(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通常運転から過冷却運転に移行する切り替え手段及び/又は過冷却運転から通常運転に移行する切り替え手段を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の環境試験装置。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の性能や耐久性を調べる方策として、環境試験が知られている。環境試験は、環境試験装置と称される設備を使用して実施される。環境試験装置は、例えば高温環境や、低温環境、高湿度環境等を人工的に作り出すものである。
環境試験装置は、例えば
図13の様な構成を備えている。
図13に示す環境試験装置100は、試験室3、冷却手段106、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却手段106の蒸発器107と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。
環境試験装置100では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0003】
冷却手段106は、相変化する熱媒体を使用して冷凍サイクルを実現するものであり、蒸発器107の他に、圧縮機101と、凝縮器102と、膨張弁103を有する循環回路である。ここで膨張弁103は、例えば電子膨張弁であり、開度を変化させることができる。圧縮機101を駆動するモータは、誘導モータであり、回転数を変化させることはできない。即ち圧縮機101を駆動するモータはインバータ制御されておらず、一定回転数で回転する。なお、インバータ駆動の圧縮機を用いることもある。
そして前記した圧縮機101と、凝縮器102と、膨張弁103及び蒸発器107が配管で環状に接続されて循環回路を構成し、その内部に相変化する冷媒が封入されている。冷媒は、前記した循環回路を循環する。
冷却手段106は、公知のそれと同様に、蒸発器107内で冷媒を膨張させ、蒸発器107の表面温度を低下させて環境から熱を奪う。
なお冷却手段106に加えて小型の補助冷却手段(図示せず)を備えたものがある。補助冷却手段は、試験室3内の温度が安定した後、試験室3内の温度を設定温度に維持する用途に使用される。
【0004】
加熱ヒータ6は、公知の電気ヒータである。
【0005】
加湿装置7は、加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものであり、水皿26内の水を加湿ヒータ25で加熱して蒸発させる。
【0006】
湿度センサー13は、湿度を検知可能なものであれば特に限定するものではなく、例えば、乾湿球湿度計等が採用できる。
【0007】
環境試験装置100は、内蔵される空気調和装置15によって、試験室3内に所望の温度・湿度環境を作るものである。
即ち、送風機8を駆動して試験室3内の空気を空気流路10に導入し、必要に応じて、加熱、冷却、加湿、除湿して試験室3内を所望の温度・湿度環境にする。
例えば、外気と同じ環境を開始環境とし、高温・高湿環境を作る場合には、加熱ヒータ6と加湿装置7を駆動して試験室3内を加熱及び加湿する。
逆に低温・低湿環境を作る場合には、冷却手段106を駆動して、試験室3内の温度及び湿度を低下させ、さらに加熱ヒータ6と加湿装置7を駆動して試験室3内の温度及び湿度を微調整する。
【0008】
また、低温・高湿環境を作る場合には、冷却手段106を駆動して、試験室3内の温度を低下させ、さらに加湿装置7を駆動して試験室3内の湿度を上昇させる。
低温・高湿環境を作る場合にも、温度及び湿度を微調整するために加熱ヒータ6等も運転される。
【0009】
いずれの場合においても、試験室3が所望の環境に至った後は、冷却手段106と、加熱ヒータ6及び加湿装置7を適宜動作させて、前記した所望の環境を維持する。
【0010】
従来技術の環境試験装置100に搭載されている冷却手段106について付言すると、冷却手段106は、カタログ等に表示した温度領域の環境を一定時間内に作り出すことができるだけの容量(定格出力)を持っている。
また被試験物が発熱するものであることを前提としている環境試験装置100であれば、冷却手段106は、発熱負荷を許容することができる容量を備えている。
例えば、摂氏100度から摂氏マイナス40度の環境を作ることができると表示されている環境試験装置100であるならば、搭載されている冷却手段106の圧縮機101は、常温状態の試験室3の温度を所定時間以内に摂氏マイナス40度に降下させることができるだけの容量を持っている。また搭載されている圧縮機101は、多少の外乱があっても、試験室3の温度を設定温度(例えば摂氏マイナス40度)に維持することができるだけの容量を持っている。
即ち従来技術の環境試験装置100の圧縮機101は、予想される最大の冷却負荷に対応できるだけの容量を備えている。
以下、説明の都合上、予想される最大の冷却負荷に対応できるだけの容量の圧縮機101を搭載した従来技術の環境試験装置100を「標準構成の環境試験装置100」あるいは「従来技術の環境試験装置100」と称する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
環境試験装置100は、電気機器を内蔵しており、当然に電力を消費する。また環境試験は、長時間に渡って行われることがある。そのため環境試験装置100は、相当に電力を消費する装置であると言える。
また環境試験装置100は、試験室3内の温度を精密に制御するため、前記した様に冷却手段106と加熱ヒータ6等を同時に駆動する場合がある。即ち冷却手段106は応答性が劣る。そのため環境試験装置100では、試験室3内がやや低温傾向となる様に冷却手段106を駆動し、同時に加熱ヒータ6を駆動して温度を微調整する場合がある。
ここで従来技術(標準構成)の環境試験装置100では、予想される最大の冷却負荷に対応できるだけの容量を持つ圧縮機101が搭載されているので、試験室3内の温度が安定している際には、冷却手段106の冷凍出力が過剰気味となり、加熱ヒータ6等の出力を増してこれを相殺する必要があった。そのため従来技術(標準構成)の環境試験装置100は、消費電力が大きいという不満があった。
【0013】
この状況に際し、市場においては、消費電力の少ない、所謂省エネ型の環境試験装置の開発が望まれている。
本発明者らは、この要求に応えるべく検討を重ね、環境試験装置100を構成する機器が消費する電力の割合を調査した。その結果、環境試験装置100を構成する機器の中で、冷却手段106の消費電力が最も多いことが分かった。
そこで本発明者らは冷却手段106の消費電力を抑制することを目的として、圧縮機101の容量を現状よりも小さいものに置き換えた環境試験装置(以下、改良型環境試験装置)200を試作した。
即ち冷却手段106の消費電力の大半は、圧縮機101を駆動させるのに要する電力である。そのため圧縮機101の容量を現状(標準構成)よりも小さくすれば、冷却手段106の消費電力が低下し、環境試験装置200全体の消費電力も下がる。
【0014】
ここで圧縮機101の容量を現状(標準構成)よりもある程度小さいものに置き換えても、冷媒の蒸発温度を上げることにより、現状(標準構成)と同等の冷凍出力を得ることができる。そのため試験室3内の温度がある程度高い場合には、環境試験を実施する上で特段の問題は生じない。
また公知の様に、実際の冷凍出力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)と、圧縮機101のモータ負荷(モータが発生する機械エネルギー量 消費電力)は比例せず、改良型環境試験装置200の冷却手段(冷凍機)106は、従来(標準構成)の冷却手段106と同等の冷凍出力を発現することができ、且つ消費電力は従来に比べて少ないものとなった。
【0015】
以下、この原理について簡単に説明する。
冷却手段106は、冷凍サイクルを構成する冷凍機であり、気体状の冷媒を圧縮機101で圧縮して冷媒ガスを高温高圧化する。そして凝縮器102で冷媒ガスを冷却して液化し、高圧の液体冷媒を作る。その後、膨張弁103で液体冷媒の圧力を下げ、蒸発器107内で液体冷媒を蒸発させて気化する。このとき、冷媒が気化熱を奪い、蒸発器107の表面温度が低下する。冷却手段106は上記した原理によって蒸発器107の表面温度を低下させている。
【0016】
従って冷凍出力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)は、蒸発器107に供給される冷媒の量に大きく依存し、蒸発器107に供給される冷媒の量が多いほど冷凍出力が大きい。
そのため改良型環境試験装置200は、冷媒の蒸発温度を従来(標準構成)よりも上げて蒸発器107に多くの冷媒を供給する方法を採用している。
その結果、改良型環境試験装置200は、標準構成よりも定格出力(容量)が小さい圧縮機101を搭載しているにも係わらず、従来と同等の冷凍出力を発揮することができる。
【0017】
次に蒸発器107の表面温度について説明する。
蒸発器107の表面温度は、冷媒の蒸発温度に依存し、冷媒の蒸発温度は冷媒の蒸発圧力に依存する。
具体的には、冷媒の蒸発圧力が低いと、冷媒の蒸発温度が低下し、蒸発器107の表面温度が低下する。逆に冷媒の蒸発圧力が高いと、冷媒の蒸発温度が上昇し、蒸発器107の表面温度が上昇する。
また冷媒の蒸発圧力は、膨張弁103の開度と圧縮機101の容量に依存し、膨張弁103の開度を絞るかあるいは圧縮機101からの冷媒吐出量が少ないと冷媒の蒸発温度が低下し、蒸発器107の表面温度が低下する。逆に膨張弁103の開度を広げるかあるいは圧縮機101からの冷媒吐出量が多いと冷媒の蒸発温度が上昇し、蒸発器107の表面温度が上昇する。
そのため改良型環境試験装置200は、前記した様に省エネルギー化を目的とするものであり、従来(標準構成)に比べて冷媒の蒸発温度が従来よりも上昇し、蒸発器107の表面温度が上昇してしまう。
【0018】
前記した様に、改良型環境試験装置200は、標準構成の環境試験装置100に比べて蒸発器107内における冷媒の蒸発圧力が高く、従来に比べて蒸発器107の表面温度が幾分高いものの、試験室3の設定温度がある程度高い場合には、環境試験を実施する上で特段の問題は生じない。
しかしながら改良型環境試験装置200は、極低温の環境を必要とする環境試験には適用が困難であった。
即ち改良型環境試験装置200は、従来(標準構成)に比べて蒸発器107内の冷媒の蒸発圧力が高くなり、従来に比べて蒸発器107の表面温度が幾分高くならざるを得ない。
蒸発器107の表面温度が幾分高くなるといっても蒸発器107の表面温度はある程度の温度にまで下がるので、試験室3の設定温度が例えばその温度以上である場合には、試験室3内の実際の温度よりも蒸発器107の表面温度を所定の温度幅をもって下げることができ、試験室3内の温度を所望の設定温度に下げ、且つそれを維持することができる。
【0019】
これに対して、例えば摂氏マイナス40度という様な極低温環境を試験室3内に作り出す場合は、蒸発器107の表面温度を少なくともこれ以下にしなければならない。望ましくは、蒸発器107の表面温度は、設定温度に対して所定の温度幅をもって下げるべきである。
しかしながら改良型環境試験装置200は、冷媒の蒸発温度が従来(標準構成)に比べて上昇し、蒸発器107の表面温度は従来(標準構成)に比べて高い。そのため改良型環境試験装置200は、蒸発器107の表面温度を下げにくい。
【0020】
ここで改良型環境試験装置200であっても、膨張弁103の開度を従来(標準構成)よりも絞れば、蒸発器107の表面温度を設定温度よりも下げることができる。
しかしながら、改良型環境試験装置200に搭載されている圧縮機101は、そもそも定格出力が標準構成に比べて小さいから、蒸発器107の表面温度を設定温度よりも下げて運転すると、必要な冷凍出力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)が得られない。
即ち標準構成の環境試験装置100に搭載されている冷却手段106の圧縮機101は、常温状態の試験室3の温度を所定時間以内に設定温度(例えば摂氏マイナス40度程度)に降下させ、且つ多少の外乱があっても、試験室3の温度をその温度に維持することができるたけの容量をもっているが、改良型環境試験装置200に搭載されている圧縮機101は、従来のものに比べて容量が小さい。
そのため蒸発器107の表面温度を極低温の設定温度よりも下げて運転すると、必要な冷凍出力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)が得られず、試験室3の温度を設定温度に低下させるのに過度の時間が掛かる。
即ち改良型環境試験装置200の試験室3の常温状態から対応温度範囲の下限に至るまでの試験室3内の温度と時間との関係を示す曲線(温度低下曲線)は、従来(標準構成)の環境試験装置100に比べて緩慢となる。
【0021】
そこで本発明は、前記した改良型環境試験装置200をさらに発展させ、消費電力が従来に比べて少なく、且つ試験室3の温度が、従来と同様の温度低下曲線を描いて所望の低温に達することが可能な環境試験装置の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、被試験物を配置する試験室と、冷却手段を有し、前記冷却手段は、主冷凍回路と、補助冷凍回路を有し、
前記主冷凍回路及び
前記補助冷凍回路は、いずれも圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、庫内蒸発器を有していて相変化する冷媒が循環するものであり、前記主冷凍回路及び
前記補助冷凍回路の前記庫内蒸発器は、
前記試験室内または
前記試験室に通じる位置に設けられており、前記補助冷凍回路
は、前記主冷凍回路の凝縮器から膨張手段に至るまでの間を通過する冷媒を冷却する冷媒冷却回路と、
前記補助冷凍回路の凝縮器から出た冷媒を前記補助冷凍回路の圧縮機に戻すバイパス回路を有し、前記冷媒冷却回路に流れる冷媒を断続及び/又は流量制御する冷媒制御手段を有し、
前記主冷凍回路及び/又は
前記補助冷凍回路に冷媒を循環させて
前記試験室内の温度を制御する通常運転と、
前記主冷凍回路に冷媒を循環させると共に
前記冷媒冷却回路に冷媒を通過させる過冷却運転を行うことが可能であり、一定の条件に基づいて前記冷媒制御手段を動作させ、前記通常運転と過冷却運転を切り替える切り替え制御手段を有
し、前記補助冷凍回路は、冷媒を前記補助冷凍回路の庫内蒸発器及び冷媒冷却回路に流さず、前記バイパス回路にのみ流すことが可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0023】
冷媒制御手段は、冷媒冷却回路に流れる冷媒を完全に遮断することができるものであることが望ましいが、必ずしも冷媒を完全に遮断することができるものである必要はない。冷媒冷却回路に流れる冷媒を完全に遮断することができない場合、通常運転の際には、冷媒冷却回路に導入される冷媒を少量とし、実質的に主冷凍回路を流れる冷媒の過冷却に実質的に寄与させないようにすればよい。
本発明の環境試験装置では、冷却手段として主冷凍回路と補助冷凍回路を有している。そして主冷凍回路及び補助冷凍回路の庫内蒸発器は、試験室内または試験室に通じる位置に設けられている。そのため本発明の環境試験装置では、主冷凍回路及び補助冷凍回路の庫内蒸発器の双方によって試験室内の温度等を調整することができる。
また本発明の環境試験装置では、補助冷凍回路から分岐され、主冷凍回路の凝縮器から膨張手段に至るまでの間を通過する冷媒を冷却する冷媒冷却回路を備えている。そのため本発明の環境試験装置では、主冷凍回路の冷媒を補助冷凍回路で冷却することができる。即ち本発明の環境試験装置では、主冷凍回路を流れる冷媒をより冷却し、過冷却状態として膨張手段に送り出すことができる。
本発明の環境試験装置では、凝縮器で放熱し、飽和液状態になった液体冷媒が、補助冷凍回路の低温冷媒で冷却されて過冷却状態になる。即ち飽和凝縮液が顕熱(相変化を伴わずに温度を変化させるのに要する熱エネルギー)を奪われて過冷却液となり、冷媒のエンタルピーが小さくなる。その過冷却された液体冷媒を膨張弁で断熱膨張させると、蒸発温度が仮に同じであってもエンタルピーが小さい状態で蒸発が開始される。
この様に本発明の環境試験装置においては、冷媒の過冷却状態が進んでいてエンタルピーが従来よりも小さい。本発明の環境試験装置においては、冷媒のエンタルピーは、飽和凝縮液のエンタルピーよりも小さく、このエンタルピーの差が従来に対する冷凍出力の増加量となる。
また蒸発器内部の冷媒の状態については、冷媒が過冷却状態で膨張手段に入った場合の方が、同じ蒸発温度でも、過冷却をしないで冷媒を膨張させた場合より、液の割合が多い。そのため冷凍能力が増加するとも言える。
本発明の環境試験装置では、凝縮器を出た直後の温度が例えば摂氏プラス30度の液冷媒を、さらに冷却して過冷却状態とし、例えば摂氏20度にする。この時の過冷却処理が成された際の熱移動が顕熱で奪われた熱量である。冷媒が膨張手段で摂氏マイナス40度に断熱膨張された時の冷凍能力は、摂氏30度の飽和液が摂氏マイナス40度に断熱膨張された時の冷凍能力より、過冷却された分だけ大きくなる。
また本発明の環境試験装置は、主冷凍回路等に冷媒を循環させて試験室内の温度を制御する通常運転と、主冷凍回路を流れる冷媒を過冷却状態として膨張手段に送り出す過冷却運転を、一定の条件に基づいて切り替える。そのため試験室の温度が、従来と同様の温度低下曲線を描いて所望の低温に達することができる。
また通常運転は、従来よりも容量の小さい圧縮機を使用して行うことができるので、消費電力は従来に比べて少ない。また過冷却運転で運転されている際においても、従来に比べて消費電力は少ないものとなる。
【0024】
同様の課題を解決するための請求項2に記載の発明は、被試験物を配置する試験室と、冷却手段を有し、前記冷却手段は、主冷凍回路と、補助冷凍回路を有し、
前記主冷凍回路は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、庫内蒸発器を有していて相変化する冷媒が循環するものであり、前記主冷凍回路の前記庫内蒸発器は、
前記試験室内または
前記試験室に通じる位置に設けられており、前記主冷凍回路の凝縮器から膨張手段に至るまでの間を通過する冷媒を冷却するものであって、前記補助冷凍回路の一部又は
前記補助冷凍回路から分岐された回路によって構成された冷媒冷却回路
と、前記補助冷凍回路の凝縮器から出た冷媒を前記補助冷凍回路の圧縮機に戻すバイパス回路を有し、
前記冷媒冷却回路に流れる冷媒を断続及び/又は流量制御する冷媒制御手段を有し、
前記主冷凍回路に冷媒を循環させて
前記試験室内の温度を制御する通常運転と、
前記主冷凍回路に冷媒を循環させると共に
前記冷媒冷却回路に冷媒を通過させる過冷却運転を行うことが可能であり、一定の条件に基づいて前記冷媒制御手段を動作させ、前記通常運転と過冷却運転を切り替える切り替え制御手段を有
し、前記補助冷凍回路は、冷媒を前記冷媒冷却回路に流さず、前記バイパス回路にのみ流すことが可能であることを特徴とする環境試験装置である。
【0025】
請求項3に記載の発明は、
前記補助冷凍回路に属する圧縮機の容量は、
前記主冷凍回路に属する圧縮機の容量よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0026】
補助冷凍回路の主たる用途は、冷媒冷却回路に冷媒を送り出すことであり、主冷凍回路を流れる冷媒を冷却することである。そのため補助冷凍回路に属する圧縮機の容量は、主冷凍回路に属する圧縮機の容量より小さいもので足る。
【0027】
請求項4に記載の発明は、
前記試験室の温度が一定温度低下になった場合及び/又は
前記試験室の温度と
前記主冷凍回路に属する
庫内蒸発器の表面温度の差が一定以下となった場合に、過冷却運転が行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0028】
本発明の環境試験装置は、試験室内の温度が従来と同様の温度低下曲線を描いて低下し、所望の低温に達する。
【0029】
請求項5に記載の発明は、
前記主冷凍回路は、冷媒の蒸発温度を調節可能であり、
前記試験室の温度低下に応じて蒸発温度を低下させ、
前記試験室の温度が一定温度以下となったことを条件として通常運転から過冷却運転へ切り替えられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0030】
本発明の環境試験装置は、試験室内の温度が従来と同様の温度低下曲線を描いて低下し、所望の低温に達する。
【0031】
請求項6に記載の発明は、
前記補助冷凍回路は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、庫内蒸発器を有していて相変化する冷媒が循環するものであり、
前記試験室内の温度が一定の中温以上であり、
前記試験室の設定温度が一定の低温以下である場合には、
前記主冷凍回路と
前記補助冷凍回路を駆動して前記主冷凍回路及び
前記補助冷凍回路の庫内蒸発器に冷媒を通過させる急冷運転を実行し、
前記試験室内の温度低下に応じて前記双方の庫内蒸発器内における蒸発温度を低下させ、その後に
前記補助冷凍回路の庫内蒸発器に対する冷媒の供給を停止して過冷却運転に切り替え、
前記試験室内の温度が設定温度に達すると前記主冷凍回路だけで通常運転を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0032】
ここで「中温度」とは常温近傍またはそれよりもやや低い温度であり、過冷却運転を行わなくても、試験室内の温度と蒸発器の表面温度との間に相当の温度差を生じさせることができる程度の温度である。
本発明の環境試験装置では、試験開始前の試験室内の温度が一定の中温度以上である場合には、主冷凍回路と補助冷凍回路を駆動して急冷運転を行い、試験室内の温度を短時間の内に低下させることができる。
また本発明の環境試験装置では、試験室内の温度低下に応じて前記双方の庫内蒸発器内における蒸発温度を低下させるので、試験室内の温度が低下していっても、庫内蒸発器の表面温度をそれ以下に維持することができる。
【0033】
請求項7に記載の発明は、
前記補助冷凍回路は、
前記バイパス回路において
前記補助冷凍回路の凝縮器から出た冷媒が
前記補助冷凍回路の圧縮機から出た冷媒と熱交換され、過熱ガスとなって
当該圧縮機に戻されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0034】
過冷却運転から通常運転に切り替える際には、徐々に主冷凍回路を冷却する補助冷凍回路の冷媒量を減らすため、補助冷凍回路にバイパス回路を設けることが望ましい。これにより主冷凍回路の冷凍能力を連続的に可変することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明は、
前記主冷凍回路は、
当該主冷凍回路の凝縮器から出た冷媒を
当該主冷凍回路の圧縮機に戻すバイパス回路を有し、
当該バイパス回路において前記
主冷凍回路の凝縮器から出た冷媒が
前記主冷凍回路の圧縮機から出た冷媒と熱交換され、過熱ガスとなって
当該圧縮機に戻されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0036】
本発明では、主冷凍回路にバイパス回路が設けられているから、蒸発器に流れる冷媒をより少なくすることができる。
バイパス回路の容量は、圧縮機から出た冷媒を全量通過させて圧縮機に戻すことができるものであることが望ましい。即ち蒸発器に流れる冷媒を止めても、圧縮機を止めずに主冷凍回路を運転することが可能であることが望ましい。
またバイパス回路には、膨張弁等の流量調節手段があることが望ましい。バイパス回路に膨張弁等の流量調節手段を設けることにより、蒸発器を迂回する冷媒量を任意に調節することができ、結果的に蒸発器に流れる冷媒を調整することができる。
【0037】
請求項9に記載の発明は、通常運転から過冷却運転に移行する切り替え手段及び/又は過冷却運転に通常運転からに移行する切り替え手段を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0038】
本発明によると環境試験装置を停止することなく運転方法を切り替えることができ、試験室内の温度を円滑に制御することができる。
【0039】
請求項10に記載の発明は、
前記試験室の設定温度を設定することが可能であり、設定温度及び/又は
前記試験室の現状の温度に応じて通常運転と過冷却運転が切り替わることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0040】
本発明によると運転方法を自動的に選択することができる。
【0041】
請求項11に記載の発明は、
前記補助冷凍回路の運転を停止することが可能であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0042】
本発明によると運転方法を変更することができる。
請求項12に記載の発明は、前記補助冷凍回路のバイパス回路の開度を変更することによって前記冷媒冷却回路に流れる冷媒の流量を制御することが可能であり、前記過冷却運転を行っている場合であって、前記試験室内の温度が設定温度の近傍に至ると、前記過冷却運転を行いつつ前記補助冷凍回路のバイパス回路の開度を開いてゆくことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の環境試験装置である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の環境試験装置は、消費電力が従来に比べて少ない。また本発明の環境試験装置では、試験室の温度が従来と同様の温度低下曲線を描いて所望の低温に達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。なお従来技術(標準構成)の環境試験装置100と同一の部材については、同一の番号を付して重複した説明を省略する。
本発明の実施形態の環境試験装置1の機械的構成は、冷却手段30の構造を除いて従来技術の環境試験装置100と同一である。
即ち環境試験装置1は
図1の様に、試験室3、冷却手段30、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却手段30の2基の庫内蒸発器38,48と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。加湿装置7は、加湿ヒータ25と水皿26が組み合わされたものであり、水皿26内の水を加湿ヒータ25で加熱して蒸発させる。
また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。環境試験装置1では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0046】
冷却手段30は、本実施形態の特徴的構成であり、詳細に説明する。本実施形態で採用する冷却手段30は、2系統の冷凍回路31,32を有している。その内の一方の冷凍回路31は、主冷凍回路31である。また他方は補助冷凍回路32である。
主冷凍回路31は、
図2の太線で描かれた回路である。主冷凍回路31は、公知のそれと同様に、圧縮機35と、凝縮器36と、膨張手段37及び蒸発器38が配管で環状に接続されて循環回路を構成し、その内部に相変化する冷媒が封入されたものである。
以下、主冷凍回路31側の機器を補助冷凍回路32側の機器と区別するため、主冷凍回路31の構成部材を主側圧縮機35、主側凝縮器36、主側膨張手段37及び主側庫内蒸発器38と称する。
また本実施形態では、主冷凍回路31上に、戻り冷媒加熱用熱交換器63の一次側流路と、過冷却用熱交換器50の二次側流路がある。従って本実施形態では、主冷凍回路31は、主側圧縮機35から、戻り冷媒加熱用熱交換器63の一次側流路、主側凝縮器36、過冷却用熱交換器50の二次側流路、主側膨張手段37及び主側庫内蒸発器38を巡って主側圧縮機35に戻る環状流路である。
【0047】
一方、補助冷凍回路32は、
図3の太線で描かれた回路である。補助冷凍回路32も公知のそれと同様に、圧縮機45と、凝縮器46と、膨張手段47及び蒸発器48及び逆止弁49が配管で環状に接続されて循環回路を構成し、その内部に相変化する冷媒が封入されたものである。
以下、補助冷凍回路32側の機器を主冷凍回路31側の機器と区別するため、補助冷凍回路32の構成部材を補助側圧縮機45、補助側凝縮器46と、補助側膨張手段47及び補助側庫内蒸発器48と称する。
また本実施形態では、補助冷凍回路32上に、戻り冷媒加熱用熱交換器65の一次側流路が介在されている。
従って本実施形態では、補助冷凍回路32は、補助側圧縮機45から、戻り冷媒加熱用熱交換器65の一次側流路、補助側凝縮器46、補助側膨張手段47、補助側庫内蒸発器48、逆止弁49を巡って補助側圧縮機45に戻る環状流路である。
【0048】
主冷凍回路31内の冷媒と、補助冷凍回路32内の冷媒が入れ混じることはないが、主冷凍回路31と補助冷凍回路32の間は、過冷却用熱交換器50を介して熱的に連係されている。以下、説明する。
本実施形態では、主冷凍回路31上に、過冷却用熱交換器50が設けられている。過冷却用熱交換器50の取り付け位置は、主冷凍回路31上であって、主側凝縮器36と主側膨張手段37の間である。
本実施形態では、過冷却用熱交換器50の二次側流路が主冷凍回路31に接続されており、主側凝縮器36を通過して液化した冷媒が、過冷却用熱交換器50の二次側流路を通過して主側膨張手段37に至る。
【0049】
また過冷却用熱交換器50の一次側流路は、比較的大きな空間があり、実質的に蒸発器としての機能を発揮する。
過冷却用熱交換器50の一次側流路は、補助冷凍回路32から分岐された冷媒冷却回路51の一部を構成している。
冷媒冷却回路51は、補助冷凍回路32の補助側凝縮器46と補助側膨張手段47の間から分岐され、補助側圧縮機45の吸入側に至る流路であり、その中途に、冷媒冷却用膨張手段52と前記した過冷却用熱交換器50の一次側流路が介在されている。
【0050】
また補助的回路として、主冷凍回路31側には主冷凍回路側バイパス回路60があり、補助冷凍回路32側には補助冷凍回路側バイパス回路61がある。
主冷凍回路側バイパス回路60は、主冷凍回路31の過冷却用熱交換器50と主側膨張手段37の間から分岐され、主側圧縮機35の吸入側に至る流路である。主冷凍回路側バイパス回路60の中途にバイパス用膨張手段53と戻り冷媒加熱用熱交換器63の二次側流路がある。
補助冷凍回路側バイパス回路61は、補助冷凍回路32の補助側凝縮器46と補助側膨張手段47の間から分岐され、補助側圧縮機45の吸入側に至る流路であり、その中途にバイパス用膨張手段66と戻り冷媒加熱用熱交換器65の二次側流路がある。
【0051】
本実施形態では、冷却手段30の圧縮機(主側圧縮機35と補助側圧縮機45)はいずれも誘導モータで駆動されるものであり、回転数は一定であって変えることはできない。即ち本実施形態では、冷却手段30の圧縮機(主側圧縮機35と補助側圧縮機45)はいずれもインバータ制御機能を備えていない。
主側圧縮機35と補助側圧縮機45の容量は相違する。具体的には補助側圧縮機45の容量は主側圧縮機35の容量よりも小さい。
主側圧縮機35の容量と補助側圧縮機45の容量の割合は、目的の冷凍能力と省エネ効果のバランスで決められる。本実施形態では、補助側圧縮機45の容量は、主側圧縮機35の容量の20乃至35パーセントである。
【0052】
即ち補助側圧縮機45の容量は主側圧縮機35の容量の50パーセント以下であることが望ましく、より望ましくは35パーセント以下である。また補助側圧縮機45の容量は主側圧縮機35の容量の20パーセント以上であることが望ましい。
最も推奨される補助側圧縮機45の容量は、主側圧縮機35の容量の20乃至35パーセントである。
【0053】
補助冷凍回路32の主たる用途は、主冷凍回路31を流れる冷媒を過冷却状態とすることにあるから、補助側圧縮機45には大きな容量は必要でなく、且つ容量が大きいと省エネの目的に反することとなる。一方、過度に補助側圧縮機45の容量が小さいと、主冷凍回路31を流れる冷媒を十分に過冷却状態とすることができない。
【0054】
また主側圧縮機35の容量は、従来(標準構成)に比べて小さい。主側圧縮機35だけを使用すると、次のいずれかの事態が生じる可能性がある。
(1)主側圧縮機35だけを使用して試験室3を冷却すると、カタログに記載した温度適用範囲の最低温度に達しない。
(2)主側圧縮機35だけを使用して常温の試験室3を冷却すると、カタログに記載した温度適用範囲の最低温度に達するのに従来(標準構成)に比べて時間を要する。例えば90分以上を要する。
【0055】
また本実施形態では、冷却手段30の膨張手段はいずれも電子膨張弁であり、開度を変化させることができる。冷却手段30の膨張手段はいずれも全閉状態とすることができる。即ち主側膨張手段37、補助側膨張手段47、冷媒冷却用膨張手段52、バイパス用膨張手段53、バイパス用膨張手段66はいずれも電子膨張弁であって開度を変化させることができ、且つ全閉状態とすることができる。
【0056】
本実施形態では、補助冷凍回路32の補助側膨張手段47と、冷媒冷却回路51の冷媒冷却用膨張手段52が、冷媒冷却回路51に流れる冷媒を断続する冷媒制御手段として機能する。本実施形態では、補助側膨張手段47と、冷媒冷却用膨張手段52を開閉することによって冷媒冷却回路51が断続される。
即ち補助側膨張手段47を閉じ、冷媒冷却用膨張手段52を開くことによって冷媒冷却回路51が開かれ、補助側庫内蒸発器48に至る流路は遮断される。その結果、冷媒が過冷却用熱交換器50の一次側流路に供給される。
逆に補助側膨張手段47を開き、冷媒冷却用膨張手段52を閉じることによって冷媒冷却回路51が閉じられ、補助側庫内蒸発器48に至る流路が開く。その結果、冷媒が補助側庫内蒸発器48に供給される。
【0057】
本実施形態の環境試験装置1では、冷却手段30を4通りの運転方式で運転することができる。
より具体的には、
図2に太線で示す主冷凍回路31に冷媒を循環させる中冷運転(通常運転)と、
図3に太線で示す補助冷凍回路32に冷媒を循環させる緩冷運転(通常運転)と、
図4に太線で示す様に冷媒を主冷凍回路31と補助冷凍回路32の双方に循環させる急冷運転(通常運転)と、
図5に示す様に冷媒を主冷凍回路31と冷媒冷却回路51に循環させる過冷却運転を行うことができる。
【0058】
中冷運転(
図2)では、主冷凍回路31に属する主側圧縮機35だけを駆動し、補助冷凍回路32に属する補助側圧縮機45は停止される。
中冷運転(
図2)は、主冷凍回路31のみに冷媒を循環させて行われる。
中冷運転では、主側圧縮機35で気体状の冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は戻り冷媒加熱用熱交換器63の一次側流路を通過し、主側凝縮器36に入って液化される。そして液化した冷媒は、過冷却用熱交換器50の二次側流路を素通り(熱交換されない)して、主側膨張手段37で減圧され、主側庫内蒸発器38に入って蒸発し、主側圧縮機35に戻る。
また本実施形態では、試験室3の温度が監視され、試験室3の温度が低下するとそれに応じて主側庫内蒸発器38の表面温度を低下させるべく主側膨張手段37の開度が絞られる。
【0059】
即ち試験室3の温度がある程度下がると、主側庫内蒸発器38と試験室3内の温度差が小さくなり、熱交換効率が低下するので、主側膨張手段37の開度が絞られる。
主側庫内蒸発器38と試験室3内の温度差が小さくなると、前記した様に主側膨張手段37の開度がしだいに絞られ、主側庫内蒸発器38の温度が低下するので主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保される。
【0060】
なお試験室3内の温度が設定温度に到達した後は、省エネルギーのためさらに主側膨張手段37の開度を絞っていくが、冷媒を主側膨張手段37に通過させるために、主側圧縮機35の吸込み圧力の下限となるまでしか開度を小さくできない。
しかしながら主冷凍回路側バイパス回路60を開いていくことにより、主側膨張手段37を通過させて主側庫内蒸発器38に流す冷媒量を更に少なくできる。
即ち主側膨張手段37の開度が一定であっても、バイパス用膨張手段53を閉じた状態から開くことにより、あるいはバイパス用膨張手段53の開度をより広げることにより、主側膨張手段37を流れる冷媒の量を減少させることができる。
本実施形態では、主としてバイパス用膨張手段53の開度を調整し、主冷凍回路側バイパス回路60を開いていくことにより、主側膨張手段37を通過して主側庫内蒸発器38に流す冷媒量を減少させてゆく制御を「主冷凍回路側バイパス制御」と称する。
また主として主側膨張手段37の開度を絞って主側庫内蒸発器38に流す冷媒量を減少させてゆく制御を「通常制御」と称し、「主冷凍回路側バイパス制御」と区別する。
【0061】
また本実施形態では、主冷凍回路側バイパス回路60の太さやバイパス用膨張手段53の口径が相当に大きく、主側圧縮機35を駆動した状態を維持して、主側膨張手段37を通過して主側庫内蒸発器38に流れる冷媒をゼロにすることができる。即ち主側圧縮機35から出た冷媒の全量を主冷凍回路側バイパス回路60に流して主側圧縮機35に戻すことができる。
【0062】
主側膨張手段37の開度が絞られると、主側庫内蒸発器38を通過する冷媒の量が減少するので、余剰の冷媒がある場合にも主冷凍回路側バイパス回路60を経由して主側圧縮機35の吸入側に戻される。
バイパス用膨張手段53が開かれると冷媒の一部又は全部が主冷凍回路側バイパス回路60に流れる。そして冷媒は、戻り冷媒加熱用熱交換器63の二次側流路に流れて、冷媒加熱用熱交換器63の一次側流路を流れる高温の冷媒と熱交換されて気化され、過熱ガスとなった状態で主側圧縮機35の吸入側に戻る。
本実施形態の環境試験装置1では、主冷凍回路31の主側圧縮機35の容量が従来(標準構成)に比べて小さいので、主側圧縮機35だけを駆動して実施される中冷運転の消費電力は、従来に比べて少ない。
【0063】
次に緩冷運転(
図3)について説明する。
緩冷運転(
図3)は、前記した様に補助冷凍回路32に冷媒を循環させて行われる。緩冷運転では、補助冷凍回路32に属する補助側圧縮機45だけを駆動し、主冷凍回路31に属する主側圧縮機35は停止される。
また緩冷運転を行う際には冷媒冷却用膨張手段52が閉鎖され、冷媒冷却回路51への冷媒供給が阻止される。
緩冷運転では、補助側圧縮機45で気体状の冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は戻り冷媒加熱用熱交換器65の一次側流路を通過し、補助側凝縮器46に入って液化される。そして液化した冷媒は、補助側膨張手段47で減圧され、補助側庫内蒸発器48に入って蒸発し、補助側圧縮機45に戻る。
前記した様に本実施形態では、試験室3の温度が監視され、試験室3の温度が低下するとそれに応じて補助側庫内蒸発器48の表面温度を低下させるべく補助側膨張手段47の開度が絞られる。
【0064】
緩冷運転時においても、バイパス用膨張手段66を開いて補助冷凍回路側バイパス回路61に冷媒を通過させることにより、補助側膨張手段47を通過させて補助側庫内蒸発器48に流す冷媒量を更に少なくすることができる。
本実施形態では、補助冷凍回路側バイパス回路61を開いていくことにより、補助側膨張手段47を通過させて補助側庫内蒸発器48に流す冷媒量を減少させてゆく制御を「補助冷凍回路側バイパス制御」と称する。
また主として補助側膨張手段47の開度を絞って補助側庫内蒸発器48に流す冷媒量を減少させてゆく制御を「通常制御」と称し、「補助冷凍回路側バイパス制御」と区別する。
【0065】
本実施形態では、補助冷凍回路側バイパス回路61の太さやバイパス用膨張手段66の口径が相当に大きく、補助側圧縮機45を駆動した状態を維持して、補助側膨張手段47を通過して補助側庫内蒸発器48に流れる冷媒をゼロにすることができる。即ち補助側凝縮器46から出た冷媒の全量を補助冷凍回路側バイパス回路61に流し、冷媒加熱用熱交換器65で加熱し過熱ガスとした状態で補助側圧縮機45に戻すことができる。
【0066】
緩冷運転は、容量の小さい補助側圧縮機45を駆動して冷却するので、冷凍能力は小さい。
【0067】
次に急冷運転(図
4)について説明する。
急冷運転(図
4)は、主冷凍回路31と補助冷凍回路32の双方を駆動して冷却を行う運転方式である。即ち急冷運転では、主冷凍回路31に属する主側圧縮機35と補助冷凍回路32に属する補助側圧縮機45を駆動し、前記した中冷運転に相当する運転と、緩冷運転に相当する運転が同時に行われる。
急冷運転は、2基の圧縮機(主側圧縮機35と補助側圧縮機45)を同時に駆動して冷却が行われるので冷凍能力が大きい。
なお試験室3内の温度がある程度高い場合には、主側庫内蒸発器38の表面温度と補助側庫内蒸発器48の表面温度は一般に試験室3よりも低いから、主側庫内蒸発器38の温度と補助側庫内蒸発器48の温度に差があっても差し支えない。
一方、試験室3内の温度が相当に低い場合には、主側庫内蒸発器38の温度と補助側庫内蒸発器48の温度がいずれも試験室3内の温度より低くなる様に制御される。
【0068】
急冷運転時においても「主冷凍回路側バイパス制御」及び「補助冷凍回路側バイパス制御」を行うことができる。また急冷運転時に主側圧縮機35を駆動した状態を維持して、主側膨張手段37を通過して主側庫内蒸発器38に流れる冷媒をゼロにすることができる。同様に急冷運転時に補助側圧縮機45を駆動した状態を維持して、補助側膨張手段47を通過して補助側庫内蒸発器48に流れる冷媒をゼロにすることができる。
本実施形態の環境試験装置1では、主冷凍回路31の主側圧縮機35の容量が従来(標準構成)に比べて小さいので、主側圧縮機35を駆動して実施される急冷運転の消費電力は、補助冷却手段を有するタイプの従来技術の環境試験装置に比べて少ない。
【0069】
次に、過冷却運転について説明する。過冷却運転は、
図5に示す様に冷媒を主冷凍回路31と冷媒冷却回路51に循環させて行われる。
過冷却運転を行う場合は、冷媒制御手段たる補助側膨張手段47を閉じて補助側庫内蒸発器48に至る流路を遮断し、冷媒冷却用膨張手段52を開く。
過冷却運転の際には主側圧縮機35及び補助側圧縮機45の双方を駆動する。過冷却運転の際には補助冷凍回路32に属する補助側圧縮機45を駆動するが、補助冷凍回路32の補助側庫内蒸発器48には冷媒を流さない。具体的には、補助側庫内蒸発器48に繋がる補助側膨張手段47を閉止し、補助側庫内蒸発器48は使用しない。
それに代わって、補助冷凍回路32では、冷媒冷却用膨張手段52が開かれ、冷媒冷却回路51に冷媒が供給される。
【0070】
過冷却運転の際には、補助側圧縮機45が駆動されており、補助側圧縮機45で気体状の冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は戻り冷媒加熱用熱交換器65の一次側流路を通過し、補助側凝縮器46に入って液化される。そして液化した冷媒は、冷媒冷却用膨張手段52で減圧され、過冷却用熱交換器50の一次側流路に入る。前記した様に過冷却用熱交換器50の一次側流路は、実質的に蒸発器としての機能を発揮する。その結果、冷媒は過冷却用熱交換器50の一次側流路で気化し、一次側流路の温度が低下する。気化した冷媒は補助側圧縮機45に戻る。
【0071】
一方、主冷凍回路31では、前記した中冷運転(
図2)と同等の流路を冷媒が循環している。即ち主冷凍回路31では、主側圧縮機35で気体状の冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒は戻り冷媒加熱用熱交換器63の一次側流路を通過し、主側凝縮器36に入って液化される。そして液化した冷媒は、過冷却用熱交換器50の二次側流路を通過する。
ここで過冷却運転の際には、補助側圧縮機45が駆動されていて補助側凝縮器46で液化した冷媒が冷媒冷却回路51を流れ、過冷却用熱交換器50の一次側流路で蒸発し、一次側流路の温度が低下している。
そのため主冷凍回路31を流れ、主側凝縮器36で液化した冷媒は、過冷却用熱交換器50でさらに冷却され、強度に過冷却状態となる。即ち主側凝縮器36で液化した冷媒も幾分過冷却状態である場合が多いが、過冷却用熱交換器50でさらに冷却されることによって過冷却の程度が進む。
【0072】
過冷却用熱交換器50による冷却量、言い換えれば過冷却の程度は、冷媒冷却回路51を通過する冷媒の量を増減することによって調整される。
本実施形態では、バイパス用膨張手段66の開度を調節することにより、冷媒冷却回路51を通過する冷媒の量を増減し、過冷却用熱交換器50による冷却量を変化させることができる。
また過冷却運転時においても、バイパス用膨張手段66を開いて補助冷凍回路側バイパス回路61に冷媒を通過させることにより、冷媒冷却用膨張手段52を通過して過冷却用熱交換器50に流れる冷媒量を更に少なくすることができる。
即ち本実施形態では、補助冷凍回路32側に補助冷凍回路側バイパス回路61があり、補助冷凍回路側バイパス回路61にはバイパス用膨張手段66が設けられている。そしてバイパス用膨張手段66は開度を変更可能である。
本実施形態では、冷媒冷却回路51側の冷媒冷却用膨張手段52の開度と、補助冷凍回路側バイパス回路61に設けられたバイパス用膨張手段66の開度を調整することにより、過冷却用熱交換器50に流れる冷媒の量を調節し、主冷凍回路31を流れる冷媒の過冷却度を調整することができる。
【0073】
前記した様に補助冷凍回路側バイパス回路61の太さやバイパス用膨張手段66の口径が相当に大きいので、補助側圧縮機45を駆動した状態を維持して、冷媒冷却用膨張手段52を通過して過冷却用熱交換器50に流れる冷媒をゼロにすることができる。
本実施形態では、補助冷凍回路側バイパス回路61を開いていくことにより、冷媒冷却用膨張手段52を通過して過冷却用熱交換器50に流れる冷媒量を減らしていく制御を「冷媒冷却回路バイパス制御」と称する。また主として冷媒冷却用膨張手段52の開度を絞って過冷却用熱交換器50に流れる冷媒量を減少させてゆく制御を「通常制御」と称し、「冷媒冷却回路バイパス制御」と区別する。
【0074】
過冷却用熱交換器50では、摂氏10度以上、過冷却を進ませることが望ましく、より望ましくは、摂氏15度以上、過冷却を進ませる。
【0075】
そして過冷却状態の冷媒が主側膨張手段37で減圧され、主側庫内蒸発器38に入って蒸発し、主側圧縮機35に戻る。
【0076】
過冷却運転と前記した中冷運転を比較すると、双方とも主側庫内蒸発器38内で液体冷媒が気化し、蒸発熱(潜熱)を奪って主側庫内蒸発器38の表面温度を低下させる点で共通する。
過冷却運転では、蒸発熱(潜熱)による主側庫内蒸発器38の温度低下に加えて、過冷却によるエンタルピーの減少によっても主側庫内蒸発器38の表面温度が低下する。そのため過冷却運転を行うことにより、冷凍能力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)が中冷運転よりも増大する。
その結果、主側庫内蒸発器38の表面温度を、中冷運転を行っている際の主側庫内蒸発器38の表面温度よりも低くしても、必要な冷凍出力を発現させることができる。
言い換えれば、過冷却運転では、主側庫内蒸発器38の表面温度を、従来の環境試験装置と同等の温度としても、従来の環境試験装置と同等の冷凍出力を得ることができる。
【0077】
本実施形態の環境試験装置1は、一定の条件に基づいて運転方式と制御方法が切り替わる。具体的には、設定温度と、試験室3内の現実の温度に基づいて、急冷運転、中冷運転、緩冷運転、及び過冷却運転が切り替わる。
また一定の条件に基づいて通常制御とバイパス制御(主冷凍回路側バイパス制御、補助冷凍回路側バイパス制御、冷媒冷却回路バイパス制御)が切り替わる。
【0078】
本実施形態では、急冷運転、中冷運転、緩冷運転を総称して通常運転と称する。
本実施形態では、通常運転として急冷運転、中冷運転、緩冷運転があり、状況に応じて運転方法が自動的に選択される。
急冷運転、中冷運転、緩冷運転は、冷却能力が相違するだけであり、単純に冷却負荷に応じて選択される。
即ち冷却負荷が大きく、急激に試験室3内の温度を低下させる必要がある場合には急冷運転が実行される。
また冷却負荷が中程度であり、急冷運転を行うと、試験室3内の温度が急変してしまう可能性がある場合には中冷運転が選択される。また試験室3内の温度が設定温度に達しているが、設定温度が極低温であり、緩冷運転では冷凍出力が不足して試験室3内の温度を安定させることができない場合にも中冷運転が選択される。
試験室3内の温度が比較的高い状態で安定している場合等、冷却負荷が小さい場合には緩冷運転が選択される。
【0079】
また蒸発器38,48や、過冷却用熱交換器50に供給される冷媒量を制御する方法として、通常制御とバイパス制御(主冷凍回路側バイパス制御、補助冷凍回路側バイパス制御、冷媒冷却回路バイパス制御)がある。バイパス制御は、蒸発器38,48や、過冷却用熱交換器50に供給される冷媒量をより少なくしたい場合に選択される。
【0080】
本実施形態では、設定温度によって過冷却運転を行う場合と、過冷却運転を行わない場合がある。即ち設定温度によって大きく二通りの流れによって運転方法が移行してゆく。例えば摂氏A度を境として過冷却運転が行われるか否かが選択される。なお摂氏A度は、常温よりも低い温度であり、例えば、摂氏0度から摂氏10度程度である。
【0081】
図6は、運転方法の移行過程を示すフローチャートである。本実施形態では、設定温度が摂氏A度以上である場合には、開始時にフル運転の急冷運転が行われる。即ち運転方法は急冷運転であり、制御方法は通常制御で運転される。
【0082】
そして試験室3内の温度が設定温度の近傍に至ると、制御方法が切り替わり、省エネルギーのために冷却出力を低下させていく。具体的には急冷運転を行いつつ補助冷凍回路側バイパス制御を行って冷却出力を低下させていく。
そして補助側圧縮機45を駆動した状態を維持して、補助側膨張手段47を通過して補助側庫内蒸発器48に流れる冷媒をゼロにし、実質的に中冷運転に切り替える。即ち補助側圧縮機45は駆動しているものの、運転方法は実質的に中冷運転となり、主冷凍回路31の制御方法は通常制御となる。
その後、主冷凍回路31の制御方法を主冷凍回路側バイパス制御に自動的に切り替え、冷凍出力を下げてゆく。
さらにその後、緩冷運転を復活させる。具体的には補助側膨張手段47の開度を開く。即ち現在は実質的に中冷運転が行われているものの、補助側圧縮機45は駆動した状態を維持している。そのため補助側膨張手段47の開度を開くと、補助側庫内蒸発器48に冷媒が流れ、緩冷運転が復活する。この時の補助冷凍回路32の制御方法は通常制御である。
緩冷運転が復活した段階で、主側圧縮機35を停止する。即ち急冷運転が事実上停止され、緩冷運転が行われる。
【0083】
さらに試験室3内の温度が低下すると、補助冷凍回路32の制御方法を補助冷凍回路側バイパス制御に切り替え、冷却出力をさらに低下させていく。そして最終的に補助側圧縮機45も停止する。
図6のフローチャートでは、最初に急冷運転を行い、最後に緩冷運転を行う例を示したが、最初の運転方法は中冷運転でもよく、最後に中冷運転で終わってもよい。
【0084】
一方、設定温度が摂氏A度未満である場合には、開始時に過冷却運転が実施される。開始時の制御方法は通常制御である。
そして試験室3内の温度低下に応じて、制御方法が切り替わる。即ち過冷却運転を行いつつ冷媒冷却回路バイパス制御を行う。
さらに試験室3内の温度が低下すると、補助側圧縮機45を停止して中冷運転に移行する。この時の主冷凍回路31の制御方法は通常制御である。
さらに試験室3内の温度が低下し設定温度に至ると、制御方法が切り替わり、主冷凍回路側バイパス制御を実施し、試験室3内の温度を設定温度に維持する。
【0085】
次に設定温度が摂氏A度以上である場合と、摂氏A度未満の場合における運転方法を具体的に説明する。
設定温度が摂氏A度以上である場合は、前記した様に原則的に最初に急冷運転が行われる。
【0086】
急冷運転においては、主冷凍回路31と補助冷凍回路32の双方を駆動して試験室3内の温度を低下させる。そして試験室3内の温度が設定温度に近づくと、冷凍出力を序々に低下させていく。
急冷運転の初期においては、主冷凍回路31と補助冷凍回路32がフル運転される。また試験室3の温度がある程度低下すると、主側庫内蒸発器38及び補助側庫内蒸発器48と試験室3内の温度差が小さくなり、熱交換効率が低下するので、主側膨張手段37及び補助側膨張手段47の開度が絞られる(通常制御)。
【0087】
急冷運転を行うことにより、試験室3内の温度が低下し、設定温度近傍に至ると、必要な冷熱量がしだいに減少してゆくので、省エネルギーの為に冷凍出力を序々に低下させていく。
即ち仮に被試験物が発熱しないものであるならば、試験室3内の温度が目標温度に達した後に必要な冷熱は、送風機8が内部の空気を攪拌することによって発生する発熱を抑制するのに必要な冷熱と、外部環境から侵入する熱を抑制するのに必要な冷熱等に限られ、立ち上げ時にくらべて少ない。従って試験室3内の温度が目標温度を維持するために冷却手段30に要求される冷熱は、これらに見合うもので足り、少量である。そのため制御方法や運転方法を変更し、冷凍出力を序々に低下させていく。
【0088】
運転方法及び制御方法の移行は、加熱ヒータ6又は加湿ヒータ25又はその両方の出力を参照して行う。
本方策では、最初に急冷運転を実施し、加熱ヒータ6等の出力を監視する。そして加熱ヒータ6等の出力が最小となる様に、運転方法又は制御方法を移行させる。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、試験室3内の温度を微調整するために加熱ヒータ6等が運転される。そのため加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、冷凍出力が過剰であると言える。
そこで本実施形態では、加熱ヒータ6又は加湿ヒータ25又はその両方の出力を監視し、これが最小となる様に、運転方法又は制御方法を変更する。
運転方法又は制御方法を変更する順序は前記した
図6の通りであり、試験室3内の温度が設定温度の近傍に至ると、急冷運転を行いつつ補助冷凍回路側バイパス制御を行って冷却出力を低下させていく。
それでも加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、補助側圧縮機45を駆動した状態を維持して、補助側膨張手段47を通過して補助側庫内蒸発器48に流れる冷媒をゼロにし、実質的に中冷運転に切り替え、主冷凍回路31を通常制御する。
それでも加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、主冷凍回路31に対して主冷凍回路側バイパス制御を実施して冷凍出力を下げてゆく。
【0089】
主側庫内蒸発器38を通過する冷媒量を減らし続け、主冷凍回路31の主側庫内蒸発器38に流す冷媒量が下限に至ると、図示しない制御装置によって、主冷凍回路31の運転を停止するべきか否かが判定される。具体的には加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、主冷凍回路31の運転を停止し、緩冷運転に切り替える。
前記した様に現在は実質的に中冷運転が行われているものの、補助側圧縮機45は駆動した状態を維持している。そのため補助側膨張手段47の開度を開くと、冷媒が補助側庫内蒸発器48に流れ、緩冷運転が復活する。
緩冷運転が復活した段階で、主側圧縮機35を停止する。即ち急冷運転が事実上停止され、緩冷運転が行われる。
またそれでも加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、補助冷凍回路32に対して補助冷凍回路側バイパス制御を行い、冷却出力をさらに低下させていく。そして最終的に補助側圧縮機45も停止する。
【0090】
次に設定温度が摂氏マイナス40度という様に常温に比べて極めて低い極低温の場合の運転方法について説明する。
本実施形態では、設定温度が摂氏マイナス40度であって設定温度が摂氏A度未満であるから、開始時に過冷却運転が実施される。
過冷却運転の際には主側圧縮機35及び補助側圧縮機45の双方を駆動する。
そして試験室3の温度がある程度下がり、主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度差が一定未満になると、主側膨張手段37の開度がしだいに絞られてゆき、主側庫内蒸発器38の温度を低下させて主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保される。
【0091】
ここで過冷却運転においては、蒸発熱(潜熱)による主側庫内蒸発器38の温度低下に加えて、過冷却によるエンタルピーの減少によっても主側庫内蒸発器38の表面温度が低下するので、冷凍能力(冷凍機が奪う熱エネルギー量)が大きい。
そのため、主側庫内蒸発器38の表面温度を相当に低くしても必要な冷凍出力を発現させることができる。
そのため試験室3内の温度を設定温度まで低下することができる。
【0092】
過冷却運転を行うことにより、試験室3内の温度が低下し、設定温度近傍に至ると、必要な冷熱量がしだいに減少してゆくので、省エネルギーの為に冷凍出力を序々に低下させていく。
即ち制御方法や運転方法を変更し、冷凍出力を序々に低下させていく。
【0093】
運転方法及び制御方法の移行は、前記した場合と同様に加熱ヒータ6又は加湿ヒータ25又はその両方の出力を参照して行う。
運転方法又は制御方法を変更する順序は前記した
図6の通りであり、試験室3内の温度が設定温度の近傍に至ると、過冷却運転を行いつつ冷媒冷却回路バイパス制御を行い、冷媒冷却用膨張手段52を通過して過冷却用熱交換器50に流れる冷媒量を減らしていく。具体的には本実施形態では、補助冷凍回路側バイパス回路61を開いていくことにより、過冷却用熱交換器50に流す冷媒量を減らしていく。
その結果、主冷凍回路31を流れる冷媒の過冷却度が下がり、冷媒のエンタルピーが上昇して冷凍出力が低下する。
そして遂には過冷却用熱交換器50に流れる冷媒量がゼロになる。
そして図示しない制御装置によって、補助冷凍回路32の運転を停止するべきか否かが判定される。具体的には加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、補助冷凍回路32の運転を停止する。即ち運転方法が過冷却運転から中冷運転に切り替わる。
補助冷凍回路32の運転を停止して中冷運転に切り替えてもなお加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、主冷凍回路31を通常制御して冷凍出力を低下させる。それでも加熱ヒータ6等の発熱量が大きい場合には、制御方法を切り替え、主冷凍回路31に対して主冷凍回路側バイパス制御を実施して冷凍出力を下げてゆく。
【0094】
上記した実施形態では、設定温度が摂氏A度未満である場合、開始時に過冷却運転を実施した。しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、設定温度が摂氏A度未満である場合、最初に中冷運転や急冷運転を行い、途中から過冷却運転に移行してもよい。
以下この方法について説明する。
【0095】
例えば中冷運転を行うのであれば、冷媒制御手段たる補助側膨張手段47を開き、冷媒冷却用膨張手段52を閉じて冷媒冷却回路51を閉じ、補助側庫内蒸発器48に至る流路を開く。そして主冷凍回路31に属する主側圧縮機35だけが駆動され、主側庫内蒸発器38の温度が低下する。運転初期においては、主冷凍回路31は通常制御で運転される。
そのため主側膨張手段37の開度を全開にして主側庫内蒸発器38に大量の冷媒を送り込み、多くの冷熱を発生させて試験室3内の温度を急激に低下させる。
そして試験室3の温度がある程度下がると、主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度差が小さくなり、熱交換効率が低下するので、主側膨張手段37の開度が絞られる。
【0096】
即ち主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度差が一定未満になると、主側膨張手段37の開度がしだいに絞られてゆき、主側庫内蒸発器38の温度を低下させて主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保される。
【0097】
試験室3の温度が低下すると、主側膨張手段37も順次絞られてゆくが、前記した様に本実施形態では冷媒の蒸発温度が高めであるから、遂には主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保しえなくなる場合がある。また主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保できたとしても、冷凍出力が極端に減少し、実質的に試験室3の温度を低下させることができなくなる状況となる場合がある。
【0098】
本実施形態では、主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保しえなくなると予想される温度、あるいはそれよりもやや高い温度を閾値として予め記憶している。
試験室3の温度低下が進み、現状の試験室3の温度が所定の閾値(例えば摂氏0度)よりも低くなると、運転方法が切り替わり、過冷却運転に移行する。
その結果、補助冷凍回路32側の補助側圧縮機45が起動され、補助冷凍回路32の運転が開始される。そして冷媒制御手段たる補助側膨張手段47が閉じられ、冷媒冷却用膨張手段52が開かれて冷媒冷却回路51が開き、補助側庫内蒸発器48に至る流路が遮断される。
主側凝縮器36で液化した冷媒は、過冷却用熱交換器50でさらに冷却され、強度に過冷却状態となる。その結果、主側庫内蒸発器38の表面温度を、中冷運転を行っている際の主側庫内蒸発器38の表面温度よりも低下させることが可能となり、主側庫内蒸発器38の表面温度と試験室3内の温度に一定の温度差が確保され、試験室3の温度がさらに低下する。
【0099】
試験室3の温度が設定温度近傍に至った後の運転は、前記したものと同一であり、加熱ヒータ6等の発熱量を監視し、制御方法又は運転方法を変更してゆく。
【0100】
本実施方法では、設定温度が極低温の場合は、前記した様に、試験室3内の温度が閾値に至るまでの間、通常運転(中冷運転)が行われ、試験室3内の温度が閾値以下になると過冷却運転に切り換わる。
ここで本実施形態において、主側圧縮機35は、従来技術(標準構成)の圧縮機に比べて容量が小さく、試験室3内の温度が閾値以下になるまでの間に駆動される主側圧縮機35による消費電力が少ない。また過冷却運転に切り換わった後の消費電力についても、環境試験装置1は、従来に比べて消費電力が少ない。
【0101】
以上説明した実施形態では、設定温度が極低温の場合の試験方法として、最初に中冷運転を行い、試験室3内の温度が閾値以下となったことを条件として過冷却運転に切り替えたが、最初に急冷運転を行って試験室3内の温度を急激に低下させてもよい。最初に急冷運転を行う場合であっても、試験室3内の温度が閾値以下となったことを条件として過冷却運転に切り替える。
【0102】
最初に急冷運転を行い、その後に過冷却運転に切り替える場合は、2基の圧縮機(主側圧縮機35と補助側圧縮機45)を同時に駆動して冷却が行われる。急冷運転においては、原則的に試験室3の温度が変化した場合に主側庫内蒸発器38の表面温度だけを低下させるが、今回の運転方法では、設定温度が極低温であるから、補助側庫内蒸発器48についても試験室3内の温度より低くなる様に制御される。
そして試験室3内の温度が閾値以下になると過冷却運転に切り換わる。
最初に急冷運転を行う運転方法の場合、補助側圧縮機45は既に起動されているので、冷媒制御手段たる補助側膨張手段47が閉じられ、冷媒冷却用膨張手段52が開くことによって冷媒冷却回路51が開かれ、過冷却運転に移行する。
【0103】
以上説明した実施形態では、冷却手段30の圧縮機(主側圧縮機35と補助側圧縮機45)はいずれもインバータ制御機能を備えていないが、インバータ制御機能を備えていてもよい。
【0104】
以上説明した実施形態では、予め閾値を定め、試験室3内の温度が閾値を下回ったことを条件として運転方式を通常運転から過冷却運転に切り替えた。ここで閾値の値は、摂氏10度から摂氏マイナス10度程度であることが推奨される。またより推奨される範囲は、摂氏10度から摂氏0度の範囲である。
【0105】
閾値に代わって、試験室3内の温度と、主側庫内蒸発器38の表面温度(蒸発温度)を比較し、両者が一定以内となったことを条件として運転方式を通常運転から過冷却運転へ切り替えてもよい。
【0106】
以上説明した実施形態では、主冷凍回路側バイパス回路60を主冷凍回路31の過冷却用熱交換器50と主側膨張手段37の間から分岐したが、他の部位から分岐してもよい。例えば
図7の環境試験装置72の様に、主側凝縮器36と過冷却用熱交換器50の間から分岐してもよい。
【0107】
以上説明した実施形態では、補助冷凍回路32は、補助側庫内蒸発器48を含む循環回路であるが、
図8に示す環境試験装置75の様に補助側庫内蒸発器48に至る回路を省略してもよい。
【0108】
以上説明した実施形態では、膨張手段として電子膨張弁を使用したが、他の構成のものであってもよい。
例えば
図9に示す膨張手段80の様に、キャピラリーチューブ81と電磁弁82を直列に接続して開閉弁付きキャピラリーチューブ83を構成し、これを複数、並列的に配管したものであってもよい。
【0109】
以上説明した実施形態では、バイパス回路60,61に戻り冷媒加熱用熱交換器63,65を設け、バイパス回路60,61を流れる冷媒と圧縮機35,45の吐出側の高温の気体冷媒との間で熱交換させたが、凝縮器36,46出口側の配管を流れる液体冷媒と熱交換させる構成としてもよい。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例について説明する。
本実施例の環境試験装置1の系統図は、
図1と同一である。
環境試験装置1では、主側圧縮機35として定格出力1.2kwの圧縮機を採用した。また補助側圧縮機45として定格出力0.4kwの圧縮機を採用した。
比較例(標準構成)1は、
図13の系統図の環境試験装置100であり、市販の環境試験装置100を用いた。環境試験装置100は、圧縮機101として定格出力1.5kwの圧縮機を搭載している。
比較例1は、市販の環境試験装置100であり、冷却手段106は、カタログ等に表示した温度領域の環境を任意に作り出すことができるだけの容量(定格出力)を持っている。
比較例2は、前記した改良型環境試験装置であり、
図13の系統図の環境試験装置200であって前記した市販の環境試験装置100を改造し圧縮機101を定格出力1.2kwの圧縮機に載せ代えたものである。
比較例2の、改良型環境試験装置に搭載された圧縮機101は、比較例(標準構成)1のものよりも容量が小さく、試験室3を冷却すると、カタログに記載した温度適用範囲の最低温度に達するのに比較例1よりも長時間を要する。
【0111】
室内温度が摂氏20度、設定温度を摂氏マイナス40度とし、比較例(標準構成)1の環境試験装置100を起動した。比較例(標準構成)1の環境試験装置100を起動した後の、蒸発器107の表面温度と、試験室3の温度変化との関係は、
図10のグラフの通りであった。
比較例(標準構成)1の環境試験装置100は、カタログ等に表示した温度領域の環境を任意に作り出すことができるだけの容量(定格出力)を持った圧縮機101を搭載しており、短時間の内に、試験室3の温度が設定温度まで低下し、その後、安定した。
【0112】
また室内温度が摂氏20度、設定温度を摂氏マイナス40度とし、比較例2の環境試験装置200を起動した。環境試験装置200を起動した後の、蒸発器107の表面温度と、試験室3の温度変化との関係は、
図11のグラフの通りであった。
比較例2の環境試験装置200では、試験室3の温度を設定温度に至らせることはできなかった。
【0113】
室内温度が摂氏20度、設定温度を摂氏マイナス40度とし、実施例の環境試験装置1を起動した。実施例の環境試験装置1を起動した後の、主側庫内蒸発器38の表面温度と、試験室3の温度変化との関係は、
図12のグラフの通りであった。
実施例の環境試験装置1の主側庫内蒸発器38の表面温度と、試験室3の温度変化との関係(
図12)は、比較例(標準構成)1の環境試験装置100を起動した後のそれに近く、比較例1に比べて遜色のないものであった。
【0114】
比較例(標準構成)1の環境試験装置100と実施例の環境試験装置1について、それぞれ最大冷凍出力を発現させた際の、冷媒の蒸発温度と、冷媒の過冷却温度、及び冷凍出力は、次の表1の通りであった。
【0115】
【表1】
【0116】
上記した表で明らかな様に、本実施例の環境試験装置1の冷却手段30は、冷媒の蒸発温度が比較例(標準構成)1に比べて高いものの、同等の最大出力を発現することができる。
【0117】
また比較例(標準構成)1の環境試験装置100と実施例の環境試験装置1について、設定温度を摂氏マイナス40度とした際の冷媒の蒸発温度と、冷媒の過冷却温度、及び冷凍出力は、次の表2の通りであった。
【0118】
【表2】
【0119】
上記した表で明らかな様に、本実施例の環境試験装置1の冷却手段30は、過冷却度が比較例(標準構成)1に比べて高く、蒸発温度を同一にした条件で、同等の冷凍出力を発現することができる。
【0120】
比較例(標準構成)1の環境試験装置100の設定温度と消費電力との関係、及び実施例の環境試験装置1の設定温度と消費電力との関係は、次の表3の通りであった。
両者を比較すると、実施例の環境試験装置1の設定温度と消費電力は、比較例1の環境試験装置100の設定温度と消費電力に比べて30パーセント程度低いものであった。
【0121】
【表3】