(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486902
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】体外回路中の圧力を算出する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20190311BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20190311BHJP
A61M 1/10 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
A61M1/14 110
A61M1/36 105
A61M1/10 141
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-508036(P2016-508036)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-515446(P2016-515446A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014000997
(87)【国際公開番号】WO2014170007
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年4月14日
(31)【優先権主張番号】102013006562.3
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ガゲル
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト グラーザー
(72)【発明者】
【氏名】ハイサム イブラヒン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル コッパーシュミット
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−530569(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0072846(US,A1)
【文献】
特開2003−062065(JP,A)
【文献】
特開平01−125580(JP,A)
【文献】
特開平02−136584(JP,A)
【文献】
特表2009−529391(JP,A)
【文献】
特開平08−270595(JP,A)
【文献】
特表2001−502771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
A61M 1/10
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理装置の体外回路における圧力p、又は圧力pに関するパラメータを求める方法であって、
少なくとも1つの電気モーター(M)によって駆動される少なくとも1つの血液ポンプ(4)が血液回路内に配置され、前記血液ポンプ(4)は蠕動ポンプであり、前記電気モーター(M)のモーター電流IM及び血流量Qb又はこれらに関するパラメータが、前記圧力p、又は前記圧力pに関するパラメータを求めるために測定され、前記圧力p、又は前記圧力pに関するパラメータが前記測定された値から前記血液処理装置により計算され、
前記血液ポンプの上流と下流の圧力差Δpは、IM= a + b * Qb + c * Qb * Δpという数式に従って求められ、a = P0/U0、b = (μ・FN)/U0・(2π・R)/VS、及びc = 1/U0であり、P0は一定の電力消費であり、U0は電源によって出力される電圧であり、μは有効摩擦係数であり、FNは前記蠕動ポンプにおける血液搬送ホースの圧力に対して作用することで生じる通常の力であり、Rは血液ポンプモーターの半径であり、VSは血液ポンプの1回転当たりのストロークボリュームである、方法。
【請求項2】
血流量Qbに関するパラメータは、前記血液ポンプ(4)の速度n及び/又は前記血液ポンプ(4)の角速度ωである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧力pppは、ポンプの下流についてのppp = Δp + partという数式に従って求められ、Δpは、前記血液ポンプの上流と下流の圧力差であり、圧力partは前記圧力ポンプの上流で決められ、圧力pppは前記圧力ポンプの下流で決められる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
血液処理装置の体外回路における圧力p、又は圧力pに関するパラメータを前記血液処理装置により調節又は制御する方法であって、少なくとも1つの電気モーター(M)によって駆動される少なくとも1つの血液ポンプ(4)が血液回路内に配置され、
前記圧力p、又は圧力pに関するパラメータは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法で求められ、
前記血液ポンプ(4)によって運ばれる血流量(Qb)は、調節又は制御のために変更される、方法。
【請求項5】
圧力p、又は圧力pに関するパラメータに対して、制限値を超えないよう、制限が加えられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
圧力p、又は圧力pに関するパラメータを所望の値に、又は所望の範囲の値に調節することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
圧力p、又は圧力pに関するパラメータの最大許容変化が予め規定され、調節は、この最大許容変化に達するか、又はこの最大許容変化を超えたときにだけ行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
関係(IM (t) - a) / Qb (t)) = (IM,0 - a) / Qb,0)が一定に維持されるよう前記血液処理装置により調節が行われ、ここでIM,0及びQb,0は、故障が起こる前の、時間軸上のある点におけるモーター電流IM及び血流量Qbの開始値である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの電気モーター(M)によって駆動される少なくとも1つの血液ポンプ(4)がその中に配置される少なくとも1つの体外血液回路を有する血液処理装置であって、
モーター電流IMを測定する少なくとも1つの手段、及び血流量Qb又は血流量Qbに関するパラメータを測定する少なくとも1つの手段が設けられ、
前記血液処理装置は、測定手段によって提供される測定値に基づいて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成された、少なくとも1つの計算ユニット、制御ユニット、又は調節ユニットを有する、血液処理装置。
【請求項10】
前記血液ポンプ(4)は、蠕動ポンプ(4)であり、及び/又はモーター(M)は、DC電流で動作するDCモーターである、請求項9に記載の血液処理装置。
【請求項11】
動作中に血液が通る少なくとも1つのチャンバーを有する少なくとも1つのダイアライザー(5)が前記体外血液回路内に配置される、請求項9又は10に記載の血液処理装置。
【請求項12】
前記ダイアライザー(5)は、動作中に透析液が通る少なくとも1つのチャンバーを有する、請求項11に記載の血液処理装置。
【請求項13】
体外回路内の血液にダイアライザー(5)の上流及び/又は下流のラインを介して置換液を供給する、少なくとも1つの置換液ポンプ(12)が設けられる、請求項9〜12のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項14】
静脈圧センサ(6b)を除いて前記血液ポンプ(4)の下流には圧力センサが設けられておらず、前記体外血液回路内に配置された前記血液ポンプ(4)の下流、及びダイアライザー(5)の上流には圧力センサが設けられていない、請求項9〜13のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液処理装置の体外血液回路中の圧力を算出する、又は血液処理装置の体外血液回路中の圧力に関連するパラメータを算出する方法に関し、少なくとも1つの電気モーターによって駆動される少なくとも1つの血液ポンプが血液回路中に配置されるダイアライザーに特に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術で知られる透析装置は、体外回路中に、動脈入口、静脈入口、及び血液ポンプを典型的には有し、その血液ポンプによって血液は、動脈入口から静脈入口へ体外血液回路を通って、それらの間に配置されたダイアライザーを通って運ばれる。
【0003】
このような知られた体外血液回路は、例えば、
図5に示される。
【0004】
血液は、患者から動脈入口を通って、動脈ホースシャットオフクランプ1を通り、ヘパリンポンプ2のためのコネクタを介して動脈圧測定ユニット3へ移動する。動脈圧p
artは、 この圧力測定ユニット3において求められる。血液は、典型的には電気モーターによって駆動される蠕動ポンプである血液ポンプ4によって運ばれる。
【0005】
ポンプ4を通過した後、血液はダイアライザー5に入り込むが、プリフィルタ又はポストポンプ圧力センサ11がポンプ4及びダイアライザー5の間に配置されて圧力値p
ppを求める。
【0006】
置換液ポンプ(substituate pump)12によって浄化された血液中に置換液(substitution fluid)が導入される供給ラインは、ダイアライザー5の下流に配置される。
【0007】
ダイアライザー5は、血液チャンバー及び透析液のためのチャンバーを有し、それらの中では、図の矢印によって表されるように、それらの中を液体は対向流のかたちで流される。血液チャンバーを通して血液5が輸送されると、中分子量物質、水等のような血液成分は、ダイアライザー5の半透膜を介して透析液の側に移動し、そこから離れるように輸送される。
【0008】
ハイフラックス(high-flux)ダイアライザーを使うときの対流透析プロシージャの有効性(血液透析濾過(血液濾過)前/後/混合)(HDF=血液透析濾過、HF=血液濾過、前=前希釈法、後=後希釈法、混合=前希釈法及び後希釈法)は、治療中のβ2mのような中分子量物質の範囲において、達成可能な交換率Q
subによって実質的に決定される。値Q
subは、置換液ポンプ12によって運ばれる置換液流量である。
図5による実施形態においては、置換液は、HDF後希釈法のプロセスが存在するようダイアライザー5の下流で血液に加えられる。
【0009】
ダイアライザー5内で血漿水分流量Q
pの一部が全血流量Q
bから除去され、このことは、血液がある種の濃厚化を経るという意味をもつ。示されている実施形態では、例えばこれは、ダイアライザー出口のヘマトクリット値H
ktが、ダイアライザー入口のそれに比べて10%から20%だけ増加することを意味する。
【0010】
図5に示されるように、血液を元のヘマトクリット値に戻るよう希釈するために、除去された水分量は、置換液流量Q
subだけダイアライザー5の下流でポンプ12によって連続的に置き換わる。もし、例えば、伝導度アラームのために、又はときどき行われる液圧の漏れテストのために、置換液の流れ、つまり置換液ポンプ12が止められなければならないなら、このことは、ダイアライザー5内で濃くなったより高い粘度の血液が静脈ホース系を介して患者に戻されることを意味する。
【0011】
参照番号13は、透析液フローQ
dのための液圧装置又はバランス回路を示す。
【0012】
既に述べられたように、血液は、静脈針を介して患者へと戻るように移動する。静脈ホースシャットオフクランプ10は、この静脈針の上流に配置され、光学検出器8及びエアバブル検出器9はその上流に配置される。さらにフィリングレベル検出器7をもつ静脈バブルトラップがこれら検出器と置換液の供給ラインとの間に設けられている。疎水性フィルタ6aは、検出器7に接続され、さらに静脈圧力p
venを求めるための静脈圧力センサ6bにも接続される。
【0013】
より高い粘度の血液が患者に戻ってくるなら、静脈針内の血液のより高い粘度は、200mmHgに達し得る、また、ある状況下ではさらなる圧力増加に特につながり得る。これは、血液の不必要な剪断応力負荷につながり得る。血液のより高い粘度によって誘引されるこの圧力増加は、静脈圧力センサ6bにおいて直接に測定され得る。
【0014】
もし前述の圧力が増加し、それに関連付けられた血液に対する負荷が低減されなければならないなら、より高い粘度の血液が患者に届かないようにするために、置換液ポンプ12の静止時間の間に血液ポンプ4も停止する可能性があるだろう。この場合、血液は、ダイアライザー5内に留まる。もし両方のポンプ4、12が再び同時に動き始めるなら、著名な血液濃縮の塊(hemoconcentration bolus)、すなわち濃縮された血液の塊は作られることはない。しかし血液ポンプの停止は、使用者の不安感につながる。置換液ポンプ及び血液ポンプが長い間、停止していると、体外回路中の血液が凝固するという可能性があり、これは許容されない血液の損失を意味することになる。
【0015】
血液濃縮の塊を避ける代替の可能性は、血流量Q
bを減少させ、静脈圧力p
venに依存して血液ポンプ速度を調整することによって、圧力増加が補償又は減衰されるようにすることである。そのような方法は、WO 2009/144522 A1から知られている。
【0016】
限外濾過に起因する、ダイアライザー中の血液の凝固、及びいわゆる高度の血液濃縮は、
図5で示されるフィルタ前圧力又はポンプ後圧力p
ppを求めるための圧力センサ11によって認識され得る。このセンサによって、血液濃縮の塊の存在を検出することが同様に可能である。血液ホースのよじれ、及びそれに関連する圧力増加は、さらにこのセンサによって検出され得る。
【0017】
このセンサの不利な点は、一つには、それによって生じる追加のコストであり、しばしば用いられる空気で満たされた圧力リードオフライン(air-filled pressure lead-off lines)である。よって血液と空気との境界は、凝固が起こり得る場所、又は凝固が開始し得る場所に存在する。血液漏れの場合に装置の内部に血液が入り込むリスクもさらにあり、これは、電気的な安全性についての、及び装置を介しての感染性物質によるクロスコンタミネーションについての対応するリスクに曝されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって血液ホースのねじれ、ダイアライザー内の凝固、又は血液濃縮の増加を、そのような追加の侵襲的な圧力センサなしで信頼性高く認識することが追求されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
よって本発明の根底をなす目的は、圧力センサによって測定される圧力の代替が提供されるよう、最初に命名された種類の方法をさらに発展させることである。
【0020】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって本発明に従って達成される。したがって、圧力p、又は圧力pに関するパラメータを求めるために、前述のモーターのモーター電流I
Mと、それに関連する少なくとも1つのパラメータである血流量Q
bとが測定され、圧力p、又は圧力差のような、圧力pに関するパラメータが測定された値から計算される。
【0021】
よって本発明の根底にある考えは、モーター電流I
M又はそれに関連するパラメータと、血流量Q
b又はそれに関連するパラメータとから、圧力pについての結論、好ましくは、血液ポンプの下流の圧力pについての結論を導くこと、又は、この圧力又はポンプの両端の圧力差のようなそれに関連するパラメータを計算することである。
【0022】
よって、圧力又は圧力差を、例えば、前述のパラメータ値の測定から求めることが可能である。従来技術による
図5のセンサ11からわかるような侵襲的な圧力センサの使用はしないで済ませられ得る。
【0023】
例えば、圧力差Δpは、血液ポンプの上流及び下流で、及びポンプの入口及び出口で、上記方法によって求められることが想定できる。圧力p
artは、血液ポンプの上流で求められ、及び/又は圧力p
ppは、血液ポンプの下流で求められる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態においては、血流量Q
bに関連するパラメータは、血液ポンプの速度nであり、及び/又は血液ポンプの角速度ωである。電流に関連するパラメータは、例えば、モーター電源によって供給される電力であり得る。
【0025】
血液ポンプの上流及び下流の圧力差は、式I
M= a + b・Q
b + c・Q
b・Δpに従って求められ得る。
【0026】
この関係は、以下の考察から得られる。
【0027】
蠕動ポンプ4及びその電源Sの、参照符号Mが付された電気モーターが
図1に示される。蠕動ポンプは、
図5による体外血液回路の位置において例えば使用され、よって入口4’から出口4”へ血液を運ぶ。
【0028】
電源Sの電線P
elは、駆動中、3つの部分、すなわちP
0、P
R、及びP
hycに分かれる。この点で、P
elは、電源によって出力される電力、すなわちI
M・U
0であり、ここでU
0は、24Vのような、電源によって出力される電圧である。
【0029】
値P
0は、例えばBLDCモーター中の制御電子回路、熱損失、鉄損等から生じる一定の電力消費である。
【0030】
値P
R = μ・F
N・v
pは、ポンプの速度v
pに比例する電力損失を表す。これらは、例えば、機械的に動く部品であるベアリングにおける、伝達における、及びローラーにおける摩擦損失や、線材での銅によって引き起こされる損失である。
【0031】
ポンプにおける通常の力F
Nは、閉塞を達成するための、ホースの圧縮によって、又はポンプホースの回復力によって作られる。これは張力が加えられたバネによって発生され得る。
【0032】
力P
hcyは、流れる媒体に、すなわち血液にポンプが出力する機械的力である。これはP
hyc = Q
b・Δp = Q
b・(p
pp - p
art)によって求められる。
【0033】
全ての上述の圧力は、静的相対圧力である。
【0034】
モーター電流は好ましくはアンペアの単位で駆動され、電源電圧U
0の単位はボルトであり、例えば、U
0 = 24 Vであり、μは単位のない有効摩擦係数有効であり、F
Nの単位はニュートンであり、v
pの単位はm/sであり、Q
bの単位はm
3/sであり、圧力の単位はPaである。
【0035】
もしP
el、P
R、及びP
hycについての関係が、関係
P
el= P
0 + P
R + P
hyc
に挿入されると
I
M ・U
0 = P
0 + μ・F
N・v
p + Q
b・Δp
という関係が得られる。
【0036】
もしこの関係がモーター電流I
Mについて解かれると、
I
M= P
0 / U
0 + μ・F
N・v
p/U
0+ 1/U
0・Q
b・Δp
が得られる。
【0037】
速度v
pは、
v
p= 2π・R・n
p = R ・w
p
のように速度n
p又は角速度w
pによって置換され得る。
【0038】
もし速度v
pがさらなる値によって置換されるなら、具体的には血流量Q
b (Q
b = V
S ・v
p/(2π・R))によって置換されると最終的に
I
M= P
0/U
0 + μ・(F
N/U
0)・(2π・R)/V
S・Q
b + 1/U
0・Q
b・Δp
となる。
【0039】
この点で、V
Sは、血液ポンプの1回転当たりのストロークボリューム(m
3)を意味し、典型的には10 mLであり、Rは、血液ポンプモーターの半径(n)を意味し、nは、血液ポンプの速度(I/s)であり、wは、角速度(rad/s)である。
【0040】
a = P
0/U
0、b = (μ・F
N)/U
0・(2π・R)/V
S、及びc = 1/U
0と置換すれば、以下の方程式
I
M= a + b・Q
b + c・Q
b・Δp (方程式1)
が得られる。
【0041】
既知のパラメータa、b、及びcに基づいて、この関係は、圧力差Δpについて解くことができる。その結果、
Δp = I
M/(c・Q
b) - a/(c・Q
b) - b/c = 1/c・(I
M/Q
b- a/Q
b - b)
となる。
【0042】
この関係から、モーター電流及び血流量を測定すれば、パラメータa、b、及びcの情報から、ポンプの前後の圧力差、すなわち値Δpを計算できる。
【0043】
血液ポンプの直後の圧力、すなわち値p
ppは、関係Δp = p
pp - p
artから計算され得る。動脈圧力p
artは測定され、Δpは上述の方程式から求められる。よって
p
pp= Δp + p
art
となる。
【0044】
フィッティングされた関数の正確さを高めるため、モーター電流、血流量、及び圧力差の間の関係を反映する上述の方程式1は、Q
b及びΔpのより高次の累乗、さらには非有理数の累乗によって以下のように展開され得る。
I
M= ΣΣ c
p,q・Q
bq・Δp
p
ここで和は、p = 0〜m及びq = 0〜nであり、p、q∈Qである。
【0045】
さらに本発明は、血液処理装置、特にダイアライザーの体外血液回路内の圧力又は圧力に関連するパラメータを調節又は計算する方法に関し、ここで、少なくとも1つの電気モーターによって駆動される少なくとも1つの血液ポンプが血液回路内に配置される。本発明のこの実施形態によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法に従って、圧力又は圧力に関連するパラメータが求められ、ポンプによって運ばれる血流量は、調節又は制御のために変更される。
【0046】
よって、ポンプの両端の圧力差のような、上述の求められた、又は計算された圧力値又はそれに基づくパラメータを使うことによって、調節値が圧力差のような圧力又はそれに関連するパラメータである調節プロセスをセットアップすることが想定される。制御変数は、血液ポンプ速度によって、すなわち血流量Q
b又はそれに関連するパラメータによって好ましくは決定される。
【0047】
本方法は、圧力、又は圧力に関するパラメータに対して、制限値を超えないよう、制限が加えられることを含むことが想定される。圧力調節も想定され、好ましい。
【0048】
最大許容圧力変化の制限値が予め規定され、この圧力変化は、直接は測定できず、むしろ本発明によってモーター電流の監視を介して測定されることが想定される。もしこの制限値に達成し、又は制限値を超えるなら、圧力又はそれに関連するパラメータを一定に維持するために、実際の調節が開始され得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態においては、関係(I
M (t) - a) / Q
b (t)) = (I
M,0 - a) / Q
b,0)が一定に維持されるよう調節が行われる。I
M,0及びQ
b,0は、故障が起こる前の、特に請求項7に記載の制限値を超える前の、時間軸上のある点におけるモーター電流及び血流量の開始値である。
【0050】
さらに本発明は、少なくとも1つの電気モーターによって駆動される少なくとも1つの血液ポンプがその中に配置される少なくとも1つの体外血液回路を有する血液処理装置に関する。
【0051】
モーター電流I
Mを測定する少なくとも1つの手段、及び血流量Q
b又は血流量Q
bに関するパラメータを測定する少なくとも1つの手段が設けられる。血液処理装置は、測定手段によって提供される測定値に基づいて、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成された、少なくとも1つの計算ユニット、制御ユニット、又は調節ユニットを備える。
【0052】
血液ポンプは、好ましくは蠕動ポンプである。そのモーターは、好ましくは電気モーターによって構成され、特に好ましくはDC電流で動作するDCモーターであり、オプションとしてはブラシレスDCモーターによって構成される。
【0053】
動作中に血液が通る少なくとも1つのチャンバーを有する少なくとも1つのダイアライザーが体外血液回路内に配置される。さらに、動作中に透析液が通る少なくとも1つのチャンバーが備えられ得る。
【0054】
本発明のさらなる実施形態においては、体外回路内の血液にダイアライザーの上流及び/又は下流のラインを介して置換液を供給する、少なくとも1つの置換液ポンプが設けられる。
【0055】
最後に、静脈圧センサを除いて血液ポンプの下流には圧力センサが設けられておらず、好ましくは、体外血液回路内に配置された前記血液ポンプの下流、及びダイアライザーの上流には圧力センサが設けられていないよう構成され得る。
【0056】
血液処理装置は、本方法クレームに基づくそれぞれの方法ステップの1つ以上、又は全てを実行するのに適切な手段をもつよう好ましくは設計される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明のさらなる詳細及び優位性は、以下の図面に示された実施形態を参照して、より詳細に説明される。
【
図1】
図1は、モーター及び電源を有する蠕動血液ポンプの概略図である。
【
図2】
図2は、モーター電流の血流量及びポンプの両端の圧力差に対する依存性の図である。
【
図3】
図3は、シャント抵抗をもつ電源の例である。
【
図4】
図4は、12ビットADCをもつ高圧側電流測定の例である。
【
図5】従来技術によるダイアライザーの体外回路の概略図表現である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
既に上で述べたように、本発明によれば、血液ポンプの前後の圧力差のような、圧力又はそれに関連するパラメータは、モーター電流及び血流量又はそれらに関連するパラメータの測定値に基づいて計算され得る。
【0059】
この計算された値は、圧力調整を実行するために使用され得る。このようにして、血液への損傷につながり得る、圧力が跳ね上がることや、圧力値が上昇することを避けることができる。
【0060】
好ましい実施形態においては、モーター電流、血流量、及びポンプの両端の圧力増加の関係は、以下の関係
I
M = a + b・Q
b + c・Q
b・Δp
によって再現される。
【0061】
もし、この方程式が圧力差Δpについて解くことができるなら、圧力差は、パラメータI
M及びQ
bにの測定に基づいて求めることができることが理解されよう。このようにして、血液ポンプ下流の圧力は、動脈圧力の測定についても計算され得る。
【0062】
対応する圧力センサの配置に関し、この点について
図5が参照される。体外血液回路の
図5及びそのような構成は、本発明のためにも適切であり、本発明によれば、好ましくは圧力センサ11、すなわち血液ポンプ4の下流の圧力センサが省略されるという条件の下で、本発明によって包含される。
【0063】
図1による表現は、モーター電流、血流量、及びポンプの両端の圧力差の上述の関係が、P
el、P
R、及びP
hycで表される値から、つまりP
el = P
0+P
R+P
hycという関係から求めることができることを示す。
【0064】
図1において、モーター電流は、参照符号I
Mによって同様に与えられる。
【0065】
図2は、上で挙げられた関係I
M=f(Q
b; Δp)に基づく、血流量及び圧力の、又はポンプの両端の圧力差の関数としてのモーター電流の依存性を示す。
【0066】
図2からわかるように、モーター電流は、一定の血流量の下ではこの関係に従って圧力差と共に増加する。
【0067】
図2の点Aは、圧力増加Δp = 0によって特徴付けられる。ここでは血流量もないので、この値はモーター電流による結果である。
【0068】
パスA−Bは、ポンプの両端の圧力増加がほぼゼロであることによって特徴付けられ、ここで血流量は、100ml/minから700ml/minに変化する。この場合、パスA−Bに沿ったモーター電流DI
Mの変化は、DI
M =b・Q
bである。
【0069】
示されたパスCは、それぞれ、一定値をとる血流量(100ml/min、200ml/min、300ml/min、400ml/min、500ml/min、及び600ml/min)によって特徴付けられる。ここではΔI
M=c・Q
b・Δpという関係が生じる。
【0070】
もし圧力測定が行われるだけでなく、圧力について一定の調節も行われるのであれば、どの圧力、例えばΔp, p
ppが決定されるべきであり、一定値又は所望の範囲の値に調節されなければならないかは選択され得る。調節は、好ましくは、血液ポンプ速度(blood pump rate)つまり血液速度Q
bによって行われる。
【0071】
上述の関係は、
I
M = a + b・Q
b + c・Q
b・Δp
という始まりの基となる。
【0072】
この方程式の全微分は、dI
M = b・dQ
b + c・dQ
b・Δp + c・Q
b・dΔpとなる。一定圧力Δpにおける偏導関数は
(∂I
M/∂Q
b)
Δp= b + c・Δp = 一定
となる。
【0073】
一定圧力Δpにおける偏導関数を求めた後、方程式(1)と比較すればΔp = 一定について、
(I
M-a)/Q
b = b+c・Δp = 一定
となる。
【0074】
圧力変化Δpについてのモーター電流の感度E
Δpは、一定血流量Q
bにおける偏導関数から
E
Δp=ΔI
M/Δ(Δp) = (∂I
M/∂Δp)
Qb = c・Qb
が得られる。
【0075】
システムを動作させるための、又は圧力を調節するための可能なプロシージャは、測定された値I
M及びQ
bを、非故障状態、すなわちポンプ群、特に交換液ポンプ(substituate pump)が通常動作している状態である開始値I
M,0及びQ
b,0として定期的に記録又は記憶されるようにすることを含む。
【0076】
もし治療中に故障が起こるなら、最大許容圧力変化に達したかどうかのチェックがまずなされる。この最大圧力変化は、Δ(Δp)
GWによって表現され得る。モーター電流の変化は、この目的のためにモニタされる。もしモーター電流が
ΔI
M=c・Q
b・Δ(Δp)
GW
よりも多く変化するなら、アクティブ調節フェーズが開始され、このフェーズでは圧力値への、又は圧力値範囲への調節がなされる。
【0077】
記録された又は記憶されたモーター電流及び血流量についての開始値を考慮するときには、こんどは血流量は、関係(I
M(t)-a)/Q
b(t)=(I
M,
0-a)/Q
b,
0)=constが一定を維持するように、調節によって、すなわち調節ユニットによって変更され得る。
【0078】
このプロシージャは、タイムアウトの後に、又はある血液量が運ばれた後に停止されることがさらに想定される。それから血流量は、元の値Q
b,0に設定が直される。
【0079】
圧力を一定に保つための、上述の関係からわかるように、パラメータbは必要なく、時間軸上のトリガポイントにおいてパラメータcだけが必要である。つまり、許容された圧力変化を超えたかどうかが決定されるべきときにはパラメータcだけが必要である。この値cは、非常に精密である必要はない。パラメータaの正確性は、比較的大きい変化についてだけ効いてくる。
【0080】
1つのシステムパラメータ、すなわちaだけが最初に導入されたパラメータa、b、及びcから求められなければならない。低い流量、例えばQ
b<100 ml/分において、かつ低い圧力Δp、例えば準備のフレームワーク内で、又はホースシステムの充填時において、モーター電流I
Mを測定すれば十分である。
【0081】
図3は、シャント抵抗をもつ電流源の例を示す。この場合、シャント抵抗R
Shunt=0.1 Ωがモーターの24ボルト電源ライン内に挿入される。シャントにおける電圧降下は、高圧側カレントフィラー(high-side current filler)によって、グラウンド参照に対する出力電流又は出力電圧に変換され、ADCを介してデジタイズされる。さらなる信号処理がマイクロコントローラの中で行われる。
【0083】
フィッティングパラメータa、b、及びcは、以下のように決定され得る。フィッティングパラメータは、誤差の二乗の和Sが最小になるよう選択される。誤差の二乗の和は、S = Σ (I
M,i- a - b・Q
b,i - c・Q
b,i・Δp
i)
2であり、ここでこの和は、この関係において、及び以下の方程式においてiについてそれぞれ形成される。
【0084】
Sの極値がこの目的のために求められる。
【0085】
∂S/∂a = 0 → Σ (I
M,i - a - b・Q
b,i- c・Q
b,i・Δp
i)= 0
→ Σ I
M,i= N・a + b・ΣQ
b,i + c・Σ (Q
b,i・Δp
i)
→ y
1= a・s
1,1 + b・s
2,1 + c・s
3,1
∂S/∂b = 0 → Σ (I
M,i - a - b・Q
b,i - c・Q
b,i・Δp
i)
・Q
b,i = 0
→ Σ I
M,i・Q
b,i = a・Σ Q
b,i + b・ΣQ
b,i2+ c・Σ (Q
b,i2・Δp
i)
→ y
2= a・s
1,2 + b・s
2,2 + c・s
3,2
∂S/∂c = 0 → Σ (I
M,i - a - b・Q
b,i- c・Q
b,i・Δp
i)・Q
b,i・Δp
i= 0
→ Σ (I
M,i・Q
b,i・Δp
i) = a・Σ (Q
b,i・Δp
i) + b・Σ(Q
b,i2・Δp
i)+ c・Σ (Q
b,i・Δp
i)
2
→ y
3= a・s
1,3 + b・s
2,3 + c・s
3,3
y
1、y
2、及びy
3を求めるための3つの方程式は、
y = a・s
1 + b・s
2 + c・s
3
のように1つのベクトル方程式の形に結合され得る。
【0086】
行列式det ( )を用いれば、解は
a = det (y; s
2; s
3) / det (s
1; s
2; s
3)
b = det (s
1; y; s
3) / det (s
1; s
2; s
3)
c = det (s
1; s
2; y) / det (s
1; s
2; s
3)
と求められる。