特許第6486913号(P6486913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6486913ヒトまたは動物の骨組織の切断および切断の計画
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486913
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】ヒトまたは動物の骨組織の切断および切断の計画
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20190311BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20190311BHJP
【FI】
   A61B17/56
   A61B34/10
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-522554(P2016-522554)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公表番号】特表2016-526423(P2016-526423A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014063793
(87)【国際公開番号】WO2015000823
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年6月13日
(31)【優先権主張番号】13174509.3
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516003115
【氏名又は名称】アドバンスト オステオトミー ツールズ − エーオーティー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カッタン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グリーセン, マチス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ, アルフレド
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519659(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/082459(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/215227(US,A1)
【文献】 中国実用新案第202554079(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
A61B 34/00 − 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)を切断するプロセスを計画するコンピュータ実施方法であって、
前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)の初期状態の初期データを取得することと、
前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)の目標状態の目標データを規定することと、
前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)を切り離すために前記初期データおよび前記目標データを使用して切断幾何形状を算出することと
を含み、
前記切断幾何形状は、前記切断幾何形状に沿って切り離された後に標状態において少なくとも1の自由度にて明瞭な態様で前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が再び組み合わせ可能なように形成される構造を含み、
前記骨組織の初期状態は目標状態とは異なっており、
前記切断幾何形状の構造は凸状楔形部分(4119)および凸状楔形部分(4119)に対応する凹状楔形部分(4219)を含み、
前記凸状楔形部分(4119)は、前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)の目標位置から少なくとも1つの自由度での変位が防止されるようにして、前記骨組織が目標位置にあるときに凹状楔形部分(4219)に配置される、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記切断幾何形状の構造は、前記切断幾何形状に沿って切り離された後に前記目標状態においてあらゆる自由度にて明瞭な態様で前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が再び組み合わせ可能なように形成される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記切断幾何形状の構造は、前記切断幾何形状に沿って切り離された後に前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が単一の目標状態のみに再び組み合わせ可能なように形成される、請求項1または2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記切断幾何形状の構造は、前記切断幾何形状に沿って切り離された後に前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が複数の段階的な明瞭な目標状態に再び組み合わせ可能なように形成される、請求項1または2に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記切断幾何形状の構造は、周期関数(526;527)を使用して算出され、また前記周期関数(526;527)に従って周期的に形成される、請求項4に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記切断幾何形状の構造は、凸状湾曲部分(411)および前記凸状湾曲部分(411)に対応する凹状湾曲部分(421)を含み、前記凸状湾曲部分(411)は、前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が前記目標状態にあるときに前記凹状湾曲部分(421)に配置される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記切断幾何形状の構造は、突出部(811、821;911、921;4114、4214;4126、4216;4127、4227;4128、4228)および前記突出部(811、821;911、921;4114、4214;4126、4216;4127、4227;4128、4228)に対応する凹み(812、822;912、922;4124、4224;4116、4226;4117、4217;4118、4218)を含み、前記突出部(811、821;911、921;4114、4214;4126、4216;4127、4227;4128、4228)は、前記骨組織(2;4;43;44;45;46;47;48;49;7;8;9)が前記目標状態にあるときに前記凹み(812、822;912、922;4124、4224;4116、4226;4117、4217;4118、4218)に配置される、請求項1ないしのいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記突出部はバー(911、921;4127、4227;4128、4228)を含み、前記凹みは、前記バー(911、921;4127、4227;4128、4228)に対応する溝(912、922;4117、4217;4118、4218)を含む、請求項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記突出部はピンの形状呈し、前記凹みは前記突出部に対応する穴を含む、請求項またはに記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
コンピュータにロードまたは実行されたときに、請求項1ないしのいずれか一項によるコンピュータ実施方法をンピュータに実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の骨組織を切断するプロセスを計画する方法、その方法を実施するコンピュータプログラム、およびヒトまたは動物の骨組織を切断するプロセスに関する。骨組織の初期状態のデータを得、切断幾何形状を設計し、骨組織が切断幾何形状に沿って切断され、骨組織は切り離された後に再び組み合わせられる方法は、再建手術等の多くの医療または手術用途に使用できる。
【背景技術】
【0002】
今日の手術においては、ヒトまたは動物の骨組織を複数の骨片へと分離し、骨片を1つずつ取り除き、再び骨片を組み合わせることが必要とされることが多い。例えば、再建手術の多くの用途では、骨を複数の骨片へと分離し、骨を目標形状または状態へと再形成するために適切な位置に複数の骨片を再び組み合わせることが必要である。このような再建手術用途の一例は、患者のオーバーバイトの矯正である。これにより、場合によっては、上顎を2つ以上の片へと分割し、目標位置で再び組み合わせる。目標位置では、骨の2つの部分が治癒プロセス中に成長するか、またはともに固定されて、それに従って骨が再形成される。このような用途において骨を分離または分割するために、適した切断工具が使用され、これにより骨に切断が施される。
【0003】
または、その他の手術用途では、例えば、骨に覆われた空間にアクセスするために一時的に骨を分割する必要がある。例えば、胸部内部にアクセスするために、例えば、心臓または肺にアクセスするために、多くの場合、胸骨を分割し、治療処置後は元の位置で再び組み合わせる。同様に、このような分割のためにも、骨を分離するために適切な骨切断工具が使用される。
【0004】
ヒトまたは動物の骨組織の分離を含む今日の手術で起こる問題は、従来の切断工具は通常不十分な精度を有するため、骨組織を再び組み合わせることにより悪影響または満足のいかない結果をもたらすことである。例えば、従来の手術用のこぎりは比較的大きな切り傷を生じさせるため、同等の多くの骨質を取り除く。さらに従来の切断工具は多くの場合、その切り傷付近の骨組織へ付帯的損傷を起こしてしまうが、これは可能であれば防止されるべきである。
【0005】
この関連において、ヒトおよび動物の骨組織の改善された正確な切断が可能な切断工具が開発されてきた。例えば、WO2011/035792A1はコンピュータ支援およびロボット誘導式のレーザ骨切りのみ医療デバイスについて記載している。このデバイスは、Er:YAGレーザ等のロボットアーム誘導式レーザを使用して、所定の骨切り線に沿って組織を光焼灼することによってヒトまたは動物の骨組織を切断する。このようなデバイスを用いることにより、骨またはその他の骨組織は同等の高い精度および同等の小さな付帯的損傷でもって切断可能である。
【0006】
しかし、前述の近代的な切断工具によって手術における改善された利用が可能ではあるものの、目標位置または形状へと再び組み合わせるために骨組織を切断することは依然として問題となり得る。特に、再び組み合わされた後に、骨組織の分離された部分は互いに対して少なくとも同等に若干ずれるか移動し得るため、再び組み合わせられた骨組織は目標位置にて正確に再形成されも再び配置されもしない。このようなずれまたは移動を防ぐための可能な方法は、ねじ、釘等の外部機械的手段により骨組織の分離された部分を目標位置に固定することであり得る。しかし、このような固定は同等に厄介かつ困難であり得る。また、骨組織の切り離された部分は、適切に目標位置で再び組み合わされるように適切に形成されないことが多いため、補助的な構造を使用しなければならない。
【0007】
したがって、意図する用途に適合した態様で骨組織の切り離された部分を再び組み合わせることが可能なようにヒトまたは動物の骨組織を切断することが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって規定されるような方法、独立請求項11の特徴によって規定されるようなコンピュータプログラム、および独立請求項12の特徴によって規定されるようなプロセスによって満たされる。好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【0009】
より詳細には、本発明の要点は以下である。ヒトまたは動物の骨組織を切断するプロセスを計画する方法は、骨組織の初期状態の初期データを取得することと、骨組織の目標状態の目標データを規定することと、骨組織を切り離すために初期データおよび目標データを使用して切断幾何形状を算出することとを含む。このことにより、切断幾何形状は、切断幾何形状に沿って切り離された後に目標状態において少なくとも1の自由度にて明瞭な態様で骨組織が再び組み合わせ可能なように形成される構造を含む。
【0010】
本発明による方法は、完全にまたは部分的にもコンピュータにより実施される方法であり得る。本発明との関係において用語「骨組織」は任意のヒトまたは動物の骨または骨状組織に関連し得る。詳細には、骨組織とは、下顎骨、上顎骨、胸骨、頭骨、軟骨等のような骨格骨を包含する。用語「骨組織の状態」は、骨組織の位置および/または形状に関連し得る。骨組織の初期状態は、矯正または適合されなければならない骨組織状態であり得る。このような場合、骨組織の初期状態は骨組織の目標状態とは異なる。骨組織の初期状態は、例えば体の内部等を開放するために一時的に変更されなければならない状態でもあり得る。したがって、初期状態は目標状態と同じであり得る。用語「初期データ」および「目標データ」は特に、骨組織の状態を規定する幾何学的データに関連し得る。この幾何学的データは適した座標系内で規定され得る。初期データは、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)等によって骨組織を測定し、また例えばデジタルデータのような測定情報を提供することによって取得できる。
【0011】
本発明に関連して使用される用語「自由度」は、骨組織の切り離された部分または骨片の互いに対する移動に関する。これは特に、任意の可能な方向における回転移動および/または横方向移動に関連し得る。本発明との関係において用語「明瞭な方法」は、目標状態における骨組織の少なくとも1の自由度にて逸脱できない再組み合わせに関する。より詳細には、これは1つまたは複数の同等に正確な目標位置に関連し、そこからの少なくとも前述の1の自由度における連続的または連続可変的な変更は除外される。これは、この用語によれば、骨組織は任意の所定の目標状態にのみ再組み合わせ可能であり、少なくとも1の自由度におけるそのいかなる連続的または一定しない逸脱も当然実現可能ではないことを意味する。このことによって特に、本発明による方法と、例えば意図する目標状態が多かれ少なかれ得られるまで、切断に沿って連続的に骨組織を切り離し再び組み合わせる任意の方法とを異ならしめることができる。
【0012】
骨の目標状態に従って切断幾何形状の構造を形成することによって、計画された切断は特定の機能とともに提供できる。すなわち、このような機能的切断は、切り離された骨部分の互いに対する可能な移動を幾何学的に規定し、制限できる。これに関して、機能的切断によって骨の目標位置への同等に正確な再配置が可能となり、また少なくとも1の自由度におけるそこからのいかなる移動も防ぐことができる。また、このような機能的切断によって、再び組み合わせ一緒に治癒した後により強力な接続が得ることができるように従来の切断に比べるとさらなる接触表面積を与えることができる。
【0013】
したがって、本発明による方法によってヒトまたは動物の骨組織の切断が可能になるとともに、意図した用途に従って骨組織の切り離された部分を再び組み合わせることが初めのうちに既に考慮され、実施される。これによって、追加の固定手段等を必須のものとして必要とすることなく、骨組織を目標位置に同等に正確にかつ安定的に再び組み合わせ得ることを保証できる。切り離された骨部分の手動または類似の位置づけおよび再組み合わせの不正確さは最小限にされるかまたはなくなりさえできる。
【0014】
好ましくは、切断幾何形状の構造は、骨組織が切断幾何形状に沿って切り離された後に、明瞭な態様であらゆる自由度にて目標状態に再組み合わせ可能であるように形成される。用語「あらゆる自由度」とは本文脈中、切り離された骨部分の互いに対する移動に関連する。これは特に、切り離された骨部分の互いから分離させるための任意の移動を含まず、切り離された骨部分が互いに対して位置決めするための移動のみを含む。このようにして、目標位置は切断それ自体の幾何形状によって正確に予め規定することができ、切り離された骨部分の互いに対する意図しないいかなる移動も防止され得る。また、外部手段による再組み合わせの追跡も防ぐことができる。
【0015】
好ましい一実施形態では、切断幾何形状の構造は、骨組織が切断幾何形状に沿って切り離された後に、ある単一の目標状態においてのみ再組み合わせ可能であるように形成される。
【0016】
好ましい別の実施形態では、切断幾何形状の構造は、骨組織が切断幾何形状に沿って切り離された後に、複数の段階的な明瞭な目標状態において再組み合わせ可能であるように形成される。これによって、切断幾何形状の構造は好ましくは、周期関数を使用して算出され、また周期関数に従って周期的に形成される。ここに、「周期関数」は、複雑な周期関数であってもよい。複雑な周期関数としては、たとえば、円関数等の正則関数に基づいて合成される関数等が考えられる。周期関数の例として、正弦関数等の関数、三角関数等がある。
【0017】
好ましくは、切断幾何形状の構造は、凸状湾曲部分および凸状湾曲部分に対応する凹状湾曲部分を含み、凸状湾曲部分は骨組織が目標状態にあるときに凹状湾曲部分に配置される。このような切断幾何形状では、切り離された骨部分のねじれ移動または回転が防止できるが、これに対して、いくつかの実施形態では、切断面に垂直な回転移動は依然として可能であり得る。
【0018】
好ましくは、切断幾何形状の構造は、凸状楔形部分および凸状楔形部分に対応する凹状楔形部分を含み、凸状楔形部分は骨組織が目標状態にあるときに凹状楔形部分に配置される。このことにより、楔形部分は、楔形部分の異なる側に対して非垂直な表面角度により規定できる。このような構造では切り離された骨部分の平行変位を防止できる。
【0019】
好ましくは、切断幾何形状の構造は突出部と突出部に対応する凹みとを有し、突出部は、骨組織が目標状態にあるときに凹みに配置される。したがって、突出部は好ましくはバーを有し、凹みはバーに対応する溝を有する。このような配置によって、切り離された骨部分の互いに対するブロッキングが可能となるが、平行または横方向の移動は依然として可能であり得る。複数のバーおよび対応する溝を提供することによって、バー間の距離は所望の変位距離を規定できる。
【0020】
さらに、突出部は好ましくはピンを含み、凹みは突出部に対応する穴を含む。このような構造によって、切断はプラグ状機能を備えることができる。特に、ピンを穴の内部に配置することによって、骨組織の切り離された部分は目標位置においてともに正確に嵌め込まれ得る。
【0021】
本発明のさらなる態様は、コンピュータにロードまたは実行されたときに、上述の方法をコンピュータに実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムに関する。このようなコンピュータプログラムによって、本発明による方法およびこれによる効果を効率的に実施することを可能にする
【0022】
本発明の別のさらなる態様は、ヒトまたは動物の骨組織を切断するプロセスに関する。プロセスは、骨組織の初期状態の初期データを取得することと、骨組織の目標状態の目標データを規定することと、骨組織を切り離すために初期データおよび目標データを使用して、切断幾何形状に沿って切り離された後に目標状態において少なくとも1の自由度にて明瞭な態様で骨組織が再び組み合わせ可能なように形成される構造を含む切断幾何形状を算出することと、切断幾何形状を骨組織に切り込むことと、切断幾何形状に沿って骨組織を分解することと、骨組織を目標状態へと再び組み合わせることとを含む。
【0023】
生体外プロセスであり得るプロセスは、上記に記述された本発明による方法を実施する。したがって、これはさらに上述のこの方法の効果および利点を提供する。その結果、本発明によるプロセスによってヒトまたは動物の骨組織の切断が可能になるとともに、意図した用途に従って骨組織の切り離された部分を再び組み合わせることが初めのうちに既に考慮される。これによって、追加の固定手段等を必須のものとして必要とすることなく、骨組織を目標位置に同等に正確にかつ安定的に再び組み合わせ得ることを保証できる。切り離された部分の手動または類似の位置づけおよび再組み合わせの不正確さは最小限にされるかまたはなくなりさえできる。
【0024】
好ましくは、切断幾何形状はレーザビームによって骨組織に切り込まれる。このようなレーザビームによって、実質的に骨組織または付近の他の組織を損なうことなく任意の角度および深さで切断を正確に加えることが可能である。したがって、レーザビームは好ましくは、ロボットアームに取り付けられたレーザ源によって提供される。このような配置によって、同等に複雑な切断幾何形状が適用できるようにレーザビームの任意の自由度での正確な移動および方向付けが可能になる。このことにより、レーザビームおよびロボットアームは好ましくはコンピュータによって制御され、コンピュータは、初期データおよび目標データを使用して切断幾何形状を算出するように構成される。特に、コンピュータは、事前に得られ、また目標幾何形状または位置を達成するために初期データとともに切断経路または幾何形状をアプリオリで算出するアルゴリズムから決定されたデータを使用できる。
【0025】
好ましくは、切断幾何形状を骨組織に切り込むことによって、骨組織は第1の骨部分と第2の骨部分とに切断され、目標状態では第1の骨部分および第2の骨部分は互いに対して変位される。このようにして、骨組織はうまい具合に再形成できるが、これは多くの手術用途で必要である。
【0026】
本発明のこれらのおよびその他の態様は、以下に記述される実施形態から明らかになり、またこれらを参照しながら説明される。
【0027】
以下、本発明による方法、本発明によるコンピュータプログラム、および本発明によるプロセスは例示的実施形態によって、また添付の図面を参照してより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による方法、コンピュータプログラムおよびプロセスの実施形態を実施するためのコンピュータ支援手術装置を示す。
図2】本発明による方法およびプロセスにより提供された、凸状湾曲部分および凹状湾曲部分を有する構造を有する切断幾何形状に基づく湾曲切断を示す。
図3】本発明による方法およびプロセスにより提供された、凸状楔形部分および凹状楔形部分を有する構造を有する切断幾何形状に基づく楔形切断を示す。
図4】本発明による方法およびプロセスにより提供された、バーおよび溝を有する構造を有する切断幾何形状に基づくプラグ形切断を示す。
図5】本発明による方法およびプロセスにより提供された、湾曲切断線に重なる周期的形状を有する切断幾何形状に基づく周期的切断を示す。
図6】本発明による方法およびプロセスにより提供された、直線切断線に重なる複雑な周期的形状を有する切断幾何形状に基づく複雑な周期的切断を示す。
図7】本発明による方法およびプロセスにより提供された、不連続な切断を示す。
図8】本発明による方法およびプロセスにより提供された、除去切断を示す。
図9】本発明による方法およびプロセスにより提供された、置換切断を示す。
図10】本発明による方法およびプロセスを適用する上顎矯正手術の実施例の初期状態を示す。
図11図10の実施例の目標状態を示す。
図12図10の実施例の切断幾何形状を示す。
図13】本発明による方法およびプロセスを適用する胸骨開放手術の実施例を示す。
図14】本発明による方法およびプロセスを適用する上顎置換術の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明において、特定の用語は利便性の理由により使用され、また限定するものとして解釈すべきではない。用語「右」、「左」、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「〜の下」、「〜の上」とは、図中における方向を意味する。これらの用語は、明示的に述べられる用語のみならず、それらの派生形および同様の意味を持つ用語を含む。
【0030】
図1は、本発明によるコンピュータプログラムの実施形態を含み、本発明による方法および本発明によるプロセスを適用するように構成されるコンピュータ支援手術装置1の概略図を示す。装置1は、支持台の1つの長手方向端部に固定配置されるロボットアーム11を備える。ロボットアームの他方の長手方向端部には、レーザヘッド12が、あらゆる自由度でロボットアーム11によって移動可能なように配置される。レーザヘッド12はレーザ源と、焦点調整光学素子と、レーザを方向転換させるための調節可能ミラーとを有する。レーザヘッド12には、2つのカメラ15を有するレーザヘッド12のモニタリングシステムが固定搭載される。さらに、標識シールド13がレーザヘッド12に取り付けられている。装置1はさらに、追跡デバイス14と、コンピュータプログラムを実行するコンピュータ16を有する制御ユニットとを備える。
【0031】
装置1の動作範囲内に下顎骨2または下顎が骨組織として配置されている。標識シールド22が下顎骨に取り付けられる。装置のレーザヘッド12は、切断幾何形状を規定する骨切り線21に沿って下顎骨2にレーザビーム31を提供する。このことにより、下顎骨2は骨切り線21に沿ってレーザビーム31により切断される。骨切り線は、下顎骨2がレーザビーム31によって既に切断された実現部分211、すなわち、切り傷と、下顎骨2がまだ切断されていない計画部分212とを有する。骨切り線21は、複数の平行なバーおよび溝が下顎骨2に形成されるように直角を有する周期的な矩形形状を有する。
【0032】
装置1の使用時には下顎骨2の初期幾何学的データが、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、2つのカメラ15を用いた3次元立体再構成によって、3次元再構成または光干渉断層法(OCT)のための1つのカメラおよび走査レーザ光線を使用して取得される。初期幾何学的データはコンピュータ16によって処理され、下顎骨2の目標状態の目標幾何学的データはコンピュータ16によってアプリオリで規定される。次いで、コンピュータ16は、理想的または好適な切断幾何形状、すなわち、図1では骨切り線21を設計し算出する。このことにより、骨切り線21は、下顎骨2が分割されて、バーおよび溝を作ることによって水平に明瞭な態様で再び組み合わせられ得るように切断幾何形状を構築する。
【0033】
次に、下顎骨2は装置1の動作範囲内の適切な位置に配置され、レーザヘッド12により提供されるレーザビーム31は骨切り線21に沿って下顎骨2を切断する。その目的のため、レーザヘッド12はロボットアーム11により移動され、レーザビーム31はレーザヘッド12のミラーにより調節される。特に、レーザビーム31の位置および配向は、下顎骨2が骨切り線21に沿って正確に切断されるように制御ユニットによって自動制御される。
【0034】
切断後、下顎骨2は下顎骨2の上側部分から下側部分を縦方向に移動させることによって分解される。その後、下側部分は適当な数のバーの分だけずらされ、元の位置の溝以外の溝にバーを配置することによって再び組み合わせられる。このことにより、下側部分は、下顎骨2が目標状態になるように適切な数のバーの分だけ右側に、水平にかつ明瞭にまたは段階的に変位され得る。
【0035】
以下はこの説明の残りに当てはまる。図面を明らかなものとするために、図が本明細書の直接関連する部分に説明されていない参照番号を含む場合、これは前の説明セクションで言及されている。
【0036】
以下、骨組織を切り離すための切断幾何形状の例およびこのような切断幾何形状または機能的切断の用途の例がより詳細に説明される。本発明による方法またはプロセスで作られ得るこれらの切断幾何形状は詳細には、切断幾何形状に沿って切り離された後に少なくとも1の自由度の明瞭な態様で骨組織を再び組み合わせることができるように形成された構造を含む。
【0037】
図2は、第1の上部骨部分41および第2の下部骨部分42に湾曲状構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織4の概略図を示す。より詳細には、構造は、第1の骨部分41に凸状湾曲部分411を、第2の骨部分42に対応する凹状湾曲部分421を有する。
【0038】
骨組織4の湾曲状構造は、湾曲切断の中心Cおよび半径rにより規定され、凸状湾曲部分411および凹形状部分421を形成する。第1の骨部分41および第2の骨部分42は接線方向5に移動でき、切断線に垂直かつ互いに対して横方向6の回転が可能となるが、ねじれ等のその他の自由度は切断幾何形状により防止される。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分41と第2の骨部分42との明瞭な再組み合わせが可能になる。
【0039】
図3の概略図には、第1の上部骨部分419および第2の下部骨部分429に楔形状構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織49が示されている。より詳細には、構造は、第1の骨部分419に凸状楔形部分4119を、第2の骨部分429に対応する凹状楔形部分4219を有する。
【0040】
骨組織49の楔形状構造は中心Cおよび半径rによって規定され、半径rは、非垂直角度δが凸状楔形部分4119の表面と半径rとの間に横方向に形成されるように、横方向に変化する。両側からこのような非垂直の切断角度を有する切断を行うことによって、凸状楔形部分4119と対応する凹状楔形部分4219の楔形表面を得ることができ、これらの楔形表面により平行または横方向の変位は防止するが、第1の骨部分419と第2の骨部分429とが接線方向59に移動することは依然として可能である。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分419と第2の骨部分429との明瞭な再組み合わせが可能になる。
【0041】
図4は、第1の上部骨部分418および第2の下部骨部分428に複数のバー4128、4228および複数の溝4118、4218を有する構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織48の概略図を示す。より詳細には、構造は第1の骨部分418に溝4118によって互いに分離された2つのバー4128を、第2の骨部分428にバー4228によって分離された2つの対応する溝4218を有する。このことにより、第1の骨部分418のバー4128は第2の骨部分428の方向に下方へ突出しており、第2の骨部分428のバー4228は第1の骨部分418の方向に上方へ突出している。バー4128、4228および溝4118、4218は同じ幅、すなわち、距離dを有する。
【0042】
図4に示すように、骨組織48は、切り離された後第1の骨部分418のバー4128の1つが、第2の骨部分428の元々位置していた溝4218に隣接する溝4218の1つに配置されるように再び組み合わせられる。より詳細には、元々第2の骨部分428の右側の溝4218と結合していた第1の骨部分418の右側のバー4128を、第2の骨部分428の左側の溝4218に配置する。これと同様にして、第1の骨部分418は第2の骨部分428に対して距離2dだけ長手方向58にずらされる。このことにより、距離2dは、第1の骨部分418の第2の部分428に対する縦方向のずれが厳密に予め規定され、そのずれからの逸脱が防止できるように所望の変位距離を規定する。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分418と第2の骨部分428との所定の目標位置における明瞭な再組み合わせが可能になる。外部追跡システムによるずれ移動の追跡および手動でのずれの調整は必要ない。
【0043】
図5では、第1の上部骨部分417および第2の下部骨部分427に周期的形状構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織47の概略図が示される。より詳細には、切断幾何形状の構造において、第1の骨部分417が周期pを有する一連の三角形突出部4127および三角形凹み4117を備え、第2の骨部分427が、周期pを有する対応する一連の三角形突出部4227および三角形凹み4217を備えるように、ベース切断線517が周期的三角形機能527に重なる。このことにより、変位距離は、周期pに対応する段で規定される。
【0044】
図5に示すように、骨組織47は切り離された後、第1の骨部分417の三角形突出部4127が、第2の骨部分427の元々位置していた凹み4217に隣接する三角形凹み4217に配置されるように再び組み合わせられる。このことにより、第2の骨部分427はベース切断線517に沿って周期pの分だけずれる。周期pは、第1の骨部分417の第2の部分427に対する縦方向のずれが厳密に予め規定され、その所定の段からの逸脱が防止できるように所望の変位段距離を規定する。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分417と第2の骨部分427との所定の目標位置における明瞭な再組み合わせが可能になる。外部追跡システムによるずれ移動の追跡および手動でのずれの調整は必要ない。
【0045】
図中に明示的に示されない一実施形態では、図5に示される周期的な形状構造は図3の楔形状構造と組み合わせられる。
【0046】
図6は、第1の上部骨部分416および第2の下部骨部分426に複雑な形状の構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織46の概略図を示す。より詳細には、切断幾何形状の構造において、ベース切断線516は、第1の骨部分416にて複数の不均一な突出部4126および凹み4116を、かつ第2の骨部分426にて複数の不均一な突出部4216および凹み4226を生成する不均一周期pを有する正弦波形状機能526と重なる。これに加えて、正弦波形状機能526は、非垂直な横方向切断角度δが形成されるように骨組織46の横方向において変化する。
【0047】
正弦波形状機能の変化とともに切断角度δを変えることによって、ねじれた切断表面が得られる。このことによって、平行または横方向の変位および縦方向の変位が防止される。不均一周期pおよび変化する切断角度δを使用するが、第1の骨部分416および第2の骨部分426は切断線516に沿っている単一の位置でのみ合致する。したがって、このような斜めの切断表面と非周期的切断機能との組み合わせにより、初期状態の元の位置でのみ合致する2つの骨部分416、426が得られる。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分416と第2の骨部分426との初期位置と同じ所定の目標位置における明瞭な再組み合わせが可能になる。
【0048】
図7では、第1の上部骨部分415および第2の下部骨部分425に不連続形状構造を有する切断幾何形状に沿って切り離された骨組織45の概略図が示される。より詳細には、切断幾何形状の構造において、第1の骨部分415は第1のフック部材4115を含み、第2の骨部分は第2のフック部材4215を含む。第1の骨部分415が主に変位方向55のみにおいて第2の骨部分に対して移動可能なように、第1のフック部材4115は第2のフック部材4215に係合する。
【0049】
図7に示すように、第1の骨部分415と第2の骨部分425との間に孔が形成されるように第2の骨部分425は変位方向55に沿って第1の骨部分415に対して変位する。これと同様にして、同等に複雑な不連続構造によりプレートおよび/またはスペーサとの組み合わせが可能になり、第1の骨部分415が部分的にのみ第2の骨部分425に接続される目標位置を形成する。
【0050】
図8は、切断幾何形状に沿って右側の第1の下顎骨部分414と左側の第2の下顎骨部分424とに切り離される下顎骨44の概略図を示し、下顎骨片444を除去するために切断幾何形状が構成されている。より詳細には、切断幾何形状の構造は、第1の下顎骨部分414に配置される第1の三角形突出部4114および第1の三角形凹み4124を、第2の下顎骨部分424に配置される対応する第2の三角形突出部4214および第2の三角形凹み4224を含む。
【0051】
図8に示されるように、再び組み合わせられるときに下顎骨片444は除去される。さらに、切断幾何形状の構造は、第1の突出部4114が第2の凹み4224に配置され第2の突出部4214が第1の凹み4124に配置されるときに第2の下顎骨片が変位方向514へと変位され、旋回方向524へと回転されるように形成される。このように、切断幾何形状のみによって第1の下顎骨部分414および第2の下顎骨部分424の、第1の下顎骨部分414が第2の下顎骨部分424に対してずらされ回転される所定の目標位置への明瞭な再組み合わせが可能となる。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の骨部分416と第2の骨部分426との所定の目標位置における明瞭な再組み合わせが可能になる。
【0052】
このようにして、用途によって特定の部分または骨片を除去する切断を行うことができる。例えば、顎矯正手術において、オーバーバイトは図8に示すような下顎骨から一部を除去することによって矯正され得る。設計された除去切断によりこれを行うことで下顎骨44の変位および回転が正確に規定され得る。
【0053】
図9では、第1の上部骨部分413および第2の下部骨部分423への置換のために構成された切断幾何形状に沿って切り離された骨組織43の概略図が示される。より詳細には、切断幾何形状の構造は第1の骨部分413に台形凹み4113を有し、第2の骨部分423は対応する台形本体4213を有する。このようにして、第2の骨部分423は接続方向53へとずらされることによって第1の骨部分413にのみ接続することができる。再び組み合わせられた骨組織43では、第2の骨部分423は、例えば重量433によって第1の骨部分413から下方へと変位できないように第1の骨部分413に保持される。
【0054】
このような切断幾何形状によってさらに骨または類似組織の移植が可能になる。このことにより、第2の骨部分423は元の位置の第1の骨部分413には再び組み合わせられないが、目標骨組織の異なる第1の骨部分には再び組み合わせられる。このような用途は例えば膝の靭帯置換であり得る。
【0055】
図10は、上顎矯正プロセスの一例の初期状態における頭骨7の概略図を示す。頭骨7は上顎71を有する頭蓋72および下顎骨73を含む。下顎骨73は上顎71の上へと変位dだけ遠位方向に突出しているため、オーバーバイトが形成されている。オーバーバイトを矯正するためには、上顎71を切断し変位させなければならない。
【0056】
図11には、頭骨7が目標状態で示されており、比較ができるように頭骨7の初期状態が点線で示される。初期状態に関連する参照符号はアポストロフィを付した目標状態に関連する参照符号と同じである。オーバーバイトを矯正するためのこの切断は、鼻甲介から翼突筋にかけて行われる。対応する切断線tはバイトの変位dに平行ではないため、この切断線tに沿ったずれによってさらに上顎71が上げられる。目標状態における上顎71と下顎骨73とが好適に合致するように、切断線tの湾曲は、上顎71の回転αおよび下顎骨73の回転βが本質的に同じであるように選択される。
【0057】
図12に示すように、これは、所望の方向への変位dをガイドし、かつ口蓋(palatina)を切断することを防止する楔形切断表面γを用いて行われる。
【0058】
図13は、胸骨開放手術プロセスの一例を示す。胸骨8はねじれた構造を有する切断幾何形状に沿って右側の第1の胸骨部分81と左側の第2の胸骨部分82とに切り離される。切断幾何形状の構造は、複数の不均一な突出部811および凹み812を第1の胸骨部分81に、対応する複数の不均一な突出部821および凹み822を第2の胸骨部分82に生成する不均一な周期を有する周期的な曲がり機能によって規定される。これに加えて、正弦波形状機能は、対応する非垂直な切断角度が形成されるように胸骨8の近位方向または内部方向において変化する。胸骨8を開放するためのこのような非周期的切断機能およびねじれた切断表面を使用することにより、胸部が元の位置で再び閉鎖されることが保証できる。したがって、切断幾何形状のみによって、第1の胸骨部分81と第2の胸骨部分82との初期位置と同じ所定の目標位置における明瞭な再組み合わせが可能になる。
【0059】
図14では、上顎置換術の別の例の目標状態における頭骨9の概略図が示される。これに関して、頭骨9は上顎91を有する頭蓋92と、下顎骨93を含む。元々は遠位方向へと上顎91の上に突出していた下顎骨93は、上顎91を頭蓋92から切断幾何形状に沿って切断し目標状態で再び組み合わせることによって矯正される。切断幾何形状は、複数の三角形突出部911および複数の三角形凹み912が上顎91に形成され、対応する複数の三角形突出部921および複数の三角形凹み922が頭蓋92に形成されるように周期pを有する周期的な三角形機能を有する構造を含む。
【0060】
上顎91の突出部911が、元々位置していた凹み922に遠位方向に隣接する頭蓋92の凹み922に配置されるように、上顎91は頭蓋92に対して1周期pだけ進めされる。このようにして、切断された上顎91は目標距離、すなわち周期pだけ厳密に変位されることを確実にすることが可能である。
【0061】
本発明は図面および前述の説明にて例示され、詳細に記述されているが、かかる例示および記述は例示的または代表的なものとみなされるべきであり、限定するものではない。変形および変更は、特許請求の範囲の範囲および趣旨内で当業者によってなされ得ることが理解されるであろう。特に、本発明は、上記および以下に記述されるさまざまな実施形態の特徴を任意に組み合わせたさらなる実施形態を包含する。
【0062】
本発明はまた、個々に前述のまたは以下の説明には記述されていなくても、図中に示されるさらなるすべての特徴を包含する。さらに、図面および本明細書に記述される実施形態の単一の代替およびこれらの特徴の単一の代替は、本発明の主題または開示される主題から放棄され得ない。本開示は、特許請求の範囲または例示的実施形態に規定される特徴からなる主題および該特徴を含む主題を含む。
【0063】
また、特許請求の範囲において、用語「含む」とは、他の要素およびステップを排除するものではなく、不定冠詞「1つの(aまたはan)」は複数を排除するものではない。単一のユニットまたはステップは特許請求の範囲に挙げられるいくつかの特徴の機能を実現してもよい。特定の尺度が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの尺度の組み合わせが効果的に使用できないということを示していない。また、属性または値に関連する用語「本質的に」、「約」、「およそ」等は特に、属性を厳密に、または値を厳密に、それぞれ規定するものである。用語「約」は、与えられた数の値または範囲の文脈において、与えられた値または範囲の例えば、20%内、10%内、5%内、または2%内にある値または範囲を指す。特許請求の範囲中の任意の参照符号は、範囲を限定するものとしてみなすべきではない。
【0064】
コンピュータプログラムは、その他のハードウェアとともにまたはその一部として供給される光学的記憶媒体またはソリッドステート媒体のような好適な媒体に保存/分散されてもよいが、インターネットまたはその他の有線もしくは無線の電気通信システムを介して等他の形態で分散されてもよい。特に、例えば、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体に保存されるコンピュータプログラム製品であり得、このコンピュータプログラム製品は、本発明による方法等の特定の方法を実施するために実行されるように構成されたコンピュータ実行可能なプログラムコードを有することができる。さらに、コンピュータプログラムは、本発明による方法等の特定の方法を具体化するためのデータ構造製品または信号でもあり得る。
図1
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