(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかるオゾン発生装置および当該オゾン発生装置の電源装置について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置の概略構成の一例を示す図である。本実施形態にかかるオゾン発生装置10は、誘電体バリア放電式のオゾン発生装置である。
図1に示すように、オゾン発生装置10は、オゾン発生装置本体11と、ヒューズ12を介してオゾン発生装置本体11に電力を供給する電源装置(高圧交流電源)13と、を有する。
【0012】
オゾン発生装置本体11は、気密容器15を有する。気密容器15は、原料ガスが導入されるガス入口16と、未反応の原料ガスおよびオゾン(O
3)が排出されるガス出口17と、を有する。気密容器15内には、誘電体電極21および金属電極23が設けられ、誘電体電極21と金属電極23との間には、原料ガスが流入される放電ギャップ22が形成されている。本実施形態では、気密容器15内に導入される原料ガスは、酸素、または酸素と窒素の混合ガスである。また、原料ガスのガス圧は、0.14〜0.22MPaの絶対圧である。
【0013】
本実施形態では、金属電極23には、ステンレス鋼製等の円筒状の電極を用いる。また、本実施形態では、金属電極23は、誘電体電極21との間に所定の放電ギャップ22を形成するための複数の突起23Aを有する。本実施形態では、放電ギャップ22の長さd(以下、ギャップ長と言う)は、0.38mmである。
【0014】
本実施形態では、誘電体電極21は、金属電極23と同軸の円筒状の電極であり、当該誘電体電極21の外周面側に、放電ギャップ22を介して金属電極23が設けられている。具体的には、誘電体電極21は、熱膨張係数が所定値より小さい素材で形成された円筒状の誘電体21A(以下、円筒状誘電体と言う)を有する。円筒状誘電体21Aは、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、高ケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、セラミックス等により形成される。円筒状誘電体21Aの内周面には、導電性の電極21B(以下、導電性電極と言う)を有する。導電性電極21Bは、ヒューズ12を介して電源装置13に接続された給電素子21C(以下、高圧給電素子と言う)と接続されている。導電性電極21Bは、例えば、金,銀,銅,ステンレス,クロム,錫,亜鉛,ニッケルカーボン,アルミニウム等を、スパッタリング,溶射,蒸着,無電解メッキ,電解メッキ,塗料塗布等の方法により形成される。
【0015】
オゾン発生装置本体11には、金属電極23の誘電体電極21が設けられた側とは反対側に、冷却水流路26が設けられている。冷却水流路26は、当該冷却水流路26に冷却水を導入する冷却水入口24と、当該冷却水流路26を流れて高温となった冷却水が排出される冷却水出口25とを有する。
【0016】
上述のオゾン発生装置10は、電源装置13から誘電体電極21(本実施形態では、導電性電極21B)に電圧を印加して、放電ギャップ22に流入される原料ガスで放電(これをバリア放電または無声放電と言うこともあるが、以下では誘電体バリア放電と言う)を発生させる。これにより、オゾン発生装置10は、当該誘電体バリア放電によって、原料ガスからオゾンを生成する。誘電体バリア放電は、放電ギャップ22に導入された原料ガスの温度を上昇させるが、冷却水流路26に導入される冷却水によって冷却される。これにより、オゾン発生装置10は、放電ギャップ22に導入された原料ガスの温度の上昇を抑制しつつ、高濃度かつ高収率のオゾンを生成することができる。本実施形態では、オゾン発生装置10で生成されたオゾンは、処理すべき水の脱臭や脱色や殺菌等の水処理に使用される。
【0017】
図2は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置が有する電源装置の回路構成の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、電源装置13は、商用電源201(本実施形態では、三相交流電源)から供給される商用電源周波数の交流電源を、直流電源に変換するコンバータ202と、当該コンバータ202により変換された直流電源を、所定周波数の交流電源に変換するインバータ203と、を有する。本実施形態では、所定周波数は、2.0〜4.5kHzの間の周波数である。
【0018】
また、電源装置13は、インバータ203により所定周波数に変換された交流電源を誘電体電極21に印加する。本実施形態では、電源装置13は、インバータ203により所定周波数に変換された交流電源を、トランス204を介して、誘電体電極21に印加する。オゾン発生装置本体11は、誘電体電極21に印加された交流電源を、放電ギャップ22に流入される原料ガス中で誘電体バリア放電させて、原料ガスからオゾンを生成する。オゾン発生装置本体11の等価回路は、誘電体電極21に相当する静電容量Cgと、放電ギャップ22に相当する静電容量Coとを直列接続した回路となる。
【0019】
そして、オゾン発生装置本体11は、放電ギャップ22に印加される交流電源の電圧Vo(以下、放電ギャップ電圧と言う)が所定電圧Vs(以下、放電維持電圧と言う)を超えると、誘電体バリア放電を発生する。誘電体バリア放電は定電圧特性を有するため、放電が発生している間、放電ギャップ22に印加される放電ギャップ電圧Voは、放電維持電圧Vsに維持される。また、放電ギャップ22は、放電ギャップ電圧Voが放電維持電圧Vsを超えると、誘電体バリア放電を発生する特性を有する。よって、放電ギャップ22の等価回路は、降伏電圧を有するツェナーダイオード205により表される。
【0020】
このように、放電ギャップ22が容量性負荷として機能するため、オゾン発生装置本体11は、放電ギャップ22における力率を「1」に近づけるために、当該放電ギャップ22に対してコイル206を直列接続している。本実施形態では、オゾン発生装置本体11は、放電ギャップ22に対してコイル206を直列接続しているが、これに限定するものではなく、放電ギャップ22に対してコイル206を並列接続しても良い。
【0021】
ところで、オゾン発生装置10は、放電ギャップ22を形成する誘電体電極21と金属電極23の製作精度若しくは組立精度のバラつきによって、放電ギャップ22のギャップ長dが不均一である場合、放電維持電圧Vsが変化してしまい、それに伴いオゾンの発生特性も変化する。そのため、オゾン発生装置10は、放電ギャップ電圧Voを高くした方が、放電ギャップ22に均一な放電が発生し易い。従来のオゾン発生装置では、誘電体電極21の端部で異常な放電が発生しないように、放電ギャップ電圧Voの上限である電圧Vop(以下、印加電圧と言う):11.0kVを、放電ギャップ22に印加している。この場合に、誘電体電極21に印加される実効的な電圧Vrms(以下、実効電圧と言う)は、7.78kVとなることから、国内規定で特別電圧に分類されてしまい、絶縁のためのブッシング,ヒューズ,高圧トランス,コイル等を大型化しなければならないという制約が課される。
【0022】
そこで、本実施形態のオゾン発生装置10は、気密容器15内に導入する原料ガスのガス圧を0.14〜0.22MPaとしかつギャップ長dを0.38mmとした場合に、2.0〜4.5kHzの間となる所定周波数の交流電源を放電ギャップ22に印加して、誘電体バリア放電を発生させる。これにより、誘電体電極21に印加される電圧を7.0kV以下に抑えつつ、オゾンの発生効率(以下、オゾン発生効率と言う)の減少を、所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0023】
図3は、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置において交流電源の周波数に対するオゾン発生効率および印加電圧の関係の一例を示す図である。
図3において、一方の縦軸はオゾン発生効率(g/kWh)を表し、他方の縦軸は印加電圧Vop(V)を表し、横軸は誘電体電極に印加する交流電源の周波数(言い換えると、インバータ203から出力される交流電源の周波数)を表す。また、
図3に示すオゾン発生効率は、原料ガスのガス圧が0.18MPaであり、かつ放電ギャップ22のギャップ長dが0.38mmの場合におけるオゾン発生装置10におけるオゾン発生効率を示している。
【0024】
図3に示すように、印加電圧Vopは、インバータ203から出力される交流電源の周波数が上がると、低下していく。ここで、印加電圧Vopが9.9kVである場合の実効電圧Vrmsは7.0kVとなる。すなわち、印加電圧Vopと実効電圧Vrmsは、Vop=√2・Vrmsの関係にある。よって、印加電圧Vopを9.9kV以下にするためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数は、2.0kHz以上にする必要がある。ただし、オゾン発生効率も、インバータ203から出力される交流電源の周波数が高くなるに従って低下するため、オゾン発生効率の減少を所定の許容減少率(例えば、2%)内に収めるためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数を、4.5kHz以下にする必要がある。
【0025】
以上の理由より、本実施形態にかかるオゾン発生装置10は、原料ガスのガス圧を0.18MPaとしかつギャップ長dを0.38mmとした場合における、インバータ203から出力される交流電源の周波数を2.0〜4.5kHzの間とする。これにより、誘電体電極21に印加される実効電圧Vrmsを7.0kV以下に抑えつつ、オゾン発生効率の減少を、所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0026】
このように、第1の実施形態にかかるオゾン発生装置10によれば、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
本実施形態は、原料ガスのガス圧を0.14〜0.22MPaとしかつギャップ長を0.9mmとした場合に、インバータから出力される交流電源の周波数を1.0〜3.4kHzの間とする例である。なお、第2の実施形態では
図1で示したものとほぼ同じ装置構成であることから、以下の説明では、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、オゾン発生装置10は、気密容器15内に導入する原料ガスのガス圧を0.14〜0.22MPaとしかつギャップ長dを0.9mmとした場合に、1.0〜3.4kHzの間となる所定周波数の交流電源を放電ギャップ22に印加して、誘電体バリア放電を発生させる。これにより、誘電体電極21に印加される電圧を7.0kV以下に抑えつつ、オゾン発生効率の減少を、所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0029】
図4は、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置における交流電源の周波数に対するオゾン発生効率および印加電圧の関係の一例を示す図である。
図4において、一方の縦軸はオゾン発生効率(g/kWh)を表し、他方の縦軸は印加電圧Vop(V)を表し、横軸は誘電体電極21に印加する交流電源の周波数を表す。また、
図4に示すオゾン発生効率は、原料ガスのガス圧が0.18MPaであり、かつ放電ギャップ22のギャップ長dが0.9mmである場合におけるオゾン発生装置10のオゾン発生効率を示している。
【0030】
図4に示すように、印加電圧Vopは、インバータ203から出力される交流電源の周波数が上がると、低下していく。ここで、印加電圧Vopが9.9kVである場合の実効電圧Vrmsは7.0kVとなり、印加電圧Vopと実効電圧Vrmsは、Vop=√2・Vrmsの関係にある。よって、印加電圧Vopを9.9kV以下にするためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数は、1.0kHz以上にする必要がある。ただし、オゾン発生効率も、インバータ203から出力される交流電源の周波数が高くなるに従って低下するため、オゾン発生効率の減少を所定の許容減少率(例えば、2%)内に収めるためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数を、3.4kHz以下にする必要がある。
【0031】
以上の理由により、本実施形態にかかるオゾン発生装置10は、原料ガスのガス圧を0.18MPaとしかつギャップ長dを0.9mmとした場合における、インバータ203から出力される交流電源の周波数を1.0〜3.4kHzの間とする。これにより、誘電体電極21に印加される電圧を7.0kV以下に抑えつつ、オゾンの発生効率の減少を、所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0032】
このように、第2の実施形態にかかるオゾン発生装置10によれば、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0033】
(第3の実施形態)
本実施形態は、原料ガスのガス圧を0.22〜0.3MPaとしかつギャップ長を0.38mmとした場合に、インバータから出力される交流電源の周波数を2.0〜5.0kHzの間とする例である。なお、第3の実施形態も第2の実施形態と同様に、
図1に示したものとほぼ同じ装置構成であることから、以下の説明では、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
【0034】
本実施形態では、オゾン発生装置10は、気密容器15内に導入する原料ガスのガス圧を0.22〜0.3MPaとしかつギャップ長dを0.38mmとした場合に、2.0〜5.0kHzの間となる所定周波数の交流電源を放電ギャップ22に印加して、誘電体バリア放電を発生させる。これにより、誘電体電極21に印加される電圧を7.0kV以下に抑えつつ、オゾン発生効率の減少を所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0035】
図5は、第3の実施形態にかかるオゾン発生装置における交流電源の周波数に対するオゾン発生効率および印加電圧の関係の一例を示す図である。
図5において、一方の縦軸はオゾン発生効率(g/kWh)を表し、他方の縦軸は印加電圧Vop(V)を表し、横軸は誘電体電極21に印加する交流電源の周波数を表す。また、
図5に示すオゾン発生効率は、原料ガスのガス圧が0.26MPaであり、かつ放電ギャップ22のギャップ長dが0.38mmである場合におけるオゾン発生装置10のオゾン発生効率を示している。
【0036】
図5に示すように、印加電圧Vopは、インバータ203から出力される交流電源の周波数が上がると、低下していく。ここで、印加電圧Vopが9.9kVである場合の実効電圧Vrmsは7.0kVとなり、印加電圧Vopと実効電圧Vrmsは、Vop=√2・Vrmsの関係にある。よって、印加電圧Vopを9.9kV以下にするためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数は、2.0kHz以上にする必要がある。ただし、オゾン発生効率も、インバータ203から出力される交流電源の周波数が高くなるに従って低下するため、オゾン発生効率の減少を所定の許容減少率(例えば、2%)内に収めるためには、インバータ203から出力される交流電源の周波数を、5.0kHz以下にする必要がある。
【0037】
以上の理由により、本実施形態にかかるオゾン発生装置10は、原料ガスのガス圧を0.26MPaとしかつギャップ長dを0.38mmとした場合における、インバータ203から出力される交流電源の周波数を2.0〜5.0kHzの間とする。これにより、誘電体電極21に印加される電圧を7.0kV以下に抑えつつ、オゾンの発生効率の減少を、所定の許容減少率内に収めることができるので、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0038】
このように、第3の実施形態にかかるオゾン発生装置10によれば、オゾン発生装置10の信頼性を維持しつつ、オゾン発生装置10の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。