【実施例1】
【0027】
最初に、
図1ないし
図6を参照して、本発明の実施例1の取着体である配線ボックス固定具F
1 について説明する。配線ボックス固定具F
1 は、例えば、
図1に示されるような軽量間仕切り壁を構成する支柱である軽量型鋼71に対して水平に支持される雄ねじ棒から成る棒状支持部材72に対して、肉厚の異なる第1及び第2の2種類の配線ボックスB
1 ,B
2 を取着可能とするものである。肉厚の異なる2種類の配線ボックスとは、底壁の肉厚T
1 が6mmの樹脂製の第1配線ボックスB
1 と、底壁の肉厚T
2 が1.5〜2mmの鉄製の第2配線ボックスB
2 とを指す。第1及び第2のいずれの配線ボックスB
1 ,B
2 においても、その底壁81には、前記配線ボックス固定具F
1 を含む種々の配線ボックス固定具を介して棒状支持部材72等の構造物に対して取着するための一対一組となった二組の貫通孔82が垂直方向、及び水平方向の双方に沿って形成されている。一対一組となった二組の貫通孔82のピッチP(
図2及び
図3参照)は、同一である。
図3に示されるように、棒状支持部材72が水平に配置されている場合には、上下方向に沿った一対の貫通孔82を使用することで、配線ボックス固定具F
1 を垂直方向に配置すると共に、棒状支持部材72が垂直に配置されている場合には、左右方向に沿った一対の貫通孔82を使用することで、配線ボックス固定具F
1 を水平方向に配置する。なお、
図2及び
図3において、83は、第1配線ボックスB
1 の底壁81及び各側壁84に形成されたノックアウト孔を示し、85は、ボックス開口の側から差し込まれた被探知部材のボルト部を螺合させるために、底壁81の中心の厚肉部に埋設されたナット体を示す。
【0028】
配線ボックス固定具F
1 は、樹脂の射出成形品であって、
図5及び
図6に示されるように、第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の双方を取着可能な一対の取着部A
1 が、各配線ボックスB
1 ,B
2 の一対の貫通孔82と同一のピッチPをおいて連結板部1で一体に連結され、当該連結板部1における一対の取着部A
1 の並び方向Qに沿った中央部には、前記棒状支持部材72を嵌合状態で挿通して、当該棒状支持部材72の長手方向に沿って摺動することなく固定可能な支持部材固定部2が、前記一対の取着部A
1 と反対側にわん曲して一体に形成された構成である。支持部材固定部2は、180°を超える円弧状をなしていて、一対の取着部A
1 が形成された側の開口は、棒状支持部材72の挿入開口6となっており、断面円形の棒状支持部材72は、当該挿入開口6を通して、180°を超える円弧状となっている支持部材固定部2に挿入状態で嵌合された後においては、当該支持部材固定部2は、挿入開口6が僅かに広くなるように弾性変形され、その弾性復元力により挟持されることで、当該位置に固定される。なお、
図6において、配線ボックス固定具F
1 の連結板部1は、非使用状態においては、同図(b)で二点鎖線で示されるように、一対の取着部A
1 の先端部が近接する側に屈曲されているが、
図6においては、基本形状を理解し易くするために、当該連結板部1が平坦な板状となった状態で図示してある。
【0029】
第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の双方を取着可能な一対一組となった各取着部A
1 は、第1配線ボックスB
1 の貫通孔82に係止可能な係止突起E
1 と、第2配線ボックスB
2 の貫通孔82’に係止可能な傾動突起D
1 とが、隙間7を有した近接した状態で、一対の取着部A
1 の並び方向Qに沿って対向配置されている。その結果、一対一組となった二組の計4つの係止突起E
1 及び傾動突起D
1 が前記並び方向Qに沿って配置されて、内側には、一対の傾動突起D
1 が配置され、外側には、一対の係止突起E
1 が配置される。係止突起E
1 及び傾動突起D
1 の各横断面形状は、半円よりも僅かに小さな割円状であって(
図9参照)、互いに対向する面は、平面状に形成されている。係止突起E
1 及び傾動突起D
1 の各先端部には、それぞれ第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の底壁81,81’の相手方被係止部88,88’に係止可能な各係止爪部N
1 ,N
2 が、ほぼ半円周の範囲において外方に向けて形成されている結果、各係止爪部N
1 ,N
2 は、互いに反対の側を向いている。各係止爪部N
1 ,N
2 は、半割截頭円錐状をなしていて、平面状となる部分が内側を向いている。
【0030】
図6において、配線ボックス固定具F
1 の連結板部1における一対の取着部A
1 が設けられた側の面は、第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 を取着した状態で、平坦状に弾性変形されることで、第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の底壁81,81’の外面に当接するボックス当接面3となっている。ボックス当接面3から第1及び第2の各係止突起E
1 ,E
2 の各係止爪部N
1 ,N
2 までの長さL
1 ,L
2 は、第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の各貫通孔82,82’の長さに対応していて、ボックス当接面3から係止突起E
1 の係止爪部N
1 までの長さL
1 は、傾動突起D
1 の係止爪部N
2 までの長さL
2 よりも長くなっている。
【0031】
このように、ボックス当接面3から傾動突起D
1 の係止爪部N
2 までの長さL
2 は短く、鉄製の第2配線ボックスB
2 の取着時において、傾動突起D
1 は、十分な弾性変形長を確保できないために、第2配線ボックスB
2 の貫通孔82’に対する配線ボックス固定具F
1 の傾動突起D
1 の係止が不安定となる恐れがある。そこで、係止突起E
1 と傾動突起D
1 で構成される取着部A
1 の部分の横断面がコの字形となるように背面側に突出させて、コの字形突出部4を形成し、傾動突起D
1 の基端を当該コの字形突出部4の底部に配置することで、十分な弾性変形長L
2'を確保している。なお、配線ボックス固定具F
1 のコの字形突出部4の内側の開口が開き易くなるのを防止すべく、当該コの字形突出部4の背面側には、肉増部5が設けられて、当該コの字形突出部4の部分の耐変形剛性が高められている。
【0032】
配線ボックス固定具F
1 の連結板部1は、支持部材固定部2の部分において前記並び方向Qに沿って分断されていて、非使用状態において、一対の取着部A
1 の先端部が近接する方向に支持部材固定部2の部分で屈曲されていて、第1及び第2の配線ボックスB
1 ,B
2 の取着時において、分断されている連結板部1の各部分が、同一平面上に位置して平板状(平坦状)となるように弾性変形させて、弾性復元力を発生させることで、後述のように、一対一組となった二組の計4つの係止突起E
1 及び傾動突起D
1 のうち、一対の取着部A
1 の並び方向Qに沿って内側に配置された一対の傾動突起D
1 の各係止爪部N
2 と、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の相手方被係止部88’との係止を確実にする構造が採用されている。
【0033】
そして、建物を構成する構造物の一つである棒状支持部材72に対して第1配線ボックスB
1 を取着するには、
図4ーA(a)に示されるように、配線ボックス固定具F
1 と第1配線ボックスB
1 とを前記棒状支持部材72を挟んで配置した状態で、前記配線ボックス固定具F
1 と第1配線ボックスB
1 とを互いに押し付けると、
図4ーA(b)及び
図4−B(c)に示されるように、前記第1配線ボックスB
1 の底壁81の外面が前記棒状支持部材72に近接すると共に、当該棒状支持部材72が相対的に配線ボックス固定具F
1 の支持部材固定部2の挿入開口6から内部に挿入される。これにより、一対の取着部A
1 を構成する外側の一対の係止突起E
1 が内方に弾性変形されることで、その先端の係止爪部N
1 が、第1配線ボックスB
1 の底壁81の貫通孔82に挿入されて、当該貫通孔82の内周面に弾接し、その後に、一対の取着部A
1 を構成する内側の一対の傾動突起D
1 が内方に弾性変形されて、当該貫通孔82に挿入されることで、その先端の係止爪部N
2 が、前記貫通孔82の内周面における前記第1係止爪部N
1 の弾性部と対向する部分に弾接する〔
図4−B(c)参照〕。ここで、配線ボックス固定具F
1 の連結板部1は、一対の取着部A
1 が互いに近接する方向に予め屈曲されていて、取着部A
1 を構成する係止突起E
1 及び傾動突起D
1 は、その先端部が互いに近接する方向に僅かに傾斜配置されているため、第1配線ボックスB
1 の底壁81の貫通孔82に対する係止突起E
1 及び傾動突起D
1 の挿入は、スムーズに行える。
【0034】
最後に、
図4−B(c),(d)に示されるように、当該配線ボックス固定具F
1 に対して第1配線ボックスB
1 を押し付けると、配線ボックス固定具F
1 の支持部材固定部2に棒状支持部材72が完全に挿入された状態で、配線ボックス固定具F
1 の屈曲されていた連結板部1は、平面状(平坦状)に弾性変形されて、第1配線ボックスB
1 の底壁81の外面に当接し、取着部A
1 を構成する外側の一対の係止突起E
1 の先端の各係止爪部N
1 は、前記貫通孔82から抜け出て、第1配線ボックスB
1 の内部に配置されることで、相手方被係止部88である第1配線ボックスB
1 の底壁81の内面の貫通孔82の周縁部に係止される。一方、一対の傾動突起D
1 は、第1配線ボックスB
1 の底壁81の貫通孔82を抜け出る長さを有していないので、当該貫通孔82の内周面に弾接した状態で、当該貫通孔82の内部に配置されたままとなる。貫通孔82の内部に配置された傾動突起D
1 の係止爪部N
2 は、第1配線ボックスB
1 の底壁81の相手方被係止部88に対して係止状態の係止突起E
1 の内面の平面部に弾接することで、配線ボックス固定具F
1 の連結板部1が屈曲した原形状に復元されるのを防止する機能を果たして、一対の係止突起E
1 の先端の各係止爪部N
1 と、第1配線ボックスB
1 の底壁81の相手方被係止部88との係止状態が解除されるのを防止して、当該係止状態を維持する。
【0035】
また、配線ボックス固定具F
1 のボックス当接面3から係止突起E
1 の先端(係止爪部N
1 の先端)までの長さは、傾動突起D
1 の対応する長さよりも長いため、
図4−B(d)に示されるように、係止突起E
1 の係止爪部N
1 が、第1配線ボックスB
1 の底壁81の相手方被係止部88に係止した状態において、傾動突起D
1 の先端部である係止爪部N
2 の部分は、その全体が貫通孔82内に配置された状態で、係止突起E
1 の係止爪部N
1 の直下の部分に弾接して、前記係止の解除が効果的に防止されている。
【0036】
なお、上記した取着方法とは異なって、配線ボックス固定具F
1 を棒状支持部材72に予め固定しておき、この状態で、当該配線ボックス固定具F
1 が棒状支持部材72から外れないように保持して、当該配線ボックス固定具F
1 に対して第1配線ボックスB
1 を押し付けて、取着部A
1 を構成する第1及び第2の各係止突起E
1 ,E
2 を弾性変形させることで、当該配線ボックス固定具F
1 に対して第1配線ボックスB
1 を取着してもよい。
【0037】
次に、
図7〜
図9を参照して、配線ボックス固定具F
1 を用いて、棒状支持部材72に鉄製の第2配線ボックスB
2 を取着する場合について説明する。第2配線ボックスB
2 においても、その底壁81’には、一対一組となった二組の貫通孔82’が垂直方向及び水平方向の双方に沿ってピッチPで形成されている。第2配線ボックスB
2 は、第1配線ボックスB
1 の取着と同様にして、水平配置された棒状支持部材72に対して、垂直方向に沿った一対の貫通孔82’を用いて、第1配線ボックスB
1 の取着に使用した同一の配線ボックス固定具F
1 を介して取着される。
【0038】
棒状支持部材72に対する第1配線ボックスB
1 の取着と同様にして、配線ボックス固定具F
1 と第2配線ボックスB
2 とを前記棒状支持部材72を挟んで配置した状態で、前記配線ボックス固定具F
1 と第1配線ボックスB
1 とを互いに押し付けるか,或いは予め棒状支持部材72に固定された配線ボックス固定具F
1 に対して第2配線ボックスB
2 を押し付けると、最初に、取着部A
1 を構成する係止突起E
1 が内方に弾性変形されることで、底壁81’の貫通孔82’に挿入され、その後に、傾動突起D
1 が外方(係止突起E
1 に近接する側)に弾性変形されることで、当該貫通孔82’に挿入される。係止突起E
1 のボックス当接面3から係止爪部N
1 までの長さL
1 は、鉄製の第2配線ボックスB
2 の底壁81’の肉厚T
2 よりも遥かに長いので、配線ボックス固定具F
1 のボックス当接面3に第2配線ボックスB
2 の底壁81’の外面が当接した状態において、一対の係止突起E
1 の各係止爪部N
1 は、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の内面に対して内部に大きく入り込んで、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の相手方被係止部88’に対して非係止状態となっているが、一対の傾動突起D
1 の各係止爪部N
2 は、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の相手方被係止部88’に対して係止している。この係止構造によって、同一の配線ボックス固定具F
1 に対して第2配線ボックスB
2 が取着される。
【0039】
ここで、配線ボックス固定具F
1 に第2配線ボックスB
2 が取着された状態では、一対の取着部A
1 の先端が近接する方向に屈曲されていた連結板部1が平面状に弾性変形されることで、当該連結板部1は、屈曲した原形状、即ち、連結板部1の前記並び方向Qに沿った中央部が、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の外面から離反して、屈曲した原形状に復元しようとする弾性復元力が発生している。一対一組となった二組の計4つの係止突起E
1 及び傾動突起D
1 は、前記並び方向Qに沿って配置されていて、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の相手方被係止部88’に、先端の係止爪部N
2 が係止している一対の傾動突起D
1 は、一対の係止突起E
1 に対して前記並び方向Qの内側に配置されているため、前記弾性復元力は、一対の傾動突起D
1 の各係止爪部N
2 と、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の相手方被係止部88’との係止をより確実にするように作用するため、第2配線ボックスB
2 の底壁81’の肉厚T
2 は薄いにもかかわらず、当該係止の解除の恐れが殆どない。なお、
図7及び
図8において、89は、ボックス開口の側から差し込まれた被探知部材のボルト部を螺合させるために、底壁81’の部分に一体形成された雌ねじ筒部を示す。
【0040】
よって、同一の配線ボックス固定具F
1 を用いて、底壁81,81’の肉厚T
1 ,T
2 の異なる樹脂製の第1配線ボックスB
1 と鉄製の第2配線ボックスB
2 とを、建物の構造物の一つである棒状支持部材72に取着できるので、電気工事の現場において使用する配線ボックス固定具の種類が半減して、配線ボックス取着の作業を迅速に行えると共に、配線ボックス固定具の保管・管理も容易となる。
【0041】
なお、実施例1では、底壁81’の肉厚の薄い第2配線ボックスB
2 に対して配線ボックス固定具F
1 が取着される場合には、傾動突起D
1 は、係止突起としての機能を果たしていて、同一の配線ボックス固定具F
1 により、底壁81,81’の肉厚の異なる第1及び第2の2種類の配線ボックスB
1 ,B
2 に対して取着可能であるが、配線ボックス固定具は、当然に一種類(実施例1において、肉厚の厚い第1配線ボックスB
1 )のみに対応する構成であってもよい。この場合には、傾動突起の先端部に設けられる突部は、係止機能は有せず、貫通孔の内周面に弾接又は当接する傾動機能を有するのみである。