【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1による縦型熱交換器の縦断面図である。本実施例による縦型熱交換器100は、伝熱管3を収納した内ケーシング(管側ケーシング)2と、内ケーシング2を収納する外ケーシング(胴側ケーシング)1とを備えており、内ケーシング2から伝熱管3の内部に導入された管側流体と、外ケーシング1から伝熱管3の外周部に導入された胴側流体とで熱交換を行う。
【0017】
外ケーシング1の上端外周部には上端フランジ1aが設けられ、内ケーシング2の上端外周部には上端フランジ2aが設けられている。内ケーシング2の上端フランジ2aを外ケーシング1の上端フランジ1aに載置することにより、外ケーシング1と内ケーシング2との間に隙間部6が形成され、内ケーシング2が外ケーシング1の上方から引き抜き自在に支持される。
【0018】
外ケーシング1の側面部には、胴側流体を外ケーシング1の内部に導入するための胴側流体入口9が設けられ、外ケーシング1の下端部には、胴側流体を縦型熱交換器100の外部に排出するための胴側流体出口10が設けられている。
【0019】
内ケーシング2の上端部には管側流体を伝熱管3の内部に導入するための管側流体入口11と、伝熱管3を通過した管側流体を縦型熱交換器100の外部に排出するための管側流体出口12とが設けられている。また、内ケーシング2の側面部には、外ケーシング1の内部に導入された胴側流体を伝熱管3の外周部に導入するための胴側流体入口4と、伝熱管3の外周部を通過した胴側流体を内ケーシング1の外部に排出する胴側流体出口5とが設けられている。
【0020】
管側流体入口11を介して内ケーシング2の内部に導入された管側流体は、伝熱管3の内部に導入され、伝熱管3の内部を通過しながら伝熱管3の外周部を通過する胴側流体と熱交換される。伝熱管3の内部を通過した管側流体は、管側流体出口12を介して縦型熱交換器100の外部に排出される。
【0021】
一方、胴側流体入口9を介して外ケーシング1の内部に導入された胴側流体は、胴側流体入口4を介して内ケーシング2の内部に導入され、伝熱管3の外周部を通過しながら伝熱管3の内部を通過する管側流体と熱交換される。伝熱管3の外周部を通過した胴側流体は、胴側流体出口5を介して隙間部6に排出され、胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出される。
【0022】
ここで、胴側流体入口9から外ケーシング1の内部に導入された胴側流体の一部は、胴側流体入口4から内ケーシング2の内部に導入されることなく、外ケーシング1と内ケーシング2との間に形成された隙間部6を介して胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出されることにより、バイパス流を形成する。バイパス流は、伝熱管3の内部を通過する管側流体との熱交換に寄与しないため、伝熱効率の低下を招く。そこで、本実施例による縦型熱交換器100は、内ケーシング2の胴側流体入口4と胴側流体出口5との間で隙間部6を上部空間6aと下部空間6bとに仕切ることにより、隙間部6を介したバイパス流を抑制する仕切り構造20を備えている。
【0023】
仕切り構造20は、内ケーシング2の外周面に設けられた外周フランジ8と、外ケーシング1の内周面に設けられた内周フランジ7とを備えている。内ケーシング2の外周フランジ8の外周部を外ケーシング1の内周フランジ7に載置させ、互いに隙間なく密着させることにより、隙間部6の上部空間6aと下部空間6bとの連通を遮断することができる。なお、外周フランジ8と内周フランジ7とは、溶接などで互いに固着していないため、内ケーシング2を外ケーシング1の上方から引き抜くことで容易に分離する。
【0024】
ここで、縦型熱交換器100の運転停止時には、運転を停止して隙間部に残留する胴側流体を外部に排出(ドレン)させる必要があるため、外周フランジ8にはドレン孔31(
図2参照)とドレン孔開閉機構30とが設けられている。ドレン孔開閉機構30は、縦型熱交換器100の運転時にドレン孔31を閉塞し、縦型熱交換器100の運転停止時にドレン孔31を開放する。
【0025】
ドレン孔開閉機構30の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、縦型熱交換器100の運転停止時のドレン孔開閉機構30を示す
図1のA矢視図である。
【0026】
図2において、ドレン孔開閉機構30は、外周フランジ8のドレン孔31に挿通して取り付けられたドレン管21と、ドレン管21の入口側開口部を閉塞するための磁石付き閉止栓23と、外周フランジ8の取付穴28に挿通して取り付けられた案内管24と、案内管24の内部に昇降可能に設けられた棒状部材26と、棒状部材26の上端部に取り付けられた磁石27と、棒状部材26の下端部に取り付けられた浮体25とを備えている。
【0027】
ドレン管21は、入口側開口部22aが外周フランジ8の上側に配置され、出口側開口部22bが外周フランジ8の下側に配置されるように逆J字型に形成されている。取付穴28は、ドレン管21の入口側開口部22aの直下に形成されている。案内管24の上端部は閉止されており、案内管24の上端面の高さと外周フランジ8の上面の高さとは一致している。
【0028】
磁石付き閉止栓23は、ドレン管21の入口側開口部22aを閉塞するための閉止栓部23aと、この閉止栓部23aの下側に取り付けられた磁石部23bとを有する。磁石付き閉止栓23は、入口側開口部22aと案内管24との間に昇降可能に配置されている。入口側開口部22aは漏斗状に形成されており、磁石付き閉止栓23が上昇すると入口側開口部22aは閉塞され、磁石付き閉止栓23が下降すると入口側開口部22aは開放される。
【0029】
案内管24の下端開口部には、内径側に突出して下端フランジ24aが設けられており、この下端フランジ24aを棒状部材26の外周面の所定の高さに設けられた外周フランジ26aと係合させることにより、棒状部材26が案内管24から脱落することを防止できる。磁石27と磁石付き閉止栓23の磁石部23bとは、同じ磁極が対向するように配置されている。
【0030】
ドレン孔開閉機構30の動作について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図3は、縦型熱交換器100の運転時のドレン孔開閉機構40を示す
図1のA矢視図である。
【0031】
縦型熱交換器100の運転時は、胴側流体入口9を介して胴側流体が供給され、隙間部6の上部空間6a及び下部空間6bに胴側流体が充填されるため、
図3に示すように、外周フランジ8の下側に設けられた浮体25が、下部空間6bに充填された胴側流体の浮力を受けて上昇する。浮体25の上昇に伴い、浮体25に取り付けられた棒状部材26及びその上端に取り付けられた磁石27が上昇する。磁石27が磁石付き閉止栓23の磁石部23bに近づくことにより、磁石部23bに斥力が働き、磁石付き閉止栓23が押し上げられる。これにより、ドレン管21の入口側開口部22aが磁石付き閉止栓23の閉止栓部23aによって閉塞され、ドレン孔31を通過するバイパス流が抑制される。
【0032】
一方、縦型熱交換器100の運転停止時は、胴側流体入口9を介した胴側流体の供給が停止されると共に、隙間部6の下側空間6bに滞留していた胴側流体が胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出されるため、下部空間6bが開放される。その結果、浮体25に作用していた浮力が消失し、
図2に示すように、浮体25が自重で下降する。棒状部材26の下端部に取り付けられた浮体25が下降することにより、棒状部材26及びその上端に取り付けられた磁石27も下降する。磁石27が磁石付き閉止栓23の磁石部23から遠ざかることにより、磁石部23bに作用する斥力が低下し、磁石付き閉止栓23が自重で下降する。これにより、ドレン管21の入口側開口部22aが開放され、隙間部6の上部空間6aに残留する胴側流体がドレン孔31管21を介して下部空間6bに排出され、胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出される。
【0033】
本実施例による縦型熱交換器100によれば、外周フランジ8の下部空間に配置した浮体25に作用する浮力及び重力を利用して磁石付き閉止栓23を昇降操作することにより、運転時と運転停止時とでドレン孔31周辺の胴側流体の温度が大きく変化しない場合や、外ケーシング1と内ケーシング2との熱膨張差が小さい場合でも、運転時にドレン孔31を閉塞してバイパス流を抑制し、運転停止時にドレン孔31を開放して外周フランジ8の上部空間に残留する流体を排出できるため、運転時の伝熱効率及び運転停止時のメンテナンス性が向上する。
【実施例2】
【0034】
本発明の実施例2による縦型熱交換器100について、
図4及び
図5を用いて説明する。本実施例による縦型熱交換器100は、実施例1によるドレン孔開閉機構30(
図2参照)に代えて、
図4及び
図5に示すドレン孔開閉機構40を備える点を除き、実施例1に示した縦型熱交換器100(
図1参照)と同様である。
【0035】
ドレン孔開閉機構40の構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、縦型熱交換器100の運転停止時のドレン孔開閉機構40を示す
図1のA矢視図である。
【0036】
図4において、ドレン孔開閉機構40は、外周フランジ8の下側に取り付けられた揺動支点用部材35と、揺動支点用部材35に連結用ピン34aを介して揺動可能に取り付けられた揺動部材34と、揺動部材34の一方の端部に連結用ピン34bを介して回動可能に取り付けられ、ドレン孔31に挿通可能に設けられた柄部材33と、柄部材33の上端に取り付けられた閉止栓32と、揺動部材34の他方の端部に取り付けられた浮体25とを備えている。
【0037】
ドレン孔開閉機構40の動作について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図5は、縦型熱交換器100の運転時のドレン孔開閉機構40を示す
図1のA矢視図である。
【0038】
縦型熱交換器100の運転時は、胴側流体入口9を介して胴側流体が供給され、隙間部6の上部空間6a及び下部空間6bに胴側流体が充填されるため、
図5に示すように、外周フランジ8の下側に設けられた浮体25が、下部空間6bに充填された胴側流体の浮力を受けて上昇する。揺動部材34の一方の端部に取り付けられた浮体25が上昇することにより、揺動部材34が図示時計回り方向に揺動し、揺動部材34の他方の端部に取り付けられた柄部材33がドレン孔31内を下降する。柄部材33の上端がドレン孔31に達すると、柄部材33の上端に取り付けられた閉止栓32によってドレン孔31が閉塞され、ドレン孔31を通過するバイパス流が抑制される。
【0039】
一方、縦型熱交換器100の運転停止時は、胴側流体入口9を介した胴側流体の供給が停止されると共に、隙間部6の下側空間6bに滞留していた胴側流体が胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出されるため、下側空間6bが開放される。その結果、浮体25に作用していた浮力が消失し、
図4に示すように、浮体25が自重で下降する。揺動部材34の一方の端部に取り付けられた浮体25が下降することにより、揺動部材34は図示反時計回り方向に揺動し、揺動部材34の他方の端部に取り付けられた柄部材33によって閉止栓32が押し上げられる。これにより、ドレン孔31が開放され、外周フランジ8の上部空間に残留する流体がドレン孔31を介して下部空間6bに排出され、胴側流体出口10を介して縦型熱交換器100の外部に排出される。
【0040】
本実施例による縦型熱交換器100によれば、実施例1による縦型熱交換器100(
図1参照)と同様に、外周フランジ8の下部空間に配置した浮体25に作用する浮力及び重力を利用して閉止栓32を昇降操作することにより、運転時と運転停止後とでドレン孔31周辺の胴側流体の温度が大きく変化しない場合や、外ケーシング1と内ケーシング2との熱膨張差が小さい場合でも、運転時にドレン孔31を閉塞してバイパス流を抑制し、運転停止時にドレン孔31を開放して外周フランジ8の上部空間に残留する流体を排出できるため、運転時の伝熱効率及び運転停止時のメンテナンス性が向上する。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例では、ドレン孔開閉機構30又は40を1つ備えた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、ドレン孔開閉機構30又は40を複数備えた構成としても良く、その場合は、それぞれを等間隔に配置することが好ましい。
【0042】
また、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、あるいは、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。