【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
図5は、実施例の実験装置を示す図であり、
図5(a)は平面図、
図5(b)は左側面図、
図5(c)は正面図である。
図5に示すように、実施例の実験装置10では、測定対象物として、ジュラルミン製の細長い梁部材14を用いた。梁部材14の長さ(
図5(a)における左右方向の寸法)を2.1mとし、梁部材14の幅(
図5(a)における上下方向の寸法)を32mmとし、梁部材14の厚さ(
図5(c)における上下方向の寸法)を6mmとした。梁部材14の右側端部を右支持部15Rで支持し、梁部材14の左側端部を左支持部15Lで支持した。右支持部15R及び左支持部15Lによる梁部材14の支持間の長さを、2.0mとした。
【0047】
図6は、梁部材を示す図であり、
図6(a)は平面図、
図6(b)は底面図である。
図5及び
図6に示すように、梁部材14の上面には、0.25m間隔で歪ゲージ16を9個取り付けた。具体的には、梁部材14の長さ方向における中央位置を0m地点とし、0m地点から右支持部15R側を正(+)側とし、0m地点から左支持部15L側を負(−)側とした。そして、−1m地点、−0.75地点、−0.50地点、−0.25地点、0m地点、0.25m地点、0.50m地点、0.75m地点及び1m地点の9地点に、それぞれ歪ゲージ16を取り付けた。また、梁部材14の下面には、歪ゲージ16と対向するように梁部材14の長さ方向に沿って光ファイバセンサ17の光ファイバ18を取り付けた。右支持部15R及び左支持部15Lの拘束条件を表1のように変えて、梁部材14の中央部を押すことにより梁部材14を振動させた。なお、表1の拘束条件は、梁部材14を橋梁モデルとした場合に、拘束条件1から拘束条件4に進むに従い、橋梁モデルのうち支承部(右支持部15R及び左支持部15L)が経時劣化して行く状況を再現した条件となる。
【表1】
そして、各歪ゲージ16により200Hzで同期した歪みを測定した。この測定値の分布データを、歪ゲージ16の測定歪分布データという。拘束条件1における歪ゲージ16の測定歪分布データを
図7に示す。更に、
図7に示す0m地点における歪の時間的変化を
図8に示す。
図8の(a)は、時間軸方向に測定した歪を線で結んだ測定歪分布データを示しており、
図8の(b)は、測定した歪をそのまま点で表わした測定歪分布データを示している。
【0048】
また、光ファイバセンサ17により各歪ゲージ16に対応する位置の歪みを70Hzで巡回しながら測定した。この測定値の分布データを、光ファイバセンサ17の測定歪分布データという。拘束条件1における光ファイバセンサ17の測定歪分布データを
図9に示す。なお、歪ゲージ16と光ファイバ18とは、梁部材14の反対側の面に取り付けられているため、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の測定歪分布データとは、正負逆の値となる。更に、
図9に示す0m地点における歪の時間的変化を
図10に示す。
図10の(a)は、時間軸方向に測定した歪を線で結んだ測定歪分布データを示しており、
図10の(b)は、測定した歪をそのまま点で表わした測定歪分布データを示している。
【0049】
また、光ファイバセンサ17により得られた歪分布データを、時間及び位置の補間により、同一時刻における光ファイバ18の各歪ゲージ16に対応する位置の歪みを算出した。この算出した歪分布データを、光ファイバセンサ17の補間歪分布データという。拘束条件1における光ファイバセンサ17の補間歪分布データを
図11に示す。更に、
図11に示す0m地点における歪の時間的変化を
図12に示す。
図12の(a)は、時間軸方向に算出した歪を線で結んだ測定歪分布データを示しており、
図12の(b)は、算出した歪をそのまま点で表わした測定歪分布データを示している。
【0050】
図7に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データは、同一時刻において梁部材14の各位置の歪みを測定した歪分布データである。このため、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができるとともに、梁部材14全体の歪みの時間的変化を観察することができる。
【0051】
これに対し、
図9に示すように、光ファイバセンサ17の測定歪分布データは、異なる時刻において梁部材14の各位置の歪みを測定した離散的な歪分布データである。このため、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができず、梁部材14全体の歪みの時間的変化も観察することができない。
【0052】
そして、
図11に示すように、光ファイバセンサ17の補間歪分布データは、同一時刻における梁部材14の各位置の歪みが補間により算出された歪分布データである。このため、歪ゲージ16の測定歪分布データと同様に、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができるとともに、梁部材14全体の歪みの時間的変化を観察することができる。
【0053】
また、
図8の(a)及び(b)に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データでは、全ての測定時刻に同一位置の歪みを測定しているため、同一位置における歪の時間的変化を正確に観察することができる。
【0054】
これに対し、
図10の(a)及び(b)に示すように、光ファイバセンサ17の測定歪分布データでは、全ての測定時刻に同一位置の歪みを測定していないため、歪ゲージ16の測定歪分布データ(
図8の(a)及び(b)参照)と比較して、同一位置における歪の時間的変化を正確に観察することができない。特に、
図10の(b)に示すように、測定した歪を線で結ばずに、測定した歪をそのまま点で表わすと、測定点が分散したように示されるため、同一位置における歪の時間的変化を観察することができない。
【0055】
そして、
図12の(a)及び(b)に示すように、光ファイバセンサ17の補間歪分布データでは、同一時刻における梁部材14の各位置の歪みが補間により算出されているため、光ファイバセンサ17の測定歪分布データよりも、同一位置における歪の時間的変化を正確に観察することができる。
【0056】
次に、歪ゲージ16の測定歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数と、光ファイバセンサ17の補間歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数と、を比較した。この比較では、梁部材14を振動させてから10秒後における梁部材14の固有振動数を比較した。比較結果を表2に示す。梁部材14の固有振動数は、梁部材14全体の歪みの時間的変化に相当する。
【表2】
表2に示すように、拘束条件2と拘束条件3とでは、歪ゲージ16の測定歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数と、光ファイバセンサ17の補間歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数とが、同じ値となる。このため、固有振動数によっては、拘束条件2と拘束条件3とを区別することは難しい。しかしながら、歪ゲージ16の測定歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数と光ファイバセンサ17の補間歪分布データに基づいて算出した梁部材14の固有振動数とは、全ての拘束条件において、極めて近接した値となっている。このため、光ファイバセンサ17の補間歪分布データは、固有振動数における変化を表すパラメータとして十分な精度を有していることが分かる。
【0057】
次に、歪ゲージ16の測定歪分布データに基づいて算出した梁部材14の減衰比と、光ファイバセンサ17の補間歪分布データに基づいて算出した梁部材14の減衰比と、を比較した。この比較では、梁部材14を振動させてから10秒後における梁部材14の減衰比を比較した。比較結果を表3に示す。
【表3】
表3に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データに基づいて算出した梁部材14の減衰比と光ファイバセンサ17の補間歪分布データに基づいて算出した梁部材14の減衰比とは、拘束条件が1から拘束条件4に進むに従い離れて行く。しかしながら、上述したように、拘束条件1から拘束条件4に進むに従い橋梁モデルが経時劣化して行く状況を再現した条件となるため、この比較結果から、橋梁モデルにおける減衰比の経時的な変化傾向を推定することができる。
【0058】
次に、各拘束条件において、歪ゲージ16の測定歪分布データと、光ファイバセンサ17の測定歪分布データと、光ファイバセンサ17の補間歪分布データと、を比較した。この比較では、0、π/3、2π/3、πの振動周期における梁部材14の歪みを比較した。比較結果を
図13〜
図16に示す。
【0059】
図13は、拘束条件1における比較結果を示す図である。
図14は、拘束条件2における比較結果を示す図である。
図15は、拘束条件3における比較結果を示す図である。
図16は、拘束条件4における比較結果を示す図である。
図13〜
図16において、(a)は歪ゲージ16の測定歪分布データ、(b)は光ファイバセンサ17の測定歪分布データ、(c)は光ファイバセンサ17の補間歪分布データを示す。なお、光ファイバセンサ17は、ある時刻においては一点の歪みしか測定できないため、
図13〜
図16の(b)では、0、π/3、2π/3、πのときに測定された値以外は、前回測定された値のままとなっている。
【0060】
図13〜
図16の(a)に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データでは、何れの拘束条件においても、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができるとともに、梁部材14全体の歪みの時間的変化を観察することができる。
【0061】
これに対し、
図13〜
図16の(b)に示すように、光ファイバセンサ17の測定歪分布データは、歪ゲージ16の測定歪分布データからかけ離れた歪分布データとなっている。このため、何れの拘束条件においても、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができず、梁部材14全体の歪みの時間的変化も観察することができない。
【0062】
そして、
図13〜
図16の(c)に示すように、光ファイバセンサ17の補間歪分布データは、歪ゲージ16の測定歪分布データに近い歪分布データとなっている。このため、梁部材14の同一時刻における歪分布を観察することができるとともに、梁部材14全体の歪みの時間的変化を観察することができる。
【0063】
次に、歪ゲージ16の測定歪分布データと、光ファイバセンサ17の補間歪分布データと、を比較した。この比較では、各振動周期における、歪ゲージ16の測定歪分布データと、光ファイバセンサ17の補間歪分布データとを、同じグラフ上にプロットした。拘束条件1における各歪分布データの比較結果を
図17に示す。
図17において、横軸は、歪ゲージ16の測定歪分布データを示しており、縦軸は、光ファイバセンサ17の補間歪分布データを示している。
【0064】
図17に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の補間歪分布データとは、反比例の関係となっている。上述したように、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の測定歪分布データとは、正負逆の値となることから、この関係から、光ファイバセンサ17の補間歪分布データは、十分な精度を有していることが分かる。
【0065】
次に、光ファイバセンサ17の補間歪分布データの補間精度を確かめるために、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の測定歪分布データとの相関係数R
2と、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の補間歪分布データとの相関係数R
2と、を算出した。算出結果を表4に示す。
【表4】
また、この二つの相関係数R
2と、上述した歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の補間歪分布データとに基づいて算出した固有振動数との差異(Discrepancy in Natural Frequency)と、歪ゲージ16の測定歪分布データと光ファイバセンサ17の補間歪分布データとに基づいて算出した減衰比の差異(Discrepancy in Damping Ratio)と、を同じ図にプロットした。プロットした図を
図18に示す。
図18において、横軸は、正規化した固有振動数(Normalized Natural Frequency)を示し、左縦軸は、差異(Discrepancy)を示し、右縦軸は、相関係数R
2を示す。
【0066】
表4及び
図18に示すように、歪ゲージ16の測定歪分布データに対する光ファイバセンサ17の補間歪分布データの相関は、光ファイバセンサ17の測定歪分布データよりも高くなっている。このことから、光ファイバセンサ17の補間歪分布データは、十分な精度を有していることが分かる。