(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486841
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】粒子発泡体構造部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20190311BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20190311BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20190311BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20190311BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20190311BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B29C45/14
B29C67/20 P
B29C33/02
B32B25/08
B29K105:04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-561978(P2015-561978)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公表番号】特表2016-515956(P2016-515956A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014000636
(87)【国際公開番号】WO2014139667
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】102013004196.1
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513279593
【氏名又は名称】クラルマン クンストシュトッフフェアアルバイトゥング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ブレクセラー、インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイファング、ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ドール、トーマス
【審査官】
深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−001703(JP,A)
【文献】
特開昭56−028834(JP,A)
【文献】
特開2010−012617(JP,A)
【文献】
特開昭60−190335(JP,A)
【文献】
特開2003−277543(JP,A)
【文献】
特開平04−316834(JP,A)
【文献】
特開昭61−020727(JP,A)
【文献】
特開平07−285141(JP,A)
【文献】
国際公開第02/004188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 33/00−33/76、39/00−39/44
B29C 43/00−44/60、45/00−45/84
B29C 67/20
C09J 9/00−9/42
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体(11)を備えた粒子発泡体構造部材(10)であって前記発泡体が少なくともその外側表面の部分領域において熱可塑性エラストマーからなる1つの被覆層(13)を有している粒子発泡体構造部材の製造方法であって、前記発泡体(11)が金型(20)の中で発泡され、それに続く工程ステップにおいて、前記被覆層(13)が注入され、この場合、前記発泡体(11)の前記被覆層(13)を支える表面領域において、前記被覆層(13)を被着する前に、圧縮された表面構造(13)が形成され、前記被覆層(13)が前記圧縮された表面構造(12)と材料結合される製造方法において、前記発泡体(11)の前記圧縮された表面構造(12)が、スタンピング金型を用いて加えられる外部の圧縮力を前記発泡体(11)に作用させることにより形成されることを特徴とする粒子発泡体構造部材製造方法。
【請求項2】
前記圧縮力が作用する前記発泡体(11)の表面領域が、少なくとも部分的に、前記圧縮力を加える前に及び/又は加えている間に、溶融されることを特徴とする請求項1に記載の粒子発泡体構造部材製造方法。
【請求項3】
前記スタンピング金型が前記金型(20)の移動可能な金型部分(24)により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子発泡体構造部材製造方法。
【請求項4】
前記発泡体(11)の前記圧縮された表面構造(12)が、前記発泡体(11)の発泡後に形成されることを特徴とする請求項1に記載の粒子発泡体構造部材製造方法。
【請求項5】
前記圧縮された表面構造(12)が少なくとも部分的に、前記被覆層(13)を被着する前に又は被着する間に溶融されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子発泡体構造部材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体を備えた粒子発泡体構造部材に関し、この発泡体は、少なくとも、その外側表面の部分領域において、プラスチック材料からなる被覆層を有している。
【背景技術】
【0002】
本発明は、更に、少なくとも、その外側表面の部分領域において、プラスチック材料からなる被覆層を有している発泡体を備える粒子発泡体構造部材の製造方法に関し、この方法では、前記発泡体が金型内で泡立てられ、次工程において、前記被覆層上に又は前記被覆層に対して吹き付けられる。
【0003】
発泡されたプラスチック、例えば、発泡ポリスチロール(EPS)又は発泡ポリプロピレン(EPP)、からなる粒子発泡体構造部材は、様々な形態で知られており、重量及び絶縁、特に熱絶縁、に関して本質的な利点を有しているので、多くの産業分野で利用されている。これらは、例えば自動車産業において、金属製部品に対する重量低減のために又は音、熱に対する絶縁部材として又は機械的負荷用に多用されている。しかし、表面の美的外観が魅力的でなく、一般的にデザイナーの諸要求に十分に応えられないという欠点がある。これらの要求に対応するために、粒子発泡体構造部材に、後から、金属、プラスチック又は布からなる被覆層を付けることが知られている。金属、プラスチック又は布からなるこの被覆層は、後から粒子発泡体構造部材に貼り付けられるか、又は、特殊な保持器、特にクリップ、により粒子発泡体構造部材に固定される。
【0004】
近年、粒子発泡体構造部材の上に、後からプラスチック材料、特に熱可塑性エラストマー、を少なくとも部分的に、被覆成形することが知られている。このために粒子発泡体構造部材が射出成形機に入れられ、この際に、粒子発泡体構造部材と射出成形金型との間に空隙が残され、低粘度のプラスチックが高温で高圧下にこの空隙に注入される。
【0005】
可塑化されたプラスチックは、溶融体として、粒子発泡体構造部材と射出成形金型の型枠との間の空隙を充填する。粒子発泡体構造部材の表面構造が不規則で多孔性であるので、液状のプラスチックは、粒子発泡体構造部材の構造の表面に近い領域に多様に入り込む。この際に、粒子発泡体構造部材の構造の表面に近いゾーンに一定でない材料堆積が生じ、その結果、被着された熱可塑性の被覆層は、不均一な断面となる。これは、小形の粒子発泡体構造部材の場合又は使用者に見えないように組み込まれた粒子発泡体構造部材の場合には、まだ許容できるが、大きくて目に見える粒子発泡体構造部材では、この不規則性がそのうちに目立つようになり、美的観点において大いに妨げになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、均一な厚さを有する被覆層を備えた粒子発泡体構造部材を得ることにあり、この被覆層は、確実に且つ簡単な方法で発泡体と結合されていなければならない。更に、これに相応した粒子発泡体構造部材を簡単に作ることのできる方法を得ることも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
粒子発泡体構造部材に関する前述の課題は、本発明により請求項1の特徴を有する粒子発泡体構造部材によって解決される。ここでは、発泡体がその被覆層を支える領域において圧縮された表面構造を有するように構成されており、前記被覆層は、発泡体の圧縮された表面構造と材料結合(stoffschlussig verbunden)されている。
【0008】
本発明は、次の基本的な考えに基づく。即ち、好適には熱可塑性プラスチックからなる被覆層が、発泡された発泡体の上に、直接に被着されるのではなく、前記被覆層を備えるべき発泡体の表面領域が、被覆層を被着する前に圧縮されるという考えに基づく。この場合、例えば、圧縮された表面構造を形成するために、発泡体の細孔が互いに溶融されて閉鎖された表面を形成するようにすることができる。この方法により、液状の熱可塑性プラスチックが、被着時に、即ち注入時に、発泡体の中に入り込むことが防止される。こうして、発泡体の圧縮された表面構造により、被覆層が均一で予め決められた厚さを有することが保証される。
【0009】
この被覆層を発泡体の圧縮された表面構造と材料結合することにより、被覆層を発泡体上で全面に亘って保持することが、そのための固定手段などを必要とすることなく、保証される。
【0010】
しかし、これに加えて、被覆層を発泡体の圧縮された表面構造と嵌め合い結合(Formschlussig verbunden)及び/又は摩擦結合(kraftschlussig verbunden)で結合することもできる。
【0011】
好適には、被覆層のプラスチック材料は、熱可塑性のエラストマーである。
【0012】
方法に関する前述の課題は、被覆層を支える発泡体表面領域において、被覆層を被着する前に、圧縮された表面構造が形成されることにより解決され、このとき、被覆層は圧縮された表面構造と材料結合される。
【0013】
この圧縮により、発泡体の元々の開放された有孔性構造が均一な閉鎖された表面構造に変換される。圧縮され閉鎖された細孔を有するこの表面構造により、注入された熱可塑性プラスチックの溶融流が均一に且つ再現性よく生じる。これにより、注入された被覆層の規定された厚さを有する粒子発泡体構造部材が得られる。この被覆層を発泡体の圧縮された表面構造と材料結合することにより、被覆層を発泡体上で全面に亘って保持することが、そのための固定手段などを必要とすることなく、保証される。
【0014】
本発明の可能な実施例では、発泡体の圧縮された表面構造が、発泡体の発泡時に直接に金型の中で形成されるようにすることができる。これは、例えば、段階的に予め決められた温度に、金型の壁面を調節することによって可能であり、これによって、金型の中で発泡時に形成される粒子泡が金型のこの壁面で溶け、その結果、発泡粒子が表面のこの領域で互いに溶融して、閉鎖され圧縮された表面構造を形成する。
【0015】
しかし、発泡体の圧縮された表面構造が、発泡体の発泡後に形成されるようにするのが好適である。これは、その中で発泡体が発泡される金型と同じ金型の中で行なうことができるが、この発泡体を別の作業場所に移すことも可能である。
【0016】
発泡体の圧縮された表面構造の形成は、例えば、発泡体に外部の圧縮力を作用させることによって達成することができる。この場合、圧縮力が作用する発泡体の表面領域は少なくとも部分的に、圧縮力を加える前に及び/又は圧縮力を加えている間に、溶融される。この溶融と圧縮力印加とによって、材料の圧縮と同時に平滑な外側表面を達成することができる。
【0017】
この圧縮力は、例えばスタンピング金型を用いて、加えることができる。このスタンピング金型を加熱することによって、このスタンピング金型は、発泡体の表面領域の加熱及び溶融に同時に役立つ。この目的のために、スタンピング金型の中に加熱装置を配置することができる。
【0018】
本発明の特に好適な形態では、このスタンピング金型が移動可能な金型部分で形成されている。
【0019】
被覆層が被着されるべき発泡体表面領域に前記圧縮された構造が形成された後で、射出成形金型の中の発泡体の上に、好適には熱可塑性エラストマーからなる被覆層が注入される。この際、この被覆層は、圧縮された表面構造と材料結合される。この目的のために、本発明の展開形態では、発泡体の圧縮された表面構造は少なくとも部分的に、被覆層を被着する前に及び/又は被覆層を被着している間に、完全に溶融されるか又は少なくとも部分的に溶融される。
【0020】
本発明の他の個別事項及び特徴は、図を引用した実施例の以下の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】圧縮された表面構造を形成した後の
図2の金型
【
図9】発泡体が装入されている閉鎖された射出成形金型
【
図10】注入された被覆層を有する
図9の射出成形金型
【
図11】粒子発泡体構造部材を取り出す際の開放された射出成形金型
【発明を実施するための形態】
【0022】
図12は、粒子発泡体構造部材10の模式図であり、この粒子発泡体構造部材は、EPP又はEPSからなる発泡体11で構成されており、その一面に熱可塑性エラストマーからなる被覆層13を有している。発泡体11は、被覆層13を支えている領域において、圧縮された表面構造12を有している。
【0023】
以下、
図1から11に基づいて、この粒子発泡体構造部材10の製造方法を個別に説明する。
【0024】
図1は、容器状の下部の金型部分21を備えた金型20の模式図であり、この下部の金型部分には、発泡可能なプラスチック粒子を装入するための1つの充填ノズル22(模式的にしか示されていない)と、高温の蒸気を前記下部金型部分21で区画された型空洞25に装入するための2つの蒸気ノズルとが備えられている。型空洞25は、蓋状の第2の金型部分24で閉じられており、この蓋状の第2の金型部分24は、雄型の突起部24aにより型空洞25に差し込むことができる。蓋状の第2の金型部分24は、前記第1の金型部分に対して、両方向矢印Aで示されているように、相対的に移動可能である。更に、第2の金型部分24は、例として示された加熱装置26により、所望の温度に加熱することができる。
【0025】
そのスタート位置では、第2の金型部分24は、雄型の突起部24aと共に、
図1に示すように、型空洞25から後ろへ下がっている。
【0026】
雄型の第2の金型部分24は、加熱装置26の始動により予め決められた温度に予熱され、発泡可能な、特にEPP又はEPSからなる、プラスチックの粒子が充填ノズル22を通って型空洞25に入れられる。蒸気ノズル23を通って高温の蒸気が型空洞25に入れられ、これによって前記粒子が発泡され、型空洞25全体を形作る発泡体11が形成される。
【0027】
発泡体11を型空洞25内で予め決めた時間保持した後で、移動可能な第2の金型部分24が、その雄型の突起部24aと共に型空洞25の中に入り、発泡体11を圧縮し、雄型の突起部24aに面した表面で第2の金型部分24の高められた温度によって発泡体を溶かすように、操作される。発泡体11の溶融する境界層と第2の金型部分24の雄型の突起部24aによる圧縮とによって、第2の金型部分24と接する発泡体11の表面領域において、
図3に示すように、圧縮され細孔の閉じられた表面構造部12が生成される。
【0028】
予め選択された冷却期間の後に、蓋状の第2の金型部分24が取り外され、従って、金型20が開けられ(
図4参照)、上面に圧縮された表面構造12を有する発泡体11を金型20から取り出すことができる(
図5参照)。
【0029】
引き続いて次の工程ステップにおいて、
図6に示された圧縮された表面構造12を有する発泡体11の上に、熱可塑性プラスチックからなる被覆層13が注入される。これについて、以下に
図7から11に基づき説明する。
【0030】
図7は、容器状の下部の第1の金型部分31を有する射出成形金型30の模式図であり、この金型部分31が空洞34を規定している。圧縮された表面構造12を有する発泡体11を、
図7に示すように、この空洞34に入れることができる。
【0031】
引き続き、射出成形金型30は、その中に注入ノズル33が形成されている蓋状の上部の第2の金型部分32により閉じられる。これは
図8の矢印Vで示されている。
【0032】
図9は、発泡体11が入れられた、閉じられた射出成形金型30を示す。この場合、発泡体11の上面、即ち、発泡体11の圧縮された表面構造12、と第2の金型部分32との間に空隙35が形成されるようにするために、空洞34は発泡体11よりも幾分大きくなっている。
【0033】
この空隙35に注入ノズル33を通って熱可塑性エラストマーを注入することができ、このエラストマーは、被覆層13を形成し、発泡体11の圧縮された表面構造12と嵌め合い結合をする。
【0034】
予め決められた冷却期間の後に、射出成形金型30が開けられ、発泡体11と圧縮された表面構造12を介してこの発泡体11に結合している熱可塑性の被覆層13とを有する粒子発泡体構造部材10を、この射出成形金型から取り出すことができる(
図11参照)。
【符号の説明】
【0035】
10 粒子発泡体構造部材
11 発泡体
12 表面構造
13 被覆層
20 金型
21 金型の下部の第1の金型部分
22 粒子充填ノズル
23 蒸気ノズル
24 金型の上部の蓋状の金型部分
24a 雄型突起部
25 型空洞
26 加熱装置
30 射出成形金型
31 射出成形金型の下部の第1の金型部分
32 射出成形金型の上部の第2の金型部分
34 空洞