【文献】
株式会社日立パワーソリューションズ,雨雲と地図を重ねて3次元表示するソフトウェア「DioVISTA/Storm」を発売[online],日本,インターネット,2014年 8月 5日,<URL:www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2014/0805a.pdf>
【文献】
磯田 総子 他,フェーズドアレイ気象レーダによる豪雨の3次元観測,可視化情報,2014年10月,Vol.34,No.135,4〜9頁
【文献】
DIXON MIchael et al.,Thunderstorm Identification,Tracking,Analysis,and Nowcasting,JOURNAL OF ATMOSPHERIC AND OCEANIC TECHNOLOGY,1993年12月,VOL.10,No.6,pp.785-797
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に関するシステムの構成を説明するためのブロック図。
【
図2】実施形態に関する気象データ処理装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図3】実施形態に関するコア検出処理を説明するためのフローチャート。
【
図4】実施形態に関するコア検出処理によるコアのイメージの一例を示す図。
【
図5】実施形態に関するグループ区別処理を説明するためのフローチャート。
【
図6】実施形態に関するグループ区別処理によるコアの表示イメージの一例を示す図。
【
図7】実施形態に関するグループ区別処理によるコアの表示イメージの一例を示す図。
【
図8】実施形態に関する球のリスト生成処理を説明するためのフローチャート。
【
図9】実施形態に関する交差する球を探す処理を説明するためのフローチャート。
【
図10】実施形態に関するグループのコア検出処理を説明するためのフローチャート。
【
図11】実施形態に関するグループのコア検出処理結果の一例を説明するための図。
【
図12】実施形態に関するグループのコア検出処理結果の一例を説明するための図。
【
図13】実施形態に関するグループのコア検出処理結果の一例を説明するための図。
【
図14】実施形態に関するグループのコア検出処理結果の一例を説明するための図。
【
図15】実施形態に関する積乱雲及びコアの表示形態の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
[システムの構成]
図1は、本実施形態に関するシステムの構成を示す図である。
図1に示すように、本システム1は、気象データ処理装置、フェーズド・アレイ・気象レーダ(以下、PAWレーダと表示する)12、ネットワーク14及びクライアントコンピュータ15を含む構成である。
【0010】
PAW(Phased Array Weather)レーダ12は、積乱雲などの気象現象を3次元で観測可能な気象レーダである。気象データ処理装置は、サーバ10、気象データ・ストレージ11及びコア情報ストレージ13を有する。サーバ10は、コンピュータ及びソフトウェアにより構成されて、後述するように、積乱雲のコア検出処理、積乱雲の3次元表示処理及びコアの表示処理を実行する。
【0011】
気象データ・ストレージ11は、PAWレーダ12により観測された観測対象(本実施形態では積乱雲)の気象データ(3次元データ)を格納する。気象データ・ストレージ11は、3次元データである気象データと共に、観測対象の位置を含む地図情報を格納する。コア情報ストレージ13は、サーバ10により実行される積乱雲のコア検出処理により算出されるコア検出データを含むコア情報を格納する。
【0012】
サーバ10は、インターネットなどのネットワーク14を介して、クライアントコンピュータ15と接続している。クライアントコンピュータ15は、ネットワーク14を介して積乱雲などの気象情報の提供をサーバ10に要求できる。サーバ10は、クライアントコンピュータ15からの要求に応じて、積乱雲の3次元イメージ及びコアのイメージを、クライアントコンピュータ15のスクリーン16に表示するための表示情報を送信する。クライアントコンピュータ15からの要求には、気象現象として発生した積乱雲の場所及び時間に関する情報が含まれる。
[システムの動作]
図2は、本実施形態のシステムの動作を説明するフローチャートである。
図2に示すように、システム1は、PAWレーダ12から、発生した積乱雲の観測結果を示す気象データ(3次元データ)を収集する(ステップS1)。PAWレーダ12から収集された気象データは、気象データ・ストレージ11に格納される(ステップS2)。
【0013】
サーバ10は、気象データ・ストレージ11から積乱雲の気象データである3次元データを取得し、当該3次元データを使用して、当該積乱雲のコアを検出するコア検出処理を実行する(ステップS3)。サーバ10は、コア検出処理により算出したコア検出データを含むコア情報をコア情報ストレージ13に格納する(ステップS4)。
【0014】
サーバ10は、ネットワーク14を介して、クライアントコンピュータ15から気象情報(ここでは積乱雲の状況)の提供を要求されると(ステップS5のYES)、積乱雲とコアのイメージデータを生成する(ステップS6)。即ち、サーバ10は、気象データ・ストレージ11から積乱雲の3次元データ及びコア情報ストレージ13からコア検出データを取得し、積乱雲の3次元イメージ及びコアのイメージを表示するための表示情報を生成する。サーバ10は、ネットワーク14を介して、生成した表示情報をクライアントコンピュータ15に送信する(ステップS7)。クライアントコンピュータ15は、表示情報に基づいてアプリケーションを実行することにより、スクリーン16上に積乱雲の3次元イメージ及びコアのイメージ(3次元イメージまたは2次元イメージ)を表示できる(
図15を参照)。
[コア検出処理]
図3は、本実施形態のコア検出処理の概略的手順を説明するフローチャートである。ここで、本実施形態のコア検出処理は、周知の主成分分析処理を用いて、コアを例えば楕円体イメージとして記述するコア検出データを算出する。以下、主成分分析処理を、PCA(Principal Component Analysis)処理と表記する。本実施形態では、PCA処理により、多数の3次元頂点における[x,y,z]変数間の相関に基づいて主成分(軸)を算出する。
【0015】
サーバ10は、気象データ・ストレージ11から、PAWレーダ12により観測された積乱雲の3次元データを取得する。具体的には、サーバ10は、積乱雲の雨滴の密度を示す密度情報付の3次元頂点の配列を示すデータ([[x,y,z, intensity],…])を入力する(ステップS10)。ここで、[x,y,z]は3次元頂点を示すパラメータであり、[intensity]は密度を示すパラメータである。当該密度の最も高い部分が、積乱雲のコアを示す。
【0016】
サーバ10は、入力されたデータから、コア部分の最低密度及び頂点の最低高度の各基準パラメータに基づいて、3次元頂点の配列からコア頂点を選択する選択処理を実行する(ステップS11)。コア部分の最低密度とは、コアとして検出するための基準となる密度である。また、頂点の最低高度とは、PAWレーダ12により観測される積乱雲の観測結果から山等の影響を排除するための基準となる高度である。
【0017】
次に、サーバ10は、ステップS11の選択処理により選択されたコア頂点を、球の半径をパラメータとしてグループ化するグループ区別処理を実行する(ステップS12)。サーバ10は、各グループの中で、グループの最小サイズ(コア頂点数)をパラメータとして、基準より小さすぎるグループを廃棄する(ステップS13)。ここで、コアの中央が頂点の密度(コア頂点数)が最も高いという前提で、球の半径は当該頂点の密度の高い順に長くなる。
【0018】
サーバ10は、PCA処理を実行して、グループ区別処理により作成した各グループ(例えば2グループ)の中央点と軸を検出(算出)する(ステップS14)。ここで、軸とは、PCAにより算出される主成分であり、中央点を通過する傾きの軸線である。即ち、サーバ10は、例えば楕円体を記述するオブジェクト(コアのイメージ)の配列を示すコア検出データ([{center:[x,y,z], axis:[[x1,y1,z1], [x2,y2,z2], [x3,y3,z3],]},…])を出力する(ステップS15)。
図4は、当該オブジェクト(コアのイメージ)の一例を示す図である。ここで、「center:[x,y,z]」は、
図4に示す中央点40に対応する。サーバ10は、PCA処理により算出したコア検出データを含むコア情報をコア情報ストレージ13に格納する。コア情報には、気象データ・ストレージ11に格納された積乱雲の3次元データ及び地図情報にリンクする情報を含む。
【0019】
以下、
図5のフローチャートを参照して、グループ区別処理を説明する。
【0020】
図5に示すように、サーバ10は、コアの中央が頂点の密度(コア頂点数)が最も高いという前提で、密度の低い順にコア頂点を含む球のリストを生成する(ステップS20)。サーバ10は、生成したリストから互いに交差する球を探す(ステップS21)。さらに、サーバ10は、互いに交差する球を含む頂点のグループ(即ち、コア)を生成する(ステップS22)。
図6(A)〜(D)は、ステップS20からS22の一連の処理に対応するイメージの一例を示す図である。
図6(C)は、互いに交差する球のイメージの一例を示す図である。
図6(D)は、交差する球を含むグループG1及びグループG2の生成例を示す図である。
【0021】
ここで、球の半径が大きいほど、グループ区別処理を高速に行うことが可能となる。但し、
図7(A)に示すように、球の半径が大きすぎると、分離している2つのコアが1つのコアとして認識される可能性がある。そこで、サーバ10は、コアの中央で頂点の密度が最も高いという前提で、「半径=密度×α」の計算式により球の半径を算出する。ここで、「α」はグループ区別処理のパラメータである。従って、
図7(B)に示すように、サーバ10は、交差する球を含むグループを、分離している2つのグループから区別して認識できる。
【0022】
さらに、
図8及び
図9のフローチャートを参照して、グループ区別処理に含まれる球のリスト生成処理(ステップS20)及び交差する球を探す処理(ステップS21)をそれぞれ、具体的に説明する。
【0023】
図8に示すように、サーバ10は、先ず、密度の低い順に頂点をソートする(ステップS30)。次に、密度が最も高い頂点を抜いて(ステップS32)、その頂点が中央となる球をリストに設定する(ステップS33)。サーバ10は、球に含まれている頂点をリストから抜く(ステップS34)。所定のコアの頂点数が0になると(ステップS31のNO)、サーバ10は、生成した球のリストを出力する(ステップS35)。
【0024】
図9に示すように、サーバ10は、初期段階で生成した球のリスト及び空のグループのリストを準備する(ステップS40)。サーバ10は、球のリストからある球(A)を抜き(ステップS42)、当該球(A)と交差する球を含む全てのグループを探す(ステップS43)。初期段階では、サーバ10は、グループは無いため(ステップS44のNO)、球(A)を含むグループを新たに作る(ステップS46)。
【0025】
一方、サーバ10は、当該球(A)と交差する球を含むグループが存在する場合(ステップS44のYES)、このグループを合体して当該球(A)を追加する処理を行う(ステップS45)。所定のコアの頂点数が0になると(ステップS41のNO)、サーバ10は、互いに交差する球を含む頂点のグループのリストを出力する(ステップS47)。
【0026】
次に、
図10のフローチャートを参照して、各グループ(例えば2グループ)のコア検出処理(ステップS14)を具体的に説明する。
【0027】
まず、サーバ10は、各グループのPCA処理を実行して、
図11に示すように、各グループの中央点50(center:[x,y,z])を算出し(ステップS50)、この中央点50を通る第1軸(第1主成分)を算出する(ステップS51)。次に、サーバ10は、
図12に示すように、算出した第1軸の法線平面にグループの頂点(
図12の丸)を射影する(ステップS52)。
【0028】
さらに、サーバ10は、射影処理の結果に対してPCA処理を実行して、算出した第1軸と直交する第2軸(第2主成分)を算出する(ステップS53)。サーバ10は、
図13に示すように、算出した第1軸(軸1)と第2軸(軸2)からクロス積処理により第3軸(軸3)を算出する(ステップS54)。次に、サーバ10は、第1軸から第3軸の3軸からなる座標系へ頂点を変換する(ステップS55)。サーバ10は、変換座標系の最小・最大値に基づいてコアの大きさを求める(ステップS56)。即ち、
図14に示すように、点線で示す枠に合致する楕円体の形状からなるコアのイメージ(
図4を参照)を求めることができる。
【0029】
以上のようにして本実施形態によれば、気象データ処理装置のサーバ10は、気象データ・ストレージ11から、PAWレーダ12により観測された積乱雲の3次元データを取得し、当該3次元データを使用して積乱雲のコアを検出するコア検出処理を実行する。ここで、サーバ10は、周知のPCA処理を用いて、コアの3次元頂点における[x,y,z]変数間の相関に基づいて主成分(軸)を算出するコア検出処理を実行し、コアを例えば楕円体イメージとして記述するコア検出データを算出する。サーバ10は、コア検出処理により算出したコア検出データを含むコア情報をコア情報ストレージ13に格納する。このコア情報には、気象データ・ストレージ11に格納された積乱雲の3次元データ及び地図情報にリンクする情報を含む。従って、本実施形態によれば、周知のPCA処理を利用した相対的に簡易なデータ処理により、積乱雲の複数のコアを確実に検出できる。
【0030】
さらに、サーバ10は、クライアントコンピュータ15からの要求(発生した積乱雲の場所及び時間に関する情報を含む)に応じて、積乱雲の3次元データ及びコア情報ストレージ13からコア検出データを取得し、積乱雲の3次元イメージ及びコアのイメージを表示するための表示情報を生成する。サーバ10は、ネットワーク14を介して、生成した表示情報をクライアントコンピュータ15に送信する。
【0031】
クライアントコンピュータ15は、サーバ10から提供された表示情報に基づいてアプリケーションを実行することにより、スクリーン16上に積乱雲の3次元イメージ及びコアのイメージを表示できる。具体的には、
図15(A)に示すように、スクリーン16上には、地図上に積乱雲の3次元イメージ60を表示し、検出した例えば2つのコアの楕円体イメージ70,71(
図4を参照)を追加する形態で表示する。従って、クライアントコンピュータ15のスクリーン16上には、積乱雲全体の形状を3次元表示60により視覚化できると共に、複数のコアの位置や大きさを同時に把握することが可能となる。
【0032】
また、
図15(B)に示すように、スクリーン16上には、地図上に積乱雲の3次元イメージ60を表示し、検出した例えば2つのコアの楕円体の2次元イメージ72,73の形態で表示してもよい。この表示形態であれば、積乱雲全体の3次元表示による視覚化を妨げることなく、位置や大きさが認識できる程度でコアを効果的に表示できる。さらに、コア検出データを利用して、積乱雲全体の3次元表示と共に、複数のコアの移流表示(アニメーション表示)を同時に行うことも可能である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。