特許第6486788号(P6486788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486788
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】貯湯式給湯機
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20190311BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   F24H1/00 602G
   F24H1/18 A
   F24H1/00 301F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-144611(P2015-144611)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-26212(P2017-26212A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】竹原 正貴
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小川 昇
(72)【発明者】
【氏名】大桃 正己
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−064335(JP,A)
【文献】 特開2012−149796(JP,A)
【文献】 特開2008−128528(JP,A)
【文献】 特開2004−069217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00,1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内に配置された風呂熱交換器と、浴槽から前記風呂熱交換器に向かう風呂往き管及び前記風呂熱交換器から前記浴槽に向かう風呂戻り管とで構成され、前記風呂熱交換器と前記浴槽とを循環可能に接続する風呂循環回路と、浴槽水を循環させる風呂循環ポンプと、前記風呂循環回路に前記風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と、前記バイパス管側を閉鎖して前記風呂熱交換器と前記風呂循環回路を連通するか、前記風呂熱交換器側を閉鎖して前記バイパス管と前記風呂循環回路を連通するか、前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通するかを切り替え可能な風呂三方弁と、前記風呂三方弁の開度を切り替えると共に、浴槽水を前記風呂循環回路を介して風呂熱交換器に循環させて風呂加熱を行う風呂加熱動作の制御をする制御装置とを備えた貯湯式給湯機において、前記バイパス管の接続部よりも前記浴槽側の前記風呂往き管に風呂温度センサを設け、前記制御装置は、前記風呂加熱動作開始時に前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度未満の場合は前記バイパス管側を閉鎖して前記風呂熱交換器と前記風呂循環回路を連通し、前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度以上の場合は前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通するように前記風呂三方弁を切り替えたことを特徴とする貯湯式給湯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の温水との風呂熱交換により浴槽内の浴槽水の追焚きまたは保温を行う貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、貯湯タンク内に設けた蛇管からなる風呂熱交換器と、浴槽と前記風呂熱交換器とを循環可能にした風呂循環回路と、前記風呂循環回路に設けられた風呂循環ポンプと、前記風呂循環回路を流れる浴槽水の温度を検出する風呂温度センサと、前記風呂循環回路に設けた前記風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と、前記風呂循環回路の流路を切り替え可能な流路切替手段と、前記流路切替手段よりも下流側に設けられた混合温度センサと、前記流路切替手段の開度を切り替えると共に、浴槽水を前記風呂循環回路を介して前記風呂熱交換器に循環させて風呂加熱を行う風呂加熱動作の制御をする制御装置とを備えた貯湯式給湯機がある。
【0003】
そして、前記風呂熱交換器内には、前回の風呂加熱動作で浴槽水を循環させたときに残った浴槽水が貯湯タンクの貯湯熱により加熱され、高温の残留水が残留することとなる。
【0004】
次に、従来の風呂加熱動作である追い焚き運転の動作について説明する。
前記制御装置に接続されたリモコンにて風呂の追い焚き運転が指示されると、前記制御装置は前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通するように前記流路切替手段を切り替え、前記風呂循環ポンプを駆動開始し、前記風呂熱交換器内の前記高温の残留水と前記風呂循環ポンプによって循環される比較的低温の浴槽水とを混合して混合水とし、前記混合温度センサで検出した混合水温度が所定温度(ここでは60℃)を超えないように、前記流路切替手段の開度を調節して追い焚き運転を開始する。
【0005】
そして、前記制御装置が追い焚き運転の開始から予め定められた所定時間(ここでは60秒)をカウントすると、前記流路切替手段を前記風呂熱交換器側と前記風呂循環回路側を連通し前記バイパス管側を閉鎖して、前記浴槽と前記風呂熱交換器とで熱交換させて追い焚き運転を行う。そして、前記風呂温度センサが風呂設定温度以上を検出すると、前記風呂循環ポンプを駆動停止して追い焚き運転を終了するというものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−144439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のようなものでは、風呂熱交換器内に溜まった高温の残留水を前記残り湯で冷ましてから浴槽に流入させることになるので、追い焚き運転出力の低下や、追い焚き運転完了時間が長くなる原因となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
温水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内に配置された風呂熱交換器と、浴槽から前記風呂熱交換器に向かう風呂往き管及び前記風呂熱交換器から前記浴槽に向かう風呂戻り管とで構成され、前記風呂熱交換器と前記浴槽とを循環可能に接続する風呂循環回路と、浴槽水を循環させる風呂循環ポンプと、前記風呂循環回路に前記風呂熱交換器をバイパスするバイパス管と、前記バイパス管側を閉鎖して前記風呂熱交換器と前記風呂循環回路を連通するか、前記風呂熱交換器側を閉鎖して前記バイパス管と前記風呂循環回路を連通するか、前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通するかを切り替え可能な風呂三方弁と、前記風呂三方弁の開度を切り替えると共に、浴槽水を前記風呂循環回路を介して風呂熱交換器に循環させて風呂加熱を行う風呂加熱動作の制御をする制御装置とを備えた貯湯式給湯機において、前記バイパス管の接続部よりも前記浴槽側の前記風呂往き管に風呂温度センサを設け、前記制御装置は、前記風呂加熱動作開始時に前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度未満の場合は前記バイパス管側を閉鎖して前記風呂熱交換器と前記風呂循環回路を連通し、前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度以上の場合は前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通するように前記風呂三方弁を切り替えた
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、前記風呂加熱動作開始時に前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度未満の場合は、前記風呂熱交換器内に溜まった高温の残留水をそのまま風呂に流入しても、浴槽水温度が低いので前記高温の残留水が前記浴槽内に流入した時に温度が冷まされる。また、浴槽水温度が所定温度よりも高い場合は、前記風呂熱交換器内に溜まった前記高温の残留水をそのまま前記浴槽に流入してしまうと入浴者が不快と感じてしまう恐れがあるため、前記制御装置は、前記風呂熱交換器と前記バイパス管と前記風呂循環回路の三方を連通し、比較的低温の浴槽水と前記高温の残留水を混合して、混合水を前記浴槽に流入させる。そのため、前記風呂加熱動作開始時に前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度よりも低い場合、前記高温の残留水をそのまま浴槽内に流入させるので、前記風呂熱交換器内に溜まった前記高温の残留水を前記残り湯で冷ますことは無く、追い焚き運転出力の向上や追い焚き運転完了時間を短くすることができる。また、前記風呂加熱動作開始時に前記風呂温度センサで検出した浴槽水温度が所定温度よりも高い場合、前記高温の残留水と浴槽の浴槽水を前記風呂三方弁で混合して、安全な温度にしてから浴槽へ流入させることで、入浴者に不快感を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の第1実施例の概略説明図
図2】この発明の第1実施例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
1は温水を貯湯する貯湯タンク、2は温水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、3は浴槽である。
【0013】
4は貯湯タンク1とヒートポンプユニット2を循環可能に接続する加熱循環回路で、加熱循環ポンプ5を有し貯湯タンク1の下部に接続されたヒーポン往き管及び貯湯タンク1上部に接続されたヒーポン戻り管より構成され、貯湯タンク1下部の冷水を、ヒーポン往き管を介してヒートポンプユニット2で加熱し、加熱された高温の温水をヒーポン戻り管で貯湯タンク1上部に戻して貯湯タンク1内に温水を加熱貯湯するものである。なお、貯湯タンク1の外周面には貯湯温度センサ6を有しており、この貯湯温度センサ6が所定温度以上を検出することで貯湯量を検知するものである。
【0014】
7は貯湯タンク1に水を供給する給水管、8は貯湯タンク1内の温水を出湯する出湯管、9は給水管7からの冷水と出湯管8からの温水を設定温度になるように混合する給湯混合弁、10は混合された設定温度の温水を給湯する給湯管、11は給湯管10の端部に設けられる給湯栓である。12は給湯混合弁9の下流に設けた給湯温度センサ、13は給湯量をカウントする給湯流量センサである。なお、14は水道圧を所定の圧力に減圧する減圧弁、15は加熱されることによる過圧を逃がす圧力逃し弁である。
【0015】
16は風呂循環回路で、貯湯タンク1内に設けられた蛇管よりなる風呂熱交換器17と浴槽3とを、浴槽3から風呂熱交換器17に向かう風呂往き管16a及び風呂熱交換器17から浴槽3に向かう風呂戻り管16bとで循環可能に接続するものである。そして、前回の追い焚き運転や保温運転等で、風呂熱交換器17に浴槽水が残留している場合、貯湯タンク1内の貯湯熱と熱交換され加熱された高温の残留水が風呂熱交換器17内に残る。
【0016】
18は風呂循環回路16に設けられた風呂循環ポンプ、19は流水の有無を検知する流水センサ、20は風呂循環回路16を流れる浴槽水の温度を検出する風呂温度センサ、21は浴槽水の水圧から浴槽3内の水位を検出する水位センサである。
【0017】
22は風呂熱交換器17をバイパスして風呂往き管16aと風呂戻り管16bとを接続するバイパス管で、中間位置において三方が全て連通する風呂三方弁23がバイパス管22と風呂戻り管16bの接続部に設けられ、風呂循環回路18を流れる温水を風呂熱交換器17に流すか否かを選択的に切換えるものである。
【0018】
24は給湯管10途中から分岐されて風呂循環回路16に接続され浴槽3への湯張りを行うための湯張り管、25はこの湯張り管24に設けられ浴槽3への湯張りの開始、停止を行う湯張り弁、26は浴槽3への湯張り量をカウントする風呂流量センサである。なお、27は湯張り管24と水位センサ21との間に設けられる二方弁で、湯張り時に一旦開弁して風呂戻り管16bの湯張り管24から浴槽3までの配管のエアパージを行った後、閉弁して水位センサ21で正確な水位を監視しながら湯張りを行えるようにするものである。
【0019】
28はヒートポンプユニット2の加熱制御を行う加熱制御部、29は給湯および風呂の制御を行う制御装置である。
【0020】
次に本発明の風呂追い焚き運転動作について図2のフローチャートに基づいて説明する。
前記制御装置29に接続されたリモコン(図示せず)にて風呂の追い焚き運転が指示されると(S1がYES)、制御装置29は風呂三方弁23の弁開度を、風呂熱交換器17側を閉鎖してバイパス管22と風呂循環回路18を連通するように制御し(S2)、風呂循環ポンプ18の駆動を開始させ(S3)、浴槽水をバイパス管22と風呂循環回路16とで循環させる。このとき、風呂温度センサ20で浴槽水の温度を検出する。
【0021】
そして、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度と、前日の残湯追い焚き運転等(また、冬場の寒い環境で、浴槽水温度が非常に低くなっている時)の冷めた浴槽水であるかの基準である所定温度(例えば30℃)とを比較する(S4)。
【0022】
風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度未満であった場合(S4がYES)、制御装置29は風呂三方弁23の弁開度を、バイパス管22を閉鎖して風呂熱交換器17と風呂循環回路16を連通するように制御し(S5)、追い焚き運転を開始する(S6)。ここでは、風呂熱交換器17内の高温の残留水をそのまま追い焚き運転に使用するため、追い焚き運転出力の向上や追い焚き運転完了時間を短くすることができる。
【0023】
風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度以上であった場合(S4がNO)、制御装置29は風呂三方弁23の弁開度を、風呂熱交換器17とバイパス管22と風呂循環回路16の三方を連通するように制御し(S7)、比較的低温の浴槽水と前記高温の残留水を混合して追い焚き運転を開始する(S8)。ここでは、浴槽水温度が所定温度以上なので、浴槽3に高温の残留水を流入すると、予期しない高温出湯で入浴者に不快と感じさせてしまう心配があるため、比較的低めの浴槽水と混合して浴槽3に流入させることで、入浴者が不快と感じさせてしまうのを確実に防止する。
【0024】
そして、追い焚き運転開始してから60秒経過したら(S9がYES)、制御装置29は風呂三方弁23の弁開度を、バイパス管22側を閉鎖して風呂熱交換器17と風呂循環回路16を連通するように制御する(S10)。
【0025】
そして、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が風呂設定温度以上を検出すると(S11がYES)、風呂循環ポンプ18を駆動停止して(S12)、追い焚き運転を終了する。
【0026】
このように、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度よりも低い場合は、風呂熱交換器17内に溜まった前記高温の残留水をそのまま風呂に流入させても、浴槽水温度が低いので前記高温の残留水が浴槽3内に流入した時に温度が冷まされる。また、浴槽水温度が所定温度よりも高い場合は、風呂熱交換器17内に溜まった前記高温の残留水をそのまま浴槽3に流入させてしまうと入浴者に不快と感じさせてしまう恐れがあるため、制御装置29は、風呂熱交換器17とバイパス管22と風呂循環回路16の三方を連通し、比較的低温の浴槽水と前記高温の残留水を混合して、混合水を浴槽3に流入させる。そのため、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度よりも低い場合、前記高温の残留水をそのまま浴槽3内に流入させるので、風呂熱交換器17内に溜まった前記高温の残留水を前記残り湯で冷ますことは無く、追い焚き運転出力の向上や追い焚き運転完了の時間を早めることができる。また、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度よりも高い場合、前記高温の残留水をそのまま浴槽3に流入させてしまうと、入浴者に不快と感じさせてしまうので、比較的低めの浴槽水と混合して浴槽3に流入させることで、予期しない高温出湯で入浴者が不快と感じるのを確実に防止することができる。
【0027】
また、仮に入浴者が入浴中であったときでも、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度よりも低い場合、たとえ高温の残留水が浴槽3内に流入しても浴槽3内の温度が低いので、すぐに高温の残留水の熱は浴槽3へ拡散されて、使用者が予期しない高温出湯で不快と思うことはない。また、風呂温度センサ20で検出した浴槽水温度が所定温度よりも高い場合、高温の残留水と比較的低めの浴槽水と混合して浴槽3に流入させるので、予期しない高温出湯で入浴者に不快と感じさせてしまうのを確実に無くすことができ、常に安心して使用できるものである。
【0028】
なお、本発明はこの第1実施形態に限定されるものではなく、例えば貯湯タンク内1の温水を沸かし上げる電熱ヒータを貯湯タンク1内に有した公知の電気温水器でもよい。
【0029】
また、今回は追い焚き運転による動作で説明したが、保温運転の風呂加熱動作でも本発明と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 貯湯タンク
3 浴槽
16 風呂循環回路
16a 風呂往き管
16b 風呂戻り管
17 風呂熱交換器
18 風呂循環ポンプ
20 風呂温度センサ
22 バイパス管
23 風呂三方弁
29 制御装置
図1
図2