(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物および式(1)または(1a)の化合物を含む層は、発光層、電子輸送もしくは電子注入層または正孔ブロック層であることを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
式(1)または(1a)の化合物に対して−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物の比は、10:90〜90:10であることを特徴とする、請求項1または2記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物が、−2.5eV以下のLUMOを有することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)または(1a)の化合物が、燐光化合物と一緒に発光層で用いられること、および燐光化合物がイリジウム、白金または銅を含むことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の有機エレクトロルミッセンス素子。
少なくとも一つの層が昇華法により適用されることおよび/または少なくとも一つの層がOPD法(有機気相堆積)またはキャリアーガス昇華法により適用されることおよび/または少なくとも一つの層が溶液から、スピンコーティングによりまたは印刷法により適用されることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の有機エレクトロルミッセンス素子の製造方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として、少なくとも二種の電子伝導材料を含む有機エレクトロルミッセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能的材料として用いられる有機エレクトロルミネッセント素子(OLED)の構造は、たとえばUS4539507、US5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで用いられる発光材料は、次第に、蛍光ではなく燐光を呈する有機金属錯体に代わってきている(M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4−6)。量子力学的理由により、4倍までのエネルギーおよびパワー効率が、燐光発光エミッターとして有機金属化合物を使用して可能である。概して、OLEDの場合、特に、三重項発光(燐光発光)を示すOLEDの場合において、たとえば、効率、駆動電圧および寿命に関して、改善に対する必要性が未だ存在する。これは、特に、比較的短波長領域、たとえば、緑色で発光するOLEDにあてはまる。
【0003】
燐光OLEDの特性は、用いられる三重項エミッターによってのみ決定されるのではない。ここで、特に、マトリックス材料に使用されるその他の材料も、また、特に重要である。このように、これら材料の場合における改善が、OLED特性での顕著な改善をもたらすこともできる。
【0004】
先行技術にしたがうと、単一材料だけではなく二種以上の材料の混合物が、燐光エミッターのためのマトリックスとして使用される。ここで、混合物は、一般的に、たとえば、WO 2002/047457に記載されるとおりの正孔輸送マトリックス材料と電子輸送マトリックス材料の何れかであるか、広いバンドギャップに基づいて、電荷輸送に関与しないか、たとえば、WO 2010/108579に記載されるとおり顕著でない程度にそうである電荷輸送マトリックス材料とさらなるマトリックス材料を含むかの何れかである。
【0005】
燐光エミッターのためのマトリックス材料として用いることができるさらなるクラスの材料に加えて、ラクタムが、また、たとえば、WO 2011/116865もしくはWO 2011/137951にしたがって、マトリックス材料として知られている。
【0006】
しかしながら、上記言及した材料と素子構造について、特に、効率と駆動電圧に関して、改善が未だ望まれる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、改善された寿命および/または改善された駆動電圧を有する有機エレクトロルミッセンス素子を提供することである。
【0008】
驚くべきことに、層中に、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として、ある種のラクタム誘導体とさらなる電子輸送材料との混合物を含む有機エレクトロルミッセンス素子が、この目的を達成し、有機エレクトロルミネッセンス素子における顕著な改善、特に、寿命と駆動電圧に関する改善をもたらすことが見出された。これは、特に、緑色〜赤色燐光エレクトロルミネッセンス素子にあてはまる。したがって、本発明は、このタイプの有機エレクトロルミッセンス素子に関する。
【0009】
したがって、本発明は、カソード、アノードと次の化合物を含む少なくとも一つの層を含む有機エレクトロルミッセンス素子に関し、
a)−2.4eV以下のLUMOを有する少なくとも一つの電子輸送化合物、および
b)少なくとも一つの次の式(1)または(1a)の化合物であって、
【化1】
【0010】
式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Eは、単結合またはNAr
4であり;
Yは、Ar
1が、6員アリール環基もしくは6員ヘテロアリール環基の場合は、Cであるか、またはAr
1が、5員ヘテロアリール環の場合は、CもしくはNであり;
Ar
1は、基Yと明確に描かれた炭素原子と一緒になって、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Ar
2、Ar
3は、出現毎に同一であるか異なり、基Yと明確に描かれた炭素原子と一緒になって、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Ar
4は、1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、Ar
4は、単結合により、Ar
2またはAr
1と結合してもよく;
Lは、n=2に対して単結合もしくは二価基であるか、またはn=3に対して三価基であるか、またはn=4に対して四価基であり、それぞれ、任意の所望の位置で、Ar
1、Ar
2、Ar
3またはAr
4に結合しており;
Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、N(Ar
5)
2、N(R
1)
2、C(=O)Ar
5、C(=O)R
1、P(=O)(Ar
5)
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、R
1C=CR
1、C≡C、Si(R
1)
2、Ge(R
1)
2、Sn(R
1)
2、C=O、C=S、C=Se、C=NR
1、P(=O)(R
1)、SO、SO
2、NR
1、O、SもしくはCONR
1で置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO
2で置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜80個の、好ましくは、5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
1により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、これらの構造の組み合わせから選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、1以上の基R
1により置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
R
1は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO
2、N(Ar
5)
2、N(R
2)
2、C(=O)Ar
5、C(=O)R
2、P(=O)(Ar
5)
2、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜40個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基R
2により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、Ge(R
2)
2、Sn(R
2)
2、C=O、C=S、C=Se、C=NR
2、P(=O)(R
2)、SO、SO
2、NR
2、O、SもしくはCONR
2で置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO
2で置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
2により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
2により置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、これらの構造の組み合わせから選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、1以上の基R
2により置換されてよい単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を随意に形成してよく;
Ar
5は、出現毎に同一であるか異なり、1以上の非芳香族基R
2により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、同じN原子もしくはP原子に結合する2個の基Ar
5は、単結合または、N(R
2)、C(R
2)もしくはOから選ばれるブリッジにより互いにブリッジされてよく、
R
2は、H、D、F、CN、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IもしくはCNで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基R
2は、単環式あるいは多環式の脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、を互いに形成してもよく;
nは、2、3または4である。
【0011】
Yの定義における6員アリール環基もしくは6員ヘテロアリール環基もしくは5員ヘテロアリール環基は、明確に描かれた炭素原子と基Yを含む環が、このタイプの環であることを意味する。さらに、芳香族もしくは複素環式芳香族が、この環に縮合してもよい。
【0012】
アリール基は、本発明の意味では、6〜60個のC原子を含有し、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、2〜60個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、簡単な芳香族環、すなわち、ベンゼン、または簡単な複素環式芳香族環、たとえば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合(縮合環化)アリールもしくはヘテロアリール基、たとえば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかの意味で使用される。たとえば、ビフェニル等の単結合により互いに結合した芳香族環は、逆に、アリールもしくはヘテロアリール基ではなく、芳香族環構造と称される。
【0013】
芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に6〜80個のC原子を含有する。複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、環構造中に2〜60個のC原子および少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、ただしC原子およびヘテロ原子の合計は、少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくはN、Oおよび/またはSから選択される。芳香族または複素環式芳香族環構造は、本発明の意味では、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基だけを含有するとは限らない構造であって、複数のアリールまたはヘテロアリール基が、非芳香族単位、たとえばC、NもしくはO原子などによって連結されていてもよい構造の意味で使用されることを意図する。したがって、たとえば9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の構造は、2つ以上のアリール基が、たとえば短いアルキル基によって中断されている構造と同様に、本発明の意味ではやはり芳香族環構造の意味で使用されることを意図する。
【0014】
本発明の目的では、1〜40個のC原子を含んでよく、さらに個々のH原子またはCH
2基が、前述の基により置換されていてもよいアルキル基もしくはアルケニル基もしくはアルキニル基は、好ましくは、基メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルの意味で使用される。1〜40個のC原子を有するアルコキシ基は、特に、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシの意味で使用される。1〜40個のC原子を有するチオアルキル基は、特に、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオの意味で使用される。一般に、本発明のアルキル、アルコキシまたはチオアルキル基は直鎖状、分枝または環状であってよく、1以上の隣接していないCH
2基は上記基によって置きかえられていてもよく、さらに、1以上のH原子もD、F、Cl、Br、I、CNまたはNO
2、好ましくはF、ClまたはCN、さらに好ましくはFまたはCN、特に好ましくはCNによって置きかえられていてもよい。
【0015】
各場合において、前述の基R、R
1またはR
2により置換されていてもよい、5〜30もしくは5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族または複素環式芳香族環構造は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-またはtrans-インデノフルオレン、cis-またはtrans-インデノカルバゾール、cis-またはtrans-インドロカルバゾール、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールまたはこれら構造の組み合わせから得られる基の意味で使用される。
【0016】
本発明の意味での電子輸送化合物は、本発明の有機エレクトロルミッセンス素子に存在し、−2.4eV以下のLUMOを有する化合物である。ここで、LUMOは、最低空分子軌道である、化合物のLUMOの値は、以下の例部分で一般的な用語で説明されるとおりに、量子化学計算により決定される。
【0017】
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物および式(1)または(1a)の化合物を含む層は、特に、発光層、電子輸送もしくは電子注入層または正孔ブロック層、好ましくは、発光層、電子輸送もしくは電子注入層であり、特に、好ましくは、発光層である。発光層の場合には、これは、そこで、好ましくは、−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物および式(1)または(1a)の化合物に加えて、燐光化合物を含むことを特徴とする燐光層である。この場合、−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物および式(1)または(1a)の化合物は、燐光化合物のためのマトリックス材料であり、すなわち、それらは、自身では発光には関与しないか、またはせず、顕著でない程度でだけ関与する。
【0018】
本発明の意味での燐光発光化合物は、比較的高いスピン多重度を有する、すなわち、スピン状態>1の励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスを呈する化合物である。本出願の目的のために、遷移金属もしくはランンタノイドを含むすべてのルミネッセンス錯体、特に、すべてのルミネッセンスイリジウム、白金および銅錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0019】
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)または(1a)の化合物の好ましい比は、材料の正確な構造と正確な用途に依存する。一般的に、好ましくは、式(1)または(1a)の化合物に対する−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物の好ましい比は、10:90〜90:10、好ましくは、20:80〜80:20、特に、好ましくは、30:70〜70:30および、非常に、特に、好ましくは、40:60〜60:40である。ここで、比は、気相堆積法により製造されるならば、通常体積を基礎とし、溶液から製造されるならば、重量を基礎とする。最良の比は、各場合に材料と独立して示すことはできないが、発明性を要することなく、当業者が通常の実験により決定することができる。これは、混合物が発光層で燐光化合物のためのマトリックス材料として用いられる場合にも、また、混合物が電子輸送層中で電子輸送材料として用いられる場合の両方にあてはまる。
【0020】
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)または(1a)の化合物が、燐光化合物のためのマトリックス材料として用いられる場合には、その三重項エネルギーは、燐光エミッターの三重項エネルギーよりも顕著に低くないことが好ましい。
【0021】
三重項準位T
1(エミッター)−T
1(マトリックス)は、好ましくは、−0.2eV以下、特に、好ましくは、−0.15eV以下、非常に、特に、好ましくは、−0.1eV以下である。ここで、T
1(マトリックス)は、発光層でのマトリックス材料の三重項準位であり、ここで、この条件は、二種のマトリックスのそれぞれにあてはまり、T
1(エミッター)は、燐光エミッターの三重項準位である。発光層が、二種以上のマトリックス材料を含むならば、上記関係は、また、好ましくは、さらなる材料にそれぞれ適用される。
【0022】
燐光化合物とマトリックス材料すなわち、2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)または(1a)の化合物の混合物は、発光層中で、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、合計99〜1体積%、好ましくは、98〜10体積%、特に、好ましくは、97〜60体積%、特に、95〜80体積%のマトリックス材料を含む。対応して、混合物は、発光層中で、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、合計1〜99体積%、好ましくは、2〜90体積%、特に、好ましくは、3〜40体積%、特に、5〜20体積%のエミッターを含む。
【0023】
式(1)または(1a)の化合物の好ましい態様が、以下に説明される。
【0024】
本発明の好ましい1態様では、基Ar
1は、次の式(2)、(3)、(4)、(5)または(6)の基であり、
【化2】
【0025】
式中、破線の結合はカルボニル基への結合を示し、*は、Eへの結合位置を示し、およびさらに、
Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであるか、または二個の隣接する基Wは、次の式(7)もしくは(8)の基であり、
【化3】
【0026】
式中、Gは、CR
2、NR、OまたはSであり、Zは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNであり、および^は、式(2)〜(6)中で対応して隣接する基Wを示し、
Vは、NR、OまたはSである。
【0027】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar
2は、次の式(9)、(10)または(11)の一つの基であり、
【化4】
【0028】
式中、破線の結合はNへの結合を示し、#は、Ar
3への結合位置を示し、*は、Eへの結合を示し、およびWとVは、上記と同じ意味を有する。
【0029】
本発明のさらに好ましい1態様では、基Ar
3は、式(12)、(13)、(14)または(15)の基の一つであり、
【化5】
【0030】
式中、破線の結合はNへの結合を示し、*は、Ar
2への結合を示し、およびWとVは、上記と同じ意味を有する。
【0031】
上記好ましい基Ar
1、Ar
2およびAr
3は、所望のとおりに互いに組み合わせることができる。
【0032】
本発明のさらに好ましい1態様では、Eは単結合である。
【0033】
本発明の好ましい1態様では、上記の選好は、同時に生じる。したがって、特に、好ましくは、式(1)または(1a)の化合物であり、
Eは単結合であり、
Ar
1は、上記に示される式(2)、(3)、(4)、(5)または(6)の基から選ればれ、
Ar
2は、上記に示される式(9)、(10)または(11)の基から選ればれ、
Ar
3は、上記に示される式(12)、(13)、(14)または(15)の基から選ればれる。
【0034】
特に、好ましいのは、基Ar
1、Ar
2およびAr
3の少なくとも二つの基が、6員アリール環基または6員ヘテロアリール環基である。特に、好ましくは、したがって、Ar
1が、式(2)の基であり、同時にAr
2が、式(9)の基であるか、またはAr
1が、式(2)の基であり、同時にAr
2が、式(12)の基であるか、またはAr
2が、式(9)の基であり、同時にAr
3が、式(12)の基である。
【0035】
したがって、式(1)の、特に、好ましい態様は、次の式(16)〜(26)の化合物であり、
【化6】
【0036】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0037】
さらに、好ましくは、Wは、CRまたはNであり、式(7)または(8)の基ではない。式(16)〜(26)の化合物の好ましい1態様では、環毎の合計で最大1個の記号Wは、Nであり、残る記号Wは、CRである。本発明の、特に、好ましい態様では、全ての記号Wは、CRである。したがって、特に、好ましいのは、次の式(16a)〜(26a)の化合物であり、
【化7-1】
【化7-2】
【0038】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0039】
非常に、特に、好ましいのは、次の式(16b)〜(26b)の化合物であり、
【化8】
【0040】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0041】
非常に、特に、好ましいのは、次の式(16)、(16a)または(16b)の化合物である。
【0042】
本発明のさらに好ましい1態様では、Ar
3は、式(12)の基であり、この基Ar
3中の2つの隣接する基Wは、式(8)の基であり、この基Ar
3中のその他の基Wは、同一であるか異なり、CRもしくはN、特に、CRである。ここで、式(8)の基は、任意の可能な位置で縮合することができる。Ar
1は、式(2)の基であり、ここで、基Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはN、特に、CRであり、同時にAr
2は、式(9)の基であり、ここで、基Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはN、特に、CRである。したがって、式(1)の化合物の、好ましい態様は、次の式(27)〜(32)の化合物であり、
【化9】
【0043】
式中、GとZは、上記意味を有し、Wは、出現毎に同一であるか異なり、CRもしくはNである。
【0044】
本発明の好ましい1態様では、式(27)〜(32)の各化合物中の環毎の最大1個の記号WまたはZは、Nであり、その他の記号WまたはZは、CRである。特に、好ましくは、全ての記号WとZは、CRである。
【0045】
本発明のさらに好ましい1態様では、Gは、CR
2、NRまたはO、特に、好ましくは、CR
2またはNR、および、非常に、特に、好ましくは、CR
2である。
【0046】
本発明の特に、好ましい1態様では、全ての基WとZはCRであり、同時にGは、CR
2、NRまたはO、特に、好ましくは、CR
2またはNR、および特に、CR
2である。
【0047】
したがって、式(27)〜(32)の好ましい化合物は、次の式(27a)〜(32a)の化合物であり、
【化10】
【0048】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0049】
次の、式(27b)〜(32b)の化合物が、特に、好ましく、
【化11】
【0050】
ここで、RとGは、上記意味と以下の好ましい意味を有する。
【0051】
式(1a)の化合物中の架橋基Lは、好ましくは、単結合または一以上のRにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、2個を超える6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。
【0052】
本発明のさらに好ましい1態様では、式(1a)の化合物中の添え字nは、2または3、特に、2である。非常に、特に、好ましくは、式(1)の化合物が、用いられる。
【0053】
本発明の好ましい1態様では、上記示された式中のRは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、N(Ar
5)
2、C(=O)Ar
5、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキルもしくはアルコキシ基、2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上の隣接しないCH
2基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、1以上の基R
1により置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、これらの構造の組み合わせから選ばれる。上記示された式中のRは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環式アルキル基(夫々、1以上の基R
1により置換されてよく、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)、各場合に、1以上の基R
1により置換されてよい5〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、これらの構造の組み合わせから選ばれる。
【0054】
ここで、基Rは、それらが、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含むならば、好ましくは、2個を超える6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。ここで、特に、好ましいのは、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、インデノカルバゾール、インドロカルバゾール、トリアジンもしくはピリミジンであり、それぞれ、1以上の基R
1により置換されてよい。ここで、基R
1中の2個を超えない6員芳香族環が互いに直接縮合することが好ましい。特に、好ましくは、R
1は、6員芳香族環が互いに直接縮合するアリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。
【0055】
ここで、真空蒸発により加工される化合物に対しては、アルキル基は、5個を超えるC原子、特に、好ましくは、4個を超えるC原子、非常に、特に、好ましくは、1個を超えるC原子を有さない。溶液から加工される化合物に対しては、10個までのC原子を有する直鎖アルキル基により置換された化合物またはオリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニル基により置換された化合物が、また、適している。
【0056】
式(1)の化合物の合成は、WO 2011/116865もしくはWO 2011/137951に記載された方法により実施することができる。
【0057】
上記態様にしたがう好ましい化合物の例は、以下の表に示される。
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【化12-4】
【化12-5】
【化12-6】
【化12-7】
【0058】
式(1)の化合物と組み合わせて、本発明にしたがって用いられる好ましい電子輸送化合物が、以下に説明される。
【0059】
本発明の好ましい1態様では、電子輸送化合物が、−2.5eV以下のLUMO、好ましくは、−2.55eV以下のLUMOを有する。
【0060】
本発明のさらに好ましい1態様では、化合物は、少なくとも一つのトリアジン基、少なくとも一つのピリミジン基および/または少なくとも一つのラクタム基を含む。
【0061】
ラクタム基を含む化合物の場合には、そこで、これらは、上記式(1)の化合物または上記説明された好ましい態様から選ばれる。ここで、−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)の化合物は、互いに異なり、すなわち、2種の異なる式(1)の化合物の混合物が包含される。
【0062】
トリアジン基またはピリミジン基含む化合物の場合には、そこで、これらの基は、好ましくは、それぞれ上記定義のとおりである1以上の基Rにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子、好ましくは、6〜24個の芳香族環原子を有する3つの芳香族もしくは複素環式芳香族環構造に結合する。
【0063】
トリアジン基またはピリミジン基含む化合物の場合には、そこで、これらの基は、好ましくは、直接またはインデノカルバゾール基、スピロインデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基、カルバゾール基もしくはスピロビフルオレン基への架橋基を介して結合する。ここで、トリアジン基もしくはピリミジン基とインデノカルバゾール基もしくはインドロカルバゾール基もしくはカルバゾール基の両者は一以上のRにより置換されてよく、Rは、上記定義されるとおりであり、2つの置換基Rは、特に、インデノカルバゾールのインデノ炭素原子は、互いに環を形成して、それによりスピロ構造を形成してもよい。
【0064】
トリアジン基またはピリミジン基の好ましい態様は、それぞれ、式(T−1)または(P−1)、(P−2)もしくは(P−3)の構造である。
【化13】
【0065】
式中、Rは、上記の意味を有し、破線の結合は、インデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基、カルバゾール基もしくはスピロビフルオレン基への結合または架橋基への結合であり、順に、インデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基、カルバゾール基に結合する。
【0066】
特に、好ましいピリミジン基は、次の式(P−1a)、(P−2a)および(P−3a)の構造であり、
【化14】
【0067】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。
【0068】
ここで、式(T−1)または(P−1a)、(P−2a)もしくは(P−3a)中の基Rは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に一以上のR
1により置換されてよい5〜30個の、好ましくは、6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、2個を超える6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。
【0069】
インデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基もしくはカルバゾール基の好ましい態様は、次の式(インデノ−1)、(インデノ−2)、(インドロ−1)、(カルバ−1)および(スピロ−1)の構造であり、
【化15】
【0070】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。炭素原子もしくは窒素原子に結合する基Rの一つに代えて、これらの基は、ピリミジンもしくはトリアジン基、または架橋基への結合を含み、ピリミジンもしくはトリアジン基に順に結合する。
【0071】
インデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基もしくはカルバゾール基の好ましい態様は、次の式(インデノ−1a)、(インデノ−2a)、(インドロ−1a)、(カルバ−1a)および(スピロ−1a)の構造であり、
【化16】
【0072】
式中、使用される記号は、上記の意味を有する。炭素原子もしくは窒素原子に結合する基Rの一つに代えて、これらの基は、ピリミジンもしくはトリアジン基または架橋基への結合を含み、ピリミジンもしくはトリアジン基に順に結合する。
【0073】
ピリミジンもしくはトリアジン基のインデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基もしくはカルバゾール基への好ましい架橋基は、各場合に一以上のRにより置換されてよい5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。ここで、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造は、好ましくは、2個を超える6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まない。特に、好ましくは、それらは、6員芳香族環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を絶対的に含まない。
【0074】
好ましい基Rは、式(1)の化合物の説明の元で、上記示される基Rである。
【0075】
適切な−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物の例は、次の表に示される化合物である。
【化17-1】
【化17-2】
【化17-3】
【化17-4】
【化17-5】
【化17-6】
【化17-7】
【化17-8】
【化17-9】
【化17-10】
【化17-11】
【0076】
−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)の化合物が、燐光化合物と一緒に発光層で用いられならば、好ましい燐光化合物が以下に説明される。
【0077】
適切な燐光発光化合物(三重項エミッター)、特に、好ましくは、可視域で適切な励起により発光する化合物は、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子、特に、この原子番号を有する金属を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0078】
上記説明したエミッターの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2005/033244、WO 2005/019373、US2005/0258742、WO2010/086089、WO 2011/157339、WO 2012/007086、WO 2012/163471、WO 2013/000531およびWO 2013/020631により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、さらなる燐光発光化合物を使用することができよう。
【0079】
適切な燐光化合物の例は、次の表に示される。
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
【化18-4】
【化18-5】
【化18-6】
【化18-7】
【化18-8】
【0080】
有機エレクトロルミッセンス素子は、カソード、アノードと少なくとも一つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層および/または電荷生成層を含んでもよい。たとえば、励起子ブロック機能を有する中間層を、二個の発光層の間に同様に導入し得る。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいのは、3個の発光層を有する構造であり、ここで、その3層は、青色、緑色及びオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、例えば、WO 2005/011013参照。)。一以上の発光層が存在するならば、少なくとも一つのこれらの層は、本発明にしたがって、燐光化合物、−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)の化合物を含み、および/または電子輸送層または電子注入層は、−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物と式(1)の化合物を含む。
【0081】
本発明のさらなる1態様では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、別々の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔ブロック層および/または電子輸送層を含まず、たとえば、WO 2005/053501に記載されるとおり、発光層は、正孔注入層もしくはアノードに直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接する。
【0082】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層では、特に、正孔注入および正孔輸送層と電子注入および電子輸送層では、先行技術にしたがって通常使用されるすべての材料を使用することができる。したがって、当業者は、発明性を要することなく、本発明の発光層と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子のために知られたすべての材料を使用することができる。
【0083】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10
−5mbar未満、好ましくは、10
−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10
−7mbar未満でも可能である。
【0084】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10
−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0085】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。たとえば、適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要である。これらのプロセスは、また、特に、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマーに対して、特に、適している。
【0086】
たとえば、一以上の層が溶液から適用され、一以上のさらなる層が気相堆積により適用されるハイブリッドプロセスもまた可能である。
【0087】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、発明性を要することなく適用することができる。
【0088】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの層が昇華プロセスにより適用され、および/または少なくとも一つの層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、および/または少なくとも一つの層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは印刷プロセスにより適用されることを特徴とする有機エレクトロルミッセンス素子の製造方法に関する。
【0089】
本発明は、再度さらに、少なくとも一つの上記式(1)もしくは(1a)の化合物と少なくとも一つの−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物を含む混合物に関する。特に、混合物は、燐光化合物をさらに含むことが好ましい。
【0090】
液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる本発明の混合物の加工のためには、本発明の化合物の調合物が必要である。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。二以上の溶媒の混合物を使用することが、この目的のために好ましい可能性がある。適切で好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、メチルベンゾエート、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンもしくはこれら溶媒の混合物である。
【0091】
したがって、本発明は、さらに、本発明の混合物と少なくとも一つの溶媒を含む調合物、特に、溶液もしくは分散液に関する。
【0092】
本発明による有機エレクトロルミッセンス素子は、以下の驚くべき利点によって従来技術とは区別される。
【0093】
1.本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、極めて良好な寿命を有する。ここで、寿命は、マトリックス材料として−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物のみまたは式(1)の化合物のみの何れかを含むエレクトロルミッセンス素子と比べて、より長い。
【0094】
2.本発明による有機エレクトロルミネッセント素子は、極めて低い駆動電圧を有する。ここで、駆動電圧は、マトリックス材料として−2.4eV以下のLUMOを有する電子輸送化合物のみまたは式(1)の化合物のみの何れかを含むレクトロルミッセンス素子と比べて、より低い。
【0095】
先に列挙したこれらの利点には、他の電気的特性の障害が伴わない。
【0096】
本発明を、以下の例によってより詳細に説明するが、それにより本発明が制限されるものではない。本明細書に基づいて、当業者は、特許請求の範囲の全般にわたって本発明を実施することができ、発明性を要さずに本発明のさらなる化合物を製造し、それらを電子素子に使用し、本発明のプロセスを使用することができよう。
【0097】
例:
LUMO準位と三重項準位との決定
材料のLUMO準位と三重項準位とを量子化学計算によって決定することができる。このために、「ガウシアン03W」ソフトウェア(Gaussian Inc.)を使用する。(表5で「org.」法で示されている)金属を含まない有機物質を計算するために、「基底状態/準実験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/一重項スピン」法を使用して、最初に幾何学的な最適化を実施する。続いて幾何学的な最適化を基準にしてエネルギー計算を実施する。ここでは、「6−31G(d)」ベースセットと共に「TD−SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法を使用する(電荷0/一重項スピン)。(
図5で「organo.−M」法により示されている)有機金属化合物に対しては、幾何学は、「基底状態/ハートリー-フォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/一重項スピン」法を介して最適化される。エネルギー計算を、上記のように有機物質と同じように行うが、「LanL2DZ」ベースセットを金属原子のために使用し、「6−31G(d)」ベースセットをリガンドのために使用するという違いがある。エネルギー計算は、ハートリー単位でLUMO LEhを与える。これらから電子ボルトにおけるLUMOの値を以下のように決定するが、そのLUMO値は、サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正される:
LUMO(eV)=((LEh*27.212)−2.0041)/1.385
本願の目的のために、この値を材料のLUMOとしてみなすべきである。
【0098】
材料の三重項準位T
1を量子化学計算から生じる最も低いエネルギーの三重項状態のエネルギーとして定義する。
【0099】
文献から知られていない材料の合成
スキーム1:ラクタムの合成
【化19】
【0100】
例L1におけるE3の合成
100g(310ミリモル)の3,6-ジブロモカルバゾール(CAS 6825−20−3)E1を、189g(1550ミリモル)のフェニルホウ酸(CAS 98−80−6)E2および430g(3.1モル)の炭酸カリウムと共に、最初に4lの四ツ口フラスコに導入し、1000mlのテトラヒドロフランと300mlの水との中に溶解させる。混合物を30分間脱気した後、140mg(0.62ミリモル)の酢酸パラジウムと、650mgのトリフェニルホスフィンとを添加し、混合物を還流下で終夜、加熱する。その後、700mlの水をバッチに添加し、水相をジクロロメタンで複数回抽出する。結合した有機相を硫酸ナトリウムで脱水させ、溶媒混合物を真空中で除去する。得られた残留物を1.5lのジクロロメタン中に溶解させ、シリカゲルに通して濾過する。溶媒を再度、真空中で除去し、固形分を600mlのエタノールと共に撹拌することにより洗浄する。濾過と乾燥とで、68g(0.21モル、69%)の所望の生成物を得る。
【化20】
【0101】
例L1におけるE5の合成
100g(313ミリモル)の3,6-ジブロモカルバゾールE3を、2lの四ツ口フラスコ中で1lの無水DMF中に溶解させ、24g(610ミリモル)の水酸化ナトリウム(油中60%)を、保護ガス下で、氷冷却しながら小分けして添加する。360mlのDMF中の82g(320ミリモル)の1-ブロモ-2-ブロモメチルベンゼンをその後、添加し、反応混合物を終夜、撹拌する。反応が終わったとき、1lの水を添加し、沈殿した固形分を吸引濾過し、149g(305ミリモル、97%)の生成物E5を得る。
【化21】
【0102】
例L1におけるE6の合成
149g(305ミリモル)の出発材料E5を、10g(46ミリモル)の酢酸パラジウムと、35g(150ミリモル)のベンジルトリメチルアンモニウムブロミドと、63g(460ミリモル)の炭酸カリウムと共に、最初に4lのフラスコに導入し、2lのDMFを添加する。反応混合物を48時間撹拌し、1lの水を添加後、形成された生成物を沈殿させる。残留物を濾過し、1.5lのエタノール中で撹拌することにより洗浄する。真空乾燥キャビネットでの乾燥により、125g(304ミリモル、99%)の生成物E6を得る。
【化22】
【0103】
合成例L1:
124gの出発材料E6を、430g(2700ミリモル)の過マンガン酸カリウムと、28g(109ミリモル)の18−クラウン−6と共に、4lのフラスコ中で3lのクロロホルム中に溶解させる。反応が終わったとき、得られた固形分を濾過し、クロロホルムで繰り返し洗浄する。結合した有機相を1Nの鎖鎖HClで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させる。得られた固形分を、99%の純度(HPLC手段により測定)に達するまで、トルエンから複数回、再結晶化させる。昇華により、64g(150ミリモル。49%)の目標化合物L1を得る。
【化23】
【0104】
合成例L8およびL9:
A)9-(2-ブロモベンジル)-3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール
【化24】
【0105】
9.7g(224ミリモル)のNaH(鉱物油中60%)を保護ガス雰囲気下で、1000mlのTHF中に溶解させる。200mlのTHF中で溶解させた、60g(50ミリモル)の3,6-ジフェニル-9H-カルバゾールと、11.5g(52.5ミリモル)の15−クラウン−5とを添加する。室温で1時間後、250mlのTHF中の61g(224ミリモル)の2-ブロモベンゾイルブロミドの溶液を滴下する。反応混合物を室温で18時間撹拌する。この時間後、反応混合物を氷に注ぎ、ジクロロメタンで三度抽出する。結合した有機相をNa
2SO
4で脱水させ、蒸発させる。残留物を高温のトルエンで抽出し、トルエン/n−ヘプタンから再結晶化させる。収率は73g(80%)である。
【0106】
以下の化合物が同じように得られる:
【化25】
【0107】
B:環化
【化26】
【0108】
保護ガス雰囲気下で、600mlのトルエン中の43ml(16ミリモル)の水素化トリブチルスズと、30g(12.5ミリモル)の1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)とを4時間にわたって、600mlのトルエン中の5.2g(12.5ミリモル)の2-ブロモフェニル-(3-フェニルフロ[3,4-b]インドル-4-イル)-メタノンの沸騰している溶液へ滴下する。その後、混合物を還流下で3時間加熱する。この時間後、反応混合物を氷へ注ぎ、ジクロロメタンで三度抽出する。結合した有機相をNa
2SO
4で脱水させ、蒸発させる。残留物をトルエンから再結晶化させる。収率は3.1g(76%)である。
【0109】
以下の化合物が同じように得られる:
【化27】
【0110】
C:酸化
【化28】
【0111】
25g(62ミリモル)のベンジル誘導体を1000mlのジクロロメタン中に溶解させる。98g(625ミリモル)のKMnO
4をその後、添加し、混合物を室温で14時間撹拌する。この時間後、残留物を濾過し、ジクロロメタン中に溶解させ、シリカゲルカラムを通過させる。蒸発後、残留物を高温のトルエンで抽出し、トルエンから再結晶化させ、最後に高真空中で昇華させる。昇華後の収率は20g(59ミリモル、77%)であり、純度は99.9%である。
【0112】
以下の化合物が同じように得られる:
【化29】
【0113】
合成例L6およびL7:
D:モノブロム化
【化30】
【0114】
7.4g(22.2ミリモル)の3aを、最初に150mlのCH
2Cl
2中に導入する。100mlのアセトニトリル中の4g(22.5ミリモル)のNBSの溶液を、その後、遮光して−15℃で滴下し、混合物を室温にさせておき、この温度で4時間、撹拌を継続する。その後、150mlの水を混合物に添加し、次いでそれをCH
2Cl
2で抽出する。有機相をMgSO
4で脱水させ、溶媒を真空中で除去する。生成物を高温のトルエンと共に撹拌することにより洗浄し、吸引濾過する。収率:7.3g(17.7ミリモル)、理論値の80%、
1H−NMRによる純度約97%。
【0115】
以下の化合物が同じように得られる:
【化31】
【0116】
C:スズキ反応
【化32】
【0117】
13.3g(110.0ミリモル)のフェニルボロン酸と、45g(110.0ミリモル)の4aと、44.6g(210.0ミリモル)のリン酸三カリウムとを、500mlのトルエンと、500mlのジオキサンと、500mlの水との中に懸濁させる。913mg(3.0ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと、次いで112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とをこの懸濁液に添加し、反応混合物を還流下で16時間加熱する。冷却後、有機相を分離させ、シリカゲルを通して濾過し、200mlの水で三度洗浄し、その後、蒸発乾固させる。残留物をトルエンから、およびジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶化させ、最後に高真空中で昇華させる。純度は99.9%である。収率は37g(90ミリモル)であり、理論値の83%に対応する。
【0118】
以下の化合物が同じように得られる:
【化33】
【0119】
スキーム2
【化34】
【0120】
第1の工程:3-[(Z)-1-Eth-(E)-イリデンペンタ-2,4-ジエニル]-8-フェニル-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン
13.3g(110.0ミリモル)のフェニルボロン酸と、20g(50ミリモル)の3,8-ジブロモ-11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾールと、45g(210ミリモル)のリン酸三カリウムとを、500mlのトルエンと、500mlのジオキサンと500mlの水との中に懸濁させる。910mg(3.0ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンと次いで、112mg(0.5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを、この懸濁液に添加し、反応混合物を、還流下で16時間加熱する。冷却後、有機層を分離させ、シリカゲルを通して濾過し、200mlの水で三度洗浄し、その後、蒸発乾固させる。残留物をトルエンから、およびジクロロメタン/イソプロパノールから再結晶化させる。収率は、16g(39ミリモル)であり、理論値の80%に対応する。
【0121】
第2の工程:(2-ブロモフェニル)-(3,8-ジフェニル-12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)メタノン
2.1g(53ミリモル)のNaH(鉱物油中60%)を、保護雰囲気下で500mlのTHF中に溶解させる。200mlのTHF中に溶解された20g(50ミリモル)の3-[(Z)-1-eth-(E)-イリデンペンタ-2,4-ジエニル]-8-フェニル-11,12-ジヒドロ-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレンと、12g(53ミリモル)の15-クラウン-5とを添加する。室温で1時間後、250mlのTHF中の12g(55ミリモル)の2-ブロモベンゾイルクロライドが滴下される。反応混合物を室温で18時間、撹拌する。この時間後、反応混合物を氷へ注ぎ、ジクロロメタンで三度抽出する。結合した有機相を、Na
2SO
4で脱水させ、蒸発させる。残留物を、高温のトルエンで抽出し、トルエン/n-ヘプタンから再結晶化させる。収率は22g(75%)である。
【0122】
第3の工程:例L5
150mlのジ-n-ブチルエーテルを、85g(145ミリモル)の(2-ブロモフェニル)-(3,8-ジフェニル-12H-11,12-ジアザインデノ[2,1-a]フルオレン-11-イル)メタノンに添加し、溶液を脱気する。10g(158ミリモル)の銅粉末と、1.38g(7ミリモル)のヨウ化銅(I)と、22g(160ミリモル)のK
2CO
3とを、その後、混合物に添加し、次いで、保護ガス下で、4日間、144℃で撹拌する。有機相をMgSO
4で脱水させ、溶媒を真空中で除去する。残留物をアセトンから再結晶化させ、最後に高真空中で昇華させる。収率:63g(124ミリモル)、理論値の86%、HPLCによる純度99.9%。
【0123】
文献から知られていないトリアジン誘導体IC4およびIC5の合成
前駆体:(2-クロロフェニル)-4-スピロ-9,9’-ビフルオレニルアミン
【化35】
【0124】
54g(137ミリモル)の4-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンと、17.9g(140ミリモル)の2-クロロアニリンと、68.2g(710ミリモル)のナトリウムtert-ブトキシドと、613mg(3ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、3.03g(5ミリモル)のdppfとを1.3lのトルエン中に溶解させ、混合物を還流下で5時間撹拌する。反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで増し、セライトを通して濾過する。濾液を真空中で蒸発させ、残留物をトルエン/ヘプタンから再結晶化させる。生成物を無色の固形物として単離させる。収率:52.2g(118ミリモル)、理論値の86%。
【0125】
前駆体:スピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]
【化36】
【0126】
45g(102ミリモル)の(2-クロロフェニル)-4-スピロ-9,9’-ビフルオレニルアミンと、56g(409ミリモル)の炭酸カリウムと、4.5g(12ミリモル)のトリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロホウ酸塩と、1.38g(6ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを500mlのジメチルアセトアミド中に懸濁させ、混合物を還流下で6時間撹拌する。冷却後、300mlの水を反応混合物に添加し、有機相を600mlのジクロロメタンで増す。混合物をさらに30分間撹拌し、有機相を分離させ、短いセライトベッドを通して濾過し、次いで、溶媒を真空中で除去する。粗生成物を高温のトルエンで抽出し、トルエンから再結晶化させる。生成物をベージュ色の固形物として単離させる(32.5g、80ミリモル、理論値の78%)。
【0127】
IC4(スピロ[9H-フルオレン-9,7’(12’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]-12’-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)])の合成
【化37】
【0128】
鉱物油(0.106モル)中の4.2gの60%NaHを保護雰囲気下で、300mlのジメチルホルムアミド中に溶解させる。43g(0.106モル)のスピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]を250mlのDMF中に溶解させ、反応混合物に滴下する。室温で1時間後、200mlのTHF中の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(34.5g、0.122モル)の溶液を滴下する。反応混合物を次いで、室温で12時間撹拌し、次いで、氷へ注ぐ。室温まで温めた後、沈殿する固形分を濾過し、エタノールとヘプタンで洗浄する。残留物を高温のトルエンで抽出し、トルエン/n−ヘプタンから再結晶化させ、最後に、高真空中で昇華させる。純度は99.9%である。収率は28.4g(44.5ミリモル;42%)である。
【0129】
IC5の合成
【化38】
【0130】
20.9g(51.5ミリモル)のスピロ[9H-フルオレン-9,7’(1’H)-インデノ[1,2-a]カルバゾール]と、20g(51.5ミリモル)の2-(3-ブロモフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(CAS 864377−31−1)と、15gのNaOtBuとを1lのp−キシレン中に懸濁させる。0.23g(1ミリモル)のPd(OAc)
2と、2mlの1M トリ-tert-ブチルホスフィン溶液とをこの懸濁液に滴下する。反応混合物を還流下で16時間加熱する。冷却後、有機相を分離させ、200mlの水で三度洗浄し、その後蒸発乾固させる。残留物を高温のトルエンで抽出し、トルエンから再結晶化させ、最後に高真空中で昇華させる。純度は99.9%であり、収率は13.8g(19.3ミリモル;38%)である。
【0131】
OLEDの製造
種々のOLEDに対するデータを、以下の例V1〜E93で提示する(表1と2参照)。
【0132】
例E1−E25の前処理:厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された、清浄にした(Miele laboratoryの食器洗浄機、Merck Extran洗浄剤で洗浄した)ガラス板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレン・スルホン酸)で水溶液からのスピンコート、Heraeus Clevios Metals GmbH独国からCLEVIOS(登録商標)P VP AI 4083として購入)で被覆される。その後、試料を180℃で10分間の加熱により乾燥させる。これらの被覆されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。
【0133】
例E26−E64の前処理:厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された、清浄にした(Miele laboratoryの食器洗浄機、Merck Extran洗浄剤で洗浄した)ガラス板を、130秒間、酸素プラズマで処理する。これらのプラズマ処理されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。基板は被覆前には真空下に置かれる。被覆をプラズマ処理後、10分間以内に開始する。
【0134】
例E65−E93の前処理:厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された、清浄にした(Miele laboratoryの食器洗浄機、Merck Extran洗浄剤で洗浄した)ガラス板を、130秒間、酸素プラズマで処理し、その後、150秒間、アルゴンプラズマで処理する。これらのプラズマ処理されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。基板は被覆前には真空下に置かれる。被覆をプラズマ処理後、10分間以内に開始する。
【0135】
OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔ブロック層(HBL)/電子輸送層(ETL)/随意に、電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な構造を、表1に示す。OLEDの製造のために必要な材料を、表3に示す。化合物のLUMO値およびT
1準位を表4に要約する。
【0136】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合で一種または複数種のマトリックス材料と予備混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、ST1:L2:TEG1(55%:35%:10%)等の表現は、材料ST1が55体積%の割合で層中に存在し、L2が35体積%の割合で層中に存在し、TEG1が10体積%の割合で層中に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0137】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、ランベルト発光特性を仮定して、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/m
2で測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表2での表現U1000は、輝度1000cd/m
2に対して必要とされる電圧を示す。CE1000とPE1000は、1000cd/m
2で達成される電流およびパワー効率をそれぞれ示す。最後に、EQE1000は、駆動輝度1000cd/m
2での外部量子効率を示す。寿命LTは、一定電流密度j
0での駆動で、輝度が、初期輝度から一定の割合L1に低下した後の時間として定義される。表2における表現L1=80%は、列LTに示される寿命が、輝度がその初期輝度の80%に低下した後の時間に対応することを意味する。
【0138】
種々のOLEDについてのデータを、表2に要約する。例V1−V8は先行技術による比較例であり、例E1−E93は本発明によるOLEDのデータを示している。
【0139】
いくつかの例を本発明によるOLEDの優位性を示すために以下詳細に説明する。
【0140】
燐光OLEDの発光層における本発明による混合物の使用
広域バンドギャップ材料WB1と組み合わせて本発明による化合物を使用することは、良好な外部量子効率の実現を可能にする(例V1−V8)。電子伝導性の第2の成分を使用する場合、電圧がより低いために、EQEにおいて僅かにのみ改善があるが、約3%までの非常に改善されたパワー効率が得られる(例V1、E7)。さらに、寿命に関しては2倍を超える優れた改善が得られる(例V2、E15)。
【0141】
優れた寿命は、特に化合物IC4とL8との混合物(例E45)で得られ、優れた効率はCbzT4とL1との混合物(例E61)で得られる。
【0142】
さらに、優れた性能データが、種々のラクタム、電子伝導性化合物、燐光エミッターとの混合物で得られ、このことは本発明による層の広い適用性を実証している。
【0143】
電子輸送層としての本発明による混合物の使用
かりに、先行技術によるL1とLiQとの混合物ではなく、L1とST1との本発明による混合物を電子輸送層として使用するならば、顕著に良好な電圧と良好な効率および寿命が得られる(例V3、E25)。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表4】