特許第6486872号(P6486872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6486872-印刷用孔版 図000002
  • 特許6486872-印刷用孔版 図000003
  • 特許6486872-印刷用孔版 図000004
  • 特許6486872-印刷用孔版 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486872
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】印刷用孔版
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20190311BHJP
   B41C 1/14 20060101ALI20190311BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B41N1/24
   B41C1/14
   H05K3/12 610P
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-169858(P2016-169858)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34435(P2018-34435A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】倉田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】澁澤 邦彦
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−224014(JP,A)
【文献】 特開2000−318334(JP,A)
【文献】 特開2007−234248(JP,A)
【文献】 特開2006−205716(JP,A)
【文献】 特開2015−145092(JP,A)
【文献】 特開平05−338369(JP,A)
【文献】 特開2016−049703(JP,A)
【文献】 特開2007−230223(JP,A)
【文献】 米国特許第05669972(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/00 − 99/00
B41M 1/00 − 3/18
B41M 7/00 − 9/04
B41C 1/00 − 3/08
B41D 1/00 − 99/00
H05K 3/10 − 3/26
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷パターン開口部が形成された基材を有し、
前記印刷パターン開口部が、印刷パターン開口部を跨ぐパターン支持部を伴わない線形状の開口部を含み、
該線形状の開口部によって基板に形成された、三角形、四角形、多角形、扇形、台形、半円形又は楕円形の残し部分の先端部分のみが、前記基材の水平面より突出又は後退している印刷用孔版。
【請求項2】
前記基材の水平面より突出又は後退している量が、基材の厚みの5〜500%である請求項1に記載の印刷用孔版。
【請求項3】
前記突出又は後退している部分の基材が、残留応力の異なる複数層及び/又は残留応力の異なる傾斜層を有する基材で構成される請求項1又は2に記載の印刷用孔版。
【請求項4】
前記残留応力の異なる複数層及び/又は残留応力の異なる傾斜層が、印刷基板面側に形成される請求項に記載の印刷用孔版。
【請求項5】
前記基材が、金属又は金属合金よりなる請求項1〜のいずれか1項に記載の印刷用孔版。
【請求項6】
前記印刷パターン開口部の基材の厚さが50μm以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の印刷用孔版。
【請求項7】
前記基材に、ビッカース硬度が800以上の硬質膜が形成されている請求項1〜のいずれか1項に記載の印刷用孔版。
【請求項8】
前記硬質膜は、前記基材の最外層の表層に形成される請求項に記載の印刷用孔版。
【請求項9】
前記硬質膜が、非晶質炭素膜、TiAlN、AlN、TiCN、TiC、TiN、CrC、CrN、SiC、SiOx、無電解Ni−Pめっき、無電解Ni−Bめっき、電解Ni−Wめっき及び電解クロムめっきからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む請求項又はに記載の印刷用孔版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用孔版に関し、特に、印刷パターン開口部にメッシュを用いない印刷用孔版に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の小型化が進み、スクリーンマスクを用いた印刷技術も革新的に発達を続けてきた。電子部品のサイズが、1.0mm×0.5mmから0.6mm×0.3mmへ、さらに0.4mm×0.2mmへと小さくなってきた近年、作製に必要なスクリーンマスクの開口幅も0.07mm程度だったが、今では0.02mm程度の開口幅が必要となってきた。この技術革新に伴い、それに使われるペーストや印刷機、スクリーンマスクも進化してきている。
【0003】
ペーストメーカーでは、細線印刷用として、粒子径を1μm以下とした銀ペースト、あるいは最近では銅ペーストの開発も盛んとなってきている。チキソ性やレベリング性の高いペーストの開発も進んでいるが、開口設計に対して、印刷物はニジミ等が原因で、設計値通りに印刷することは難しい。またスクリーンマスクを構成しているメッシュを介しての印刷となり、そのメッシュが印刷後のペーストを引き上げてしまう現象もあり、印刷物の高さは凹凸となってします。これは電子部品メーカーにとっては、部品の特性上、好ましくない形状である。
【0004】
印刷機からは、低印圧で印刷してマスクの付加を抑えた印刷方法や一度ブランケット(シリコン素材)に印刷して、再度転写する方式等新しい印刷方法が出来上がってきている。しかしながら、これらの印刷機を使っても、まだ電子部品メーカーの要求値には応えられていない。
【0005】
スクリーンマスクでは、感光性樹脂の開発が進み、近年では20μm以下の線幅まで解像できる感光性樹脂が使われ始めている。また同様に感光性樹脂に変わりに金属版をメッシュと接合したメッシュ一体型メタルマスクについても、20μm以下のパターンは容易にできるところまで技術は進んできた。しかしながら共にメッシュを支持体として用いることとなるので、印刷時の印刷物の凹凸は避けられない。また、スクリーンマスクあるいはメッシュ一体型メタルマスクにプリント面側に特殊な表面処理をして、ニジミを防止する方法等が報告されている。こちらの方法は、ニジミ防止についてはかなり改善ができている。
【0006】
一方、メッシュを用いない印刷用孔版として、メタルマスクがある(特許文献1,2参照)。メタルマスクは主に、金属にレーザ照射によるパターン形成をするタイプ、金属にレジストでパターン形成をした後、パターン部を腐食させて作製するエッチングタイプ、母型にレジストでパターン形成を行い、その母型にめっきを成長させて作製する電鋳タイプの3種類の方法が主である。
【0007】
しかしながら、メッシュという支持体がないため、メタルマスクでは得意とするパターンと、不可能又は不得意とするパターンとが存在する。例えば、ローマ字の「O」や数字の「0」を印刷する場合の中央部のような浮き島状のパターンは何らかの手段を施さない限り不可能なパターンとされている。また、図1に示すコの字パターンやSの字パターンは、メタルマスクでは不得意なパターンであり、もしコの字パターンやSの字パターンのマスクが作成できたとしても、そのパターン形状から、印刷時(スキージング時)にパターンにゆがみが発生したり或いはパターンを損傷しやすい。洗浄時(版拭き時)にも、パターンを引っ掛けてしまい、パターンにゆがみが発生したり或いはパターンを損傷しやすいため、実際にはこのようなパターンでは、メタルマスクは使用されず、スクリーンマスクおよびメッシュ一体型メタルマスクが使用されていた。
【0008】
また、レーザ照射をするタイプのメタルマスクや、エッチングタイプのメタルマスクでは、金属の厚みに制限があった。既製品の板を購入して加工するが、10μmのような薄い板は存在しないため、20μm以上の厚みの板加工しか不可能である。印刷物の厚みが10μm程度を狙う電子部品メーカーでは、薄い金属を必要とするため、レーザやエッチングを用いる工法は不可能という認識があった。
【0009】
唯一電鋳タイプのメタルマスクが薄膜にも対応できるが、たとえば10μm厚の金属をめっき母型から剥がすのは容易ではなく、また金属が薄いため、剥がす時に金属皮膜を伸ばしてしまうという欠点もある。
【0010】
また電鋳法は金属を析出させていく方法である。薄い金属厚の場合、母型とされる金属板に欠陥がある場合、その欠陥箇所が析出される金属にも転写されてしまい、同箇所に欠陥が生じてしまう。特に金属厚が薄い場合は致命傷の欠陥(ピンホール等)になりやすく、問題となっている。
【0011】
また、スクリーンマスクやメッシュ一体型メタルマスクの場合はメッシュという支持体の上にパターン形成をするため、寸法精度は比較的出しやすいのに対し、メッシュを用いないメタルマスクでは、直接パターンがあるメタルマスクを引っ張るので、厚みが薄いメタルマスクの場合は、いわゆる太鼓形状(中央部がより多く引っ張られる)になってしまい、寸法精度が出しにくいという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−205716号公報
【特許文献2】特開2009−56706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来のメタルマスクのような印刷用孔版における課題を解決するものであって、従来の課題であった開口パターンのゆがみ、欠陥或いは損傷をなくして、寸法精度及び位置精度の高い印刷用孔版を提供することを目的とするものであり、特に、印刷パターン開口部にメッシュを用いない印刷用孔版において、印刷時及び/又は洗浄時に発生するコの字パターン又はSの字パターン等の開口パターンのゆがみ及び/又は損傷をなくして、精度良く印刷できる印刷用孔版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明らは上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、印刷パターン開口部を構成する基材の一部を、基材の水平面より、突出または後退させることにより、コの字パターン又はSの字パターン等の開口パターンを損傷することなく、印刷できるようにできることを見いだした。また、複数の印刷パターン開口部が形成されたエリアを備えた基材において、該エリアの外周部の基材の厚みを、該エリアの基材の厚みに比べて厚く形成することにより、精度の高い印刷用孔版が得られることも判明した。さらに、印刷パターン開口部を有する基材がメッシュにより枠体に張設された、いわゆるコンビネーション型の印刷用孔版において、メッシュと基材を、ゴム系接着剤とエポキシ系接着剤を含む2種以上の接着剤で接着することにより、母型にめっき皮膜が付いているままコンビネーションを行うことが可能となることが判明した。
【0015】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の特徴を有する印刷用孔版が提供される。
本発明の印刷用孔版は、印刷パターン開口部が形成された基材を有し、該基材の印刷パターン開口部を構成する基材の一部が、前記基材の水平面より突出又は後退していることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、印刷パターン開口部が形成された基材を有し、該印刷パターン開口部の少なくとも一部が線形状部分を含み、該開口パターンの一方端部と他方端部とを直線的に結ぶ全長が、前記線形状を含む開口パターンの一方端部と他方端部の前記印刷パターン開口部の全長の少なくとも90%未満の長さとなり、前記印刷パターン開口部にメッシュが存在しないことを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記基材の水平面より突出又は後退している量が、基材の厚みの5〜500%であることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記突出又は後退している部分の基材が、残留応力の異なる複数層及び/又は残留応力の異なる傾斜層を有する基材で構成されることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記残留応力の異なる複数層及び/又は残留応力の異なる傾斜層が、印刷基板面側に形成されることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記基材が、金属又は金属合金よりなることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記印刷パターン開口部の基材の厚さが50μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記基材に、ビッカース硬度が800以上の硬質膜が形成されていることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記硬質膜が、前記基材の最外層の表層に形成されることを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、前記硬質膜が、非晶質炭素膜、TiAlN、AlN、TiCN、TiC、TiN、CrC、CrN、SiC、SiOx、無電解Ni−Pめっき、無電解Ni−Bめっき、電解Ni−Wめっき及び電解クロムめっきからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする。
また、本発明の印刷用孔版は、複数の印刷パターン開口部が形成されたエリアを備えた基材を有し、前記エリアの基材の厚みが、前記印刷パターン開口部の複数存在するエリアの外周部に比べて薄く形成されており、前記外周部の基材厚さが40μm以上であることを特徴とする。
さらに、本発明の印刷用孔版は、枠体と、該枠体に張られたメッシュと、印刷パターン開口部を有する基材とからなり、前記メッシュと前記基材が、ゴム系接着剤とエポキシ系接着剤を含む2種以上の接着剤で接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来の課題であった印刷用孔版における開口パターンのゆがみ、欠陥或いは損傷をなくして、寸法精度及び位置精度の高い印刷用孔版を提供することができる。また、本発明によれば、枠体へ張設される際に生じる欠陥やゆがみをなくして、寸法精度の安定した印刷用孔版が得られる
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】開口パターンとして、コの字パターンやSの字パターンが形成されたメタルマスクを模式的に示す模式図。
図2】開口パターンとして、「<」の字形のような、線形状部分を含むパターンが形成されたメタルマスクを模式的に示す図。
図3】前記「<」の字パターンの残し部の三角形頂点部分が、前記三角形の底辺部分を支点として、印刷基板面側に僅かに突出した状態を模式的に示す図。
図4】コンビネーション後のメタルマスク基材の伸びを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の印刷用孔版は、印刷パターン開口部を有する基材を有し、該印刷パターン開口部を構成する基材の一部を、基材の水平面より、突出または後退させたことを1つの特徴とするものであり、該印刷用孔版は、電鋳めっき応力を利用して、常にパターンを基板面側に向けることにより製造される。
【0019】
本発明にかかる印刷用孔版の印刷パターン開口部を伴う基材は、その開口パターン部にメッシュを伴わずリブなどの支持体も伴わないか、または極力省かれて形成されるため、従来のメッシュやリブが惹起してきた印刷品質上の不具合や製版上の不経済(インク転写性劣化、メッシュ痕、清掃時のメッシュ部へのインク残り、高価なメッシュの使用、複雑な製版工程その他)を根本的に是正することが可能となり得る。
【0020】
メッシュやリブを伴わないことにより、例えば、メッシュを伴う従来版と同一量のインクの印刷(転写)を得るためには、従来メッシュが占有していたインク透過体積分印刷用孔版の基板を薄く設計することが必要になり、この薄い基板を製版するため、また引き続き印刷で該版を使用するための様々な工夫が必要になる。また、印刷パターン開口部付近は、基材が前記のように薄くなることに加え、従来の補強部であるメッシュ等の支持体を失うことで、その剛性が弱くなり印刷間ターン開口部を精度良く維持することが困難となる場合や、スキージ等の接触により損傷が発生し易くなる。
本発明によれば、こうした薄い基材を用いた印刷用孔版における課題を解決し、損傷やゆがみのない印刷用孔版を得ることが可能となる。
【0021】
本発明の実施形態にかかる印刷用孔版は、印刷パターンが開口された無機材料、有機材料又は無機と有機の複合材料等様々な材料より成る基材にて構成され、印刷パターン開口部にメッシュやリブを伴わない部分を有することを特徴とする。
なお、全体の一部にメッシュやリブが存在しても問題の無い場合はメッシュやリブが局所的に存在する場合もあり得る。
【0022】
本発明の実施形態にかかる印刷用孔版の前記印刷パターンは、特には限定されないが、剛性の乏しいメタルマスク基材(例えばメタルマスクの基板厚みが30μm未満のもの)に、「コ」の字、「S」字等、アルファベット文字による一例では、「H」字、「J」字、「L」字、「W」字、「E」字、「Z」字等の線状の印刷パターン開口部の形成の結果、基材から三角系、四角形、多角形、扇形、台形、半円形、楕円形の剛性の弱い部分が突出して残る構造部分(以降「残し部」ということもある)を伴うものである。
【0023】
さらに、本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、前記コの字パターンやSの字パターンなど基材から一部が突出して残る構造部分(残し部)が形成されている印刷用孔版であって、前記パターンの少なくとも一部に、印刷パターン開口部を跨ぐようなメッシュやリブなどのパターン支持部を伴わないパターン部分を有する印刷用孔版(ステンシル、またはメタルマスクと呼ぶ場合もある)である。
【0024】
本発明の印刷用孔版における具体的手段を記載する。
【0025】
本発明の、印刷パターン開口部を構成する基材の一部を、基材の水平面より、突出または後退させた印刷用孔版は、電鋳めっき応力を利用して、常にパターンを基板面側に向けることにより製造されるが、電鋳めっきに用いる母型自体に欠陥がないように、以下の手段を用いることが好ましい。
〈1〉SUS母型自体に欠陥があるため、その欠陥を無くすまで研磨をする。
〈2〉または、単一金属を母型とし、表面のキズ等を研磨により欠陥を無くす。
〈3〉欠陥の無いガラスやシリコン等に金属スパッタによる母型を作製する。
【0026】
また、ゆがみ無く製造する手段として、以下が挙げられる。
〈1〉Ni−W、Ni−P、Ni−Co等、ビッカース硬度を500HV以上として、伸びにくいメタル皮膜を用いる。
〈2〉メタルサイズを大きくし、メタルにテンションをかけるテトロン部を10mm以下とする。
〈3〉基材を2段構造として、印刷パターンエリア外のメタルの厚みを厚くして、伸びようとする力を抑制する。
〈4〉あらかじめメタルマスクに形成された印刷パターンが製作過程で変形することを想定し、設計時にその変形を織り込んだ形状のパターンとすることで、変形を補正する。一例として、図4に示すように、CADで太鼓形状に補正をして、メタルを作成する。
〈5〉コンビネーションメタルマスクは、開口を形成したメタルマスクを印刷枠に展張したスクリーンの中央部に接着剤を用いて固定し、接着部の内側のスクリーンを切除して製作される。以下、単に「コンビネーション」ということもある。この場合、最初から、紗を高テンションで張ってしまうと、後で紗をカットする際に大きなゆがみが生じる。そのため、最初のステップとして、あらかじめ弱テンションで張られた枠にメタルをコンビネーションする。次いで、弱テンションでメタルをコンビネーションしたものを、さらに紗張り機にかけて、新しい枠に高テンションで貼り付ける。
【0027】
さらに、S字あるいはコの字形状のメタルをゆがみ無くコンビネーションする手段として、以下が挙げられる。
〈1〉母型の表面粗さをRa:0.01μm〜0.1μm程度まで研磨を行い、母型からめっきで成長させたNiがはがれやすい母型を使用する。
〈2〉母型にあらかじめ離型処理をおこなう。その離型処理は、日本化学産業(株)販売されているニッカノンタックで有機酸皮膜を母型に成膜する。
〈3〉母型ごとコンビネーションを行い、コンビネーションを行った後に母型を剥がす。
〈4〉コンビネーションに用いる接着剤はゴム系の接着剤で下塗りを行い、紗張り枠上にテープで固定、メタルにゴム系の接着剤の部分にさらにテトロン紗の上から上塗りする。一旦ゴム系で接着をして、最終の仕上げにエポキシボンドやシアノボンド、アクリル系ボンド等をオーバーコートさせる。
〈5〉コンビネーションするテトロン紗はNBC社製の#225−55あるいは♯230−48を使用し、高テンション版でゆがみを抑制させる。
【0028】
以下、図2を用いて、さらに具体的に説明する。
本発明の一実施形態のかかる印刷用孔版は、例えば、図のような「<」の字形のような、線形状部分を含む印刷パターン開口部が形成され、前記線形状部分を含む開口パターンの少なくとも一部は前記線形状部分を含む一連の開口パターンの一方端部(図中の(a))と他方端部(図中の(c))とを直線的に結ぶ全長((a)−(c))が前記略線形状を含む開口パターンの一方端部と他方端部の前記印刷パターンの全長((a)−(b)−(c))の、例えば少なくとも90%未満の長さとなるものを含む基材とすることができる。
「(a)−(c)」の長さより「(a)−(b)−(c)」の長さが長く、またその差が大きいほど、「(a)(b)(c)」で囲まれた印刷パターン開口部の「残し部」の支持部分((a)−(c))は短く弱くなる場合が多いため、本発明を好適に適用することができる。
【0029】
本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、残し部を印刷用孔版の基板面レベル(水平)に対して、その残し部分の先端部分を基板面レベル(水平面に対して)一定方向に、一定の段差で突出させるように曲げて形成され得る。
例えばヤスリやおろし金などの「目」のように、制御された方向で(例えば「順目」)制御された高低差で印刷用孔版基板面より連続傾斜して突出または後退している。
これは、前記図1に示す、支持(パターンの少なくとも一部に、印刷パターン開口部を跨ぐように設けられたメッシュやリブなどのパターンを支持する手段)を伴わないコの字パターンやSの字パターンを有するメタルマスクが出来上がったとしても、そのパターンの残し部(支持のない部分)に、印刷時(スキージング時)や版の洗浄時(版拭き時)にスキージやウエス等を引っ掛けてしまい、印刷パターンを損傷することを抑制するためである。
而して、本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、その表層を一定の方向(順目方向)にスキージ等で摩擦しても、前記パターンの残し部にスキージ等を引っ掛けることを抑制することができる。
【0030】
このように本発明の一実施形態である一定方向に傾斜して突出した(後退した)パターンの残し部は、例えば印刷用孔版(メタルマスク基板)を2層以上(傾斜層含む)の複数層で構成し、層間の残留応力を変化させることで実現することができる。
【0031】
以下、主に、湿式めっき浴から、公知のフォトリソグラフィー法等で形成したパターンを有するめっき母型上に形成する電鋳箔を印刷用孔版の基材として使用する場合について説明する。
【0032】
例えば、本発明にかかる一実施形態として、スルファミン酸ニッケル550g/L、スルファミン酸コバルト35g/L、ホウ酸35g/Lに、圧縮応力剤としてサッカリンソーダやNTSを添加し、めっき成長面をプリント面側(印刷基板面側)として、メタルマスクを作製する。めっき応力を引っ張り応力とするため、めっき成長面側すなわちプリント面側に必ずメタルが倒れる方向になり、印刷時にメタルを損傷することなく、スキージングができる。
【0033】
さらに例えば、本発明にかかる他の実施形態として、スルファミン酸ニッケル550g/L、スルファミン酸コバルト35g/L、ホウ酸35g/Lに、圧縮応力剤としてサッカリンソーダおよびNTS等を1.5g/L以上、引っ張り応力剤(レベリング剤)少々を添加し、めっき成長面をスキージ面側としてメタルマスクを作製する。めっき応力が圧縮応力とするため、母型面をプリント面側とすることにより、必ずプリント面側にメタルが倒れる方向になり、印刷時にメタルを損傷することなく、スキージングすることができる。
【0034】
さらにまた例えば、本発明にかかる一実施形態として、スルファミン酸ニッケル550g/L、亜燐酸30g/L、ホウ酸35g/Lを基本組成とする。亜燐酸は大きく引っ張り応力に傾くため、圧縮応力剤としてサッカリンソーダ及びNTS等を用いて、応力を調整する。前記[0032]、[0033]と同様、めっき成長面をスキージ面、プリント面と用途に合わせて応力を調整することができる。
【0035】
このように、前記メタルマスク基材がスルファミン酸Niめっき浴等から形成されるNi電鋳箔である場合は、Niめっき液に添加されるレべリング剤の添加量で残留応力を圧縮応力から引っ張り応力まで制御可能なことが公知になっている。
よって、例えば1層目を残留応力の無いNiめっき層とし(例えばメタルマスクの印刷基板面側の層)、2層目(例えばメタルマスクのスキージ面側の層)を圧縮応力とすることで、例えば「<」字パターンの残し部の三角形頂点部分を前記三角形の底辺部分を支点として、図3に示すように、印刷基板面側に僅かに突出させることができる。
【0036】
以下に、前記めっき電鋳箔以外の基材を用いた印刷用孔版について述べる。
例えば、金属板、例えばステンレス鋼板にYAGレーザ、COレーザなど高エネルギーの電磁波や光、集束イオンビーム(F.I.B)などのイオン等を照射して所望の開口部を基板上に形成した所謂「レーザ加工メタルマスク」がある。
さらには、金属板に公知のフォトリソグラフィー法等で所望のレジストパターンマスク形成した後化学エッチィングすることで、所望の印刷パターン開口部を形成した所謂エッチィングマスク等も公知になっている。
前記各種マスク含め、平板状(箔状)基材に後加工で所望のパターン開口部を穴空けにて形成する方法でも印刷用孔版は作成可能である。
なお、この穴明け方法は、前記レーザ加工やエッチィング加工以外にも、パンチ穴明け等のプレス成型、ドリル、ブラスト、高圧液体の照射等様々な公知の方法で行い得る。
【0037】
本発明の一実施形態にかかる、残し部が印刷用孔版の基板面レベル(水平)に対して、その残し部分の先端部分を基板面レベル(水平面に対して)一定方向に、一定の段差で突出させるように曲げて形成されている印刷用孔版は前記メタルマスクを用いても作成可能である。
例えば、メタルマスク基材をめっき可能な様々な素材、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、亜鉛、または前記金属の合金(例えばステンレス鋼、インコネル、インバー、ニッケルタングステン、ニッケルコバルトなど)とすることも可能であり、さらには、ガラスやセラミクス、FRPなどの複合材料等、樹脂やゴム等の難めっき素材でも、Pb触媒を付与した無電解めっき皮膜やスパッタリングなどのドライ薄膜等からなる基材密着層を介して所望のめっき行うことが可能であり、前記電鋳法による応力調整と同様、例えば、メタルマスクの一方の面に圧縮応力や引っ張り応力のめっき層を追加形成して製作可能である。
さらに、金属版の片面にブラスト加工や切削加工などの外部応力を加えることで、片面の残留応力を制御すること(金属版を反らせることが可能なこと)も公知となっており、このような方法も有効に適用することが可能である。
【0038】
本発明の一実施形態にかかる、残し部が印刷用孔版の基板面レベル(水平)に対して、その残し部分の先端部分を基板面レベル(水平面に対して)一定方向に、一定の段差で突出させるように曲げて形成されている印刷用孔版は公知の方法で開口パターンが形成されている部分の残し部を一定方向に物理的に曲げて(例えばピン等で押し出すことで)形成してもかまわない。
またこのような形状を立体切削加工や立体造形プリンター等を使用して形成することも可能である。
【0039】
本発明の一実施形態にかかる前記残し部の一方向への突出量(メタルマスク基板面からの突き出し量)は、メタルマスク基材の剛性、印刷条件(スキージスピード、印圧、押し込み量等)、被印刷シート(基板)、インクの特性(粒系や粘性)等によって適宜設計することが可能である。
前記突出量は特に限定されないが、概ねメタルマスク基材全体の厚みばらつきを考慮すると、メタルマスク基材の概ね5〜500%、好適には10〜100%、さらに好適には20〜90%で設計される。
突出量が少ない場合、例えば突出量がメタルマスク基材全体の厚みの5%未満であればメタルマスク基板の厚みバラツキから必要量の突出が得られない場合があり、例えば突出量がメタルマスク基材全体の厚み10%未満であれば残し部の剛性が弱いため十分な突出量が確保できない場合がある。このためばらつきを考慮すると突出量はメタルマスク基材全体の厚み20%以上が好適である。逆に突出量が大きすぎる場合、例えば突出量がメタルマスク基材全体の厚み500%を超えている場合、印刷終了時、印刷用孔版が被印刷シート(印刷基板)と離れる際、インクの粘度により残し部が突出してしまい繰り返しの印刷で印刷シートに接触して損傷させてしまう。突出量がメタルマスク基材全体の厚みの500%以下であれば、このような現象はほとんどおこらない。突出量がメタルマスク基材全体の厚みの100%以下、メタルマスク基材全体の厚みばらつきを考慮すると90%以下であれば、このような現象は確実におこらず好適である。
【0040】
本発明の一実施形態にかかる突出部は、印刷機等により印刷する際、オフコンタクト印刷でもオンコンタクト印刷でも、被印刷シートに印刷シート側の予め突出している残し部がスキージ等の圧力でメタルマスク基板と概ね水平になり、結果所望の印刷を行うことが可能となる。
【0041】
本発明の一実施形態にかかる突出部を含むメタルマスク基材部分を構成する素材は、ヤング率の大きいバネ性の強い素材が好適であり適宜使用することができる。
例えば、ステンレスやタングステン、ニッケルタングステン、クロムモリブデンなどのタングステン合金やクロムやモリブデン、タングステン合金等が好適であるが、他のアモルファス金属、の他、ゴム、樹脂、炭素素材など、または前記の複合材料を使用することも可能である。
また前記素材を複数積層して使用すること、傾斜構造の複合材料として使用すること、また、前記材料に焼入れ、焼きなまし、容態化処理などの熱処理、ショットピーニングやブラスト処理やエッチィング処理などを行うことも可能である。
【0042】
さらに本発明の一実施形態において、応力の調整にブラスト処理やショットピーニング処理、切削加工、研磨加工などを例えばメタルマスク基材の一方の面のみに行うことで
メタルマスク基材の両面間の残留応力を変化させ、基材を反らせることが出来うる。
【0043】
さらに本発明の一実施形態において、例えばメタルマスク基材の一方の面のみ強力な縮応力を有する非晶質炭素膜等のドライ薄膜を形成することが好適である。
例えば非晶質炭素膜の内部残留応力は10〜40GPaまでと通常の金属やめっき材料等に比べ、強力であって、またその膜厚が薄いため、メタルマスクの外形設計精度を損なうことなく、本発明にかかる応力をメタルマスクに加えることが可能となる。
【0044】
さらに加えて、前記ドライ薄膜がTiAlN、AlN、TiCN、TiC、TiN、CrC、CrN、SiC又はSiOなどの硬質膜である場合は、本発明の一実施形態である応力の異なる複数層や、応力の変化する傾斜層、応力を発生させるブラストなどの加工層等の層構成や、本発明にかかる剛性の弱い「残し部」等を、例えば印刷時スキージによる摩擦、孔版の被印刷基板への繰り返しの接触(摩擦)等にて摩滅、変化させにくい。よって前記硬質膜を基材の最外層(孔版のスキージ面側、または印刷基板面側に形成した場合、前記本発明の構造を長く安定に維持することが可能である。このような前記硬質膜は特にスキージ面側に形成されスキージからの摩擦保護には好適であり、さらに前記硬質膜の残留応力も本発明にかかる基板パターン部の突出、または後退に同時に貢献可能となり得る。
また、硬質膜が非晶質炭素膜などの低摩擦抵抗なものである場合は、さらに印刷時のスキージからの摩擦抵抗を緩和し、印刷用孔版の変形を抑制することができる。
なお前記硬質膜はドライ薄膜に限定されず、例えば湿式めっき方の場合、無電解Ni−Pめっき、無電解Ni−Bめっき、電解Ni−Wめっき、電解クロムめっきなども適宜使用し、前記同様の効果を得ることが可能となり得る。
このような硬質膜は特に限定されないがビッカース硬さでHv800以上のものが好適に用いられる、該硬質膜の残留応力の性質(圧縮応力か引っ張り応力、またそれら大きさにより)により、本発明の基板に一部を突出させるために適当な位置に適当な厚さで適宜形成することが可能である。
【0045】
本発明の一実施形態にかかる残留応力(圧縮応力や引っ張り応力)を有し、基材の一部(残し部)などを突出、または後退させる為の層、または処理は、印刷時のスキージからの直接摩擦からの保護のため、印刷用被孔版の印刷基板面側に形成される、または、スキージからの保護層(犠牲層含む)を解してスキージ面に形成されることが望ましい。
【0046】
このように、任意の残留応力の異なる材料から成る複数層や、残留応力が厚み方向に傾斜的に変化する傾斜層を印刷用孔版(メタルマスク)基材とすること、単一基材等の場合でも一方の面に外部物理的応力を加えることで本発明にかかる残し部の突出量や突出方向は制御可能となり得る。
【0047】
さらに、本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、その少なくとも一部に、印刷パターン開口部を跨ぐようなメッシュやリブなどのパターン支持部を伴わない部分を有する。
よって、本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、版枠に張設された状態のメタルマスク基板の開口形状(寸法)と、同一基板が版枠に張設された後のメタルマスクパターン形状(印刷物を最終的に画定するもの)とが略相似形を採らない場合がある。
これは、メタルマスクが版枠の張られる際の引っ張り等による変形を事前に計算して張設前の開口パターン形状が補正して形成されるためである。
【0048】
図4は、コンビネーション後のメタルマスク基材の伸びを模式的に示す図であり、25点の位置精度を確認する為の標点が設けたメタル基材を、紗張り枠に接着した後、不要な紗を切断してメタルマスク基材に張力が係った際の、すなわち、コンビネーション後の、メタルマスク基材の伸びを示すものである。
【0049】
さらに、本発明の一実施形態にかかる印刷用孔版は、メタルマスク基板が例えば50μm未満と十分薄いため、当該基板を版枠に張設するまでの取り扱いプロセスに特徴を有する。
【0050】
以下、さらに具体的に説明する。
【0051】
<メタルマスク箔の製版上の損傷防止>
本発明の一実施形態に於いて、Ni電鋳めっきよりなるメタルマスクを作成する際S字パターンやコの字パターンで10μm厚〜50μm厚の薄いメタルでは、その取り扱いが非常に難しい。薄いメタルでも簡単に版枠へのメタル部分の張設(コンビネーション)を可能にするため下記のようなプロセスにてメタルマスクの製版(張設)を行う。
〈1〉Niめっき箔の母型は通常SUS304 圧延材料を使用する。通常はバフ研磨を行い、表面粗さがRa:0.1μm〜0.3μm程度まで仕上げる。ただし、この粗さではS字パターンやコの字パターン、あるいは薄膜(10μm厚)などでは、母型からはニッケル皮膜をはがす際、Niめっき箔が破損してしまったり、ピンホールが多量に出てしまう。そこで、SUS母型をあらかじめ表面粗さの良い母型を使用するか(ブライトアニーリング材)仕上げ研磨で表面粗さをRa:0.01μm〜0.1μmまで鏡面化して、めっきすることで、ニッケル皮膜を剥がす際に破損やピンホール等を極力排除する。
また、同じ原理で、ガラス上へ銅スパッタやクロムスパッタ等をした材料を使うことで、同じ効果が得られることも分かった。
しかし、10μm厚程度の薄膜になると、母型表面の表面粗さを小さくするだけではまだまだ困難であった。
〈2〉母系から簡単にニッケルめっき膜をはがせるように、母系に日本化学産業製の離れ型剤、ニッカノンタックを用い、母型表面に有機酸皮膜を生成させ、母型からニッケルめっき膜を剥がれやすいようにした。
その結果、めっき皮膜ははがれやすくはなったものの、10μm厚のような薄いニッケル膜については、まだまだ困難であった。
そこで母型にニッケルめっき皮膜が付いているまま(剥がさない)コンビネーションを行うことを考えた。
通常はエポキシ等の接着剤を使うが、接着力の強い接着剤を使うと、接着後に母型を剥がす際に、メッシュを破いてしまう恐れがあるので、一度ゴム系のやわらかいボンドで仮接着を行い、母型を剥がした後、エポキシ等接着力の強い接着剤を用いて、接着強度を保つ方法とした。
【0052】
<メタルマスクパターン位置精度の確保>
本発明のステンシルマスクの用途として、パターンの位置精度が非常に重要となる。位置精度を向上させるために下記の対応が好適である。
〈1〉枠サイズ450mm(鋳物)にテンション30N/cmで張った紗張り枠に、25点の位置精度を確認する為の標点を設けたサイズ300mm×300mm、厚さ10μmの、Ni単体からなるメタルをコンビネーション(接着及び紗の切断)してみたら、前記標点中、設計値に対して最大の伸びが100μm程度の太鼓形状になってしまった(図4参照)。また面内のゆがみが大きく、データで補正できるものではなかった。また、経時でさらに30μm程度伸びてしまった。
〈2〉メタルの材質をNi-Co合金に変更して<1>と同じ実験を行った。結果は最大の伸びが50μm程度の太鼓形状になってしまったが、Ni単体よりは良い傾向となったが、面内のゆがみは大きかった。また、経時の伸びも10μm程度までで収まった。
〈3〉伸びの影響がテトロンの影響が強いため、メタルサイズを300mm×300mmから370mm×370mmに変更してコンビネーションを行ったが、テトロン部が10mmとなるため、今度はテンションが落ちてしまい、印刷には使用が困難なものとなってしまった。
〈4〉そこで、1回テンションのゆるい紗張り枠にコンビネーションを行い、その後紗張り機で新しい枠に紗張りする方法を採用した。
その結果、太鼓形状になるものの、数値的には最大の伸びが20μm以下となった。また面内のゆがみも小さくなった。
〈5〉しかしながら、20μmライン以下の電極を積層する印刷用マスクとしては、位置精度をさらに上昇させる必要がある。その方法として下記の内容を実験した。
a)あらかじめ鼓形状のパターンデータをCADで作成する。上記方法でステンシルマスクを作成して、位置精度を合わせる。
b)パターン外周部のメタルの厚みを厚くし(例:パターン部15μm厚、外周部40μm厚)、上記方法でコンビネーションを行う。
【0053】
<メタル部>
本発明の一実施形態における前記メタル部を構成する板状部分としては、特に限定されないが、Fe、Cu、Ni、Al、Sn、Ag、Au、W、Tiなどの金属や、ステンレス、Ni−Co、Ni−W、Ni−Cr、アルミニウム合金、銅合金、鉄合金などの各種合金、アモルファス金属などの金属、カーボン、ガラス、セラミクス等の無機材料、FRP、CFRP、その他各種エンジニアリングプラスチックなどの無機と有機の複合材料を用いることができる。
さらに「メタル部」を構成する板状部分はPET、PEN、PMMA、OPP、ポリイミド、ポリイミドアミド、塩化ビニル、ポリカーボネートなどの樹脂やゴム(各種有機高分子材料)、セルロース(木材や紙等)、各種感光性樹脂でも良く、さらには前記各種無機材料に前記各種有機高分子材料が設けられた複合材料、または逆に前記各種有機高分子材料に前記各種無機材料が設けられたものとしても良い。
【0054】
本発明の一実施形態における前記「メタル部」における印刷パターンの開口には、エッチィングやドリル、パンチなどの機械加工等、さらにはレーザ光や集束イオンビームなどの高エネルギーのイオンや電子線を照射し穴明けする方法等、高圧液体(水)などを高圧で照射穴あけ切断する方法、メタル部基材の印刷パターン開口部に対応するマスキングを施し化学的に薬液等でエッチィングを行う方法、または前記手法の複合手法など特に限定されず様々な方法が用いられる。
【0055】
一実施形態のメタル部の表面状態としては、例えば電鋳法によりメタル部を形成する際に、レベリング材などを電鋳浴中の添加材の種類や量を予め調整して、鏡面状に仕上げたもの(形成したもの)、逆に梨地状に仕上げたもの(形成したもの)、メタル部形成後に電解研磨などによる鏡面仕上げのもの、ブラストやホーニング加工、梨地仕上げのもの、ヘアラインを伴うもの、湿式や乾式のメッキ被膜を伴うものなど使用することができるが、これらの表面状態に限定されるものではない。前記は電鋳マスクの事例であるが、本発明の一実施形態にかかる様々な素材からなるメタル部の表面は、粗いものから平滑なものまで適宜選択可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を用いて、本発明の印刷用孔版及びその製造方法について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0057】
スルファミン酸ニッケル550g/L、スルファミン酸コバルト35g/L、ホウ酸35g/Lに、圧縮応力剤としてサッカリンソーダやNTSを添加し、めっき成長面をプリント面側として、メタルマスクを作製する。めっき応力を引っ張り応力とするため、めっき成長面側すなわちプリント面側に必ずメタルが倒れる方向になり、印刷時にメタルを損傷することなく、スキージングができた。
【0058】
スルファミン酸ニッケル550g/L、スルファミン酸コバルト35g/L、ホウ酸35g/Lに、圧縮応力剤としてサッカリンソーダおよびNTS等を1.5g/L以上、引っ張り応力剤(レベリング剤)少々を添加し、めっき成長面をスキージ面側としてメタルマスクを作製する。めっき応力が圧縮応力とするため、母型面をプリント面側とすることにより、必ずプリント面側にメタルが倒れる方向になり、印刷時にメタルを損傷することなく、スキージングすることができた。
【0059】
スルファイミン酸ニッケル550g/L、亜燐酸30g/L、ホウ酸35g/Lを基本組成とする。亜燐酸は大きく引っ張り応力に傾くため、圧縮応力剤としてサッカリンソーダ及びNTS等を用いて、応力を調整する。前記[0032]、[0033]と同様に、めっき成長面をスキージ面、プリント面と用途に合わせて応力を調整する。
【0060】
本発明のステンシルマスクの用途として、インダクター電極印刷用を一番の狙いとしているため、パターンの位置精度が非常の重要となる。位置精度を向上させるために下記の実験を行った。
〈1〉枠サイズ450mm(鋳物)にテンション30N/cmで張った紗張り枠に、25点の位置精度を確認する為の標点を設けた300mm×300mm、厚さ10μmのNi単体からなるメタルをコンビネーションしてみたら、前記標点中、設計値に対して最大の伸びが100μm程度の太鼓形状になってしまった(図4参照)。また面内のゆがみが大きく、データで補正できるものではなかった。また、経時でさらに30μm程度伸びてしまった。
〈2〉メタルの材質をNi-Co合金に変更して<1>と同じ実験を行った。結果は最大の伸びが50μm程度の太鼓形状になってしまったが、Ni単体よりは良い傾向となった。しかし、面内のゆがみは大きかった。また、経時の伸びも10μm程度までで収まった。
〈3〉伸びの影響がテトロンの影響が強いため、メタルサイズを300mm×300mmから370mm×370mmに変更してコンビネーションを行ったが、テトロン部が10mmとなるため、今度はテンションが落ちてしまい、印刷には使用が困難なものとなってしまった。
〈4〉そこで、1回テンションのゆるい紗張り枠にコンビネーションを行い、その後紗張り機で新しい枠に紗張りする方法を採用した。
その結果、太鼓形状になるものの、数値的には最大の伸びが20μm以下となった。また面内のゆがみも小さくなった。
〈5〉しかしながら、20μmライン以下の電極を積層する印刷用マスクとしては、位置精度をさらに上昇させる必要がある。その方法として下記の内容を実験した。
a)あらかじめ鼓形状のパターンデータをCADで作成する。上記方法でステンシルマスクを作成して、位置精度を合わせる。
b)パターン外周部のメタルの厚みを厚くし(例:パターン部15μm厚、外周部40μm厚)、上記方法でコンビネーションを行う。
共に、位置精度±10μmの精度に出来上がった。
【0061】
S字パターンやコの字パターンで10μm厚〜50μm厚の薄いメタルでは、その取り扱いが非常に難しい。薄いメタルでも簡単にコンビネーション可能にするため、下記の実験を行った。
〈1〉母型は通常SUS304 圧延材料を使用する。通常はバフ研磨を行い、表面粗さがRa:0.1μm〜0.3μm程度まで仕上げる。ただし、この粗さではS字パターンやコの字パターン、あるいは薄膜(10μm厚)などでは、母型からニッケル皮膜をはがす際、メタルが破損してしまったり、ピンホールが多量に出てしまう。そこで、SUS母型をあらかじめ表面粗さの良い母型を使用するか(ブライトアニーリング材)仕上げ研磨で表面粗さをRa:0.01μm〜0.1μmまで鏡面化して、めっきすることで、ニッケル皮膜を剥がす際に破損やピンホール等は無くなった。また、同じ原理で、ガラス上へ銅スパッタやクロムスパッタ等をした材料を使うことで、同じ効果が得られることも分かった。
しかし、10μm程度の薄膜になると、母型表面の表面粗さを小さくするだけではまだまだ困難であった。
〈2〉母系から簡単にニッケルめっき膜をはがせるように、母系に日本化学産業製の離れ型剤、ニッカノンタックを用い、母型表面に有機酸皮膜を生成させ、母型からニッケルめっき膜を剥がれやすいようにした。
その結果、めっき皮膜ははがれやすくはなったものの、10μm厚のような薄いニッケル膜については、まだまだ困難であった。
〈3〉そこで母型にニッケルめっき皮膜が付いているまま(剥がさない)コンビネーションを行うことを考えた。
通常はエポキシ等の接着剤を使うが、接着力の強い接着剤を使うと、接着後に母型を剥がす際に、メッシュを破いてしまう恐れがあるので、一度ゴム系のやわらかいボンドで仮接着を行い、母型を剥がした後、エポキシ等接着力の強い接着剤を用いて、接着強度を保つ方法とした。
図1
図2
図3
図4