(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記段階(d)において、前記第2の移動平均値が規定された基準時間以上、前記安定基準値未満の状態を維持する場合、前記段階(c)に復帰することを特徴とする請求項1に記載の移動平均フィルタの動作制御方法。
【背景技術】
【0002】
時間の流れに沿って連続的に変化する音、光、温度、圧力、または位置などの情報は、トランスデューサ(transducer)やセンサーを利用してアナログ電気信号(電圧や電流)に変換可能である。このように変換された電気信号の電圧や電流、周波数などを増幅、検波および変換することにより情報を伝達するように構成された電子回路をアナログ回路と言う。
【0003】
このようなアナログ回路は、雑音(noise)を含む。雑音は、不規則に変化する外部信号で、原子のような粒子の不規則な熱振動で発生する。雑音は、主に間違って設計された部品の使用や遠距離伝送のための信号の繰り返し輻射、または、外部電気信号の流入などにより発生され、信号に不規則な変化を増加させて元の信号のレベルが減少する現象などを引き起こす。
【0004】
アナログ信号に不規則な外部雑音が追加されると、最初の信号との区別が難しいため、その処理のための別の回路またはアルゴリズムを使用することにより、上記のような問題を解決することになる。
【0005】
雑音の遮蔽のためには主にノイズフィルタ(Noise Filter)が多く利用され、ノイズフィルタのうち移動平均フィルタの場合、反応速度と遮蔽性能は相互のトレードオフ(trade off)関係を有する。つまり、移動平均フィルタの反応速度が向上すればするほど雑音遮蔽性能は低下し、雑音遮蔽性能を向上させるためには反応速度を減少させるしかないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明では、移動平均フィルタの反応速度および雑音遮蔽性能を効率的に制御することができるようにするための新しいアルゴリズムを提案しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述した問題点を解決するために案出されたもので、入力値の変化に対する追従速度の合理的な制御を通じて、サージ(surge)性雑音に対する対処能力を状況に応じて最適化することができるようにする移動平均フィルタの動作制御方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されなかった本発明の他の目的および利点は、下記の説明によって理解されることができ、本発明の実施例によってより明確に理解されるだろう。また、本発明の目的および利点は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせにより実現され得ることが容易に分かるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明は、(a)安定基準値およびこれに対応するサンプリング区間の設定が行われる段階; (b)測定データの入力が行われる段階; (c)基本サンプリング区間の適用を通じて前記段階(b)の測定データを用いた第1の移動平均値を算出する段階;および(d)前記移動平均値が前記安定基準値以上である場合、前記段階(a)で設定された前記安定基準値に対応するサンプリング区間の適用を通じて前記測定データに対する第2の移動平均値を算出する段階;を含む移動平均フィルタの動作制御方法を提供する。
【0010】
ここで、本発明は、前記段階(a)により設定が行われる安定基準値は互いに異なる2以上の基準値を含むことができ、これに対応するように互いに異なる2以上の前記サンプリング区間が設定され得る。
【0011】
また、前記段階(a)の安定基準値およびサンプリング区間は、現在のノイズ状況を含むフィルタリング環境に応じて自動設定されることが望ましいことがある。
【0012】
一方、本発明は、前記段階(d)において、前記第2の移動平均値が規定された基準時間以上、前記安定基準値未満の状態を維持する場合、前記段階(c)に復帰するように構成され得る。
【発明の効果】
【0013】
前述したような本発明によれば、入力条件の変化に対応するように移動平均フィルタの反応速度と雑音遮蔽性能が効率的に変動され得るという利点がある。
【0014】
これにより、迅速な反応速度および向上した雑音遮蔽性能の両方とも提供することができる移動平均フィルタの提供が可能というなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】移動平均値の意味および算出過程を説明するための概念図である。
【
図2a】従来技術に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図2b】従来技術に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図3a】従来技術に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図3b】従来技術に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る移動平均フィルタの動作制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5a】本発明の実施形態に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図5b】本発明の実施形態に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【
図6a】本発明の実施形態が適用された移動平均フィルタの反応速度を説明するためのグラフである。
【
図6b】本発明の実施形態が適用された移動平均フィルタの反応速度を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前述した目的、特徴および利点は、添付された図面を参照して詳細に後述され、これにより本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施することができるだろう。本発明を説明するにあたり、本発明に関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にする可能性があると判断される場合には、詳細な説明を省略する。
【0017】
以下、添付された図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。図面において同じ参照符号は、同一または類似の構成要素を指すものとして使用される。
【0018】
図1は、移動平均値の意味および算出過程を説明するための概念図である。
【0019】
移動平均値は、一定数(平均数)の入力値に対するリアルタイム平均値を意味し、
図1を参照すると、平均数lが4に設定された状況では移動平均値を算出するために各サンプリング時点ごとに最近の4つの入力値の平均値が計算されることが確認できる。
【0020】
移動平均フィルタは、このような移動平均値を利用して雑音等に対するフィルタリングを行うことになり、つまり、入力値を平均数lだけ累積してその合計の平均値を各サンプリング時点ごとに出力するアルゴリズムを有する。すなわち、入力されるアナログ電気信号をADコンバータなどを利用して変換させたAD変換値(デジタル値)を入力とし、これに対応する出力値を生成することになる。ここで、平均数lを移動平均フィルタ値とし、このようにして、
図1の場合、移動平均フィルタ値は4になる。
【0021】
次の<式1>は、移動平均フィルタが移動平均フィルタ値lを用いて出力値(移動平均値)を算出する移動平均処理式を示している。
【0023】
上記<式1>のような移動平均処理式によると、現在の入力値(式1のAD変換値(n))に直前(l−1)個の入力値をすべて合計した後、これを移動平均フィルタ値(平均数l)で分けることで出力値が算出されることが確認できる。
【0024】
図2a〜
図3bは、従来技術に係る移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフであって、y軸は電圧や重量などのような測定データを示し、x軸は一定の間隔単位に分割された時間を示す。例えば、電圧や重量などのような入力データに対する測定周期が1秒の場合、x軸のそれぞれの目盛りの単位は1秒の時間を意味することができ、これを「サンプリング周期」と表現できる。
【0025】
すなわち、
図2a及び
図2bは、ある時点で入力値(破線で表された信号)が0から100に瞬間的に変化するとき、移動平均フィルタ値が100である場合および50である場合の出力値(実線で表された信号)をそれぞれ示しており、
図3a及び
図3bは、サージ(surge)性ノイズのような外部電気信号が8サンプリング区間で入力されたとき(破線で表された信号)に移動平均フィルタ値が100である場合および50である場合の出力値(実線で表された信号)をそれぞれ示している。
【0026】
まず、
図2a及び
図2bを参照すると、入力値が0から100に瞬間的に変化するとき、これに対する反応速度(追従速度)は移動平均フィルタ値が小さいほど速いことが確認できる。すなわち、移動平均フィルタ値が100である
図2aの場合、ほぼ120のサンプリング時点でフィルタの出力値が入力値と同じ100になるが、移動平均フィルタ値が50である
図2bの場合には、ほぼ70のサンプリング時点でフィルタの出力値が入力値と同じ100になる。つまり、移動平均フィルタの反応速度は、移動平均フィルタ値に反比例することが確認できる。
【0027】
次に、
図3a及び
図3bを参照すると、約8のサンプリング区間でノイズの入力が発生した場合、移動平均フィルタ値が100であれば(
図3a)、約90〜100のサンプリング区間で約8程度の出力値を示すのに対し、移動平均フィルタ値が50であれば(
図3b)、約40〜50のサンプリング区間で約16程度の出力値を示すことが確認できる。
【0028】
すなわち、このような移動平均フィルタを採用したシステムが出力値10(例えば、10vや10dBなど)を基準にしてノイズなどに対する誤差許容可否を決定するとしたら、移動平均フィルタ値が100である場合(
図3a)には、どの区間でも出力値が10を超えていないため問題が発生しないが、移動平均フィルタ値が50である場合(
図3b)には、一部の区間での誤差範囲を超える出力値(16)によりシステム停止などのような問題が発生することがある。つまり、サージなどにより発生するノイズに対する移動平均フィルタの遮蔽性能は移動平均フィルタ値の大きさに比例することが確認できる。
【0029】
したがって、移動平均フィルタ値が小さいほど、移動平均フィルタの反応速度は向上するが、逆にノイズ遮蔽性能は低下するので、適切な移動平均フィルタ値を決定するのが容易ではないという問題がある。これにより、本発明では迅速な反応速度と向上したノイズ遮蔽性能を両方とも提供するための移動平均フィルタの動作制御方法を提案しようとする。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態に係る移動平均フィルタの動作制御方法を説明するためのフローチャートであり、
図5a及び
図5bは、
図4に示す移動平均フィルタの動作過程を説明するためのグラフである。
【0031】
まず、
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る移動平均フィルタの動作制御方法は、安定基準値およびこれに応じた移動平均フィルタ値の設定段階(S410)、測定データ入力段階(S420)、基本移動平均フィルタ値を適用して出力値を算出する段階(S430)、出力値と安定基準値の比較段階(S440)および出力値が安定基準値以上の場合、前記段階S410の移動平均フィルタ値を適用して出力値を算出する段階(S450)などを含むことが確認できる。
【0032】
安定基準値およびこれに応じた移動平均フィルタ値の設定段階(S410)は、移動平均フィルタの出力値が一定基準値以上である場合、基本移動平均フィルタ値がこれに対応して第1の移動平均フィルタ値に調整されるように設定が行われる過程を示す。つまり、前記段階(S410)は、移動平均フィルタが通常の安定した出力値に比べて相対的に変動幅が大きい出力値を示す場合、移動平均フィルタ値を通常の基本設定値に比べて縮小設定することにより、移動平均フィルタの出力値が入力値に対して迅速に反応できるように設定が行われる過程を意味する。したがって、安定基準値とは、移動平均フィルタの反応速度に変化を与えるために、システムの設計基準等に応じたノイズ許容範囲などを考慮して設定される一定基準値であり、特定の数値や限定範囲を意味するものではない。
【0033】
例えば、
図5aには、安定基準値が8に設定された場合が、
図5bには、安定基準値が16に設定された場合がそれぞれ示されている。すなわち、
図5aは、基本移動平均フィルタ値が100、安定基準値が8、これに応じた第1の移動平均フィルタ値が50である場合を示しており、
図5bは、基本移動平均フィルタ値が100、安定基準値が16、これに応じた第1の移動平均フィルタ値が50である場合を示している。ここで、それぞれのグラフのy軸が電圧や重量などのような測定データを示し、x軸が一定の間隔単位に分割された時間を示していることは前者の場合と同じである。
【0034】
続いて、測定データ入力段階(S420)を通じて、別の測定手段などによる測定が行われた重量、電圧などのような測定データの入力が行われると、基本移動平均フィルタ値を適用してそれぞれの移動平均フィルタは出力値を算出(S430)する。
【0035】
また、前記出力値と安定基準値の比較段階(S440)を通じて出力値が安定基準値以上であると判断される場合、第1の移動平均フィルタ値を適用して出力値を算出するように制御(S450)することができる。そして、このような出力値の算出(S430、S450)は、これ以上測定データ入力段階(S420)を通じて入力されるデータが存在しなくなるまで繰り返し行われることができる。
【0036】
図5a及び
図5bを参照すると、測定データ入力段階(S420)を通じてサージ性ノイズの入力が行われると、まず、
図5aの移動平均フィルタは、基本移動平均フィルタ値(100)を用いて出力値を算出し、出力値が安定基準値(8)に至る瞬間(P1)、第1の移動平均フィルタ値(50)を用いて出力値を算出することが確認できる。以後、再び出力値が安定基準値(8)未満になる瞬間(P2)、基本移動平均フィルタ値(100)を用いて出力値を算出することになることは、図面に示された通りである。
【0037】
この時、移動平均フィルタの出力値が安定基準値(8)未満に変動されて示される場合、一定基準のサンプリング区間で連続的に安定基準値未満の出力値を算出する場合に限り、移動平均フィルタ値の調整が行われるようにするなどの構成が追加提供可能である。ここで、前記一定基準のサンプリング区間の設定は、システム管理者などの入力によって行われ得るが、システム環境等に応じて自動設定されるように構成される方がより望ましいだろう。
【0038】
次に、
図5bの移動平均フィルタは、継続的に基本移動平均フィルタ値(100)を用いて出力値を算出することが確認できる。すなわち、
図5bの移動平均フィルタの場合、安定基準値(16)に至る出力値に到達したことがないため、第1の移動平均フィルタ値(50)を用いて出力値を算出する必要がなく、基本移動平均フィルタ値(100)だけで出力値を算出することができる。
【0039】
例えば、
図5aと
図5bの移動平均フィルタに対してそれぞれ出力値(10)(例えば、10vや10dBなど)を基準にしてノイズなどに対する許容可否を決定するようにシステムの設計が行われた場合、
図5aの移動平均フィルタの場合には約15のサンプリング区間程度で許容範囲を超える出力値(16)が示されるが、
図5bの場合には全区間で適切なノイズ遮蔽が行われることが確認できる。
【0040】
すなわち、
図3a及び
図3bと同じ入力信号に対して、
図5a及び
図5bの移動平均フィルタは同じように安定的にノイズの遮蔽を実行するか、ノイズに対する許容範囲超過区間を縮小させることができる。
【0041】
このように、本発明の実施形態に係る移動平均フィルタの動作制御方法では、安定基準値とこれに対応する第1の移動平均フィルタ値の設定レベルに応じてノイズ遮蔽性能が決定され得る。そして、このような安定基準値およびこれに応じた第1の移動平均フィルタ値などは、フィールドテストなどを通じて決定された一定値をシステム管理者が直接入力して設定することも可能であるが、システムの設置環境やこれに応じたノイズ状況等に対応して自動設定されるように構成される方がより望ましいことがある。
【0042】
この場合、ノイズ状況などが変化するとそれに応じて安定基準値及び第1の移動平均フィルタ値が変更されるなどの構成提供も可能であり、さらに、追加的ないくつかの段階の安定基準値とこれに対応する第2、第3の移動平均フィルタ値の設定を通じて、移動平均フィルタの反応速度とノイズ遮蔽機能が最適のバランス状態を維持するように機能することができる。
【0043】
つまり、図面に図示されてはいないが、前記安定基準値と異なる別の安定基準値を設定し、それに対応するように第1の移動平均フィルタ値と異なる第2の移動平均フィルタ値を指定することにより、移動平均フィルタの出力値レベルに応じて様々な移動平均フィルタ値の適用を可能にする構成が適用され得る。
【0044】
図6a及び
図6bは、本発明の実施形態が適用された移動平均フィルタの反応速度を説明するためのグラフであって、
図6aは、
図5aと同様に基本移動平均フィルタ値が100、安定基準値が8、これに応じた第1の移動平均フィルタ値が50である場合を示しており、
図6bは、
図5bに示すように、基本移動平均フィルタ値が100、安定基準値が16、これに応じた第1の移動平均フィルタ値が50である場合を示している。
【0045】
すなわち、
図6aを参照すると、移動平均フィルタの出力値が安定基準値である8に至る瞬間(P1)、移動平均フィルタ値が50に変更され、より迅速な反応速度を示すようになり、
図6bの場合、移動平均フィルタの出力値が安定基準値である16に至る瞬間(P2)、移動平均フィルタ値が50に変更され、より迅速な反応速度を示すことが確認できる。
【0046】
したがって、
図6a及び
図6bを従来の移動平均フィルタの動作に係る
図2a及び
図2bのグラフと比較してみると、本発明の移動平均フィルタの動作制御方法が適用される場合、移動平均フィルタの反応速度が大きく向上することが容易に確認できる。すなわち、本発明の実施形態に係る移動平均フィルタの動作制御方法を適用する場合、移動平均フィルタの反応速度は、移動平均フィルタ値が小さい場合(50)と同様の結果を示し、雑音遮蔽機能は、移動平均フィルタ値が大きい場合(100)と同様の結果を示すことが分かる。
【0047】
つまり、本発明は、速い反応速度および向上した雑音遮蔽性能を両方とも提供することができる移動平均フィルタの提供を可能にするというなどの効果を提供する。
【0048】
前述のような本発明は、本発明が属する技術分野の通常の技術者にとって、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であるため、前述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではない。