特許第6486904号(P6486904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486904
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】外転サイクロイド歯車列
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20190311BHJP
【FI】
   F16H1/46
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-509373(P2016-509373)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2016-516960(P2016-516960A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014057345
(87)【国際公開番号】WO2014173701
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】13165311.5
(32)【優先日】2013年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515294167
【氏名又は名称】スヴェパルツ トランスミシォーン アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】SWEPART TRANSMISSION AB
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ヨハンソン
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−221259(JP,A)
【文献】 特開2002−206600(JP,A)
【文献】 特開昭60−196448(JP,A)
【文献】 特表平11−509299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遊星歯車(7)を駆動する駆動ピニオン(3)を有する外転サイクロイド歯車列であって、各遊星歯車が、遊星保持体(15)に取り付けられており、遊星軸(23)の周りを回転し、相互に歯数の異なる、相互連結した第1歯車(9)と第2歯車(11)とを有し、前記第1歯車(9)は、静止している第1リング歯車(19)とかみ合い、前記第2歯車(11)は第2リング歯車(25)とかみ合い、それにより前記第2リング歯車(25)は前記外転サイクロイド歯車列の中心軸(21)の周りを回転するようになっている、外転サイクロイド歯車列において、前記中心軸(21)と各遊星軸(23)との間の距離を変更するよう構成される調整配置構成を特徴とし、
前記調整配置構成は、各前記遊星歯車(7)の前記遊星軸(23)が、前記遊星歯車が前記遊星保持体(15)に取り付けられる取付け軸(31)に対してオフセットされることにより達成されており、各前記遊星歯車は前記取付け軸の周りを回転可能であり、
前記調整配置構成は、それぞれが前記取付け軸(31)の1つに連結される複数の遊星制御歯車(29)を制御するために用いられる中央制御歯車(27)を含み、前記中央制御歯車(27)はロック可能である、
外転サイクロイド歯車列。
【請求項2】
各遊星制御歯車(29)が前記遊星保持体(15)の2つの板(17)間に前記遊星歯車(7)を吊設するシャフトに連結される、請求項1に記載の外転サイクロイド歯車列。
【請求項3】
前記駆動ピニオン(3)が前記外転サイクロイド歯車列の前記中心軸に設置され、前記駆動ピニオン(3)が前記遊星歯車(7)の前記第1歯車(9)を直接駆動する、請求項1又は2に記載の外転サイクロイド歯車列。
【請求項4】
前記駆動ピニオン(3)が前記外転サイクロイド歯車列の中心から移動され、前記遊星保持体(15)に直接連結される歯車(33)を駆動する、請求項1又は2に記載の外転サイクロイド歯車列。
【請求項5】
前記調整配置構成が前記中心軸(21)と各遊星軸(23)との間の距離を同一の方法で調整するように適合される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の外転サイクロイド歯車列。
【請求項6】
前記遊星保持体(15)が軸方向に浮動し、ならびに、円錐形であり対応する円錐形状を有する前記第1リング車と相互作用する各遊星歯車の前記第1歯車(9)および、円錐形であり対応する円錐形状を有する前記第2リング歯車と相互作用する各遊星歯車の前記第2歯車(11)の少なくともいずれかにより、軸方向に適切な位置に保持される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の外転サイクロイド歯車列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の遊星歯車を駆動する駆動ピニオンを有する外転サイクロイド歯車列であって、各遊星歯車が遊星軸の周りを回転し、歯数の異なる、相互連結した第1歯車と第2歯車とを有し、第1歯車は、静止している第1リング歯車とかみ合い、第2歯車は第2リング歯車とかみ合い、それにより第2リング歯車は外転サイクロイド歯車列の中心軸の周りを回転するようになっている、外転サイクロイド歯車列に関する。
【背景技術】
【0002】
このような歯車列は、例えば、産業用ロボット用の歯車列について記載する米国特許第5957804−A号明細書から公知である。第1リング歯車と第2リング歯車との間の軸方向距離は調整することができ、各遊星歯車の歯車は、浮動式遊星保持体を可能とするために円錐形であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
遊星歯車に関連する一般的な課題の1つは、その性能および信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の外転サイクロイド歯車列によって達成される。より具体的には、冒頭に述べた種類の外転サイクロイド歯車列は、ここでは、中心軸と各遊星軸との間の距離を変更するよう構成された調整配置構成を含む。このことは、遊星軸が中心軸から外側へ、リング歯車と密接にかみ合うまで移動することができ、それにより、バックラッシが実質的低減する意味し、例えば歯車列が位置決め目的に用いられる場合などに有用である。
【0005】
調整配置構成は、各遊星歯車の中心軸が、当該遊星歯車が遊星保持体に取り付けられている取付け軸に対して、オフセットされることにより達成されてもよく、遊星歯車は取付け軸の周りを回転可能である。このとき、中央制御歯車が複数の(例えば、3つの)遊星制御歯車を制御するのに用いられてもよく、各遊星制御歯車は、遊星保持体の2つの板の間において遊星歯車を吊設するシャフトに連結されている。このとき中央歯車は、バックラッシが実質的に低減されるまで、遊星軸を外側へ移動させるよう回転されてもよい。これは歯車列の組立時に一度行うだけでよい。
【0006】
駆動ピニオンは外転サイクロイド歯車列の中心軸に設置されてもよく、駆動ピニオンは、遊星歯車の第1歯車を直接駆動する。代替的に、駆動ピニオンは歯車列の中心からずらされて、遊星保持体に直接連結されている歯車を駆動するよう構成されてもよい。
【0007】
調整配置構成は、中心軸と各遊星軸との間の距離を同一の方法で調整するよう構成されてもよい。
【0008】
遊星保持体は、軸方向に浮動してもよく、円錐形であり対応する円錐形状を有する歯車リングと相互作用する、各遊星歯車における第1歯車および第2歯車の少なくともいずれかにより、軸方向に適切な位置に保持されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、中央駆動ピニオンを有する遊星歯車の側面図を示す。
図2図2は、図1の線A−Aに沿った断面図を示す。
図3図3は、露出した、図2の遊星保持体を示す。
図4図4は、図3の遊星保持体の遊星歯車を示す。
図5a図5aは、本開示によるバックラッシ低減機能部を概略的に図示する。
図5b図5bは、円錐形遊星歯車の代替的構成を示す。
図6A図6Aは、調整機能部の正面図を示す。
図6B図6Bは、遊星歯車が歯車保持体に取り付けられている、軸の配置構成を概略的に図示する。
図7図7は、中空シャフトを有する歯車の代替的変形例の、斜視図および当該斜視図における線B−Bに沿った断面図を示す。
図8図8は、中空シャフトを有する歯車の代替的変形例の、斜視図および当該斜視図における線B−Bに沿った断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、例えば、50:1を超え、通常100:1〜400:1の範囲の高い総歯数比を達成し、コンパクトな構造を有する外転サイクロイド歯車列(すなわち遊星歯車装置)に関する。図1は、中央駆動ピニオン3を有するそのような遊星歯車1の側面図を示す。歯車1は、歯車列の動作に対して静止基準点を提供するために構造に取り付けられてもよい外部ケーシング5を有する。
【0011】
図2は、図1の線A−Aに沿った断面図を示す。歯車列は、3つの遊星歯車7を有する。ほとんどの用途においては、3つの遊星歯車が好ましいと考えられるが、異なる遊星歯車数も考えられ得る。遊星歯車7は図4においてより明確に見ることができ、各遊星歯車7は、軸受13によって共通の軸に回転可能に配置され同じ速度で回転するように相互に連結された、第1歯車9および第2歯車11を有する。各遊星歯車7における第1歯車9および第2歯車11は、さらには1つの単一部材とされてもよいが、歯数の点では異なるサイズを有している。
【0012】
遊星歯車7は、2つの円板17により形成されていてもよい共通の遊星保持体15内に配置されており(図3を参照)、2つの円板17は、円板17間において遊星歯車7のための空間をあけるのに十分なスペースを円板間に提供するために、スペーサ19によって分離されている。図示の遊星保持体において、3つの遊星歯車は、120°の間隔をあけて設けられているが、異なる角度間隔も可能である。
【0013】
例えば、図4において見られるように、中央に位置する駆動ピニオン3は、各遊星歯車7の第1歯車9とかみ合う。遊星歯車7の第1歯車9の各々はさらに、異なる位置で、外部ケーシング5に取り付けられていることにより静止している第1外側リング歯車19とかみ合う(図2を参照)。結果として、歯車列の中心軸21と整列する駆動ピニオン3の回転により、遊星歯車が回転する間、遊星歯車7の軸23が中心軸21の周りを回る。
【0014】
各遊星歯車7の第2歯車11は、第2外側リング歯車25とかみ合い、第2外側リング歯車25は、軸受により中心軸21の周りを回転可能に配置される。各遊星歯車7の第1歯車9および第2歯車11が互いに異なる歯数を有しており、さらに第1リング歯車19および第2リング歯車25が互いに異なる歯数を有しているため、遊星歯車7の動きにより第2リング歯車25が第1リング歯車19に対して移動し、したがって、中心軸21の周りを回転する。第2歯車リングは出力シャフト(図示せず)に連結されてもよい。駆動ピニオン3の角速度と比較して、第2歯車リングの角速度は低い。第1歯車リングおよび第2歯車リングはここでは歯車列の駆動ピニオン側から見ると現れる順番に番号が振られている。(図5aで見た場合の)上の歯車リング25を固定し、代わりに下の歯車リング19を歯車列の出力に連結することが可能である。十分なスペースが遊星歯車間にあいている場合は、駆動ピニオンのシャフトは歯車列を通じて、図5aにおける図示の上方に、延在することもできる。
【0015】
下記の表1は、外転サイクロイド歯車列およびその対応する歯数比の例を提供する。
【0016】
【表1】
【0017】
この例は、下記の式により決定されるとおり、U=256の歯数比を与える。
【数1】
【0018】
本開示は、外転サイクロイド歯車列におけるバクラッシの低減に関する。バックラッシは、特に歯車がデバイスを正確に位置決めするために用いられる用途において、重大な問題となる場合がある。このような用途には、様々な種類の産業用ロボットおよび変換器、ならびに、例えば、最適な垂直軸に対してソーラーパネルを整列させるのに歯車が用いられ得る太陽熱発電システムが含まれる。他の可能性のある用途には、例えば、風力発電システムなどが含まれる。本明細書により開示される歯車列は、主として、産業用ロボット用途のためのものである。
【0019】
図5aは、歯車列におけるバックラッシを実質的に除去するのに用いられる配置構成を概略的に図示する。この配置構成において、バックラッシは遊星保持体15を軸方向にある程度浮動させることにより、および、遊星(panetary)歯車7の軸23と中心軸21との間の距離、すなわち駆動ピニオン3と遊星歯車7との間の半径方向位置を調整することにより、除去される。遊星歯車7の半径方向位置は、対称的に調整され、その結果、遊星歯車軸23は全て歯車列の中心軸21と同軸の単一の円筒に沿って移動する。これにより、各遊星歯車7により支持される伝達荷重が均一化される。
【0020】
各遊星歯車7の第1歯車9および第2歯車11は、図5aに示されているとおり、円錐勾配をなしていてもよい。図5における円錐勾配は、概念をより明瞭に説明するために図5aにおいて非常に誇張されている。実際の用途においては、例えば図4に示されるように、歯車は通常0.5〜4°の勾配をなしてよい(歯車コーンの半頂角)。
【0021】
各遊星歯車の第1歯車および第2歯車は、それらが互いに最も接近する点において最大幅を有してもよい。各リング歯車はさらに、自身がかみ合う遊星歯車の歯車に対応する勾配を有している。これは、遊星歯車および遊星保持体が、リングホイール間に閉じ込められており、その中で浮動することができることを意味している。同じ効果が、図5bに示されるとおり、狭い方の端部において相互連結されている円錐形歯車により達成される。各遊星歯車に1つの円筒歯車を用いることもできるであろうが、これには遊星保持体に対する軸方向支持が必要である。
【0022】
各遊星歯車の軸23の位置は、下記で説明される機構により半径方向に調整され得る。各遊星歯車の軸23を、中心軸21から離れて半径方向外側へ移動させることにより、第1および第2歯車9、11の一方がそれぞれのリング歯車19、25へと密接にかみ合い連結するようになる。軸23をさらに移動させることにより、歯車9、11の他方もそのそれぞれのリング歯車19、25と密接にかみ合い連結するようになるまで、浮動遊星保持体15の軸方向位置も同様に調整され得る。例えば、図5aにおいて、第1歯車9がリング歯車19と接触する場合、第2歯車11も第2リング歯車25と密接にかみ合い連結するまで、遊星保持体は図中上方へ調整される。同時に、駆動ピニオン3の位置は、各遊星歯車7の第1歯車9との密接なかみ合い連結を維持するために、(図中上方へ)軸方向に調整され得る。遊星保持体の浮動式配置構成はまた、いくらかの許容誤差を受け入れ、例えば、遊星歯車の歯車は円形状からわずかに逸脱することができる。
【0023】
この動作により、バックラッシは実質的に低減され得、この調整は歯車列が組み立てられるときに行うことができ、歯車列の耐用期間の間に繰り返す必要がない場合もある。
【0024】
遊星歯車の半径方向位置の調整には、他にも考えられる方法がある。図6A、6Bおよび再度図3を参照すると、中央制御歯車27は3つの遊星制御歯車29とかみ合い、それらを制御するために用いられ、3つの遊星制御歯車29はそれぞれ、遊星保持体15の2つの板17の間に遊星歯車7を吊設するシャフトへ連結されている。
【0025】
遊星歯車7の中心軸23は、図6Bに概略的に示すとおり、遊星歯車が遊星保持体の円板17に取り付けられている取付け軸31に対してオフセットされ、クランクシャフトに類似している。したがって、遊星制御歯車29が回転すると、遊星歯車7の中心軸23がわずかに動く。図6A〜6Bに示すオフセットは、説明をより明瞭にするために図6において誇張されている。
【0026】
したがって、中央制御歯車27を回転させることにより、遊星歯車7の中心軸を、それが、図5に関連して説明されるとおり、リング歯車に対して望ましい位置へ到達するまで外側へシフトさせることが可能である。この動作は、歯車列が組み立てられたときに、一度行うだけでよい。中央制御歯車27はその後望ましい位置においてロックされてもよい。
【0027】
駆動ピニオンの遊星歯車7との連結におけるバックラッシを低減するために、駆動ピニオン3の軸方向位置を調整することができる。しかしながら、このバックラッシは歯車列の高速回転側にあるため、バックラッシ全体に対するその影響はあまり重大ではない。したがって、用途によっては、この動作は省いてもよい。
【0028】
図7および図8は、中空シャフトを有する歯車の代替的変形例の、斜視図および当該斜視図における線B−Bに沿った断面図を示す。この場合、第1遊星歯車(図5における9を参照)を駆動する代わりに、ピニオン3が歯車列の中心から移動され、遊星保持体15に直接連結される歯車33を駆動し、それにより遊星歯車7を間接的に駆動する。これは、図8の断面図に示されるとおり、歯車列全体を貫通する開口チャネルを提供する。このチャネルは、例えば、ロボット工学実装形態において、例えばケーブル導出のためなどに、有用であり得る。
【0029】
本開示は図示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内において様々な方法で変形および変更されてもよく、例えば、前歯車装置(pre−gearing)が、外転サイクロイド歯車列への入力として機能するピニオンに連結され得る。さらに、図3〜4に図示される調整機能部は、遊星保持体の反対側に配置され得る。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6A
図6B
図7
図8