【文献】
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による組換え結合タンパク質またはドメインは哺乳類のHGFに特異的なものである。本発明による組換え結合ドメインはマウス、ラット、イヌ、ウサギ、サル、またはヒト由来のHGFに特異的なものであることが好ましく、本発明による組換え結合ドメインはヒト由来のHGFに特異的なものであることがさらに好ましい。
【0017】
「タンパク質」という用語はポリペプチドを指し、ここでそのポリペプチドの少なくとも一部は、規定された三次元配置を有するか、またはそのポリペプチド鎖の中におよび/またはそのポリペプチド鎖の間に二次、三次、もしくは四次構造を形成することで、規定された三次元配置を獲得することができる。あるタンパク質が2つ以上のポリペプチドを含む場合、個々のポリペプチド鎖は非共有的にまたは共有的に、例えば2つのポリペプチド間のジスルフィド結合によって結合されている場合がある。個別に規定された三次元配置を有するか、または二次もしくは三次構造を形成することで規定された三次元配置を獲得することができるタンパク質の一部分は「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。このようなタンパク質またはタンパク質ドメインは当業者によく知られている。
【0018】
組換えタンパク質、組換えタンパク質ドメイン、組換え結合タンパク質などに関して使用される「組換え」という用語は、前記ポリペプチドが、関連分野の当業者に公知の組換えDNA技術を用いて生産されたものであることを意味している。例えば、ポリペプチドをコードしている組換えDNA分子(例えば遺伝子合成によって生成された分子)を、細菌性の発現プラスミド(例えばpQE30、キアゲン)、酵母の発現プラスミドまたは哺乳類の発現プラスミドにクローニングすることができる。例えば、構築したそのような組換え細菌発現プラスミドを適切な細菌(例えば大腸菌)に挿入すると、この細菌はこの組換えDNAによってコードされているポリペプチドを生産することができる。このようにして生産されたポリペプチドは組換えポリペプチドと呼ばれる。
【0019】
本発明において「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合で繋がれた複数の、すなわち2個以上のアミノ酸を含む1本以上の鎖からなる分子に関する。ポリペプチドは、ペプチド結合によって繋がれた9個以上のアミノ酸からなることが好ましい。
【0020】
「ポリペプチドタグ」という用語はポリペプチド/タンパク質に付加されたアミノ酸配列を指し、ここで前記アミノ酸配列は、精製、検出もしくは前記ポリペプチド/タンパク質の標的化に有用なアミノ酸配列であるか、そのポリペプチド/タンパク質の物理化学的な挙動を改善するアミノ酸配列であるか、またはエフェクター機能を有するアミノ酸配列である。結合タンパク質のそれぞれのポリペプチドタグ、部分および/またはドメインは、直接またはポリペプチドリンカーを介して互いに連結していてもよい。これらのポリペプチドタグは当該分野でよく知られており、当業者であれば十分に利用できる。ポリペプチドタグの例としては、ヒス(His、例えば配列番号9のヒスタグ)、ミック(myc)、フラグ(FLAG)、またはストレプ(Strep)タグなどの短いポリペプチド配列、または前記ポリペプチド/タンパク質の検出を可能にする酵素(例えばアルカリホスファターゼのような酵素)などの部分、もしくは標的化するのに使用できる部分(例えば免疫グロブリンまたはその断片)および/またはエフェクター分子として使用できる部分がある。
【0021】
「ポリペプチドリンカー」という用語は、例えば、2つのタンパク質ドメイン、ポリペプチドタグとタンパク質ドメイン、タンパク質ドメインとポリエチレングリコールなどの非ポリペプチド部分、または2つの配列タグを繋ぐことができるアミノ酸配列を指す。そのような付加的なドメイン、タグ、非ポリペプチド部分およびリンカーは、関連分野の当業者に知られている。例を一覧にしたものが、特許出願国際公開第2002/020565号の明細書中に示されている。そのようなリンカーの具体例としては、様々な長さのグリシン−セリン−リンカーやプロリン−トレオニン−リンカーがあり、好ましくは、前記リンカーの長さは2〜24アミノ酸、より好ましくは前記リンカーの長さは2〜16アミノ酸である。グリシン−セリン−リンカーの例を配列番号10に、およびプロリン−トレオニン−リンカーの例を配列番号11に示す。配列番号11のプロリン−トレオニン−リンカーの前および/または後にGSがあることが好ましい。
【0022】
「ポリマー部分」という用語は、タンパク質性のポリマー部分または非タンパク質性のポリマー部分のいずれかを指す。「タンパク質性のポリマー部分」は、安定な三次構造をとらないポリペプチドであることが好ましい。タンパク質性のポリマー部分の例としては、XTEN(登録商標)(アムニクス(Amunix)の登録商標;国際公開第2007/103515号)ポリペプチド、または国際公開第2008/155134号に記載されている、プロリン、アラニンおよびセリン残基を含んでいるポリペプチドが挙げられる。そのようなタンパク質性のポリマー部分を、例えば、標準的なDNAクローニング技術によって遺伝的に融合させたポリペプチドを生成し、その後、それらを標準的に発現・精製することで、本発明の結合ドメインに共有結合することができる。「非タンパク質性のポリマー部分」とは、ポリペプチドから構成されていないポリマー部分である。非タンパク質性ポリマー部分の例としては、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンが挙げられる。「ペグ化」という用語は、ペグ(PEG)部分が、例えば本発明のポリペプチドに共有結合していることを意味する。本発明のポリマー部分の分子量は大きく変わり得る。前記ポリマー部分がポリペプチドリンカーによって結合ドメインに連結されていることが好ましい。
【0023】
具体的な態様では、ペグ部分または他の任意の非タンパク性ポリマーを、例えば本明細書に記載するように、システインがペプチドリンカーを介して結合ドメインのN末端またはC末端に結合している状態で、マレイミドリンカーを介してシステインチオールに結合させることができる。
【0024】
「結合タンパク質」という用語は、さらに詳しく後述するように、1つ以上の結合ドメイン、1つ以上の生理活性化合物および1つ以上のポリマー部分を含んでいるタンパク質を指す。好ましくは、前記結合タンパク質は4つまでの結合ドメインを含む。さらに好ましくは、前記結合タンパク質は2つまでの結合ドメインを含む。最も好ましくは、前記結合タンパク質は結合ドメインを1つだけ含む。さらに、そのような結合タンパク質はいずれも、結合ドメインではない付加的なタンパク質ドメイン、多量体化部分、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカーおよび/または1つ以上のシステイン残基を含む場合がある。多量体化部分の例としては、対合して機能性の免疫グロブリンFcドメインとなる免疫グロブリンの重鎖定常領域およびロイシンジッパーまたは遊離チオールを含んでいるポリペプチド(遊離チオールは、2つのそのようなポリペプチド間の分子間ジスルフィド結合を形成する)が挙げられる。ポリペプチドに他の部分を抱合させるために、例えば、当業者に公知のマレイミド化学によって抱合させるために、システイン残基を1つ使用することもできる。好ましくは、前記結合タンパク質は組換え結合タンパク質である。また好ましくは、結合タンパク質の結合ドメインは異なる標的特異性を有する。
【0025】
「生理活性化合物」という用語は、疾患を患っている哺乳動物に使用したときに、前記疾患の性質を部分的に変化させる化合物を指す。生理活性化合物は拮抗的な性質または作用性の性質を有していてもよく、また、タンパク質性の生理活性化合物である場合もまたは非タンパク質性の生理活性化合物である場合もある。そのようなタンパク質性の生理活性化合物を、例えば、標準的なDNAクローニング技術によって遺伝的に融合させたポリペプチドを生成し、その後、それらを標準的に発現・精製することで、本発明の結合ドメインに共有結合することができる。そのような非タンパク質性の生理活性化合物を、例えば、化学的な手段によって、例えば本明細書に記載するように、マレイミドリンカーを介してシステインチオールに結合させることで、ペプチドリンカーを介してシステインが結合ドメインのN末端またはC末端に結合している状態で、本発明の結合ドメインに共有結合することができる。タンパク質性の生理活性化合物の例としては、別個の標的特異性を有する結合ドメイン(例えば、成長因子に結合することでそれを中和する)、サイトカイン(例えばインターロイキン)、成長因子(例えばヒト成長ホルモン)、抗体およびその断片、ホルモン(例えばGLP−1)、毒物(例えば緑膿菌外毒素A)、ならびに生産可能なあらゆるタンパク質性の薬剤が挙げられる。非タンパク質性の生理活性化合物の例には、毒物(例えばイムノゲン(ImmunoGen)社のDM1)、GPCRを標的とする低分子、抗生物質および生産可能なあらゆる非タンパク質性の薬剤がある。
【0026】
「結合ドメイン」という用語は、以後で定義するように、タンパク質足場と同じ「折り畳み構造」(三次元の配置)を示し、予め決められた特性を有するタンパク質ドメインを意味する。このような結合ドメインは合理的に、最も一般的なところでは、当該分野で公知のコンビナトリアルなタンパク質改変技術によって得ることができる(ビンズら、2005、前掲文献)。例えば、予め決められた特性を有する結合ドメインは、(a)以後でさらに定義するタンパク質足場と同じ折り畳み構造を示すタンパク質ドメインの多様なコレクションを提供する工程;および(b)前記予め決められた特性を有する少なくとも1つのタンパク質ドメインを得るために、前記多様なコレクションをスクリーニングする工程および/または前記予め決められた特性を有する少なくとも1つのタンパク質ドメインを前記多様なコレクションから選抜する工程、を含む方法によって得ることができる。タンパク質ドメインの多様なコレクションは、使用されるスクリーニングおよび/または選抜の系に応じて複数の方法によって提供することができ、また、ファージディスプレーまたはリボソームディスプレーなどの当業者に公知の方法の使用が含まれ得る。好ましくは、前記結合ドメインは組換え結合ドメインである。
【0027】
「タンパク質足場」という用語は、アミノ酸の挿入、置換または欠失を多く許容することができる露出した表面を有するタンパク質を意味する。本発明の結合ドメインの生成に用いることができるタンパク質足場の例としては、抗体またはその断片(1本鎖FvもしくはFab断片など)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインA、オオモンシロチョウ(Pieris brassicae)由来のビリン結合タンパク質もしくは他のリポカリン類、アンキリン反復タンパク質もしくは他の反復タンパク質類、およびヒトのフィブロネクチンがある。タンパク質足場は当業者に知られている(ビンズら、2005、前掲文献;ビンズら、2004、前掲文献)。
【0028】
「標的」という用語は、核酸分子、ポリペプチドもしくはタンパク質、炭水化物または他のあらゆる天然に存在する分子などの個々の分子およびそのような個々の分子の一部、または2つ以上のそのような分子の複合体を指す。標的は細胞全体または組織試料であってもよく、または標的は任意の非天然の分子もしくは部分であってもよい。好ましくは、標的は、天然に存在するもしくは非天然のポリペプチドであるか、あるいは化学修飾、例えば天然のもしくは非天然のリン酸化、アセチル化、またはメチル化による修飾を含有しているポリペプチドである。本発明の特定の用途では、標的はHGFである。
【0029】
「予め決められた特性」という用語は、標的との結合、標的の遮断、標的介在性反応の活性化、酵素活性、および関連するさらなる特性などの特性を指す。所望される特性の種類によって、当業者は、所望の特性を有する結合ドメインのスクリーニングおよび/または選抜を実施するための形式およびその実施に必要な工程を確認することができる。好ましくは、前記予め決められた特性は標的との結合である。
【0030】
以降の反復タンパク質に関する定義は、特許出願の国際公開第2002/020565号に記載されている定義に基づくものである。特許出願の国際公開第2002/020565号はさらに、反復タンパク質の特徴、技術および用途の一般的な説明も含んでいる。
【0031】
「反復タンパク質」という用語は、1つ以上の反復ドメインを含んでいるタンパク質を指す。好ましくは、前記反復タンパク質はそれぞれ、4つまでの反復ドメインを含む。より好ましくは、前記反復タンパク質はそれぞれ、2つまでの反復ドメインを含む。最も好ましくは、反復タンパク質はそれぞれ、反復ドメインを1つだけ含む。さらに前記反復タンパク質は、付加的な非反復タンパク質ドメイン、ポリペプチドタグおよび/またはポリペプチドリンカーを含んでいてもよい。
【0032】
「反復ドメイン」という用語は、2つ以上の連続した反復単位(モジュール)を構造単位として含んでいるタンパク質ドメインを指し、ここで前記構造単位はそれぞれ同じ折り畳み構造を有し、密に積み重なって、疎水性の結合コアを有する高次らせん構造を形成している。好ましくは、反復ドメインは、N末端および/またはC末端にキャッピング単位(またはモジュール)をさらに含む。一層好ましくは、前記N末端および/またはC末端のキャッピング単位(またはモジュール)はキャッピング反復である。
【0033】
「設計反復タンパク質」および「設計反復ドメイン」という用語はそれぞれ、特許出願の国際公開第2002/020565号で説明されている発明的な手順の結果として得られた反復タンパク質または反復ドメインを指す。設計反復タンパク質および設計反復ドメインは合成されたもので、天然由来のものではない。これらはそれぞれ、それに応じて設計された核酸を発現させることによって得られた人工のタンパク質またはドメインである。真核細胞または細菌細胞などの原核細胞の中で発現させるか、細胞を使わないインビトロの発現系を用いて発現させることが好ましい。従って、設計アンキリン反復タンパク質(すなわちDARPin)は、少なくとも1つのアンキリン反復ドメインを含んでいる本発明の組換え結合タンパク質に相当する。
【0034】
「構造単位」という用語は、ポリペプチドのうちの局所的に構造が整っている部分を指し、これは、ポリペプチド鎖に沿って隣接している2つ以上の二次構造セグメント間の三次元的な相互作用によって形成されている。このような構造単位は構造モチーフを表している。「構造モチーフ」という用語は、少なくとも1つの構造単位中に存在する、二次構造の構成要素の三次元的な配置を指す。構造モチーフは当業者によく知られている。構造単位だけでは規定の三次元配置を取ることはできないが、それらが、例えば反復ドメインの中の反復モジュールとして、連続して配置されることで隣り合った単位が相互に安定化し、その結果、高次らせん構造がもたらされる。
【0035】
「反復単位」という用語は、1種以上の天然に存在する反復タンパク質の反復配列モチーフを含んでいるアミノ酸配列を指し、ここで前記「反復単位」は複数のコピーに見られ、前記モチーフの全てに共通している規定の折り畳み位相構造を示すことで、タンパク質の折り畳み構造を決定している。このような反復単位は、フォアーら(2003、前掲文献)に記載されている、反復タンパク質の「反復している構造単位(反復)」またはビンズら(2004、前掲文献)に記載されている、反復タンパク質の「連続した相同の構造単位(反復)」に相当する。このような反復単位は骨格残基と相互作用残基とを含んでいる。このような反復単位の例としては、アルマジロ反復単位、ロイシン・リッチ反復単位、アンキリン反復単位、テトラトリコペプチド反復単位、HEAT反復単位、およびロイシン・リッチ変異型反復単位が挙げられる。このような反復単位を2つ以上含有している天然に存在するタンパク質は、「天然に存在する反復タンパク質」と呼ばれる。反復タンパク質の個々の反復単位のアミノ酸配列には、それぞれを比較した場合に、有意な数の変異、置換、付加および/または欠失が入っている場合があるが、それでもなお、反復単位の基本的なパターン、すなわちモチーフを実質的に保持している。
【0036】
従って、「アンキリン反復単位」という用語は反復単位を意味し、これは、例えばフォアーら、2003、前掲文献に記載されているアンキリン反復である。アンキリン反復は当業者によく知られている。「アンキリン反復ドメイン」という用語は、2つ以上の連続したアンキリン反復単位(モジュール)を構造単位として含み、好ましくは、N末端および/またはC末端にキャッピング単位(またはモジュール)も含む反復ドメインを指す。
【0037】
「骨格残基」と言う用語は反復単位のアミノ酸残基、すなわち反復モジュールの相当するアミノ酸残基に関するもので、骨格残基は折り畳みの位相構造、すなわち前記反復単位(またはモジュール)の折り畳み構造に寄与するか、または隣り合った単位(またはモジュール)間の相互作用に寄与する。このような寄与は反復単位(またはモジュール)中の他の残基との相互作用となるか、またはαヘリックスもしくはβシート、または直線状のポリペプチドもしくはループを形成している一定の長さのアミノ酸に見られるようなポリペプチド骨格の高次構造に影響を与えるものであり得る。
【0038】
「標的相互作用残基」という用語は、反復単位のアミノ酸残基、すなわち反復モジュールの相当するアミノ酸残基に関するもので、これは、標的物質との相互作用に寄与するものである。このような寄与は標的物質との直接的な相互作用となるか、または直接相互作用している他の残基に、例えば反復単位(またはモジュール)のポリペプチドの高次構造を安定化し、前記標的と直接相互作用している残基の相互作用を可能にするまたは向上させることで影響を与えるものであり得る。そのような骨格残基および標的相互作用残基は、X線結晶学、NMRおよび/またはCD分光法などの物理化学的な方法によって得られたデータを解析すること、あるいは構造生物学および/またはバイオインフォマティクス分野の当業者に公知の、既知のおよび関連する構造情報を比較することによって同定することができる。
【0039】
反復配列モチーフの推定に用いられる反復単位は、好ましくは、同じ構造モチーフを有する反復単位で、前記反復単位の骨格残基が70%を超えて互いに相同な、相同な反復単位である。前記反復単位のうち、80%を上回る骨格残基が相同であることが好ましく、前記反復単位のうち、90%を上回る骨格残基が相同であることが最も好ましい。ポリペプチド間の相同性(パーセンテージ)を決定するためのコンピュータープログラム、例えばFasta、BlastまたはGapが当業者に知られている。さらに好ましくは、反復配列モチーフの推定に用いられる反復単位は、規定の標的に関して選択された反復ドメインから得られる相同な反復単位である。
【0040】
「反復配列モチーフ」という用語は、1つ以上の反復単位または反復モジュールから推定されたアミノ酸配列を指す。好ましくは、前記反復単位または反復モジュールは同じ標的に対する結合特異性を有する反復ドメインに由来するものである。そのような反復配列モチーフは、骨格残基位置と標的相互作用残基位置を含む。前記骨格残基位置は反復単位(またはモジュール)の骨格残基の位置に相当する。一般的に、アンキリン反復の2、5、7〜13番目および16〜33番目の位置に骨格残基が含まれている。アンキリン反復の位置番号は
図7に示している。同様に、前記標的相互作用残基位置は、反復単位(またはモジュール)の標的と相互作用する残基の位置に相当する。一般的に、アンキリン反復の1、3、4、6、14、および15番目の位置は標的相互作用残基を含みうる。反復配列モチーフは、定位置および無作為な位置を含む。「定位置」という用語は反復配列モチーフ中のアミノ酸の位置を指し、ここで前記位置には特定のアミノ酸が存在する。たいていの場合、そのような定位置は、骨格残基の位置および/または特定の標的に特異的な標的相互作用残基の位置に相当する。「無作為な位置」という用語は反復配列モチーフ中のアミノ酸の位置を指し、この場合、前記アミノ酸の位置には2種類以上のアミノ酸のいずれが存在してもよい。例えば、一般的な20種類の天然に存在するアミノ酸のいずれが存在してもよく、または20種類の天然に存在するアミノ酸の多くが、例えばシステイン以外のアミノ酸が、もしくはグリシン、システインおよびプロリン以外のアミノ酸が存在してもよい。ほとんどの場合、そのような無作為な位置は標的相互作用残基の位置に相当するが、骨格残基のいくつかの位置が無作為な場合もある。
【0041】
「折り畳みの位相構造」という用語は、前記反復単位または反復モジュールの三次構造を指す。折り畳みの位相構造は、αヘリックスまたはβシートの少なくとも一部を形成している一定の長さのアミノ酸、または直線状ポリペプチドもしくはループを形成している一定の長さのアミノ酸によって決定されるか、あるいはαヘリックス、βシートおよび/または直線状ポリペプチド/ループの任意の組み合わせによって決定される。例えば、アンキリン反復単位/モジュールはβターン、それに続く2つの逆平行αヘリックス、そして次の反復単位/モジュールのターンに達しているループからなる。
【0042】
「連続した」という用語は、反復単位または反復モジュールが直列に配置されている配置を指す。設計反復タンパク質では、少なくとも2個、一般的には約2〜6個、具体的には少なくとも約6個、しばしば20個以上の反復単位(またはモジュール)が連続している。ほとんどの場合、反復ドメインの反復単位同士(またはモジュール同士)は、高レベルの配列同一性(対応する位置に同じアミノ酸残基がある)または配列相同性(アミノ酸残基は異なるが、同様の物理化学的特性を有する)を示し、いくつかのアミノ酸残基は重要な残基であり、高度に保存されている。しかしながら、アミノ酸の挿入および/または欠失、および/または反復ドメインの異なる反復単位(またはモジュール)間における置換による高度な配列の変動も、その反復単位(またはモジュール)に共通の折り畳みの位相構造が維持される限りにおいて可能である。
【0043】
X線結晶学、NMRまたはCD分光法などの物理化学的な手段によって、反復タンパク質の折り畳みの位相構造を直接決定するための方法は当業者によく知られている。反復単位もしくは反復配列モチーフを同定および決定するための方法、またはそのような反復単位もしくはモチーフを含んでいる関連するタンパク質のファミリーを決定および同定するための方法、例えば相同性検索(BLASTなど)は、バイオインフォマティクスの分野において十分に確立されており、かつ、当業者によく知られている。最初の反復配列モチーフを改良する工程には過程を繰り返すことが含まれる場合がある。
【0044】
「反復モジュール」という用語は、設計反復ドメインのうちの反復しているアミノ酸配列を指し、これは元々は天然に存在する反復タンパク質の反復単位に由来するものである。反復ドメインに含まれているそれぞれの反復モジュールは、天然に存在する反復タンパク質のファミリーまたはサブファミリー、例えばアルマジロ反復タンパク質もしくはアンキリン反復タンパク質ファミリーの1つ以上の反復単位に由来する。さらに好ましくは、反復ドメインに含まれるそれぞれの反復モジュールは、例えば実施例1に記載するように、同じ標的(例えばHGF)に関して選択された反復ドメインより得られた相同の反復単位から推定された反復配列モチーフを含む。
【0045】
従って、「アンキリン反復モジュール」という用語は、元々は天然に存在するアンキリン反復タンパク質の反復単位由来の反復モジュールを意味する。アンキリン反復タンパク質は当業者によく知られている。
【0046】
「反復モジュール」は、対応している反復モジュールの全コピーに存在しているアミノ酸残基が入っている位置(「定位置」)と、異なるまたは「無作為な」アミノ酸残基が存在する位置(「無作為な位置」)を含んでいてもよい。
【0047】
「キャッピングモジュール」という用語は、反復ドメインのN末端またはC末端の反復モジュールに融合させたポリペプチドを指し、ここで前記キャッピングモジュールは前記反復モジュールと密な三次元相互作用(すなわち三次元構造相互作用)を形成し、それによって、連続した反復モジュールに接触していない側の前記反復モジュールの疎水性コアを溶媒から保護するキャップを構成している。前記N末端および/またはC末端キャッピングモジュールは、反復単位に隣接している天然に存在する反復タンパク質中に見られるキャッピング単位または他の構造単位であってよく、あるいはそれらに由来するものであってもよい。「キャッピング単位」という用語は、反復単位のN末端またはC末端に融合させた特定の構造単位を規定する天然に存在する折り畳まれたポリペプチドを指し、ここで前記ポリペプチドは、前記反復単位と密な三次元構造相互作用を形成し、それによって、前記反復単位の片方にある疎水性コアを溶媒から保護している。好ましくは、キャッピングモジュールまたはキャッピング単位はキャッピング反復である。「キャッピング反復」という用語は、前記隣接している反復単位(またはモジュール)と同様のもしくは同じ折り畳み構造を有する、および/または前記隣接している反復単位(またはモジュール)と同様の配列を有するキャッピングモジュールもしくはキャッピング単位を指す。キャッピングモジュールおよびキャッピング反復については国際公開第2002/020565号、国際公開第2012/069655号、およびインターランディら、2008(前掲文献)による記載がある。N末端アンキリンキャッピングモジュール(すなわちN末端キャッピング反復)の例としては配列番号1〜3が、アンキリンC末端キャッピングモジュール(すなわちC末端キャッピング反復)の例としては配列番号4〜8が挙げられる。
【0048】
例えば、配列番号33のN末端アンキリンキャッピングモジュールは1〜32番目のアミノ酸によってコードされており、配列番号33のC末端キャッピングモジュールは132〜159番目のアミノ酸によってコードされている。
【0049】
本発明による組換え結合タンパク質は少なくとも1つのアンキリン反復ドメインを含み、ここで前記アンキリン反復ドメインは哺乳類のHGFに対する結合特異性を有する。
【0050】
「標的に対する結合特異性を有する」、「標的に特異的に結合する」または「標的特異性」などの用語は、ある結合タンパク質または結合ドメインが、PBS中で、関連のないタンパク質、例えば大腸菌の麦芽糖結合タンパク質(MBP)よりも低い平衡解離定数で標的に結合することを意味する。好ましくは、標的に対するPBS中での平衡解離定数は、対応するMBPの平衡解離定数の少なくとも10分の1、より好ましくは少なくとも100分の1、さらに好ましくは少なくとも1,000分の1、最も好ましくは少なくとも10,000分の1よりも小さい。
【0051】
HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質を実施例に記載する。
【0052】
特に、本発明はアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む本発明で定義した組換え結合タンパク質に関し、ここで前記アンキリン反復ドメインはHGF(肝細胞増殖因子)に特異的に結合する。
【0053】
そのような特異的結合は、本発明によるアンキリン反復ドメインのHGFに対する選択的親和性を指す。HGFまたはそのエピトープに結合するアンキリン反復ドメインはすべて、その実体に特異的に結合すると考えられる。したがってHGFに結合するアンキリン反復ドメインはすべて後者(HGFのエピトープ)に対する結合特異性を有する。
【0054】
好ましくは、前記アンキリン反復ドメインはPBS中で、10
-7M未満の平衡解離定数(Kd)でHGFに結合する。さらに好ましくは、10
-8M未満、10
-9M未満、または10
-10M未満、最も好ましくは10
-11M未満のKdで結合する。
【0055】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた技術(例えばSPR平衡解析または動態解析)または等温滴定熱量測定(ITC)などのタンパク質間相互作用の平衡解離定数を決定する方法が当業者に良よく知られている。異なる条件(例えば、塩濃度、pH)で測定すれば、測定された特定のタンパク質間相互作用のKd値は変わる可能性がある。従って、Kd値の測定は、標準化されたタンパク質溶液と標準化された緩衝液、例えばPBSを使って行われるのが好ましい。
【0056】
実施例2にHGFとc−Metとの結合を阻害するアンキリン反復のIC
50値の求め方と、PBS中で10
-7M未満のKdでHGFに結合するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質とを示す。
【0057】
ヒトHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質が好ましい。
【0058】
70から300個のアミノ酸、特に90から200個のアミノ酸を含んでいる組換え結合タンパク質を含むアンキリン反復ドメインがさらに好ましい。
【0059】
好ましくは、本発明の結合ドメインは、国際公開第2002/020565に記載のアンキリン反復ドメイン、つまり設計アンキリン反復ドメインである。HGFに結合特異性を有する設計アンキリン反復ドメインの例を実施例に示している。
【0060】
さらなる態様において本発明は、哺乳類のHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、ここで前記アンキリン反復ドメインはPBS中で、10
-7M未満のIC
50値でHGFとc−Metとの結合を阻害する。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインはPBS中で、10
-8M未満のIC
50値でHGFとc−Metとの結合を阻害し、さらに好ましくは10
-9M未満または10
-10M未満のIC
50値で、最も好ましくは10
-11M未満のIC
50値でHGFとc−Metとの結合を阻害する。
【0061】
半数阻害濃度(IC
50)とは、化合物、例えば本発明の結合ドメインが、生物学的、生化学的、または生物物理学的機能を阻害する作用に関する有効性の基準である。競合的ELISAなど、タンパク質間相互作用の阻害に関するIC
50値の決定方法が当業者によく知られている。異なる条件(例えば塩濃度、pH)で測定すれば、測定されたタンパク質間相互作用の特定の阻害剤のIC
50値は変わる可能性がある。したがって、IC
50値の測定は標準化されたタンパク質溶液と標準化された緩衝液、例えばPBSを使って行われるのが好ましい。
【0062】
実施例5にHGFとc−Metとの結合を阻害するアンキリン反復のIC
50値の求め方と、PBS中で10
-7M未満のIC
50値でHGFとc−Metとの結合を阻害するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質とを示す。
【0063】
さらなる態様において本発明は、HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、前記アンキリン反復ドメインは、A549細胞(ATCC、カタログ番号:CCL−185)内のc−MetのHGF刺激性リン酸化を阻害する。A549細胞を24時間栄飢餓状態におき、その後、様々な濃度(a titration)の、HGF対する特異性を有するアンキリン反復ドメイン存在下で、HGFによって刺激した。本発明の化合物がA549細胞内でc−MetのHGF刺激性リン酸化を阻害する能力を、当業者によく知られている標準的な手段で評価した。実施例4に、そのようなアンキリン反復ドメインまたはc−Metのリン酸化を阻害するタンパク質のIC
50値を決定する方法、およびA549細胞内でのc−Metのリン酸化を10
-7M未満のIC
50値で阻害するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質を示す。
【0064】
前記反復ドメインは、好ましくは、A549細胞内でc−MetのHGF刺激性リン酸化を10
-8M未満のIC
50値で阻害し、さらに好ましくは10
-9M、10
-10M未満のIC
50値で、最も好ましくは10
-11M未満のIC
50値で阻害する。
【0065】
さらなる態様において本発明は、HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、前記アンキリン反復ドメインは、10
-6M未満のIC
50値でHGF刺激性U87細胞(ATCC、カタログ番号:HTB−14)の増殖を阻害する。前記反復ドメインは、好ましくは、HGF刺激性U87細胞の増殖を10
-7M未満のIC
50値で阻害し、さらに好ましくは10
-8M、10
-9M、10
-10M未満で、最も好ましくは10
-11M未満のIC
50値で阻害する。
【0066】
U87細胞は生育する際HGFに反応するため、本発明の化合物の機能的阻害能力の測定に使用できる。U87細胞を培地中で生育し、1%のFBSを含むDMEM(アッセイ培地)に播種する。細胞を24時間培養した後、HGFおよび様々な濃度の抗HGF DARPinを加える。本発明の化合物のHGF阻害能力を、当業者によく知られている標準的な手段を用いてU87細胞の増殖能力を測定することで評価する。実施例4にU87細胞の増殖を阻害するそのようなアンキリン反復タンパク質のIC
50値を決定する方法、およびHGF刺激性U87細胞の増殖を10
-6M未満のIC
50値で阻害するアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質を示す。
【0067】
本発明はHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、ここで前記結合タンパク質および/またはアンキリン反復ドメインがPBS中で熱変性する際の変性中点温度(Tm)は40℃より高く、10g/Lまでの濃度、PBS中、37℃で1日間インキュべートした際、不溶性の凝集体は5(重量)%未満しか形成されない。
【0068】
「PBS」という用語は、137mMのNaCl、10mMのリン酸、および2.7mMのKClを含有し、pHが7.4のリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0069】
好ましくは、前記組換え結合タンパク質および/または結合ドメインがpH7.4のPBS中で熱変性する際の変性中点温度(Tm)は45℃より高く、より好ましくは50℃より高く、より好ましくは55℃より高く、最も好ましくは60℃より高い。本発明の結合タンパク質または結合ドメインは、生理学的条件では規定された二次構造および三次構造を有する。そのようなポリペプチドが熱変性するとその三次構造および二次構造が失われるが、これは例えば円二色性(CD)測定によって追うことができる。結合タンパク質または結合ドメインが熱変性する際の変性中点温度は、生理学的な緩衝液中で温度を10℃から約100℃に徐々に上げていくことで前記タンパク質を熱変性させた際に、共同して構造転移を起こす温度の中間点に相当する。熱変性の際の変性中点温度の決定は当業者によく知られている。結合タンパク質または結合ドメインが熱変性する際のこの変性中点温度は、前記ポリペプチドの熱安定性の指標である。
【0070】
20g/Lまで、好ましくは40g/Lまで、より好ましくは60g/Lまで、さらにより好ましくは80g/Lまで、および最も好ましくは100g/Lまでの濃度で、PBS中37℃で5日間以上、好ましくは10日間以上、より好ましくは20日間以上、より好ましくは40日間以上、および最も好ましくは100日間以上インキュベートしたときに、不溶性の凝集体を5(重量)%未満しか形成しない組換え結合タンパク質および/またはアンキリン反復ドメインもまた好ましい。不溶性凝集体の形成は、目に見える沈殿の様子、ゲル濾過または不溶性の凝集体が形成されると非常に高まる動的光散乱によって検出することができる。不溶性の凝集体は、10,000×gで10分間遠心分離することでタンパク質試料から除去することができる。好ましくは、組換え結合タンパク質および/またはアンキリン反復ドメインは、前述のインキュベート条件で、PBS中、37℃でインキュベートした時に、2%未満、より好ましくは1%、0.5%、0.2%、0.1%未満、または最も好ましくは0.05(重量)%未満しか不溶性の凝集体を形成しない。不溶性凝集体のパーセンテージは、不溶性の凝集体を可溶性タンパク質から分離し、その後、可溶性および不溶性画分に含まれるタンパク質量を標準的な定量法によって測定することで決定することができる。
【0071】
また、100mMのジチオスレイトール(DTT)を含有するPBS中、37℃で1時間または10時間インキュベートした際に、その天然の三次元構造を失わない組換え結合タンパク質および/またはアンキリン反復ドメインが好ましい。
【0072】
特定の一態様において本発明は、HGFに特異的に結合し、かつ、示したまたは好ましい変性中点温度および前段で定義した非凝集特性を有するアンキリン反復ドメインを含んでいる組換え結合タンパク質に関する。
【0073】
さらなる態様において本発明は、哺乳類のHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、前記アンキリン反復ドメインは、哺乳類のHGFと、配列番号33〜61から、好ましくは配列番号33、37、41、42、43、48、51、52、57、58、59、60および61から、さらに好ましくは配列番号37、42、43、51、52および60から、一層さらに好ましくは37、43、51および60から、特に配列番号51および60からなる群から選択されるアンキリン反復ドメインとの結合に競合する。
【0074】
また好ましくは、前記アンキリン反復ドメインは、哺乳類のHGFと、DARPin#33〜61の群から選択される結合タンパク質との結合に競合する。前記反復ドメインは、好ましくは、哺乳類のHGFとDARPin#24、45および50の群から選択される結合タンパク質との結合に競合する。さらに好ましくは、前記アンキリン反復ドメインは哺乳類HGFと結合タンパク質であるDARPin#24または50との結合に競合する。
【0075】
「との結合に競合する"compete for binding"」という用語は、本発明の2つの異なる結合ドメインは同時に同じ標的には結合できないが、両方の結合ドメインはそれぞれ同じ標的に結合可能であることを意味している。従ってこのような2つの結合ドメイン同士が前記標的との結合に競合する。好ましくは、前記2つの競合する結合ドメインは、前記標的上の重複しているまたは同じ結合エピトープに結合する。2つの結合ドメインが標的との結合に関して競合するか否かを決定するための方法、例えば競合的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)または競合的SPR測定(例えばバイオ・ラッドのプロテオン(ProteOn)装置を使った測定)は当業者によく知られている。競合的SPR測定の例を実施例2に示す。
【0076】
さらなる態様において本発明は哺乳類のHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、前記アンキリン反復ドメインは配列番号33〜61からなる群より選択される1つのアンキリン反復ドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、さらに、
前記アンキリン反復ドメインの1番目のGおよび/または2番目のSが欠失していてもよく、および
前記アンキリン反復ドメインの最後尾から2番目のLおよび/または最後尾のNがAと交換されていてもよい。
【0077】
好ましくは、本発明の組換え結合タンパク質に含まれるそのようなアンキリン反復ドメインは、配列番号33、37、41、42、43、48、51、52、57、58、59、60および61からなる群より選択される1つのアンキリン反復ドメインと、さらに好ましくは配列番号37、42、43、51、52および60と、より好ましくは37、43、51および60と、特に配列番号51および60と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
好ましくは、本発明の組換え結合タンパク質に含まれるそのようなアンキリン反復ドメインは、配列番号33〜61からなる群より選択されるアンキリン反復ドメインのN末端キャッピングモジュールおよびC末端キャッピングモジュールとの間にある1、2または3つのアンキリン反復モジュールと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
好ましくは、そのようなアンキリン反復ドメインまたはそのような1、2もしくは3つの反復モジュールは少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
好ましくは、配列番号33〜61の反復ドメインに含まれる30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個までのアミノ酸は別のアミノ酸と交換されている。
【0081】
配列番号1〜8のキャッピングモジュール、配列番号12〜25の反復モジュール、または配列番号33〜61の反復ドメインに含まれるアミノ酸が置き換えられている場合には、これらのアミノ酸は、好ましくは、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より選択されるアミノ酸、より好ましくはA、D、E、H、I、K、L、Q、R、S、T、V、およびYからなる群由来のアミノ酸と交換される。また好ましくは、アミノ酸は相同のアミノ酸で置き換えられる。つまりアミノ酸は、生物物理学的な特性が似ている側鎖を有するアミノ酸と交換される。例えば、負に帯電しているアミノ酸Dは負に帯電しているアミノ酸Eに置き換えてもよく、または、Lなどの疎水性のアミノ酸をA、IまたはVに置き換えてもよい。ポリペプチド中のアミノ酸を別のアミノ酸と交換する技術は当業者によく知られている。
【0082】
さらなる態様において本発明は哺乳類のHGFに対する結合特異性を有する少なくとも1つのアンキリン反復ドメインからなる組換え結合タンパク質に関し、ここで前記アンキリン反復ドメインは配列番号33〜61からなる群より選択され、
前記アンキリン反復ドメインの1番目のGおよび/または2番目のSは欠失していてもよく、および
前記アンキリン反復ドメインの最後尾から2番目のLおよび/または最後尾のNがAと交換されていてもよい。
【0083】
好ましくは、そのようなアンキリン反復ドメインは配列番号33、37、41、42、43、48、51、52、57、58、59、60および61から、さらに好ましくは配列番号37、42、43、51、52および60から、より好ましくは配列番号37、43、51および60から、特に配列番号51および60からなる群から選択される。
【0084】
さらなる態様において本発明は、哺乳類のHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを少なくとも1つ含む組換え結合タンパク質に関し、前記アンキリン反復ドメインは、配列番号12〜25からなる群から選択されるアミノ酸配列および配列番号12〜25の9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含むアンキリン反復モジュールを含む。
【0085】
好ましくは、そのような組換え結合タンパク質は少なくとも、配列番号12〜25からなる群から選択されるアミノ酸配列および配列番号12〜25の9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含むアンキリン反復モジュールを含み、その9個までのアミノ酸置換のうち、6個まで、好ましくは5個まで、より好ましくは4個まで、より好ましくは3個まで、より好ましくは2個まで、最も好ましくは1個までのアミノ酸置換が配列番号12〜25の1、3、4、6、14および/または15番目に位置する。
【0086】
好ましくは、そのような前記アンキリン反復ドメインのアンキリン反復モジュールは、配列番号12、15、19、21および24からなる群から選択され、さらに好ましくは配列番号19および21からなる群から選択される。
【0087】
さらに好ましくは、そのような前記アンキリン反復ドメインのアンキリン反復モジュールは、配列番号12、13、14、15、18、19、20、21、および22からなる群から選択され、さらに好ましくは配列番号12、15、18、19、20、21および24からなる群から選択され、より好ましくは18、19、20、および21からなる群から選択される。
【0088】
好ましくは、配列番号12〜25の反復モジュールの8個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられており、さらに好ましくは7個までのアミノ酸、さらに好ましくは6個までのアミノ酸、さらに好ましくは5個までのアミノ酸、より好ましくは4個までのアミノ酸、さらに好ましくは3個までのアミノ酸、さらに好ましくは2個までのアミノ酸、最も好ましくは1個までのアミノ酸が置き換えられている。
【0089】
さらなる態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列KDRYGDTPLHLAADIGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号18)の反復モジュールおよび配列番号18に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列からなり、ここで、
1番目のKはQ、H、N、I、T、Y、V、F、D、R、LまたはSと交換されていてもよく、好ましくはQ、H、N、I、T、Y、VまたはF、また好ましくはQ、H、I、T、Y、V、最も好ましくはQまたはHと交換されていてもよく、
3番目のRはA、T、K、H、N、Y、F、SまたはDと交換されていてもよく、好ましくはA、T、K、HまたはN、最も好ましくはAと交換されていてもよく、
4番目のYはF、W、R、L、SまたはTと交換されていてもよく、好ましくはFまたはWと交換されていてもよく、
6番目のDはL、A、N、E、S、Tと交換されていてもよく、好ましくはLまたはAと交換されていてもよく、
14番目のDはS、N、M、T、Fと交換されていてもよく、好ましくはSまたはNと交換されていてもよく、
15番目のIはY、A、N、T、R、V、K、D、L、Sと交換されていてもよく、好ましくはY、A、N、T、RまたはV、最も好ましくはYまたはAと交換されていてもよく、および
19番目のEはKと交換されていても良い。
【0090】
好ましい組換え結合タンパク質において、HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列KDRYGDTPLHLAADIGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号18)の反復モジュールおよび配列番号18に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のKはQ、H、I、Vと交換されていてもよく、
3番目のRはA、TまたはNと交換されていてもよく、好ましくはAに交換されていてもよく、
4番目のYはFまたはWと交換されていてもよく
6番目のDはNと交換されていてもよく、
14番目のDはSと交換されていてもよく、
15番目のIはYまたはAと交換されていてもよく、および
19番目のEはKと交換されていてもよい。
【0091】
さらなる態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列EDYFGNTPLHLAASYGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号19)の反復モジュールおよび配列番号19に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のEはD、H、N、F、A、L、Q、Iと交換されていてもよく、好ましくはD、H、N、最も好ましくはDまたはHと交換されていてもよく、
3番目のYはW、S、H、V、F、AまたはDと交換されていてもよく、好ましくはW、S、H、V、AまたはF、最も好ましくはWまたはSと交換されていてもよく、
4番目のFはY、AまたはWと交換されていてもよく、好ましくはYまたはAと交換されていてもよく、
6番目のNはD、H、IまたはMと交換されていてもよく、好ましくはDまたはH、最も好ましくはDと交換されていてもよく、
14番目のSはNまたはHと交換されていてもよく、および
15番目のYはM、W、L、T、V、S、A、IまたはNと交換されていてもよく、好ましくはM、W、L、T、AまたはV、また好ましくはM、AまたはW、最も好ましくはAと交換されていてもよい。
【0092】
好ましい組換え結合タンパク質において、HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列EDYFGNTPLHLAASYGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号19)の反復モジュールおよび配列番号19に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のEはD、F、A、またはLと交換されていてもよく、最も好ましくはDまたはAと交換されていてもよく、
3番目のYはW、S、またはVと交換されていてもよく、
4番目のFはYと交換されていてもよく、
6番目のNはDと交換されていてもよく、および
15番目のYはM、L、S、またはAと交換されていてもよく、好ましくはM、AまたはL、最も好ましくはAまたはLと交換されていてもよい。
【0093】
前記アンキリン反復ドメインが配列番号18の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号19の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質が好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号19の前記アンキリン反復モジュールは配列番号18の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#51のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号19の前記アンキリン反復モジュールは配列番号18の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0094】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列KDDYGNTPLHLAANTGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号20)の反復モジュールおよび配列番号20に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のKはM、I、D、L、Q、V、R、TまたはHと交換されていてもよく、好ましくはM、IまたはD、最も好ましくはIまたはDと交換されていてもよく、
3番目のDはH、Y、T、WまたはFと交換されていてもよく、好ましくはHまたはYと交換されていてもよく、
4番目のYはS、N、A、G、FまたはRと交換されていてもよく、好ましくはS、N、AまたはG、最も好ましくはSと交換されていてもよく、
6番目のNはS、T、LまたはYと交換されていてもよく、好ましくはSと交換されていてもよく、
14番目のNはL、F、MまたはIと交換されていてもよく、好ましくはLまたはIと交換されていてもよく、
15番目のTはS、W、V、E、FまたはAと交換されていてもよく、好ましくはSと交換されていてもよく、
17番目のHはRと交換されていてもよく、および
19番目のEはKと交換されていてもよい。
【0095】
好ましい組換え結合タンパク質においてHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインは、アンキリン反復配列KDDYGNTPLHLAANTGHLEIVEVLLKAGADVNA(配列番号20)の反復モジュールおよび配列番号20に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のKは、M、D、L、Q、またはVと交換されていてもよく、
3番目のDは、YまたはTと交換されていてもよく、
4番目のYは、AまたはNと交換されていてもよく、
15番目のTは、Sと交換されていてもよく、
17番目のHは、Rと交換されていてもよく、および
19番目のEは、Kと交換されていてもよい。
【0096】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号19の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号20の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で配列番号20の前記アンキリン反復モジュールは配列番号19の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#51のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号20の前記アンキリン反復モジュールは配列番号19の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0097】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号18の前記アンキリン反復モジュール、配列番号19の前記アンキリン反復モジュール、および配列番号20の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号19の前記アンキリン反復モジュールは配列番号18の前記アンキリン反復モジュールに直接続き、配列番号20の前記アンキリン反復モジュールは配列番号19の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#51のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号20の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号18の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている配列番号19の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0098】
さらに別の態様において本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列HDYSGFTPLHLAAYYGHLEIVEVLLKHGADVNA(配列番号12)の反復モジュールおよび配列番号12に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のHはT、S、N、Q、I、K、F、YまたはVと交換されていてもよく、好ましくはT、S、N、QまたはI、最も好ましくはTまたはSと交換されていてもよく、
3番目のYはR、N、D、M、W、E、A、QまたはLと交換されていてもよく、好ましくはR、NまたはD、最も好ましくはRまたはNと交換されていてもよく、
4番目のSはN、TまたはWと交換されていてもよく、好ましくはNまたはTと交換されていてもよく、
6番目のFはIと交換されていてもよく、
14番目のYはFと交換されていてもよく、
15番目のYはWまたはHと交換されていてもよく、および
20番目のIはVまたはLと交換されていてもよい。
【0099】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインは配列FDDWGHTPLHLAARYGHLEIVEVLLKYGADVNA(配列番号13)のC末端キャッピングモジュールおよび配列番号13に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
1番目のFはT、H、L、D、Y、KまたはEと交換されていてもよく、好ましくはT、H、LまたはD、最も好ましくはTまたはHと交換されていてもよく、
3番目のDはR、K、A、N、Y、S、L、TまたはFと交換されていてもよく、好ましくはR、K、AまたはN、最も好ましくはA、RまたはKと交換されていてもよく、
4番目のWはF、YまたはRと交換されていてもよく、好ましくはFと交換されていてもよく、
6番目のHはL、I、M、NまたはKと交換されていてもよく、好ましくはLまたはIと交換されていてもよく、
14番目のRはH、Y、S、F、A、NまたはIと交換されていてもよく、好ましくはH、YまたはS、最も好ましくはHと交換されていてもよく、および
15番目のYはF、L、T、KまたはRと交換されていてもよく、好ましくはF、LまたはT、最も好ましくはFと交換されていてもよい。
【0100】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号12の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号13の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号13の前記アンキリン反復モジュールは配列番号12の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#33のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号13の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号12の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0101】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインは配列KYEDGLTPLHLAAFYGHLEIVEVLLRHGADVNA(配列番号15)のC末端キャッピングモジュールおよび配列番号15に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
13番目のAはVと交換されていてもよく、および
26番目のRはKと交換されていてもよい。
【0102】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインは配列TDAWGHTPLHLAAYLGHLEIVEVLLKYGADVNA(配列番号16)のC末端キャッピングモジュールおよび配列番号16に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで、
8番目のPはTと交換されていてもよく、
12番目のAはTと交換されていてもよく、
14番目のYはS、HまたはAと交換されていてもよく、好ましくはSまたはHと交換されていてもよく、
15番目のLはY、NまたはSと交換されていてもよく、好ましくはYまたはNと交換されていてもよく、および
33番目のAはTと交換されていてもよい。
【0103】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号15の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号16の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインにおいて、配列番号16の前記アンキリン反復モジュールは配列番号15の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#41のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号16の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号15の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0104】
さらに別の態様において本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列HDTWGLTPLHLAAFHGHQEIVEVLLKHGADVNA(配列番号21)の反復モジュールおよび配列番号21に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含む。
【0105】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列QDFYGKTPLHLAALRGHLEIVEVLLKYGADVNA(配列番号22)の反復モジュールおよび配列番号22に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含む。
【0106】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号21の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号22の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号22の前記アンキリン反復モジュールは配列番号21の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#60のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号22の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号21の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0107】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列HDYLGLTPLHLAASDGHLEIVEVLLKHGADVNA(配列番号23)の反復モジュールおよび配列番号23に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで
1番目のHはN、L、K、R、F、QまたはDと交換されていてもよく、好ましくはN、LまたはK、最も好ましくはNと交換されていてもよく、
3番目のYはF、Q、T、R、N、SまたはDと交換されていてもよく、好ましくはF、QまたはT、最も好ましくはFまたはQと交換されていてもよく、
4番目のLはV、T、Q、Y、DまたはFと交換されていてもよく、好ましくはVまたはTと交換されていてもよく、
6番目のLはDと交換されていてもよく、
14番目のSはA、NまたはFと交換されていてもよく、好ましくはAまたはNと交換されていてもよく、および
15番目のDはI、T、S、R、A、YまたはMと交換されていてもよく、好ましくはI、T、SまたはR、最も好ましくはIまたはTと交換されていてもよい。
【0108】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列YDYNGLTPLHLAANNGHLEIVEVLLKYGADVNA(配列番号24)の反復モジュールおよび配列番号24に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで
1番目のYはS、I、T、Q、E、M、K、DまたはVと交換されていてもよく、好ましくはS、IまたはT、最も好ましくはSまたはIと交換されていてもよく、
3番目のYはA、F、V、M、W、T、RまたはQと交換されていてもよく、好ましくはA、F、VまたはM、最も好ましくはAまたはVと交換されていてもよく、
4番目のNはY、F、TまたはWと交換されていてもよく、好ましくはYと交換されていてもよく、
6番目のLはF、H、Y、NまたはWと交換されていてもよく、好ましくはF、H、YまたはN、最も好ましくはFまたはHと交換されていてもよく、
10番目のHはYと交換されていてもよく、
12番目のAはTまたはVと交換されていてもよく、
14番目のNはSと交換されていてもよく、
15番目のNはV、MまたはTと交換されていてもよく、好ましくはVと交換されていてもよく、および
20番目のIはVまたはLと交換されていてもよい。
【0109】
さらに別の態様では、本発明は組換え結合タンパク質に関し、ここでHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインはアンキリン反復配列FDVAGYTPLHLAAYFGHLEIVEVLLKYGADVNA(配列番号25)の反復モジュールおよび配列番号25に含まれている9個までのアミノ酸が任意のアミノ酸に置き換えられている配列を含み、ここで
1番目のFはI、M、T、D、Y、Q、E、H、AまたはSと交換されていてもよく、好ましくはI、M、T、D、YまたはQ、また好ましくはI、T、D、またはY、最も好ましくはIまたはYと交換されていてもよく、
3番目のVはI、H、S、A、D、またはWと交換されていてもよく、好ましくはI、HまたはS、最も好ましくはIまたはSと交換されていてもよく、
4番目のAはF、Y、V、M、N、L、T、HまたはIと交換されていてもよく、好ましくはF、Y、VまたはM、最も好ましくはFまたはYと交換されていてもよく、
6番目のYはF、H、T、W、M、N、QまたはSと交換されていてもよく、好ましくはF、H、TまたはW、最も好ましくはFまたはTと交換されていてもよく、
14番目のYはH、M、L、N、I、R、WまたはTと交換されていてもよく、好ましくはH、L、N、I、RまたはT、最も好ましくはHまたはLと交換されていてもよく、および
15番目のFはY、H、M、T、V、L、NまたはIと交換されていてもよく、好ましくはY、H、TまたはV、最も好ましくはTまたはVと交換されていてもよい。
【0110】
前記アンキリン反復ドメインが配列番号23の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号24の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質が好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号24の前記アンキリン反復モジュールは配列番号23の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#57のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号24の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号23の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0111】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号24の前記アンキリン反復モジュールおよび配列番号25の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号25の前記アンキリン反復モジュールは配列番号24の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#57のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号25の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号24の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0112】
また、前記アンキリン反復ドメインが配列番号23の前記アンキリン反復モジュール、配列番号24の前記アンキリン反復モジュール、および配列番号25の前記アンキリン反復モジュールを含む組換え結合タンパク質も好ましい。好ましくは、前記アンキリン反復ドメインの中で、配列番号24の前記アンキリン反復モジュールは配列番号23の前記アンキリン反復モジュールに直接続き、配列番号25の前記アンキリン反復モジュールは配列番号24の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。例えば、DARPin#57のアンキリン反復ドメインにおいて、配列番号25の前記アンキリン反復モジュールは、配列番号23の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている配列番号24の前記アンキリン反復モジュールに直接続いている。
【0113】
N末端またはC末端アンキリンキャッピング反復をそれぞれ含んでいるN末端またはC末端アンキリンキャッピングモジュールがさらに好ましく、ここで前記キャッピング反復中に存在する1つ以上のアミノ酸残基は、対応するアンキリンキャッピング単位またはアンキリン反復単位を整列させたときに相当する位置に見られるアミノ酸残基に置き換えられている。
【0114】
アミノ酸置換は、最も多く天然に存在する20種類のアミノ酸のいずれによる置換であってもよく、好ましくはA、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、WおよびYからなる群より選択されるアミノ酸によって置き換えられ;およびより好ましくはA、D、E、H、I、K、L、Q、R、S、T、V、およびYからなる群より選択されるアミノ酸によって置き換えられる。また好ましくは、アミノ酸置換は相同のアミノ酸によるものである。つまり、アミノ酸は類似の生物物理学的特性をもつ側鎖を有するアミノ酸によって置き換えられる。例えば、負に帯電しているアミノ酸Dは負に帯電しているアミノ酸Eで置換することができ、またはLなどの疎水性のアミノ酸はA、IまたはVで置換することができる。相同なアミノ酸によるアミノ酸置換は当業者によく知られている。
【0115】
また、配列番号4〜8に基づく前述のC末端キャッピングモジュールのいずれかの、27番目および28番目の位置のAのアミノ酸を含んでいるC末端アンキリンキャッピングモジュールも好ましい。
【0116】
また、配列番号4〜8に基づく前述のC末端キャッピングモジュールのいずれかの、1〜26番目または1〜27番目の位置のアミノ酸を含んでいるC末端キャッピングモジュールも好ましい。
【0117】
配列番号1〜3の1番目のGおよび/または2番目のSアミノ酸は、その特性に何ら明白な影響を及ぼすことなく、N末端アンキリンキャッピングモジュールから除去することができる。これら2個のアミノ酸は、アンキリン反復ドメインを別のアミノ酸およびタンパク質と連結するためのリンカーとして役立つ。本発明はまた、1番目のGおよび/または2番目のSが除去されているN末端アンキリンキャッピングモジュールを含んでいるそのようなアンキリン反復ドメインも含む。当然のことながら、本発明で定義したアンキリン反復ドメイン中のアミノ酸の位置(例えば「33番目」)は状況に応じて、例えば1個のアミノ酸が欠失している場合には「33番目」は「32番目」に、または、2つのアミノ酸が欠失している場合には「33番目」は「31番目」に番号が変わる。
【0118】
本発明のアンキリン反復ドメインのアンキリンキャッピングモジュールを、当業者に知られているアミノ酸配列の整列、突然変異生成および遺伝子合成などの技術を組み合わせることによってアンキリンキャッピングモジュールと交換することができる。例えば、(i)配列番号8の配列と整列させることで、配列番号33のC末端キャッピング反復(すなわち132〜159番目の配列)を決定すること、(ii)決定した配列番号33のC末端キャッピング反復の配列を、配列番号8の配列で置換すること、(iii)交換したC末端キャッピングモジュールをコードしている反復ドメインをコードしている遺伝子を生成すること、(iv)改変した反復ドメインを大腸菌の細胞質内で発現させること、および(v)改変した反復ドメインを標準的な手段によって精製することによって、配列番号33のC末端キャッピング反復を配列番号8のC末端キャッピング反復と置換することができる。別の例としては、(i)配列番号2の配列と整列させることで、配列番号33のN末端キャッピング反復(すなわち1〜32番目の配列)を決定すること、(ii)決定した配列番号33のN末端キャッピング反復の配列を、配列番号2の配列で置換すること、(iii)交換したN末端キャッピングモジュールをコードしている反復ドメインをコードしている遺伝子を生成すること、(iv)改変した反復ドメインを大腸菌の細胞質内で発現させること、および(v)改変した反復ドメインを標準的な手段によって精製することによって、配列番号33のN末端キャッピング反復を配列番号2のN末端キャッピング反復と置換することができる。
【0119】
さらに、本発明のアンキリン反復ドメインを、N末端アンキリンキャッピングモジュール(例えば配列番号2のN末端キャッピング反復)、その後に1つ以上の反復モジュール(例えば配列番号33の33〜131番目のアミノ酸残基を含んでいる3つのアンキリン反復モジュール)さらにその後にC末端キャッピングモジュール(例えば配列番号8のC末端キャッピング反復)を配置することで、遺伝子合成によって遺伝的に構築することができる。その後、遺伝的に構築した反復ドメイン遺伝子を本明細書に記載したように大腸菌内で発現させることができる。
【0120】
C、MまたはNのアミノ酸を含まないアミノ酸配列を有する組換え結合タンパク質、反復ドメイン、反復モジュール、N末端キャッピングモジュールまたはC末端キャッピングモジュールがさらに好ましい。
【0121】
D、E、またはNの次にGが続くアミノ酸を含まないアミノ酸配列を有する組換え結合タンパク質、反復ドメイン、反復モジュール、N末端キャッピングモジュールまたはC末端キャッピングモジュールがさらに好ましい。
【0122】
そのようなN末端またはC末端キャッピングモジュールのいずれかを含んでいる組換え結合タンパク質または反復ドメインがさらに好ましい。
【0123】
本発明によるアンキリン反復ドメインを含んでいる組換え結合タンパク質のさらに好ましい態様では、前記反復ドメインのN末端キャッピングモジュールに含まれている1つ以上のアミノ酸残基が、N末端キャッピング単位を整列させた場合に対応する位置に見られるアミノ酸残基で交換されている。好ましくは、30%までのアミノ酸残基が交換されており、より好ましくは20%まで、一層好ましくは10%までのアミノ酸残基が交換されている。そのようなN末端キャッピング単位が天然に存在するN末端キャッピング単位であることが最も好ましい。
【0124】
本発明によるアンキリン反復ドメインを含んでいる組換え結合タンパク質のさらに好ましい態様では、前記反復ドメインのC末端キャッピングモジュールに含まれている1つ以上のアミノ酸残基が、C末端キャッピング単位を整列させた場合に対応する位置に見られるアミノ酸残基で交換されている。好ましくは30%までのアミノ酸残基が交換されており、より好ましくは20%まで、一層好ましくは10%までのアミノ酸残基が交換されている。そのようなC末端キャッピング単位が天然に存在するC末端キャッピング単位であることが最も好ましい。
【0125】
さらに別の特定の態様では、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%までのアミノ酸残基が、反復単位、N末端キャッピング単位、またはC末端キャッピング単位の対応する位置に見られないアミノ酸で交換されている。
【0126】
「共通配列」という用語は、複数の反復単位を構造によっておよび/または配列によって整列することで得られるアミノ酸配列を指す。構造によっておよび/または配列によって整列させた2つ以上の反復単位を用いて、また、整列中にギャップを入れることを許容することで、各位置で最も頻度の高いアミノ酸残基を決定することが可能になる。共通配列とは、各位置で最も出現頻度の高いアミノ酸を含む配列である。同じ位置に平均より高い頻度で2個以上のアミノ酸が現れる場合には、共通配列はそれらアミノ酸の小集団を含む場合がある。前記2つ以上の反復単位は、単一の反復タンパク質に含まれる複数の反復単位から得られるものであっても、2つ以上の異なる反復タンパク質から得られるものであってもよい。
【0127】
共通配列およびそれらの決定方法は当業者によく知られている。
【0128】
「共通アミノ酸残基」とは、共通配列の特定に位置に見られるアミノ酸である。前記2つ以上の反復単位中に同様の確率で2個以上、例えば3、4または5個のアミノ酸残基が見られる場合には、最も高い頻度で見られるアミノ酸を、または前記2個以上のアミノ酸残基の組み合わせを共通アミノ酸とすることができる。
【0129】
天然に存在しないキャッピングモジュール、反復モジュール、結合タンパク質または結合ドメインがさらに好ましい。
【0130】
「天然に存在しない」という用語は、合成のものであることまたは天然に由来しないことを意味し、より具体的には、この用語は、人工のものであることを意味する。「天然に存在しない結合タンパク質」または「天然に存在しない結合ドメイン」という用語は、前記結合タンパク質または前記結合ドメインが合成されたもの(すなわちアミノ酸を使った化学合成によって生産されたもの)または組換えられたものであり、天然に由来しないことを意味する。「天然に存在しない結合タンパク質」または「天然に存在しない結合ドメイン」はそれぞれ、それに応じて設計した核酸を発現させることで得られる人工のタンパク質またはドメインである。真核細胞または原核細胞の中で発現させるか、細胞を使わないインビトロの発現系を用いて発現させることが好ましい。この用語はさらに、前記結合タンパク質または前記結合ドメインの配列が、配列データベース、例えばジェンバンク、EMBLバンクまたはスイスプロットに非人為的な配列として登録されていないことも意味している。これらのデータベースおよび他の同様の配列データベースは当業者によく知られている。
【0131】
特定の一態様において本発明は、HGFに特異的に結合するアンキリン反復ドメインを含んでおり、さらに血管内皮成長因子A(VEGF−A)に特異的に結合するアンキリン反復ドメインを含んでいる組換え結合タンパク質に関する。HGFに対する特異性を有するアンキリン反復ドメインの例は本明細書に記載しており、VEGF−Aに対する特異性を有するアンキリン反復ドメインの例は国際公開第2010/060748号または国際公開第2011/135067号に記載されている。また好ましくは、そのような組換え結合タンパク質は、ヒト血清アルブミンに対する特異性を有するアンキリン反復ドメインを1つ以上、好ましくは1つまたは2つ含んでいる。ヒト血清アルブミンに対する特異性を有するアンキリン反復ドメインの例は国際公開第2012/069654号に記載されている。このようなヒト血清アルブミン、VEGF−A、またはHGFに対する特異性を有する反復ドメイン同士を当業者に知られている方法によって、ポリペプチドリンカー(例えば配列番号10または11)を使った遺伝的な手段で連結させることができる。
【0132】
別の好ましい態様は、HGFに対する結合特異性を有し、HGFとの結合に関与する内部反復モジュールを1つ、2つ、3つまたはそれ以上含んでいるアンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質である。好ましくは、そのようなアンキリン反復ドメインはN末端キャッピングモジュール、2〜4個の内部反復モジュール、およびC末端キャッピングモジュールを含む。好ましくは、前記キャッピングモジュールはキャッピング反復である。また好ましくは、前記キャッピングモジュールはHGFとの結合に関与する。
【0133】
HGFに対する結合特異性を有する前記アンキリン反復ドメインを2つ以上含んでいる組換え結合タンパク質がさらに好ましい。前記結合タンパク質は、前記反復ドメインを2つまたは3つ含んでいることが好ましい。前記2つ以上反復ドメインは同じまたは異なるアミノ酸配列を有する。
【0134】
本発明によるアンキリン反復ドメインを含んでいる組換え結合タンパク質のさらに好ましい態様では、前記アンキリン反復ドメインの反復モジュールに含まれている1つ以上のアミノ酸残基が、反復単位を整列させた時に対応する位置に見られるアミノ酸残基で交換されている。好ましくは30%までのアミノ酸残基が交換されており、より好ましくは20%まで、一層好ましくは10%までのアミノ酸残基が交換されている。そのような反復単位が天然に存在する反復単位であることが最も好ましい。
【0135】
その上さらに別の特定の態様では、30%までのアミノ酸残基、より好ましくは20%まで、一層好ましくは10%までのアミノ酸残基が、反復単位の対応する位置に見られないアミノ酸で交換されている。
【0136】
さらなる態様では、本明細書に記載の組換えHGF結合タンパク質またはドメインをいずれも、1つ以上の付加的な部分、例えば、異なる標的に結合して二重特異性結合剤を作り出す部分、生理活性化合物、標識部分(例えばフルオレセインなどの蛍光標識または放射性追跡子)、タンパク質の精製を促進する部分(例えばヒスタグまたはストレプタグなどの小さいペプチドタグ)、治療効果を改善するためのエフェクター機能をもたらす部分(例えば抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用をもたらすための抗体のFc部分、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(ETA)などの有毒なタンパク質部分またはメイタンシノイドもしくはDNAアルキル化剤などの低分子毒物)または薬物動態を向上させる部分などに共有結合させることができる。薬物動態の向上は、認知されている治療の必要性に応じて評価することができる。可能であれば、投与後にタンパク質が利用可能な状態で血清中に維持される時間を長くすることで、生物学的利用能が高まることおよび/または投与間隔が長くなることが望まれることが多い。時には、タンパク質の血清濃度の経時的な持続性を改善する(例えば、タンパク質の血清濃度について、投与直後の濃度と次の投与直前の濃度との差を小さくする)ことが望まれる。血中からのタンパク質の排出を遅くする傾向のある部分としては、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、糖類(例えばシアル酸)、耐用性の高いタンパク質部分(例えばFc断片または血清アルブミン)、および結合ドメインまたは大量の血清タンパク質、例えば抗体のFc断片もしくは血清アルブミンに対する特異性および親和性を有するペプチドが挙げられる。血清アルブミンに対して親和性を有するそのような結合ドメインの例が国際公開第2012/069654号に挙げられている。本発明の組換え結合タンパク質を、哺乳動物中での(例えばマウス、ラット、またはヒトでの)ポリペプチドの排出速度を、未改変ポリペプチドの3分の1未満に低下させる部分と結合させてもよい。
【0137】
さらなる態様では、本発明は特定の組換え結合タンパク質、特定のアンキリン反復ドメイン、特定のアンキリン反復モジュール、および特定のキャッピングモジュールをコードする核酸分子に関する。さらに、前記核酸分子を含むベクターについても検討する。
【0138】
さらに、1つ以上の前述の組換え結合タンパク質、特に反復ドメインを含む結合タンパク質を含んでいる医薬組成物、または特定の結合タンパク質をコードしている核酸分子、および必要に応じて薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤についても検討する。薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤は当業者に知られており、詳細は後述する。さらには、前述の組換え結合タンパク質、具体的には反復ドメインを含む結合タンパク質を1つ以上含んでいる診断用組成物についても検討する。
【0139】
医薬製剤は、前述の組換え結合タンパク質、および薬学上許容可能な担体、賦形剤または安定剤(例えば、レミントンの薬学、第16版、オソルA.編[1980]に記載の)を含む。当業者に知られている好適な担体、賦形剤または安定剤には、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス液、固定油、オレイン酸エチル、生理食塩水に溶解した5%デキストロース、等張性や化学的な安定性を高める物質、緩衝剤および防腐剤がある。他の好適な担体としては、その組成物、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸およびアミノ酸共重合体の投与を受けている個人に有害な抗体をその担体自体が産生しない、いずれもの担体が含まれる。医薬組成物は抗癌剤または抗血管形成剤などの追加の活性薬剤を含む混合製剤であってもよい。
【0140】
インビボ投与に用いられる製剤は、無菌的すなわち滅菌されたものでなくてはならない。このことは、無菌的な濾過膜を介して濾過することで容易に達成される。
【0141】
医薬製剤は、当業者が知り得るいずれの好適な方法によっても投与することができる。
【0142】
さらに、前述した医薬組成物はいずれも、障害の治療に関して検討される。
【0143】
本発明はさらに、治療方法を提供する。この方法は、それを必要とする患者に、治療上有効量の本発明の組換え結合タンパク質を投与することを含む。
【0144】
さらに、それを必要とする患者に有効量の前述した医薬組成物を投与することを含む、ヒトなどの哺乳動物における病理学的状態の治療方法についても検討する。
【0145】
そのような病理学的状態の例は、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺高血圧症、炎症性関節疾患、眼および網膜の疾患ならびに、
肺線維症、肝硬変およびその他の肝臓障害、強皮症、糸球体硬化症および心線維症を含む繊維性疾患などである。
さらに、抗HGF療法は、固形癌および血液腫瘍などの腫瘍性の病理学的状態にも有用である。例えば、骨への転移を含む、
神経膠腫、肉腫、骨肉腫、
多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、および上皮癌などにも有用である。
【0146】
本発明による組換え結合タンパク質またはアンキリン反復ドメインを、バクテリオファージ(国際公開第1990/002809号、同第2007/006665号)もしくは細菌細胞(国際公開第1993/010214号)表面での提示、リボソームディスプレー(国際公開第1998/048008号)、プラスミドを使ったディスプレー(国際公開第1993/008278号)もしくはRNA−反復タンパク質交雑構築物を使ったディスプレー(国際公開第2000/032823号)、または例えばタンパク質相補性検定(国際公開第1998/341120号)による細胞内での発現と選抜/スクリーニングなどの複数の方法によって得てもよく、および/またはそれをさらに発展させてもよい。このような方法は当業者には知られている。
【0147】
本発明による組換え結合タンパク質またはアンキリン反復ドメインの選抜/スクリーニングに用いられるアンキリン反復タンパク質のライブラリーを、当業者に知られている手法に従って得てもよい(国際公開第2002/020565号、ビンズH.K.ら、J.Mol.Biol.、332、489〜503、2003、およびビンズら、2004、前掲文献)。HGFに対する特異性を有するアンキリン反復ドメインを選抜するためのそのようなライブラリーの使用を実施例1に例示する。さらに、本発明のアンキリン反復ドメインは、本発明のアンキリン反復モジュールや適切なキャッピングモジュールまたはキャッピング反復(フォアーP.ら、FEBS letters 539、2〜6、2003)から、標準的な組換えDNA技術によって(例えば国際公開第2002/020565号、ビンズら、2003、前掲文献およびビンズら、2004、前掲文献)、規格単位(モジュール)を使った方式で組み立てることができる。
【0148】
本発明は実施例で説明した特定の態様に限定されるものではない。以降で説明する一般的な概要に従って、他の供給源を使用および処理してもよい。
【実施例】
【0149】
これ以後に開示する出発材料および試薬は全て当業者によく知られているものであり、市販されているか、またはよく知られている技術によって準備することができる。
【0150】
材料
化学物質はシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich、米国)から、オリゴヌクレオチドはミクロシンス(Microsynth、スイス)から購入した。特に明記しない限り、DNAポリメラーゼ、制限酵素および緩衝液はニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs、米国)またはフェルメンタス(Fermentas、リトアニア)より購入した。クローニングおよびタンパク質の産生には、大腸菌XL1−ブルー(ストラタジーン、米国)またはBL21(ノバジェン、米国)株を用いた。組換えヒトHGFはペプロテック(Peprotech、米国、製品番号100−39)から、組換えマウスHGFはR&Dシステムズ(米国、製品番号2207−HG/CF)から購入した。ビオチン化HGFは、標準的なビオチン化試薬と方法(ピアス、米国)により、ビオチン部分をタンパク質の一級アミンにカップリングさせることで化学的に得た。
【0151】
細胞株は、LGC/ATCC(フランス/米国;カタログ番号:A549−CCL−185、U87MG−HTB−14)から購入した。細胞用培地はインビトロジェン/ルビオ(Lubio、スイス)から、ウシ胎仔血清はプロモセル(Promocell、ドイツ;C−37350)から、細胞増殖検出用、細胞増殖ELISA用、BrdU用(発色)(カタログ番号1164722900)の検定試薬はロシュ(スイス)から購入した。P−c−Met検出用の検定試薬はR&Dシステムズ(ヒト リン酸HGF R/c−MET デュオセットIC;カタログ番号DYC2480−5;濃縮試薬希釈剤2;DXC002)から購入した。細胞検定用のヒトHGFはペプロテック(Peprotech、カタログ番号100−39)から購入し、10%のFBSを含む細胞用培地にて再構成した。
【0152】
分子生物学
特に明記しない限り、方法は記載されている手法に従って実施される(サンブルックJ.、フリッチE.F.およびマニアティスT.、分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)コールド・スプリング・ハーバー研究所、1989、ニューヨーク)。
【0153】
設計アンキリン反復タンパク質のライブラリー
設計アンキリン反復タンパク質のライブラリーを生成するための方法については記載がある(国際公開第2002/020565号;ビンズら、2003、前掲文献;ビンズら、2004、前掲文献)。そのような方法により、無作為化したアンキリン反復モジュールおよび/または無作為化したキャッピングモジュールを有する設計アンキリン反復タンパク質のライブラリーを構築することができる。従って、例えばそのようなライブラリーは、決まったN末端キャッピングモジュール(例えば配列番号2のN末端キャッピングモジュール)または配列番号29に従って無作為化したN末端キャッピングモジュール、配列番号26、27、または28の配列モチーフに従って無作為化した1つ以上の反復モジュール、および決まったC末端キャッピングモジュール(例えば配列番号8のC末端キャッピングモジュール)または配列番号30に従って無作為化したC末端キャッピングモジュールを用いて構築してもよい。そのようなライブラリーは、好ましくは、反復またはキャッピングモジュールの無作為な位置に、C、G、M、N(G残基の前のN)またはPアミノ酸を含まないように構築される。加えて、配列番号26、27、または28の配列モチーフに従って無作為化した反復モジュールの10番目および/または17番目の位置をさらに無作為化してもよく、配列番号29の配列モチーフに従って無作為化したN末端キャッピングモジュールの7番目および/または9番目の位置をさらに無作為化してもよく、および、配列番号30の配列モチーフに従って無作為化したC末端キャッピングモジュールの10、11および/または17番目の位置をさらに無作為化してもよい。
【0154】
さらに、そのようなライブラリーに含まれているそのような無作為化したモジュールには、アミノ酸の無作為な位置を有するポリペプチドループがさらに挿入されている場合がある。そのような挿入されているポリペプチドループの例としては、抗体の補体決定領域(CDR)ループのライブラリーまたはデノボで合成されたペプチドのライブラリーが挙げられる。例えば、そのようなループ挿入物は、ヒトリボヌクレアーゼLのN末端アンキリン反復ドメインの構造を手本として利用することで設計してもよい(タナカN.、ナカニシM、クサカベY、ゴトウY、キタデY、ナカムラK.T、EMBO J.23(30)、3929〜3938、2004)。2つのアンキリン反復の境界近くに存在するβターンに10個のアミノ酸が挿入されているこのアンキリン反復ドメインと同様、アンキリン反復タンパク質ライブラリーでも、アンキリン反復ドメインのβターンの1つ以上に、様々な長さの(例えば1〜20アミノ酸の)無作為化されたループ(定位置と無作為な位置を含む)が挿入される場合がある。
【0155】
そのようなアンキリン反復タンパク質ライブラリーのN末端キャッピングモジュールはいずれも、好ましくは、RILLAAモチーフ(例えば、配列番号29の21〜26番目にあるモチーフ)の代わりにRELLKAまたはRILKAAモチーフを有し、そのようなアンキリン反復タンパク質ライブラリーのC末端キャッピングモジュールはいずれも、好ましくは、KLNモチーフ(例えば、配列番号30の最後の3アミノ酸)の代わりにKAAまたはKLAモチーフを有する。
【0156】
そのようなアンキリン反復タンパク質ライブラリーは、標的と相互作用する既知のアンキリン反復ドメインの構造を手本として設計することができる。そのような構造の例としては、タンパク質データバンク(Protein Data Bank、PDB)でのそれらの固有の受入番号または識別コード(PDB−ID)で同定される、1WDY、3V31、3V30、3V2X、3V2O、3UXG、3TWQ−3TWX、1N11、1S70および2ZGDがある。
【0157】
N2CおよびN3C設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーなどの設計アンキリン反復タンパク質ライブラリーの例については記載がある(国際公開第2002/020565号;ビンズら、2003、前掲文献;ビンズら、2004、前掲文献)。N2CおよびN3Cの中の数字は、N末端キャッピングモジュールとC末端キャッピングモジュールとの間に存在する無作為化された反復モジュールの数を表している。
【0158】
反復単位およびモジュール内部の位置を定義するには、ビンズら、2004(前掲文献)に基づく命名法を、アンキリン反復モジュールとアンキリン反復単位の境界をアミノ酸位置1つ分ずらすという変更を加えて用いた。例えば、ビンズら、2004(前掲文献)のアンキリン反復モジュールの1番目は、本開示のアンキリン反復モジュールの2番目に対応し、その結果、ビンズら、2004(前掲文献)のアンキリン反復モジュールの33番目は、本開示では、次のアンキリン反復モジュールの1番目に対応する。
【0159】
DNAの配列は全て配列決定によって確認し、また、記載の全タンパク質について計算した分子量は、質量分析によって確認した。
【0160】
実施例1:HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含んでいる結合タンパク質の選抜
リボソームディスプレー(ヘインズJ.およびプルクスンA.、PNAS 94、4937〜42、1997)により、HGFに対する結合特異性を有する複数の設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)を、ビンズら、2004(前掲文献)に記載されているように、DARPinライブラリーから選抜した。選抜されたクローンの、特異的な(HGF)標的および非特異的な(MBP、大腸菌の麦芽糖結合タンパク質)標的への結合を、粗抽出物を使ったELISAにより評価した。ELISAの結果は、数百ものHGF特異的結合タンパク質が正常に選抜されたことを示している。例えば、配列番号33〜61のアンキリン反復ドメインは、HGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインを含んでいる選抜された結合タンパク質のアミノ酸配列である。HGFに対する結合特異性を有するそのようなアンキリン反復ドメイン由来の個別のアンキリン反復モジュールを、配列番号12〜25に示す。
【0161】
リボソームディスプレーによるHGF特異的アンキリン反復タンパク質の選抜
HGF特異的アンキリン反復タンパク質の選抜を、標的タンパク質としてのヒトおよび/またはマウスHGFと前述の設計アンキリン反復タンパク質のライブラリーを用い、確立されている手法(ザーンドC.、アムシュトゥッツP.およびプルクスンA.、Nat.Methods 4、69〜79、2007)を用いたリボソームディスプレー(ヘインズおよびプルクスン、前掲文献)によって行った。選抜の過程をそれぞれ1巡した後には、結合剤の濃縮に起因する収率に合わせて、逆転写(RT)−PCRのサイクル数を常に45回から25回に減らした。選抜の最初の4巡では、標準的なリボソームディスプレーによる選抜を行った。このとき、1巡目から4巡目にかけて標的濃度を下げ、かつ、洗浄の強度を上げることで、選択圧を高めていった(ビンズら、2004、前掲文献)。高親和性の抗HGF DARPinを濃縮するために、4巡目の標準的なリボソームディスプレー選抜(前記)から選抜されたものを、1回または2回の選抜強度の高い解離速度選抜(ザーンド、2007、前掲文献)に供した。それぞれの解離速度選抜の後、標準的な選抜過程の最後の一巡を実施して、解離速度によって選抜されてきた結合タンパク質を増幅および回収した。ヒトおよびマウスHGFに交差反応性を持つ選抜された結合剤の発現率を増やすために、ヒトHGFに関する解離速度選抜を1回実施した後、マウスHGFに関する選抜をさらに1回実施した。
【0162】
粗抽出物を使った受容体競合的ELISAで示される、HGFに特異的に結合するクローンの選抜
DARPinを発現している大腸菌の粗抽出物を使った標準的な手法による受容体競合的酵素結合免疫吸着検定(ELISA)で、HGFに特異的に結合する選抜したDARPinを個別に同定した。リボソームディスプレーで選抜したDARPinを、pQE30(キアゲン)発現ベクターにクローニングし、大腸菌XL1−ブルー株(ストラタジーン)に形質転換し、その後、1.2mlの成長培地(1%のグルコースと50μg/mlのアンピシリンを含有しているTB)を入れた96ウェルの深型プレート中、37℃で一晩生育させた(それぞれのクローンを1つのウェルに入れた)。新しい96ウェルの深型プレートに、50μlの一晩培養と、0.9mlの新しいLB培地(50μg/mlアンピシリン含有)を播種した。37℃で60〜90分間インキュベートした後、IPTG(最終濃度0.5mM)で発現を誘導し、これを3〜4時間継続した。細胞を回収し、50μlのB−PERII(ピアス)に再懸濁して、撹拌しながら室温で15分間インキュベートした。その後、950μlのPBSを加え、遠心分離して細胞残渣を取り除いた。溶解したクローン抽出物をそれぞれ、PBSTC(0.1%のツイーン20(登録商標)および0.25(重量体積)%のカゼインを添加したPBS、pH7.4)で50倍希釈し、1nMのビオチン化ヒトまたはマウスHGFとともに、ヒトまたはマウスc−Met−Fc融合体のいずれかが入った、プロテインGでコーティングしてあるマキシソープ(MaxiSorp)プレートのウェルにいれ、室温で10分間インキュベートした。PBS−T(0.1%のツイーン20(登録商標)を添加したPBS、pH7.4)でしっかりと洗浄した後、標準的なELISAの手順およびストレプトアビジンHRP複合体(11 089 153 001、ロシュ)を使ってプレートを展開し、その後、POD基質(ロシュ)で結合を検出した。呈色を405nmで測定した。このような細胞の粗抽出物を使ったELISAによって数百個のクローンをスクリーニングした結果、HGFに対する特異性を有する100を上回る種々のDARPinが明らかになった。ヒトHGFに特異的に結合する選抜したアンキリン反復ドメインのアミノ酸配列の例を、配列番号33〜61に示す。
【0163】
これらのHGFに対する結合特異性を有するアンキリン反復ドメインと、HGFに対する結合特異性をもたない陰性対照のDARPin(すなわちDARPin#28および#29)を、後述するように、単純なタンパク質の精製を促進するためのN末端ヒス−タグを提供するpQE(キアゲン、ドイツ)を基礎とする発現ベクターにクローニングした。例えば下記のDARPinをコードしている発現ベクターが構築された。
DARPin#33(配列番号33、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#34(配列番号34、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#35(配列番号35、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#36(配列番号36、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#37(配列番号37、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#38(配列番号38、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#39(配列番号39、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#40(配列番号40、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#41(配列番号41、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#42(配列番号42、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#43(配列番号43、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#44(配列番号44、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#45(配列番号45、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#46(配列番号46、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#47(配列番号47、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#48(配列番号48、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#49(配列番号49、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#50(配列番号50、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#51(配列番号51、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#52(配列番号52、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#53(配列番号53、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#54(配列番号54、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#55(配列番号55、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#56(配列番号56、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#57(配列番号57、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#58(配列番号58、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#59(配列番号59、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#60(配列番号60、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);
DARPin#61(配列番号61、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの);および
DARPin#62(配列番号62、そのN末端にヒス−タグ(配列番号9)を融合させたもの)。
【0164】
DARPinの高レベルかつ可溶性での発現
さらなる解析のために、上述のように細胞の粗抽出物を使ったELISAの結果、HGFに対する特異的結合を示した選抜されたクローンを、大腸菌のBL21またはXL1−ブルー細胞中で発現させ、そのヒスタグを利用して、標準的な手法によって精製した。静置一晩培養25ml(TB、1%グルコース、100mg/lのアンピシリン;37℃)を、500ml培養(同培地)に接種した。600nmの吸光度が1.0になった時点で、この培養をIPTG(0.5mM)で誘導し、37℃で4〜5時間インキュベートした。培養を遠心し、得られた沈殿物を40mlのTBS500(50mMのTris−HCl、500mMのNaCl、pH8)に再懸濁し、超音波処理した。溶解物を再度遠心し、得られた上清にグリセロール(最終濃度10体積%)とイミダゾール(最終濃度20mM)を加えた。タンパク質をニッケル−ニトリロ三酢酸カラム(カラム容積2.5ml)に負荷し、製造業者(キアゲン、ドイツ)の説明に従って精製した。あるいは、6×ヒス−タグを欠いたDARPinまたは選抜した反復ドメインは、標準的な樹脂と当業者に知られている手法による陰イオン交換クロマトグラフィーと、その後のサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。大腸菌の1リットル培養から最大200mgの高度に可溶化された、HGFに対する結合特異性を有するDARPinを、95%を超える純度で(SDS−15%PAGEで予測)精製することができる。このような精製したDARPinを以降の解析に使用する。
【0165】
実施例2:HGFに対する結合特異性を有するDARPinの表面プラズモン共鳴解析による解析
ヒトHGF分子をフローセル内に直接固定し、選抜した様々なDARPinとの相互作用を解析した。
【0166】
表面プラズモン共鳴(SPR)解析によるKdの決定
SPRはプロテオン装置(バイオラッド)を使用して測定し、また、測定は当業者に知られている標準的な手順に従って行った。泳動用緩衝液としては、0.005%のツイーン20(登録商標)含有のPBS(pH7.4)を使った。ヒトHGFをGLCチップ(バイオラッド)に、約5000レゾナンスユニット(RU)のレベルまで共有的に固定した。その後、段階希釈したDARPin(25、12.5、6.26、3.13および1.67nMの濃度)を含む泳動用緩衝液(0.005%のツイーン(登録商標)含有PBS)200μLを注入し(会合速度測定)、次いで泳動用緩衝液を一定の流速(100μl/分)で25分間流すことで(解離速度測定)、DARPinとHGFの相互作用を測定した。内部標準のスポットおよび参照注入(つまり泳動用緩衝液のみの注入)のシグナル(つまりレゾナンスユニット(RU)の値)を、DARPinを注入した後に得られたRUの追跡結果から差し引いた(二重参照)。会合速度と解離速度の測定から得られたSPRの追跡結果から、対応するDARPin−HGF間相互作用の会合速度と解離速度を決定することができる。
図1にDARPin#51のSPRの追跡結果を例示する。平衡解離定数(Kd)は当業者に知られている標準的な手順を用いて予測された会合速度と解離速度から算出した。選抜したDARPinのKd値は10pM〜20nMの範囲であることが分かった。例として、選抜したいくつかのDARPinのKd値を表1にまとめた。
【0167】
【表1】
【0168】
競合的SPR分析
本発明の結合タンパク質がアンキリン反復ドメインとHGFとの結合に競合するかどうか確認するため、第一のDARPinをヒトHGFに飽和するまで結合させ、続いて第二のDARPinを注入することにより競合的SPR解析を行った。第二のDARPinを注入した際にシグナルの増加が見られなかった場合、第一のDARPinと第二のDARPinはHGFとの結合に競合すると定義した。シグナルの増加が見られた場合、第一のDARPinと第二のDARPinはHGFとの結合に関して競合しないと定義した。HGFとの結合に競合する2つのDARPinおよびHGFとの結合に競合しない2つのDARPinの解析の例をそれぞれ
図2に示す。
【0169】
実施例3:HGFに対する結合特異性を有するDARPinによるHGF誘導性c−Metリン酸化の阻害
96ウェルプレートに完全培地(DMEM;10%FBS)を入れ、1ウェル当たり50,000個のA549細胞を播種した。24時間後、培地を無血清培地に取り替えた。細胞をさらに24時間インキュべートし、DARPinありおよびDARPinなしの条件で1nMのヒトHGFで刺激した。HGFおよびDARPinは細胞に加える前に室温で少なくとも30分間プレインキュべートした。細胞培養の条件で細胞を10分間刺激した。細胞上清を(指で軽くはじいて)除去し、細胞溶解緩衝液(RIPA;濃縮試薬希釈剤2;R&Dシステムズ)を加えることで、刺激を終了した。細胞溶解物におけるリン酸化c−Met(P−cMet)のレベルは、ヒトリン酸HGF R/c−METデュオセットIC(R&Dシステムズ)を製造業者による手順に従って使用して決定した。データは、グラフパッド・プリズムソフトウェア(グラフパッドソフトウェア社、カリフォルニア、米国)を使って解析した。リン酸化の阻害率(%)は、刺激していない対照から得られた光学濃度(OD)を阻害率100%と設定し、阻害剤なしの対照から得られた光学濃度(OD)を阻害率0%と設定して算出した。阻害アッセイでは、データを対数(阻害剤)対応答/変数勾配に当てはめた。
【0170】
例示的な結果を表3にまとめている。IC
50値は、前述のようにして得た滴定曲線から、当業者に知られている標準的な手順を使用して算出した。阻害率は上述のように算出した。DARPin#51およびDARPin#43に関する滴定曲線の例を
図3に示す。
【0171】
【表2】
【0172】
実施例4:HGFに対する結合特異性を有するDARPinによるU87細胞の増殖阻害
U87細胞を10%のFBS(プロモセル−サイトカイン−低濃度)を含むDMEM中、37℃、5%CO2条件で培養した。細胞を1:3の割合で週に二回分配した。96ウェルに1%のFBSを含むDMEMを100μl入れ、2500個の細胞を播種し、一晩インキュべートした。翌日、DARPin(10×最終濃度のものを10μl)を添加し、さらに5日間インキュべートした。4日目に、BrdU標識液を1ウェルあたり10μl添加した(10μl、1:1000希釈)。5日目に、製造業者の手順に従ってアッセイを行った。DARPinを1000nMから2nMの範囲で滴定した。本実験はグラフパッド・プリズムソフトウェアを使用して解析した。IC
50を得られた滴定曲線の非線形解析から算出した。
【0173】
例示的な結果を表4にまとめている。IC
50値を前述のようにして得た滴定曲線から、当業者に知られている標準的な手順を使用して算出した。DARPin#51およびDARPin#43に関する滴定曲線の例を
図4に示す。
【0174】
【表3】
【0175】
実施例5:HGFに対する結合特異性を有するDARPinの受容体競合アッセイによる解析
ヒトHGFとその受容体であるc−Metとの結合を抗HGF DARPinが阻害する効果を、受容体競合的ELISAを使用して決定した。c−Met(Fcキメラ;R&Dシステムズ、米国、358−MT−100/CF)を予めマイクロプレートに塗布しておいた。DARPinおよびHGFをPBSTC中で混合し、室温で0.5時間インキュべートした。これらの予めインキュべートしておいた混合物を、c−Metを塗布しておいたウェルに移した。DARPinによる阻害を受けなかったHGFは、固定しておいた受容体に結合した。結合しなかった物質を洗い流した後、HGF特異的なポリクローナル抗体(R&Dシステムズ、米国、AF−294−NA)をウェルに添加した。結合しなかった物質を洗い流した後、HGF特異的ポリクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ複合抗体(ノバス バイオロジカルス、米国、NB7357)をウェルに加えた。結合していない抗体−酵素試薬を洗浄して除去した後、基質溶液(ロシュ、スイス、11484281001)をウェルに加えた。HGF結合量に比例して呈色反応を示した。呈色反応を停止させ、色の濃度を405nmで測定した。本アッセイにおいて、実験に用いたDARPinは高いHGF阻害効果を示した。例示的な結果を表5にまとめている。一連のDARPinに関する滴定曲線の例を
図5に示す。IC
50値は、前述のようにして得た滴定曲線から、当業者に知られている標準的な手順を使用して算出した。
【0176】
【表4】
【0177】
実施例6:HGFに対する結合特異性を有するDARPinによるU87腫瘍成長の阻害
10
7個のU87−MG細胞をスイスヌードマウスの右脇腹に皮下注入した。腫瘍の平均サイズが126±51mm
3に達した25日後、マウスを1群あたり8匹ずつ、治療群に無作為に振り分け、治療を開始した。マウスに3日おきに合計7回、0.1mlの溶媒/PBSまたはPBSに溶解した様々な濃度のDARPin(0.11mg/kg、1.1mg/kgおよび11mg/kg用量)を静脈注入した(Q3D×7)。体重および腫瘍体積を週に二回監視した。この実験は治療開始から21日経過後に終了させた。例として
図6に、ペグ化DARPin#62による治療を開始してからの治療期間(日)に対する腫瘍体積をプロットしたものを示す。この腫瘍成長阻害実験で使用したDARPinは、N末端ヒス−タグ(配列番号9)、HGFに対する結合特異性を有する本発明のアンキリン反復ドメイン、GS−リンカー(配列番号10)、およびC末端Cys残基を含む。DARPinのタンパク質部分をヒス−タグを使用して標準的な手段で精製し、標準的なマレイミド化学反応を使用して40kDaのペグ(PEG)に結合させた。本発明のアンキリン反復ドメインの終末相半減期を延ばすその他のよく知られている手法(前述のペグ化以外)を使用して、このような腫瘍モデルにおけるこれらドメインのインビボ効力を試験することができる。