特許第6486822号(P6486822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6486822筋ジストロフィーの診断、予後判定、治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486822
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】筋ジストロフィーの診断、予後判定、治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20190311BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20190311BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A61K38/17
   A61P21/00
   A61P19/00
   A61P19/10
   A61P19/02
   A61P25/00
【請求項の数】11
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2015-526735(P2015-526735)
(86)(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公表番号】特表2015-528442(P2015-528442A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】US2013054384
(87)【国際公開番号】WO2014026140
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年7月20日
(31)【優先権主張番号】13/572,508
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507028402
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ネヴァダ システム オブ ハイヤー エデュケーション オン ビハーフ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ ネヴァダ リノ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ディーン バーキン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ウェブルズ
(72)【発明者】
【氏名】パム ファン リー
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 CERRI, D.G. et al.,"Degeneration of dystrophic or injured skeletal muscles induces high expression of Galectin-1",glycobiology,2008年11月,Vol.18,No.11,p.842-850
【文献】 KAMI, K. et al.,"Galectin-1 is a Novel Factor that Regulates Myotube Growth in Regenerating Skeletal Muscles",Curr. Drug Targets,2005年 6月,Vol.6,No.4,p.395-405,ISSN:1389-4501
【文献】 CERRI,D.G. et al.,"Degeneration of dystrophic or injured skeletal muscles induces high expression of Galectin-1",Glycobiology,2008年11月,Vol.18,No.11,P.842-850,ISSN 0959-6658,doi:10.1093/glycob/cwn079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患のリスクがあるまたは罹患している被験体における筋肉の再生、修復、維持を促進するための薬剤であって、
ガレクチン-1タンパク質の有効量を有効成分として含む、薬剤。
【請求項2】
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患のリスクがあるまたは罹患している被験体における筋力、筋密度、および/または骨密度を増加または維持するための薬剤であって、
ガレクチン-1タンパク質の有効量を有効成分として含む、薬剤。
【請求項3】
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患のリスクがあるまたは罹患している被験体における筋損傷または筋減少および/または骨減少を防止、阻止、および/または抑制するための薬剤であって、
ガレクチン-1タンパク質の有効量を有効成分として含む、薬剤。
【請求項4】
体を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記ガレクチン-1タンパク質は全身投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記ガレクチン-1タンパク質は筋肉内投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項7】
前記ガレクチン-1タンパク質は腹腔内投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している被験体における筋肉の再生、修復、維持を促進するため筋細胞膜(筋鞘)を増加させるための全身投与のための薬剤であって、ガレクチン-1タンパク質の有効量を有効成分として含む全身投与のための薬剤。
【請求項9】
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に罹患している被験体における筋損傷または筋減少および/または骨減少を防止、阻止、および/または抑制するための筋細胞膜(筋鞘)を増加させるための全身投与のための薬剤であって、ガレクチン-1タンパク質の有効量を有効成分として含む全身投与のための薬剤。
【請求項10】
前記被験体は、DMDに罹患している、請求項又はに記載の薬剤。
【請求項11】
前記ガレクチン-1タンパク質は、完全長野生型アミノ酸配列及び担体を有する、天然哺乳類ガレクチン−1タンパク質又は遺伝子組み換えガレクチン−1タンパク質である、請求項10のいずれか一項に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は筋ジストロフィーの分野に関し、特に、メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー1A型、肢体型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、およびデュシェンヌ型筋ジストロフィー等の筋ジストロフィーの患者の診断、予後判定、治療方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年8月11日付で出願された米国仮出願第61/522,507号からの優先権を主張する2012年8月10日付で出願された出願の米国出願第13/572,508号からの優先権を主張するものであり、各出願は、全体として本明細書において援用される。
【0003】
[政府支援への謝辞]
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された助成金(R01 AR053697およびR21NS058429)の下に、政府援助によって成されたものである。政府は、本発明において、所定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
筋ジストロフィーは、多様な遺伝性の神経筋疾患であり、一次または二次の骨格筋の関与を特徴とする一群の壊滅的な神経筋疾病を代表するものである。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy(DMD))は、X染色体性疾病であり、筋ジストロフィーの最も一般的な病態である。DMDは、男児出生3,500人に1人の割合で発症し、患者は慢性の筋変性および筋衰弱を起こす。臨床症状が最初に見られるのは2歳〜5歳であり、患者が10歳代になるまでに独立歩行能力は失われる。一般に、心肺不全により30歳前に死亡する。
【0005】
先天性筋ジストロフィー(congenital muscular dystrophy(CMD))は、出生時または幼年期から筋衰弱が認められる遺伝性神経筋疾患の総称である。罹患した幼児は、筋緊張低下がみられ、かつほとんど動かなくなる。その子どもの生活の質および寿命は、進行性筋消耗、呼吸機能障害(呼吸困難 )、および脊髄性固縮 に冒される。メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー(merosin deficient congenital muscular dystrophy(MDC1A))は、最も一般的かつ重症な先天性筋ジストロフィーであり、CMDと診断された全ケースのうち30%〜40%を占める。MDC1Aは、先天性筋緊張低下症、明らかな関節拘縮、および独立歩行能力の欠如を特徴とする。呼吸器系障害が生じると、多くの場合、経管栄養チューブ挿入および陽圧換気が必要とされる。MDC1Aには治療法がなく、患者は10歳以前に死亡することが多い。今のところ、DMDにもMDC1Aにも治療法はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MDC1A、DMD、肢体型筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FHMD)、ベッカー型筋ジストロフィーを始めとする筋ジストロフィーは、壊滅的な神経筋疾病である。これらの疾病には治療法がないことに加え、そのような症状の治療法の有効性を診断し、予後判定し、評価する非侵襲的な方法がない。現在、DMD、LGMD、FMD、ベッカー型筋ジストロフィー、およびMDC1Aの検査には、血清クレアチニンキナーゼ値および細針生検(穿刺生検)を用いる。しかしながら、筋生検は痛みを伴い、侵襲的であり、常に行うのは非現実的であるし、血清クレアチニンキナーゼ値は、同じ患者でも日々変化しうるものであるため、変化を示す指標としては当てにならない。容易に監視でき、かつ疾病の進行を確実に示すことのできるバイオマーカー、例えば血清または尿中等に存在するようなものが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において開示するのは、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーおよび/またはMDC1Aを始めとする筋ジストロフィーの診断および/または予後判定においてバイオマーカーとして用いることのできる筋ジストロフィー関連分子である。いくつかの実施形態において、筋ジストロフィー関連分子は、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはそれらの任意の組み合わせを含むか、本質的にそれらからなり、またはそれら以外のものを含まないものとすることができる。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−1、ガレクチン−3、Col6A1、Itga3、Iga6、Itga7、Tnc、およびTimp1を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子はガレクチン−1およびガレクチン−3を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子はガレクチン−3およびTncを含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1Aを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMDを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。
【0008】
また、本明細書には、筋ジストロフィー患者を被験体として診断および予後判定する方法を開示する。いくつかの例において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候および症状を有するリスクがある被験体または有する被験体から得た試料中に存在する上記に開示した筋ジストロフィー関連分子の少なくとも1つを検出し、それによって筋ジストロフィー患者の診断または予後判定を行うことを含む。いくつかの例において、本方法は、さらに、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候および症状を有するリスクがある被験体または有する被験体から得た試料中のガレクチン−1またはガレクチン−3の発現をコントロール(対照)と比較することを含み、コントロールに比してガレクチン−1またはガレクチン−3の発現が多ければ、被験体が筋ジストロフィーを有することを示すことを特徴とするものである。
【0009】
さらに、筋ジストロフィーを有する被験体において、筋ジストロフィーを治療する薬剤の有効性を判断するいくつかの方法を開示する。いくつかの例において、本方法は、薬剤で治療後の被験体からの試料中における筋ジストロフィー関連分子、例えばガレクチン−3等の発現を検出すること、および治療後のジストロフィー関連分子、例えばガレクチン−3等の発現を基準値と比較することを含み、治療後の筋ジストロフィー関連分子、例えばガレクチン−3等の発現に変化があれば、薬剤が被験体の筋ジストロフィーの治療に有効でありうることを示すことを特徴とするものである。
【0010】
筋ジストロフィーを治療する方法も開示する。いくつかの例において、本方法は、筋ジストロフィーを有する被験体に、筋ジストロフィー関連分子の発現または生物活性を変化させる有効量の薬剤を投与することにより、筋ジストロフィーを治療し、被験体の生存可能性を増加させ、または筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状の発現を遅らせるものである。薬剤によっては、変化とは減少または増加でありうる。
【0011】
ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物によって被験体を治療する方法も開示する。例えば、いくつかの実施形態によれば、ガレクチンまたはそのフラグメント、派生物、類似物等を含むガレクチンからなる組成物の有効量を被験体に投与して、被験体における筋肉の健康状態を改善する方法、例えば、筋再生の促進、維持、または修復等を行う方法が開示される。
【0012】
いくつかの実施形態において、筋力および/または骨密度を増加/維持する方法を提供する。いくつかの実施形態において、筋肉量低下および/または骨量低下を防止、阻止、および/または抑制する方法を開示する。いくつかの例において、ガレクチン組成物、例えばガレクチン−1組成物等を投与して、筋力および/または骨密度を増加し、および/または、筋肉量および/または骨量低下を防止、阻止、または減速させる。いくつかの例において、筋/骨損傷または筋量/骨量減少のリスクのある被験体、例えば、運動選手、宇宙飛行士、または筋/骨損傷または筋量/骨量減少を引き起こしうる活動に参加する任意の個人等に、ガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与する。いくつかの例において、本開示によるガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメン(disclosed regimen)を提供して、筋/骨損傷および/または減少を防ぐ。いくつかの例において、本開示によるガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメンを提供して、骨密度および/または筋力を維持する。いくつかの例において、本開示によるガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメンを提供して、骨密度および/または筋力が低下している被験体を治療するが、それによって、骨密度および/または筋力の増加につながるような、または既存の筋力および骨密度を維持する(例えば、筋力および/または骨密度のさらなる低下を防止する)ような方法でレジメンを投与する。
【0013】
いくつかの例において、筋減少、骨減少、および/または筋力減少に関連する症状または疾病に感染または罹患するリスクのある被験体、例えば、脊椎後弯、筋ジストロフィー、骨折、肉離れ、筋断裂、腱損傷、骨粗鬆症、関節リウマチ、狼瘡、脊椎側弯、および/または多発性硬化症を発症または罹患するリスクがある被験体にガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与するが、被験体はこれに限定されない。いくつかの例において、ガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与して、老化に関連する兆候と症状を防止、治療、または減速させる。ガレクチン組成物は、数日〜数年の短期間または長期間にわたって投与可能とすることが意図される。ガレクチン組成物を栄養補給として投与可能とすることが考えられる。
【0014】
いくつかの例において、手術を受けた被験体で、かつ、筋量減少、骨量減少、筋力低下、または筋密度低下を起こすリスクがあるか、または各症状を有する被験体等に、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を術後投与する。いくつかの例において、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を、妊娠後の女性被験体に投与する。いくつかの例において、短期または長期昏睡状態の被験体に、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を投与する。
【0015】
特定の例において、ガレクチンは、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の完全なガレクチンタンパク質である。さらなる例において、ガレクチンは、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせから選択される。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に一致する物質を含む。さらなる実施の態様では、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に一致するポリペプチドを含む。
【0016】
付加的な例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせからなる。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に一致する物質からなる。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチンフラグメント(fragment)を含まず、例えば完全なガレクチンタンパク質のみを含む。
【0017】
さらに別の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせからなる。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に一致する物質からなる。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチンのα1鎖と少なくとも実質的に一致するポリペプチドからなる。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチンの断片を含まず、例えば完全なガレクチンタンパク質のみを本質的に含む。
【0018】
本開示の方法のさらなる実施の形態は、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を投与することにより、例えば、ガレチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせ、または、ガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせを含む組成物を投与すること等により治療可能な症状を呈する被験体を診断することを含む。一例において、被験体は、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーおよび/またはMDC1A等の筋ジストロフィーと診断される。さらなる例において、その症状は、被験体が、細胞外マトリックスの形成と維持に関連する1つ以上のたんぱく質を発現できないこと、または発現能力の低下、例えば、ガレクチン、インテグリン、ジストフィン、ユートロフィン、またはジストログリカン等の生成不全または不生産を特徴とする。
【0019】
特定の実施形態において、本開示は、また、ガレクチン組成物の有効量、例えばガレクチン−1および/またはガレクチン−3組成物の有効量等を投与することによって被験体の筋再生を増加する方法を提供する。例えば、老人病被験体、筋障害の被験体、運動に起因する筋障害等の活動誘発性筋障害をはじめとする筋障害の被験体は、この実施形態から利益を受けることができる。
【0020】
本開示の方法のさらなる実施形態において、ガレクチンまたはガレクチン組成物、例えば、ガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせを含む組成物等を予防的に投与して、(活動または運動誘発性外傷等の)筋または骨損傷または障害を防止または低減する。例えば、筋損傷のリスクがある被験体、例えば老人病被験体、手術後の被験体、筋損傷を受けやすい被験体、または運動選手等を治療して、骨または筋損傷、障害、疾病を予防し、解消し、または寛解させることができる。
【0021】
本開示の実施の形態を用いて創傷治癒を促進することもできる。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を傷の中または近位に投与する。さらなる例において、その物質を組織全体に投与する。通常は創傷が生じてから物質を塗布するのが一般的だが、いくつかの例においては物質を見込み塗布する。
【0022】
さらなる実施形態において、本開示の方法は、ガレクチンまたはガレクチン組成物、例えばガレクチン−1、ガレクチン−3またはその組み合わせを含む組成物等を1つ以上の付加的な薬理学物質、例えば治療剤等と共に投与することを含む。いくつかの態様において、この付加的な薬理学物質は、ガレクチンまたはガレクチン組成物の治療効果を向上する。さらなる態様において、治療剤は単独で治療対象とする症状に有利な治療効果を提供する。種々の例において、この付加的な治療剤は、細胞外マトリックスの構成成分であり、例えば、インテグリン、ジストロフィン、ジストログリカン、ユートロフィン、または成長因子等である。さらなる例において、治療剤は、細胞外マトリックスの形成または維持を強化する物質の発現を抑制または促進する。
【0023】
いくつかの例において、治療対象被験体の特定の部位にガレクチンまたはガレクチン組成物を適用する。例えば、ガレクチンまたはガレクチン組成物を治療しようとする特定の部位、例えば筋肉等に注射してもよい。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物の投与は、被験体の複数の部位に分散するように、例えば全身投与または局所投与等を行う。
【0024】
ガレクチン、またはガレクチンを含む組成物、例えばガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせ等は、任意の適切な方法によって投与可能であり、その方法としては、局所投与、非経口投与(静脈投与または腹腔内投与)、または経口投与等がある。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物を、腹腔注射(stomach injection)または腹膜注射等の非経口投与等により、全身投与する。
【0025】
本開示の方法を、包括的に、筋再生について説明したが、本開示の方法を用いて、その他の組織および臓器の修復の促進、維持、または損傷予防をすることができる。例えば、本開示の方法を用いて、脳機能の障害または異常、平滑筋、心筋等骨格筋以外の細胞または組織への作用(effects)に起因する筋ジストロフィーの症状を治療することができる。
【0026】
また、筋ジストロフィーの治療に使用する薬剤を判別する方法も提供する。いくつかの例において、本方法は、1つ以上の試薬に、次のような条件下で試料を接触させること、例えば、1つ以上の試薬によってガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子の活性を変化させるのに十分な条件下で接触させること、1つ又はそれ以上の試薬の存在下でガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子の活性を検知すること、およびガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子の活性を、1つ以上の試験薬の存在下で基準値と比較して、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子の活性に変化があるかどうか判断すること、を含み、ここで、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子の発現において変化があれば、それは、その1つ以上の試薬が筋ジストロフィーの治療に役立つということを示す。いくつかの例において、ガレクチン−1の増加は、その試薬を用いて筋ジストロフィーを治療可能であるということを示す。
【0027】
本開示についての上記の特徴点およびその他の特徴点は、添付の図面を参照して行う以下の発明の詳細な説明によりさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1Aおよび図1Bは、dyW-/-マウスにおいて変化させたLgals1およびLgals3の転写物(transcription)を示す棒グラフである。図1Aに、Lgals1(ガレクチン−1)の転写物を示すが、4週齢および8週齢動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。図1Bに、Lgals3(ガレクチン−3)の転写物を示すが、同様に、4週齢および8週齢の動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。**P<0.01、****P<0.00001。
図2図2Aは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図2Aから、4週齢のdyW-/-マウスの筋肉中のガレクチン−1は、野生型動物のものと有意差があったことがわかる。図2Bから、8週齢のdyW-/-動物の腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型について測定したものと有意差がなかったことがわかる。図2Cから、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスにおけるガレクチン−1タンパク質の量には差異がなかったことがわかる。図2Bは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図2Aから、4週齢のdyW-/-マウスの筋肉中のガレクチン−1は、野生型動物のものと有意差があったことがわかる。図2Bから、8週齢のdyW-/-動物の腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型について測定したものと有意差がなかったことがわかる。図2Cから、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスにおけるガレクチン−1タンパク質の量には差異がなかったことがわかる。図2Cは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図2Aから、4週齢のdyW-/-マウスの筋肉中のガレクチン−1は、野生型動物のものと有意差があったことがわかる。図2Bから、8週齢のdyW-/-動物の腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型について測定したものと有意差がなかったことがわかる。図2Cから、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスにおけるガレクチン−1タンパク質の量には差異がなかったことがわかる。
図3図3Aは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−3についてウェスタンブロッティングを行った結果を示すデジタル画像である。図3Bは、4週齢および8週齢のdyW-/-動物の腓腹筋におけるガレクチン−3タンパク質のレベルを、野生型(コントロール)マウスと比較して定量化した棒グラフである。
図4図4Aは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスの血清におけるガレクチン−3についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図4Aから、8週齢のdyW-/-動物の血清におけるガレクチン−3タンパク質のレベルは、野生型動物と比較して有意差がなかったことがわかる。図4Bから、4週齢および8週齢のdyW-/-動物の血清におけるガレクチン−3タンパク質の量には差異がなかったことがわかる。図4Bは、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスの血清におけるガレクチン−3についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図4Aから、8週齢のdyW-/-動物の血清におけるガレクチン−3タンパク質のレベルは、野生型動物と比較して有意差がなかったことがわかる。図4Bから、4週齢および8週齢のdyW-/-動物の血清におけるガレクチン−3タンパク質の量には差異がなかったことがわかる。
図5図5は、4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−3免疫蛍光の一連のデジタル画像である。免疫蛍光法を用いて、マウスの前脛骨筋におけるガレクチン−3のレベルを評価した。ガレクチン−3は、野生型のマウスと比較すると、4週齢のdyW-/-マウスにおいて増加が認められた。ガレクチン−3は、8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスにおいては同様であることがわかった。ガレクチン−3は、4週齢と8週齢のdyW-/-マウス間においても同様であることがわかった。野生型マウスにおけるガレクチン−3のレベルは加齢に伴って増加するようである。
図6図6Aは、mdxマウスにおいて変化させたLgals1およびLgals3の転写物(transcription)を示す棒グラフである。図6Aに、Lgals1(ガレクチン−1)の転写物を示すが、5週齢および10週齢の動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。図6Bに、Lgals3(ガレクチン−3)の転写物を示すが、5週齢および10週齢の動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。図6Bは、mdxマウスにおいて変化させたLgals1およびLgals3の転写物(transcription)を示す棒グラフである。図6Aに、Lgals1(ガレクチン−1)の転写物を示すが、5週齢および10週齢の動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。図6Bに、Lgals3(ガレクチン−3)の転写物を示すが、5週齢および10週齢の動物のいずれにおいても、野生型に対して有意に上昇したことがわかる。
図7図7Aは、2週齢、5週齢、および10週齢のmdxおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図7Aにおいては、野生型と比較して、5週齢のmdxマウスの筋肉におけるガレクチン−1について有意差は認められなかったことがわかる。図7Bからは、5週齢のmdxマウスの腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型と比較して、有意差がなかったことがわかる。図7Cから、2週齢および5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−1タンパク質には差異がなかったことがわかる。2週齢および10週齢のmdxマウスと、5週齢および10週齢のマウスとの間には、有意差があった。図7Bは、2週齢、5週齢、および10週齢のmdxおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図7Aにおいては、野生型と比較して、5週齢のmdxマウスの筋肉におけるガレクチン−1について有意差は認められなかったことがわかる。図7Bからは、5週齢のmdxマウスの腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型と比較して、有意差がなかったことがわかる。図7Cから、2週齢および5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−1タンパク質には差異がなかったことがわかる。2週齢および10週齢のmdxマウスと、5週齢および10週齢のマウスとの間には、有意差があった。図7Cは、2週齢、5週齢、および10週齢のmdxおよび野生型マウスにおけるガレクチン−1についてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像および棒グラフである。図7Aにおいては、野生型と比較して、5週齢のmdxマウスの筋肉におけるガレクチン−1について有意差は認められなかったことがわかる。図7Bからは、5週齢のmdxマウスの腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質のレベルは、野生型と比較して、有意差がなかったことがわかる。図7Cから、2週齢および5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−1タンパク質には差異がなかったことがわかる。2週齢および10週齢のmdxマウスと、5週齢および10週齢のマウスとの間には、有意差があった。
図8図8Aは、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−3についてウェスタンブロッティングを行った結果を示す棒グラフおよびデジタル画像である。図8Aから、5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−3タンパク質は、野生型動物と比較して有意差があることがわかる。図8Bに、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスの腓腹筋におけるガレクチン−3タンパク質のレベルを示し、10週齢のmdx動物におけるガレクチン−3タンパク質は、5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−3レベルよりも有意に大きいことがわかる。図8Bは、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−3についてウェスタンブロッティングを行った結果を示す棒グラフおよびデジタル画像である。図8Aから、5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−3タンパク質は、野生型動物と比較して有意差があることがわかる。図8Bに、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスの腓腹筋におけるガレクチン−3タンパク質のレベルを示し、10週齢のmdx動物におけるガレクチン−3タンパク質は、5週齢のmdxマウスにおけるガレクチン−3レベルよりも有意に大きいことがわかる。
図9図9Aは、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスの血清におけるガレクチン−3についてウェスタンブロッティングを行った結果を示す棒グラフおよびデジタル画像である。図9Aから、5週齢のmdxマウス血清におけるガレクチン−3は、野生型動物と比較して有意差がなかったことが分かる。図9Bから、10週齢のmdxマウス血清と、同じ週齢の野生型血清との間には、ガレクチン−3タンパク質の差異が見られなかったことが分かる。図9Bは、5週齢および/または10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスの血清におけるガレクチン−3についてウェスタンブロッティングを行った結果を示す棒グラフおよびデジタル画像である。図9Aから、5週齢のmdxマウス血清におけるガレクチン−3は、野生型動物と比較して有意差がなかったことが分かる。図9Bから、10週齢のmdxマウス血清と、同じ週齢の野生型血清との間には、ガレクチン−3タンパク質の差異が見られなかったことが分かる。
図10図10は、5週齢および10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスにおけるガレクチン−3免疫蛍光の一連のデジタル画像である。免疫蛍光法を用いて、マウスの前脛骨筋におけるガレクチン−3のレベルを評価した。ガレクチン−3は、野生型のマウスと比較すると、5週齢および10週齢のmdxマウスにおいて増加が認められた。ガレクチン−3は、5週齢のマウスと比べ、10週齢のmdxマウスで上昇することがわかったが、5週齢と10週齢の野生型マウスではガレクチン−3レベルはほぼ同等であった。
図11図11は、ゴールデンレトリバー筋ジストロフィー(GRMD)のDMDモデル犬の筋肉におけるガレクチン−3レベルについてのウェスタンブロッティング法による検討を示すデジタル画像である。レーンAおよびEで示すGRMD犬の筋肉において、高レベルのガレクチン−3タンパク質を検出している。レーンB〜Dに示す、罹患していない対象犬試料においては、ガレクチン−3はほとんど、またはまったく認められなかった。
図12図12は、タロン・アフィニティーカラム(Talon affinity column)から溶離したガレクチン−1の分画(fractions)のデジタル画像である。
図13図13は、ガレクチン−1治療により、mdxマウスにおける筋損傷が減少することを示すグラフおよび表である。
図14図14は、ガレクチン−1治療により、α7インテグリンが増加することを示すグラフ、表、およびデジタル画像である。
図15図15A図15Dは、筋芽細胞および筋管のガレクチン−1治療を示し、筋芽細胞のインテグリンが、転写物およびタンパク質レベルの両方において、a7およびb1という高レベルに達することを示すグラフである。図15Aは、漸増する組み換え(recombinant)ガレクチン−1を用いたa7+/bGal筋芽細胞の治療の効果を示す棒グラフであり、治療後、FDG活性分析を用いてβ−ガラクトシダーゼ活性(ITGA7発現レベルについての目安となる もの)の増加を検証するものである。図15Bは、ガレクチン−1またはPBSを用いたC2C12筋芽細胞の治療の効果を示す棒グラフ であり、治療後に、各GAPDHレベルに対するα7インテグリンタンパク質のレベルを検証し、定量化してグラフ化したものである。図15Cは、ガレクチン−1またはPBSを用いたC2C12筋芽細胞の治療の効果を示す棒グラフ であり、治療後に、ポンソーS染色に対するβ1インテグリンタンパク質のレベルを検証し、定量化してグラフ化したものである。図15Dは、PBSまたは0.2mMの組み換えガレクチン−1を用いて治療したC2C12筋芽細胞および筋管からのITGA7、ITGB1、およびLGALS1の各レベルについての定量的リアルタイムPCR結果を示す棒グラフである。
図16図16A図16Dは、mdxマウスの前脛骨(TA)筋に組み換えガレクチン−1を筋肉注射(IM)することにより、筋損傷および中心核(CLN)の組織学的所見から判断された筋再生の必要性が減少することを示す棒グラフである。mdxマウスのTA筋に、20ng(図16Aおよび図16B)、1.5mg(図16C)、または150mg(図16D)の組み換えガレクチン−1タンパク質を、4週齢、3週齢、5週齢および5週齢でそれぞれIM注射した。注射後48時間後の組織を分断し、凍結切開し、標準的なヘマトキシリンおよびエオジン染色を行い、CLNについて分析した。スチューデントのt検定(Student t-test)により、有意性を算定した(ns=有意性なし(no significance)、*p<0.05)。
図17図17A図17Jは、ガレクチン−1によるmdxマウスの治療が、ジストロフィンがなければ通常存在しない、筋膜細胞を安定化させるジストログリカン複合体(DGC)の各要素におけるタンパク質レベルを上昇させることを示す棒グラフである。mdxマウスにPBSまたは5mg/kgの組み換えガレクチン−1を毎週腹腔内注射してそのTAタンパク質を治療し、標準的なウェスタンブロッティング法を用いて検査した。α7Aインテグリン(図17A)、α7Bインテグリン(図17B)、β1Dインテグリン(図17C)、α−ジストログリカン(図17D)、β−ジストログリカン(図17E)、β−サルコグリカン(図17F)、γ−サルコグリカン(図17G)、δ−サルコグリカン(図17H)、ε−サルコグリカン(図17I)、およびサルコスパン(図17J)についての各結果を、2つのマウス群について定量化し、a−チューブリンに対してグラフ化した。スチューデントのt検定により、有意性を算定した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図18図18A図18Cは、ガレクチン−1によるmdxマウスの治療が、α7β1インテグリン複合体およびLGALS1の各要素における転写レベルを上昇させることを示す棒グラフである。PBSまたは5mg/kgの組み換えガレクチン−1を毎週腹腔内注射することにより既治療のmdxマウスのTA転写物を、定量的リアルタイムPCRを用いて分析した。ITGA7(図18A)、ITGB1(図18B)、およびLGALS1(図18C)についての結果であって、GAPDHに対する相対倍率を算出した後のものを示す。
図19図19A図19Dは、mdxマウスをガレクチン−1治療することにより、相対的強度が増加し、疲労が減少し、筋組織の線維の太さが正常化することを示すグラフである(図19A)。PBSまたは5mg/kgの組み換えガレクチン−1を毎週腹腔内注射することにより既治療のmdxマウスまたは未治療のブラック−10マウス について、標準的な方法を用いて握力検査を行った。その後、体重1グラム当たりの平均強度(図19B)および疲労率 (図19C)を算出してグラフ化した(図19D)。TAを10mM断片に分断し、HE染色した断片における最小フェレット径計測法を用いて線維太さを測定した。1群あたり1000本以上の線維についてフェレット径を計測した。スチューデントのt検定により、有意性を算定した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
図20図20は、mdxマウスのガレクチン−1治療の結果、筋力が増加することにより10週齢のマウスにおける脊椎後弯が防止されたことを示す一組のデジタル画像および棒グラフである。PBS(上図、n=2)または5mg/kg/週の組み換えガレクチン−1(下図、n=4)で治療したmdxマウスの矢状面X線像を10週齢時に撮影した。頸部における脊椎の基部から、寛骨が始まるところにある脊椎の基部まで線を引いて脊柱弯曲(脊椎後弯)を分析した。そして、脊柱曲の頂点から垂直な線を引き、この線の長さを使って脊椎後湾を測定した。スチューデントのt検定により、有意性を算定した(*p<0.05)。
図21図21A図21Fは、mdxマウスをガレクチン−1治療することにより、発達段階において骨成長が増加することを示すグラフである。PBSまたは5mg/kg/週の組み換えガレクチン−1で治療したmdxマウスの頭部矢状面(図21A、例)および全身冠状面(図21B、例)のX線像を10週齢時に撮影した。これらの画像から、下顎長さ(図21C)、大腿骨長さ(図21D)、大腿骨面積(図21E)、脛骨長さ(図21F)を測定し、グラフ化した。スチューデントのt検定により、有意性を算定した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.いくつかの実施形態の概要
本明細書において開示するのは、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーおよび/またはMDC1Aを始めとする筋ジストロフィーの診断および/または予後判定においてバイオマーカーとして用いることのできる筋ジストロフィー関連分子である。いくつかの実施形態において、この筋ジストロフィー関連分子は、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはそれらの任意の組み合わせを含むか、本質的にそれらからなり、またはそれら以外のものを含まないものとすることができる。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−1、ガレクチン−3、Col6A1、Itga3、Iga6、Itga7、Tnc、およびTimp1を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−1およびガレクチン−3を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−3およびTncを含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1Aを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMDを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。
【0030】
本明細書において、筋ジストロフィーを有する被験体の診断または予後判定を行う方法を開示する。いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーを有する被験体の診断または予後判定を行う方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を有するリスクがある被験体または有する被験体から得た試料において、開示の筋ジストロフィー関連分子、例えばガレクチン−1またはガレクチン−3等のうち、1つ以上の発現を検出することを含み、それによって筋ジストロフィー患者の診断または予後判定を行うものである。
【0031】
いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーを有する被験体の診断または予後判定を行う方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を有するリスクのある被験体または有する被験体から得た試料中におけるガレクチン−1またはガレクチン−3の発現を検出することを含み、それによって、筋ジストロフィーを有する患者の診断または予後判定を行う。いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を発症するリスクまたはのある被験体または発症している被験体から得た試料中のガレクチン−1またはガレクチン−3の発現を基準値と比較することをさらに含み、基準値に対するガレクチン−1またはガレクチン−3分子の発現増加は、被験体が筋ジストロフィーを有することを示す。
【0032】
いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーは、MDC1A、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはDMDである。
【0033】
いくつかの実施形態において、発現を検出することは、ガレクチン−3および/またはガレクチン−1を検出することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、基準値に対するガレクチン−3分子の発現増加は、被験体が予後不良であり生存可能性の減少を示す。
【0035】
いくつかの実施形態において、筋ジストロフィーはDMDである。
【0036】
いくつかの実施形態において、試料は血液または尿試料である。
【0037】
いくつかの実施形態において、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、マイクロアレイ解析、またはウェスタンブロット解析により発現を測定する。
【0038】
いくつかの実施形態において、被験体の筋ジストロフィーを治療する方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーを有する患者に、ガレクチン−3の発現または生物活性の発現を変更する薬剤を有効量投与することを含み、それによって筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を治療して被験体の生存可能性を増加するものである。いくつかの実施形態において、薬剤は、ガレクチン−3の生物活性を減少する。いくつかの実施形態において、薬剤は、ガレクチン−3の生物活性を増加する。
【0039】
いくつかの実施形態において、被験体において筋ジストロフィーを治療する方法が開示される。いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーを有する被験体に、ガレクチン−1の発現または生物活性を増加させる薬剤を有効量投与することを含み、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を治療して、被験体の生存可能性を増加するものである。いくつかの実施形態において、薬剤は、ガレクチン−1の生物活性を増加する。
【0040】
いくつかの実施形態において、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を用いて被験体を治療する方法も開示される。例えば、いくつかの例によれば、ガレクチンまたはそのフラグメント、アナログ、誘導体を含めたガレクチンを含む組成物の有効量を被験体に投与することにより、例えば、被験体において筋肉の再生、維持、または修復を促進する等、筋肉の健康状態を改善する方法を提供する。特定の例において、ガレクチンは完全なガレクチンタンパク質である。さらなる例において、ガレクチンは、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組成物から選択される。またさらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同な物質を含む。さらに別の実施の態様において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同なポリペプチドを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、筋力および/または骨密度を増加/維持する方法を提供する。また、本明細書において、筋力量低下および/または骨量低下を防止、阻止、および/または抑制する方法を開示する。いくつかの例において、ガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与して、筋力および/または骨密度を増加し、および/または筋力量低下および/または骨量低下を防止、阻止、または減速する。いくつかの例において、ガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を、筋/骨損傷または筋量/骨量減少のリスクのある被験体、例えば、運動選手、宇宙飛行士、または筋/骨損傷または筋量/骨量減少を引き起こしうる活動に参加する任意の個人等に投与する。いくつかの例において、開示ガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメンを提供して、筋/骨損傷および/または減少を防ぐ。いくつかの例において、本開示によるガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメンを提供して、骨密度および/または筋力を維持する。いくつかの例において、本開示によるガレクチン−1レジメン等の本開示によるレジメンを提供して、骨密度および/または筋力低下を起こしている被験体を治療し、それによって当該レジメンは、骨密度および/または筋力を増加するか、または、既存の筋力および骨密度を維持(例えば、骨密度および/または筋力のさらなる低下を阻止)するようなやり方で投与される。
【0042】
いくつかの例において、筋肉量低下、骨量低下、筋密度低下、および/または筋力低下に関連する症状または疾病に罹患するリスクのある、または罹患している被験体、例えば、脊椎後弯、筋ジストロフィー、骨折、肉離れ、筋断裂、腱損傷、骨粗鬆症、関節リウマチ、狼瘡、脊椎側弯、および/または多発性硬化症を発症または罹患するリスクがある被験体等にガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与するが、被験体はこれに限定されない。いくつかの例において、ガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物を投与して、老化に関連する兆候と症状を防止、治療、または減速させる。ガレクチン組成物は、数日〜数年にわたり短期間または長期間にわたって投与可能とすることが意図される。いくつかの例において、手術を受けた被験体で、かつ、筋量減少、骨量減少、筋力低下、または筋密度低下を起こすリスクがあるか、または各症状を有する被験体等に、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を術後投与する。いくつかの例において、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を、妊娠後の女性被験体に投与する。いくつかの例において、短期または長期昏睡状態の被験体に、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を投与する。
【0043】
II.用語
本発明をより詳細に記載し、当業者が本発明を実施する際の手引きとなるよう、以下に用語および方法について説明する。単数形の用語、例えば、冠詞「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、複数のものについても言及するものである。同様に、単語「or(または)」とは、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、「and(および)」を含むことも意図するものである。用語「comprises」は、「includes」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(“comprising A or B,”)」は、「A、B、またはAおよびBを含む(“including A、B、or A and B,”)」ということを意味するものであり、付加的な要素を排除するものではない。
【0044】
さらに、核酸またはポリペプチドに与えられた、塩基の大きさまたはアミノ酸の大きさサイズ、および分子量または分子質量値は全て概数値であり、説明のために提供するものであることを理解されたい。本明細書において記載したものと同様または同等の方法および物質を本発明の実施または実験において用いることができるが、好適な方法および物質を以下に記載する。
【0045】
特に説明がない限り、本明細書において用いる技術的および科学的用語は全て、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持つ。分子生物学における一般的な用語の定義は、以下に見出すことができる。例えば、ベンジャミン・レウィン(Benjamin Lewin)らによる「遺伝子V(Genes V)」、オックスフォード大学版、1994年(ISBN 0-19-854287-9);ケンドリュー(Kendrew(eds.))らによる「分子生物学百科事典(The Encyclopedia of Molecular Biology)、ブラックウェルサイエンス社(Blackwell Science Ltd.)版、1994年(ISBN 0-632-02182-9);および、ロバート・A・メイヤーズ(Robert A. Meyers(ed.))による「分子生物学および生物工学:包括的便覧(Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference)、VCH出版社版、1995年(ISBN 1-56081-569-8)である。
【0046】
本明細書において言及する全ての出版物、特許出願、特許、およびその他の文献は、その全体が援用により組み込まれる。開示されているGenBankアクセッション番号において提供される全ての配列は、2011年8月11日付で利用なものが、援用により本明細書に組み込まれる。相反する場合、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、物質、方法、および例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0047】
本開示の種々の実施形態の精査を簡便なものとするため、特定の用語について以下に説明する。
【0048】
投与:任意の効果的な経路で被験体に薬剤を提供または与えること。投与経路の例としては、限定しないが、注射(皮下注射、筋肉注射、皮内注射、腹腔内投与、および静脈注射等)、経口、舌下、経直腸、経皮、経鼻腔、経膣、および吸入等が挙げられる。例えば、これらの手法を組み合わせて用いて、ガレクチンまたはその組成物を被験体に投与してもよい。
【0049】
好適な固体または液体の製剤形態の例としては、例えば、エアロゾル類、(マイクロ)カプセル類、クリーム類、ドロップ類、ドロップ類またはアンプル形状の注射溶液、乳液類、細粒類、粉末類、座薬類、シロップ類、錠剤類、コーティング錠剤類が挙げられ、またさらに、活性化合物遅延放出型製剤があり、その製剤過程においては、上記のように、結合剤類、コーティング剤類、崩壊剤、着香料類、潤滑剤類、助溶剤類、甘味料類、または膨張剤類等の賦形剤類および添加物類および/または補助製剤類を一般的に使用する。これら医薬組成物は、様々な薬剤送達システムにおいて好適に用いられる。薬剤送達の種々の方法の概要については、本開示と矛盾しない範囲において参照により本明細書に援用するランガー(Langer)による「薬剤送達の新方法(“New Methods of Drug Delivery”)」科学249(Science 249):1527頁〜1533頁(1990年)を参照されたい。
【0050】
本発明におけるガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤またはニュートラシューティカル(栄養補助)剤等を配合(formulate)して、被験体に非経口または経口で投与可能な医薬品として有効な組成物または栄養補助として有効な組成物とすることができる。非経口投与経路の例としては、上皮、動脈内、筋肉内(IM、およびデポIM)、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、胸骨内注射または注入法、経鼻投与(吸入)、髄腔内、胃内注射、皮下注射(subcutaneous(SQおよびデポSQ))、経皮、局所適用(topical)、および点眼等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明におけるガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤またはニュートラシューティカル(栄養補助)剤等を、その他の医学的に許容される好適な添加剤類と混合または組み合わせて、医薬組成物とすることができる。医学的に許容される好適な添加剤/担体の例としては、限定はしないが、酸化アルミニウム(アルミナ)、ステアリン酸アルミニウム、緩衝剤類(リン酸塩等)、グリシン、イオン交換体類(荷電物質の注入制御を支援すること等)、レシチン、植物性飽和脂肪酸類の部分グリセリド混合物類、ソルビン酸カリウム、血清タンパク質類(ヒト血清アルブミン等)、ソルビン酸、水、セルロース系物質等の塩類または電解質類、コロイドシリカ、リン酸水素二ナトリウム、3ケイ酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、ポリビニルピロリドン、りん酸水素カリウム、硫酸プロタミン、塩化ナトリウム、塩化カルボキシメチルセルロース等の第1族ハロゲン塩類、ワックス類、羊毛脂、および亜鉛塩類等が挙げられる。リポゾーム懸濁液も、医学的に許容される担体として好適である。
【0052】
開示の組成物またはその他の治療剤を混合または添加して得られる混合物は、固体、液体、懸濁液、乳液等とすることができる。これらは、当業者にとって周知の方法により調製することができる。結果として生じる混合物の形態は、意図する投与形態および選択した担体における薬剤の溶解度等、多数の要因によって決まる。
【0053】
ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤に好適な製剤用担体としては、特定の投与形態に適するとして知られる任意の担体を含む。さらに、ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療物質は、所望の効用を損なうことのないその他の不活性または活性物質と混合することもでき、また、所望の効用を補足する物質または別の効用を有する物質と混合することもできる。
【0054】
担体に対する薬剤の溶解性が不十分な場合、各種溶解方法を用いてもよい。そのような方法は周知であり、例えば、水性炭酸水素ナトリウムへの溶解、ジメチルスルホキシド(DMSO))等の共溶媒類の使用、およびTWEEN(登録商標)(ICIアメリカス社(ICI Americas、Inc.)、Wilmington、DE)等の界面活性剤類の使用等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤は、それらの急速な体外排泄を防止する担体、例えば、コーティングまたは時限放出製剤等とともに調整することができる。そのような担体としては、限定はしないが、マイクロカプセル封入送達系(microencapsulated delivery systems)等の制御放出製剤が挙げられる。医学的に許容可能な担体に含まれるガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、またはその他の治療剤の量は、治療上有効な効果を発揮するのに十分な量とし、通常、治療対象者への望ましくない副作用を回避する量とする。治療上有効な濃度は、治療する症状についての既知の体外または体外モデルシステムにおいて化合物を検査することによって経験的に求められる。例えば、当該技術分野で知られているように、筋ジストロフィーのマウスモデルを用いて、後にヒト等その他の被験体用に翻訳可能な有効量または有効濃度を求める。
【0056】
注射可能な溶液または懸濁液は、1,3−ブタンジオール、等張塩化ナトリウム溶液、マンニトール、リンガー溶液、食塩水、または水等の無毒性で非経口的に受け入れ可能な賦形剤類または溶剤類;または、モノグリセリドまたはジグリセリドを含む無菌油、無刺激油、不揮発性油、およびオレイン酸を含む脂肪酸等の分散剤または湿潤剤および懸濁化剤;ココナッツ油、綿実油、落花生油、胡麻油等の天然植物油;グリセリン;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;またはその他の合成溶剤;ベンジルアルコールおよびメチルパラベン等の抗微生物剤類;アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤類;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩等の緩衝剤;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等のキレート剤;塩化ナトリウムおよびブトウ糖等の等張化剤;およびそれらの各種組み合わせ等の分散剤または湿潤剤および懸濁化剤をそれぞれ好適に用いて配合することができる。非経口調剤は、ガラス製、プラスチック製、その他の好適な素材製のアンプル、ディスポーザブルシリンジ、または多容量バイアルに封入可能である。緩衝剤、抗酸化剤、その他は必要に応じて混合することができる。静脈内投与した場合、好適な担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、および、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびその組み合わせ等の濃化剤および可溶化剤を含む溶液が挙げられる。組織標的リポソームをはじめとするリポソーム懸濁液も、医学的に許容可能な担体として好適でありうる。
【0057】
局所適用の場合、ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤は、好適な水性または非水性担体中のクリーム、ローション、軟膏、溶液、または懸濁液とすることができる。局所適用は、当該治療剤物質を含有する経皮吸収型貼付剤または包帯を用いて行うこともできる。添加剤として、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウムまたはエデト酸ナトリウムなどの緩衝剤、酢酸フェニル水銀または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、またはクロルヘキシジンをはじめとする殺菌・殺真菌剤等の保存料、およびヒプロメロース等の増ちょう剤を含むこともできる。
【0058】
ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤を、懸濁液として経口投与する場合、その医薬組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の方法により調製することができ、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウム等の沈殿防止剤、結晶セルロース等の充填剤、メチルセルロース等の増粘剤(viscosity enhancer)、甘味料/着香料等を含んでもよい。経口液剤類は、例えば、ゼラチン、グルコースシロップ、部分硬化食用脂肪、メチルセルロース、ソルビトール、およびシロップ等の懸濁化剤類;例えば、アカシア、レシチン、またはソルビタンモノオレエート等の乳化剤類;例えば、扁桃(アーモンド)油、分画された椰子油、グリセリン、プロピレングリコール、またはエチルアルコール等の油性エステル等の非水性担体(食用油を含む)類;メチルまたはプロピルp−ハイドロオキシ安息香酸またはソルビン酸等の保存料;および、必要に応じて従来の着香料または着色剤等、従来の添加剤を含有することができる。
即放性錠剤として調合した場合、これらの組成物は、リン酸二カルシウム、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、およびデンプンおよび/またはその他の結合剤、賦形剤、崩壊剤、付形剤、エクステンダー、および潤滑剤を含有することができる。
【0059】
経口投与が望まれる場合、ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤は、胃における酸性環境から薬剤を保護する組成物中に含ませることができる。例えば、ガレクチン−1、ガレクチン−3、または本開示による組成物またはその他の治療剤を、胃では完全な状態を保ち腸で有効成分を放出する腸溶性コーティングと共に調合することができる。ガレクチン−1、ガレクチン−3または本開示による組成物またはその他の治療剤は、制酸剤または他の類似成分と組み合わせて調合することもできる。
【0060】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含み、圧縮して錠剤とするか、または、ゼラチンカプセルに封入することができる。経口治療投与の目的で、ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤を付形剤とともに組み込んで、カプセル、タブレット錠剤、またはトローチ錠剤として使用することができる。医学的に適合するアジュバント材料または結合剤も、組成物の一部として含むことができる。
【0061】
カプセル、ピル、タブレット、トローチ等は、同様の性質を有する以下の任意の成分または化合物を含有することができる。例えば、限定はしないが、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、トラガントゴム、ポリビニルピロリドン、またはソルビトール等の結合剤;リン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、結晶セルロース、またはデンプン等の充填剤;アルギン酸およびコーンスターチ等の崩壊剤;限定はしないが、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、タルク等の潤滑剤;限定はしないが、コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;ショ糖やサッカリンなどの甘味剤;ジャガイモデンプン等の崩壊剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の分散剤または湿潤剤;およびペパーミント、サリチル酸メチル、フルーツ香味料などの着香料を含有することができる。
【0062】
投与単位剤型がカプセルの場合、カプセルには、上記のような種類の材料に加えて、脂肪油等の液体担体を含むことができる。さらに、投与単位剤形は、投与単位の物理的形状を変更するその他種々の材料を含むことができ、例えば、糖衣およびその他の溶腸剤コーティングを含むことができる。ガレクチン−1、ガレクチン−3等のガレクチン、または本開示による組成物またはその他の治療剤は、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、茶、チューイングガム、その他の組成物として投与することもできる。シロップは、有効成分のほかに、甘味料としてのスクロースまたはグリセリン、および所定の保存料、色素、着色料、および着香量を含みうる。
【0063】
経口投与した場合、組成物は、経口投与用の一般的な投与剤型で投与することができる。これらの投与剤型の例としては、錠剤およびカプセル等の一般的な固体製剤、および溶液、懸濁液、およびエリキシル等の液体製剤を含む。固体製剤を使用する場合、持続放出型とすれば化合物の必要投与回数を減らすことができる。
【0064】
薬剤:任意のタンパク質、核酸分子(化学修飾した核酸を含む)、化合物、抗体、小分子、有機化合物、無機化合物、またはその他の対象とする分子。薬剤の例としては、治療剤、診断薬、または医薬品が挙げられる。治療剤または医薬品は、単独で、または、付加的な化合物と一緒に使用して、所望の反応を誘導するものである(例えば、被験体に投与したときに、筋ジストロフィーを有する被験体を治療することを含め、治療的又は予防的効果を誘導する等)。
【0065】
いくつかの例において、薬剤は、ガレクチン−1および/またはガレクチン−3の活性を直接または間接的に変更するように作用可能である。治療剤の一例として、筋ジストロフィーに関連する遺伝子または遺伝子産物の活性を変更可能なものが挙げられ、その変更とは、例えば、臨床反応によって測定されるものである(生存可能時間の増加または筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状の減少等)。治療剤は、さらに、治療上有効なペプチド、抗体、または核酸分子の効果を模倣する有機化学物質またはその他の化学物質を含む。
【0066】
「医薬品」は、単独で、または別の薬剤または医学的に許容される担体と組み合わせて被験体に投与したときに所望の治療的または予防的効果を誘導することが可能な化学物質または化学組成物である。特定の例において、医薬品は、筋ジストロフィー関連分子の発現および/または活性を有意に減少し、被験体の生存可能時間を増加する。
【0067】
抗体:軽鎖または重鎖の免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドであって、筋ジストロフィー関連分子またはそのフラグメント等のエピトープを明確に識別して結合するもの。抗体は、重鎖または軽鎖で構成され、それぞれが可変領域を有し、その領域を可変重鎖(V)領域および可変軽鎖(V)領域と呼ぶ。V領域およびV領域は、抗体が認識した抗原を結合する働きをする。本開示の抗体は、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の筋ジストロフィー関連分子に対して特異的なものを含む。
【0068】
抗体という用語は、完全型免疫グロブリンと、その変異体(バリアント)および部分、例えば、Fab´フラグメント、F(ab)´フラグメント、単鎖Fvタンパク質(『scFv』)、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(『dsFv』)等とを含む。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域および重鎖可変領域がリンカーにより結合された融合タンパク質であり、一方、dsFvsにおいては、各鎖が突然変異されており、ジスルフィド結合を導入して各鎖の結合を安定化している。同用語は、また、キメラ抗体等の遺伝子組換え形態(例えば、ヒト化マウス抗体等)、ヘテロ接合抗体(heteroconjugate antibodies)(例えば、二特異性抗体(bispecific antibodies)等)をも含むものである。「ピアスカタログハンドブック(Pierce Catalog and Handbook)」、1994年〜1995年(ピアスケミカル社((Pierce Chemical Co.)、イリノイ州ロックフォード);クーディ・J(Kuby, J.)による「免疫学(Immunology)」第3版、W.H.フリーマン・アンド・カンパニー(W.H. Freeman & Co.)、ニューヨーク、1997年も参照されたい。
【0069】
一般に、天然の免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって互いに結合した重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。軽鎖には、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)の2種類がある。重鎖には、主に5種類の重鎖クラス(または同位体)、例えば、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがあり、抗体分子の機能活性を決定する。
【0070】
重鎖および軽鎖はそれぞれ定常領域および可変領域(各領域は、「ドメイン」としても知られている)を含む。重鎖可変領域および軽鎖可変領域を組み合わせると、抗原を特異的に結合する。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、3つの超可変領域により中断された 「フレームワーク」領域を含み、この領域を「相補性決定領域」または「CDR(complementarity-determining region)」とも呼ぶ。フレームワーク領域およびCDRの範囲は特定されている(カバト(Kabat)らによる「免疫学的関心対象のタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、米国衛生省(U.S. Department of Health and Human Services)、1997年参照)。カバトによるデータベースは現在オンライン上で閲覧可能である。異なる軽鎖および重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内では比較的保全されている。抗体のフレームワーク領域、例えば、軽鎖および重鎖からなる複合フレームワーク領域は、CDRを三次元空間に位置決め(position)して配列(align)する役割を果たす。
【0071】
CDRは、主に、抗原のエピトープに結合する働きをする。一般に、各鎖のCDRは、それぞれ、N末端から順に番号を振ってCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、また、通常は特定のCDRが位置する鎖によって識別される。したがって、VCDR3は、それが存在する抗体の重鎖の可変領域に位置し、一方VCDR1は、それが存在する抗体の軽鎖の可変領域からのCDR1である。RETを結合する抗体は、特定のV領域およびV領域配列を有することになり、したがって、特定のCDR配列を有することになる。特異性の異なる抗体(例えば、異なる抗原に対して結合部位が異なる等)は、異なるCDRを有する。CDRは抗体によって変わるが、CDR中のアミノ酸位置のうち、抗原との結合に直接関連するものの数は限られている。そのようなCDR中のアミノ酸位置は、特異性決定残基(SDR(specificity determining residue))と呼ばれる。
【0072】
「V」または「VH」とは、Fv、scFv、dsFv、またはFabに結合したものをはじめとする、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「V」または「VL」、Fv、scFv、dsFv、またはFabに結合したものをはじめとする、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0073】
「モノクロナール抗体」とは、B−リンパ球の単細胞クローンにより、または単抗体の軽鎖および重鎖遺伝子を移入(トランスフェクト)した細胞により生成された抗体である。モノクロナール抗体は、当業者に周知の方法によって作製され、例えば、骨髄腫細胞を免疫脾細胞と融合させてハイブリッド抗体形成細胞を作成することにより作製される。モノクロナール抗体は、ヒト化モノクロナール抗体を含む。
【0074】
「ポリクロナール抗体」は、互いに異なるB細胞株から派生する抗体である。ポリクロナール抗体は、特定の抗原に対して分泌された免疫グロブリン分子の混合物であり、各抗体は異なるエピトープを判別する。これらの抗体は、例えば、適切な哺乳類(例えば、マウス、ウサギ、またはヤギ等)に抗原を注射することによって、その抗原に特定のIgG免疫グロブリンをB−リンパ球の誘導により生成する等、当業者に周知の方法によって生成し、その後、その哺乳類の血清からIgG免疫グロブリンを分離精製する。
【0075】
「キメラ抗体」は、1つの種、例えばヒト等からのフレームワーク残基と、別の種からのCDR(一般に抗原結合を付与するもの)、例えば、筋ジストロフィー関連分子を特異的に結合するマウス抗体とを有する。
【0076】
「ヒト化」免疫グロブリンとは、ヒトフレームワーク領域および非ヒト(例えば、マウス、ラット、または合成の)免疫グロブリンからのCDRを1つ以上含む免疫グロブリンである。この、CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンを「供与体(ドナー)」と呼び、フレームワーク領域を提供するヒト免疫グロブリンを「受容体(アクセプター)」と呼ぶ。一例において、全てのCDRが、ヒト化免疫グロブリン中の供与体免疫グロブリンからのものである。定常領域はなくてもよいが、仮に存在する場合は、定常領域はヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に 同一であり、例えば、約95%以上等、少なくとも85%〜90%同一の領域である。したがって、CDRをできれば除いたヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応箇所と実質的に同一である。ヒト化免疫グロブリンは、遺伝子工学を介して構築することができる(例えば、米国特許5,585,089号参照)。
【0077】
発現の変更または調節:遺伝子、遺伝子産物、またはそのモジュレーター、例えば、本明細書において開示の1つ以上の筋ジストロフィー関連分子等の発現における変更は、生体試料(例えば、筋ジストロフィーのリスクがあるかまたは筋ジストロフィーを有する被験体からの試料等)中において、基準(例えば、筋ジストロフィーではない被験体からの試料等)または病気がない場合における遺伝子、遺伝子産物またはそのモジュレーターの基準値に対して検出可能な遺伝子、遺伝子産物、またはそのモジュレーターのレベルの増加または減少等の変化または差異を指す。発現の「変更」とは、発現の増加(上向き調節)または発現の減少(下向き調節)を含む。
【0078】
アナログ(類似物):所望の目的に対して元の化合物と同様の機能活性を有するように、ある化合物と十分に一致している化合物。アナログの例として、特定の物質と比較して1つ以上のアミノ酸置換基を有するポリペプチドがある。
【0079】
少なくとも実質的に相同:本明細書において、少なくとも実質的に相同であるとは、相同の程度が、筋再生、維持、修復、または傷の治癒における基準材料の活性の少なくとも一部を生成するのに十分ものをいう。いくつかの例において、物質が基準材料に対して少なくとも約95%、少なくとも98%、または少なくとも99%一致しているとき、その物質は基準材料について少なくとも相同である。
【0080】
生物活性:薬剤が生体に与える有益または不利な効果。薬剤が複合化学混合物である場合、活性は、その物質の有効成分またはファーマコフォアにより発揮されるが、その他の成分によって修正可能である。活性は、一般に投与量によって決まるが、低投与量から高投与量まで変化させた場合に1つの物質に対して有益な効果から不利な効果までを有することも珍しくない。一例において、薬剤は、本明細書に開示の1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の生物活性を有意に減少させ、それによって筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を低減する。
【0081】
バイオマーカー:体内で作られる天然物質であり、特定の生体状態の指標となるもの。バイオマーカーによって、疾病をはじめとする症状を診断すること、およびその進行度を監視することが可能となるだけでなく、疾病治療の有効性を検査することができる。筋ジストロフィーは、バイオマーカーが欠如している一疾病群である。筋ジストロフィーのバイオマーカーとして、従来、血清クレアチンキナーゼ(筋破壊の副生成物)レベルを用いてきたが、疾病の進行を正確に追従するものではない。本明細書において筋ジストロフィーのバイオマーカーを開示する。特定の例において、特定の種類の筋ジストロフィーの存在または症状の重篤度を示す(例えば、ガレクチン−3のレベルの増加は、予後不良を示す)。
【0082】
骨密度:骨1平方センチメートル当たりの鉱物質の量を指す。骨密度は、臨床医学において、限定はしないが、骨粗鬆症および骨折の危険等をはじめとする種々の症状および疾病についての間接的な指標として用いられる。骨密度測定には多くの手法が利用可能であるが、超音波によるものが費用対効果のより高い方法とされてきた。検査は、特定の1本または複数本の骨、通常は、脊柱、腰、または手首を測定することにより行う。そして、これらの骨の密度を、年齢、性別、身長体重に基づいた平均指数と比較する。比較結果を用いて、個人における骨折の危険性および骨粗鬆症の進行度を判断する。平均骨鉱物密度=BMC/W[g/cm2];BMC=骨鉱物含有量=g/cm;およびW=走査線幅。結果は、一般に、TスコアおよびZスコアの2つの測定値から採点する。各スコアは、骨鉱物密度の平均からの乖離量を示す。負のスコアは低骨密度を示し、正のスコアは高骨密度を示す。
【0083】
Tスコアは、骨粗鬆症スクリーニングの際の重要な測定値である。これは、患部の骨鉱物密度を、若年健常基準平均と比較したものである。患者のBMDと、30歳健常者のBMDとの比較である。米国規格では、性別および人種が同地30歳健常者についてのデータを用いるが、世界保健機関(WHO)は、すべての人に対して、30歳白人女性についてのデータを使用することを推奨している。30歳の各値を、閉経後の女性および50歳を過ぎた男性について用いる。なぜなら、骨折の危険性をより正確に予測できるからである。世界保健機関の基準は次の通り:Tスコアが−1.0以上で正常;−1.0と−2.5との間で骨減少症と規定;−2.5以下、つまり、30歳男性/女性の平均値を2.5偏差下回る骨密度で骨粗鬆症と規定する。
【0084】
Zスコアは、年齢相応標準との比較であり、一般に、重度の骨粗鬆症の場合に用いる。これは、被験体のBMDが、年齢、性別、人種が同じ平均BMDと異なる標準偏差の数である。この値を、閉経後の女性、50歳未満の男性、および子どもについて用いる。スコアが、この正常値を2標準偏差未満下回る場合が最も有用である。この状況において、骨粗鬆症に寄与する合併症、例えばグルココルチコイド療法、副甲状腺機能亢進症、またはアルコール依存症等について精査することが有用である。
【0085】
接触:直接的な物理的結合に置くことであり、固体状および液体状の両方を含む。薬剤と細胞との接触は、単離した細胞に薬剤を添加することにより体外(in vitro)において行うか、または被験体に薬剤を投与することにより体内(in vivo)において行うことが可能である。
【0086】
コントロール(対照):検査試料との比較に用いる試料または基準であり、筋ジストロフィー等特定の疾病または症状を有さない一患者(または複数の患者)から得た生体試料等のこと。いくつかの実施形態において、コントロールは、健康な一患者(または複数の患者)から得た試料であり(本明細書においては、「健常」コントロールともいう)、例えば、健常生体試料等である。いくつかの実施形態において、コントロールは、既存コントロールまたは標準値(例えば、以前に検査した対照試料または試料群であって、ベースライン値または正常値(例えば、発現値)を表すものであり、例えば、筋ジストロフィーを持たない被験体中の特定の遺伝子、遺伝子産物のベースライン値または正常値等)である。いくつかの例において、コントロールは、複数の患者試料から得た平均値(または値の平均範囲)(例えば、筋ジストロフィーを有さない被験体中の遺伝子または遺伝子産物の平均値または値の範囲等)を示す標準値である。
【0087】
減少する:あるものの品質、量、強度を減らすこと。一例において、ある治療によって、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候を、例えば、治療を行わない場合の反応と比較して、減少する。特定の例において、ある治療により、筋ジストロフィー関連分子の発現を、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、またさらには少なくとも90%減少(または、ダウンレギュレート(下方制御))することにより、被験体の生存可能性を増加する。いくつかの例において、発現の減少とは、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の生成を結果として減少させる任意のプロセスを指す。遺伝子産物とは、RNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、および構造RNA)またはタンパク質である。したがって、遺伝子のダウンレギュレーション(低下調節)または非活性化とは、遺伝子の転写またはmRNAの翻訳を減少するプロセスを含む。
【0088】
転写を減少するプロセスの例としては、転写開始複合体の劣化を促進するプロセス、転写開始速度を減速するプロセス、転写伸長速度を減速するプロセス、転写の進化性を減少するプロセスがある。遺伝子ダウンレギュレーションとは、既存のレベルを超えて発現を減少させる(reduction of expression above an existing level)ことを含みうる。翻訳を減少するプロセスの例としては、翻訳開始を減少するプロセス、翻訳伸長を減少するプロセス、およびmRNA安定性を減少するプロセスがある。
【0089】
遺伝子ダウンレギュレーションとは、遺伝子産物の生成において任意の検出可能な減少を含む。特定の例において、遺伝子産物の生成は、コントロール(例えば、正常細胞における遺伝子発現の量)と比較して、少なくとも2倍減少し、例えば、少なくとも3倍、または少なくとも4倍減少する。一例において、コントロールは、DMDまたはMDC1A等の筋ジストロフィーを有さない被験体から採取した生体試料における遺伝子発現またはタンパク質発現の相対量である。このような減少は、本明細書において開示した方法を用いて測定することができる。例えば、「遺伝子産物を検出または測定すること」とは、試料中に存在する遺伝子、遺伝子産物、またはそのモジュレーターの量を定量化することを含む。定量化は、数値化または相対化のいずれとすることもできる。遺伝子、遺伝子産物、またはそのモジュレーターの発現の検出は、当該技術分野において周知の、または本明細書に記載の任意の方法を用いて行うことができ、例えば、PCR(RT−PCR等)により核酸を、ELISAによってタンパク質を測定すること等により行うことができる。主要な実施形態において、検出された変化とは、基準値または健常対照被験体と比較した際の発現の増加または減少である。いくつかの例において、検出された増加または減少とは、コントロールまたは標準と比較して少なくとも2倍である。試料と比較して示差的発現を判別するためのコントロールまたは標準の例としては、臨床検査値(例えば、数誌範囲)のほか、(例えば、DMDまたはMDC1A等の筋ジストロフィーを有さない被験体からの試料等、所望の特徴を有するように変更されていないであろう点において)正常であると思われる試料が挙げられるが、そのような臨床検査値は実験室ごとに変わりうることを踏まえ、任意の値とすることもできる。
【0090】
臨床基準および検査値は、既知または所定の母集団値に基づいて設定することができ、測定し実験的に決定した値の比較が可能なグラフまたは表形式で供給することができる。
【0091】
定性的または定量的な発現のレベルにより、核酸またはタンパク質を検出可能である。検出方法の例としては、マイクロアレイ解析、RT−PCR、ノーザンブロット法、ウェスタンブロット法、および質量分析法がある。
【0092】
派生物:ガレクチンまたはその部分等の物質の一形態であり、親化合物と比較して、少なくとも1つの官能基が変更、追加、除去されているもの。
【0093】
診断:筋ジストロフィー等の疾病をその前兆、兆候、および様々な検査の結果により特定するプロセス。そのプロセスを経て下した結論も、「診断」と呼ばれる。一般的に行われる検査の形態の例としては、血液検査、画像診断、尿検査、および生検がある。
【0094】
有効量:症状または疾病に関連する1つ以上の兆候または症状を低減または抑制する等、所望の反応を生成するのに十分な薬剤の量。被験体に投与する際は、目標とする組織/細胞濃度を達成するような投与量を用いることが一般的である。いくつかの例において、「有効量」とは、1つ以上の兆候および/または任意の疾患および疾病の遠因を治療するものである。いくつかの例において、「有効量」とは、治療的有効量であって、薬剤が単独で、付加的な治療剤(例えば、抗病原体剤)と共に、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーまたはMDC1A等の筋ジストロフィーの治療等、所望の反応をひき出すものである。
【0095】
特定の例において、有効量とは、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の本開示による遺伝子、遺伝子産物、またはそのモジュレーターを、その薬剤によって少なくと20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またさらには少なくとも100%(検出できない程度にまで疾病を解消すること)調節可能な薬剤の量である。
【0096】
いくつかの例において、有効量とは、単独で、または医学的に許容される担体または1つ以上の付加的な治療剤と共に、所望の反応を誘導する医薬品の量である。
【0097】
一例において、所望の反応とは、疾病の進行を遅らせることにより被験体の生存可能時間を増加することである。医薬品の有効性を測る上で、疾病を完全に抑制することは必ずしも必要ではない。例えば、医薬品により、その医薬品を使わない場合の一般的な進行と比較して、疾病の進行を所望の程度、例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またさらには少なくとも100%減少することが可能である。
【0098】
別の、または追加の例において、被験体内の筋ジストロフィーの兆候を部分的または完全に緩和するのに十分な量である。治療は、疾病の進行を一時的に減速することのみを含みうるが、疾病の進行を永久に停止または後退させることをも含みうる。
【0099】
本明細書に記載の薬剤の有効量は、多くの様々な方法により決定することができる。そのような方法の例としては、例えば、被験体内の筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状の減少を分析評価(アッセイ)すること、または筋ジストロフィーに関連することが知られている1つ以上の分子の発現レベルを測定すること等がある。有効量は、また、本明細書に記載した検査をはじめとする、様々な体外(in vitro)、体内(in vivo)、原位置(in situ)での分析評価(アッセイ)により決定することができる。
【0100】
本開示の治療剤は、治療の過程において、例えば毎日、単回投与または多回投与可能である。しかしながら、有効量は、適用したソース(例えば、細胞抽出液から単離した核酸分子対化学合成および精製した核酸)、治療対象の被験体、治療する症状の重篤度および種類、および投与方法によって決まる。
【0101】
発現:コード化した遺伝子情報を、細胞の機能部分、非機能部分、構造部分へと変換する、例えばタンパク質合成等のプロセス。遺伝子発現は、外部信号の影響を受けることがある。例えば、細胞にホルモンが作用すると、ホルモン誘起遺伝子の発現が促進される。異なる種類の細胞は、同一信号に対して異なる反応を示すことがある。遺伝子の発現は、また、DNAからRNA、タンパク質までの進路のどこかでレギュレーションが可能である。レギュレーションとは、転写、翻訳、RNA輸送および処理、mRNA等の中間分子の分解についての制御、または、生成後の特定のタンパク質分子の活性化、不活性化、区画化または分解を介した制御を含みうる。一例において、遺伝子発現を監視して、DMD、LGMDまたはMDC1A等を有する被験体の生存可能時間を予測する等、筋ジストロフィーを有する被験体の診断および/または予後判定を行うことができる。
【0102】
核酸分子の発現は、正常(野生型)核酸分子に対して変更可能である。示差的発現等の遺伝子発現における変更の例としては、(1)過剰発現;(2)過小発現;または(3)発現の抑制等が挙げられるが、これらに限定されない。核酸分子の発現変更は、対応するタンパク質の発現における変化に関連付けることができ、また、タンパク質の発現における変化を実際に引き起こす場合がある。
【0103】
タンパク質の発現は、正常(野生型)の状況におけるタンパク質の発現とは若干異なって変更される場合がある。そのようなタンパク質発現の例としては、限定はしないが、次のようなものがある。例えば、(1)1つ以上のアミノ酸残基が異なるような、タンパク質の突然変異;(2)タンパク質配列から、アミノ酸残基の1つまたはいくつか(例えば、10〜20以下)を短数列削除または追加すること;(3)タンパク質の全ドメインまたはサブドメインを削除または追加するように、アミノ酸残基の長配列(例えば、少なくとも20残基)を削除または追加すること;(4)コントロールまたは標準量に対するタンパク質の発現量の増加;(5)コントロールまたは標準量に対するタンパク質の発現量の減少;(6)タンパク質の細胞内局在または標的の変更;(7)時間的にレギュレートされたタンパク質発現の変更(タンパク質が通常発現しないであろうときに発現するように、またはタンパク質が通常発現するであろうときに発現しないようにする等);(8)タンパク質が細胞内で局在化したままになる時間的寿命を増加することによるタンパク質の安定性の変更;および(9)タンパク質の局在化(例えば、臓器または組織特異性局在、または細胞内局在等)した発現の変更(通常発現するであろうときにタンパク質が発現しないように、または通常発現しないであろうときにタンパク質が発現するようにする等)、等があり、それぞれをコントロールまたは標準と比較する。試料と比較して示差的発現を判別するためのコントロールまたは標準の例としては、臨床検査値(例えば、数値範囲)のほか、(例えば、DMDまたはMDC1A等の筋ジストロフィーを有さない被験体からの試料等、所望の特徴を有するように変更されていないであろう点において)正常と思われる試料があるが、そのような臨床検査値は実験室ごとに変わりうることを踏まえ、任意の値とすることもできる。
【0104】
臨床標準および検査値は、既知または所定の母集団値に基づいて設定することができ、測定し実験的に決定した値の比較が可能なグラフまたは表形式で供給することができる。
【0105】
細胞外マトリックス:組織またはその層の細胞外組織であり、1つ以上のマトリックス成分の配列、組成、および、形態を含む。マトリックス成分の例としては、例えば、コラーゲンおよびエラスチン等の構造タンパク質を含むタンパク質、フィブロネクチンおよびラミニン等のタンパク質、およびプロテオグリカン等が挙げられる。マトリックスは、線維網を有する原線維コラーゲンを含んでもよい。いくつかの例において、細胞外マトリックスは、コスタメリックタンパク質ネットワークを介して、各細胞に結合する。
【0106】
フラグメント:物質の一部、例えばガレクチン等。いくつかの例において、フラグメントとは、タンパク質の特定のドメインまたは鎖である。例えば、本開示の特定の実施形態において、ガレクチン−1またはガレクチン−3のフラグメント等、ガレクチンのフラグメントを投与することを含む。フラグメントは、合成であっても、またはより大きな親物質から派生したものであってもよい。
【0107】
官能基:炭化水素ラジカル以外のラジカルであり、物質に物理的又は化学的特性を付与するもの。
【0108】
ガレクチン:β−ガラクトシド結合性動物レクチンであり、細胞外マトリックス相互作用、細胞接着および増殖、さらには、がん細胞の浸潤および転位を調節(modulate)する。これまでに15種類の哺乳類ガレクチンが特定されており、ガレクチン−1およびガレクチン−3の2つが最も特徴がはっきりしている。ガレクチン−1はLgals1遺伝子により符号化され、染色体22q12に位置する。ガレクチン−1の大きさは約15kDaであり、ラミニン等の多数の細胞外マトリックス成分に結合し、かつ、α7b1インテグリンを含むいくつかのインテグリンとも結合する。細胞内および細胞外の両方に存在し、免疫抑制、細胞増殖のレギュレーション、細胞アポトーシス、およびプレmRNAスライシングに関与することが知られている。ガレクチン−1は骨格筋に存在し、ラミニンと競合してα7b1インテグリン結合することにより、皮膚線維芽細胞の筋肉への変換に関与してきた。.
【0109】
ガレクチン−3の大きさは約30kDaであり、Lgals3遺伝子により符号化され、染色体14q22に位置する。このタンパク質は、炭水化物類を結合するカルボキシル末端ドメインおよび炭水化物と非炭水化物配位子とを架橋するアミノ末端ドメインを有する。ガレクチン−1と同様に、ガレクチン−3も細胞内および細胞外の両方に存在する。細胞内では、ガレクチン−3は、細胞周期およびアポトーシスをレギュレートすることがわかっている。細胞外では、ガレクチン−3は、細胞間の相互作用および細胞−細胞外マトリックス相互作用を調停する働きをする。ガレクチン−3も、マイクロファージおよび単球(モノサイト)により発現および分泌される。ガレクチン−3は、単球分化(増加)中に特にアップレギュレートされ、樹状細胞へと分化する間にダウンレギュレートされる。
【0110】
いくつかの例において、ガレクチン−1の発現は、DMD、MDC1A、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはLGMD等の筋ジストロフィーを有する被験体において増加する。ガレクチン−1という用語は、任意の有機体からの任意のガレクチン−1遺伝子、cDNA、mRNA、またはタンパク質を含み、ガレクチン−1は、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する被験体からの試料において発現する。
【0111】
いくつかの例において、ガレクチン−3の発現は、DMD、MDC1A、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはLGMD等の筋ジストロフィーを有する被験体において増加する。ガレクチン−3という用語は、任意の有機体からの任意のガレクチン−1遺伝子、cDNA、mRNA、またはタンパク質を含み、ガレクチン−3は、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する被験体からの試料において発現する。
【0112】
ガレクチン−1およびガレクチン−3の核酸配列およびタンパク質配列は公表されている。例えば、GENBANK(登録商標)寄託番号:NM_002306;NM_003225;NM_00177388ではガレクチン−1の核酸配列が開示され、GENBANK(登録商標)寄託番号: NP_002296ではガレクチン−1のタンパク質配列が開示されるが、それらはすべて、2011年8月11日付GENBANK(登録商標)を参照することにより、そこに定められているとおりに本明細書に組み込む。また、GENBANK(登録商標)の寄託番号NP_032521.1でもガレクチン−1のタンパク質配列が開示されており、2012年8月10日付GENBANK(登録商標)の全体を参照することにより、そこに定められているとおりに、本明細書に組み込む。
【0113】
GENBANK(登録商標)の寄託番号:NM_001177388;NM_002306;NP_003225ではガレクチン−3の核酸配列が開示され、またGENBANK(登録商標)の寄託番号:BA_22164ではガレクチン−3のタンパク質配列が開示され、それらはすべて、2011年8月11日付GENBANK(登録商標)を参照することにより、そこに定められているとおりに本明細書に組み込まれる。GENBANK(登録商標)の寄託番号NP_034835.1でもガレクチン−3のタンパク質配列が開示されており、2012年8月10日付GENBANK(登録商標)の全体を参照することにより、そこに定められているとおりに、本明細書に組み込む。
【0114】
一例において、ガレクチン−1は、完全長野生型(または天然)配列、およびガレクチン−1の対立遺伝子バリアント、フラグメント、相同体、または融合配列、例えば、α7インテグリンの発現性または生物活性を維持するガレクチン−1の対立遺伝子バリアント、フラグメント、相同体、または融合配列等を含む。特定の例において、ガレクチン−1は、ガレクチン−1に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも85%、90%、95%、または98%の配列同一性を有する。
【0115】
一例において、ガレクチン−3は、完全長野生型(または天然)配列、およびガレクチン−3の対立遺伝子バリアント、フラグメント、相同体、または融合配列、例えば、α7インテグリンの発現性または生物活性を維持するガレクチン−3の対立遺伝子バリアント、フラグメント、相同体、または融合配列等を含む。特定の例において、ガレクチン−3は、ガレクチン−3に対して少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも85%、90%、95%、または98%の配列同一性を有する。
【0116】
筋肉の健康を改善する:先在する状態と比較して、または治療をしなければ発生しうる状態と比較して、筋肉の健康を改善すること。例えば、筋肉の健康を改善することは、筋再生、維持、または修復を強化することを含みうる。筋肉の健康を改善することは、また、被験体を予見的に治療して筋損傷または筋障害を防止または減少することも含みうる。
【0117】
疾病または症状を抑制する:疾病または症状の進行を抑制することであり、例えば、当該疾病/症状に罹患するリスクのある被験体または当該疾病/症状を有する被験体において、当該疾病または症状に関連する兆候または症状を減少、低減、または遅らせること等を含む。本開示の特定の方法は、筋ジストロフィーを抑制するための方法を提供する。
【0118】
脊椎後弯:胸椎(上背部)の過度な湾曲の症状。変性疾患(関節炎等)、発育障害(最も典型的な例としてショイエルマン病)、脊椎圧迫骨折を伴う骨粗鬆症、または外傷を原因とするもののいずれかでありうる。変形という意味では、これは脊椎の病的湾曲であり、脊柱の各部がその前彎形状の一部又は全部を失っている状態である。これは、前傾姿勢等、背中が反る原因になる。コブ角度は、脊椎後弯の測定に好適な方法である。
【0119】
標識:例えば、ELISA、分光測光、フローサイトメトリー、または顕微鏡法により検出可能な薬剤。例えば、核酸分子またはタンパク質(ガレクチン−1またはガレクチン−3等)に標識を付着させて、その核酸分子またはタンパク質の検出を可能とする。標識の例としては、限定はしないが、放射性同位体、酵素基質、補因子(コファクター)、配位子、化学発光剤、フルオロフォア、ハプテン、酵素、およびそれらの組み合わせ等が挙げられる。標識化方法および種々の目的に好適な標識の選択を案内する方法は、例えば、サムブルック(Sambrook)らによる「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989年、およびオーズベル(Ausubel)らによる「分子生物学カレント・プロトコル(In Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1998年)において検討されている。特定の例において、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の1つ以上の筋ジストロフィー関連分子に結合する薬剤に標識を共役させて、被験体における疾病の検出および予後判定を行うことができる。
【0120】
全身性エリテマトーデス:この用語は、自己免疫疾患の集合を指し、ヒトの免疫システムが過剰活性となり、正常で健康な組織を冒すものである。これらの疾病の各症状は、関節、皮膚、腎臓、血球、心臓、および肺等、様々な身体組織に影響を及ぼすことがある。
【0121】
細胞または組織の維持:この語句は、筋細胞または筋組織等の細胞または組織を、少なくとも実質的に同一の生理的条件に維持することを意味し、例えば、通常は損傷、損害、または疾病の原因となりうる刺激剤の存在下においてもそのような状態を維持することを指す。
【0122】
多発性硬化症: 従来は時間的空間的多発性の中枢神経系白質病変と表現され、80〜85%の患者において再発寛解型疾患を呈する、自己免疫疾患。脳脊髄の磁気共鳴イメージング(MRI)、体性感覚誘発電位の解析、および脳脊髄液の解析により免疫グロブリン量の増加またはオリゴクローナルバンドを検出することで診断可能である。MRIは特に高感度の診断ツールである。多発性硬化症(MS)の存在または進行を示すMRIの異常としては、T2強調フレア(FLAIR)画像における白質の高信号、活動病変のガドリニウム増強、高強度の「black holes」(グリオーシスおよび軸索病態を表す)、およびT1強調画像の分析(T1-weighted studies)による脳萎縮等がある。連続MRI分析を用いて、疾病の進行を示すことができる。再発寛解型多発性硬化症はMSの臨床経過であり、その特徴としては、完全回復または部分回復を伴う明快に規定された急性の発作、および発作間には病気の進行がないことがある。二次性進行型多発性硬化症はMSの臨床経過であり、始めは再発寛解型であるが、その後可変速度での進行性となり、場合によっては、不定期の再発およびわずかな寛解を伴う。一次性進行型多発性硬化症は、最初から進行型を示す。
【0123】
筋肉: 任意の筋芽細胞、筋細胞、筋線維、筋管外、または筋肉細胞からなるその他の構造物を指す。筋肉または筋細胞は、骨格筋、平滑筋、または心筋とすることができる。また、本開示の特定の実施の形態において、幹細胞およびサテライト細胞のような筋細胞を形成可能な細胞その他の物質も筋肉と呼ぶ。
【0124】
筋密度:休止状態中の筋肉の剛性(「硬度」)を指す用語。筋密度は、筋緊張(例えば、筋肉の連続的かつ受動的な部分収縮、または、休止状態中における受動的な伸張に対する筋肉の抵抗力)とも呼ばれる。
【0125】
筋力:1回の最大努力で筋肉が生成可能な力の量。
【0126】
筋ジストロフィー:進行性筋衰弱の原因となる遺伝子疾患群を指すのに用いる用語。筋ジストロフィーは、骨格筋衰弱および骨格筋タンパク質の欠陥をもたらし、様々な生理的機能障害の原因となりうる。筋ジストロフィーの十分な治療法は存在しない。既存の治療法は、一般に、理学療法または各種整形外科的装置の提供によって疾病の影響を寛解させることおよび患者の生活の質を向上することに重点を置いたものである。
【0127】
筋ジストロフィーに関連する突然変異遺伝子は、コスタメリックタンパク質ネットワークに関連付けられた多数のタンパク質の符号化を行う働きをする。そのようなタンパク質の例としては、ラミニン−2、コラーゲン、ジストログリカン、インテグリン、カベオリン−3、アンキリン、ジストロフィン、α−ジストロブレビン、ビンキュリン、プレクチン、BPAG1b、筋肉LIMタンパク質、デスミン、アクチニン関連LIMタンパク質、α−アクチン、チチン、テレソニン、サイファ(cypher)、ミオチリン(myotilin)、およびサルコグリカン/サルコスパン複合体等が挙げられる。
【0128】
筋ジストロフィーの最も一般的な形態はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)であり、男児出生3,500人に1人の割合で発症する。DMDは、ジストロフィンを符号化する遺伝子の突然変異を特徴とするX連鎖劣性疾患である。ジストロフィンは、約430kDaの大きさの細胞骨格タンパク質である。このタンパク質は、細胞の細胞骨格と細胞外マトリックスとを結合する働きをする。DMD患者においてはジストロフィンが欠失しているため、収縮の際に細胞外マトリックスにおいて筋繊維結合が失われ、最終的に進行性線維損傷、膜漏出、および筋機能障害の原因となる。患者の大多数が、呼吸不全または心不全のため30歳前に死亡する。
【0129】
ベッカー型筋ジストロフィー(良性の偽肥大性筋ジストロフィーとしても知られる)と、デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは、いずれもジストロフィン遺伝子の突然変異が原因である点で関連しているが、デュシェンヌ筋型ジストロフィーにおいては機能性ジストロフィンの生成をみない点において異なり、BMDよりもはるかに重症である。BMDは、下肢および骨盤における緩徐進行性筋衰弱を特徴とするX連鎖劣性遺伝性疾患である。BMDは、筋細胞においてジストロフィンが十分に生成されない一連の筋疾患を含むジストロフィン異常症の一種であり、その結果、筋細胞膜の構造が不安定になる。BMDの原因は、タンパク質ジストロフィンを符号化する遺伝子の突然変異である。BMDの病徴発現パターンはDMDと同様であるが、発現時期は遅く、進行速度もかなり緩徐である。
【0130】
先天性(congential)筋ジストロフィーは、遺伝子の突然変異により、その他のコスタメリックタンパク質の生成が低下することにより引き起こされる。MDC1Aは、LAMA2遺伝子における突然変異によりラミニン−α2タンパク質が完全に欠失することを原因とする先天性筋ジストロフィーである。このようなラミニン−α2の欠失により、ラミニンs−211/221が消失する。ラミニンs−211/221は、細胞外マトリックスの主要成分であり、筋細胞発達において重要な役割を担う。筋細胞分化(増殖)中に、ラミニンはα7β1インテグリンと結合する。ラミニン−α2がないと、筋線維は基底膜に付着することができず、筋管がアポトーシスを起こす。筋再生もできず、その結果、筋修復が低下し、筋線維症および筋炎症が増加する。この慢性的な組織損傷は、MDC1Aにおける病的状態および死亡率の主要な原因である。
【0131】
先天性筋ジストロフィー(CMD)および肢体型筋ジストロフィー(LGMD)は、異質性の高い筋ジストロフィーの最も一般的な例であり、発現時の年齢によって判別できる。CMDの発症は、出生時または6月齢以内であり、LGMDの発症は小児期後期、青年期、または成人期である。LGMDの遺伝は常染色体優性(LGMD1型)または常染色体劣性(LGMD2型)であり、CMDは劣性遺伝である。CMDおよびLGMDは、臨床的および遺伝子的のいずれについても重複しうる。
【0132】
MDC1Aは、進行性筋消耗性疾患であり、子どもたちは車椅子生活を強いられ、呼吸には人工呼吸器が必要であり、早期に死亡する。筋緊張の不足および低緊張乳児症候群(「フロッピ」ベビー症候群)といった症状が出生時に認められる。DMD、BMD、およびLGMDは、一般に、子どもの歩行および階段昇降能力等を含む発育遅延を認める3〜5歳時に診断される進行性筋変性疾患である。この疾患は進行性であり、子どもは10代で車椅子生活となり補助換気が必要となる。
【0133】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FHMD)は、進行性筋衰弱および筋線維消失に関連する筋ジストロフィーの一種である。主に下半身が冒されるDMDおよびBMDとは異なり、FHMDは、上半身、主として顔面筋、肩甲筋、および上腕筋において発症する。しかしながら、骨盤、腰、下肢において発症する場合もある。FHMDの症状は、10歳〜26歳にならないと現れないことが多いが、それよりもずっと後になって発症することも稀ではない。場合によっては、全く発症しないこともある。症状は軽度であり、悪化速度も非常に遅いことが通例である。顔面筋衰弱が一般的であり、眼瞼下垂、口笛不能、顔の表情変化の減少、憂鬱または怒り顔表情、語を発音する困難、肩甲筋衰弱(肩甲骨の目立ち(翼状肩甲)および撫肩等の変形の原因となる)、下肢衰弱、聴力損失、および心臓病のおそれ等がありうる。
【0134】
筋ジストロフィー関連分子:筋ジストロフィーを有する被験体において、その発現または生物活性が変化した分子。そのような分子としては、例えば、核酸配列(DNA、cDNA、またはmRNAs等)およびタンパク質が挙げられる。特定の遺伝子としては、本明細書において例も含めて開示したもの、および、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーおよび/またはMDC1A等の筋ジストロフィーに呼応して発現が変化(アップレギュレートまたはダウンレギュレート等)した完全長遺伝子、cDNAs、またはmRNAs(およびそれにより符号化したタンパク質)のフラグメントを含む。よって、各筋ジストロフィー関連分子の有無に基づいて、被験体における筋ジストロフィー、特にDMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーまたはMDC1Aを診断および/または予後を判定すること、およびDMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する被験体を治療することが可能である。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、筋ジストロフィー関連の症状または疾病の1つ以上の兆候または症状に関連する分子である。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィーおよび/またはMDC1Aに関連する1つ以上の分子、例えばガレクチン−1またはガレクチン−3等である。
【0135】
骨粗鬆症: 骨質量および密度の低下を特徴とする進行性骨疾患であり、骨折リスクの増加の原因となるもの。骨粗鬆症では、骨鉱物密度(BMD)が減少し、骨微細構造が劣化し、種々の骨タンパク質の量が変化する。世界保健機関(WHO)による骨粗鬆症の定義によれば、二重エックス線吸収法で測定した骨鉱物密度が、(若年健常者の)平均骨量頂値よりも標準偏差で2.5以上低い状態としている。「重症骨粗鬆症」という用語は、脆弱性骨折の存在を含む。この疾患は、原発性(一次性)タイプ1、原発性(一次性)タイプ2、または続発性(二次性)に分類される。
【0136】
閉経後の女性において最もよく見られる骨粗鬆症の形態は、原発性I型または閉経後骨粗鬆症と呼ばれる。原発性II型の骨粗鬆症または老人性骨粗鬆症は、75歳以降に発症し、女性および男性の両方において2:1の割合で見られる。続発性骨粗鬆症はどの年齢でも起こりうるものであり、男性も女性も同じように罹患する。この形態は、慢性的素因となる内科的な疾患または疾病、またはグルココルチコイド等の長期にわたる薬物療法をゲインとするものであり、その場合、ステロイド誘発性またはグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症と呼ばれる。
【0137】
医学的に許容される担体:本開示において有用な医学的に許容される担体(ビヒクル)は既知である。E. W. Martinによる「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、マック出版社(Mack Publishing Co.)、イーストン、PA、第19版(1995年)には、の1つ以上の治療剤、例えば、本開示による筋ジストロフィー関連分子の少なくとも1つに特異的に結合する結合剤を含む1つ以上の組成物等の薬物送達に好適な組成物および製剤(formulation)が記載されている。
【0138】
一般に、担体の性質は、採用しようとする特定の投与形態によって決まることになる。例えば、非経口製剤としては、医学的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストローズ、グリセロール等をビヒクルとして含む注射液が挙げられる。生物学的に中性の担体のほかに、投与しようとする医薬組成物は、無毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存料、pH緩衝剤などを少量含むことができ、例として、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレート、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、およびトリエタノールアミンオレエートが挙げられる。
【0139】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):核酸分子(例えば、試料または標本中の核酸分子)の複製の数を増加させる体外増幅手法。一例において、被験体から採取した生物試料を、次のような条件下で1対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させるが、この接触は、プライマーを試料中の核酸テンプレート(実施例1または実施例2において挙げたもの)へのハイブリッド化を可能とする条件下で行う。各プライマーを好適な条件下で伸長し、テンプレートから分離し、その後再アニーリングを行い、伸長し、分離して核酸のコピーの数を増幅する。PCRの産物は、標準的な技法またはその他当該技術分野において周知の標準的な技法を用いた電気泳動、制限酵素切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションまたはライゲーション、および/または核酸シーケンシングにより特徴づけることができる。
【0140】
予後判定:筋ジストロフィー等の疾病の経過(予後)予測。予測の例としては、被験体が侵攻性の再発性疾患を発症する可能性を判定すること、特定期間生存する可能性を判定すること(例えば、被験体が1年、2年、3年、または5年生存する可能性を判定すること)、特定の治療またはその組み合わせに応答する可能性を判定することが挙げられる。
【0141】
再生:傷害または損傷後に、筋細胞または筋細胞を含む組織(または臓器)等の細胞または組織を修復して、当該筋肉または組織の少なくとも一部を傷害または損傷が起こる前の細胞または組織の状態に回復すること。再生とは、また、疾患を有する被験体において、疾患により影響を受けている細胞または組織の修復を容易にして、疾患の影響を排除し、または寛解させることである。より具体的な例において、再生により、細胞または組織は、疾病に罹患していない損害または損傷発生前と同じ状態または改善された生理的状態に置かれる。
【0142】
細胞または組織の修復:損傷またはその他の外傷後に、筋細胞または組織(または臓器)等の細胞または組織への損傷を治癒する生理的プロセスを指す語句。
【0143】
関節リウマチ(RA):多数の組織またはおよび/または組織を冒しうるが、主に柔軟(滑膜)関節を冒す慢性全身性炎症疾患をもたらす自己免疫疾患。重症で痛みのある症状を呈する場合があり、適切な治療を行わないと機能性および可動性を著しく損なう場合がある。その経過は、関節(滑膜)周囲の関節包の反応性炎症に続き、滑膜細胞の膨張(腫張)、滑液過剰、および滑膜内における線維組織(パンヌス)の発達を伴う。この疾病経過の病状は、多くの場合、関節軟骨の破壊および関節癒着(融合)を引き起こす。また、RAは、肺、心膜(心嚢)、肺細胞膜(胸膜)、および白目(強膜)においてびまん性炎症を、また、最も一般的には皮下組織において結節性病変を引き起こしうる。RAの臨床診断は、症状、理学的診断、放射線写真(X線)、および実験室内試験に基づき行う。
【0144】
試料(または生体試料):被験体から得た生体試料であり、ゲノムDNA、RNA(mRNAを含む)、タンパク質、またはその組み合わせを含有する。例としては、限定はしないが、末梢血、尿、唾液、生検組織、摘出標本、および剖検材料が挙げられる。一例において、試料は、MD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、またはMDC1A等の患者から得た筋生体組織を含む。
【0145】
脊椎側弯:ヒトの脊柱が横方向に湾曲している症状。X線上では複雑な三次元的変形であるが、背後からみると脊椎側弯のある人の脊椎は、直線状ではなく、「S」字状または「C」字状でありうる。脊椎側弯は、一般に、先天性(出生時からある脊椎奇形によるもの)、突発性疾患(原因不明、発症時期により、小児、若年性、青年性、成人性と細分化される)、または原発症状に続く二次的なもののいずれかに分類される。脊椎側弯の定義は、冠状面において検査官が被験体と向き合ったときに脊柱が右または左に10度以上湾曲していることである。(矢状面における)前後方向への変形がある場合もある。湾曲を定量的に分析する標準的な方法はコブ角度の測定であり、コブ角度とは、側弯に関連する一番上の脊椎骨の上部終板から側弯に関連する一番下の関連脊椎骨の下部終板までひいた2本の線の間の角度である。
【0146】
兆候および症状:疾病または被験体の症状についての任意の主観的な証拠であり、例えば、被験体が知覚した証拠、ある身体的または精神的な状態を示す被験体の症状の顕著な変化である。「兆候」とは、疾病を示す任意の異常であり、被験体を検査または分析した際に発見できる。兆候は、通常、疾病の主観的な徴候である。兆候の例として、限定はしないが、クレアチンキナーゼレベルの測定、筋電図描画法(衰弱が、神経損傷によるものではなく、筋組織の破壊によるものであることを判断する)をはじめとする筋ジストロフィーを検出するためのテスト、または筋ジストロフィー関連分子を測定する免疫組織化学/免疫ブロット法/免疫学的測定法(例えば、ELISA)等の任意の測定可能なパラメータが挙げられる。一例において、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の症状または兆候を低減または抑制することは、本開示による筋ジストロフィー関連分子を1つ以上の活性または発現を、治療をしない場合の活性および/または発現と比較して、所望の量、例えば、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくともも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またさらには少なくとも100%、低減または抑制することを含む。筋ジストロフィーの兆候としては、限定はしないが、筋衰弱および消失、走行困難、跳躍困難、ジャンプ困難、歩行困難、呼吸困難、疲労、骨格変形、筋変形(踵収縮;腓筋の偽性肥大)、心臓病(拡張型心筋症等)、血中クレアチンキナーゼ(CK)レベルの上昇、またはその組み合わせ等が挙げられる。
【0147】
被験体:多細胞脊椎有機体、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む分類。
【0148】
治療的有効量:治療する疾病、疾患、または症状うち少なくとも1つを減少、寛解、排除、防止、または抑制するのに有効な量であり、経験的に決定することができる。本開示による種々の実施形態において、「治療的有効量」とは「筋再生促進量」であり、筋細胞再生等の組織または細胞の再生を、コントロールと比較して、統計上有意に促進するのに十分な量である。特に、筋細胞再生、維持、または修復等筋肉の健康状態の指標は、Pax7、Pax3、MyoD、MRF4、およびミオゲニン等の転写因子等、筋再生のマーカーを監視することを含む種々の手段によって分析可能である。例えば、そのようなマーカーの発現増加は、筋再生が起こっているか、または最近起こったことを示す。胎児型ミオシン重鎖(eMyHC)等、筋再生のマーカーを用いて、筋再生、維持、または修復の程度を測定することもできる。例えば、eMyHCの存在は、被験体において筋再生が最近起こったことを示す。
【0149】
筋細胞再生、維持、修復は、筋細胞の周囲長すなわち平均断面積または筋線維密度を測定することによって監視することにもできる。筋状態を示す付加的な指標としては、筋重量および筋タンパク質含有量がある。分裂指数(ブロモデオキシウリジン(BrdU)取込測定によるもの等)または筋形成を用いて筋再生の程度を評価することもできる。
【0150】
特定の例において、筋再生等、筋状態は、コントロールと比較して、少なくとも約10%、例えば、少なくとも約30%、または少なくとも約50%またはそれ以上改善される。
【0151】
組織:一般に、特定の種類の細胞の集合体であり、細胞間物質とともに動物の構造材料を構成し、動物における例としては、結合組織、上皮、筋組織、および神経組織がある。
【0152】
疾病を治療する:筋ジストロフィーの兆候または症状等、疾病の兆候または症状または筋ジストロフィーに関する病的状態を寛解させる治療的介入。治療によって、症状の軽減または治癒、または進行を遅らせることができ、例えば、場合によっては、疾病の発症を完全に阻止すること、例えば、筋ジストロフィーの発症を防止することを含む。疾病を防止することは、疾病の完全になくすことを必要としない。例えば、MD等の疾病症状に関連する兆候または症状が少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%減少すれば十分である。本明細書において、疾病または症状について「寛解させる」という用語は、観測可能な任意の有利な治療効果を指す。有利な効果とは、次のような要因、例えば、感受性被験体における疾病または症状の臨床症状の遅発、疾病または症状の臨床症状の一部または全部についての重症度の軽減、疾病または症状の進行抑制、疾病または症状の再発回数の減少、被験体の健康全般および良好な状態の向上、また、特定の疾病又は症状に特有な当該技術分野で周知のその他のパラメータ、およびこれら要因の組み合わせ等により立証可能である。
【0153】
III.筋ジストロフィーを診断および予後判定する方法
被験体において、DMD、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを診断および予後判定する方法を開示する。一例において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を有するリスクがある被験体または有する被験体から得た試料において、筋ジストロフィー関連分子を少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも190またはそれ以上)検出することを含む。いくつかの例において、この筋ジストロフィー関連分子は、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはそれらの任意の組みあわせを含むか、本質的にそれらからなり、またはそれら以外のものを含まないものとすることができる。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−1、ガレクチン−3、Col6A1、Itga3、Iga6、Itga7、Tnc、およびTimp1を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−1およびガレクチン−3を含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、ガレクチン−3およびTncを含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1Aを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。いくつかの例において、筋ジストロフィー関連分子は、DMDを検出するガレクチン−3を少なくとも含む。この文脈における「本質的にそれらからなる」とは、別の付加的な分子(例えば、コントロール等)の発現も評価可能であるが、これらの付加的な分子は、筋ジストロフィー関連分子として挙げたもの以上のものを含まないことを示す。よって、一例において、ハウスキーピングタンパク質またはrRNA等のコントロールの発現(18S RNA、β−ミクログロブリン、GAPDH、および/または18SrRNA等)を分析することができる。いくつかの例において、「本質的にそれらからなる」とは、評価対照とするその他の分子の数を、5以下、例えば、4、3、2、または1以下とすることである。この文脈において、「それら以外のものを含まない」とは、記載した分子の発現のみを評価し、付加的な分子の発現は評価しないことを示す。
【0154】
本方法は、さらに、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を有するリスクがある被験体または有する被験体から得た試料において、少なくとも1つの筋ジストロフィー関連分子の発現をコントロールと比較することを含み、筋ジストロフィー関連分子の少なくとも1つの発現がコントロールに対して増加することは、被験体の生存可能性が低下していることを示す。例えば、ガレクチン−3の発現が、正常なコントロール試料または基準値(または値域)に対して増加することは、生存可能性低下等の予後不良を示す。一例において、生存可能性の低下とは、診断からの生存期間が50ヶ月以下、例えば、40ヶ月、30ヶ月、20ヶ月、12ヶ月、6ヶ月、または3ヶ月以下等であることを含む。それとは逆に、筋ジストロフィー関連分子の発現の減少または発現のレベルがコントロールレベルと同様であることは、生存可能性の増加(例えば、診断からの生存期間が少なくとも50ヶ月、例えば診断からの生存期間が60ヶ月、80ヶ月、100ヶ月、120ヶ月、または150ヶ月)等の予後良好を示す。例えば、筋ジストロフィー関連分子の検出レベルを、被験体が筋ジストロフィーを有さない場合に見込まれる筋ジストロフィー関連分子のレベルを表す値等のコントロールまたは基準値と比較することができる。一例において、評価対象の被験体から得た試料において検出された筋ジストロフィー関連分子を、筋ジストロフィーを有さない被験体から得た試料中において検出された同分子のレベルと比較する。特定の例において、検査試料中で検出された筋ジストロフィー関連分子の相対量が、コントロール中の同分子の相対量と比較して少なくとも2倍、例えば少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍または少なくとも10倍等であった場合、被験体がDMD、LGMD、またはMDC1A筋ジストロフィーを有し、予後不良(例えば、診断からの生存期間が50ヶ月未満、例えば40ヶ月、30ヶ月、20ヶ月、12ヶ月、6ヶ月または3ヶ月等)、またはその両方であることを示す。いくつかの例において、検査試料中に観測された筋ジストロフィー関連分子の相対量(または減少量)が、対照試料における同分子の相対量と比較して統計的に類似であることが検出された場合、被験体はDMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有さず、予後良好(例えば、診断からの生存期間が少なくとも50ヶ月、例えば、60ヶ月、80ヶ月、100ヶ月、120ヶ月、または150ヶ月等)、またはその両方であることを示す。
【0155】
発現の変化は、核酸レベル(例えば、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応またはマイクロアレイ解析等による)またはタンパク質レベル(例えば、ウェスタンブロット法またはELISA等による)において測定できる。
【0156】
いくつかの例において、上記の方法を用いて、本開示の治療方法に利することになる被験体を判別することができる。例えば、被験体が治療を受けるより前に、上記の治療または予後判定方法を行うことができる。その他の例において、これらの方法を用いて被験体の生存可能性または特定の治療の有効性、またはその組み合わせを予測することができる。したがって、本開示の方法は、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーの治療法に関して開業医が迅速な判断を行う際に有益な手段である。このような治療法の決定の例としては、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を治療するための薬剤の投与、および、被験体を対象として筋ジストロフィー関連症状の発症および/または進行の監視を行うという決断が挙げられる。本明細書に開示した方法を用いて治療の有効性を監視することもできる。
【0157】
本明細書において特定した1つ以上の各分子の発現レベル測定に続いて、分析結果、知見、診断、予測および/または治療推奨を、記録し、例えば、専門技術者、医師および/または患者に伝達することが一般的である。特定の実施形態において、コンピュータを用いて先の情報を対象者、例えば患者および/または主治医等に伝達する。測定値に基づき、患者へ施行する療法を変更することができる。
【0158】
一実施形態において、本明細書に開示した1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の対象被験体における発現レベルに基づいた診断、予測、および/または治療推奨を、分析が完了し、診断および/または予測ができたら、可及的速やかに被験体に伝達する。被験体を治療している医師が、各結果および/または関連情報を被験体に伝達してもよい。代案として、各結果は、報告書の提供等による書面、eメール等の電子通信手段、または電話を含む任意の伝達手段により対象被験体に直接伝達してもよい。eメールによる連絡の場合等、コンピュータの使用により伝達が容易になる。特定の実施形態において、診断検査の結果および/または検査から得た結論および/または検査から得た結論および/または検査に基づく治療推奨を含む通信内容は、電気通信分野の当業者にとって周知のコンピュータハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを利用して自動的に生成し、被験体に送達してもよい。健康管理用通信システムの一例は、米国特許第6,283,761号に記載されているが、本開示はこの特定の通信システムを使用する方法に限定されない。本開示の各方法の特定の実施形態において、試料を分析するステップ、疾病を診断するステップ、および分析結果または診断を伝達するステップを含む方法ステップの全てまたは一部は、それぞれ異なる管轄(例えば、外国管轄 )において実施してもよい。
【0159】
いくつかの実施系艇において、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する被験体を特定することにより、結果として、医師は筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候および症状を阻止または遅延させるための1つ以上の薬剤を処方する等して患者を治療することになる。付加的な実施形態において、本明細書に開示の方法を用いて得られた情報に基づき投与量または投与計画を変更する。
【0160】
筋ジストロフィー関連の核酸の検出
一例において、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって検出可能である。生体試料は、本開示の筋ジストロフィー、例えば、DMD、LGMD、またはMDC1A関連mRNAs等を増幅可能なプライマーを用い、そのような産物を増幅するのに十分な条件下で培養できる。
【0161】
別の例において、生体試料は、1つ以上の筋ジストロフィー関連の核酸配列(cDNA、ゲノムDNA、またはRNA(例えばmRNA等)に結合可能なプローブを用いて、高厳密性条件下において培養する。そして、その結果生じるハイブリダイゼーションを、ノーザンブロット解析等、当該技術分野において周知の方法を用いて検出する。
【0162】
一例において、単離した核酸分子または増幅産物の培養は、少なくとも1つの筋ジストロフィー関連分子、例えば、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはその任意の組み合わせ等と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含むアレイを用いて、単離核酸分子とオリゴヌクレオチドプローブとの間のハイブリダイゼーションが十分に行うことが可能な時間をかけて行うことにより、単離核酸分子:ヌクレオチド複合体を形成する。続いて、単離核酸分子:ヌクレオチド複合体を分析して、単離核酸分子の発現が変化したかを分析する。
【0163】
いくつかの実施例において、アレイ内には、ガレクチン−1、ガレクチン−3、Col6A1、Itga3、Iga6、Itga7、Tnc、およびTimp1と相補関係にあるオリゴヌクレオチドが含まれる。いくつかの例において、アレイは、少なくともガレクチン−1およびガレクチン−3と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例において、アレイは、少なくともガレクチン−3およびTncと相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例において、アレイは、少なくとも、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1Aを検出するガレクチン−3と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例において、アレイは、少なくとも、DMDを検出するガレクチン−1と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例において、アレイは、少なくとも、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1Aを検出するガレクチン−1と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの例において、アレイは、少なくとも、DMDを検出するガレクチン−1と相補関係にあるオリゴヌクレオチドを含む。
【0164】
筋ジストロフィー関連タンパク質の検出
試料を分析して核酸の存在を確認する代わりに、タンパク質発現における変化は、当該技術分野において周知の方法、例えば、ウェスタンブロット法、免疫学的測定法(例えば、ELISA)、質量分析法、またはプロテインマイクロアレイ等により測定することができる。例えば、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の存在は、1つ以上の捕捉剤を含むタンパク質アレイ、例えば、開示した筋ジストロフィー関連分子の1つ以上の分子に特異的な抗体等を用いて判定することができる。
【0165】
一例において、筋ジストロフィー関連分子(例えば、ガレクチン−1またはガレクチン−3等)に特異的に結合する抗体は、検出可能な標識により直接標識される。別の例において、筋ジストロフィー関連分子に特異的に結合する各抗体(第1抗体)には標識せず、ヒト抗体に結合可能な第2抗体またはその他の分子であって、個々の筋ジストロフィー関連分に特異的に結合するものを標識する。当業者には周知であるが、第2抗体としては、特定の種類およびクラスの第1抗体に結合できるものを選択する。例えば、第1抗体がヒトIgGであれば、第2抗体は抗ヒトIgGとすることができる。抗体に結合可能なその他の分子としては、限定はしないが、タンパク質Aおよびタンパク質Gが挙げられ、いずれも市販されている。
【0166】
抗体または第2抗体に適した標識としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、磁性剤、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の非限定例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシターゼ、またはアセチルコリンエステラーゼがある。好適な補欠分子族複合体の非限定例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンがある。好適な蛍光物質の非限定例としては、ウンベリフェロン、Cy3、Cy5、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフェコエリトリンがある。蛍光物質の非限定例としてはルミノールがあり、磁性物質の非限定例としてはガドリニウムがあり、また、放射性標識の非限定例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
【0167】
いくつかの例において、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の存在は、ELISAを用いて確認することができる。ELISAとは、不均一系による免疫学的測定法であり、1970年代初頭から実験室業務において広く用いられており、本明細書に開示の方法において使用可能である。このELISAを用いて、タンパク質抗原を種々な様式で検出することができる。「サンドイッチ」様式では、分析しようとする抗原を2つの異なる抗体の間に保持する。この方法では、まず、固体面を固体相抗体で被覆する。次に、抗原(例えば、診断タンパク質)を含む検査試料、または抗原を含む組成物、例えば、対象被験体からの尿サンプル等を添加し、抗原を、抗原結合抗体と反応させる。非結合抗原は全て洗い流す。そして、既知の量の酵素標識抗体を、結合抗体と反応させる。非結合酵素標識抗体の余剰分があれば、反応後に洗い流す。その後、分析において使用した酵素用の基板を付加し、基板と酵素産物との間の反応により色が変化する。可視変色の量は、特定の酵素標識抗体を直接測定する方法であり、その結果として、検査試料中に存在する抗原が測定される。
【0168】
代替的な例において、検出可能な物質で標識した筋ジストロフィー関連標識分子基準(standards)および所望の筋ジストロフィー関連分子に特異的に結合する非標識抗体を利用した競合免疫学的測定法により、筋ジストロフィー関連分子を生体試料中で分析することができる。この測定法において、生体試料(血清、組織生検、組織生検から単離した細胞等)、標識した筋ジストロフィー関連分子の基準、およびその筋ジストロフィー関連分子に特異的に結合する抗体を組み合わせて、非標識抗体に結合した、筋ジストロフィー関連標識分子基準の量を測定する。生体試料中の筋ジストロフィー関連分子の量は、筋ジストロフィー関連分子に特異的に結合する抗体に結合した筋ジストロフィー関連標識分子基準の量に反比例する。
【0169】
いくつかの例において、競合測定としてELISAを用いることもできる。競合測定様式においては、測定対象抗原を含む検査試料に、酵素標識した抗原を正確な量で混合し、両方の固体表面に付着した抗抗原抗体への結合を競う。酵素標識した抗原の過剰自由量を洗い流した後、酵素用の基板を添加する。酵素−基板相互作用から生じる色彩強度の量は、検査した試料中の抗原の量の一つの尺度である。ELISA等の不均一系による免疫学的測定法を用いて、任意の筋ジストロフィー関連分子を検出することができる。
【0170】
MDを有する被験体を診断する方法または特定の治療の有効性を判定する方法等、本明細書に開示の方法は、手動または自動的に実施することができ、例えば、核酸およびタンパク質配列を検出可能であり、そのような配列の発現レベルを比較する能力のある自動試料処理装置上で実施することができる。自動システムは、実質的に全体的ではないとしても、少なくとも一部がコンピュータ制御されていることが一般的である。自動システムの少なくとも一部がコンピュータ制御されているため、コンピュータに本開示の方法の各実施形態を実施させるためのコンピュータ実行可能命令を記憶する1つ以上の有形コンピュータ可読媒体も本開示の特定の実施形態に関連するものである。よって、コンピュータまたは有形コンピュータ可読媒体を、本開示の方法のための命令とともに開示する。有形コンピュータ可読媒体とは、コンピュータ命令を記憶および/または実行可能な任意の物理的対象物またはコンピュータ素子を意味する。有形コンピュータ可読媒体の例としては、限定はしないが、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、USBフロッピードライブ、フロッピーディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、消去可能読取専用メモリ(EPROM)、光ファイバ等が挙げられる。なお、有形コンピュータ可読媒体は、各命令を光学走査等により電気的に取り込むことのできるものであれば、紙またはその他の好適な媒体であってもよい。光学走査により、各命令はコンパイルされ、解釈され、または好適な方法で適宜処理されて、コンピュータメモリに記憶される。
【0171】
代案として、コンピュータのアプリケーションに含めるか、またはダウンロードしてインストール可能なプラグインまたはソフトウェアコードの一部としてもよい。プラグインとしては、ウェブページ、ワード文書、pdfファイル、mp3ファイル、その他等の任意の種類のコンピュータ文書に埋め込み可能とすることができる。
【0172】
MDを有する被験体を診断する方法または特定の治療の有効性を判定する方法を用いるなどして本開示の方法を実施する例示的なコンピュータシステムとしては、処理装置、システムメモリ、およびシステムメモリを含む種々のシステム部品を処理装置に接続するシステムバスを含むコンピュータ(パーソナルコンピュータ、ラップトップ、パームトップ、セットトップ、サーバ、メインフレーム、携帯用デバイス(ハンドヘルドデバイス)、およびその他の種類のコンピュータ等)が挙げられる。処理装置は、INTEL(登録商標)社製、および例えば、サイリックス、AMD、およびネクスジェン含む他社製の、INTEL(登録商標)x86、PENTIUM(登録商標)、および準拠するマイクロプロセッサ;デジタル社製アルファ;ミップステクノロジー社製、NEC製、IDT(登録商標)製、シーメンス製、その他社製のミップス;およびIBM(登録商標)およびモトローラ製のパワーPC等を含む種々の市販のプロセッサのうち任意のものとすることができる。処理装置121として、デュアルマイクロプロセッサおよび他のマルチプロセッサ構造を用いることも可能である。
【0173】
システムバスとしては、従来の種々のバス構造、例えば、いくつか例を挙げると、PCI、VESA、AGP、マイクロチャネル、ISA、およびEISA等のうち任意のものを利用したメモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、およびローカルバス(母線)をはじめとするいくつかの種類のバス構造のうち、任意のものとすることができる。例えば起動時等に、コンピュータ内の各要素間での情報の送受信を支援する基本ルーチンを含む基本入出力システム(BIOS)をROMに記憶する。システムメモリとしては、読取専用メモリおよびランダムアクセスメモリ(RAM)が挙げられる。
【0174】
コンピュータは、例えば、着脱可能なディスクからの読み取りまたは書き込みを行うハードディスクドライブ、磁気ディスクドライブ、および、例えばCD−ROMディスクの読み取り、または他の光学媒体からの読み取りまたは書き込みを行う光ディスクドライブをさらに含んでもよい。ハードディスクドライブ、磁気ディスクドライブ、および光ディスクドライブは、それぞれ、ハードディスクドライブインターフェイス、磁気ディスクドライブインターフェイス、および光学ドライブインターフェイスによってシステムバスに接続される。各ドライブおよびそれらに対応するコンピュータ可読媒体により、コンピュータ用の、データ、データ構造(データベース)、コンピュータ実行可能命令等の不揮発性記録が可能となる。なお、上記コンピュータ可読媒体としてハードディスク、取り外し可能な磁気ディスク、およびCDを挙げて説明したが、この例示的な操作環境において、その他の種類のコンピュータ可読媒体、例えば、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、ベルヌーイカートリッジ、その他等も利用可能であることを当業者には理解されたい。
【0175】
ユーザは、キーボードおよびマウス等のポインティングデバイス等、種々の入力装置を使用してコマンドおよび情報をコンピュータに入力することができる。その他の入力装置としては、マイク、サテライト・ディッシュ(衛星放送受信アンテナ)、スキャナ、その他等を挙げることができる。これらおよびその他の入力装置は、システムバスに連結したシリアルポートインターフェイスを介して処理装置に接続することが一般的であるが、パラレルポート、ゲームポート、またはユニバーサルシリアルバス(USB)等のその他のインターフェイスにより接続可能である。モニタまたはその他の種類の表示装置も、ビデオアダプタ等のインターフェイスによりシステムバスに接続する。コンピュータは、モニタだけでなく、プリンタ等のその他の周辺出力機器を備えることが一般的である。
【0176】
コンピュータは、ネットワーク化された環境において、コンピュータ等1つ以上の他のコンピュータシステムへの論理接続を使用して動作可能である。その他のコンピュータシステムとしては、サーバ、ルータ、ピアデバイス、またはその他の一般的なネットワークノードであり、コンピュータに関連して記載した多数または全ての要素を含むことが一般的である。論理接続は、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができる。そのようなネットワーキング環境は、オフィス、企業内コンピュータネットワーク(enterprise-wide computer networks)、イントラネット、およびインターネットにおいて一般的である。
【0177】
LANネットワーキング環境において使用する場合、ネットワークインターフェイスまたはアダプタを介してコンピュータをローカルネットワークに接続する。WANネットワーキング環境において使用する場合、コンピュータ120は、インターネット等のワイドエリアネットワーク上で(例えば、LANおよびゲートウェイまたはプロキシサーバを介して)通信を確立する手段としてモデムまたはその他の手段等を備えことが一般的である。モデムは、内部モデムでも外部モデムでもよく、シリアルポートインターフェイスを介してシステムバスに接続される。ネットワーク化された環境において、コンピュータまたはその一部に対して描かれたプログラムモジュールを遠隔メモリ記憶装置に記憶することができる。説明したネットワーク通信は例示であり、コンピュータシステム間に通信を確立するその他の手段(イーサネットカード、ISDNターミナルアダプタ、ADSLモデム、10BaseTアダプタ、100BaseTアダプタ、ATMアダプタ等を含む)を使用することができることが理解されよう。
【0178】
先に記載の方法は、当該方法が備える機能および作用(acts and operations)も含め、コンピュータにより実施することができる。そのような機能および作用を、コンピュータ実施によるもの、という場合がある。このような機能、および抽象的に表された作用として、データビットを表す電気信号を処理装置により操作することによって、結果として電気信号表現が変換または減少し、メモリシステム(システムメモリ、ハードドライブ、フロッピーディスク、およびCD−ROMを含む)におけるメモリ位置においてデータビットが保持され、それによってコンピュータシステムの動作およびその他の信号処理を再構築または変更することを含むことが理解されよう。データビットを保持するメモリ位置は、当該データビットに対応する特定の電気的、磁気的、または光学的特性を有する物理的位置である。
【0179】
分散コンピューティング環境を用いて、本開示を備えうる方法およびシステムを実施することが考えられる。分散コンピューティング環境は、接続媒体によって接続した2つのコンピュータシステムを備えるが、本開示の方法は、より多くの、任意の数のコンピュータシステムを接続媒体によって接続した場合にも同様に適用可能である。コンピュータシステムは、パーソナルコンピュータ、マルチプロセッサシステム、携帯用デバイス(ハンドヘルドデバイス)等を含む複数の種類のコンピュータシステム構造のうちの任意のものとすることができる。他のコンピュータシステムとの論理関係に着目すると、コンピュータシステムは、クライアント、サーバ、ルータ、ピアデバイス、またはその他の一般的なネットワークノードでありうる。その他のコンピュータシステムは、任意の数の接続媒体に接続してもよい。接続媒体は、限定はしないが、イーサネット、企業内コンピュータネットワーク(enterprise-wide computer networks)、イントラネット、およびインターネット等を含む、ローカリエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、またはその他のコンピュータネットワークを備えることができる。
【0180】
自動化した遺伝子保護および定量化のためのソフトウェアの一部、および相関データを記憶するデータベースは、分散コンピューティング環境において、その他のコンピュータシステムに後から配布されるアプリケーションを用いて、1つのコンピュータシステム内で実施することができる。遺伝子の発現および定量化を測定するソフトウェアの一部も、分散コンピューティング環境において実施することができ、その場合、通信ネットワークを介してアクセスされる遠隔処理装置として機能する1つのコンピュータシステムにより、分散コンピューティング環境において、その他のコンピュータシステムに後から配布する分散アプリケーションを用いて、各作業(tasks)を行う。ネットワーク化された環境において、遺伝子の発現および定量化を測定するソフトウェアおよび相関データを記憶するデータベースを含むプログラムモジュールを、1つ以上のコンピュータシステムに配置することができる。分散コンピューティング環境におけるコンピュータシステム間の通信は、有利には、通信データの符号化を含みうる。
【0181】
特定の実施形態において、診断検査および/または得られた結論および/または検査に基づく治療推奨を含む通信情報を生成し、電気通信分野での当業者には周知であろうコンピュータハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを利用して被験体、施設、医師等に自動的に送達してもよい。ハードウェア指向の通信の一例が、米国特許第6,283,761号明細書に記載されているが、本開示はこの特定の通信システムを利用する方法に限定されない。本開示の方法の特定の実施形態において、試料を分析するステップ、疾病を診断するステップ、および分析結果または診断を伝達するステップを含む方法ステップの全てまたは一部は、それぞれ異なる管轄(例えば、外国管轄)において実施してもよい。
【0182】
IV.使用の方法
本明細書において、筋ジストロフィーは、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)等の筋ジストロフィー関連分子の発現差異と関連していることを示す。これらの所見に基づき、DMD、LGMD、FHMD、BMDまたはMDC1A等の筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を、本開示による筋ジストロフィー関連分子の少なくとも1つの発現を低減することにより、低減または解消する方法を開示する。特定の例において、被験体はヒトである。
【0183】
本明細書において、DMD、LGMD、FHMD、BMDまたはMDC1A等の筋ジストロフィーを治療するための方法を開示する。一例において、本方法は、筋ジストロフィーを持つ被験体に薬剤の有効量を投与することを含み、本方法において、当該薬剤は、開示した筋ジストロフィー関連分子の1つまたはそれ以上、例えば、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)等の1つまたはそれ以上の生物活性または発現を変更する。そのような薬剤により、核酸配列(例えばDNA、cDNA、またはmRNA等)およびタンパク質の発現を変更可能である。いくつかの例において、1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子の生物活性または発現を薬剤により減少または変更する。組成物を有効とするために発現100%減少する必要はない。例えば、薬剤は、発現または生物活性を所望の量、例えば、コントロールにおける活性または発現と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またさらには少なくとも100%減少する。いくつかの例において、薬剤は、本開示の筋ジストロフィー関連分子のうち1つ以上の生物活性または発現を増加する。
【0184】
特定の例において、薬剤は、本開示の筋ジストロフィー関連分子のうち1つ以上に結合してその発現を減少する特異的結合剤である。特定の分子としては、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−3等のガレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、および完全長分子、cDNA、またはmRNA(およびそれらにより符号化したタンパク質)の各フラグメントであり、その発現がDMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーに対して増加するものが挙げられる。各薬剤により、開示の筋ジストロフィー関連分子の1つ以上、および筋ジストロフィーの進行に関連するその他の分子の活性および発現を変更することができる。
【0185】
特定の例において、薬剤は、筋ジストロフィー患者においてアップレギュレートした本開示の筋ジストロフィー関連分子の1つに対する抑制物質、例えばsiRNAまたは抗体等である。例えば、薬剤は、本開示の筋ジストロフィー関連分子の1つのmRNA発現を阻止するsiRNAである。例えば、薬剤は、本開示の筋ジストロフィー関連分子の1つ以上の発現を阻止または減少させるsiRNAである。付加的な例において、組成物は、筋ジストロフィー関連ヌクレオチド配列にそれぞれ結合して、被験体内の筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を阻止する特定の2つのsiRNA等、少なくとも2つの薬剤を含む。いくつかの例において、薬剤は、本開示の筋ジストロフィー関連分子の1つの生物活性または発現を促進または増加するのに用いられる活性剤またはアゴニストである。
【0186】
筋強度および/または骨密度を増加/維持する方法も開示する。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン−1組成物等のガレクチン組成物の有効量を投与して、筋強度および/または骨密度を増加し、および/または筋骨量低下を防止、阻止、または遅延する。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン−1等のガレクチン組成物組成物を、筋/骨損傷または筋量/骨量低下のリスクがある被験体、例えば、筋/骨損傷または消失の原因となりうる活動に参加する運動選手、宇宙飛行士、またその他の任意の個人に投与する。いくつかの例において、本開示のガレクチン−1レジメン等、開示のレジメンを提供して、筋/骨損傷または消失を防止する。いくつかの例において、本開示のガレクチン−1レジメン等、開示のレジメンを提供して骨密度および/または筋強度を維持する。いくつかの例において、本開示のガレクチン−1レジメン等の本開示のレジメンを提供して、骨密度および/または筋力が減少している被験体を治療するが、それによって、骨密度および/または筋力の増加につながる方法または既存の筋力および骨密度を維持する(例えば、筋力および/または骨密度のさらなる低下を防ぐ)方法でレジメンが投与される。
【0187】
いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物、例えばガレクチン−1組成物等を、筋量低下、骨量低下、筋密度低下、および/または筋力低下に関連する症状または疾病等に感染または罹患するリスクのある被験体、例えば、限定はしないが、脊椎後弯、筋ジストロフィー、脊椎側弯、骨折、肉離れ、筋断裂、腱損傷、骨粗鬆症、関節リウマチ、狼瘡、脊椎側弯および/または 多発性硬化症等に感染または罹患するリスクのある被験体等に投与する。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物、例えばガレクチン−1組成物等を投与して、加齢と関連した兆候または症状の進行を防止、治療、または遅延させる。ガレクチンまたはガレクチン組成物を数日〜数年の短期間または長期間にわたって投与可能とすることが意図される。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物、例えばガレクチン−1またはガレクチン−1組成物等を術後に、例えば、筋量低下、骨量低下、筋強度低下、または筋密度低下等を経験するリスクのある術後被験体、またはそれらを有する術後被験体に投与する。いくつかの例において、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を妊娠後の女性被験体に投与する。いくつかの例において、ガレクチン−1等のガレクチン組成物を短期または長期昏睡状態の被験体に投与する。
【0188】
薬剤
望ましい薬剤としては、有効量を投与したときに所望の反応(例えば、特定の症状または疾病、例えば、限定はしないが、脊椎後弯、筋ジストロフィー、脊椎側弯、骨折、肉離れ、筋断裂、腱損傷、骨粗鬆症、関節リウマチ、狼瘡、脊椎側弯および/または多発性硬化症等を含む1つ以上の兆候の防止、阻止、または治療)を誘導するものである。一例において、薬剤は、他の分子と比べ、より高い親和性を有して対象の分子と結合する特異的結合剤である。例えば、特異的結合剤とは、本開示の筋ジストロフィー関連分子の遺伝子または遺伝子産物のうちの1つと高い親和性を有して結合するが、別の遺伝子または遺伝子産物には実質的に結合しないものでありうる。いくつかの例において、特異的結合剤は、筋ジストロフィー被験体においてアップレギュレートしたトロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)の1つと結合することにより、遺伝子の発現を低減または抑制するが、その他の遺伝子(または遺伝子産物)には結合しない。
【0189】
いくつかの例において、薬剤は、遺伝子のmRNAとの干渉および遺伝子産物の翻訳の妨害、または遺伝子産物の翻訳後修飾等により、または、細胞内局在を変化させること等により、遺伝子発現(転写、プロセシング、翻訳、翻訳後修飾)を阻止する。別の例において、特異的結合剤は、本明細書に開示した遺伝子であって特定の症状または疾病に関連するものののうち1つ以上の遺伝子によって符号化されたタンパク質に、0.1〜20nAの範囲内の結合親和性を有して結合し、そのようなタンパク質の活性を減少または抑制する。いくつかの例において、薬剤により遺伝子発現(転写、プロセシング、翻訳、翻訳後修飾)または特定の症状または疾病に関連するタンパク質の活性を増加させる。
【0190】
特異的結合剤の例としては、siRNA、抗体、配位子、遺伝子組み換えタンパク質、ペプチド模倣体、および可溶性受容体フラグメントがある。特異的結合剤の一例としてはsiRNAが挙げられる。臨床的に使用可能なsiRNAを作成する方法は当該技術分野において周知である。特定のsiRNAおよびそれを生産および投与するのに使用可能な方法は後述する。特定の例において、特異的結合剤はガレクチン−3siRNA分子を含む。
【0191】
特異的結合剤の別の具体例は、モノクロナールまたはポリクロナール抗体等の抗体である。臨床的に使用可能な抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。特定の抗体およびそれらを生産するのに使用可能な方法は当業者には周知である。さらに、ガレクチン−1およびガレクチン−3に対する抗体は市販されている。
【0192】
更なる例において、受容体タンパク質の低分子量インヒビター/アンタゴニストまたは活性剤/アゴニストを用いて、筋ジストロフィー関連分子の発現または生産等の活性をレギュレートすることができる。特定の例において、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、および/または 組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)の遺伝子により符号化されたタンパク質の低分子量インヒビター/アンタゴニストまたは活性剤/アゴニストを用いる。
【0193】
特異的結合剤は、例えば、筋ジストロフィーの進行に関連する核酸またはタンパク質の生物活性を変更することにより、治癒効果がある。例えば、筋ジストロフィーを有する被験体においてアップレギュレートしようとする本明細書に開示した1つ以上の遺伝子に高い親和性を有して結合する特異的結合剤は、遺伝子または遺伝子産物の生物学的機能を大幅に減少しうる。その他の例において、筋ジストロフィーを有する被験体においてアップレギュレートしようとする、本明細書に開示したタンパク質の1つに高い親和性を有して結合する特異的結合剤は、タンパク質の生物学的機能を大幅に減少しうる。 そのような剤は、必要とする被験体、例えば、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する患者等に有効量投与することができる。
【0194】
その他の例において、筋ジストロフィーを有する被験体においてアップレギュレートしようとする本明細書に開示した1つ以上の遺伝子に高い親和性を有して結合する特異的結合剤は、遺伝子または遺伝子産物の生物学的機能を大幅に増加しうる。その他の例において、筋ジストロフィーを有する被験体においてアップレギュレートしようとする、本明細書に開示したタンパク質の1つに高い親和性を有して結合する特異的結合剤は、タンパク質の生物学的機能を大幅に増加しうる。そのような剤は、必要とする被験体、例えば、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを有する患者等に有効量投与することができる。
【0195】
例えば、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物は治療効果がある。本開示は、ガレクチン−1またはガレクチン−3等の、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を被験体に投与することにより、被験体に利益をもたらす方法に関する。特定の実施形態において、本開示は、筋再生を促進する方法を提供するものであり、例えば、ガレクチンまたはガレクチン組成物を投与することによって被験体における筋ジストロフィーを治療する。
【0196】
種々の実施形態において、本開示は、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を用いて被験体を治療する方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、筋肉の健康状態を改善する方法、例えば、フラグメント、派生物、類似物等を含めたガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を被験体に有効量投与することにより、被験体において筋再生の促進、維持、または修復等を行う方法を提供する。特定の例において、ガレクチンは完全ガレクチンタンパク質である。さらなる例において、ガレクチンは、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせから選択される。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同な物質を含む。またさらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同なポリペプチドを含む。
【0197】
付加的な例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物はガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせからなる。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同な物質からなる。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物はガレクチンフラグメントを含まず、完全なガレクチンタンパク質のみを含む。
【0198】
さらに別の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチン−1、ガレクチン−3、およびその組み合わせからなる。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチン−1またはガレクチン−3に少なくとも実質的に相同な物質からなる。さらなる実施の態様において、ガレクチンまたはガレクチン組成物は、本質的に、ガレクチンα1鎖と少なくとも実質的に相同なポリペプチドからなる。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物はガレクチンフラグメントを含まず、完全なガレクチンタンパク質のみを本質的に含む。
【0199】
本開示の方法のさらなる実施の態様は、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物の投与により、例えば、ガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせまたはガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせの組成物の投与により治療可能な症状を被験体が有すると診断することを含む。一例において、被験体が、LGMD、FHMD、ベッカー型筋ジストロフィー、および/またはMDC1A等の筋ジストロフィーに罹患していると診断する。さらなる例において、その症状は、細胞外マトリクスの形成または維持に関連する1つ以上のタンパク質を発現する際の被験体の障害または被験体の能力低下、例えば、ガレクチン、インテグリン、ジストロフィン、ユートロフィン、またはジストログリカンの生産低下または不生産を特徴とする。
【0200】
特定の例において、本開示は、さらに、被験体における筋再生を増加する方法を提供する。例えば、高齢被験体、筋疾患のある被験体、および、運動が原因の損傷等活動誘発性損傷を含む筋損傷のある被験体にとって、本実施形態は有効である。
【0201】
本開示の方法のさらなる例において、ガレクチン−1、ガレクチン−3、または組成物を含むその組み合わせ等のガレクチンまたはガレクチン組成物を予防的に投与して、筋および/または骨の傷害または損傷(活動または運動誘発型損傷等)を予防または低減する。例えば、筋傷害、損傷、または疾患の解消または寛解を目的として、高齢被験体、筋傷害を起こしやすい被験体、または筋損傷のリスクがある被験体、例えば、運動選手等を治療することができる。
【0202】
本開示の実施の態様を用いて、創傷治癒を促進することもできる。いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチンを含む組成物を創傷内または周辺に投与する。更なる例において、その物質を全身投与する。通常は創傷が生じてから物質を塗布するのが一般的だが、いくつかの例においては物質を見込み塗布することもできる。
【0203】
さらなる実施形態において、本開示の方法は、ガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせを含む組成物等のガレクチンまたはガレクチン組成物を、1つ以上の付加的な薬理学的物質、例えば治療剤等とともに投与することを含む。いくつかの態様において、この付加的な治療剤により、ガレクチンまたはガレクチン組成物による治療効果が促進される。さらなる態様において、治療剤は、治療中の症状について独立した治療的有用性を提供する。種々の例において、付加的な治療剤は、インテグリン、ジストロフィン、ジストログリカン、ユートロフィン、または発育因子等の細胞外マトリックスの組成物である。さらなる例において、治療剤は、細胞外マトリックスの形成および維持を促進する物質の発現を減少または増加させる。
【0204】
いくつかの例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物を、治療対象の被験体の特定の部位に塗布する。例えば、ガレクチンまたはガレクチン組成物を、筋肉等、特定の治療対象部位に注入してもよい。さらなる例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物の投与は、被験体の複数の部位に分散するように、例えば全身投与または局所投与等を行ってもよい。
【0205】
ガレクチン、またはガレクチンを含む組成物、例えばガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせ等は、任意の適切な方法により投与可能であり、その方法としては、局所投与、非経口投与(静脈投与または腹腔内投与)、または経口投与等がある。特定の例において、ガレクチンまたはガレクチン組成物腹腔注射(stomach injection)または腹膜注射等の非経口投与等により、全身投与する。
【0206】
本開示の方法を、包括的に、筋再生について説明したが、本開示の方法を用いて、その他の組織および臓器の修復の促進、維持、または損傷予防をすることができる。例えば、本開示の方法を用いて、脳機能の障害または異常、平滑筋、心筋等骨格筋以外の細胞または組織への作用(effects)から派生する筋ジストロフィーの症状を治療することができる。
【0207】
治療剤のプレスクリーニング
いくつかの例において、(以下、第VI部において詳述するように)1つ以上の筋ジストロフィー関連分子を検出することにより、潜在的な治療剤を、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーの治療用に、最初にスクリーニングする。例えば、本開示の筋ジストロフィー関連分子を用いて、筋ジストロフィーの1つ以上の兆候または症状を減少または抑制可能な薬剤を判別することができる。一例において、被験体を、まず、治療を受ける以前には特定の薬剤に反応するであろうDMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーの存在についてプレスクリーニングする。
【0208】
投与
本開示の組成物を投与する方法は慣例手順であり、熟練した医師によって決定することができる。例えば、本開示の治療(例えば、筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン−1等のガレクチンに対する特異的結合剤を含むもの等)は、注射を介して、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、または吸入または噴霧を介して投与することができる。特定の例において、ヒト等の哺乳類の被験体に対して、組成物を静脈内に投与する。別の例において、組成物を経口投与する。いくつかの例において、治療対象被験者の特定の部位に組成物を適用する。例えば、組成物を筋肉内に注射する。
【0209】
投与する薬剤の治療上有効な量は、所望の効果および治療対象の被験体によって変わりうる。一例において、少なくとも1μgの薬剤を(例えばヒト等の)被験体に毎日投与することを含む。例えば、ヒトに投与可能な薬剤の量は、1日当たり日少なくとも1μgまたは少なくとも1mgであり、例えば、1日当たり10μg〜100μg、1日当たり100μg〜1000μg、例えば1日当たり10μg、1日当たり100μg、または1日当たり1000μgとすることができる。一例において、被験体に少なくとも1μg(1〜100μg等)の薬剤(筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン−1またはガレクチン−3等のガレクチンの1つに特異的に結合する結合剤を含む組成物等)を静脈内投与する。一例において、そのような組成物を少なくとも1mg被験体に筋肉内投与する。投与量は、分割して投与(例えば、一日当たり2、3、4分割投与等)することも、毎日単回投与することもできる。
【0210】
特定の例において、被験体に、本開示の筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン−1、ガレクチン−3またはその組み合わせ等のガレクチンに対して特異的な結合剤をを含む治療用組成物を複数回分割投与計画で、少なくとも2日続けて、10日続けて、例えば、1週間、1ヶ月、または数年にわたり投与する。一例において、本開示の筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせ等のガレクチンに対する特異的結合剤を含む治療用組成物を、毎日、少なくとも30日間にわたり、例えば、少なくとも2ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、または少なくとも36ヶ月間等にわたり被験体に投与する。
【0211】
各組成物、すなわち、筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン(例えば、ガレクチン−1、ガレクチン−3、またはその組み合わせ等)のうちの1つに対して特異的な結合剤を含む組成物等は、さらに、1つ以上の生物活性または不活性物質(またはその両方)、例えば、当該技術分野において筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状の軽減または治療用として周知のその他の薬剤および従来の医学的に許容される無毒性の担体等を含むことができる。例えば、開示した組成物による治療効果を促進する付加的な治療剤、例えば、インテグリン、ジストロフィン、ジストログリカン、ユートロフィン、または成長因子等の細胞外マトリックスの成分等を含む。さらなる例において、付加的な治療剤は、細胞外マトリックスの形成または維持を促進する物質の発現を減少または促進する。いくつかの例において、付加的な物質は、アグレカン、アンギオスタチン、カドヘリン、コラーゲン(コラーゲンI、コラーゲンIII、またはコラーゲンIVを含む)、デコリン、エラスチン、エナクチン、エンドスタチン、フィブリン、フィブロネクチン、オステオポンチン、テネイシン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、およびその組み合わせを含むことができる。ビグリカン、グリコサミノグリカン(ヘパリン等)、糖タンパク質(ジストログリカン等)、プロテオグリカン(ヘパラン硫酸等)、およびその組み合わせも投与することができる。特定のラミニンを、その他の形態のラミニン、ラミニン類似物、ラミニン派生物、または前記いずれかのフラグメントと共に投与することができる。
【0212】
いくつかの例において、サイトカイン、ポリペプチド、および脳由来神経栄養因子(BDNF)、CNF(毛様体神経栄養因子)、EGF(上皮成長因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、グリア成長因子(GGF)、グリア成熟因子(GMF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン、インスリン様成長因子類、ケラチノサイト成長因子(KGF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3および−4、PDGF(血小板由来成長因子)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびその組み合わせ等の成長因子等の成長促進剤を、本開示の治療法の1つとともに投与してもよい。
【0213】
特定の例において、治療上有効な量の治療剤(本開示による筋ジストロフィー関連分子またはガレクチン−1、ガレクチン−3またはその組み合わせ等のガレクチンに特異的な結合剤等)を含む治療用組成物は、1つ以上の生物不活性化合物をさらに含む。そのような生物不活性化合物の例としては、限定はしないが、担体、増粘剤、賦形剤、緩衝剤、保存剤、および担体が挙げられる。これらの製剤に有用な医学的に許容される担体は一般的である(E. W. Martinによる「レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、マック出版社(Mack Publishing Co.)、イーストン、PA、第19版(1995年)参照)。一般に、単体の性質は、使用する特定の投与の形態よって決まることになる。例えば、非経口製剤としては、医学的かつ生理学的に許容される液体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストローズ、グリセロール等を含む流体をビヒクルとして含む注射液を挙げることができる。固相組成物(例えば、パウダー、丸薬、錠剤、またはカプセル状)について、従来の非毒性固相担体としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体に加え、投与される医学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートのような微量の非毒性の補助物質を含有することができる。
【0214】
各組成物は、食べやすい形態(palatable form)に調整して食品添加物またはサプリメントとして投与することができる。食べやすい形態とは、一般に、医薬製剤分野の当業者にとって周知であるように、無臭か、またはマスキングまたはコーティングされたものを指す。開示の化合物を経口投与する場合、特に、栄養サプリメントとして投与する場合には、組成物は、食品基材と混合することができる。そのような混合物は、乳濁液状または固体食品との混合物とすることができる。いくつかの例において、ガレクチン−1組成物等の開示した組成物をヨーグルトと混合することができる。例えば、限定はしないが、結合剤、充填剤、調味料、着色料等の種々の添加材を、ガレクチン−1等、1つ以上のガレクチンと組み合わせ、プラスチック塊の硬さ(plastic mass consistency)まで混合することにより、健康バーを調製することができる。そしてこの塊を、延ばすかまたは成形して「キャンディーバー」形状とし、次いで、これを乾燥または凝固させて最終生成物を形成する。
【0215】
代案として、化合物は、溶液、乳濁液、または懸濁液として液体剤形で経口投与することができる。液体剤形は、例えば、当業者には周知の適切な溶剤、保存剤、乳化剤、懸架剤、賦形剤、甘味料、溶融助剤、および着色調味料を含有することができる。化合物は、また、液状ビタミン製剤および電解質含有飲料に添加することもできる。飲料は、エネルギー飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、柑橘飲料、炭酸飲料、乾燥飲料ミックス(dry drink mixes)、その他の好適な飲料媒体またはその組み合わせの形態とすることができる。
【0216】
追加治療
特定の例において、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候または症状を減少または抑制する薬剤の有効量を投与する前、投与中、または投与後に、被験体は、1つ以上の治療を受けることができる。一例において、被験者は、筋ジストロフィー関連分子またはガレクチンの一方について特異的な開示の薬剤を投与する前に、ガレクチンタンパク質療法(例えば、ガレクチン−1/ガレクチン−3タンパク質療法)等の1つ以上の治療を受ける。療法の例としては、限定はしないが、筋鞘を安定させ筋変性を減少する働きをする、ラミニン−111タンパク質療法がある。いくつかの例において、筋細胞源を添加して、筋再生および修復を支援することができる。本開示のいくつかの態様において、ラミニン療法と組み合わせて、被験体に衛星細胞を投与する。本明細書において、本開示と矛盾しない限りにおいて援用により参照する米国特許公開第2006/0014287号は、筋芽細胞における細胞の集合体を濃縮して、それらの細胞を被験体に投与する方法を提供する。更なる態様において、脂肪組織由来幹細胞等の幹細胞を被験体に投与する。脂肪組織由来幹細胞を調合および投与する好適な方法は、、本開示と矛盾しない限りにおいて援用により参照する米国特許明細書第2007/0025972号において記載される。いくつかの例において、線維芽細胞等、その他のセル状材料を投与するともできる。
【0217】
V.筋ジストロフィー治療の有効性をモニタする方法
本明細書において、筋ジストロフィー治療の有効性を監視する方法も開示する。いくつかの例において、筋ジストロフィー治療用薬剤の有効性を測定する方法は、当該薬剤による治療後の被験体から得た試料中における1つ以上の筋ジストロフィー関連分子を検出すること、および治療後のそのような分子の発現を、参照値またはコントロールと比較することを含み、治療後の1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の発現に減少または増加等の変化が見られれば、被験体における筋ジストロフィーの治療に薬剤が有効であることをしめす。いくつかの例において、これらの方法においては、限定はしないが、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはその任意の組み合わせ等をはじめとする筋ジストロフィー関連分子を検出するため、限定はしないが尿または血清等の生体液を利用する。本方法は、本明細書において開示したものをはじめとする筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の数度(量)または活性を検出または測定することを含む。
【0218】
本開示の方法は、少なくとも1つ、例えば2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、またはそれ以上の筋ジストロフィー関連分子を検出することを含む。一例において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する次の分子、すなわち、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)のうち、少なくとも1つ、例えば、1つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、または13の分子を検出することを含む。いくつかの例において、本方法は、少なくともガレクチン−3を検出することを含む。いくつかの例において、本方法は、少なくともガレクチン−1を検出することを含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の量の減少、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の量の統計的に有意な減少等を検出することを含み、すなわち、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)の量が、基準値と比較して、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、または5分の1に低下したこと等を検出すること等を含む。
【0220】
いくつかの実施形態において、本方法は、1つ以上の筋ジストロフィーに関連する分子の量の減少、例えば、少なくとも10%の減少 等、すなわち、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またすなわち10%〜90%の減少、20%〜80%の減少、30%〜70%の減少、または40%〜60%の減少等の統計上有意な減少を検出することを含み、例えば、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)の1つ以上において、基準値と比較して、少なくとも10%の減少、すなわち、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、すなわち、10%〜90%の減少、20%〜80%の減少、30%〜70%の減少、または40%〜60%の減少(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、200%またはそれ以上の減少)を検出することを含む。
【0221】
いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の量の増加、例えば、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の量が統計的の有意なに増加等を検出することを含み、すなわち、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)の量が、基準値と比較して、1.5倍、2倍、倍、4倍、または5倍増加したこと等を検出すること等を含む。
【0222】
いくつかの実施形態において、本方法は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の分子の量の増加を検出することを含み、例えば、10%〜90%の増加、20%〜80%の増加、30%〜70%の増加、または40%〜60%の増加(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、200%以上の増加)等を含む少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%の増加等、統計上有意な増加を検出すること、および、開示した分子によるジストロフィーマーカー、例えばガレクチン−1における参照値に対する増加、例えば、10%〜90%の増加、20%〜80%の増加、30%〜70%の増加、または40%〜60%の増加(例えば、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、200%以上の増加)を含む少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%等の増加を検出することを含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、本方法を経時的に行って被験体における筋ジストロフィーの1つ以上の兆候または症状、例えば、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1Aに関連する1つ以上の兆候または症状の進行または退行を監視することができる。本方法は、数日、数週間、または数年等の特定の期間にわたり、複数回行うことができる。いくつかの例において、この療法は、筋ジストロフィー用の薬剤を用いた治療を含む。参照試料が正常試料の場合、検査試料測定値(例えば、評価した筋ジストロフィー関連分子の発現または活性レベル)が正常試料と本質的に同じであれば、被験体における治療効果ありと判断する。一方、検査試料において評価対象の筋ジストロフィー関連分子に対する値が、正常試料と比べて有意に高い場合は、被験体における治療効果無しと判断する。プロファイルにおける変化も、疾病経過の進行(退行)を示す。被験体が治療を受けている間、本明細書において記載した方法を用いて被験体を監視して、治療プロトコルの有効性を分析することができる。本明細書において特定した1つ以上の分子の発現レベルの測定に続いて、分析結果、知見、診断、予測および/または治療推奨を記録して、例えば、専門技術者、医師および/または患者に伝達することができる。特定の実施形態において、コンピュータを用いて、先の情報を対象者、例えば、患者および/または主治医等に伝達する。測定値に基づき、患者に施す療法を変更する。例えば、本明細書において開示した方法を用いて得た情報に基づいて、投与量または投与方式(レジメン)を変更する。
【0224】
一実施形態において、本明細書に開示の筋ジストロフィー関連分子のうちの1つ以上の対象被験体における発現レベルに基づく診断、予測、および/または治療推奨を、分析が完了し診断および/または予測ができたら、被験体に可及的速やかに伝達する。被験体を治療している医師が、各結果および/または関連情報を被験体に伝達してもよい。代案として、報告書の提供等による書面、eメールまたは電話等の電子通信手段を含む任意の伝達手段により、各結果を対象被験体に直接伝達してもよい。eメールによる連絡の場合等、コンピュータの使用により伝達が容易になりうる。特定の実施形態において、診断検査の結果および/または検査から得た結論および/または検査から得た結論および/または検査に基づく治療推奨を含む通信内容は、電気通信分野の当業者にとって周知のコンピュータハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを利用して自動的に生成し被験体に送達してもよい。健康管理用通信システムの一例は、米国特許第6,283,761号に記載されているが、本開示はこの特定の通信システムを使用する方法に限定されない。本開示の各方法の特定の実施形態において、試料を分析するステップ、疾病を診断するステップ、および分析結果または診断を伝達するステップを含む方法ステップの全てまたは一部は、それぞれ異なる管轄(例えば、外国管轄)において実施してもよい。
【0225】
VI.筋ジストロフィーを治療するための薬剤を判別する方法
DMD、LGMD、FHMD、BMD、およびMDC1A等の筋ジストロフィーを治療する薬剤を判別する方法をここに開示する。いくつかの例において、本方法は、尿または血液の試料等の試料を1つ以上の薬剤に接触させることを含み、接触は、当該1つ以上の薬剤によって開示の筋ジストロフィー関連分子の1つ以上の発現または生物活性を十分に減少させる条件下で行う。本方法は、1つ以上の薬剤の存在下で、開示した筋ジストロフィー関連分子の1つ以上の発現または生物活性を検出することも含むことができる。1つ以上の薬剤の存在下における、1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子の発現または生物活性を、続いて、基準値等のコントロールと比較して、1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子の発現または活性に変化があるかを判断する。ここで、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の活性または発現の減少は、1つ以上の検査剤が筋ジストロフィー治療に有用であることを示す。
【0226】
一例において、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の発現差異があるかの判断は、生体外試験(イン・ビトロ・アッセイ)により行う。例えば、生体外試験を用いて、血液または尿の試料等、試料中の1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の発現を、検査薬がある場合とない場合とで比較することができる。発現レベルは、当業者に周知の方法、例えば、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応、マイクロアレイ解析、または、ウェスタンブロット法等により測定することができる。いくつかの例において、薬剤の存在下で、1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子の活性が、参照値と比較して少なくとも2分の1、少なくとも3分の1、または少なくとも5分の1に減少した場合は、1つ以上の検査薬が筋ジストロフィーの治療に有用であることを示す。いくつかの例において、薬剤の存在下で、参照値と比較して1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子の活性が、参照値と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍に増加した場合は、1つ以上の検査剤が筋ジストロフィーの治療に有用であることを示す。
【0227】
検査薬
1つ以上の検査薬は、任意の物質とすることができ、例えば、限定はしないが、タンパク質(例えば抗体)、核酸分子(例えばsiRNA)、有機化合物、無機化合物、小分子、またはその他の任意の対象分子が挙げられる。特定の例において、検査薬は、開示した筋ジストロフィー関連分子、例えば、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)等のうちの1つの活性(例えば、発現)を減少または抑制するsiRNAである。例えば、このsiRNAはガレクチン−3を対象とする。
【0228】
その他の例において、検査薬は抗体である。例えば、抗体は、開示した筋ジストロフィー関連分子、例えば、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)等のうちの1つに特異的に結合するように意図したものである。特定の例において、抗体は、ガレクチン−1またはガレクチン−3を対象とする。
【0229】
開示した検査薬はアプタマーも含む。一例において、アプタマーは、特定の配列依存型形状を呈し、対象のタンパク質(例えば、ガレクチン−1またはガレクチン−3等)に、高い親和性と特異性を有して結合する一本鎖核酸分子(例えば、DNAまたはRNA等)である。アプタマーは、一般に、100未満のヌクレオチド、75未満のヌクレオチド、または50未満のヌクレオチド(例えば、10〜95のヌクレオチド、25〜80のヌクレオチド、30〜75のヌクレオチド、または25〜50のヌクレオチド)を含む。特定の実施形態において、開示した診断特異性結合剤は鏡像アプタマー(シュピーゲルマー(SPIEGELMER)(商標)とも呼ばれる)である。鏡像アプタマーは、Dオリゴヌクレオチド(例えばアプタマー等)と比べて酵素的分解に高い耐性を示す高親和性のL鏡像異性の核酸(例えば、LリボースまたはL2’−デオキシリボース単位等)である。アプタマーおよび鏡像アプタマーの、対象結合特性は、例えば、ヴロツカ(Wlotzka)らによる、「Proc. Natl. Acad. Sci. 99(13):8898 8902」2002年に記載されているように、オリゴヌクレオチドのランダムプールから開始する生体外選択プロセスにより設計される。アプタマーを生成する方法は当該分野において周知である(たとえば、フィッツウォータ(Fitzwater)およびポリスキー(Polisky)(Methods Enzymol.、267:275-301、1996年;マーフィ(Murphy)らによる、Nucl. Acids Res. 31:e110、2003年)参照)。
【0230】
別の例において、アプタマーは、対象のタンパク質(例えば、ガレクチン−1またはガレクチン−3等)に高い親和性と特異性を有して結合するペプチドアプタマーである。ペプチドアプタマーは、タンパク質骨格の両端に付着したペプチドループ(例えば、ガレクチン−1またはガレクチン−3について特異的なもの)を含むことができる。この二重構造の制約により、ペプチドアプタマーの結合親和性は、抗体の親和性(ナノモル領域)に匹敵する程度まで著しく増加する。可変ループ長は、一般に、8〜20のアミノ酸であり(例えば、8〜12のアミノ酸)、骨格は、安定した可溶性の小型および非毒性の任意のタンパク質(例えば、チオレドキシン−A、ステフィンA三重変異体、緑色蛍光タンパク質、エグリンC、および細胞転写因子Sp1)とすることができる。ペプチドアプタマー選択は、酵母ツーハイブリッドシステム(例えば、Gal4酵母ツーハイブリッドシステム等)またはLexA相互作用トラップシステム等の種々のシステムを用いて行うことができる。
【0231】
VII.キット
本開示によれば、筋ジストロフィーの診断、予後判定、または治療に用いることのできるキットを提供する。例えば、本明細書において開示するキットは、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の兆候を減少または抑制することにより、DMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1A等の筋ジストロフィーを診断または予後判定するものであり、キットは、1つ以上の筋ジストロフィー関連分子の発現または生物活性を変更可能な少なくとも1つの薬剤を含む。本開示のキットは、キットに含まれる組成物の使用方法を開示する教材を含むことができる。この教材は、電子的形態(例えば、コンピュータディスケットまたはコンパクトディスク等)で書くことも、視覚的なもの(例えば、ビデオファイル等)とすることもできる。例えば、教材では、1つ以上の開示した筋ジストロフィー関連分子、例えばガレクチン−1またはガレクチン−3等の発現レベル特定の活性のベースライン測定をまず行うことを指示する。次に、本明細書の教示による分子を調製することわかっている組成物の投与を指示する。投与に続き、特定の活性を測定する。治療前の活性レベルを、治療後の活性と比較する。組成物がない場合の活性と比べて、活性が少なくとも10%、例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、または約100%を含む、約15%〜約98%、約30%〜約95%、約40%〜約80%、約50%〜約70%、変化した場合、治療が有効であることを示す。特定の実施形態において、50%よりも大きい変化がある場合は、治療が有効であることを示す。有効な治療とは、限定はしないが、患者生存の増加、特定のタイプの筋ジストロフィーの進行の遅延、予後良好、または、さらなる筋損傷の防止等が挙げることができる。
【0232】
本明細書に開示した療法分析(therapy assays)に使用可能なキットを提供する。例えば、キットには、1つ以上の筋ジストロフィーバイオマーカー(例えば、ガレクチン−1またはガレクチン−3、またはその組み合わせ等)を検出可能な1つ以上の組成物、薬剤(例えば、抗体等)を含むことができる。キットには、キットが意図する特定の用途を容易にするその他の薬剤を含みうることが当業者には理解されるであろう。
【0233】
一例において、DMD治療用のキットを提供する。例えば、そのようなキットは、ガレクチン3の活性または発現を抑制または減少することを意図することが可能な1つ以上の組成物を含むことができる。
【0234】
いくつかの例において、生体試料中における1つ以上の開示した筋ジストロフィーバイオマーカー検出用のキットを提供する。筋ジストロフィー関連分子を検出するキットは、分子に特異的に結合する1つ以上のプローブを含みうる。一例において、キットは、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agrn)、コラーゲン6A1(Col6a1)、ガレクチン−1、ガレクチン−3、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Iga3)、インテグリンα6(Iga6)、インテグリンα7(Iga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン1(Nid1)、テネイシンC(Tnc)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)、またはその任意の組み合わせおよびポジティブまたはネガティブコントロール等のコントロールのうち、1つ以上を有するアレイを含む。その他の例において、キットは、本明細書に開示した筋ジストロフィー関連のバイオマーカーの1つに特異的に結合する抗体を含む。いくつかの例において、抗体を(例えば、蛍光標識、放射性標識、または酵素標識等で)標識する。この診断キットは、さらに、(例えば、酵素標識用の酵素基質、蛍光標識検出用のフィルターセット、二次抗体等の好適な二次標識等)の標識検出手段、および、特定の診断方法の実施において慣例的に用いられる緩衝剤およびその他の配位子を含みうる。いくつかの例において、キットは、ガレクチン−3に特異的に結合する少なくとも1つのプローブまたは抗体を含み、そのキットを用いてDMD、LGMD、FHMD、BMD、またはMDC1Aを診断または予後判定する。いくつかの例において、キットは、ガレクチン−3に特異的に結合する少なくとも1つのプローブまたは抗体を含み、そのキットを用いてDMDの予後判定および/またはDMD治療の有効性を測定する。
【0235】
本開示を、以下の非限定的な例によりさらに説明する。
【実施例】
【0236】
(実施例1)
MDC1Aについてのバイオマーカー
この例では、ガレクチン−1およびガレクチン−3の、MDC1Aについてのバイオマーカーとしての使用について検討する。
【0237】
i.物質および方法
ウェスタンブロッティング:4週齢および8週齢のオスの野生型動物またはdyW-/-動物の腓腹筋を、液体窒素中で冷却した乳鉢と乳棒で粉砕した。RIPA緩衝液(50mMヘペスpH7.4、150mMNaCl、1mMNa3VO4、10mMNaF、0.5%Triton X-100、0.5%NP50、10%グリセロール、2mMPMSFおよび1:200希釈のプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII)中で、血清および筋組織の両方からタンパク質を抽出し、ブラッドフォード法(Bradford assay)(バイオ・ラッド社(Bio-Rad Laboratories Inc)、Herculues、CA)を用いて定量化した。タンパク質は、SDS−PAGEにより分離した。1:1000希釈した抗ガレクチン−1抗体(H00003956-D01Pアブノヴァ社、Walnut、CA)を用いてガレクチン−1を検出した。1:1000希釈した抗ガレクチン3抗体(ab53082、アブカム社製)を用いてガレクチン−3を検出した。各ブロットを、一次抗体を用い、4℃で一晩かけて培養した。次に、各ブロットを、1:5000希釈したヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Li-Corバイオサイエンス社製、Lincoln、NE)で1時間培養した。各ブロットを、Odysseyイメージングシステムを用いて画像化し、同システムを用いて各帯域を定量化した。1:5000希釈したα−チューブリン抗体(アブカム(AbCam)社製、ケンブリッジ、マサチューセッツ)を用い、続いてヤギ抗マウスIgG抗体(Li-Cor Biosciences社製、Lincoln、NE)を用いて、組織ブロットをα−チューブリンに正規化した。
【0238】
免疫蛍光:ライカ(Leica)CM1850クリオスタットを用いて4週齢および8週齢のオスの前脛骨(TA)筋の凍結切片(8mm)を切断し、あらかじめ清浄したサージパススライド上にマウントした。4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて切片を5分間固定し、PBSを用いて再水和した。PBS中の5%BSAにおいて各スライドをブロックし、続いて、1:500希釈したab53082(AbCam社製)を用いて1時間培養した。各スライドを、続いて、1:1000希釈したFITC共役抗ウサギIgG抗体で1時間培養した。DAPIを混合したVectashieldを用いてスライドをマウントし、Axioskop 2 plus 蛍光顕微鏡(ツァイス社)で画像化した。Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)で各画像を取り込んだ。
【0239】
定量的リアルタイムPCR分析:Trizol(Invitrogen社製、Carlsbad、CA)試薬を用いて、4週齢および8週齢の野生型またはdyW-/-の5つの腓腹筋から全RNAを精製した。濃度を測定した後、cDNA製造のため、mRNAを遺伝子型により均一にプールした。cDNAは、プールした全RNAのうち3μgから、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素(Superscript III(インビトロジェン社製、Carlsbad、CA))を用い、標準的な方法で準備した。50pgの全cDNAについて、Lgals1プライマー配列およびLgals3プライマー配列を有するSYBR Green Jumpstart(Sigma-Aldrich社製、St Louis、MO)を用いて定量的リアルタイムPCRを行い、各レベルをGapdhのレベルに正規化した。
【0240】
統計:正規化後に、野生型についての倍率変化(fold change)を、DDCt法を用いて計算し、転写物における平均倍率変化および(±s.e.m.)を算出した。一元および二元配置分散分析(ANOVA)をボンフェローニのポストテスト補正とともに利用し、グラフパッドプリズムを使用して統計上の有意性を測定した。
【0241】
ii.結果
定量的リアルタイムPCRを用いて、Lgals1 およびLgals3の転写における変化を測定した(図1A図1B)。4週齢および8週齢のジストロフィーマウスの両方において、同じ週齢の野生型マウスと比較して、Lgals3の転写物が有意に上昇していた。4週齢のマウスでは、野生型動物と比較して、ガレクチン−3の転写物が70.02倍上昇した。Lgals3転写物は、8週齢マウスで減少したが、野生型動物と比較して9.37倍とやはり有意に上昇していた(図1B)。これらの結果から、ラミニン−α2の低下によりガレクチン−3の転写物が増加したこと、およびジストロフィーマウスの加齢に伴い転写レベルが低下することが分かる。
【0242】
4週齢および8週齢のジストロフィーマウスにおいては、どちらも、同じ週齢の野生型動物と比較して、Lgals1転写物が有意に増加した。4週齢のマウスは、野生型動物に比べ、ガレクチン−1の転写物が9.19倍増加した。Lgals1転写物は8週齢マウスにおいて減少していたが、しかしながら、野生型動物と比較して、1.7倍と依然有意に増加した(図1A)。これらの結果から、ラミニン−α2の減少によりガレクチン−1の転写物が増加したこと、およびジストロフィーマウスの加齢に伴い転写レベルが低下することが分かる。
【0243】
ウェスタンブロット法では、同齢の野生型動物と比べ、4週齢または8週齢のdyW-/-動物のガレクチン−1タンパク質レベルにおいて有意差は見られなかった(図2Aおよび図2Bをそれぞれ参照)。4週齢または8週齢のdyW-/-動物同士を比較すると、この場合もガレクチン−1タンパク質との間に有意差はなかった(図2C)。
【0244】
ガレクチン−3タンパク質についてのウェスタンブロット法によれば、ガレクチン−3タンパク質が、同齢の野生型動物と比較して4週齢のdyW-/-動物において有意に増加し(図3Aおよび図3B)、および8週齢のdyW-/-動物において、同齢の野生型動物と比較して有意に増加したことがわかる。
【0245】
血清についてのウェスタンブロッティングでは、4週齢のdyW-/-マウスと同じ週齢の野生型マウスとの比較においてガレクチン−3タンパク質の有意差は見られなかった(図4A)。さらに、血清のウェスタンブロット法では、8週齢のdyW-/-マウスよりも、4週齢のdyW-/-マウスにおいてレクチン−3タンパク質が有意に増加した(図4B)。これらの結果から、血流中に放出されたガレクチン−3の量は、筋肉中に保持された量とは異なることがわかる。
【0246】
4週齢および8週齢のdyW-/-マウスおよび野生型マウスの前脛骨筋についても、ガレクチン−3についての免疫蛍光を完了させた。免疫蛍光によるパターンも、組織をウェスタンブロットした際と同様のものであることがわかった。4週齢のdyW-/-マウスでは、同齢の野生型マウスと比較して、ガレクチン−3のレベルが上昇していた。4週齢および8週齢のdyW-/-マウスにおいて、および8週齢のdyW-/-マウスと同齢の野生型動物との間では、ガレクチン−3レベルはほぼ同等のようであった。ガレクチン−3レベルは、野生型動物の加齢にともなって上昇するようであった(図5)。
【0247】
ガレクチン−1転写物はdyW-/-動物において有意に上昇するが、このことは、検出可能なガレクチン−1タンパク質の上昇を意味しない。これらの研究により、MDC1AのdyW-/-マウスモデルのためのバイオマーカーとして、ガレクチン−1は良好な候補とはなり得ないことを示す。それとは対照的に、ガレクチン−3は、dyW-/-マウスの転写レベルにおいて、かつ筋肉中のタンパク質レベルにおいて有意に上昇し、MDC1Aのバイオマーカーとしての利用を示す。
【0248】
(実施例2)
DMDについてのバイオマーカー
この例では、ガレクチン−1およびガレクチン−3の、DMDについてのバイオマーカーとしての使用について検討する。
【0249】
i.物質および方法
ウェスタンブロッティング:2週齢、5週齢および10週齢のオスの野生型動物またはmdx動物の腓腹筋を、液体窒素中で冷却した乳鉢と乳棒で粉砕した。RIPA緩衝液(50mMヘペスpH7.4、150mMNaCl、1mMNa3VO4、10mMNaF、0.5%TritonX-100、0.5%NP50、10%グリセロール、2mMPMSFおよび1:200希釈のプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII)中で、血清および筋組織の両方からタンパク質を抽出し、ブラッドフォード法(Bradford assay)(バイオ・ラッド社(Bio-Rad Laboratories Inc)、Herculues、CA)を用いて定量化した。タンパク質は、SDS−PAGEにより分離した。1:1000希釈の抗ガレクチン−1抗体(H00003956-D01Pアブノヴァ社、Walnut、CA)を用いてガレクチン−1を検出した。1:1000希釈した抗ガレクチン−3抗体(ab53082、アブカム社製)を用いてガレクチン−3を検出した。各ブロットを、一次抗体を用いて4℃で一晩かけて培養した。次に、1:5000希釈したヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Li-Corバイオサイエンス社製、Lincoln、NE)で各ブロットを1時間かけて培養した。各ブロットを、Odysseyイメージングシステムを用いて画像化し、同システムを用いて各帯域を定量化した。1:5000希釈α−チューブリン抗体(アブカム(AbCam)社製、ケンブリッジ、マサチューセッツ)を用い、続いてヤギ抗マウスIgG抗体(Li-Cor Biosciences社製、Lincoln、NE)を用いて、組織ブロットをα−チューブリンに正規化した。
【0250】
免疫蛍光:ライカ(Leica)CM1850クリオスタットを用いて5週齢および10週齢のオスの前脛骨(TA)筋の凍結切片(8mm)を切断し、あらかじめ清浄したサージパススライド上にマウントした。4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて切片を5分間固定し、PBSを用いて再水和した。PBS中の5%BSAにおいて各スライドをブロックし、続いて、1:500希釈したab53082(AbCam社製)を用いて1時間培養した。各スライドを、続いて、1:1000希釈したFITC共役抗ウサギIgG抗体を用いて1時間培養した。DAPIを混合したVectashieldを用いてスライドをマウントし、Axioskop 2 plus蛍光顕微鏡(ツァイス社)を用いて画像化した。Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)を用いて画像を取り込んだ。
【0251】
定量的リアルタイムPCR分析:Trizol(Invitrogen社製、Carlsbad、CA)試薬を用いて、5週齢および10週齢の野生型またはmdxの腓腹筋5つから全RNAを精製した。濃度を測定した後、cDNA製造のため、mRNAを遺伝子型により均一にプールした。cDNAは、プールした全RNAのうち3μgから、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素(SuperScriptIII)(インビトロジェン社製、Carlsbad、CA)を用い、標準的な方法で準備した。50pgの全cDNAについて、Lgals1プライマー配列およびLgals3プライマー配列を有するSYBR Green Jumpstart(Sigma-Aldrich社製、St Louis、MO)を用いて定量的リアルタイムPCRを行い、各レベルをGapdhのレベルに正規化した。
【0252】
統計:正規化後に、野生型についての倍率変化(fold change)を、DDCt法を用いて計算し、転写物における平均倍率変化および(±s.e.m.)を算出した。一元および二元配置分散分析(ANOVA)をボンフェローニのポストテスト補正とともに利用し、グラフパッドプリズムを使用して統計上の有意性を測定した。
【0253】
ii.結果
定量的リアルタイムPCRを用いて、Lgals1およびLgals3の転写における変化を測定した。5週齢および10週齢のジストロフィーマウスの両方において、同じ週齢の野生型マウスと比較して、Lgals3転写物が有意上昇していた。5週齢のマウスは、野生型動物と比較して、ガレクチン−3転写物が11.42倍上昇した一方、10週齢マウスでは、ガレクチン−3転写物が野生型動物と比較して67.20倍上昇した。Lgals3転写物のレベルも、5週齢mdxマウス(11.42倍の増加)から10週齢mdxマウス(67.20倍の増加)へと増加した。これらの結果から、ジストロフィンの低下により、ガレクチン−3転写物が増加し、ジストロフィーマウスの加齢に伴い転写レベルが増加することが分かる。
【0254】
10週齢のmdxマウスにおいてのみ、野生動物と比較してLgals1転写物のレベルが有意に増加した。野生動物と比較して、5週齢のマウスにおけるガレクチン−1転写物の増加は1.49倍であり、10週齢のジストロフィーマウスにおけるガレクチン−1転写物の増加は2.51倍であった。さらに、Lgals1転写物のレベルは、5週齢のmdxマウス(1.49倍の増加)から10週齢のマウス(2.51倍の増加)へと増加した(図6)。これらの結果から、ジストロフィンの低下によりガレクチン−1転写物が増加したこと、およびジストロフィーマウスの加齢に伴って転写レベルが増加したことがわかる。
【0255】
ウェスタンブロット法では、同齢の野生型動物と比べ、5週齢または10週齢のmdx動物の腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質レベルにおいて有意差は見られなかった(図7Aおよび図7Bをそれぞれ参照)。しかしながら、2週齢、5週齢、および10週齢のmdx動物同士を比較すると、ガレクチン−1タンパク質には有意差があった(図7C)。
【0256】
5週齢において、mdx動物の腓腹筋中のガレクチン−3タンパク質量は、野生型動物と比較して、有意に多かった(図8A)。さらに、5週齢および10週齢のmdx動物同士の間には、ガレクチン−3タンパク質のレベルに有意差があった(図8B)。
【0257】
5週齢および10週齢のmdxおよび野生型の血清についてウェスタンブロッティングを行った結果、組織ブロッティングと同様の結果が得られたが、ガレクチン−3タンパク質のレベルには有意差は見られなかった(図9Aおよび図9Bをそれぞれ参照)。しかしながら、ガレクチン−3タンパク質は、mdxマウスにおいて両方の週齢時点で増加傾向にあった。
【0258】
5週齢および10週齢のmdxマウスおよび野生型マウスの前脛骨(TA)筋についても、ガレクチン−3についての免疫蛍光を完了させた。免疫蛍光によるパターンも、ウェスタンブロッティングによるパターンと同様であることがわかった。5週齢および10週齢のmdxマウスの両方において、野生動物と比較して、ガレクチン−3のレベルが上昇していた。ガレクチン−3のレベルは、5週齢のmdxマウスと比較して10週齢のmdxマウスにおいて上昇しているようであった(図10)。
【0259】
これらの結果から、ガレクチン−1転写物はmdx動物において有意に上昇したが、それは検出可能なガレクチン−1タンパク質の増加を意味しないことがわかった。ウェスタンブロッティングでは、ガレクチン−1レベルについて、mdxと野生型マウスとの間に有意差はないが、5週齢と10週齢のmdxマウス間では有意差があることがわかった。バイオマーカーは、疾病の進行を追跡する必要があるだけでなく、疾病のない患者におけるレベルからの差別化されなくてはならない。上記の結果からは、ガレクチン−1レベルにおけるこれらの差異については明確になっておらず、DMDモデルのmdxマウス用のバイオマーカーとして良好な候補ではない。
【0260】
しかしながら、この分析においては、mdxマウスの転写レベルおよび筋肉中のタンパク質レベルにおいてガレクチン−3が有意に上昇した。ガレクチン−3は、DMDの顕著な特徴である線維症において見られる2つの細胞、すなわち、マクロファージおよび単球(モノサイト)によって分泌された。したがって、これらの研究は、ガレクチン−3のDMDのバイオマーカーとしての使用を裏付けるものである。
【0261】
DMDのGRMDモデル犬の筋肉中におけるガレクチン−3のレベルを評価して、さらなる研究が行われてきている。GRMDモデルは、進行性の致命的な筋疾患を発症し、DMDと同一の病態的疾患の特徴、例えば、筋機能の進行性消失、筋膜の脆弱化、心筋症、および早期死亡といった症状を呈してきた(Kornegayらによる「筋神経(Muscle Nerve)11」:1056〜1064頁、1988年;Cooperらによる「ネイチャー(Nature)334」:154〜156頁、1988年)。GRMDモデル犬は、一般に、DMDの治療法を試験するための前臨床モデルのゴールドスタンダードとして容認されている。
【0262】
ウェスタン解析法によれば、GRMD犬の外側広筋におけるガレクチン−3レベルは、コントロール犬と比べて高いことがわかった(図11)。免疫蛍光検査法によれば、ガレクチン−3は筋線維の周囲に存在し、罹患していない犬の血管と関連づけられていることがわかった。それとは非常に対照的に、ガレクチン−3の量は筋肉中で増加し、局在化は、微小血管に相当する平滑筋アクチン陽性領域と関連付けられた離散部位へと変化する。罹患していない犬では、ガレクチン−3は筋線維周囲に局在化し、そのような血管の内皮/平滑筋内において主要血管と関連付けられている。DRMD犬においてジストロフィンが消失した結果、ガレクチン−3のレベルが上昇し、骨格筋組織が顆粒状に染色される。DRMD犬においては、主要筋血管から微小血管へとガレクチン−3局在化の消失がおこり、ガレクチン−3と平滑筋アクチンとの共存は失われた。
【0263】
野生型およびmdxマウスにおけるガレクチン−3血清レベルを、ELISAにより測定した(表3)。野生型(WT)対照動物では、観察した全ての週齢において、ほとんど変動がなかった。mdx動物では、ジストロフィーの病状が最も一貫して認められた5週から10週までの間に平均血清レベルにおいて恒常的な増加がみられた。10週を過ぎると、これらの動物間において相違があった。5週齢のmdxマウスにおいて、運動は血清レベルに全く影響を及ぼさなかった。
【0264】
【表1】
【0265】
さらに、MDC1A患者におけるガレクチン−3血清レベルを測定し、同年齢の対照体と比較した(表4)。患者および対照体を、患者の血清レベルが対照体よりも有意に高い3歳以下から始まる年齢または性別に基づいて同年齢のカテゴリーに分けた。3歳以降は、女性と男性の両方とも、患者の血清レベルはわずかに低くなるようであった。患者の最終的なカテゴリーは、筋機能の欠如に基づくものであり、これらの患者の血清レベルは最も低かった。表5は、表4に示すMDC1A患者データをまとめたものである。
【0266】
【表2】
【0267】
【表3】
【0268】
dyw-/-マウスの筋肉中のガレクチン−3タンパク質は、4週付近をピークとし8週までには下降する鐘型曲線を有し、当該マウスは筋衰弱のため次第に活動的ではなくなっていった。同様のパターンが、コントロールと比較したMDC1A患者の血清においても見られた。3歳前では、コントロールと比較したガレクチン−3の平均血清レベルは2倍以上高かった(それぞれ、3.5ng/mLに対して〜7.5ng/mL)。しかしながら、3歳を過ぎると、各レベルは、同性のコントロールよりも低かった。このような低下が認められたことは、筋肉の著しい消失を示し、このことは、動作不可能かつ自立座位不可の2人の患者のガレクチン−3の血清レベルが非常に低かったという事実によって裏付けられる。これらの研究から、さらに、MDにおけるガレクチンの役割および、それを用いてMDの存在を示す方法がわかる。さらに、MDC1Aについては、ガレクチン−3血清レベルは3歳より前に病気の兆候(高いGal−3血清レベル)を成しており、潜在的に病態重症化(非常に低いGal−3血清レベル)の前兆となるものである。
【0269】
(実施例3)
MDC1Aについての付加的なバイオマーカー
本例においては、MDC1Aについて見込まれるバイオマーカーについて説明する。
【0270】
i.物質および方法
トランスジェニックα7インテグリンdyW-/-マウス。トランスジェニックα7インテグリンdyW-/-マウスは、骨格筋においてα7BX2インテグリンの過剰発現を呈したマウスとdyW+/-動物を交配して生成したものである。結果として生じた子犬は、ラミニンα2変異対立遺伝子について異型接合であり、α7BX2導入遺伝子に対して陽性であったが、これらをdyW+/-マウスに交配した。これらの交配で生まれたオスの子犬には、dyW+/+;itga7-(野生型)、dyW-/-;itga7-(dyW-/-)(ラミニン−α2欠損)およびdyW-/-;itga7+(α7BX2 インテグリンを過剰発現させるラミニン−α2欠損)マウスが含まれていた。全研究において、オスの同腹仔をコントロールとして使用した。ウィザードSVゲノム精製システム(Wizard SV Genomic DNA Purification System(Promega、Madison、WI))を用いて10日齢の子犬から採取した尾の生検試料からゲノムDNAを単離した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を先に説明したように用いて、ラミニン−α2対立遺伝子およびα7BX2導入遺伝子を検出した。
【0271】
骨格筋の単離。4週齢の野生型dyW-/- and dyW-/-;itga7+のオスのマウスを屠殺した。骨格筋を切断し、液体窒素冷却イソペンタン中で瞬間凍結した。組織を−80℃で保存した。
【0272】
ウェスタンブロット法:4週齢のオスのマウスの腓腹筋を、液体窒素中で冷却した乳鉢と乳棒で粉砕した。RIPA緩衝液(50mMヘペスpH7.4、150mMNaCl、1mMNa3VO4、10mMNaF、0.5%Triton X-100、0.5%NP50、10%グリセロール、2mMPMSFおよび1:200希釈したプロテアーゼインヒビターカクテルセットIII)中でタンパク質を抽出し、ブラッドフォード法(Bradford assay)(バイオ・ラッド社(Bio-Rad Laboratories Inc)、Herculues、CA)を用いて定量化した。タンパク質は、SDS−PAGEにより分離した。1:1000希釈した抗α7B抗体を用いて、α7インテグリンを一晩かけて検出した。1:1000希釈したCDB345抗体を用いてインテグリンα7Aを一晩かけて検出した。AB1920抗体(Chemicon社)を用いてインテグリンα3を定量化した。α1D−抗体を用いて一晩かけてα1Dインテグリンを視覚化した。全ての一次抗体を、1:5000希釈したヤギ抗ウサギ二次抗体(Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE)により1時間フォローした。1:1000希釈したH00003956-D01P(Abnova社、Walnut、CA)を用いてガレクチン−1を検出した。1:1000希釈したab53082(Abcam社、Cambridge、MA)を用いてガレクチン−3を検出した。1:5000希釈した抗αチューブリン(AbCam社、Cambridge、MA)抗体を用い、続いて1:5000希釈のヤギ抗マウス二次抗体を用いて、免疫ブロットを正規化した。Odysseyイメージングシステムで帯域強度を測定した。
【0273】
免疫蛍光:ライカ(Leica)CM1850クリオスタットを用いて4週齢のオスの前脛骨(TA)筋の凍結切片(8mm)を切断し、あらかじめ清浄したサージパススライド上にマウントした。4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて切片を2分間または5分間固定し、続いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて脱水した。PBS中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)中で、各スライドをブロックし、続いて、Sラミニン−α2Gまたはα1Dインテグリン抗体を用いて培養した。ガレクチン−1の検出には、H00003959−D01P(Abnova社製)抗体を用いた。ab53082(abcam社製)を用いてガレクチン−3を可視化した。抗体T3413(Sigma社製)を用いて、テネイシンCを検出した。ab37150およびab86482の各抗体(Abcam) をそれぞれ用いてMMP2およびTIMP1を検出した。適切な二次抗体 を用いて各スライドを培養したが、この二次抗体としては、テネイシンCにFITC−抗ネズミ二次抗体を用いた以外は、すべての場合にFITC−抗ウサギ抗体を用いた。スペクトリンの検出には、氷冷アセトン中でスライドを1分間固定し、続いて、M.O.M(商標)キットを用いて、パッケージの指示通り(FMK-2201 Vector Laboratories、inc. Burlingame、CA)に処理した。そして、1:100希釈のマウスモノクロナールスペクトリン抗体(Novo Castra NCL-spec2)を30分用い、その後、1:1000希釈のFITC抗マウス二次抗体を1時間用いた。DAPIを混合したVectashieldを用いて各スライドをマウントし、Axioskop2Plus蛍光顕微鏡(ツァイス社)を用いて画像化した。Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)を用いて画像を取り込んだ。
【0274】
炎症性細胞浸潤:4週齢のTA筋の凍結切片を4%PFA中で5分間固定し、続いて、PBSにより再水和した。1:1000希釈のFITCラット抗マウスCD11b抗体(BD Biosciences、San Jose、CA)で各スライドを1時間培養して、基組織中のマクロファージを検出した。各スライドを、PBSで洗浄し、DAPIを混合したVectashield を用いてマウントした。各遺伝子型の5匹のマウスからの筋断面を分析し、倍率400倍で20視野当たりのCD11b陽性細胞の数を数えた。Axioskop 2 Plus蛍光顕微鏡(ツァイス社)を用いて各スライドを観察し、Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)を用いて画像を取り込んだ。
【0275】
共焦点レーザー走査型顕微:各遺伝子型からの4週齢のオスのマウスから得たTA筋を切断し、免疫蛍光を施した。α7Bインテグリンを検出するため、各切断片を氷冷アセトン(−20℃)中で1分間固定し、続いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて再水和した。PBS中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)中で、各凍結切片を20分間ブロックした後、CDB347(マウスおよびラット両方のα7Bインテグリンの細胞質領域を識別するもの)またはα1DA2抗体で1時間培養した。そして、各スライドを1%BSAで洗浄し、FITC共役抗ウサギIgG抗体で1時間培養した。各スライドを再度1%BSAで洗浄した。筋線維の輪郭を描くため、ローダミン標識コムギ胚芽凝集素で各断片を30分間培養した。DAPIを混合したVectashieldを用いて各スライドをマウントした。オリンパス・フロービュー(Fluoview)(商標)共焦点走査型システムを用いて画像を取り込んだ。
【0276】
生存および体重増加分析:オスのマウスを加齢させて、体重減少および痛み、苦痛、または不具合の様子がないか毎日監視した。また、1週間当たりの体重低下が10%を超えるのは末期的な症状と考えられており、動物は人道的に安楽死させた。各遺伝子型の動物の体重を、3週齢、8週齢、12週齢にて比較した。
【0277】
握力および活性測定:4週齢および8週齢のオスの野生型、dyW-/-およびdyW-/-;itga7+マウスの前肢握力を、SDI握力システムおよびChatillon DFE Digital Force Gauge(San Diego Instruments、Inc.、San Diego、CA)を用い、標準的なプロトコル通りに測定した。各マウスに対し5回連続で検査を行い、各マウスの遺伝子型ごとにデータを平均化した。可動性を分析するため、4週齢および8週齢のオスの野生型、dyW-/-、およびdyW-/-;itga7+ マウスを1匹ずつ清潔なケージに入れ、5分間監視した。ケージ内を動きまわったり、立ち上がったり、地面を掘ったりする動きの期間を活動時間とした。さらに、この間にマウスが立ち上がった回数を記録した。立ち上がり検査は、身体的に立ち上がることの可能な動物についてのみ行った。一部のマウスは、その末梢神経障害のため、これらの被験体から除外した。
【0278】
ヘマトキシリンおよびエオジン染色:4週齢のTA筋および横隔膜筋の凍結切片をヘマトキシリンおよびエオジンを用いて染色し、それを用いて、中心に核のある筋線維の割合をAxioskop 2 plus 蛍光望遠鏡(ツァイス社)を使って測定した。一動物につき1000以上の線維(1群あたりの動物の数は5)を数え、中心に核のある筋線維の割合を計算した。Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)で画像を取り込んだ。
【0279】
筋線維面積測定:週齢のTA筋および横隔膜筋の凍結切片を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で5分間固定し、PBS中で再水和した。Oregon Green-488 conjugated WGA(Molecular Bioprobes、Eugene、OR)2μg/mlで30分間、筋線維の輪郭を描いた。断片をPBSで15分間洗浄し、Vectashield内にマウントした。1群あたりの動物の数は5であり、一動物あたり1000以上の線維を、TA筋について分析した。横隔膜筋については、1遺伝子型あたるりの動物の数は5であり、一動物当たり500以上の線維を用いた。Axioskop 2 Plus蛍光顕微鏡(ツァイス社)を用いて筋線維の断面積を測定し、Axiovision 4.1ソフトウェアを有するAxioCam HRcデジタルカメラ(ツァイス社)で各画像をで取り込んだ。
【0280】
定量的リアルタイムPCR分析:Trizol(Invitrogen社製、Carlsbad、CA)試薬を用いて、4週齢の野生型、dyW-/-、およびdyW-/-;itga7+の5つの腓腹筋から全RNAを精製した。濃度を測定した後、cDNA製造のため、mRNAを遺伝子型により均一にプールした。cDNAは、プールした全RNAのうち4μgから、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素(Superscript III(インビトロジェン社製、Carlsbad、CA))を用い、標準的な方法で準備した。50pgの全cDNAについて、プライマー配列を有するSYBR Green Jumpstart(Sigma-Aldrich社製、St Louis、MO)を用いて、表2に挙げたマウス細胞外マトリックス遺伝子について定量的リアルタイムPCRを行い、各レベルをGapdhに正規化した。野生型についての倍率変化(fold change)を、正規化後にDDCt法を用いて計算し、転写物における平均倍率変化および標本平均の標準誤差を算出した。
【0281】
統計:データを平均+/-標準偏差として報告する。一元配置分散分析(ANOVA)を用いて各群間で動物を比較した。カプラン・マイヤーログランク検定を用いて、寿命の変化の有意性を測定した。SAS中のGLIMMIX統合型統計解析プログラムパッケージ(statistical analysis package)を用いて筋線維の断面積を分析した。p値が0.05より大きい場合に有意であるとみなした。
【0282】
ii.結果
トランスジェニックα7 インテグリンの発現により、ラミニン-α2欠損マウスにおける細胞外マトリックスの組成が変化する。
筋細胞外マトリックス中のラミニン−211/221の欠損は、MDC1Aにおける筋疾患の根本的な原因である。α7インテグリンは筋中における主要ラミニン受容体であるため、我々は次に、増加したα7β1インテグリンが、ラミニン−211/221配位子の不存在下において、dyW-/-マウスを救済したメカニズムを特定した。4週齢の野生型、dyW-/-、およびdyW-/-;itga7+マウスの腓腹筋の細胞外マトリックスタンパク質を符号化している遺伝子の発現プロファイルを、QRT−PCRを用いて調査した。QRT−PCRにより、dyW-/-マウスは、野生型と比較して、トロンボスポンジンモチーフ5(Adamts5)を有するジスインテグリンおよびメタロプロテアーゼ、アグリン(Agn)、コラーゲン6A1(Col6A1)、ガレクチン−1(Lgals1)、ガレクチン−3(Lgals3)、マトリックスメタロプロテアーゼ2(Mmp2)、インテグリンα3(Itga3)、インテグリンα6(Itga6)、インテグリンα7(Itga7)、ラミニン−α4(Lama4)、ラミニン−α5(Lama5)、ニドゲン(Nid1)、テネイシンC(TnC)、組織メタロプロテアーゼインヒビター1(Timp1)、および組織メタロプロテアーゼインヒビター2(Timp2)転写物のレベルの増加を呈したことがわかった(表6)。
【0283】
【表4】
【0284】
dyW-/-;itga7+マウスにおけるα7インテグリンのトランスジェニック(導入遺伝子)発現の結果、アグリンおよびMmp2転写物のレベルが、dyW-/-マウスと比べて低下した(表1)。dyW-/-;itga7+マウスにおけるα7インテグリンのトランスジェニック(導入遺伝子)発現の結果、Col6A1、Lgals1、Lgals3、Itga3、Itga6、Itga7、Tnc、およびTimp1についての転写物が、dyW-/-マウスと比較して増加した(表1)。
【0285】
次に、α7インテグリンのトランスジェニック(導入遺伝子)発現が、ラミニン−α2の無いマウスの筋肉におけるガレクチン−1および−3の発現を変化させたかを判別した。野生型マウスと比較して、ガレクチン−1転写物はdyW-/-菌において9.2倍増加し、dyW-/-;itga7+動物において12.1倍増加した(表1)。ガレクチン−1転写物のこの様な増加は、dyW-/-;itga7+動物においてガレクチン−1タンパク質が、野生型と比べ1.8倍増加することと相関していた。これらの結果は、dyW-/-;itga7+動物の腓腹筋におけるガレクチン−1タンパク質の増加を示す。
【0286】
4週齢のdyW-/-およびdyW-/-;itga7+筋におけるガレクチン−3転写物は、野生型と比べ、それぞれ70倍および80倍増加した。このガレクチン−3転写物の増加により、野生型と比較して、dyW-/-マウスにおけるガレクチン−3タンパク質が2倍増加し、dyW-/-;itga7+ 動物におけるガレクチン−3タンパク質が7倍増加した。これらの結果は、ラミニン−α2が欠損した結果、dyW-/-マウスの筋細胞外マトリックス中のガレクチン−3が増加し、α7インテグリンのトランスジェニック(導入遺伝子)発現により、ラミニン−α2欠損筋肉中のガレクチン−3のレベルがさらに向上したことを示す。
【0287】
テネイシンCは、通常、筋腱接合部(myotendinous junctions)に局在するものであり、ラミニン−α2欠損筋の接合部外部の部位において濃縮(enriched)することがわかっており、接合部外部の部位は筋再生の領域と相関する。QRT−PCRを用いて、α7インテグリンのトランスジェニックの過剰発現が、dyW-/-マウスの筋中のテネイシンCのα7インテグリンの増加を引き起こしたかどうかを調査した。QRT−PCRにより、野生型と比較して、dyW-/-マウスの腓腹筋におけるテネイシンC転写物が28倍増加したこと、およびdyW-/-;itga7+ 腓腹筋におけるテネイシンC転写物が49倍増加したことを確認した。これらの結果は、α7インテグリンのトランスジェニック発現により、ラミニン−α2のない筋肉におけるテネイシンC転写物が増加したことを示す。
【0288】
免疫蛍光を用いて、いくつかのタンパク質についてのqRT−PCRおよびイムノブロットを確認した。免疫蛍光は、また、細胞外ガレクチン−1、ガレクチン−3の増加および、ガレクチン−3を有する細胞外マトリックス中のテネイシンCの増加を実証し、テネイシンCはdyW-/-;itga7+マウスにおいて、野生型と比べてより優勢であることを示した。免疫染色により、dyW-/-;itga7+マウスの細胞外マトリックスにおいて、dyW-/-マウスと比べ、MMP2が減少およびTIMP1が増加したことを実証された。これらの結果から、α7インテグリンの過剰発現が、dyW-/-;itga7+動物における既存の細胞外マトリックスの拡大および安定化の両方につながることがわかる。
【0289】
α7インテグリンのトランスジェニック(遺伝子導入)発現は、dyWマウスの横隔膜における筋疾患の進行を防止する。
MDC1A患者は、重度の横隔膜筋異常の結果、重度の拘束性呼吸器症候群を呈し、呼吸に人工呼吸器の助けを必要とする。筋線維面積の組織学的分析および測定値を用いて、α7インテグリンのトランスジェニック(遺伝子誘導)発現により、重度の横隔膜筋異常の発症が防止されたかを調べた。H&Eによる研究により、4週齢のdyW-/-横隔膜筋におけるα7インテグリンのトランスジェニック発現の結果、単核性細胞の浸透、発育不全筋線維、中心にある核および線維形成が減少した。
【0290】
筋線維の断面積の分析によって、組織学的研究において観察された筋病理の改善が確認された。野生型と比較して、筋線維断面積のピークは、3.5〜4.5μmの間であり、dyW-/-筋には多数の発育不全筋線維が見られ、筋線維面積のピークはわずか2μmであった。これとは対照的に、dyW-/-;itga7+横隔膜筋線維の筋線維面積は3.5〜5μmの間であり、野生型により類似の曲線を呈した。筋線維面積の最大周波数において(At the maximum frequency)は、全3つの群は互いに大きく異なっていた。これらの結果から、α7インテグリンのトランスジェニック(遺伝子誘導)発現が、ラミニン−α2のないマウスの横隔膜における筋疾患の進行を防ぐことがわかった。本例において説明した研究は、「DoeらによるJ. Cell Science: 124:2287頁〜2297頁、2011年」に詳述されているが、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0291】
(実施例4)
ガレクチン−1治療による、mdxマウスにおける筋損傷の減少
本例では、ガレクチン−1によるmdxマウスの筋修復向上を説明する。
【0292】
組み換えのガレクチン−1の生成には、全マウス筋mRNAから単離した、PCR増幅LGALS1cDNAをpET23bベクターにクローニングした。ロゼッタ大腸菌(Rosetta E. coli)細胞を、pET23b-LGALS1ベクターで、標準的な手法を用いて転換した。組み換えガレクチン−1を単離し、2012年8月10日にGENBANK(登録商標)より提供されたGENBANK(登録商標) 寄託番号. NP_032521.1に相当する配列を有することを確認したが、アミノ酸位置10における1アミノ酸置換は例外であり、ロイシン(L)がグルタミン(Q)に置換されていた。誘導細胞ライセートをタロン・アフィニティーカラム(Talon affinity column)にロードすることにより、誘導細胞ライセートを組み換えガレクチン−1を清浄した。そして、BCAタンパク質分析、ウェスタンブロット法、およびクーマシーブルー染色を用いることにより、ガレクチン−1分画の純度を測定した(図12参照)。
【0293】
mdxマウスにおける筋損傷に対するガレクチン−1治療の効果を測定するため、マウスTA筋への筋肉内注射により、mdxマウスに組み換えガレクチン−1を100μl(13μM)注射した。TA筋の断面をヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)を用いて染色した。ガレクチン1を注射したmdxTAでは、CLNを有する筋線維の割合が減少している(図13)ことが示すように、PBSを注射したものよりも筋損傷が減少していることがわかった。図14は、ガレクチン−1治療によりα7インテグリンが増加することを示す。これらの研究により、ガレクチン−1/3タンパク質療法は有用なものとなりうることがわかる。MD−ガレクチン−1はアルファ7インテグリンを増加させ、筋細胞付着用の付加的な細胞外マトリックス(ECM)を提供するからである。
【0294】
(実施例5)
ガレクチン−1治療による、筋力および/または骨密度の増加/維持
本例では、ガレクチン−1治療を利用して、筋力および/または骨密度を増加および/または維持できることを説明する。
【0295】
i.物質および方法
組み換えガレクチン−1生成。標準的な逆転写酵素(インビトロジェン(Invitrogen)社製Superscript III)、マウス筋全RNA(インビトロジェン(Invitrogen)社製Trizol)からマウスガレクチン−1cDNAを生成し、その後、Platinum Taq Supermix(インビトロジェン(Invitrogen)社製)を用いてPCRを行った。そして、このPCR産物をpGEM T-Easy ベクターにサブクローニングし、シークエンスしてNCBIデータベースシークエンスと比較し、最終的に、6x Hisタグを有するインフレームでpet23bベクター(EMDミリポア)にクローニングした。 このベクターを、ロゼッタ大腸菌(Rosetta e.coli)(EMDミリポア)にトランスフェクトし、成長させて、0.4mMIPTG(インビトロジェン(Invitrogen))でガレクチン−1の発現を誘導した。そして、petベクターハンドブックに記載されているようにニッケルTalon(クロンテック(Clontech)社製)カラムおよびイミダゾール(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))溶出緩衝液を用いてガレクチン−1を清浄した。清浄したガレクチン−1を、続いて、PBS中に透析し、種々の研究に用いた。
【0296】
細胞培養:C2C12筋芽細胞および筋管を、先に説明したように成長させた(Rooney PNAS 2009年)。記載したように、a7βgal+/-筋芽細胞は、記載の通り最初から単離して維持された(Rooney PNAS 2009年)。簡潔にいえば、フェノールレッド不含DMEM(GIBCO、Grand Island、NY)、20%FBS(Atlanta Biologicals、Lawrenceville、GA)、0.5%ニワトリ胚抽出液(CEE、Seralab、West Sussex、UK)、1%L−グルタミン(GIBCO、Grand Island、NY)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)(GIBCO、Grand Island、NY)中で筋芽細胞を成長させて維持した。全ての筋芽細胞は、分析に使用するまで70%未満のコンフルエンスに維持した。フェノールレッド不含DMEM(GIBCO、Grand Island、NY)、1%ウマ血清、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)+L−グルタミン中で筋芽細胞を筋管に分化させた。TC培養器内で、全細胞を5%COで37℃に維持した。
【0297】
筋芽細胞α7インテグリン薬剤増強分析:100μLの成長培地中で、全部で5000個のα7βgal+/−筋芽細胞を、12連マルチピペットを使用して、Nunc製黒側面96ウェルプレート上に分配した。24時間後、濃度の異なる組み換えガレクチン−1を処理ウェルに追加し、同僚のPBSを比較のためのネガティブコントロールとして加えた。48時間培養した後、培地を吸引し、各細胞を1ウェル当たり50μLの哺乳類細胞用タンパク質抽出試薬で溶解した後、RTにて10分間培養した。50μLのFDG溶液(20%0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH7.0(Sigma)、0.2%1MmgCl2(Sigma)、0.2%20mMフルオロセインジガラクトシド(FDG)(Marker Gene Technologies)、および79.6%dHO)を加えてRTにて暗所で20分間培養することにより、各ウェル中のβ−ガラクトシダーゼ(βgal)レベルを測定した。その後、100μL/ウェルの反応停止液(2xTE)を加え、485nmの励起フィルター、535nmの発光フィルター、0.1秒/ウェルのカウント時間でVictor V(Perkin-Elmer)上で各プレートを読み取り、その蛍光について調べた。
【0298】
C2C12筋芽細胞のガレクチン治療:C2C12筋芽細胞を、様々な量の組み換えガレクチン−1で48時間処理し、PBSで洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテルを混合した1xRIPA中(ウェスタンブロッティングの場合)、またはTrizol(Invitrogen)中(定量的リアルタイムPCRの場合)のどちらかで溶解した。
【0299】
筋肉内(IM)前脛骨筋(TA)治療:20ng〜150μgの間の量のガレクチン−1を、マウスの左TA筋にIM注射により送達し、同量のPBSを右側に送達した。マウスを48時間後に屠殺し、その他の研究用にTA筋を取り出した。
【0300】
腹腔内(IP)ガレクチン−1治療:マウスの治療は10日齢から始め、1週間毎または2週間毎のどちらかで、5mg/kgまたは20mg/kgの組み換えガレクチン−1および対等量のPBSを対照として用いて行った。全ての治療は耐容性良好であり、筋肉および骨に対する副作用はなく肯定的な結果が得られた。マウスの握力は、前述したようにテンソメータ(Rooney、PNAS 2009年、参照によりその全体を本明細書に援用する)を用いて測定した。
【0301】
ウェスタンブロッティング:筋芽細胞またはマウスの腓腹筋組織からの抽出物のタンパク濃度(RIPA+プロテアーゼ阻害剤中で抽出したタンパク質)をBCA(Pierce)により分析し、同一濃度でSDS−PAGEゲルにロードし、標準的な条件下で泳動させた。その後、プロテインをニトロセルロースに移動させ、ウサギポリクロナールまたはマウスモノクロナール抗体を用いて、α7aインテグリン、α7Bインテグリン、ガレクチン−1(AbNova H00003956-D01P)、β1Dインテグリン、α−ジストログリカン、β−ジストログリカンH−242(sc-28535)、β-サルコグリカンH−98(sc-28279)、γ−サルコグリカンZ−24(sc-133984)、δ−サルコグリカンH−55(sc-28281)、ε−サルコグリカンH−67(sc-28282、sc抗体は全てSantaCruz Biotechnology社製)、およびサルコスパンについて検査した。
【0302】
定量的リアルタイムPCR(qRTPCR):マウスの粉末状TA筋または筋芽細胞からの全RNAを、Trizol(Invitrogen、Grand Island、NY)を用いて単離し、続いてDNase処理(Promega、Madison、WI)し、ランダムヘキサマー(IDTDNA)および逆転写酵素(Superscript)III(Invitrogen、Grand Island、NY)で、標準的な方法を用いてcDNAを作成した。ROXマスターミックスを有するQuanta Perfecta SYBR-Greenを用いて定量的リアルタイムPCRを実施し、先に説明した通りに得移動させて分析を行った(Doeらによる「J. Cell Science」124: 2287〜2297頁、2011年)。ITGA7、ITGB1、およびLGALS1に対するプライマーはDoeら(同上)により記載されていた。
【0303】
凍結切片および組織学:ライカ(Leica)のクリオスタット(Cryostat)を用いて、マウスからTA筋の10−μm断片を得た。標準的な方法を用いてヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色を行い、オリンパス・フロービュー(Fluoview)FV1000共焦点レーザー顕微鏡を用いて各画像を取り込んだ。標準的な方法を用いて、中心核の計数および最小フェレット径の計測を行った。
【0304】
マウスのデジタルラジオグラフィ:Sound-eklin tru/デジタルラジオグラフィマシンを用いて、5週齢および10週齢のmdxマウスにデジタルラジオグラフィを行った。大腿骨、下顎、および脛骨の長さの計測には、Sound-eklin eSeriesソフトウェアおよびImage Jの両方を使用し、放射線写真から直線/曲線の長さをそのまま測定した。頸部における脊椎の基部から寛骨の始まりまで線を引くことにより脊柱弯曲(脊椎後弯)を分析した。そして、脊椎の曲線の頂点から垂直線をひき、この線の長さを用いて脊椎後弯を測定した。
【0305】
統計的分析。全ての統計的分析は、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)5ソフトウェアを用いて行った。平均化したデータを、平均±標本平均の標準誤差(s.e.m.)として報告する。2群間の比較は、スチューデントのt検定を用いて行い、複数の群間の比較は、ノンパラメトリックデータのランクについてクラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis one-way ANOVA)を行った。P<0.05の場合に統計学的に有意であるとみなした。
【0306】
ii.結果
図15A図15Dから、筋芽細胞および筋管をガレクチン−1治療した結果、α7およびβ1インテグリンのレベルが、転写物およびタンパク質レベルの両方において上昇したことがわかる。図16A図16Dから、mdxマウスの前脛骨(TA)筋に組み換えガレクチン−1を筋肉内(IM)注射したことにより、筋損傷および中心核(CLN)の組織学的所見から判定された再生の必要性が減少したことがわかる。mdxマウスのガレクチン−1治療により、ジストロフィンがない場合には通常失われる筋細胞膜を安定させるジストログリカン複合体(DGC)群のタンパク質レベルが上昇することもわかった(図17A図17J参照)。mdxマウスのガレクチン−1治療により、α7β1インテグリン複合物群およびLGALS1の転写レベルが上昇した(図18A図18C参照)。図19A図19Dは、mdxマウスのガレクチン−1治療により、相対強度が増加し、疲労が軽減し、および筋肉の組織学的な線維の太さが正規化したことを示すグラフである。mdxマウスのガレクチン−1治療により、筋力が増加し、10週齢のマウスの脊椎後弯が防止された(図20)。さらに、mdxマウスのガレクチン−1治療により、発育中の骨成長が増加した(図21A図21F参照)。これらの研究から、ガレクチン−1の治療活性、特に、ガレクチン−1により筋強度、骨成長が増加し、筋損傷が減少し、筋疲労が減少することが明確に立証された。
【0307】
本開示の発明の原理を適用することのできる幾多の可能性のある実施形態に照らして、記載した各実施形態は好適な例に過ぎないことが認識されるべきであり、本発明の範囲を限定するものであるととらえられるべきではない。むしろ、本発明の範囲は添付の請求の範囲により定義される。よって、我々は、これらの請求の範囲の範疇にある全てのものを我々の発明として請求する。
図1
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