【実施例1】
【0014】
本発明の好適な一実施例である放射線計測装置について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1に示す放射線計測装置1は、原子力発電所などの放射線管理区域に立ち入って作業を行う作業員が携帯する携帯端末として構成されている。
【0015】
放射線計測装置1は、放射線を計測する計測部2、操作者(作業者)が必要なデータを入力及び選択する入力部3、画像を撮像する撮像部4、データを記憶する記憶部(メモリ)5、記憶部5に記憶された情報を表示する表示部(表示画面)6、データを送信及び受信する送受信部7を備える。計測部2、入力部3及び撮像部4は記憶部5に接続されている。記憶部5は、表示部6及び送受信部7に接続されている。記憶部5には、放射線計測する場所の図面(例えば、原子炉建屋の内部構成を示す構成図)が予め記憶されている。本実施例では、原子炉建屋内で放射線計測をする例を用いて説明する。
【0016】
放射線計測装置1では、放射線を計測する対象物の構成(原子炉建屋内の構成等)が更新されて構成に変更が生じた場合、更新された図面の情報が外部から送信されると、図面情報を送受信部7が受信し、記憶部5に記憶する。また、記憶部5は、計測部2で計測された放射線の計測値の情報、操作者が入力部3から入力した情報、撮像部4で撮影された画像情報をそれぞれ受け取り、記憶する。また記憶部5に記憶された情報は、適宜外部に送信されて中央管理部署などでの管理などに利用される。
【0017】
図2は、放射線計測装置1の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、放射線計測装置1は、内部に計測部2の放射線検出器を備え、外部に撮像部4と表示部6を備える。本実施例の放射線計測装置1は、操作者が入力すべき事項が表示部6に表示され、その表示に沿って操作者が入力することによって必要な事項が入力される。つまり、表示部6が入力部としての機能を有する。
【0018】
図3は、放射線計測装置1の表示部6に表示される表示例を示す図である。
図3に示すように、表示部6には、大別すると時刻情報表示エリアA1、場所関係情報表示エリアA2、線量率関係表示エリアA3、撮影関係情報示エリアA4が形成されている。これらの各エリアには、1つまたは複数の表示枠が設けられており、これらの表示枠には記憶部5に記憶された適宜の情報が表示され、あるいは作業者の操作により各種入力を与え、記憶部5に記憶することが可能である。各種入力にはボタン機能を含む場合がある。
【0019】
このうち時刻情報表示エリアA1には、現在時刻表示枠9が設けられている。なお現在時刻表示枠9には、現在時刻の表示以外に任意時刻の設定が作業者入力により可能であり、設定された任意時刻の情報を得て、後述する線量率情報について当該時刻の線量率情報を逆引きの形で表示させることも可能である。
【0020】
場所関係情報表示エリアA2には、測定場所表示枠10、図面表示枠11、測定区分表示枠15、位置決めボタン表示枠16が形成されている。このうち測定場所表示枠10には測定場所が表示されている。この表示場所は、作業者の操作により任意場所の選択が可能であり、あるいは記憶部5に記憶された位置の情報を反映して、現在位置を反映させた場所表示とすることができる。図示の例では選択された場所として、「4号機の原子炉建屋2階」と表示がされている。なお以下の説明ではこの場所は現在位置を含むものとして説明する。
【0021】
測定区分表示枠15には、測定区分として機器表面の線量率測定を行うのか、空間の線量率測定を行うのかが、選択可能に表示されている。位置決めボタン表示枠16には、線量率測定を行う測定位置(現在位置)を決定したときに押す位置決め押しボタンが表示されている。位置決め押しボタンの操作により、位置の情報が取り込まれる。なお線量測定は、位置と無関係に実行されていてもよく、位置決め押しボタンの操作と同時にその場所での線量率測定が開始されるものであってもよい。なお、実施例の説明においては、測定区分表示枠15、位置決めボタン表示枠16を、場所関係情報表示エリアA2に分類して説明を行っているが、これらは線量率関係表示エリアA3に属するものとされていてもよい。
【0022】
図面表示枠11には、測定場所表示枠10で選択した「4号機の原子炉建屋2階」の機器などの配置構成を示す図面が表示される。測定場所表示枠10で選択する場所が変更されれば、図面表示枠11に標示される表示図面も対応して変更される。また図面表示枠11には、操作者による押しボタンの操作により特定された当該場所(現在位置)が、図示の例では星印として図面上に表示される。また線量率測定結果の数値が、当該場所(現在位置)を示す星印近傍に数値表示される。
【0023】
線量率関係表示エリアA3には、線量率表示枠12と、測定値記録ボタン表示枠14が形成されている。線量率表示枠12には、測定した線量率がその単位と共に表示される。測定した線量率は、数値安定化後に隣接する測定値記録ボタン表示枠14を操作者が操作することにより、記憶部5に記憶される。記憶部5での記憶に際して、関連する情報である場所、時刻との紐付けがされた情報として記憶されることは言うまでもない。
【0024】
撮影関係情報示エリアA4には、撮像図表示枠17と撮影ボタン表示枠18が形成されている。操作者が撮影ボタン表示枠18の撮影ボタンを押した時の撮像が、撮像図表示枠17に画像表示される。なお、撮影ボタン表示枠18と位置決め押しボタン表示枠16は一体に構成されて、線量率の測定と当該場所撮像が同一条件のもとに実行されるものであってもよい。また画像について、画像の当該撮影場所近傍に測定した線量率の数値を概略場所と共に重ね合せ表示されるのがよい。
【0025】
以上述べた
図3の表示画面によれば、要するに図面あるいは画像などの場所の情報に、線量率測定を行った当該場所(現在位置)と測定結果の数値情報が重ね合せ表示されたものである。
【0026】
図3に表示された各種の情報として、時刻、場所、線量率の情報が互いに紐づけられて記憶されることは先にも述べたが、この結果線量率の情報はこれらに関連付けされた履歴情報として保持されることになる。
【0027】
なお、上記
図3の表示枠を入力部3に属する入力機能という観点から整理すると、測定場所表示枠10、測定区分表示枠15、位置決めボタン表示枠16、撮影ボタン表示枠18、測定値記録ボタン表示枠14がこれに該当するものということができる。
【0028】
次に、放射線計測装置1を用いた放射線の計測方法の流れについて、
図4を用いて説明する。最初の処理ステップS1では、操作者が装置電源をONにすると、計測部2が線量率測定を開始し、表示部6の線量率表示枠12に線量率を表示する。あわせて、撮像部4が撮像を開始する。なおこの段階は、線量率測定あるいは撮像の機能が機能開始したというにとどまり、測定場所が特定されて計測条件が整った場面での線量率測定あるいは撮像結果を表示したというものではない。
【0029】
その後処理ステップS2において、操作者が「原子力発電所の号機、建屋、階」を表示部6の測定場所表示枠10で選択し、測定場所を決定すると、表示部6の図面表示枠11に測定場所の図面が表示される。
【0030】
処理ステップS3では、操作者が表示部6の位置決めボタン表示枠16を操作し測定位置となる箇所を押下し、測定位置を決定すると、表示部6の図面表示枠11に表示された図面上に測定位置12が表示される。
【0031】
線量率測定箇所は、機器や配管の表面であるか、または機器や配管の表面ではない空間であるか、を記録する必要があるため、処理ステップS4では、操作者が表示部6の測定区分表示枠15において、測定区分が表面か空間かを選択し、測定区分を決定する。
【0032】
処理ステップS5では、その後に操作者が、表示部6の測定値記録ボタン表示枠14の測定ボタンを押下すると、計測部2が計測している線量率を記録する。
【0033】
処理ステップS6では、撮像図の記録が必要な場合、表示部6の図面表示枠11に表示されている図面上で撮像箇所の位置を選択し、その後撮影ボタン表示枠18において撮影ボタンを押下すると、撮像図が線量率とともに記録される。
【0034】
最後に測定を終了する場合は装置電源をOFFにする(処理ステップ8)。測定を継続する場合、測定場所を変更する場合には、処理ステップS2の手順に図面の選択を実施し、測定場所を変更しない場合は、処理ステップS3にて測定位置を決定した上で、測定を継続する(処理ステップS9)。
【0035】
本実施例の放射線計測装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施例の放射線計測装置は、計測部2と表示部6を備えるため、計測位置における現在の計測位置および現在の線量率を同時に知ることができる。
(2)本実施例の放射線計測装置は、表示部6に表示される図面上に計測箇所の線量率が表示されるため、作業者が現場にいながら表示部6を見ることで現在位置と比較して高線量率または低線量率の場所を確認することができ、高線量率箇所への不要な接近を避けたり、低線量率箇所での移動をしたりすることで作業者の受ける被ばく線量を低減することができる。
(3)本実施例の放射線計測装置は、計測部2と記憶部6を備えるため、放射線を計測する時間を短縮でき、計測したデータを正確に記録することができる。
(4)本実施例の放射線計測装置は、撮像部4を備えるため、放射線計測時点の計測場所の状況を正確に記録することができる。
(5)本実施例の放射線計測装置は、表示部6が入力部3の機能を有しており、放射線計測装置の外面に凹凸が少ない構造であるため、放射線管理区域に放射線計測装置を持ち込み使用した際に放射性物質が付着した場合でも、放射性物質を容易に除去することができる。
(6)本実施例の放射線計測装置は、計測部2と記憶部5と撮像部4が一体であり、放射線管理区域での放射線計測時の必要持参品を分割することなく持ち込むことができ、測定者の負荷を軽減することができる。また、放射線管理区域からの物品持ち出し時に実施する放射性物質付着有無の検査を短時間で実施することができる。
(7)本実施例の放射線計測装置は、使用時には一体である計測部2と記憶部5と撮像部4が分割できる構造となっており、各部毎に分割して故障時の修理や保守点検や計器校正を実施することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2では、実施例1の放射線計測装置1による線量率測定履歴と線量率測定履歴グラフの表示機能について説明する。
図5の表示部6における表示は、履歴情報としての表示を行った事例を示している。
【0037】
図5の表示例では、測定場所の情報が測定場所表示枠10に表示され、測定期間が測定期間表示枠に表示されている。履歴表示枠としては、表形式での数値表示枠である測定履歴表表示枠20や、グラフ形式での数値表示枠である測定履歴グラフ表示枠21が利用可能である。
【0038】
図5の表示例は、線量率の測定履歴と測定履歴グラフを表示した表示部である。過去に計測した線量率の推移を確認する場合、表示したい原子力発電所の号機や建屋や階を表示部で選択し、その後、表示したい線量率の測定期間を表示すると、測定履歴と測定履歴グラフが表示される。
【0039】
本実施例の放射線計測装置によれば、前述した(1)乃至(7)の効果を得ることができ、さらに、以下に示す効果を得ることができる。
(8)本実施例の放射線計測装置は、過去の測定履歴を確認することで将来の線量率の推移を推測することができ、以後の作業において作業員が受ける被ばく線量の予測を行うことができる。
(9)本実施例の放射線計測装置は、過去の測定履歴を確認することで将来の線量率の推移を推測することができ、作業員が受ける被ばく線量の低減対策の計画を効果的に行うことができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3では、
図6に示すように放射線計測装置1Aは、実施例1の放射線計測装置1(
図1)と同様の構成を備える。さらに、放射線計測装置1Aは、放射線計測装置1に加え、GPS(Global Positioning System)8を備える。GPS機能を利用することにより、
図6に示す放射線の計測方法の流れのうち、測位位置の決定(処理ステップS3)を必要としなくなり、自動で測定位置を記録することができる。
なお
図2のGPS機能8を備える場合には、
図2の外観図においては外部にGPS機能8のアンテナ部分を備えることになる。
【0041】
本実施例の放射線計測装置によれば、前述した(1)乃至(9)の効果を得ることができ、さらに、以下に示す効果を得ることができる。
(10)本実施例の放射線計測装置は、送受信部の構成を備えており、GPSからの位置情報を受信することができるため、測定者が測定位置を入力する必要なく測定位置が記録できる。
(11)本実施例の放射線計測装置は、送受信部の構成を備えるため、GPSからの位置情報を受信し、測定位置を正確に記録することができる。
(12)本実施例の放射線計測装置は、送受信部の構成を備えており、GPSからの位置情報を受信することができるため、測定者の移動経路を記録できる。
【実施例4】
【0042】
実施例4では、実施例1の放射線計測装置1(
図1)とコンピュータ25(放射線管理装置)を有線または無線で接続した放射線管理システム100について、
図7を用いて説明する。
【0043】
図7に示す放射線監視システム100は、放射線管理区域27内で使用される設備と、中央の事務所22内に設置され、使用される設備で構成されている。また放射線管理区域27内で使用される設備と、中央の事務所22内に設置され、使用される設備との間には、適宜インターネット24を介した情報交換が可能とされている。
【0044】
この図によれば、放射線計測装置1は作業員の移動と共に、事務所22と放射線管理区域27において使用可能である。放射線管理区域27においては、前述した計測記憶作業の結果などが事務所22に持ち帰ることなく、例えば放射線管理区域で放射線を計測した後すぐ、放射線計測装置1の無線通信機能によりインターネット24経由で事務所22内のコンピュータ25に送られ記録を保存する。あるいはコンピュータ25からの指令などが放射線計測装置1側に送られ、放射線管理区域27における計測作業に反映される。
【0045】
他方、作業員は放射線管理区域27で放射線を計測した放射線測定装置1を事務所22に持ち帰り、その後有線通信23、あるいはメモリ(SD、USBメモリなど)の移転などにより、あるいは無線通信28によりインターネット24を介してコンピュータ25に記録を保存することができる。保存された記録は、予めコンピュータ25に記憶されている記録様式に転記され、コンピュータ25と接続されているプリンタ26によって出力される。
【0046】
本実施例の放射線計測装置によれば、前述した(1)乃至(12)の効果を得ることができ、さらに、以下に示す効果を得ることができる。
(13)本実施例の放射線管理システム100によれば、放射線測定装置1に記憶された放射線量や撮像図を手作業によりコンピュータ25に入力することなく、正確にコンピュータ25に保存することができる。
(14)本実施例の放射線管理システム100は、無線通信を用いることで、管理区域で計測した放射線量や撮像図を即時にコンピュータ25で確認することができる。
【0047】
なお、本実施例では、実施例1の放射線計測装置1を用いた放射線監視システムについて説明したが、この放射線計測装置1の替わりに、実施例3の放射線計測装置1Aを用いた放射線監視システム100Aであっても良い。このような放射線監視システム100Aの場合、前述した(1)乃至(14)の効果を得ることができる。
【0048】
図8は、上記説明の本発明に係る放射線計測装置1の機能の概略をまとめたものである。
図8によれば、本発明に係る放射線計測装置1は、計測部(線量計)2と記憶部(メモリ)5と送受信部7と表示部6を備える。特にメモリ5には、監視対象設備の機器配置などの図面と、計測した線量(線量率)と、計測した位置、場所と、時刻を保持している。かつこれらは相互に関連付けて紐づけされた情報として一体に保持されている。なお時刻を保有するということは、履歴情報としても把握可能であることを意味している。
【0049】
通信は送受信が可能である。このことは、メモリ5内に上記の情報を全て保有する必要が必ずしもないことを意味しており、コンピュータ25側に情報を保有して、作成した画像情報のみを送受信するというシステム構成を採用可能であって、本発明は係る変形実施例をも含んでいる。
【0050】
本発明による表示では、計測した線量(線量率)と、計測した位置、場所が、設備図面上に同時に対応付けて表示されることになる。
図3の例でいうと、設備図面11上に計測した場所12と、そこで計測した線量率13が対応付けて一体のものとして表示されている。またこの対応関係は、インターネットを経由して他の作業員の携帯端末である放射線計測装置1にも送ることが可能であり、適宜他の作業者との間で情報の共有が可能である。各人が各場所で計測した結果が1画面上に統合的に表示され、あるいは逐次更新がされ、その場所に近づいたときにアラームなどで表示確認を促されるなどといった応用も可能である。