対して磁場発生部130によって磁場Hを印加するため、チャックを構成する部材に磁性体が含まれていれば、磁力によってチャックが物理的に引っ張られ、振動してノイズ源となり、低リーク評価が難しくなる。よって、磁気メモリ用のプローバチャック101は、チャックを構成する全ての部材が非磁性体で構成されている。
【0032】
具体的に、
図4に示すように、プローバチャック101は、ウエハW上に形成された磁気メモリの電気的な検査を行うために用いられ、磁気メモリが形成されたウエハWを保持する。プローバチャック101は、シグナル層としてのチャックトップ110と、チャックトップ110の下方に配置されるガード層111と、ガード層111の下方に配置されるグランド層112と、第1の絶縁部113と、第2の絶縁部114と、を有する。各部110〜114は円盤状をなし、積層構造をなしている。なお、
図4において、チャックトップ110、ガード層111及びグランド層112は、位置関係を明示するために、厚みを誇張して図示している。
【0033】
チャックトップ110は、非磁性体の導電材料で形成され、ウエハWが載置される。非磁性体は、例えば1T(テスラ)などの所定強さの磁場において引力及び斥力を発現しない部材を意味する。また、外部磁場(環境磁場)に影響を与えない部材ともいえる。本実施形態では、材料として金が用いられているが、非磁性体の導電材料であれば、これ以外も利用可能である。例えば、アルミ、銅、チタン、白金などが挙げられる。ウエハWとの接触抵抗を低減するためには、金を用いることが好ましい。
【0034】
ガード層111は、非磁性体の導電材料で形成され、チャックトップ110の下方に配置されている。本実施形態では、金が用いられているが、ガード層111もチャックトップ110と同様に、非磁性体の導電材料であれば、金以外も利用可能である。
【0035】
グランド層112は、非磁性体の導電材料で形成され、ガード層111の下方に配置されている。本実施形態では、金が用いられているが、ガード層111もチャックトップ110と同様に、非磁性体の導電材料であれば、金以外も利用可能である。
【0036】
第1の絶縁部113は、非磁性体の絶縁材料で形成され、チャックトップ110とガード層111との間に配置され、チャックトップ110とガード層111とを絶縁する。本実施形態では、第1の絶縁部113は、1枚の板材で構成されているが、これに限定されない。第1の絶縁部113は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。
【0037】
第2の絶縁部114は、非磁性体の絶縁材料で形成され、ガード層111とグランド層112との間に配置され、ガード層111とグランド層112とを絶縁する。本実施形態では、第2の絶縁部114は、1枚の板材で構成されるが、これに限定されない。第2の絶縁部114は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。
【0038】
本実施形態では、第1の絶縁部113および第2の絶縁部114は、アルミナや窒化珪素等のセラミックが用いられているが、非磁性体の絶縁材料であれば、これ以外も利用可能である。例えば、各種セラミック材、各種樹脂材、Peek(高絶縁抵抗体)などが挙げられる。検査の際には、ウエハを介してかなりの荷重がかけられるため、薄くても強度のあるセラミックを用いることが好ましい。なお、「Peek」は、英国のビクトレックス社の登録商標で、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とも呼ばれる。
【0039】
本実施形態では、チャックトップ110、ガード層111及びグランド層112を、金メッキで第1〜2の絶縁部(113、114)に形成している。一般的に、金メッキを絶縁材料に施すためには、ニッケルなどの磁性体の導電材料を下地として用いるが、磁性体を使用できないため、例えば非磁性体である銅を下地として用いる。勿論、下地を用いずに、メッキすることも有効である。例えば、絶縁材料の表面を粗くすることでメッキを可能にすることも可能である。その他、導電材料を絶縁材料に薄く形成する手段には、スパッタリングや真空蒸着といったドライプロセスが挙げられる。ドライプロセスでは、下地としてアルミ、チタン、白金などを用いることが可能である。
【0040】
本実施形態では、下地無しのメッキ処理により、第1の絶縁部113の上面にチャックトップ110を形成し、第1の絶縁部113の下面にガード層111を形成している。また、第2の絶縁部114の下面にグランド層112を形成している。
【0041】
第1実施形態と同様に、第1の絶縁部113および第2の絶縁部114は、いずれも接着要素が接触しない状態で機械的固定要素115によって固定されている。具体的には、第1〜2の絶縁部(113、114)は、ネジ(締着具)によって固定される。
【0042】
チャックトップ110、ガード層111、グランド層112、第1の絶縁部113、及び第2の絶縁部114の径については、第1実施形態と同じである。
【0043】
[プローバ]
次に、上記プローバチャック101を備える、磁気メモリ用のプローバ103について
図5を用いて説明する。第1実施形態との相違は、磁場発生部130を有することである。
【0044】
プローバ103は、上記プローバチャック101と、接離機構3Xと、チャック101の下方に配置され、チャック101を通過させてウエハWに磁場Hを印加する磁場発生部130と、を有する。接離機構3Xは、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。磁場発生部130は、電磁石又は永久磁石で構成される。
【0045】
図5に示すように、プローブテストの際には、テスタ5とプローブカード4とが接続され、シグナル層(チャックトップ110)、ガード層111及び第2のガード層2が同電位に印加され、グランド層112が接地される。磁場発生部130は、ウエハWに対して約1T(テスラ)の磁場を印加する。プローバ103は、テスト対象となる磁気メモリに対して針4aが接触するように、接離機構3Xの駆動を制御する。ウエハWには所定強さの磁場が印加された状態で検査が実施される。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態のプローバチャックは、第2実施形態の磁気メモリ用のチャックの構造を変更することで低容量化したものである。勿論、第1実施形態の半導体素子用のチャックの構造を同様に変更すれば、半導体素子用のチャックを低容量にできる。
【0047】
図6に示すように、プローバチャック201は、シグナル層としてのチャックトップ210と、チャックトップ210の下方に配置されるガード層211と、ガード層211の下方に配置されるグランド層212と、第1の絶縁部213と、第2の絶縁部214と、を有する。
図6及び
図7に示すように、各部210〜214は円盤状をなし、積層構造をなしている。なお、
図6において、チャックトップ210、ガード層211及びグランド層212は、位置関係を明示するために、厚みを誇張して図示している。
【0048】
チャックトップ210、ガード層211及びグランド層212は、導電性材料で形成されている。第1の絶縁部213は、第1の絶縁板材213aと、第2の絶縁板材213bとの2枚の板材で構成されているが、これに限定されない。第1の絶縁部213は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。第2の絶縁部214は、第3の絶縁板材214aの1枚の板材で構成されているが、これに限定されない。第2の絶縁部14は、1又は複数の絶縁部材で構成できる。
【0049】
図6に示すように、第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bとの合わせ面において、第2の絶縁板材213bに凹部が設けられることで、チャックトップ210とガード層211との間に第1の中空部213hが形成されている。本実施形態では、第1の中空部213hは、チャック201の形状に対応して円盤状に形成されているが、これに限定されない。勿論、第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bの少なくとも一方の板材に凹部を設ければ、第2の絶縁板材213bのみに凹部を設けることに限定されない。例えば、
図10に示すように、第1の絶縁板材313aのみに凹部を設けてもよい。また、第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bの両方に凹部を設けてもよい。
【0050】
図6に示すように、第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aとの合わせ面において、第3の絶縁板材214aに凹部が設けられることで、ガード層211とグランド層212との間に第2の中空部214hが形成されている。本実施形態では、第2の中空部214hは、チャック201の形状に対応して円盤状に形成されているが、これに限定されない。勿論、第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aの少なくとも一方の板材に凹部を設ければ、第3の絶縁板材214aのみに凹部を設けることに限定されない。例えば、第2の絶縁板材213bのみに凹部を設けてもよいし、第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aの両方に凹部を設けてもよい。
【0051】
本実施形態では、第1の中空部213h及び第2の中空部214hには、空気が存在している。その結果、第1の中空部213hには、第1の絶縁板材213aよりも誘電率の低い層が形成されており、第2の中空部214hには、第3の絶縁板材214aよりも誘電率の低い層が形成されている。なお、中空部に空気層が存在する場合に比べて絶縁性能が劣るが、中空部に、絶縁板材よりも誘電率の低い気体や固体を充填することも可能である。
【0052】
図6に示すように、第1の中空部213hは、第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bによって形成されている。
図7、
図8A及び
図8Cに示すように、第1の中空部213hには、第2の絶縁板材213bから延びて相手側の部材(第1の絶縁板材213a)を支持する第1のリブ216が設けられている。第1のリブ216は、閉領域を形成するように配置され、第1の中空部213hを複数の空間に区分している。本実施形態では、第1のリブ216は4つ形成されているが、1つ以上形成されていればよく、その数や形状は適宜変更可能である。本実施形態では、
図8A及び
図8Cに示すように、第1のリブ216として、直線状に延びる2つの直線状リブ216aと、屈曲しつつ延びる2つの屈曲リブ216bとが設けられている。第1の絶縁板材213aには、吸引によりウエアを保持するための吸引口217が上面から下面まで貫通して形成されており、吸引口217は第1の中空部213hに導通している。4つの第1のリブ216は、それぞれ吸引口217に対応しており、チャック201の側方から吸引口217に導通する吸引経路218を構成している(
図8C参照)。勿論、本実施形態では、第1のリブ216は、第2の絶縁板材213bのみに形成されているが、これに限定されない。例えば、第1のリブ216は、第1の絶縁板材213aのみに形成されていてもよいし、第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bの両方に形成されていてもよい。
【0053】
図6に示すように、第2の中空部214hは、第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aによって形成されている。
図7、
図8A及び
図8Bに示すように、第2の中空部214hには、第3の絶縁板材214aから延びて相手側の部材(第2の絶縁板材213b)を支持する第2のリブ219が設けられている。本実施形態では、第2のリブ219は、円柱状をなし、絶縁板材214aの中心部とその周囲に放射状に配置されているが、これに限定されない。第2のリブ219の形状や数は適宜変更可能である。勿論、本実施形態では、第2のリブ219は、第3の絶縁板材214aのみに形成されているが、これに限定されない。例えば、第2のリブ219は、第2の絶縁板材213bのみに形成されていてもよいし、第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aの両方に形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1及び第2実施形態と同様に、第1の絶縁部213を構成する第1の絶縁板材213a及び第2の絶縁板材213bと、第2の絶縁部214を構成する第3の絶縁板材214aは、いずれも接着要素が接触しない状態で機械的固定要素215によって固定されている。具体的には、第1〜第3の絶縁板材(213a、213b、214a)は、セラミックネジ(非磁性体の締着具)によって固定される。
【0055】
<リーク電流値の経年変動の抑制>
上記第3実施形態のチャックの効果を確認するために、比較例として接着要素(非磁性体且つ絶縁性の接着剤)を用いて第1〜3の絶縁板材(213a、213b、214a)を固定したチャックを製作した。また、実施例として、機械的固定要素(非磁性体且つ絶縁性であるセラミックネジ)を用いて第1〜3の絶縁板材(213a、213b、214a)を固定したチャックを製作した。比較例及び実施例のリーク電流を、製作直後と3ヶ月経過後にそれぞれ測定した。
【0056】
比較例も実施例も、製作当初は、リーク電流値が設計値である5pA以下に抑えられていた。しかし、3ヶ月経過すると、比較例は、
図11に示すように、リーク電流値が5pAを超えてしまった。一方、実施例は、
図11に示すように、同時間経過しても、リーク電流値が変動せず、5pA以下に抑えられていた。この評価は、第3実施形態のチャックを用いているが、第1実施形態のチャック及び第2実施形態のチャックでも同様のことがいえる。
【0057】
<低容量化>
上記第3実施形態のチャックの効果を確認するために、比較例として第1の中空部213h及び第2の中空部214hを形成しないチャックを製作した。また、実施例として、比較例と同じ大きさであって、第1の中空部213h及び第2の中空部214hを形成したチャックを製作した。それぞれのチャックについて、チャックトップ210とガード層211との間の静電容量、ガード層211とグランド層212との間の静電容量、チャックトップ210とグランド層212との間の静電容量を計測した。
【0058】
比較例について、いずれの静電容量も数千pFであるところ、実施例では、いずれの静電容量も数百pFであり、1桁の低容量化を実現できている。詳細には、チャックトップ10とガード層11との間の静電容量が約1/8に低減され、ガード層11とグランド層12との間の静電容量が約1/3に低減され、チャックトップ10とグランド層12との間の静電容量が約1/5に低減された。この評価は、磁気メモリ用のチャックを用いているが、半導体素子用のチャックでも同様のことがいえる。
【0059】
以上のように、第1〜3実施形態のプローバチャック1(101、201)は、載置されたウエハWを保持するプローバチャック1(101、201)であって、導電材料で形成され、ウエハWが載置されるチャックトップ10(110、210)と、導電材料で形成され、チャックトップ10(110、210)の下方に配置されるガード層11(111、211)と、導電材料で形成され、ガード層11(111、211)の下方に配置されるグランド層12(112、212)と、絶縁材料で形成され、チャックトップ10(110、210)とガード層11(111、211)との間に配置され、チャックトップ10(110、210)とガード層11(111、211)とを絶縁する第1の絶縁部13(113、213)と、絶縁材料で形成され、ガード層11(111、211)とグランド層12(112、212)との間に配置され、ガード層11(111、211)とグランド層12(112、212)とを絶縁する第2の絶縁部14(114、214)と、を備える。第1の絶縁部13(113、213)および第2の絶縁部14(114、214)は、いずれも接着要素が接触していない状態で機械的固定要素15(115、215)によって固定されている。
【0060】
このように、第1の絶縁部13(113、213)及び第2の絶縁部14(114、214)に接着要素が接触していない状態で機械的固定要素15(115、215)によって両絶縁部を固定しているので、接着要素が絶縁部に浸透し絶縁性能の低下することに起因するリーク電流の経時変動を防止することが可能となる。
【0061】
第3実施形態では、上面にチャックトップ210が形成され、第1の絶縁部213を構成する第1の絶縁板材213aと、下面にガード層211が形成される第2の絶縁板材213bと、下面にグランド層212が形成され、第2の絶縁部214を構成する第3の絶縁板材214aと、を備える。第1の絶縁板材213aと第2の絶縁板材213bとの合わせ面において、第2の絶縁板材213bに凹部が設けられることで、チャックトップ210とガード層211との間に第1の中空部213hが形成されている。第2の絶縁板材213bと第3の絶縁板材214aとの合わせ面において、第3の絶縁板材214aに凹部が設けることで、ガード層211とグランド層212との間に第2の中空部214hが形成されている。第1の中空部213hには、第1の絶縁板材213aよりも誘電率の低い層(空気層)が形成されている。第2の中空部214hには、第3の絶縁板材214aよりも誘電率の低い層(空気層)が形成されている。
【0062】
この構成によれば、各導電層の間に絶縁板材のみを配置する場合に比べて、各導電層の間の誘電率が低くなるので、効果的に低容量にすることが可能である。
【0063】
第3実施形態では、第1の中空部213hおよび第2の中空部214hには、中空部を形成する部材(第2の絶縁板材213b、第3の絶縁板材214a)からそれぞれ延びて相手側の部材を支持するリブ(第1のリブ216、第2のリブ219)が設けられている。
【0064】
この構成によれば、リブによって剛性が高まるので、薄型化を追求することが可能となる。
【0065】
第3実施形態では、第1の絶縁板材213aは、吸引によりウエハWを保持するための吸引口217が第1の中空部213hに導通するように形成されており、第1の中空部213hに設けられるリブ(第1のリブ216)は、閉領域を形成するように配置され、吸引口217に導通する吸引経路218を構成している。
【0066】
この構成によれば、リブ(第1のリブ216)が、チャックを補強する役割と吸引経路を形成する役割とを両立するので、別途に吸引経路を構成するための部材を設ける必要がなく、コストダウンおよび薄型化が可能となる。
【0067】
第2〜3実施形態では、チャック101(201)を構成する全ての部材は、非磁性体で構成されている。
【0068】
この構成によれば、ウエハWに対して磁場を印加しても、チャック101(201)を構成する部材が磁場において引力及び斥力を発現しないので、磁場を印加することに起因する振動を防止し、低リーク評価が可能となる。それでいて、ウエハWが載置されるチャックトップ110(210)が導電材料であり、その下方に導電材料のガード層111(211)が配置されているので、双方に同電位を印加すれば、リーク電流が発現したとしてもその影響を低減又は無くすことができ、低リーク評価が可能となる。
【0069】
第1〜3実施形態のチャック1(101、201)は、下記プローバ3(103)に適用するのが好ましい。すなわち、本実施形態のプローバ3(103)は、針4aを有するプローブカード4と、プローバチャック1(101、201)とプローブカード4との少なくとも一方を相対的に移動させて、プローバチャック1(101、201)に保持されるウエハWと針4aとを接離させる接離機構3Xと、を備える。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0071】
<変形例>
(1)第2実施形態及び第3実施形態ではチャックを構成する全ての部材が非磁性体で構成されているが、磁気メモリではなく、半導体素子用のチャックであれば、非磁性体に限定されない。磁性体を利用可能である。
【0072】
(2)経年によるリーク電流値の変動の抑制効果のみを狙うのであれば、第1実施形態及び第2実施形態のように、第1の中空部213h及び第2の中空部214hを形成しなくてもよい。
【0073】
(3)
図10に示すように、ガード層211は、第2の絶縁板材313bの上面に形成してもよい。また、第1の絶縁部213を構成する第1の絶縁板材313aのみに凹部を設けることで第1の中空部313hを形成してもよい。
【0074】
(4)第1実施形態及び第2実施形態では、
図3及び
図5に示すように、プローバ3(103)のZステージに第2のガード層2を設けているが、これを省略することも可能である。
【0075】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。