【文献】
古川 英俊 Hidetoshi FURUKAWA,検出信号の振幅情報を用いる航跡確立のための逐次検定 Sequential Test Using the Amplitude Information of Detected Signals for Track Confirmation,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115 No.282 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,第115巻
【文献】
古川 英俊 Hidetoshi FURUKAWA,打切りを伴う逐次検定を用いた航跡確立,電子情報通信学会2015年通信ソサイエティ大会講演論文集1 PROCEEDINGS OF THE 2015 IEICE COMMUNICATIONS SOCIETY CONFERENCE,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年 5月 9日,p.172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、本実施形態を説明するに先立ち、SPRTを用いた目標検出装置の基本構成について説明する。
【0012】
図5は、SPRTを用いた目標検出装置の基本構成を示すブロック図である。
図5に示す目標検出装置は、閾値算出部21、尤度比算出部22、判定部23を備える。
【0013】
上記閾値算出部21は、評価値である尤度比の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する。上記尤度比算出部22は、目標を観測して閾値以上の信号を検出するセンサ(図示せず、例えばレーダ装置、ソナー装置等)からの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、その信号検出結果に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)(以下、「観測k回目の尤度比ST(k)」を「尤度比ST(k)」と略する場合がある)を算出する。上記判定部23は、閾値算出部21からの上側閾値T
Uと下側閾値T
L、尤度比算出部22からの尤度比ST(k)に基づいて、以下の(1)式により目標検出の判定を行い、判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数1】
【0014】
図6は、
図5に示した目標検出装置の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。同図に沿って、上記目標検出装置の処理の流れを説明する。
【0015】
まず、上記閾値算出部21において、第一種の過誤率αと第二種の過誤率βに基づいて、尤度比ST(k)の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する(ステップS201)。上側閾値T
Uと下側閾値T
Lは、以下の(2)式で算出される。
【数2】
【0016】
次に、上記尤度比算出部22において、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
D、センサからの信号検出結果である観測回数kと信号検出回数mに基づいて、尤度比ST(k)を算出する(ステップS202)。尤度比ST(k)は、以下の(3)式で算出される。
【数3】
【0017】
次に、上記判定部23において、尤度比算出部22からの尤度比ST(k)と閾値算出部21からの上側閾値T
Uとを比較し(ステップS203)、尤度比ST(k)が上側閾値T
U以上の場合(ST(k)≧T
U)には(YES)、判定結果を「目標検出」とする(ステップS204)。また、尤度比ST(k)が上側閾値T
Uよりも小さい場合(ST(k)<T
U)には(NO)、尤度比ST(k)と閾値算出部21からの下側閾値T
Lとを比較し(ステップS205)、尤度比ST(k)が下側閾値T
L以下の場合(ST(k)≦T
L)には(YES)、判定結果を「目標不検出」とする(ステップS206)。上記以外の場合(尤度比ST(k)が下側閾値T
Lよりも大きく、上側閾値T
Uよりも小さい場合(T
L<ST(k)<T
U))には(NO)、判定結果を「判定保留」とする(ステップS207)。そして、上記の判定結果を出力し(ステップS208)、そのうち判定部23の判定結果が「判定保留」の場合には、観測(k+1)回目の信号検出結果に基づいて、ステップS201からの処理を繰り返し実行する。
【0018】
ここで、上記構成による目標検出装置では、尤度比算出部22において、目標を観測して閾値以上の信号を検出するセンサからの信号検出結果である観測回数kと信号検出回数m、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
Dに基づいて尤度比ST(k)を算出するようにしている。この場合、閾値以上の信号振幅に着目してみると、より多くの情報量を持つにもかかわらず、尤度比ST(k)の算出に用いられていない。また、上記構成による目標検出装置では、回数についての判定を行っていないため、観測回数の最大値を所定の値に制限することができない。
【0019】
そこで、以下に示す実施形態では、センサ(図示せず、例えばレーダ装置、ソナー装置等)からの信号検出結果が「信号検出」の場合には、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(a|θ
0)、真目標の信号振幅の確率密度関数g(a|θ
1)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。また、信号検出結果が「信号不検出」の場合には、偽目標の信号不検出確率(1−P
F)、真目標の信号不検出確率(1−P
D)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。そして、上側閾値T
Uと下側閾値T
Lに基づいて観測k回目の尤度比ST(k)についての判定を行うと共に、信号検出回数mと信号不検出回数n(第1の実施例)又は信号検出回数mと観測回数k(第2の実施例)について回数による判定を行い、これらの判定に基づいて、総合的に「目標検出」、「目標不検出」及び「判定保留」を判定する。このようにして、目標検出の判定において、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減すると共に、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に非常に多くの観測回数を要するケースの発生を防止するようにしている。
【0020】
(実施形態)
以下、
図1から
図4A、
図4Bを参照して、本実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る目標検出装置の構成を示すブロック図である。この目標検出装置は、尤度比閾値算出部11、尤度比算出部12、尤度比判定部13、回数閾値選定部14、回数判定部15、総合判定部16を備える。
【0022】
上記尤度比閾値算出部11は、本実施形態の評価値である尤度比の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する。
【0023】
上記尤度比算出部12は、確率密度関数に基づいて尤度比を算出する第1の算出部121と、信号不検出確率に基づいて尤度比を算出する第2の算出部122とを備える。すなわち、センサからの信号検出結果を入力し、信号検出結果が「信号検出」の場合(信号振幅が閾値以上)には、第1の算出部121において、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(a|θ
0)、真目標の信号振幅の確率密度関数g(a|θ
1)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。また、センサからの信号検出結果が「信号不検出」の場合(信号振幅が閾値未満)には、第2の算出部122において、偽目標の信号不検出確率(1−P
F)、真目標の信号不検出確率(1−P
D)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。
【0024】
上記尤度比判定部13は、尤度比閾値算出部11からの上側閾値T
Uと下側閾値T
L、尤度比算出部12からの尤度比ST(k)に基づいて、以下の(4)式((1)式と同じ)により目標検出の判定を行い、尤度比による判定の結果(以下、尤度比判定結果)として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数4】
【0025】
上記回数閾値選定部14は、第1の実施例では、信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nを選定する。第2の実施例では、信号検出回数閾値T
mと観測回数閾値T
kを選定する。
【0026】
上記回数判定部15は、第1の実施例では、センサからの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、観測回数kと信号検出回数mから信号不検出回数n(=k−m)を算出する。そして、信号検出回数mと信号不検出回数n、それぞれの回数閾値である上記回数閾値選定部14からの信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nに基づいて、回数による判定の結果(以下、回数判定結果)として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。第2の実施例では、センサからの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、信号検出回数mと観測回数k、それぞれの回数閾値である上記回数閾値選定部14からの信号検出回数閾値T
mと観測回数閾値T
kに基づいて、回数判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【0027】
上記総合判定部16は、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果に基づいて、総合的な判定の結果(以下、総合判定結果)として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。総合判定の具体例を表1に示す。
【表1】
【0028】
なお、上記表1に示す具体例では、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果の一方が「目標検出」であり、他方が「目標不検出」の場合に総合判定結果を「目標検出」とする例を示したが、この場合の総合判定結果を「目標不検出」とするように構成することもできる。また、上記以外の対応関係に設定することもできる。
【0029】
(第1の実施例)
図2A、
図2Bは、上記実施形態に係る目標検出装置において、第1の実施例の処理の流れを示すフローチャートである。同図に沿って、第1の実施例に係る目標検出装置の処理の流れを説明する。
【0030】
まず、上記尤度比閾値算出部11において、第一種の過誤率αと第二種の過誤率βに基づいて、評価値の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する(ステップS101)。上側閾値T
Uと下側閾値T
Lの概略値は、以下の(5)式で算出される。
【数5】
【0031】
次に、上記尤度比算出部12において、信号検出結果が「信号検出」であるか「信号不検出」であるか(信号振幅が閾値以上か閾値未満か)を判定する(ステップS102)。判定の結果、信号検出結果が「信号検出」の場合には(YES)、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(a|θ
0)、真目標の信号振幅の確率密度関数g(a|θ
1)に基づいて、評価値として尤度比ST(k)を算出する(ステップS103)。また、信号検出結果が「信号不検出」の場合には(NO)、偽目標の信号不検出確率(1−P
F)、真目標の信号不検出確率(1−P
D)に基づいて、評価値として尤度比ST(k)を算出する(ステップS104)。ステップS103、S104において、尤度比ST(k)は、以下の(6)式で算出される。
【数6】
【0032】
ここで、θ
0は、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(・)のパラメータ又は複数のパラメータからなるパラメータ群を表し、θ
1は、真目標の信号振幅の確率密度関数g(・)のパラメータ又は複数のパラメータからなるパラメータ群を表す。また、偽目標の信号不検出確率(1−P
F)は、偽目標の信号振幅が閾値未満である確率に対応しており、偽目標の信号振幅変数xの確率密度関数f(x|θ
0)の0から閾値までの積分値として算出することができる。同様に、真目標の信号不検出確率(1−P
D)は、真目標の信号振幅が閾値未満である確率に対応しており、真目標の信号振幅変数xの確率密度関数g(x|θ
1)の0から閾値までの積分値として算出することができる。
【0033】
なお、真目標の信号振幅の確率分布が、偽目標の信号振幅の確率分布と同じ確率分布に属する場合、真目標の信号振幅の確率密度関数は、f(a|θ
1)で表すことができる。
【0034】
次に、上記尤度比判定部13において、尤度比算出部12からの尤度比ST(k)と尤度比閾値算出部11からの上側閾値T
Uとを比較する(ステップS105)。比較の結果、尤度比ST(k)が上側閾値T
U以上の場合(ST(k)≧T
U)には(YES)、尤度比判定結果を「目標検出」とする(ステップS106)。尤度比ST(k)が上側閾値T
Uよりも小さい場合(ST(k)<T
U)には(NO)、尤度比ST(k)と尤度比閾値算出部11からの下側閾値T
Lとを比較する(ステップS107)。比較の結果、尤度比ST(k)が下側閾値T
L以下の場合(ST(k)≦T
L)には(YES)、尤度比判定結果を「目標不検出」とする(ステップS108)。上記以外の場合(尤度比ST(k)が下側閾値T
Lよりも大きく、上側閾値T
Uよりも小さい場合(T
L<ST(k)<T
U))には(NO)、尤度比判定結果を「判定保留」とする(ステップS109)。
【0035】
次に、上記回数閾値選定部14において、信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nを選定する(ステップS110)。ここで、上記回数判定部15において、センサからの信号検出結果である信号検出回数mと信号検出回数閾値T
mとを比較する(ステップS111)。比較の結果、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
m以上の場合(m≧T
m)には(YES)、回数判定結果を「目標検出」とする(ステップS112)。信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mよりも小さい場合(m<T
m)には(NO)、観測回数kと信号検出回数mから算出された信号不検出回数n(=k−m)と信号不検出回数閾値T
nとを比較する(ステップS113)。比較の結果、信号不検出回数nが信号不検出回数閾値T
n以上の場合(n≧T
n)には(YES)、回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS114)。上記以外の場合(信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mより小さく、信号不検出回数nが信号不検出回数閾値T
nより小さい場合(m<T
m,n<T
n))には(NO)、回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS115)。このようにして、上記回数判定部15において、信号検出回数mと信号不検出回数n、それぞれの回数閾値である上記回数閾値選定部14からの信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nに基づいて、以下の(7)式により目標検出の判定を行い、回数判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数7】
【0036】
次に、上記総合判定部16において、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果に基づいて、総合判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択し(ステップS116)、選択された総合判定結果を出力する(ステップS117)。ここで、総合判定部16の総合判定結果が「判定保留」の場合には、観測(k+1)回目の信号検出結果に基づいて、ステップS101からの処理を繰り返し実行する。
【0037】
以上のように、第1の実施例によれば、「信号検出」(信号振幅が閾値以上)の場合に信号振幅に基づいて算出される尤度比による判定と回数判定を含めた総合判定処理により、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減することができる。また、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に非常に多くの観測回数を要するケースの発生を防止することができる。
【0038】
(第2の実施例)
図3A、
図3Bは、上記実施形態に係る目標検出装置において、第2の実施例の処理の流れを示すフローチャートである。
図3A、
図3Bは、
図2A、
図2BのステップS110がステップS118に、ステップS113がステップS119に変更されていることを除き、
図2A、
図2Bと同じである。また、本実施例では、回数閾値選定部14において、信号不検出回数閾値T
nの代わりに観測回数閾値T
kを選定し、回数判定部15において、信号不検出回数nの代わりに観測回数kに基づいて目標検出の判定を行うものとする。
【0039】
第2の実施例では、ステップS118で信号検出回数閾値T
mと観測回数閾値T
kを選定し、ステップS111において、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mよりも小さい場合(m<T
m)には(NO)、センサからの信号検出結果である観測回数kと観測回数閾値T
kとを比較する(ステップS119)。比較の結果、観測回数kが観測回数閾値T
k以上の場合(k≧T
k)には(YES)、回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS114)。上記以外の場合(信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mより小さく、観測回数kが観測回数閾値T
kより小さい場合(m<T
m,k<T
k))には(NO)、回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS115)。このようにして、回数判定部15において、信号検出回数mと観測回数k、それぞれの回数閾値である上記回数閾値選定部14からの信号検出回数閾値T
mと観測回数閾値T
kに基づいて、以下の(8)式により目標検出の判定を行い、回数判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数8】
【0040】
以上のように、第2の実施例によっても、「信号検出」(信号振幅が閾値以上)の場合に信号振幅に基づいて算出される尤度比による判定と回数判定を含めた総合判定処理により、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減することができる。また、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に非常に多くの観測回数を要するケースの発生を防止することができる。
【0041】
なお、上記第2の実施例の回数判定部15では、信号検出回数mと観測回数k、それぞれの回数閾値に基づいて回数判定を行う場合の例を示したが、信号検出回数mの代わりに信号不検出回数nを用い、信号不検出回数nと観測回数k、それぞれの回数閾値に基づいて回数判定を行うように構成することもできる。
【0042】
また、上記第2の実施例は、
図4A、
図4Bに示すように変形することもできる。すなわち、
図4A、
図4Bは第2の実施例の処理の流れの変形例を示すフローチャートである。
図4A、
図4Bでは、
図3A、
図3BのステップS119がステップS120に変更され、ステップS111と順番が入れ替えられていることを除き、
図3A、
図3Bと同じである。
【0043】
この変形例では、回数判定部15において、センサからの信号検出結果に含まれる観測回数kと観測回数閾値T
kとを比較する(ステップS120)。比較の結果、観測回数kが観測回数閾値T
kよりも小さい場合(k<T
k)には(YES)、回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS115)。観測回数kが観測回数閾値T
k以上(k≧T
k)の場合には(NO)、信号検出回数mと信号検出回数閾値T
mとを比較する(ステップS111)。比較の結果、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
m以上の場合(m≧T
m)には(YES)、回数判定結果を「目標検出」とし(ステップS112)、上記以外の場合(観測回数kが観測回数閾値T
k以上で、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mより小さい場合(m<T
m))には(NO)、回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS114)。
【0044】
なお、上記の各実施例では、信号検出結果が「信号検出」の場合、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(a|θ
0)、真目標の信号振幅の確率密度関数g(a|θ
1)に基づいて、評価値として尤度比ST(k)を算出する例を示したが、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の尤度関数L
0(a)、真目標の信号振幅の尤度関数L
1(a)に基づいて、評価値として尤度比ST(k)を算出することができる。また、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の尤度関数L
0(a)と真目標の信号振幅の尤度関数L
1(a)の尤度比LR(a)(=L
1(a)/L
0(a))に基づいて、評価値として尤度比ST(k)を算出することができる。
【0045】
また、上記の各実施例では、評価値として尤度比を用いる例を示したが、目標検出装置の基本構成に示したように、それぞれの値を対数変換した尤度比(より正確には対数尤度比)を用いて処理を行うように構成することができる。この場合、上側閾値T
Uと下側閾値T
Lの概略値は、以下の(9)式で算出される。
【数9】
【0046】
対応する尤度比ST(k)は、以下の(10)式で算出される。
【数10】
【0047】
更に、センサからの信号検出結果を入力する代わりに、特許文献1に記載された相関手段や仮目標登録更新手段で処理された信号検出結果(検出信号に対し、仮目標の運動諸元を用いて相関ゲートによる判定を行った結果)を入力するように構成することができる。これにより、誤警報環境下、複数目標環境下、及びこれらの複合環境下において、誤りの少ない信号検出結果を入力して、判定を行うことができる。
【0048】
また、上記の各実施例では、1回の信号検出結果が入力される度に処理を行う逐次処理の場合を説明したが、複数回(例えば、観測k回目から観測(k+2)回目までの3回分)の信号検出結果を纏めて処理を行うミニバッチ処理によって実施するように構成することができる。更に、ミニバッチ処理では、複数回の信号検出結果を用いて、評価値として尤度比を算出し、算出された尤度比について、判定を行うように構成することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る目標検出装置によれば、センサからの信号検出結果を入力し、信号検出結果が「信号検出」の場合、検出された信号振幅a、偽目標の信号振幅の確率密度関数f(a|θ
0)、真目標の信号振幅の確率密度関数g(a|θ
1)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。また、信号検出結果が「信号不検出」の場合、偽目標の信号不検出確率(1−P
F)、真目標の信号不検出確率(1−P
D)に基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。そして、観測k回目の尤度比ST(k)について、観測k回目の尤度比ST(k)の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lに基づいて尤度比による判定を行うと共に、信号検出回数mと信号不検出回数n、信号検出回数mと観測回数k、信号不検出回数nと観測回数kのいずれかに基づいて回数による判定を行い、これらの判定に基づいて、総合的に「目標検出」、「目標不検出」及び「判定保留」を判定する。このようにしたことで、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減することができる。
【0050】
なお、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減する代わりに、第一種の過誤率αや第二種の過誤率βを低く抑えるようにすることもできる。
【0051】
また、本実施形態に係る目標検出装置によれば、回数による判定を行うため、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する観測回数の最大値を所定の値に制限することができる。その結果、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に非常に多くの観測回数を要するケースの発生を防止することができる。
【0052】
なお、上記実施形態に係る目標検出処理は、尤度比閾値算出部11、尤度比算出部12、尤度比判定部13、回数閾値選定部14、回数判定部15、総合判定部16それぞれの処理機能をコンピュータに実行させるプログラムとして構成することができる。
【0053】
上記実施形態は、いずれもレーダ装置、ソナー装置等のセンサからの信号検出結果に基づいて、目標を検出する目標検出装置に適用可能である。
【0054】
その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。