特許第6486859号(P6486859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486859
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】偏光フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20190311BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20190311BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20190311BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20190311BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02B1/111
   G09F9/00 313
   G02F1/1335 510
   B32B27/30 102
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-66369(P2016-66369)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-181672(P2017-181672A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 友徳
(72)【発明者】
【氏名】平岡 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】池嶋 裕美
(72)【発明者】
【氏名】岸 敦史
【審査官】 大隈 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−71740(JP,A)
【文献】 特開2014−78016(JP,A)
【文献】 特開2015−180921(JP,A)
【文献】 特開2016−24228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 27/30
G02B 1/111
G02F 1/1335
G09F 9/00
H05B 33/02
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムは、偏光子および当該偏光子の視認側に第1透明樹脂層を有し、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、厚みが10μm以下であり、
前記第1透明樹脂層は、厚みが0.5μm以上3μm以下であり、
かつ、前記偏光子における前記第1透明樹脂層の側には、前記偏光子の厚みの2〜10%の厚みに相当する前記第1透明樹脂層との相溶層を有することを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
前記第1透明樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材または水系エマルションを含有する形成材の形成物であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、下記式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記偏光子の視認側の反対側に第2透明樹脂層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の偏光フィルム
【請求項5】
前記第1透明樹脂層の視認側に、さらに、低反射処理層を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項6】
低反射処理層の反射率が2%以下であることを特徴とする請求項記載の偏光フィルム。
【請求項7】
少なくとも偏光フィルムを有する画像表示装置であって、
画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムが、請求項1〜のいずれかに記載の偏光フィルムであり、
前記偏光フィルムの第1透明樹脂層が視認側になるように配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の偏光フィルム、および当該偏光フィルムよりも視認側に配置された低反射処理層を有する画像表示装置。
【請求項9】
低反射処理層の反射率が2%以下であることを特徴とする請求項記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムに関する。また、本発明は、前記偏光フィルムが、視認側に配置されている画像表示装置に関する。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光フィルムを配置することが必要不可欠である。偏光フィルムは、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性材料からなる偏光子の片面または両面に、透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤等により貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
また、画像表示装置は薄型化が求められており、薄型化は偏光子についても行われている。例えば、単体透過率、偏光度の光学特性を制御した、高い配向性を示す薄型偏光子が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4751481号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常の厚さの偏光子と異なり、薄型偏光子では反射率が高く、特に長波長側の反射率が高いことが分かった。そして、薄型偏光子を画像表示装置の視認側に設けて、さらに、前記薄型偏光子よりも視認側(例えば、偏光フィルムの視認側最表面)に低反射処理層を適用した場合には、薄型偏光子による反射光によって、黒表示が赤味を帯びる色相変化が生じることが分かった。
【0006】
本発明は、画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムであって、前記偏光フィルムが、薄型偏光子を用いている場合であっても、黒表示時における色相変化を抑制することができる偏光フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、前記偏光フィルムを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、下記の偏光フィルム等により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち本発明は、画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムであって、
前記偏光フィルムは、偏光子および当該偏光子の視認側に第1透明樹脂層を有し、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、厚みが10μm以下であり、
かつ、前記偏光子における前記第1透明樹脂層の側には、前記偏光子の厚みの2〜10%の厚みに相当する前記第1透明樹脂層との相溶層を有することを特徴とする偏光フィルム、に関する。
【0009】
前記偏光フィルムにおいて、前記第1透明樹脂層は、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材または水系エマルションを含有する形成材の形成物を用いることができる。
【0010】
前記偏光フィルムにおいて、前記第1透明樹脂層は、厚みが0.2μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0011】
前記偏光フィルムにおいて、前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、下記式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたものであることが好ましい。
【0012】
前記偏光フィルムとしては、前記偏光子の視認側の反対側に第2透明樹脂層を有するものとを用いることができる。
【0013】
前記偏光フィルムは、前記第1透明樹脂層の視認側に、さらに、低反射処理層を有する場合に好適に適用できる。前記低反射処理層は反射率が2%以下である場合に有効である。
【0014】
また、本発明は、少なくとも偏光フィルムを有する画像表示装置であって、
画像表示装置において視認側に設けられる偏光フィルムが、前記偏光フィルムであり、
前記偏光フィルムの第1透明樹脂層が視認側になるように配置されていることを特徴とする画像表示装置、に関する。
また、本発明は、前記偏光フィルム、および当該偏光フィルムよりも視認側に配置された低反射処理層を有する画像表示装置、に関する。前記低反射処理層は反射率が2%以下である場合に有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の偏光フィルムは、厚み10μm以下の薄型偏光子を用いているが、当該薄型偏光子の視認側には、当該薄型偏光子と相溶層を形成する第1透明樹脂層が設けられている。前記相溶層は、第1透明樹脂層を形成する材料の一部が偏光子中に染み込むとともに、偏光子表面近傍の成分が染み出すことで、偏光子表面近傍に形成されている。かかる相溶層は、偏光子中に浸透するような材料を用いて偏光子表面に透明樹脂層を形成することにより形成することができる。
【0016】
一般的な偏光子の作製は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(フィルム)に、延伸工程を施すことにより行われるため、得られる偏光子中の樹脂分子はある程度の規則性を持って配向した状態になっている。それとは対照的に、偏光子の表面に形成される第1透明樹脂層は、例えば、塗布することにより形成される。そのため、第1透明樹脂層には延伸工程が施されることはなく、第1透明樹脂層を形成する分子は規則的に配向していない。本発明の相溶層は、上記のように、第1透明樹脂層の形成成分が偏光子中に染み込むことにより形成される。第1透明樹脂層を形成した際に、偏光子に染み込んだ第1透明樹脂層の成分は、偏光子中の分子の配向性を一部緩和する働きがある。なお、本発明は、この推定メカニズムによって限定されるものではない。
【0017】
前記相溶層は、ポリビニルアルコール系樹脂の配向を崩して、吸収軸方向の屈折率に傾斜がかかり、偏光子近傍のヨウ素等の密度分布が傾斜してくる。本発明の偏光フィルムによれば、薄型偏光子を用いる場合においても、前記相溶層によって、薄型偏光子での反射率が高くならないように制御することができる。その結果、黒表示時において、偏光フィルムからの出射光全体に対する長波長側の反射率が高い薄型偏光子での反射光の寄与率を抑えることができるため、黒表示が赤味を帯びる色相変化を抑制することができたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
図2】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
図3】本発明の画像表示装置の概略断面図の一例である。
図4】相溶層の測定に係るグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の偏光フィルム10、11を、図1図2を参照しながら説明する。偏光フィルム10、11は、偏光子1、透明樹脂層2(2a,2b)を有する。また、本発明の偏光フィルム10、11は、図1図2に示すように、前記偏光子1における第1透明樹脂層2aの側には、前記透明樹脂層2aとの相溶層Xを有している。図1(A)では、偏光子1、相溶層X、透明樹脂層2aのみが示されている。なお、図示はしていないが、図1(A)における、偏光子1の側には、樹脂基材が設けられていてもよい。樹脂基材としては、例えば、薄型の偏光子1を製造する際に用いられる樹脂基材が挙げられる。一方、本発明の偏光フィルム10は、図1(B)に示すように、図1(A)における、偏光子1の側(第1透明樹脂層2aの反対側)には、第2透明樹脂層2bを有することができる。第2透明樹脂層2bは耐クラック性を向上する点からも好ましい。図1(B)では記載していないが、偏光子1の第2透明樹脂層2b側には、図1(A)と同様の相溶層Xを有することができる。
【0020】
また、図2の偏光フィルム11では、図1(A)の偏光フィルム10の第1透明樹脂層1aの視認側に、さらに、低反射処理層3が設けられている。図2(A)では、低反射処理層3は、第1透明樹脂層2aに、直接、設けられている。図2(B)では、低反射処理層3は基材フィルム4を介して設けられている。図2(C)では、低反射処理層3が有する基材フィルム4が粘着剤層5を介して設けられている。なお、図2では、図1(A)の偏光フィルム10のみが記載されているが、図1(B)に記載の偏光フィルムについても同様に適用することができる。
図2(B)では図示していないが、透明樹脂層2aと基材フィルム4とは接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層することができる。また図示していないが、基材フィルム4に易接着層を設けたり活性化処理を施したりして、当該易接着層と接着剤層を積層することができる。
【0021】
また、図示していないが、本発明の偏光フィルム10、11の視認側の反対側には、粘着剤層を設けることができる。さらには、粘着剤層にはセパレータを設けることができる。また本発明の偏光フィルム10、11(特に、低反射処理層3を有する場合)には、表面保護フィルムを設けることができる。
【0022】
本発明の偏光フィルム10、11において、相溶層Xは、第1透明樹脂層2aの形成成分が、偏光子1の表面から内部に染み込むことにより形成される層である。かかる観点から、本発明では前記偏光子1の厚みA(100%)に対する前記相溶層の厚みBの割合{(B/A)×100%}が2〜10%を満たすように調整されている。相溶層Xの厚みBは、偏光子1の厚みAとの関係で調整される。前記相溶層の厚みBの割合は、黒表示時における色相変化を抑える観点から4〜10%であるが好ましく、さらには6〜10%であるの好ましい。前記相溶層の厚みBの割合が10%を超える場合には、偏光子1の厚みAにおける相溶層Xの割合が大きくなりすぎて光学特性を損なうおそれがある。一方、前記相溶層の厚みBの割合が2%より小さい場合には黒表示時における長波長側の色相変化を十分に抑えることはできない。
【0023】
前記相溶層Xの厚みBは、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0024】
本発明の偏光フィルム10、11は、画像表示装置において、最も視認側に設けられる偏光フィルムとして適用される。偏光フィルム10、11の視認側の反対側が、表示部側になるように適用される。表示部は、少なくとも1枚の偏光フィルムとともに、画像表示装置の一部を形成するものであり、具体的には、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等あげられる。
【0025】
また、本発明の偏光フィルム10は、当該偏光フィルム10よりも視認側に配置された低反射処理層3を有する構成において、画像表示装置に適用することができる。例えば、低反射処理層3は、画像表示装置の視認側において適用されるタッチパネルなどの入力装置、カバーガラス、プラスチックカバー等の透明基体等の表面において適用することが挙げられる。前記画像表示装置の構成は、前記低反射処理層3を有する透明基体と、偏光フィルム10との間には空気層(エアギャップ)を介さないように適用する場合に好適である。低反射処理層3を有する透明基体と、偏光フィルム10との間には空気層を介さない場合、黒表示時において、画像表示装置からの出射光全体に対する長波長側の反射率が高い薄型偏光子での反射光の寄与率が高くなるため、黒表示が赤味を帯びる色相変化が顕在化しやいためである。なお、透明基体としては、ガラス板や透明アクリル板(PMMA板)が挙げられる。透明基体は、所謂、カバーガラスであり、装飾パネルとして用いることができる。
【0026】
図3は、前記態様の一例であり、偏光フィルム10の視認側に、基材フィルム4(ハードコート層等の表面処理層を有するものを含む)に設けられ、層間充填剤6を介して、透明基体7に貼り合されている。透明基体7には低反射処理層3が設けられている。なお、層間充填剤は、下記の粘着剤層と同様の材料を用いることができる。層間充填剤により形成される層は活性エネルギー線硬化型粘着剤層が好ましく適用される。
【0027】
その他、画像表示装置には、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置の形成に用いられる光学フィルムが適宜に使用される。また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、光学補償フィルム、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記片保護偏光フィルムに、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0028】
液晶表示装置は一般に、液晶セル(ガラス基板/液晶層/ガラス基板の構成)とその両側に配置した偏光フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。液晶セルは、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。また、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0029】
<偏光子>
本発明では、厚み10μm以下の偏光子を用いる。偏光子の厚みは薄型化および貫通クラックの発生を抑える観点から8μm以下であるのが好ましく、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0030】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。
【0031】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0032】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や光学耐久性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラック等のクラックの発生抑制の観点から、偏光子全量に対して25重量%以下であるのが好ましく、さらには20重量%以下であるのが好ましく、さらには18重量%以下、さらには16重量%以下であることが好ましい。一方、偏光子の延伸安定性や光学耐久性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10重量%以上であることが好ましく、さらには12重量%以上であることが好ましい。
【0033】
厚み10μm以下の薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
特許第5587517号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0034】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>−(100.929T−42.4−1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されたことが好ましい。前記条件を満足するように構成された偏光子は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0035】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0036】
<樹脂基材>
なお、図1図2の説明で言及した樹脂基材(延伸用樹脂基材)は、前記薄型偏光子の製造に適用されたものを用いることができる。樹脂基材の形成材料としては、各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミドレオ樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合樹脂等が挙げられる。これらのなかでも製造のしやすさ及びコスト軽減の点から、エステル系樹脂が好ましい。エステル系熱可塑性樹脂基材は、非晶性エステル系熱可塑性樹脂基材または結晶性エステル系熱可塑性樹脂基材を用いることができる。
【0037】
<透明樹脂層>
透明樹脂層の厚みは0.2μm以上であることが好ましい。当該厚みの透明樹脂層により、黒表示時における色相変化を抑制するのに好適な相溶層を容易に形成することができる。前記透明樹脂層の厚みは0.5μm以上であるのが好ましく、さらには0.7μm以上であるのが好ましい。一方、透明樹脂層の厚くなりすぎると光学信頼性と耐水性が低下するため、透明樹脂層の厚みは、一般的には3μm以下であるが、2.5μm以下であるのが好ましく、さらには2μm以下であるのが好ましく、さらには1.5μm以下であるのが好ましい。なお、透明樹脂層の厚みは、前記相溶層上において形成されている厚みである。
【0038】
透明樹脂層は、各種の形成材から形成することができる。透明樹脂層の形成材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、PVA系樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。これら樹脂材料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、前記樹脂の形態は、水系、溶剤系のいずれでもよい。前記樹脂の形態は、水系樹脂が好ましい。これらの中でもポリビニルアルコール系樹脂を含有する形成材または水系エマルションを含有する形成材が好ましい。
【0039】
透明樹脂層を形成する材料は、偏光子に浸透するものが好ましく用いられる。透明樹脂層を形成する材料としては、例えば、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする形成材が好ましい。
【0040】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。また、ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物が挙げられる。前記共重合性を有する単量体がエチレンの場合には、エチレン−ビニルアルコール共重合体が得られる。また、前記共重合性を有する単量体としては、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独で又は二種以上を併用することができる。耐湿熱性や耐水性を満足させる観点から、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコールが好ましい。
【0041】
前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、例えば、95モル%以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、ケン化度は99モル%以上が好ましく、さらには99.7モル%以上が好ましい。ケン化度は、ケン化によりビニルアルコール単位に変換され得る単位の中で、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0042】
前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、500以上のものを用いることができるが、耐湿熱性や耐水性を満足させる観点からは、平均重合度は、1000以上が好ましく、さらには1500以上が好ましく、さらには2000以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度はJIS−K6726に準じて測定される。
【0043】
また前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記ポリビニルアルコールまたはその共重合体の側鎖に親水性の官能基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。前記親水性の官能基としては、例えば、アセトアセチル基、カルボニル基等が挙げられる。その他、ポリビニルアルコール系樹脂をアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0044】
透明樹脂層は、硬化性成分を含有しない形成材から形成することができる。例えば前記ポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂)を主成分として含有する形成材から形成することができる。透明樹脂層を形成するポリビニルアルコール系樹脂は、「ポリビニルアルコール系樹脂」である限り、偏光子が含有するポリビニルアルコール系樹脂と同一でも異なってもいてもよい。
【0045】
前記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分として含有する形成材には、硬化性成分(架橋剤)等を含有することができる。透明樹脂層または形成材(固形分)中のポリビニルアルコール系樹脂の割合は、80重量%以上であるのが好ましく、さらには90重量%以上、さらには95重量%以上であるのが好ましい。但し、前記形成材には、硬化性成分(架橋剤)を含有しないことが好ましい。
【0046】
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。たとえば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;アジピン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの水溶性ジヒドラジン;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂や水溶性ジヒドラジンが好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好まし。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。
【0047】
前記硬化性成分(架橋剤)は、耐水性向上の観点から用いることができるが、その割合は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であるのが好ましい。
【0048】
前記形成材は、前記ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解させた溶液として調整される。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶剤として水を用いた水溶液として用いるのが好ましい。前記形成材(例えば水溶液)における、前記ポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0049】
また、透明樹脂層の形成には、水系エマルション樹脂を含む形成材を好ましく用いることができる。ここで水系エマルション樹脂とは、水(分散媒)中に乳化している樹脂粒子のことである。前記水系エマルション樹脂は、モノマー成分を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得ることができる。透明樹脂層は、前記水系エマルション樹脂を含むエマルションを含む透明樹脂層形成材を偏光子に直接塗布し、乾燥することで形成することができる。
【0050】
前記水系エマルション樹脂を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、本発明では、光学的透明性に優れ、耐候性や耐熱性等に優れる点から、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0051】
水系アクリル系エマルション樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含むモノマー成分を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得られる(メタ)アクリル系ポリマーを挙げることができる。また、前記モノマー成分には、カルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)」は以下同様の意味である。
【0052】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、炭素数が2〜14の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0053】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルを挙げることができ、炭素数が4〜9のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
【0054】
また、前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数2〜14のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを挙げることができ、炭素数が2〜10のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルがより好ましい。具体的には、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環式のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0055】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。前記アルキル(メタ)アクリレートの中でも、メタクリル酸アルキルエステルは透明樹脂層を形成するポリマーに硬さを与え、得られる透明樹脂層の粘着性の観点から好ましい。
【0056】
前記アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、本発明で用いる水系エマルション樹脂を形成する全モノマー成分(100重量%)中、70〜100重量%が好ましく、85〜99重量%がより好ましく、87〜99重量%がさらに好ましい。また、透明樹脂層の粘着性の観点から、メタクリル酸アルキルエステルの含有量が、前記モノマー成分中、30重量%以上であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましく、30〜65重量%であることがさらに好ましい。また、前記モノマー成分中、アクリル酸アルキルエステルは、70重量%以下であることが好ましく、30〜70重量%であることがより好ましく、35〜70重量%であることがさらに好ましい。
【0057】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは単独又は組み合わせて使用できる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
【0058】
カルボキシル基含有モノマーは、炭素数2〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.5〜10重量部の割合で用いることが好ましく、0.5〜8重量部がより好ましく、1〜8重量部がさらに好ましい。カルボキシル基含有モノマーの割合が10重量部を超えると、重合時の分散安定性の低下や、水分散液の粘度の上昇が顕著となり、塗工に影響を及ぼす傾向があり、好ましくない。
【0059】
さらに、前記モノマー成分には、前記アルキル(メタ)アクリレート及び前記カルボキシル基含有モノマー以外に、前記アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な共重合モノマーをモノマー成分として用いることができる。
【0060】
前記共重合モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合に係る重合性の官能基を有するものであれば特に制限されず、例えば、炭素数1又は15以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;例えば、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;例えば、スチレン等のスチレン系モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー;例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の窒素原子含有モノマー;例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマー;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の官能性モノマー;例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;例えば、ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;例えば、塩化ビニル等のハロゲン原子含有モノマー;その他、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン等のビニル基含有複素環化合物や、N−ビニルカルボン酸アミド類等が挙げられる。
【0061】
また、共重合性モノマーとして、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0062】
また、共重合性モノマーとしては、リン酸基含有モノマーが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、下記一般式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、mは2以上の整数を示し、M及びMは、それぞれ独立に、水素原子又はカチオンを示す。)
で表されるリン酸基含有モノマーが挙げられる。
【0063】
なお、一般式(1)中、mは2以上の整数であり、4以上の整数であることが好ましく、通常40以下の整数であることが好ましい。当該mは、オキシアルキレン基の重合度を表す。また、ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられ、これらポリオキシアルキレン基は、これらのランダム、ブロック又はグラフトユニット等であってもよい。また、リン酸基の塩に係る、カチオンは、特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、例えば、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等の無機カチオン、例えば、4級アミン類等の有機カチオン等が挙げられる。
【0064】
また、共重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;その他、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルや、フッ素(メタ)アクリレート等の複素環や、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
【0065】
さらに、共重合性モノマーとして、透明樹脂層形成材のゲル分率の調整等のために、多官能性モノマーを用いることができる。多官能性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する化合物等が挙げられる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(モノ又はポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの他、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル等の反応性の不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0066】
前記カルボキシル基含有モノマー以外の共重合モノマーの割合は、前記炭素数2〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0067】
前記モノマー成分の乳化重合は、前記モノマー成分を、乳化剤の存在下、重合することにより行うことができる。これにより(メタ)アクリル系ポリマーを分散含有する水系アクリル系エマルションを調製することができる。乳化重合では、例えば、上記したモノマー成分とともに、乳化剤、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤等を、水中において適宜配合される。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法等の公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法では、連続滴下又は分割滴下が適宜選択される。これらの方法は適宜に組み合わせることができる。反応条件等は、適宜選択されるが、重合温度は、例えば、20〜90℃程度であるのが好ましく、重合時間は30分間〜24時間程度であるのが好ましい。
【0068】
乳化重合に用いられる界面活性剤(乳化剤)は、特に制限されず、乳化重合に通常使用される各種の界面活性剤が用いられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤の具体例としては、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類;ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等を例示することができる。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート等のポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等を例示することができる。
【0069】
また、上記非反応性界面活性剤の他に、界面活性剤としては、エチレン性不飽和二重結合に係るラジカル重合性官能基を有する反応性界面活性剤を用いることができる。反応性界面活性剤としては、前記アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤に、プロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤は、適宜、単独又は併用して用いられる。これらの界面活性剤の中でも、ラジカル重合性官能基を有したラジカル重合性界面活性剤は、水分散液の安定性、粘着剤層の耐久性の観点から、好ましく使用される。
【0070】
アニオン系反応性界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のアクアロンKH−05、KH−10、KH−20、旭電化工業(株)製のアデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王(株)製のラテムルPD−104等);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王(株)製のラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成(株)製のエレミノールJS−2等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のアクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、BC−05、BC−10、BC−20、旭電化工業(株)製のアデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤(株)製のアントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業(株)製のエレミノールRS−30等);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のH−3330PL,旭電化工業(株)製のアデカリアソープPP−70等)が挙げられる。ノニオン系反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、旭電化工業(株)製のアデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王(株)製のラテムルPD−420、PD−430、PD−450等);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のアクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、旭電化工業(株)製のアデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40等);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤(株)製のRMA−564、RMA−568、RMA−1114等)が挙げられる。
【0071】
前記界面活性剤の配合割合は、前記モノマー成分100重量部に対して、0.3〜5重量部であるのが好ましく、0.3〜4重量部であるのがより好ましい。界面活性剤の配合割合により重合安定性、機械的安定性等の向上を図ることができる。
【0072】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知のラジカル重合開始剤が用いられる。例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤;例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤;例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えば、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば、芳香族カルボニル化合物等のカルボニル系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は、適宜、単独又は併用して用いられる。また、乳化重合を行なうに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用するレドックス系開始剤とすることができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合をおこなったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート等の金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸案トリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物;塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素等を例示できる。
【0073】
また、ラジカル重合開始剤の配合割合は、適宜選択されるが、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.02〜1重量部程度であり、0.02〜0.5重量部が好ましく、0.05〜0.3重量部がより好ましい。0.02重量部未満であると、ラジカル重合開始剤としての効果が低下する場合があり、1重量部を超えると、透明樹脂層形成材に係る(メタ)アクリル系ポリマーの分子量が低下し、透明樹脂層形成材の耐久性が低下する場合がある。なお、レドックス系開始剤の場合には、還元剤は、モノマー成分の合計量100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0074】
前記連鎖移動剤は、必要により、(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を調節するものであって、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、メルカプトプロピオン酸エステル類等のメルカプタン類等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、単独又は併用して用いられる。また、連鎖移動剤の配合割合は、モノマー成分100重量部に対して、例えば、0.3重量部以下であり、0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
【0075】
このような乳化重合によって、(メタ)アクリル系ポリマー粒子を含有するエマルション(エマルション粒子として含有)として調製することができる。このようなエマルション型の(メタ)アクリル系ポリマーは、その平均粒子径を、例えば、0.05〜3μm程度に調整することが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。平均粒子径が0.05μmより小さいと、透明樹脂層形成材の粘度が上昇する場合があり、1μmより大きいと、粒子間の融着性が低下して凝集力が低下する場合がある。
【0076】
また、前記エマルションの分散安定性を保つために、前記エマルションに係る(メタ)アクリル系ポリマーが、共重合性モノマーとしてカルボキシル基含有モノマー等を含有する場合には、当該カルボキシル基含有モノマー等を中和することが好ましい。中和は、例えば、アンモニア、水酸化アルカリ金属等により行なうことができる。
【0077】
本発明の水系エマルション樹脂である(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量は10万以上のものが好ましく、10万〜400万のものが耐熱性、耐湿性の点でより好ましい。ただし、乳化重合で得られる粘着剤は一般にはゲル分が多くGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定できないので分子量に関する実測定での裏付けは難しいことが多い。
【0078】
本発明の水系エマルション樹脂である(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)としては、特に限定されないが、0〜120℃であることが好ましく、10〜80℃がさらに好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が前記範囲内であることで、偏光板の耐熱性の点から好ましい。
【0079】
水系エマルション樹脂として用い得るポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂又はウレタンプレポリマーが用いられる。ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を主成分として得られるポリウレタン又はその変性物である。ウレタンプレポリマーは、一般的には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を主成分としてなり、末端にイソシアネート基又はブロック化されたイソシアネート基を有する。
【0080】
前記ポリオール成分としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合したポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA等の飽和又は不飽和の各種公知の低分子グリコール類;さらには当該低分子グリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸又はこれらに対応する酸無水物等を脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類;ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、等の一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールが例示される。なお、上記低分子グリコール成分の一部をグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の各種ポリオールとすることもできる。
【0081】
また、ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族又は脂環族の各種公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等がその代表例として挙げられる。
【0082】
なお、イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。
【0083】
本発明においては、前記ポリウレタン系樹脂を水系エマルション樹脂として用いることができるが、前記ポリウレタン系樹脂への水系分散性又は溶解性は、例えば、ポリウレタン樹脂又はウレタンプレポリマー中に、カルボン酸塩等の親水基を導入したり、エチレンオキサイド付加物等の親水性部を有するポリオール成分を使用することにより行うことができる。
【0084】
前記水系ポリウレタン樹脂としては、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス150、スーパーフレックス820、スーパーフレックス870等を挙げることができる。
【0085】
また、本発明で用いる水系エマルジョン塗工液には、成膜助剤を含有してもよい。成膜助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2):
−(CO)−(OA)−OR
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、Aは炭素数2又は3のアルキレン基であり、nは1〜60の整数であり、m=0又は1である。但し、Rが水素原子でm=1の場合を除く。)で表されるグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。前記R、R係る炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基や、芳香族基、さらにはこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。OAは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基であり、これらは混合されてランダム体又はブロック体になっていてもよい。上記一般式(2)で表されるグリコールエーテル系溶剤の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチルアミン、テキサノール等を挙げることができる。
【0086】
前記成膜助剤の配合割合は、前記水系エマルション樹脂(固形分)100重量部に対して、0.1〜15重量部であるのが好ましく、0.5〜10重量部であるのが好ましい。
【0087】
本発明で用いる水系エマルション樹脂を含む透明樹脂層形成材は、例えば、前記水分散型のアクリル系樹脂に係る水分散液に、前記成膜助剤を混合することにより得ることができる。
【0088】
なお、本発明で使用する透明樹脂層形成材の固形濃度は、10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。
【0089】
また、本発明で用いる透明樹脂層形成材には、必要に応じて、架橋剤、粘度調整剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤(顔料、染料等)、pH調整剤(酸又は塩基)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。これら添加剤もエマルションとして配合することができる。
【0090】
前記透明樹脂層は、前記形成材を、偏光子の表面(例えば、樹脂基材を有しない面)に、塗布して乾燥することにより形成することができる。前記形成材の塗布は、乾燥後の厚みが0.2μm以上3μm以下になるように行なうのが好ましい。塗布操作は特に制限されず、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等各種手段を採用できる。乾燥温度は、通常、60〜120℃であるのが好ましく、さらには70〜100℃であるのが好ましい。乾燥時間は10〜300秒間であるのが好ましく、さらには20〜120秒間であるのが好ましい。
【0091】
<低反射処理層>
低反射処理層は、各種手段で形成することができる。本発明の偏光フィルムは、低反射処理層の反射率が2%以下の場合に、黒表示時の色相変化を抑制するうえで好適である。前記反射率は1.8%以下、さらには1.5%以下の場合に好適に適用できる。反射率の測定は、実施例の記載による。
【0092】
前記低反射処理層の形成材料としては、例えば、シロキサン成分を有する化合物が挙げられる。当該化合物としては、例えば、加水分解性アルコキシシランがあげられる。また低反射処理層の形成材料としては、フルオロアルキル構造およびポリシロキサン構造を有する化合物が挙げられる。また、低反射処理層の形成材料には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等の無機材料を用いることができる。前記無機材料は、無機微粒子として用いることができる。これら材料は複数を組み合わせ用いることができる。
【0093】
また、前記低反射処理層は、単層で形成することができるが、複数層により設計することができる。また、前記低反射処理層は、基材フィルムや、透明基体に設けたものを用いることができる。また、前記低反射処理層は、ハードコート層基材上に形成して反射防止効果を発現させることが可能である。また、前記低反射処理層は、視認性の向上を目的とした防眩処理層に設けることができる。前記低反射処理層の厚みは特に制限されないが、通常は、0.1〜15μm程度である。
【0094】
<基材フィルム>
前記基材フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。
【0095】
なお、基材フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0096】
基材フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、さらには、5〜150μm、特に、20〜100μmの薄型の場合に特に好適である。
【0097】
前記基材フィルムの第1透明樹脂層を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0098】
<介在層>
前記基材フィルムと第1透明樹脂層は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層される。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。
【0099】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0100】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。
【0101】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0102】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0103】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30〜300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚みは、さらに好ましくは60〜250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1〜200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5〜50μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。
【0104】
なお、偏光子と保護フィルムの積層にあたって、保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0105】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0106】
粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0107】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0108】
<粘着剤層>
前記偏光フィルムには粘着剤層を設けて、粘着剤層付偏光フィルムとして用いることができる。粘着剤層は、偏光フィルムの第1透明樹脂層を設けていない側に設けることができる。また、基材フィルムを有する場合には基材フィルムに粘着剤層を設けることができる(図2(C)の粘着剤層5)。粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層にはセパレータを設けることができる。
【0109】
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などがあげられる。
【0110】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0111】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、転写する方法、または前記粘着剤を、直接塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光子等に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0112】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0113】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0114】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0115】
粘着剤層の厚みは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0116】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0117】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0118】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0119】
前記セパレータの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0120】
<表面保護フィルム>
偏光フィルムには、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0121】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚みは、一般的には、500μm以下、好ましくは10〜200μmである。
【0122】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚み(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。
【0123】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【実施例】
【0124】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0125】
<光学フィルム積層体Aの作製>
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体Aを得た。得られた光学フィルム積層体Aの光学特性は、透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0126】
<偏光子の単体透過率Tおよび偏光度P>
得られた偏光子を含む光学フィルム積層体Aの単体透過率Tおよび偏光度Pを、積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot−3c)を用いて測定した。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ片保護偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0127】
<光学フィルム積層体Bの作製>
光学フィルム積層体Aの作製において、厚み15μmのPVA系樹脂層を形成したこと以外は光学フィルム積層体Aの作製方法と同様にして光学フィルム積層体Bを得た。得られた偏光子の厚みは7μmであった。
【0128】
<ポリビニルアルコール(PVA)系形成材>
重合度2500、ケン化度99.0モル%のポリビニルアルコール樹脂を純水に溶解し、固形分濃度4重量%の水溶液を調製した。
【0129】
製造例1
<アクリル系エマルションの形成材A>
(モノマーエマルションの調製)
容器に、表1に記載のモノマー成分を加えて混合した。次いで、調製したモノマー成分200部に対して、反応性界面活性剤であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)12部、イオン交換水127部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、強制乳化して、モノマーエマルション(A−1)を調製した。
【0130】
別の容器に、上記割合で調製したモノマー成分600部に対して、反応性界面活性剤であるアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)12部、イオン交換水382部を加え、ホモミキサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5分間、6000(rpm)で攪拌し、強制乳化して、モノマーエマルション(A−2)を調製した。
【0131】
(形成材Aの調製)
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロート及び攪拌羽根を備えた反応容器に、上記で調製したモノマーエマルション(A−1)339部及びイオン交換水442部を仕込み、次いで、反応容器を十分窒素置換した後、過硫酸アンモニウム0.6部を添加して、撹拌しながら60℃で1時間重合した。次いで、モノマーエマルション(A−2)994部を、反応容器を60℃に保ったまま、これに3時間かけて滴下し、その後、3時間重合して、固形分濃度46.0%のポリマーエマルションを得た。次いで、上記ポリマーエマルションを室温まで冷却した後、これに、濃度10%のアンモニア水を添加してpHを8に中和した。さらに、その中和したポリマーエマルション100部に、成膜助剤として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート4.6部を添加、混合して、固形分44.0%のアクリル系エマルションの形成材Bを得た。
【0132】
【表1】
表1中の略記は、それぞれ以下の通りである。
MAA:メタクリル酸
BA:アクリル酸ブチル
EA:アクリル酸エチル
MM:メタクリル酸メチル
【0133】
<ハードコートの形成材料1とその形成>
塗工液に含まれる樹脂として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学工業(株)製、商品名「UV1700B」、固形分100%)70重量部、および、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)30重量部を準備した。前記樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、前記粒子としてアクリルとスチレンの共重合粒子(積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマー」、重量平均粒径:3.0μm、屈折率:1.52)を2重量部、前記チキソトロピー付与剤として有機粘土である合成スメクタイト(コープケミカル(株)製、商品名「ルーセンタイトSAN」)を0.4重量部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を3重量部、レベリング剤(DIC(株)製、商品名「PC4100」、固形分10%)を0.5重量部混合した。なお、前記有機粘土は、トルエンで固形分が6%になるよう希釈して用いた。この混合物を、固形分濃度が50重量%となるように、トルエン/シクロペンタノン(CPN)混合溶媒(重量比80/20)で希釈して、超音波分散機を用いて、塗工液を調製した。硬化後のハードコートの厚みが7.0μmになるように塗膜を形成した。次いで、90℃で2分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0134】
<ハードコートの形成材料2とその形成>
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」、固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE907」)を5部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」)を0.01部添加した。上記溶液中の固形分濃度が36%となるように、上記配合液にシクロペンタノン(以下、「CPN」と記す)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGM」と記す)を45:55の比率で加えた。このようにしてハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を作製した。硬化後のハードコートの厚みが7.5μmになるように塗膜を形成した。次いで、90℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0135】
<低反射処理層の形成材料3とその形成>
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE907」)を5部、中空シリカゾル(日揮触媒化成(株)製、商品名「スルーリア4320」、固形分20%)を使用し、固形分濃度が2.0%、硬化膜の屈折率:1.40となるように、MIBK(メチルイソブチルケトン)で希釈混合し、反射防止層形成用塗工液を調整した。硬化の厚みが100nmになるように塗膜を形成した。次いで、60℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0136】
<低反射処理層の形成材料4とその形成>
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE907」)を5部、中空シリカゾル(日揮触媒化成(株)製、商品名「スルーリア4320」、固形分20%)を使用し、固形分濃度が2.0%、硬化膜の屈折率:1.35となるように、MIBK(メチルイソブチルケトン)で希釈混合し、反射防止層形成用塗工液を調整した。硬化の厚みが100nmになるように塗膜を形成した。次いで、60℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0137】
<低反射処理層の形成材料5とその形成>
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE907」)を5部、中空シリカゾル(日揮触媒化成(株)製、商品名「スルーリア4320」、固形分20%)を使用し、固形分濃度が2.0%、硬化膜の屈折率:1.30となるように、MIBK(メチルイソブチルケトン)で希釈混合し、反射防止層形成用塗工液を調整した。硬化の厚みが100nmになるように塗膜を形成した。次いで、60℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0138】
<低反射処理層の形成材料6とその形成>
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート#300」、固形分100%)の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE907」)を5部、酸化ジルコニウム含有アクリレート(JSR(株)製、商品名「KZ6661」、固形分50%)を使用し、固形分濃度が2.0%、硬化膜の屈折率:1.62となるように、MIBK(メチルイソブチルケトン)で希釈混合し、反射防止層形成用塗工液を調整した。硬化の厚みが80nmになるように塗膜を形成した。次いで、60℃で1分間乾燥し、その後、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射し、上記塗膜を硬化処理した。
【0139】
<屈折率測定>
JIS K0062−1992にて屈折率を求めた。
【0140】
実施例1
(透明樹脂層の形成)
上記光学フィルム積層体Aの偏光子の表面に、25℃に調整した上記ポリビニルアルコール系形成材Aをワイヤーバーコーターで乾燥後の厚み(相溶層を含まない)が1.0μmになるように塗布した後、80℃で30秒間熱風乾燥して、透明樹脂層を形成して、偏光フィルムを作製した。
【0141】
(低反射処理層の形成)
前記ハードコート層形成材料1を、透明プラスチックフィルム基材(トリアセチルセルロースフィルム、富士フィルム(株)製、商品名「フジタック」、厚さ:40μm、屈折率:1.49)上に塗布し、ハードコート塗膜を形成した。次いで、低反射処理層形成材料3をハードコート層上に塗布し、低反射層を形成して、低反射処理層を有する基材フィルムを得た。
【0142】
(反射率)
基材フィルムの低反射処理層が形成されていない面に三菱レイヨン製黒色アクリル板(厚さ2.0mm)を厚さ約20μmの粘着剤にて貼り合わせ裏面の反射をなくしたものについて、表面(低反射処理層)の反射率を測定した。反射率は、日本分光(株)製の分光光度計(商品名:U−4100)を用いて、積分球測定による分光反射率を測定した。C光源/2°視野の全反射率Y値と色相a値、色相b値を求めた。
【0143】
次いで、上記で得られた偏光フィルムの透明樹脂層の側に、低反射処理層を有する基材フィルムを、厚み12μmの粘着剤層により貼り合わせて、低反射処理層付の偏光フィルムを作製した。
【0144】
実施例2〜10、比較例1〜6、参考例1
実施例1において、透明樹脂層の形成材の種類、透明樹脂層の厚みを表2に示すように変えたこと、低反射処理層の形成材料を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。
なお、表2に示すように、実施例9、比較例5では、低反射処理層を2層形成した。比較例1〜5では透明樹脂層を形成することなく、低反射処理層を形成した。参考例1では、低反射処理層の形成材を用いていない。
【0145】
上記実施例および比較例で得られた偏光フィルムについて下記評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
<相溶層の厚みの確認>
相溶層の厚みは、ガスクラスターイオン銃搭載のTOF−SIMSによって測定した。偏光フィルム(サンプル)の透明樹脂層(相溶層を含まない)の膜厚は予め走査型電子顕微鏡で正確な膜厚を算出した数値を使用した。偏光フィルム(サンプル)の透明樹脂層側から偏光子側に向かってアルゴンクラスターでエッチングしながらデプスプロファイルを観察し、偏光子由来の「BOイオン」(イオン強度)を抽出した。透明樹脂層側からの深さ(nm)と「BOイオン」(イオン強度)について、図4に示すようなグラフを作成した。電子顕微鏡から得られた透明樹脂層の膜厚を「B」、偏光子側から透明樹脂層側に向かって「BOイオン」が減少し始めるところを「A」とし、「A−B間距離」を相溶層の厚みとした。実施例1に関して走査型電子顕微鏡にて膜厚を計測したところ、偏光子の厚みが5.0μmであるのに対して透明樹脂層の厚みは1.0μmであった。また、TOF−SIMSによって透明樹脂層側からエッチングしながらイオン強度を測定した結果、図4に示すようなグラフが得られた。図4の透明樹脂層中の「BOイオン」強度は0.8であったのに対して、偏光子中の「BOイオン」強度は3.5であった。また図4に示すようにA−B間には「BOイオン」強度の勾配が出来ていた。「A−B間距離」をアルゴンクラスターのエッチングレートから換算すると、相溶層の厚みは0.1μmであった。また、透明樹脂層側の「BOイオン」強度0.8の部分を実施例に記載のFTIRを用いたホウ酸含有量測定を行うと、ホウ酸含有量は4%であった。一方で、TOF−SIMSにおける「BOイオン」強度が3.5であった偏光子中のホウ酸含有量は、透明樹脂層を形成する前にFTIRによって求められ、ホウ酸含有量は16%であった。このことから、偏光子中の相溶層ではホウ酸が勾配を持って存在していること(相溶層が偏光子の他の部分よりもホウ酸濃度が相対的に低いホウ酸低濃度層に該当すること)が示された。
【0147】
<光学特性:色相変化量Δab>
色相変化量Δabは下記式によって求めた。
Δab=√((偏光フィルムa値―基材フィルムa値)+(偏光フィルムb値―基材フィルムb値)
Δabは1.0以下が好ましく、さらには0.5以下が好ましい。
○:0.5以下
△:1.0以下
×:1.0より大きい
【0148】
【表2】
【符号の説明】
【0149】
1 偏光子
2a、2b 透明樹脂層
3 低反射処理層
4 基材フィルム
5 粘着剤層
6 層間充填剤
7 透明基体
10 偏光フィルム
11 偏光フィルム
12 偏光フィルムを含む構成
X 相溶層
A 偏光子の厚み
B 相溶層の厚み
図1
図2
図3
図4