(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486854
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】接続端子函補助クランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 7/08 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
H02G7/08
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-50567(P2016-50567)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-169302(P2017-169302A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021647
【氏名又は名称】株式会社三代川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】勝 義憲
(72)【発明者】
【氏名】持丸 聡
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3168809(JP,U)
【文献】
実公昭36−004565(JP,Y1)
【文献】
実公昭44−015159(JP,Y1)
【文献】
特開平10−248149(JP,A)
【文献】
実開昭53−157882(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の挟着金具の上部凹部で架設用ケーブルを挟着すると共に、下部凹部で、既設つり線を挟着するように構成され、既設つり線に懸吊された接続端子函を既設つり線ごと新しい線状部材に架け替える工事に使用する接続端子函補助クランプにおいて、上部凹部と下部凹部との間に挟着金具を貫通する貫通孔を開穿し、該貫通孔に連結ボルト及びナットを装着し、挟着金具内の連結ボルトにコイルバネを外嵌して挟着金具が外向きに広がるように押圧付勢し、
上部凹部と下部凹部とは、それぞれ挟着金具の長手端部が相対向する方向に屈曲されて形成され、連結ボルトにて挟着金具の間隔を狭めたときにコイルバネの押圧力で広がっている上部凹部の屈曲端部間に導入した架設用ケーブルに挟着金具を仮止めできるように構成し、
挟着金具の上部凹部と下部凹部との各側端相互部に、互い違いに対向する係止突起を形成し、下部凹部を強制的に開くと上部凹部の係止突起が互いに組み合うように構成したことを特徴とする接続端子函補助クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空ケーブルの吊り線張替え工事若しくは吊り線延長工事に用いる接続端子函補助クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱に接続端子函を吊下げている吊り線が錆付くなど経年劣化した場合、この吊り線を新しい吊り線に交換する吊り線張替え工事が行われる。この場合、接続端子函がまだ使用可能なときは、この接続端子函を吊下げている既設つり線を切断し、この既設つり線ごと新しい吊り線に架け替える作業が行われている。
【0003】
従来の取付金具は、特許文献1に記載の接続端子函補助クランプのごとく、架設用ケーブルと吊り線とを同時に挟着する一対の金具本体と、この金具本体を貫通して緊締する固定ボルトとを備えたもので、金具本体の上下に形成した挟着溝にそれぞれ架設用ケーブルと吊り線とを係止するように構成している。
【0004】
このような接続端子函補助クランプでは、吊り線の新旧張替え工事のほか、電柱を移動する際に吊り線を延長する延長工事にも使用される。この延長工事では、吊り線を延長する割入れ支持線に、接続端子函補助クランプを連結し、この接続端子函補助クランプに既設つり線を連結することで、接続端子函の側壁を解体することなく移設作業をすることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3168809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に示す従来の接続端子函補助クランプを使用した作業では、一対の金具本体を貫通するボルトを緊締して固定する構成ある。そのため、この取付金具を使用する際に、作業員は、一対の金具本体を一方の手で保持しながら、他方の手でボルトを締め付ける必要があった。この結果、作業効率に課題があり、しかも高所での作業になることから安全性の課題も残していた。
【0007】
すなわち、接続端子函を取付ける作業は電柱間の高所作業になる。しかも、架設用ケーブルから切り離した既設つり線と新たな架設用ケーブルとの間に補助クランプを装着する作業になるので、できる限り簡単な作業で固定できる構成が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく案出されたもので、新設の吊り線に既設の吊り線等を取付ける際に、極めて簡単な作業で取付けることができ、高所での作業を安全にすることが可能な接続端子函補助クランプの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明の第1の手段は、一対の挟着金具10の上部凹部11で架設用ケーブルRを挟着すると共に、下部凹部12で、既設つり線Qを挟着するように構成され、既設つり線Qに懸吊された接続端子函Pを、既設つり線Qごと新しい線状部材に架け替える工事に使用する接続端子函補助クランプにおいて、上部凹部11と下部凹部12との間に挟着金具10を貫通する貫通孔13を開穿し、該貫通孔13に連結ボルト20及びナット30を装着し、挟着金具10内の連結ボルト20にコイルバネ40を外嵌して挟着金具10が外向きに広がるように押圧付勢し、
上部凹部11と下部凹部12とは、それぞれ挟着金具10の長手端部が相対向する方向に屈曲されて形成され、連結ボルト20にて挟着金具10の間隔を狭めたときにコイルバネ40の押圧力で広がっている上部凹部11の屈曲端部間に導入した架設用ケーブルRに挟着金具10を仮止めできるように構成し、挟着金具10の上部凹部11と下部凹部12との各側端相互部に、互い違いに対向する係止突起14を形成し、下部凹部12を強制的に開くと上部凹部11の係止突起14が互いに組み合うように構成したことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載のごとく、挟着金具10内の連結ボルト20にコイルバネ40を外嵌して挟着金具10が外向きに広がるように押圧付勢し、上部凹部11内に導入した架設用ケーブルRに挟着金具10を仮止めできるように構成したことにより、架設用ケーブルRと既設つり線Qとを連結する作業を極めて容易にすることが可能になった。
【0013】
また、前記上部凹部11と前記下部凹部12とは、それぞれ前記挟着金具10の長手端部が相対向する方向に屈曲されて形成され、前記連結ボルト20にて前記挟着金具10の間隔を狭めたときに前記コイルバネ40の押圧力で広がっている前記上部凹部11の屈曲端部間に前記架設用ケーブルR仮止めするように構成しているので、架設用ケーブルRに仮止めした挟着金具10から手を離した状態でも作業することが可能になった。
【0014】
すなわち、作業員は予め架設用ケーブルRに挟着金具10の上部凹部11を挟着し、連結ボルト20を軽く締め付けて挟着金具10を仮止めしておく。この仮止め状態は、作業員が手を離してもコイルバネ40の押圧付勢力で保持されている。そのため、片手で挟着金具10の下部凹部12部分を開くだけで下部凹部12が開き、この下部凹部12内に既設つり線Qを導入することができる。したがって作業員は、仮止めした挟着金具10に既設つり線Qを容易に連結することが可能になる。この結果、高所での連結作業を極めて安全に行えるものである。
【0015】
更に、前記挟着金具10の前記上部凹部11と前記下部凹部12との各側端相互部に、互い違いに対向する係止突起14を形成し、前記下部凹部12を強制的に開くと前記上部凹部11の係止突起14が互いに組み合うように構成したことで、架設用ケーブルRに仮止めしている挟着金具10の下部凹部12を開いて既設つり線Qを導入する際に、上部凹部11の係止突起14が互い違いに組み合うので、下部凹部12を大きく開くことができる。したがって、仮止め状態の挟着金具10に既設つり線Qを連結する作業が容易になる。
【0016】
このように本発明によると、架設用ケーブルに既設つり線を取付ける際に、極めて簡単な作業で取付けることができ、高所での作業を安全にすることに成功したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の挟着金具の一実施例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の挟着金具の一実施例を示す正面図である。
【
図5】本発明の仮止め状態から下部凹部を開いた状態を示す側面図である。
【
図8】吊り線張替え工事前の接続端子函を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示例に基づいて説明する。本発明は、接続端子函Pに装着されている既設つり線Qを架設用ケーブルRに連結する取付金具である(
図1参照)。この既設つり線Qとは、例えば吊り線の新旧張替え工事の際に、接続端子函Pを吊り下げている古い吊り線を一定長さ残して切断した部分である。切断したケーブル端部には保護キャップや保護テープなどで被覆して安全性を高めている。
【0019】
本発明の構成は、一対の挟着金具10の上部凹部11で架設用ケーブルRを挟着すると共に、下部凹部12で既設つり線Qを挟着するように構成したものである。
【0020】
この挟着金具10は、対向する一対の金具で構成され、上部凹部11と下部凹部12との間に挟着金具10を貫通する貫通孔13を開穿したものである(
図6参照)。そして、貫通孔13に連結ボルト20を挿通しナット30で固定する。図示の挟着金具10は、金属板にて形成された矩形状を成し、上部凹部11と下部凹部12との間の長手両側縁を内側に屈曲して強度を高めている(
図2参照)。
【0021】
上部凹部11と下部凹部12は更に内側に深く屈曲することで、側面略V字形状の凹部を形成している(
図2参照)。そして、挟着金具10相互の間隔を狭めたときに上部凹部11の屈曲端部間に架設用ケーブルRが係止するように形成している。
【0022】
この上部凹部11に導入する架設用ケーブルRは、既設つり線Qと同じ径のケーブルが導入される他、電柱を移動する際に吊り線を延長する延長工事に使用される割入れ支持線を導入する場合もある。この割入れ支持線の径は既設つり線Qの径よりも太くなるが、上部凹部11をV字形状に形成することで、この割入れ支持線を導入することも可能になる。
【0023】
また、上部凹部11と下部凹部12とを同じ形状にすることで、使用時に上下の位置を選択する必要がなくなる(
図3参照)。すなわち、架設用ケーブルRを挟着する側が常に上部凹部11となる。
【0024】
更に、上部凹部11と下部凹部12との各側端相互部に、互い違いに対向する係止突起14を形成している(
図3参照)。この係止突起14は、挟着金具10を架設用ケーブルRに固定する際や仮止めする際に、係止突起14相互が組み合うように交互に設けたものである(
図7参照)。
【0025】
このような挟着金具10を固定する連結ボルト20には、挟着金具10の内部でコイルバネ40が外嵌されている(
図6参照)。このコイルバネ40の押圧付勢力によって、挟着金具10が外向きに広がるように設けている。
【0026】
次に、本発明の使用方法を説明する。まず、挟着金具10の上部凹部11に架設用ケーブルRを導入し、連結ボルト20を軽く締め付けて挟着金具10を仮止めしておくと、作業員が手を離しても挟着金具10が落下しない状態になる(
図4参照)。
【0027】
次に、下部凹部12を強制的に開くと上部凹部11の係止突起14が互いに組み合うので、その分、下部凹部12が広く開口する(
図5参照)。
【0028】
このように開いた下部凹部12に既設つり線Qを導入して連結ボルト20を更に締め付けると、架設用ケーブルRと既設つり線Qとが挟着金具10にて連結されるものである(
図6参照)。
【0029】
尚、本発明は接続端子函P用の既設つり線Qを架設用ケーブルRに連結するものとして説明しているが、本発明の使用例はこの例に限られるものではなく、2本の線状材を平行に連結する他の用途にも使用することができる。また、本発明の形状や各部の形状等は図示例に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で自由に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0030】
P 接続端子函
Q 既設つり線
R 架設用ケーブル
10 挟着金具
11 上部凹部
12 下部凹部
13 貫通孔
14 係止突起
20 連結ボルト
30 ナット
40 コイルバネ