【文献】
GUENNEWIG B. et al,Synthetic pre-microRNAs reveal dual-strand activity of miR-34a on TNF-α,RNA,2013年11月18日,Vol. 20,No.1 ,pp. 61-75
【文献】
MCMANUS M.T. et al.,Gene silencing using micro-RNA designed hairpins,RNA,2002,8(6),p.842-50
【文献】
WINTER J. et al.,Loop-miRs: active microRNAs generated from single-stranded loop regions,Nucleic Acids Res.,2013-May,41(10),p.5503-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0017】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、5’側に前記X領域が配置され、3’側に前記Y領域が配置されている。
【0018】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記X領域における前記連結側領域(X
B)は、0〜12塩基長である。
【0019】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記非連結側領域(X
F)において、0〜6個の塩基が、前記Y領域に対して非相補的な塩基である。
【0020】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記Y領域は、前記X領域と未連結の末端側に、オーバーハングを有する。
【0021】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記オーバーハングが、0〜4塩基長である。
【0022】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記ガイド鎖の部分配列が、前記ガイド鎖において3’末端側の塩基が欠失した配列である。
【0023】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記ガイド鎖の部分配列が、前記ガイド鎖において3’末端側の1〜10個の塩基が欠失した配列である。
【0024】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記ガイド鎖の部分配列が、前記ガイド鎖において3’末端の1塩基が欠失した配列、または、前記ガイド鎖において3’末端から連続する2〜10塩基長が欠失した配列である。
【0025】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記成熟miRNAが、miR−34aである。
【0026】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記X領域が、12〜24塩基長であり、前記Y領域が、6〜18塩基長である。
【0027】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、全長が、18〜42塩基長である。
【0028】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工ミミックmiRNAを、細胞、組織または器官に投与する工程を含む。
【0029】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工ミミックmiRNAを、in vivoまたはin vitroで投与する。
【0030】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工ミミックmiRNAを、非ヒト動物に投与する。
【0031】
(1)人工ミミックmiRNA
本発明の人工ミミックmiRNAは、前述のように、
X領域とY領域とが連結した一本鎖核酸であり、
前記X領域は、成熟miRNAのガイド鎖配列またはその部分配列であり、前記Y領域に対する連結側領域(X
B)および非連結側領域(X
F)からなり、
前記連結側領域(X
B)は、その領域内で分子内アニーリングしない配列であり、
前記Y領域は、前記X領域の前記非連結側領域(X
F)と、分子内アニーリングする配列であることを特徴とする。
【0032】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、標的遺伝子の発現を抑制できる。発現抑制とは、例えば、前記標的遺伝子の翻訳の抑制、すなわち、前記標的遺伝子がコードするタンパク質の翻訳の抑制を意味し、より詳細には、前記標的遺伝子のmRNAからの前記タンパク質の翻訳の抑制を意味する。前記標的遺伝子の発現抑制は、例えば、前記標的遺伝子からの転写産物の生成量の減少、前記転写産物の活性の減少、前記標的遺伝子からの翻訳産物の生成量の減少、または前記翻訳産物の活性の減少等によって確認できる。前記タンパク質は、例えば、成熟タンパク質、または、プロセシングもしくは翻訳後修飾を受ける前の前駆体タンパク質があげられる。
【0033】
本発明の人工ミミックmiRNAは、前述の構造をとることで、例えば、Dicer非依存またはAgo非依存で、発現抑制を行うことができる。一般的に、多くの腫瘍細胞ではDicerまたはAgoの発現が低下しているため、Dicer依存またはAgo依存の分子では発現抑制が困難であるが、本発明の人工ミミックmiRNAは、Dicer非依存またはAgo非依存であることから、例えば、DicerまたはAgoの発現が低下している腫瘍細胞においても有効に機能できる。また、本発明の人工ミミックmiRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、成熟miRNAのように、二本の一本鎖をアニーリングする必要もなく、安価に製造できる。さらに、本発明の人工ミミックmiRNAは、一本鎖の核酸分子であるため、例えば、自己免疫に関与するTLR3、RIG-I、MDA5に認識されることも回避できる。
【0034】
本発明の人工ミミックmiRNAについて、前記X領域および前記Y領域の配置関係の概略を、
図1に示す。なお、
図1は、概略であって、例えば、各領域の長さ、形状等は、制限されない。本発明の人工ミミックmiRNAは、
図1(A)に示すように、5’側に前記X領域が配置され、3’側に前記Y領域が配置されてもよいし、
図1(B)に示すように、5’側に前記Y領域が配置され、3’側に前記X領域が配置されてもよく、好ましくは、前者である。前者の場合、本発明の人工ミミックmiRNAは、5’側から、前記X領域における前記非連結側領域(X
F)と前記連結側領域(X
B)と、前記Y領域とが、この順序で配置されている。後者の場合、本発明の人工ミミックmiRNAは、5’側から、前記Y領域と、前記X領域における前記連結側領域(X
B)と前記非連結側領域(X
F)とが、この順序で配置されている。
【0035】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記連結側領域(X
B)は、その領域内で分子内アニーリングしない配列であり、前記連結側領域(X
B)の一端に位置する前記Y領域は、前記連結側領域(X
B)の他端に位置する前記非連結側領域(X
F)に分子内アニーリングする配列である。このため、本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記X領域の前記連結側領域(X
B)は、例えば、前記Y領域と前記非連結側領域(X
F)との分子内アニーリングによって、ループを形成するともいえる。分子内アニーリングとは、例えば、自己アニーリングともいう。本発明の人工ミミックmiRNAは、前記分子内アニーリングした領域において、二本鎖が形成されるともいう。
【0036】
本発明の人工ミミックmiRNAは、その5’末端と3’末端とが未連結である、線状一本鎖核酸分子ということもできる。本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、両末端の未結合の維持のため、5’末端が非リン酸基であることが好ましい。
【0037】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記X領域は、前述のように、成熟miRNAのガイド鎖配列またはその部分配列である。成熟miRNAのガイド鎖配列は、例えば、各種データベースに登録されている(例えば、http://www.mirbase.org/等)。したがって、例えば、これらの公知の成熟miRNAの情報に基づいて、前記X領域を設定できる。前記成熟miRNAのガイド鎖とは、RNA-induced silencing complex(RISC)のArgonaute(Ago)タンパク質に取り込まれ、ターゲットのmRNAに結合する鎖である。
【0038】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、各領域の長さは、特に制限されない。以下に、条件を例示するが、本発明の人工ミミックmiRNAは、これらの記載には限定されない。また、本発明において、塩基の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0039】
前記X領域における前記連結側領域(X
B)の長さ(X
B)は、下限が、例えば、0塩基長、2塩基長、4塩基長であり、上限が、例えば、12塩基長、10塩基長、8塩基長であり、範囲が、例えば、0〜12塩基長、2〜10塩基長、4〜8塩基長、6塩基長である。
【0040】
前記X領域における前記非連結側領域(X
F)の長さ(X
F)は、下限が、例えば、6塩基長、10塩基長、14塩基長であり、上限が、例えば、22塩基長、20塩基長、18塩基長であり、範囲が、例えば、6〜22塩基長、10〜20塩基長、14〜18塩基長である。
【0041】
前記非連結側領域(X
F)は、例えば、前記Y領域とアライメントした際に、前記Y領域に対して、全塩基が相補的でもよいし、非相補的な塩基を有してもよい。後者の場合、前記非連結側領域(X
F)は、例えば、1個または数個の塩基が、前記Y領域に対して非相補的な塩基である。前記非相補的な塩基の個数は、下限が、例えば、0塩基、1塩基、2塩基であり、上限が、例えば、6塩基、5塩基、3塩基であり、範囲が、例えば、0〜6塩基、1〜5塩基、2〜3塩基である。また、前記非相補的な塩基は、前記非連結側領域(X
F)において、例えば、連続的に位置してもよいし、非連続的に位置してもよい。
【0042】
前記非連結側領域(X
F)が前記Y領域に対して非相補的な塩基を有する場合、前記非連結側領域(X
F)と前記Y領域とにおいて非相補的な組合せになるそれぞれの塩基を、ミスマッチ塩基ともいう。他方、前記非連結側領域(X
F)と前記Y領域とにおいて相補的な組合せになるそれぞれの塩基を、マッチ塩基ともいう。
【0043】
前記非連結側領域(X
F)において、前記ミスマッチ塩基の箇所は、特に制限されない。本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記X領域が5’側に位置する場合、前記非連結側領域(X
F)における前記ミスマッチ塩基の箇所は、例えば、5’末端塩基を1番目の塩基として、1番目、6番目である。前記非連結側領域(X
F)における前記ミスマッチ塩基の個数は、特に制限されない。前記ミスマッチ塩基の個数が1個の場合、例えば、1番目または6番目であり、2個以上の場合、例えば、少なくとも1番目および6番目を含む。
【0044】
本発明の人工ミミックmiRNAにおける前記ミスマッチ塩基の位置の概略を
図2に示す。なお、
図2は、概略であって、例えば、各領域の長さ等は、制限されない。
図2は、前記X領域が5’側に位置する人工ミミックmiRNAの例であり、前記X領域の前記非連結側領域(X
F)において、5’末端塩基を1番目として、1番目および6番目にミスマッチ塩基を有する形態である。
図2において、Nは、塩基を示し、丸で囲んだNは、ミスマッチ塩基を示し、四角で囲んだNは、線で結んだ塩基間で相補的なマッチ塩基を示す。
【0045】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記X領域の長さ(X)は、特に制限されず、下限が、例えば、12塩基長、16塩基長、18塩基長であり、上限が、例えば、24塩基長、22塩基長、20塩基長であり、範囲が、例えば、12〜24塩基長、16〜22塩基長、18〜20塩基長である。
【0046】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記Y領域の長さ(Y)は、特に制限されず、下限が、例えば、6塩基長、9塩基長、12塩基長であり、上限が、例えば、18塩基長、16塩基長、14塩基長であり、範囲が、例えば、6〜18塩基長、9〜16塩基長、12〜14塩基長である。
【0047】
前記Y領域は、例えば、前記X領域の前記非連結側領域(X
F)と分子内アニーリングする配列を含んでもよいし、前記配列のみからなってもよい。前者の場合、前記Y領域は、例えば、前記分子内アニーリングする配列の他、さらに、前記X領域と未連結の末端側に、オーバーハングを有してもよい。この場合、前記Y領域は、前記分子アニーリングする配列と前記オーバーハングとからなる。ここで、前記Y領域のオーバーハングとは、例えば、前記Y領域と前記非連結側領域(X
F)とをアライメントした場合に、前記Y領域が前記非連結側領域(X
F)よりも過剰に有する末端の塩基である。オーバーハングの長さ(O)は、例えば、下記式で表すことができる。 オーバーハングの長さ(O)=[Y領域の全長の塩基数(Y)]−[非連結側領域(X
F)の塩基数(X
F)]
O=Y−X
F
O:オーバーハングの長さ
Y:Y領域の全長の塩基数(Y)
X
F:非連結側領域(X
F)の塩基数(X
F)
【0048】
前記オーバーハングの長さ(O)は、特に制限されず、下限が、例えば、0塩基長、1塩基長であり、上限が、例えば、4塩基長、3塩基長であり、範囲が、例えば、0〜4塩基長、1〜3塩基長、2塩基長である。
【0049】
前記オーバーハングの配列は、特に制限されず、例えば、3’側から、UU、CU、GC、UA、AA、CC、UG、CG、AU、TT等が例示できる。前記オーバーハングは、例えば、TTとすることで、RNA分解酵素に対する耐性を付加できる。
【0050】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記X領域の非連結側領域(X
F)と前記Y領域とをアライメントした場合、両者の長さの差(Y−X
FまたはX
F−Y)は、特に制限されない。前記差は、下限が、例えば、0塩基長、2塩基長、3塩基長であり、上限が、例えば、15塩基長、10塩基長、5塩基長であり、範囲が、例えば、0〜15塩基長、2〜10塩基長、3〜5塩基長である。前記Y領域は、例えば、前記オーバーハングを有する場合、前記非連結側領域(X
F)よりも長い。
【0051】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記成熟miRNA由来の配列は、例えば、前記ガイド配列の全長でもよいし、前記ガイド配列の部分配列でもよい。前記ガイド鎖の部分配列は、例えば、前記ガイド鎖(全長)において3’末端側の塩基が欠失した塩基であり、具体例として、前記ガイド鎖において3’末端側の1個または数個の塩基が欠失した配列である。前記ガイド鎖全長から欠失した塩基の数は、特に制限されず、下限が、例えば、1塩基、2塩基、3塩基であり、上限が、例えば、10塩基、7塩基、6塩基、5塩基であり、範囲が、例えば、1〜7塩基、2〜6塩基、3〜5塩基である。前記ガイド鎖の部分配列は、前記ガイド鎖において、3’末端の塩基(1個の塩基)が欠失した配列でもよいし、3’末端から連続する塩基が欠失した配列でもよく、後者の場合、例えば、前記ガイド鎖において3’末端から連続する塩基長(例えば、2〜10塩基長)が欠失した配列である。
【0052】
本発明の人工ミミックmiRNAの全長(T)は、特に制限されず、下限が、例えば、18塩基長、23塩基長、28塩基長であり、上限が、例えば、42塩基長、38塩基長、34塩基長であり、範囲が、例えば、18〜42塩基長、23〜38塩基長、28〜34塩基長である。
【0053】
本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記成熟miRNAの種類は、特に制限されず、標的とする遺伝子の種類に応じて、適宜選択できる。
【0054】
前記成熟miRNAとしては、例えば、hsa−miR−34a(配列番号1)、hsa−let−7a(配列番号2)、hsa−let−7f(配列番号3)、hsa−miR−150(配列番号4)、hsa−miR−29b(配列番号5)等の成熟miRNAがあげられる。
【0055】
hsa−miR−34a(配列番号1)
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU
hsa−let−7a(配列番号2)
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU
hsa−let−7f(配列番号3)
UGAGGUAGUAGAUUGUAUAGUU
hsa−miR−150(配列番号4)
UCUCCCAACCCUUGUACCAGUG
hsa−miR−29b(配列番号5)
UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU
【0056】
miR−34aのガイド鎖は、例えば、AXL、MET、CDK4、CDK6、SIRT1、CCND1、SIRT1、BCL−2等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
【0057】
let−7aのガイド鎖は、例えば、HMGA2(high mobility group AT-hook 2)、KRAS、NRAS、HRAS、MYC、TLR4等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
【0058】
let−7fのガイド鎖は、例えば、HMGA2(high mobility group AT-hook 2)、KRAS、NRAS、HRAS、MYC、TLR4等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん等の疾患を予防または治療できる。
【0059】
miR−150のガイド鎖は、例えば、COL1A1、COL4A4、SMAD2、SP1等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺線維症、肝線維症等の疾患を予防または治療できる。
【0060】
miR−29bのガイド鎖は、例えば、COL1A1、MCL1,DNMT3A,DNMT3B,TCL1A,TGFb3等をターゲットとし、これらの標的遺伝子の発現抑制により、例えば、肺がん、大腸がん、胃がん、肝がん、乳がん、肺線維症、肝線維症等の疾患を予防または治療できる。
【0061】
本発明の人工ミミックmiRNAの構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工ミミックmiRNAにおいて、前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基が好ましい。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0062】
本発明の人工ミミックmiRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1個もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基であってもよい。本発明の人工ミミックmiRNAが、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1または2個である。
【0063】
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびU(ウラシル)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)を有する。
【0064】
前記非修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、具体的には、例えば、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0065】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。
【0066】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチドの代替物の残基であってもよい。前記代替物は、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられる。
【0067】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0068】
本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、
2H、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34Sおよび
36Sがあげられる。
【0069】
本発明の人工ミミックmiRNAは、前述のように、前記標的遺伝子の発現抑制ができる。このため、本発明の人工ミミックmiRNAは、例えば、遺伝子が原因となる疾患の治療剤として使用できる。本発明の人工ミミックmiRNAが、例えば、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖またはその部分配列を有する場合、例えば、前記標的遺伝子の発現抑制により、前記疾患を治療できる。本発明において、「治療」は、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。前記疾患は、特に制限されず、例えば、目的の疾患に応じて前記発現抑制配列を適宜設定できる。前記疾患としては、例えば、乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、食道がん、前立腺がん、胆嚢がん、子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がん、骨肉腫、白血病等のがん、肺線維症、肝線維症等の疾患があげられる。
【0070】
本発明の人工ミミックmiRNAの使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工ミミックmiRNAを投与すればよい。
【0071】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0072】
本発明において、発現抑制の対象となる前記標的遺伝子は、特に制限されず、所望の遺伝子を設定できる。そして、前述のように、前記標的遺伝子の種類に応じて、前記成熟miRNAを選択すればよい。
【0073】
本発明の人工ミミックmiRNAの使用に関しては、後述する本発明の組成物、発現抑制方法および治療方法等の記載を参照できる。
【0074】
本発明の人工ミミックmiRNAは、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制可能であることから、例えば、医薬品、診断薬、、農薬、医学、生命科学等の研究ツールとして有用である。
【0075】
本発明の人工ミミックmiRNAの合成方法は、特に制限されず、従来公知の核酸の製造方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH−ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’−O−TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
【0076】
(2)組成物
本発明の発現抑制用組成物は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制するための組成物であって、前記本発明の人工ミミックmiRNAを含むことを特徴とする。本発明の組成物は、前記本発明の人工ミミックmiRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。本発明の発現抑制用組成物は、例えば、発現抑制用試薬ということもできる。
【0077】
本発明によれば、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に投与することで、前記標的遺伝子の発現抑制を行うことができる。
【0078】
また、本発明の薬学的組成物は、前述のように、前記本発明の人工ミミックmiRNAを含むことを特徴とする。本発明の薬学的組成物は、前記本発明の人工ミミックmiRNAを含むことが特徴であり、その他の構成は何ら制限されない。本発明の薬学的組成物は、例えば、医薬品ということもできる。
【0079】
本発明によれば、例えば、遺伝子が原因となる疾患の患者に投与することで、前記遺伝子の発現を抑制し、前記疾患を治療することができる。本発明において、「治療」は、前述のように、例えば、前記疾患の予防、疾患の改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0080】
本発明において、治療の対象となる疾患は、特に制限されず、例えば、遺伝子の発現が原因となる疾患があげられる。前記疾患の種類に応じて、その疾患の原因となる遺伝子を前記標的遺伝子に設定し、さらに、前記標的遺伝子に応じて、前記成熟miRNAのガイド鎖またはその部分配列を選択すればよい。
【0081】
本発明の発現抑制用組成物および薬学的組成物(以下、組成物という)は、その使用方法は、特に制限されず、例えば、前記標的遺伝子を有する投与対象に、前記人工ミミックmiRNAを投与すればよい。
【0082】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。前記細胞は、特に制限されず、例えば、HeLa細胞、293細胞、NIH3T3細胞、COS細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等があげられる。
【0083】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が培養細胞の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法等があげられる。
【0084】
本発明の組成物は、例えば、本発明の人工ミミックmiRNAのみを含んでもよいし、さらにその他の添加物を含んでもよい。前記添加物は、特に制限されず、例えば、薬学的に許容された添加物が好ましい。前記添加物の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0085】
本発明の組成物において、前記人工ミミックmiRNAは、例えば、前記添加物と複合体を形成してもよい。前記添加物は、例えば、複合化剤ということもできる。前記複合体形成により、例えば、前記人工ミミックmiRNAを効率よくデリバリーすることができる。
【0086】
前記複合化剤は、特に制限されず、ポリマー、シクロデキストリン、アダマンチン等があげられる。前記シクロデキストリンは、例えば、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー等があげられる。
【0087】
前記添加剤は、この他に、例えば、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤等があげられる。
【0088】
(3)発現抑制方法
本発明の発現抑制方法は、前述のように、標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、前記本発明の人工ミミックmiRNAを使用することを特徴とする。本発明の発現抑制方法は、前記本発明の人工ミミックmiRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0089】
本発明の発現抑制方法において、前記遺伝子の発現抑制のメカニズムは、特に制限されず、例えば、成熟miRNAによる発現抑制があげられる。
【0090】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記標的遺伝子が存在する対象に、前記人工ミミックmiRNAを投与する工程を含む。前記投与工程により、例えば、前記投与対象に前記人工ミミックmiRNAを接触させる。前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0091】
本発明の発現抑制方法は、例えば、前記人工ミミックmiRNAを単独で投与してもよいし、前記人工ミミックmiRNAを含む前記本発明の組成物を投与してもよい。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0092】
(4)治療方法
本発明の疾患の治療方法は、前述のように、前記本発明の人工ミミックmiRNAを、患者に投与する工程を含み、前記人工ミミックmiRNAにおける前記ガイド鎖またはその部分配列が、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖またはその部分配列であることを特徴とする。本発明の治療方法は、前記本発明の人工ミミックmiRNAを使用することが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。
【0093】
本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の発現抑制方法等を援用できる。前記投与方法は、特に制限されず、例えば、経口投与および非経口投与のいずれでもよい。
【0094】
(5)人工ミミックmiRNAの使用
本発明の使用は、前記標的遺伝子の発現抑制のための、前記本発明の人工ミミックmiRNAの使用である。
【0095】
本発明の核酸分子は、疾患の治療に使用するための核酸分子であって、前記核酸分子は、前記本発明の人工ミミックmiRNAであり、前記人工ミミックmiRNAにおける前記ガイド鎖またはその部分配列が、前記疾患に関与する遺伝子の発現を抑制する成熟miRNAのガイド鎖またはその部分配列であることを特徴とする。
【0096】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
成熟miR−34aのガイド鎖に基づいて、本発明の人工ミミックmiRNAを合成し、AXLおよびMETの発現抑制を確認した。
【0098】
(1)核酸サンプルの合成
ポジティブコントロールのmiRNAとして、以下に示すガイド鎖(配列番号1)およびパッセンジャー鎖(配列番号6)からなるヒト成熟miR−34aを合成した。
また、ネガティブコントロールとして、前記成熟miR−34aにおける前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたガイド鎖スクランブル(配列番号7)およびそれに対応するパッセンジャー鎖(配列番号8)とからなる成熟miR−34aスクランブルを合成した。
【0099】
そして、実施例の人工ミミックmiRNAとして、成熟miR−34aのガイド鎖(配列番号1)を有するガイドヘアピンRNA(以下、「ghR」ともいう)を合成した。具体的には、ghR−34a(G22/P18)(配列番号9)を合成した。ghR−34a(G22/P18)の下記配列において、下線部が、前記ガイド鎖に対応する。また、実施例の人工ミミックmiRNAに対するネガティブコントロールとして、前記ガイド鎖の塩基組成をスクランブルにしたghR−34aスクランブル(配列番号10)を合成した。ghR−34aスクランブルの下記配列において、下線部が、成熟miR−34aスクランブルのガイド鎖に対応する。これらのmiRNAの概略を、以下に示す。
【0100】
成熟miR−34a
ガイド鎖(配列番号1)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3’
パッセンジャー鎖(配列番号6)
5’-CAAUCAGCAAGUAUACUGCCCU-3’
成熟miR−34aスクランブル
ガイド鎖(配列番号7)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUG-3’
パッセンジャー鎖(配列番号8)
5’-CAACCGACCCGAUAACGAUACA-3’
ghR−34a(G22/P18)(配列番号9)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUAGCUAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a
(G22/P18)スクランブル(配列番号10)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCGGUUGACCCGAUAACGGUACCUC-3’
【0101】
【化1】
【0102】
(2) mRNAの検出
前記miRNAを、ヒト非小細胞性肺がん細胞株(NCI−H1299)に導入し、ヒト成熟miR−34aがターゲットとするAXL mRNA、MET mRNAおよびCDK6 mRNAの検出を行った。
【0103】
前記miRNAを、注射用蒸留水(大塚製薬、以下同様)で溶解し、100μmol/LのmiRNA溶液を調製した。AXLおよびMET mRNAの検出には、NCI−H1299細胞(ATCC社)を使用した。培地は、10%FBSを含むRPMI−1640(Invitrogen)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0104】
まず、細胞を、前記培地中で培養し、その培養液を、24穴プレートに、500μLずつ、1×10
4細胞/ウェルとなるように分注した。さらに、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、前記miRNAをトランスフェクション試薬RNAi MAX Transfection Reagent(商品名、Life Technologies社)を用い、添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。トランスフェクションは、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定した。下記組成において、(B)は、Opti−MEM(商品名、Invitrogen)、(C)は、前記RNA溶液であり、両者をあわせて49μL添加した。なお、前記ウェルにおいて、前記miRNAの最終濃度は、5nmol/L、50nmol/Lとした。トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を2日間培養した。
【0105】
【表1】
【0106】
そして、得られた培養細胞について、ISOGEN reagent(商品名、ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。
【0107】
次に、逆転写酵素(商品名M−MLV reverse transcriptase、Invitrogen)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、合成した前記cDNAを鋳型として定量PCRを行い、AXL cDNAの量およびMET cDNAの量を測定した。また、AXL mRNAおよびCDK6 mRNAは、GAPDH mRNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。MEL mRNAは、β−アクチン mRNAを内部コントロールとし、そのcDNAの量をあわせて測定した。
【0108】
前記定量PCRは、試薬として、FastStart Universal SYBR Green Master(商品名、Roche)、サーモサイクラーとしてMX3000P(商品名、Stratagene)、解析機器としてMxPro(商品名、Stratagene)を用いた(以下、同様)。前記AXL cDNA、CDK6 cDNAおよびGAPDH cDNA、前記MET cDNAおよびβ−アクチン cDNAの増幅には、それぞれ、下記プライマーセットを使用した。反応液の全量は25μLとして、それぞれ3回測定した。
【0109】
AXL プライマーセット
5’-CTCAACCAGGACGACTCCAT-3’ (配列番号11)
5’-AGACCGCTTCACTCAGGAAA-3’ (配列番号12)
CDK6 プライマーセット
5’-AAGTTCCAGAGCCTGGAGTG-3’ (配列番号13)
5’-CGATGCACTACTCGGTGTGA-3’ (配列番号14)
GAPDH プライマーセット
5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’ (配列番号15)
5’-GGGTCATTGATGGCAACAATATC-3’ (配列番号16)
MET プライマーセット
5’-CAGGCAGTGCAGCATGTAGT-3’ (配列番号17)
5’-TGTCCAACAAAGTCCCATGA-3’ (配列番号18)
β−アクチン プライマーセット
5’-ACTCTTCCAGCCTTCCTTCC-3’ (配列番号19)
5’-TGTTGGCGTACAGGTCTTTG-3’ (配列番号20)
【0110】
コントロールとして、前記miRNA未添加の細胞についても、同様の処理および測定を行った(mock)。また、ネガティブコントロールは、前記成熟miR−34aスクランブルおよび前記ghR−34aスクランブルを使用した。
【0111】
そして、miRNA未添加のコントール(mock)におけるAXL mRNAまたはMET mRNAを1とした場合における、各トランスフェクション細胞でのAXL mRNA、MET mRNAおよびCDK6 mRNAの相対値を算出した。これらの結果を、
図3、
図4および
図5に示す。
図3は、AXL mRNAの結果、
図4は、MET mRNAの結果、
図5は、CDK6 mRNAの結果であり、
図3、
図4および
図5において、左のバーは、トランスフェクション時のmiRNAの終濃度が5nmol/Lの結果を示し、右のバーは、トランスフェクション時のmiRNAの終濃度が50nmol/Lの結果を示す。
【0112】
図3、
図4および
図5に示すように、実施例の人工ミミックmiRNAであるghR−34a(G22/P18)を使用した場合、AXL mRNAの量、MET mRNAの量およびCDK6 mRNAの量は、いずれも、コントロールよりも減少し、成熟miR−34aと同等の結果を示した。このため、実施例の人工ミミックmiRNAにより、AXL mRNA、MET mRNAおよびCDK6 mRNAがそれぞれコードするタンパク質の転写も、抑制されているといえる。
【0113】
さらに、実施例のghR−34a(G22/P18)は、二本鎖の成熟miRNA−34aとは異なり、一本鎖の核酸分子であるため、使用時に各一本鎖をアニーリングする必要がなく、また、自然免疫に関与するTLR3等に認識されることも回避できる。また、実施例のghR−34a(G22/P18)は、トータルの塩基数が、成熟miRNA−34aのトータル塩基数44塩基よりも少ない40塩基であるため、安価な合成が可能である。さらに、TLR3等による認識を避けるために、生体に、一本鎖のステムループ構造であるmiRNA前駆体(Pre−miRNA)を投与し、生体内で成熟miRNA−34aを生成させることも考えられる。しかし、miRNA−34aのPre−miRNAは、72塩基長であり、非常に長いのに対して、実施例のghR−34a(G22/P18)は、前述のように40塩基長と短いため、TLR3以外の各種TLRにも認識され難い。このため、本発明の人工ミミックmiRNAによれば、投与によるTLRの影響も回避できる。
【0114】
(実施例2)
実施例1の人工ミミックmiRNAであるghR−34a(G22/P18)について、ガイド鎖の3’末端側を欠失させ、AXLおよびMETの発現抑制を確認した。
【0115】
実施例1の人工ミミックmiRNAであるghR−34a(G22/P18)(配列番号9)を基準として、ガイド鎖の3’末端を欠失させた小型化人工ミミックmiRNAを合成した。下記配列において、下線部がガイド鎖に対応する。これらのmiRNAの概略を、以下に示す。
【0116】
ghR−34a(G22/P18)(配列番号9)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGUAGCUAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a(G21/P17)(配列番号21)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGGCUAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a(G20/P16)(配列番号22)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUCUAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a(G19/P15)(配列番号23)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a(G18/P14)(配列番号24)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGGAAGACAAUGCCCUC-3’
ghR−34a(G17/P13)(配列番号25)
5’-
UGGCAGUGUCUUAGCUGAGACAAUGCCCUC-3’
【0117】
【化2】
【0118】
前記miRNAを使用する以外は、前記実施例1と同様にして、ヒト成熟miR−34aがターゲットとするAXL mRNAおよびMET mRNAの検出を行った。なお、トランスフェクション時のmiRNAの終濃度は、25nmol/Lとした。ネガティブコントロールは、前記実施例1におけるghR−34aスクランブル(配列番号10)とした。これらの結果を、
図6および
図7に示す。
図6は、AXL mRNAの結果、
図7は、MET mRNAの結果である。
【0119】
図6および
図7に示すように、ガイド鎖の3’末端をさらに欠失させた小型化人工ミミックmiRNAによっても、同様の結果が得られた。核酸分子を生体に投与した場合、その長さが短い程、自己免疫に関与するTLRが認識し難く、例えば、自己免疫による炎症性サイトカイン等の産生を抑制できる。前記小型化人工ミミックmiRNAは、全長が38塩基長以下であり、miRNA−34aのPre−miRNA(72塩基長)と比較しても、格段に短い核酸分子である。このため、本発明の人工ミミックmiRNAによれば、二本鎖を認識するTLR3等だけでなく、その他のTLRの影響も回避できる。
【0120】
(実施例3)
実施例1の人工ミミックmiRNAであるghR−34a(G17/P13)(配列番号25)の改変を行い、AXLの発現抑制を確認した。
【0121】
以下に、実施例1の人工ミミックmiRNAであるghR−34a(G17/P13)、および、これに基づいて改変した人工ミミックmiRNAの概略を示す。G17/P13は、5’末端を1番目の塩基とした際、1番目と6番目にミスマッチ塩基を有し、3’末端に2塩基長のオーバーハングを有する人工ミミックmiRNAである。そこで、改変した人工ミミックmiRNAとして、2塩基長のオーバーハングをdTdTに変更したG17/P13 dTdT、6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更したG17/P13 Match1、2塩基長のオーバーハングをdTdTに変更し、6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更したG17/P13 dTdT Match1、1番目および6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更したG17/P13 Match2、1番目および6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更し、2塩基長のオーバーハングをdTdTに変更したG17/P13 dTdT Match2を合成した。下記配列において、下線部がガイド鎖の配列であり、配列内部における四角で囲んだ部分が、マッチ塩基であり、配列の3’末端における四角で囲んだ部分が、dTdTに変更したオーバーハングである。
【0122】
【化3】
【0123】
【化4】
【0124】
前記miRNAを使用する以外は、前記実施例1と同様にして、ヒト成熟miR−34aがターゲットとするAXL mRNAの検出を行った。なお、トランスフェクション時のmiRNAの終濃度は、25nmol/Lとした。ネガティブコントロールは、前記実施例1におけるghR−34aスクランブル(配列番号10)とした。
【0125】
これらの結果を、
図8に示す。
図8は、AXL mRNAの結果である。
図8に示すように、2塩基長のオーバーハングをdTdTに変更した場合、6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更してミスマッチを一カ所とした場合、1番目および6番目の塩基に対応する塩基をマッチ塩基に変更してミスマッチをなくした場合、これらの組合せの場合のいずれにおいても、AXL mRNAの量が減少し、G17/P13と同様の結果を示した。
【0126】
(実施例4)
成熟hsa let−7a−1のガイド鎖について、本発明の人工ミミックmiRNAを合成し、HMGA2の発現抑制を確認した。
【0127】
(1)miRNAの合成
ポジティブコントロールのmiRNAとして、以下に示すガイド鎖(配列番号2)およびパッセンジャー鎖(配列番号31)からなるヒト成熟let−7a−1を合成した。また、ネガティブコントロールとして、データベース上、どのmRNAも標的としない配列(ノン−ターゲット)を合成した。そして、実施例の人工ミミックmiRNAとして、成熟let−7a−1のガイド鎖(配列番号2)を有するghR−let−7a G18/P14(配列番号34)を合成した。ghR−let−7a G18/P14の下記配列において、下線部が、前記ガイド鎖の部分配列に対応する。これらのmiRNAの概略を、以下に示す。
【0128】
成熟hsa-let-7a-1
ガイド鎖(配列番号2)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU-3’
パッセンジャー鎖(配列番号31)
5’-CUAUACAAUCUACUGUCUUUC-3’
ノン−ターゲット コントロール
ガイド鎖(配列番号32)
5’-
UACUAUUCGACACGCGAAGTT-3’
パッセンジャー鎖(配列番号33)
5’-CUUCGCGUGUCGAAUAGUATT-3’
ghR-let-7a G18/P14(配列番号34)
5’-
UGAGGUAGUAGGUUGUAUCCUACUACCUCCUC-3’
【0129】
【化5】
【0130】
(2) mRNAの検出
前記miRNAを、ヒト肺がん細胞株A549細胞株(ATCC社)に導入し、下記プライマーセットを使用した以外は、前記実施例1と同様にして、ヒト成熟let−7aがターゲットとするHMGA2 mRNAの検出を行った。なお、トランスフェクション時のmiRNAの終濃度は、25nmol/Lとした。前記ノン−ターゲットは、RNAデータベース解析からヒトのRNAに最も結合する可能性が低い、もしくはオフターゲット効果の最も低いと予測される配列とした。
【0131】
HMGA2 プライマーセット
5’-GAAGCCACTGGAGAAAAACG-3’ (配列番号35)
5’-CTTCGGCAGACTCTTGTGAG-3’ (配列番号36)
【0132】
これらの結果を、
図9に示す。
図9は、HMGA2 mRNAの結果である。
図9に示すように、実施例の人工ミミックmiRNA ghR−let−7a G18/P14を使用した場合、HMGA2 mRNAの量は、成熟let−7aと同等の結果を示した。
【0133】
(実施例5)
実施例1で作製したghR−34a(G17/P13)(配列番号25)をヒト非小細胞性肺がん細胞株(NCI−H1299)に導入して、AXLの発現抑制および細胞増殖の抑制を確認した。なお、ポジティブコントロールのmiRNAとして、実施例1で合成したヒト成熟miR−34aを使用した。
【0134】
前記実施例1と同様の方法により、NCI−H1299細胞の培養、前記ghR−34a(G17/P13)または前記miR―34aのトランスフェクション、トランスフェクション後の培養を行った。そして、トランスフェクションした日を0日とし、さらに培養を行った。なお、トランスフェクションから1日目には、細胞をPBSで洗浄し、引き続き、同様にして培養を行った。前記実施例1と同様にして、トランスフェクションから所定日数(1、2、3、4、5日)後のAXL mRNAの発現量を測定し、AXL mRNAの発現量の相対値を求めた。また、トランスフェクションから4日後の細胞数を確認した。なお、前記ghR−34a(G17/P13)および前記miR−34aのそれぞれについて、コントロールとして、スクランブル配列に変更した前記実施例1と同じ前記ghR34aスクランブルおよび前記成熟miR−43aスクランブルを使用し、同様に処理して、発現量を測定した。これらの結果を、
図10および
図11に示す。
【0135】
図10は、AXL mRNAの結果を示すグラフであり、縦軸が発現量の相対値を示し、横軸が日数を示す。
図10に示すように、miRNA未添加のコントールと比較して、前記ghR−34a(G17/P13)は、ポジティブコントロールの前記miR−34aと同様に、トランスフェクションから5日後においても発現抑制能が確認できた。
【0136】
図11は、発現細胞数(×10
4個)を示すグラフである。
図11に示すように、前記ghR−34a(G17/P13)をトランスフェクションした結果、前記miR−34aをトランスフェクションした場合と同程度にまで、細胞増殖を抑制できた。
【0137】
(実施例6)
実施例2で作製したghR−34a(G17/P13)(配列番号25)をヒト末梢血の単球に導入して、炎症性サイトカインの誘導を確認した。なお、ポジティブコントロールのmiRNAとして、実施例1で合成したヒト成熟miR−34aを使用した。
【0138】
ヒト末梢血から単離した単球に、前記ghR−34a(G17/P13)または前記miR−34aのトランスフェクション、トランスフェクション後の培養を行った。培養の条件は、2x10
5 cells/well/96 well plateとし、トランスフェクションの条件は、Lipofectamin RNAiMAx transfection reagent 0.6μl/well/200μlとした。そして、トランスフェクションから24時間後、培養した細胞からRNAを抽出し、リアルタイムPCRによりサイトカイン(IL−6、TNFα)のmRNAの発現量を測定した。また、前記24時間後の培養上清を用いて、ELISA法によりサイトカイン(IL−6、TNFα)のタンパク質発現量を測定した。また、前記ghR−34a(G17/P13)について、コントロールとして、スクランブル配列に変更した下記ghR34aスクランブル(G17/P13)を使用し、同様に処理して、発現量を測定した。前記miR−34aについて、コントロールとして、スクランブル配列に変更した前記成熟miR−43aスクランブルを使用し、同様に処理して、発現量を測定した。また、未処理の単球(Normal)、および、miRNA未添加の細胞(mock)についても、同様に測定した。
ghR−34a(G17/P13)スクランブル(配列番号37)
5’-
UGUAUCGUUAUCGGGUCAUAACGAUACCUU-3’
【0139】
そして、前記成熟miR−34aスクランブルの導入細胞の発現量を1とした場合における、各種細胞でのサイトカインmRNAの発現量の相対値を算出した。これらの結果を、
図12(A)に示した。また、サイトカイン濃度の絶対量を(B)に示す。
【0140】
図12(A)は、サイトカインのmRNA発現量の相対値を示すグラフであり、
図12(B)は、サイトカインのタンパク質発現量の相対値を示すグラフである。
図12(A)および(B)に示すように、前記ghR−34a(G17/P13)を使用した場合、各サイトカインは、mRNAおよびタンパク質のいずれについても、前記miR−34aよりも発現が著しく抑制された。これらの結果から、本発明の人工ミミックmiRNAが、miRNAよりも、炎症性サイトカインを誘導しにくい核酸であることがわかった。
【0141】
(実施例7)
実施例2で作製したghR−34a(G17/P13)(配列番号25)について、成熟mi−R34aのパッセンジャー鎖と同様の副作用が生じるか否かを確認した。
【0142】
前記実施例1で示したように、成熟mi−R34aは、ガイド鎖とパッセンジャー鎖とからなる二本鎖であり、前記ガイド鎖は、AXL mRNAをターゲットmRNAとする。他方、成熟mi−R34aの前記パッセンジャー鎖(miR−34a−3P)も、それに相補的なmRNA(具体的には、CAB39 mRNA)に結合して、遺伝子発現抑制の働きを示す。しかし、前記パッセンジャー鎖による発現抑制は、望まない発現抑制であり、副作用と考えられる。そこで、前記成熟mi−R34aの前記パッセンジャー鎖による副作用、つまり、CAB39 mRNAの発現抑制が、前記ghR−34a(G17/P13)によっても生じるかを確認した。
【0143】
前記実施例1と同様の方法により、NCI−H1299細胞の培養、前記ghR−34a(G17/P13)または前記ヒト成熟miR−34aのトランスフェクション、トランスフェクション後の培養を行った。そして、前記実施例1と同様にして、トランスフェクションから2日後のRNAを抽出し、CAB39 mRNAの発現量を測定し、未処理細胞(Normal)の発現量を1として、発現量の相対値を求めた。また、前記ghR−34a(G17/P13)および前記miR−34aのそれぞれについて、スクランブル配列に変更した前記実施例6と同じ前記ghR−34a(G17/P13)スクランブルおよび前記実施例1と同じ前記成熟miR−43aスクランブルを使用し、同様に処理して、発現量の相対値を求めた。これらの結果を、
図13に示す。
【0144】
図13は、CAB39 mRNAの発現量の相対値を示すグラフである。
図13に示すように、前記miR−34aを使用した場合、CAB39 mRNAの発現抑制が確認されたが、前記ghR−34a(G17/P13)を使用した場合、CAB39 mRNAの発現抑制、つまり副作用はほとんどみられなかった。
【0145】
また、前記抽出したRNAについて、GeneChip(商品名GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array、Affymetrix社)を用いて、mRNAの網羅的解析を行った。そして、前記成熟mi−34aの導入により発現が低下する遺伝子として、ベーススケールシグナルが1000以上であり、且つ、発現が1/2に低下した115遺伝子を選択し、これらのうちで、前記パッセンジャー鎖のターゲット遺伝子としてmiRDB(miRNAデータベース)アルゴリズムにより予測される14遺伝子について、前記ghR−34a(G17/P13)により発現抑制の有無を確認した。これらの結果を
図14に示す。
【0146】
図14は、トランスフェクションしたmiRNAにより発現が抑制された遺伝子の有無を示すグラフであり、縦軸は、シグナル比(log2)を示す。
図14に示すように、前記成熟miRNAの導入により前記パッセンジャー鎖で発現抑制される14遺伝子のうち、前記ghR−34a(G17/P13)により発現抑制されるものはなかった。
【0147】
(実施例8)
実施例2で作製したghR−34a(G17/P13)(配列番号25)を、DICER1欠損またはAGO2欠損の肺癌細胞株に導入し、DICER非依存的またはAGO非依存的にAXL mRNAの発現を抑制できるか確認した。
【0148】
ヒトの体内における生体由来のmiRNAは、ヘアピン構造をとっており、これが、生体内において、DicerおよびAgoで切断され、前述のような二本鎖の成熟型miRNAとなり、遺伝子の発現抑制に関与する。このため、遺伝子の発現抑制について、生体由来のmiRNAはDicer依存性およびAgo依存性であるといえる。そこで、本発明の人工ミミックmiRNAについて、DICER非依存的またはAGO非依存的に遺伝子発現を抑制できるかを確認した。
【0149】
(1)DICER非依存性の確認
CRISPR/Cas9 Systemを用いて、H1299から、DICER1を欠損する肺癌細胞株を作成した。
図15に、ヒトDicer1 mRNAにおけるCRISPR/Cas9 ガイド鎖のハイブリダイゼーションの位置を示す。得られら2株(#1、#2)について、DICER1のタンパク質発現をウェスタンブロットにより確認したところ、発現は見られず、また、内在性miRNAであるlet−7a、miR−18aの発現も著しく減少した。前者の結果から、DICER1がタンパク質レベルで欠損していること、後者の結果から、DICER1が機能的に欠損していることが確認できた。
【0150】
DICER1欠損細胞株(#1、#2)を使用した以外は、前記実施例1と同様の方法により、前記細胞株の培養、前記ghR−34a(G17/P13)(配列番号25)のトランスフェクション、トランスフェクション後の培養を行った。そして、前記実施例1と同様にして、トランスフェクションから2日後のAXL mRNAの発現量を測定した。そして、未処理細胞(Non−treat)の発現量を1とし、AXL mRNAの発現量の相対値を求めた。また、前記ghR−34a(G17/P13)について、スクランブル配列に変更した前記実施例6と同じ前記ghR−34a(G17/P13)スクランブルを使用し、同様に処理して、発現量の相対値を求めた。これらの結果を、
図16に示す。
【0151】
図16は、AXL mRNAの結果を示すグラフであり、縦軸が発現量の相対値を示す。
図16に示すように、未処理細胞との比較により、前記ghR−34a(G17/P13)は、DICER1欠損細胞株においても、AXL mRNAの発現を抑制できることがわかった。つまり、本発明によれば、DICER1非依存的に、mRNAの発現を抑制できることがわかった。
【0152】
(2)AGO2非依存性の確認
CRISPR/Cas9 Systemを用いて、H1299から、AGO2を欠損する肺癌細胞株を作成した。
図17に、ヒトAGO2 mRNAにおけるCRISPR/Cas9 ガイド鎖のハイブリダイゼーションの位置を示す。得られた2株(#1、#2)について、AGO2のタンパク質発現をウェスタンブロットにより確認したところ、発現は見られなかった。また、GAPDHに対するsiRNAをトランスフェクションして、GAPDHの発現を確認したところ、前記siRNAのGAPDH発現抑制活性が著しく低下した。前者の結果から、AGO2がタンパク質レベルで欠損していること、後者の結果から、AGO2が機能的に欠損していることが確認できた。
【0153】
AGO2欠損細胞株(#1、#2)を使用した以外は、前記実施例1と同様の方法により、前記細胞株の培養、前記ghR−34a(G17/P13)または前記実施例1と同じ前記ghR−34aスクランブルのトランスフェクション、トランスフェクション後の培養を行った。そして、前記実施例1と同様にして、トランスフェクションから2日後のAXL mRNAの発現量を測定した。そして、Non−treatの発現量を1とし、AXL mRNAの発現量の相対値を求めた。これらの結果を、
図18に示す。
【0154】
図18は、AXL mRNAの結果を示すグラフであり、縦軸が発現量の相対値を示す。
図18に示すように、前記ghR−34a(G17/P13)は、H1299細胞だけでなく、AGO2欠損細胞株においても、AXL mRNAの発現を抑制できることがわかった。つまり、本発明によれば、DICER1だけでなくAGO2非依存的に、mRNAの発現を抑制できることがわかった。
【0155】
(実施例9)
実施例1で作製したghR−34a(G17/P13)(配列番号25)を、肺がんモデルマウスに導入し、治療効果を確認した。
【0156】
肺がんモデルマウスとして、活性化型KRASノックインマウス(johnson et al., Nature vol 410, p.1111, 26 April 2001参照)を使用した。6週齢のマウス(1投与群あたり8匹)に、前記ghR−34a(G17/P13)(配列番号25)またはまたは前記実施例6と同じ前記ghR34a(G17/P13)スクランブルを、0.5mg/kg 体重の投与量、4日間隔,計7回の条件で、マウス用噴霧器を用いて、気管投与した。投与のキャリアーには、キトサンを用いた。そして、投与開始から21日目、肺の重量の測定、肺全体積における腫瘍の体積割合、肺表面の腫瘍塊の数を測定した。これらの結果を
図19に示す。
【0157】
図19において、(A)は、肺重量を示すグラフであり、(B)は、肺全体積における腫瘍の体積割合を示すグラフであり、(C)は、肺表面の腫瘍塊の数を示すグラフである。
図19(A)、(B)および(C)に示すように、スクランブル配列を導入した核酸と比較して、前記ghR−34a(G17/P13)(配列番号25)の投与により、肺重量の増加、体積割合、腫瘍塊の数は、有意に減少した。
【0158】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0159】
この出願は、2013年12月26日に出願された日本出願特願2013−269599を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。