特許第6486925号(P6486925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6486925コバルト触媒並びにヒドロシリル化及び脱水素シリル化のためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486925
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】コバルト触媒並びにヒドロシリル化及び脱水素シリル化のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20190311BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20190311BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20190311BHJP
   C07F 15/06 20060101ALN20190311BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190311BHJP
   C08G 77/08 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   C07F19/00CSP
   B01J31/22 Z
   !C07F7/18 C
   !C07F7/18 D
   !C07F15/06
   !C07B61/00 300
   !C08G77/08
【請求項の数】49
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-532104(P2016-532104)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-504565(P2017-504565A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】US2014066346
(87)【国際公開番号】WO2015077302
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/906,210
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502405273
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ,ティアニン
(72)【発明者】
【氏名】チリク,ポール,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,アループ,クマル
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ケンリック
(72)【発明者】
【氏名】ナイ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,キース,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デリス,ヨハネス,ヘー.ペー.
(72)【発明者】
【氏名】ユ,レニュアン
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−532884(JP,A)
【文献】 特表2013−544824(JP,A)
【文献】 特表2012−532885(JP,A)
【文献】 BART, Suzanne C. , et al.,Journal of the American Chemical Society,2004年,126(42),pp. 13794-13807
【文献】 WHITE, Rosemary E. , et al.,Inorganic Chemistry,2006年,45(17),pp. 7004-7009
【文献】 LYONS, Thomas W. , et al.,Chemistry a European Journal,2013年,19(31),pp. 10124-10127
【文献】 SISAK, Attila,Journal of Organometallic Chemistry,1999年,586(1),pp. 48-53
【文献】 WATANABE, Takahito, et al.,Journal of the American Chemical Society,2007年,129(37),pp. 11338-11339
【文献】 BLEEKE, John R. , et al.,Organometallics,2007年,26(16),pp. 3904-3907
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化46】

を有し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり、1又はより多くのR1−R5及びR8−R14は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、又はC6〜C18アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択的に、相互に隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって、飽和又は不飽和の環構造を有する環を形成してよく、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選ばれず;そしてZはOである、錯体。
【請求項2】
R8及びR9が独立してC1〜C4アルキル又はC6〜C10アリールから選択される、請求項1の錯体。
【請求項3】
R8及びR9が独立してメチル又はフェニルから選択される、請求項1の錯体。
【請求項4】
R6及びR7が独立して、C1〜C8の直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリールから選択される、請求項1の錯体。
【請求項5】
R6及び/又はR7が式:
【化47】

のアリールを含み、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む、請求項1の錯体。
【請求項6】
R18、R20、及びR22がC1〜C4アルキルであり、R19及びR21が水素である、請求項5の錯体。
【請求項7】
錯体が式:
【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

のものである、請求項1の錯体。
【請求項8】
錯体が支持体上に固定されている、請求項1の錯体。
【請求項9】
支持体が、カーボン、シリカ、アルミナ、MgCl2、ジルコニア、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アミノスチレン)、スルホン化ポリスチレン、又はこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される、請求項8の錯体。
【請求項10】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、及び/又はR7の少なくとも1つが支持体と共有結合する官能基を含む、請求項8の錯体。
【請求項11】
(a)少なくとも1つの不飽和官能基を有する不飽和化合物、(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を有するシリルヒドリド、及び(c)触媒を含む混合物を、任意選択的に溶媒の存在下で反応させて、脱水素シリル化生成物を生成することを含み、ここで触媒が式(I)の錯体:
【化52】

であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、又はC6〜C18アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択で、相互に隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって、飽和又は不飽和の環構造を有する環を形成してよく、但しR5−R6及びR1-R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;そしてZはOである、脱水素シリル化生成物を生成するためのプロセス。
【請求項12】
R6及びR7の一方又は双方が式:
【化53】

のアリールを含み、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む、請求項11のプロセス。
【請求項13】
R18及びR22が独立してメチル、エチル又はイソプロピル基であり、R3が水素又はメチルである、請求項12のプロセス。
【請求項14】
R18、R20、及びR22の各々がメチルである、請求項12のプロセス。
【請求項15】
R1及びR5が独立してメチル又はフェニル基である、請求項12のプロセス。
【請求項16】
R2、R3、及びR4が水素である、請求項12のプロセス。
【請求項17】
触媒が、式:
【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

の錯体、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される、請求項11のプロセス。
【請求項18】
脱水素シリル化生成物から錯体を除去することをさらに含む、請求項11から17のいずれかのプロセス。
【請求項19】
脱水素シリル化生成物が、シリル基及び不飽和基を有するシラン又はシロキサンを含む、請求項11から18のいずれかのプロセス。
【請求項20】
不飽和基がシリル基に対してアルファ位又はベータ位にある、請求項19のプロセス。
【請求項21】
前記成分(a)中の不飽和基の、前記成分(b)中のシリルヒドリド官能基に対するモル比が2:1に等しいか又はより大きい、請求項11から20のいずれかのプロセス。
【請求項22】
脱水素シリル化生成物が2又はより多くの、成分(b)から誘導された末端シリル基を含む、請求項11から21のいずれかのプロセス。
【請求項23】
前記成分(a)がモノ不飽和化合物である、請求項11から22のいずれかのプロセス。
【請求項24】
前記成分(a)が、アルキン又はオレフィン;シクロアルケン;アルキル封鎖アリルポリエーテル;ビニル官能化アルキル封鎖アリル又はメタリルポリエーテル;アルキル封鎖末端不飽和アミン;アルキン;末端不飽和アクリレート又はメタクリレート;不飽和アリールエーテル;ビニル官能化ポリマー又はオリゴマー;ビニル官能化及び/又は末端不飽和アルケニル官能化シラン及び/又はシリコーン;不飽和脂肪酸;不飽和エステル;或いはこれらの2又はより多くの組み合わせからなる群より選択される、請求項11から23のいずれかのプロセス。
【請求項25】
錯体が支持体上に固定されている、請求項11から24のいずれかのプロセス。
【請求項26】
反応が不活性雰囲気下に行われる、請求項11から25のいずれかのプロセス。
【請求項27】
反応が、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒の存在下に行われる、請求項11から26のいずれかのプロセス。
【請求項28】
反応が、−40℃から200℃の温度において行われる、請求項11から27のいずれかのプロセス。
【請求項29】
脱水素シリル化生成物が、逆マルコフニコフ付加生成物、マルコフニコフ付加生成物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11のプロセス。
【請求項30】
請求項11から29のいずれかのプロセスによって生成される組成物であって、触媒を含有する、組成物。
【請求項31】
シラン、シリコーン流体、架橋シリコーン、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項30の組成物。
【請求項32】
(a)シリルヒドリド含有ポリマー、(b)モノ不飽和オレフィン又は不飽和ポリオレフィン、或いはこれらの組み合わせ、及び(c)触媒を含む混合物を、任意選択で溶媒の存在下に反応させて、架橋された材料を生成することを含み、触媒が式(I)の錯体:
【化58】

であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、又はC6〜C18アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択で、相互に隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって、飽和又は不飽和の環構造を有する環を形成してよく、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選ばれず;ZはOである、架橋された材料を生成するためのプロセス。
【請求項33】
(a)少なくとも1つの不飽和官能基を有する不飽和化合物、及び(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を有するシリルヒドリドから選択されたヒドロシリル化反応物質を含む組成物をヒドロシリル化するためのプロセスであって、ヒドロシリル化反応物質を含む組成物を式:
【化59】

の錯体と接触させることを含み、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C6〜C18アリール、又ハロ若しくはOR30から選択される不活性置換基であり、ここでR30はヒドロカルビルであり、1又はより多くのR1−R5、及びR8−R14は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、又はC6〜C18アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択で、相互に隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のいずれか2つ、R1-R2、及び/又はR4−R5一緒になって、飽和又は不飽和の環構造を有する環を形成してよく、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;ZはOである、プロセス。
【請求項34】
R8及びR9が独立してC1〜C8アルキル及びC6〜C18アリールから選択される、請求項33のプロセス。
【請求項35】
R8及びR9が独立してメチル又はフェニルから選択される、請求項33のプロセス。
【請求項36】
R6及びR7が独立して、C1〜C8の直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル、或いはC6〜C18アリールから選択される、請求項33のプロセス。
【請求項37】
R6及びR7が各々メチルである、請求項33のプロセス。
【請求項38】
R2、R3、及びR4が各々水素である、請求項37のプロセス。
【請求項39】
R1及びR5が各々メチルである、請求項37のプロセス。
【請求項40】
錯体が式:
【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

又はこれらの組み合わせのものである、請求項33のプロセス
【請求項41】
錯体が支持体上に固定されている、請求項33から40のいずれかのプロセス。
【請求項42】
シリルヒドリドが式:
R23mSiHpX4■(m+p)
MaMHbDcDHdTeTHfQg
R293Si(CH2R29)xSiOSiR292(OSiR292)yOSiR292H;
R293Si(CHR29)xSiR292H
の化合物の1つ又は組み合わせ、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択され、式中、R23の各々は独立して、置換又は未置換の脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基であり;Xはハロゲン、アルコキシ、アシロキシ、又はシラザンであり;mは0−3;pは1−3であり、但しケイ素は4価のままであり;Mは式R243SiO1/2の単官能基を表し;Dは式R242SiO2/2の2官能基を表し;Tは式R24SiO3/2の3官能基を表し;Qは式SiO4/2の4官能基を表し;MHはHR242SiO1/2を表し、THはHSiO3/2を表し、そしてDH基はR24HSiO2/2を表し;R24の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C14アリール又は置換アリールであり、R24は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み、下付文字a、b、c、d、e、f、及びgは化合物のモル質量が100から100,000ドルトンとなる値であり;R29の各々は独立して、C1〜C18アルキル、又はC6〜C14アリールであり;xは1〜8、及びyは0〜10である、請求項33から41のいずれかのプロセス。
【請求項43】
不飽和化合物(a)が、不飽和ポリエーテル;ビニル官能化アルキル封鎖アリル又はメチルアリルポリエーテル;末端不飽和アミン;アルキン;C2〜C45オレフィン;不飽和エポキシド;末端不飽和アクリレート又はメチルアクリレート;不飽和アリールエーテル;不飽和芳香族炭化水素;不飽和シクロアルカン;ビニル官能化ポリマー又はオリゴマー;ビニル官能化シラン、ビニル官能化シリコーン、末端不飽和アルケニル官能化シラン及び/又はシリコーン、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される、請求項33から42のいずれかのプロセス。
【請求項44】
不飽和化合物(a)が一般式:
R25(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)w−OR26;及び/又は
R26O(CHR27CH2O)w(CH2CH2O)z−CR282−C≡C−
CR282(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)wR26
を有する1又はより多くのポリエーテルから選択され、式中、R25は2から10の炭素原子を有する不飽和有機基から選択され;R26の各々は独立して、水素、ビニル、アリル、メタリル、又は1から8の炭素原子を有するポリエーテル封鎖基、アシル基、ベータケトエステル基、又はトリアルキルシリル基から選択され;R27及びR28は独立して、水素、1価の炭化水素基、アリール基、アルカリール基、及びシクロアルキル基から選択され;R27としてはメチル又は水素が好ましく;zの各々は0から100以下であり;そしてwの各々は0から100以下である、請求項43のプロセス。
【請求項45】
触媒組成物の除去をさらに含む、請求項33から44のいずれかのプロセス。
【請求項46】
触媒組成物の除去が濾過によって達成される、請求項45のプロセス。
【請求項47】
反応が−10℃から200℃の温度で行われる、請求項33から46のいずれかのプロセス。
【請求項48】
反応が減圧下で行われる、請求項33から47のいずれかのプロセス。
【請求項49】
反応が過圧下で行われる、請求項33から48のいずれかのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「コバルト触媒並びにヒドロシリル化及び脱水素シリル化のためのその使用」と題する2013年11月19日出願の米国仮出願第61/906,210号の優先権及び利益を主張し、その仮出願の全開示はすべて、ここでの参照によって本明細書に取り入れるものとする。
【0002】
本発明は全般に、遷移金属含有化合物に関し、より具体的にはピリジンジイミン配位子を含むコバルト錯体、並びにヒドロシリル化及び脱水素シリル化反応のための触媒としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロシリル化の化学は、典型的にはシリルヒドリドと不飽和有機基の間の反応を伴い、シリコーン界面活性剤、シリコーン流体、及びシランのような市販のシリコーン系製品、並びにシーラント、接着剤、及びコーティングのような多くの付加硬化型の製品を製造するための合成経路の基礎をなしている。典型的なヒドロシリル化反応は、オレフィンのような不飽和基に対するシリルヒドリド(Si−H)の付加を触媒するために、貴金属触媒を用いる。こうした反応で結果として得られる生成物は、シリル置換された飽和化合物である。これらの殆どの場合に、シリル基の付加は逆マルコフニコフ的に、即ち不飽和基のより置換されていない炭素原子に対して進行する。貴金属で触媒されたヒドロシリル化の殆どは、末端不飽和オレフィンについてのみ上首尾に作用する。というのは、内部不飽和部分は一般に非反応性であるか、又は僅かしか反応しないからである。現在のところ、オレフィンの全体的なヒドロシリル化について商業的に実施可能な方法は限られており、Si−H基の付加後にはまだ、原料基質には不飽和が残存している。脱水素シリル化と呼ばれるこの反応は、新たなシリコーン材料、例えばシラン、シリコーン流体、架橋シリコーンエラストマー、及びシリル化又はシリコーン架橋された有機ポリマー、例えばポリオレフィン、不飽和ポリエステルなどの合成に対する、潜在的な用途を有している。
【0004】
種々の貴金属錯体触媒が技術的に知られており、その中には不飽和シロキサンを配位子として含有する白金錯体が含まれており、技術的にKarsted触媒として知られている。他の白金系ヒドロシリル化触媒には、Ashby触媒、Lamoreaux触媒、及びSpeier触媒などがある。
【0005】
他の金属系触媒も研究されており、例えばロジウム錯体、イリジウム錯体、パラジウム錯体、及び限定的なヒドロシリル化及び脱水素シリル化を促進する第1列遷移金属系の触媒などさえある。
【0006】
米国特許第5,955,555号は、2つのイオン性配位子を担持した、特定の鉄又はコバルトピリジンジイミン(PDI)錯体の合成を開示している。好ましいアニオンはクロリド、ブロマイド、及びテトラフルオロボレートである。米国特許第7,442,819号は、2つのイミノ基で置換された「ピリジン」環を含む特定の3環系配位子の鉄及びコバルト錯体を開示している。米国特許第6,461,994号、第6,657,026号、及び第7,148,304号は、特定の遷移金属−PDI錯体を含む、幾つかの触媒系を開示している。米国特許第7,053,020号は、特に、1又はより多くのビスアリールイミノピリジン鉄又コバルト触媒を含む触媒系を開示している。Chirikらは、アニオン配位子を有するビスアリールイミノピリジンコバルト錯体を記載している(Inorg. Chem. 2010, 49, 6110及びJACS. 2010, 132,1676)。しかしながら、これらの文献に開示された触媒及び触媒系は、オレフィンの水素化、重合化、及び/又はオリゴマー化の文脈で使用するものとして記載されており、脱水素シリル化反応の文脈では記載されていない。米国特許第8,236,915号は、ピリジンジイミン配位子を含むMn、Fe、Co、及びNi触媒を用いたヒドロシリル化を開示している。しかしながら、これらの触媒は空気に影響される。
【0007】
シリル化産業においては、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化を効率的且つ選択的に触媒するのに有効な、非金属系触媒に対する継続的なニーズがある。また、空気中で安定な金属系触媒に対するニーズもある。多くの金属系触媒は、鉄及びコバルト系の触媒を含めて、大気条件下では安定でない。こうした材料はそのため、生産又は工業規模での用途には一般的に不向きである。
【0008】
さらに、工業的に重要な多くの均一系金属触媒は、基質の最初の充填(チャージ)分が消費された後に、触媒活性を有する金属が集合体及び凝集体中に埋没し、コロイド形成や沈降によってその有用な触媒性能が実質的に減殺されるという欠点を有している。特に白金のような貴金属について、これは高コストな損失である。不均一系触媒はこの問題を軽減するために使用されるが、ポリマーについての用途は限られており、また均一系の相当物よりも活性が低い。例えばヒドロシリル化についての2つの主要な均一系触媒、Speier触媒とKarstedt触媒はたびたび、オレフィン及びシリル又はシロキシヒドリド反応のチャージ分を触媒した後に活性を失う。1回のチャージ分の均一系触媒を多数回分の基質に再使用することができれば、触媒とプロセスコストについての利点は相当のものがある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、コバルト錯体を提供する。このコバルト錯体は、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化プロセスのための触媒として使用可能である。またこのコバルト錯体は空気中での安定性を示し、大気条件下での取り扱いを可能にする。
【0010】
1つの側面において、本発明は式:
【化1】

の錯体を提供し、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、式中1又はより多くのR1−R5及びR8−R14は、水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又はC6〜C18置換アリールであり、R6及びR7の一方又は双方が任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択でR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7の相互に隣接するいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって置換又は未置換の、飽和又は不飽和の環構造の環を形成してよいが、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;またZはO、NR15、又はCR16R17であってR15、R16、及びR17の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリール基、アルカリール基、アラルキル基であり、1又はより多くのR15、R16、及びR17は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0011】
1つの実施形態では、ZはOであり、R8及びR9は独立してC1〜C4アルキル又はC6〜C10アリールから選択される。1つの実施形態では、ZはOであり、R8及びR9は独立してメチル又はフェニルから選択される。
【0012】
1つの実施形態では、R6及びR7は独立してC1〜C8の直鎖、分岐、又は環状アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリールから選択される。1つの実施形態では、R6及び/又はR7は式:
【化2】

のアリールを含み、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0013】
1つの実施形態では、R18、R20、及びR22はC1〜C4アルキルであり、R19及びR21は水素である。
【0014】
1つの実施形態では、錯体は式:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

のものである。
【0015】
1つの実施形態では、錯体は支持体上に固定されている。1つの実施形態では、支持体はカーボン、シリカ、アルミナ、MgCl2、ジルコニア、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アミノスチレン)、スルホン化ポリスチレン、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される。1つの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及び/又はR7の少なくとも1つは支持体と共有結合する官能基を含む。
【0016】
1つの側面において本発明は、脱水素シリル化生成物を生成するためのプロセスを提供し、それは(a)少なくとも1つの不飽和官能基を含む不飽和化合物と、(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を含むシリルヒドリドと、(c)触媒とを含有する混合物を、任意選択で溶媒の存在下に反応させて脱水素シリル化生成物を生成することを含んでなり、そこにおいて触媒は式(I)の錯体又はその付加物:
【化7】

であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR1−R5及びR8−R14は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又はC6〜C18置換アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択でR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7の相互に隣接するいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって置換又は未置換の、飽和又は不飽和の環構造の環を形成してよいが、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;またZはO、NR15、又はCR16R17であってR15、R16、及びR17の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリール基、アルカリール基、アラルキル基であり、1又はより多くのR15、R16、及びR17は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0017】
1つの実施形態では、R6及びR7の一方又は双方は式:
【化8】

のアリールを含み、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0018】
1つの実施形態では、R18及びR22は独立してメチル、エチル、又はイソプロピル基であり、R3は水素又はメチルである。
【0019】
1つの実施形態では、R18、R20、及びR22の各々はメチルである。
【0020】
1つの実施形態では、R1及びR5は独立してメチル又はフェニル基である。
【0021】
1つの実施形態では、R2、R3、及びR4は水素である。
【0022】
1つの実施形態では、触媒は式:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

の錯体、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される。
【0023】
1つの実施形態では、本プロセスはさらに、錯体及び/又はその誘導体を脱水素シリル化生成物から除去することを含む。
【0024】
1つの実施形態では、脱水素シリル化生成物は、シリル基及び不飽和基を含むシラン又はシロキサンを含有する。
【0025】
1つの実施形態では、不飽和基はシリル基に対してα位又はβ位にある。
【0026】
1つの実施形態では、成分(a)中の不飽和基の、成分(b)中のシリルヒドリド官能基に対するモル比は、2:1に等しいか又はより大きい。
【0027】
1つの実施形態では、脱水素シリル化生成物は、成分(b)から誘導された2又はより多くの末端シリル基を含む。
【0028】
1つの実施形態では、成分(a)はモノ不飽和化合物である。1つの実施形態では、成分(a)はアルキン又はオレフィン;シクロアルケン;アルキル封鎖アリルポリエーテル;ビニル官能性アルキル封鎖アリル又はメタリルポリエーテル;アルキル封鎖末端不飽和アミン;アルキン;末端不飽和アクリレート又はメタクリレート;不飽和アリールエーテル;ビニル官能化ポリマー又はオリゴマー;ビニル官能化及び/又は末端不飽和アルケニル官能化シラン及び/又はシリコーン;不飽和脂肪酸;不飽和エステル;或いはこれらの2又はより多くの組み合わせからなる群より選択される。
【0029】
1つの実施形態では、この反応は炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒の存在下に行われる。
【0030】
1つの実施形態では、この反応は−40℃から200℃の温度で行われる。
【0031】
1つの実施形態では、シリル化生成物は、逆マルコフニコフ付加生成物、マルコフニコフ付加生成物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0032】
1つの側面において、本発明は架橋された材料を生成するプロセスを提供し、それは(a)シリルヒドリド含有ポリマー、(b)モノ不飽和オレフィン又は不飽和ポリオレフィン、或いはこれらの組み合わせ、及び(c)触媒を含む混合物を、任意選択的に溶媒の存在下に反応させて架橋された材料を生成することを含んでなり、そこにおいて触媒は式(I)の錯体又はその付加物:
【化13】

であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR1−R5、及びR8−R14は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又はC6〜C18置換アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択でR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7の相互に隣接するいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって置換又は未置換の、飽和又は不飽和の環構造の環を形成してよいが、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;またZはO、NR15、又はCR16R17であってR15、R16、及びR17の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリール基、アルカリール基、アラルキル基であり、1又はより多くのR15、R16、及びR17は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0033】
1つの側面おいて、本発明は、(a)少なくとも1つの不飽和官能基を含む不飽和化合物、及び(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を含むシリルヒドリドから選択されたヒドロシリル化反応物質を含有する組成物をヒドロシリル化するためのプロセスを提供し、そのプロセスはヒドロシリル化反応物質を含有する組成物を式:
【化14】

の錯体と接触させることを含み、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、C6〜C18置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR1−R5、及びR8−R14は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6及びR7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又はC6〜C18置換アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択でR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7の相互に隣接するいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒なって置換又は未置換の、飽和又は不飽和の環構造の環を形成してよいが、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選択されず;またZはO、NR15、又はCR16R17であってR15、R16、及びR17の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリール基、アルカリール基、アラルキル基であり、1又はより多くのR15、R16、及びR17は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0034】
1つの実施形態では、ZはOであり、R8及びR9は独立して、C1〜C8アルキル及びC6〜C18アリールから選択される。1つの実施形態では、ZはOであり、R8及びR9は独立してメチル又はフェニルから選択される。
【0035】
1つの実施形態では、R6及びR7は独立して、C1〜C8の直鎖、分岐、又は環状アルキル、C6〜C18アリール、又はC6〜C18置換アリールから選択される。1つの実施形態では、R6及びR7は各々メチルである。
【0036】
1つの実施形態では、R2、R3、及びR4は各々水素である。
【0037】
1つの実施形態では、R1及びR5は各々メチルである。
【0038】
1つの実施形態では、錯体は式:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

又はこれらの組み合わせである。
【0039】
1つの実施形態では、シリルヒドリドは式:
R23mSiHpX4-(m+p)
MaMHbDcDHdTeTHfQg;
R293Si(CH2R29)xSiOSiR292(OSiR292)yOSiR292H;
R293Si(CHR29)xSiR292H
の1又はより多くの化合物、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択され、式中、R23の各々は独立して、置換又は未置換の脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基;Xはハロゲン、アルコキシ、アシロキシ、又はシラザン;mは0−3;pは1−3、但しケイ素は4価のままであり;Mは式R243SiO1/2の単官能基を表し;Dは式R242SiO2/2の2官能基を表し;Tは式R24SiO3/2の3官能基を表し;Qは式SiO4/2の4官能基を表し;MHはHR242SiO1/2を表し、THはHSiO3/2を表し、そしてDH基はR24HSiO2/2を表し;R24の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C14アリール又は置換アリールであり、R24は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;下付文字a、b、c、d、e、f、及びgはその化合物のモル質量が100と100,000ダルトンの間となる値;R29の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C14アリール又は置換アリール;xは1〜8、そしてyは0〜10である。
【0040】
1つの実施形態では、不飽和化合物(a)は不飽和ポリエーテル;ビニル官能化アルキル封鎖アリル又はメチルアリルポリエーテル;末端不飽和アミン;アルキン;C2〜C45オレフィン;不飽和エポキシド;末端不飽和アクリレート又はメチルアクリレート;不飽和アリールエーテル;不飽和芳香族炭化水素;不飽和シクロアルカン;ビニル官能化ポリマー又はオリゴマー;ビニル官能化シラン、ビニル官能化シリコーン、末端不飽和アルケニル官能化シラン及び/又はシリコーン、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される。
【0041】
1つの実施形態では、不飽和化合物(a)は、一般式:
R25(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)w−OR26;及び/又は
R26O(CHR27CH2O)w(CH2CH2O)z−CR282−C≡C−CR282(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)wR26
を有する1又はより多くのポリエーテルから選択され、式中、R25は2から10の炭素原子を有する不飽和有機基から選択され;R26の各々は独立して、水素、ビニル、アリル、メタリル、又は1から8の炭素原子を有するポリエーテル封鎖基、アシル基、ベータケトエステル基、又はトリアルキルシリル基から選択され;R27及びR28は独立して、水素、1価の炭化水素基、アリール基、アルカリール基、及びシクロアルキル基から選択され;R27はメチル又は水素が好ましく;zの各々は0から100以下であり;そしてwの各々は0から100以下である。
【0042】
1つの実施形態では、本プロセスはさらに、触媒組成物を除去することを含む。1つの実施形態では、触媒組成物の除去は濾過によって達成される。
【0043】
1つの実施形態では、反応は約−10℃から約200℃の温度で行われる。
【0044】
1つの実施形態では、反応は減圧下で行われる。
【0045】
1つの実施形態では、反応は過圧下で行われる。
【0046】
1つの実施形態では、本発明は上記種々のプロセスから生成される組成物を提供する。1つの実施形態では、組成物は触媒又はその誘導体を含有している。1つの実施形態では、組成物はシラン、シリコーン流体、架橋シリコーン、或いはこれらの2又はより多くの組み合わせから選択される少なくとも1つの成分を含有している。
【0047】
別の側面において、本発明は式(I)の触媒の存在下にシリル化生成物を生成するためのプロセスを提供する。1つの実施形態では、本プロセスはヒドロシリル化生成物を生成するプロセスである。別の実施形態において、本プロセスは脱水素シリル化生成物を生成するためのプロセスである。
【0048】
1つの側面において、本発明は組成物のヒドロシリル化のためのプロセスを提供し、このプロセスはヒドロシリル化反応物質を含有する組成物を式(I)の錯体と接触させることを含む。1つの実施形態では、ヒドロシリル化反応物質は、(a)少なくとも1つの不飽和官能基を含む不飽和化合物と、(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を含むシリルヒドリドと、及び(c)式(I)の触媒又はその付加物と、任意選択で触媒の存在とを含む。
【0049】
1つの側面おいて、本発明は脱水素シリル化生成物を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、(a)少なくとも1つの不飽和官能基を含む不飽和化合物と、(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を含むシリルヒドリドは、及び(c)触媒とを含む混合物を、任意選択で溶媒の存在下に反応させて脱水素シリル化生成物を生成することを含み、そこにおいて触媒は式(I)の錯体又はその付加物である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、ピリジンジイミン配位子を含むコバルト錯体、並びにそれらの、ヒドロシリル化触媒及び/又は脱水素シリル化触媒としての効率的な使用に関する。本発明の1つの実施形態では、上記したごとき式(I)の錯体が提供され、式中Coは、ヒドロシリル化反応、脱水素シリル化反応、及び/又は架橋反応に用いる、いかなる価数又は酸化状態(例えば、+1、+2、又は+3)を取ることもできる。特に、本発明の1つの実施形態によれば、ヒドロシリル化及び/又は脱水素シリル化反応を行うことのできる、一群のコバルトピリジンジイミン錯体が見出されている。本発明はまた、一回のチャージ分の触媒を、生成物の複数バッチに再使用する利点にも対応するものであり、プロセスの効率化及びコストの低減化をもたらす。
【0051】
本明細書で用いるとき、用語「アルキル」は、直鎖、分岐鎖、及び環状のアルキル基を含む。アルキルの具体的な非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、シクロヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本明細書で用いるとき、用語「置換アルキル」は、1又はより多くの置換基であって、それらの置換基を含む化合物が置かれるプロセス条件の下で不活性である置換基を有するアルキル基を含んでいる。これらの置換基はまた、プロセスに対して実質的又は有害な干渉を行わない。
【0053】
本明細書で用いるとき、用語「アリール」は、1つの水素原子が除かれた、芳香族炭化水素の非限定的な群を参照する。アリールは、縮合し、或いは単結合やその他の基によって結合された、1又はより多くの芳香環を有してよい。適切なアリールの例には、トリル、キシリル、フェニル及びナフタレニルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本明細書で用いるとき、用語「置換アリール」は、「置換アルキル」についての上記の定義に記載されたようにして置換された、芳香族基を参照する。アリールと同様に、置換アリールは、縮合し、或いは単結合やその他の基によって結合された、1又はより多くの芳香環を有してよい;しかしながら、置換アリールがヘテロ芳香環を有する場合、置換基の結合は炭素ではなく、ヘテロ芳香環のヘテロ原子(窒素のごとき)を介して行われうる。1つの実施形態では、本明細書における置換アリール基は、1から約30の炭素原子を含む。
【0055】
本明細書で用いるとき、用語「アルケニル」は、1又はより多くの炭素−炭素二重結合を含む、適切な直鎖、分岐鎖、又は環状のアルケニル基を参照するが、置換が行われる場所は、炭素−炭素二重結合又はその基の他の場所のいずれかでありうる。適切なアルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニル、ノルボルニルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本明細書で用いるとき、用語「アルキニル」は、1又はより多くの炭素−炭素三重結合を含む、適切な直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキニル基を参照するが、置換が行われる場所は、炭素−炭素三重結合又はその基の他の場所のいずれかでありうる。
【0057】
本明細書で用いるとき、用語「不飽和」は、1又はより多くの二重結合又は三重結合を参照する。1つの実施形態では、それは炭素−炭素二重結合又は三重結合を参照する。
【0058】
本明細書で用いるとき、用語「不活性置換基」は、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル以外の基であって、その基を含む化合物が置かれるプロセス条件の下で不活性である基を参照する。不活性置換基はまた、その基を有する化合物が関与する、本明細書に記載のいかなるプロセスに対しても、実質的又は有害な干渉を行わない。不活性置換基の例には、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、及びイオド)、及びR30がヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルである−OR30のごときエーテルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本明細書で用いるとき、用語「ヘテロ原子」は、炭素以外の13−17族の元素のいずれかを参照し、例えば酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素などでありうる。
【0060】
本明細書で用いるとき、用語「オレフィン」は、1又はより多くの脂肪族炭素−炭素不飽和を含む、脂肪族又は芳香族炭化水素のいずれかを参照する。こうしたオレフィンは直鎖、分岐鎖、又は環状であってよく、また上記したごときヘテロ原子で置換されていてよいが、但し置換基は脱水素シリル化生成物を生成する所望の反応過程に対し、実質的又は有害な干渉を行わない。
【0061】
コバルト錯体
本発明は、1つの側面においてコバルト錯体を提供し、この錯体はヒドロシリル化又は脱水素シリル化反応において、触媒として使用可能である。触媒組成物は、ピリジンジイミン(PDI)配位子と、キレートしたアルケニル置換シリル配位子とを有するコバルト錯体を含み、アルケニル置換はケイ素に対してベータ位にあることが好ましい。1つの実施形態では、触媒は式(I)の錯体又はその付加物:
【化19】

であり、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又は置換アリール、或いは不活性置換基であり、1又はより多くのR1−R5及びR8−R14は少なくとも1つのヘテロ原子を含み;R6−R7の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又は置換アリールであり、R6及びR7の一方又は双方は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含み;任意選択で相互に隣接するR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のいずれか2つ、R1−R2、及び/又はR4−R5は一緒になって、置換又は未置換の、飽和又は不飽和の環構造を有する環を形成してよく、但しR5−R6及びR1−R7はターピリジン環を形成するようには選ばれず;ZはO、NR15、又はCR16R17であり、R15、R16、及びR17の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又は置換アリール基、アルカリール基、アラルキル基であり、そして1又はより多くのR15、R16、及びR17は任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。この触媒錯体において、Coはどのような価数又は酸化状態(例えば、+1、+2、又は+3)にあることもできる。
【0062】
1つの実施形態では、少なくとも1つのR6及びR7
【化20】

であり、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C18アリール又は置換アリール、或いは不活性置換基であり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。1つの実施形態では、R18及びR22は独立してメチル、エチル、又はイソプロピル基を含んでよく、そしてR20は水素又はメチルである。1つの実施形態では、R18、R20、及びR22は各々メチルであり、R19及びR21は水素である。
【0063】
1つの実施形態では、コバルト錯体は、R6及びR7がメチル又はフェニル基であり、R1及びR5は独立してメチル又はフェニル基であってよく;そしてR2、R3及びR4は水素であってよい。
【0064】
1つの実施形態では、R8及びR9は独立してC1〜C10アルキル、又はアリールから選択され、ZはO、そしてR10−R14は水素である。1つの実施形態では、R8及びR9は各々メチルである。さらに別の実施形態において、R8及びR9は各々フェニルである。
【0065】
1つの実施形態では、コバルト錯体は式:
【化21】

【化22】

【化23】

【化23】

の錯体である。
【0066】
1つの実施形態では、触媒は、既知の手順で調製された触媒前駆体を溶媒中で、SiH基を含有する所望のアルケニル変性シランと反応させることによって作成される。
【0067】
本発明の触媒は、開放された大気中での取り扱いを可能にする、空気安定性を示す。ヒドロシリル化又は脱水素シリル化を触媒することが従来から知られている鉄又はコバルト錯体の多くは、空気安定性に乏しく、これによって錯体の産業的用途は限られていた。しかしながら、キレートしたアルケン変性シリル配位子を有する本発明のPDI-Co錯体は、この大きな欠点を克服することが見出されている。
【0068】
本発明の反応プロセスにおいては、触媒は非担持でもよく、また支持体材料、例えばカーボン、シリカ、アルミナ、MgCl2、又はジルコニア、或いは例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アミノスチレン)、又はスルホン化ポリスチレンなどのポリマー又はプレポリマー上に固定化されていてもよい。
【0069】
幾つかの実施形態においては、本発明の金属錯体を支持体上に付着させる目的で、金属錯体のR1からR7の少なくとも1つが、支持体への共有結合に有効な官能基を有することが望ましい。例示的な官能基には、ビニル、SH、COOH、NH2又はOH基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
触媒反応
本発明によれば、式(I)のコバルト錯体は、脱水素シリル化プロセス、ヒドロシリル化反応プロセス、及び/又は架橋反応プロセスのための触媒として使用可能である。脱水素シリル化及びヒドロシリル化プロセスは一般に、シリルヒドリド化合物を、少なくとも1つの不飽和官能基を有する不飽和化合物と反応させることを含む。
【0071】
この反応に用いられるシリルヒドリドは、特に限定されるものではない。それは例えば、ヒドロシラン又はヒドロシロキサンから選択されるどのような化合物であることもでき、それには式R23mSiHpX4-(m+p)又はMaMHbDcDHdTeTHfQgの化合物が含まれ、式中、R23の各々は独立して、置換又は未置換の脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル基、Xはアルコキシ、アシロキシ、又はシラザン、mは0−3、pは1−3(但しケイ素は4価のままである)、そしてM、D、T、及びQはシロキサン術語体系におけるそれらの通常の意味を有する。下付文字a、b、c、d、e、f、及びgは、シロキサン型の反応物質のモル質量が100から100,000ダルトンとなるような値である。1つの実施形態では、「M」基は式R243SiO1/2の単官能基を表し、「D」基は式R242SiO2/2の2官能基を表し、「T」基は式R24SiO3/2の3官能基を表し、そして「Q」基は式SiO4/2の4官能基を表し、「MH」基はHR242SiO1/2を表し、「TH」はHSiO3/2を表し、そして「DH」基はR24HSiO2/2を表す。R24の各々は独立して、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C14アリール又は置換アリールであり、R24は任意選択的に少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0072】
本発明はまた、カルボシロキサン連鎖(例えば、Si-CH2-Si-O-SiH、Si-CH2-CH2-Si-O-SiH、又はSi-アリーレン-Si-O-SiH)を含むヒドリドシロキサンを用いたヒドロシリル化をも提供する。カルボシロキサンは、-Si-(ヒドロカルビレン)-Si-及び-Si-O-Si-官能性の両者を含み、そこにおいてヒドロカルビレンは置換又は未置換の、2価のアルキレン、シクロアルキレン、又はアリーレン基を表す。カルボシロキサンの合成については、米国特許第7,259,220号;米国特許第7,326,761号及び米国特許第7,507,775号に開示されており、これらの全内容はここでの参照によって全て本明細書に取り入れるものとする。カルボシロキサン連鎖を有するヒドリドシロキサンの例示的な式は、R293Si(CH2R29)xSiOSiR292(OSiR292)yOSiR292Hであり、式中、R29の各々は独立して、1価のアルキル、シクロアルキル又はアリール基、例えばC1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、C6〜C14アリール又は置換アリールである。適切な基の非限定的な例としては、例えばメチル、エチル、シクロヘキシル又はフェニルなどがある。またR29は独立して、水素であってもよい。下付文字xは1〜8の値を有し、yはゼロから10、好ましくはゼロから4の値を有する。ヒドリドカルボシロキサンの具体的な例は、(CH3)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2Hである。
【0073】
ヒドリドカルボシロキサンは、本発明のヒドロシリル化及び脱水素シリル化反応に有用な別の群の化合物である。ヒドリドカルボシロキサンは分子式中に、SiH結合と、-Si-(CH2)x-Si-(式中xは1より大きいか又は等しい整数であり、好ましくは1−8である)のごとき連鎖及び他のSi-ヒドロカルビレン基を有しているが、シロキサン連鎖は有していない。上記に定義したように、ヒドロカルビレンは置換又は未置換の、2価のアルキレン、シクロアルキレン、又はアリーレン基を参照している。それらは直鎖でも、環状でも、分岐でもよく、分子当たりにSiH結合を1より多く含んでいる。このSiH結合は末端でもよく、又は分子中でSi-ヒドロカルビレン鎖に沿って内部分散されていてもよい。ヒドリドカルボシランについての例示的な式は、R293Si(CHR29)xSiR292Hであり、R29及びxは上記で定義した意味を有する。ヒドリドカルボシランの具体例は、(CH3)3SiCH2CH2Si(CH3)2H、H(CH3)2SiCH2CH2Si(CH3)2H、(CH3)3SiC6H4Si(CH3)2H、(CH3)3SiC6H10Si(CH3)2Hであり、式中-C6H4-はフェニレン連鎖であり、-C6H10-はシクロヘキシレン連鎖である。
【0074】
本発明のプロセスにおいては、種々の反応装置を使用可能である。その選択は、試薬及び生成物の揮発性といった要因によって決定される。連続的に撹拌されたバッチ式反応装置は、試薬が周囲温度及び反応温度で液体である場合に使用するのに好都合である。こうした反応装置はまた、試薬を連続的に投入し、脱水素シリル化生成物又はヒドロシリル化反応生成物を連続的に取り出して動作させることが可能である。気体状の又は揮発性のオレフィン及びシランについては、流動床反応装置、固定床反応装置、及びオートクレーブ反応装置がより適したものでありうる。
【0075】
ヒドロシリル化反応に用いられる、少なくとも1つの不飽和官能基を含有する不飽和化合物については、一般に限定はなく、特定の目的又は意図する用途に所望とされる不飽和化合物から選択可能である。不飽和化合物はモノ不飽和化合物であることができ、或いは2又はより多くの不飽和官能基を含むことができる。1つの実施形態では、不飽和基はアルファ不飽和官能基であることができる。不飽和基を含有する適切な化合物の例には、不飽和ポリエーテル、例えばアルキル封鎖アリルポリエーテル、ビニル官能化アルキル封鎖アリル又はメチルアリルポリエーテル;末端不飽和アミン;アルキン;C2〜C45オレフィン、1つの実施形態ではアルファオレフィン;不飽和エポキシド、例えばアリルグリシジルエーテル及びビニルシクロヘキサンオキシド;末端不飽和アクリレート又はメチルアクリレート;不飽和アリールエーテル;不飽和芳香族炭化水素;不飽和シクロアルカン、例えばトリビニルシクロヘキサン;ビニル官能化ポリマー又はオリゴマー;ビニル官能化及び/又は末端不飽和アリル官能化シラン及び/又はビニル官能化シリコーン;不飽和脂肪酸;不飽和脂肪酸エステル;或いはこれらの2又はより多くの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。こうした不飽和物質の説明的な例には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−オクタデセン、スチレン、アルファメチルスチレン、シクロペンテン、ノルボルネン、1,5−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、ビニルシクロヘキセン、アリルアルコール、アリル末端ポリエチレングリコール、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリル末端イソシアネート又はアクリレートプレポリマー、ポリブタジエン、アリルアミン、メタリルアミン、アセチレン、フェニルアセチレン、ビニル側鎖又はビニル末端ポリシロキサン、ビニルシクロシロキサン、ビニルシロキサン樹脂、他の末端不飽和アルケニルシラン又はシロキサン、ビニル官能化合成又は天然鉱物等々があるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
ヒドロシリル化反応に適切な不飽和ポリエーテルは、一般式:
R25(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)w−OR26;及び/又は
R26O(CHR27CH2O)w(CH2CH2O)z−CR282−C≡C−CR282(OCH2CH2)z(OCH2CHR27)wR26
を有するポリオキシアルキレンを含み、式中、R25は2から10の炭素原子を含む不飽和有機基、例えばアリル、メチルアリル、プロバルギル又は3-ペンチニルである。不飽和がオレフィン的である場合、それは望ましくは末端にあって、円滑なヒドロシリル化を容易にする。しかしながら、不飽和が三重結合である場合には、それは内部にあってよい。R26の各々は独立して、水素、ビニル、アリル、メタリル、又は1から8炭素原子のポリエーテル封鎖基、例えばアルキル基:CH3、n−C4H9、t−C4H9又はi−C8H17、CH3COO、t−C4H9COOのようなアシル基、CH3C(O)CH2C(O)Oのようなベータケトエステル基、又はトリアルキルシリル基である。R27及びR28はC1〜C20アルキル基のような1価の炭化水素基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、2-エチルヘキシル、ドデシル及びステアリル、又はアリール基、例えばフェニル及びナフチル、又はアルカリール基、例えばベンジル、フェニルエチル及びノニルフェニル、又はシクロアルキル基、例えばシクロヘキシル及びシクロオクチルである。R28はまた水素であってよい。メチルは、R27及びR28基に特に適している。zの各々は0から100以下であり、wの各々は0から100以下である。1つの実施形態では、z及びwの値は1から50以下である。
【0077】
上に記載したように、本発明は1つの実施形態では、脱水素シリル化生成物を生成するためのプロセスに向けられており、それは(a)少なくとも1つの不飽和官能基を含有する不飽和化合物、(b)少なくとも1つのシリルヒドリド官能基を含有するシリルヒドリド、及び(c)触媒を含む混合物を、任意選択で溶媒の存在下に反応させて脱水素シリル化生成物を生成することを含んでなり、そこにおいて触媒は式(I)の錯体又はその付加物である。1つの実施形態では、このプロセスは、組成物を担持された又は非担持の触媒の金属錯体と接触させて、シリルヒドリドを少なくとも1つの不飽和基を有する化合物と反応させ、脱水素シリル化生成物を生成することを含んでなり、生成物は金属錯体触媒を含んでいてもよい。脱水素シリル化反応は任意選択的に、溶媒の存在下で行うことができる。所望ならば、脱水素シリル化反応が完了した時に、磁気的分離及び/又は濾過によって、反応生成物から金属錯体を除去することができる。これらの反応は無溶媒で行ってもよく、又は適切な溶媒に希釈して行ってもよい。典型的な溶媒には、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル等々がある。反応は不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
【0078】
脱水素シリル化のために有効な触媒の用量は、反応するアルケンのモル量を基準として、0.001モルパーセントから5モルパーセントの範囲にある。好ましい水準は、0.005から1モルパーセントである。アルケン、シリルヒドリド及び特定のピリジンジイミン錯体の熱安定性に応じて、反応は約−10℃から300℃までの温度で行ってよい。殆どの反応について、10から100℃の範囲の温度が有効であることが見出されている。反応混合物の加熱は、常法を用いて、またマイクロ波装置を用いて行うことができる。
【0079】
本発明の脱水素シリル化反応は、減圧下及び過圧下で行うことができる。典型的には、約1気圧(0.1MPa)から約200気圧(20MPa)の圧力、好ましくは約50気圧(5.0MPa)が適している。より高い圧力は、高い転化率を可能にするために閉じ込めを必要とする、揮発性及び/又は反応性の低いアルケンについて有効である。
【0080】
本発明の触媒は、脱水素シリル化反応を触媒するために有用である。例えば、トリエトキシシラン、トリエチルシラン、MDHM、又はシリルヒドリド官能性ポリシロキサン(例えばMomentive Performance Materials, Inc.のSL 6020 D1)といった適当なシリルヒドリドを、モノ不飽和炭化水素、例えばオクテン、ドデセン、ブテン等と、このCo触媒の存在下に反応させると、得られる生成物は末端シリル置換アルケンであり、そこにおいて不飽和はシリル基に対してベータ位にある。この反応の副生物は、水素化オレフィンである。この反応がシラン対オレフィンのモル比0.5:1(オレフィンとシランのモル比2:1)で行われると、得られる生成物は1:1の割合となる。
【0081】
反応は典型的には、周囲温度及び圧力において容易であるが、より低い又はより高い温度(−10から300℃)又は圧力(大気圧から205気圧(0.1−20.5MPa))において行うことが可能である。この反応には、例えばN,N−ジメチルアリルアミン、アリルオキシ置換ポリエーテル、シクロヘキセン、及び直鎖のアルファオレフィン(即ち1−ブテン、1−オクテン、1−ドデセン等)の、広範囲の不飽和化合物を使用可能である。内部二重結合を含むアルケンを用いる場合には、触媒はまずオレフィンを異性化することが可能であり、その結果反応生成物は、末端不飽和を用いた場合と同じになる。
【0082】
これらのコバルト触媒を用いた脱水素シリル化反応の間、アルケンの二重結合は保存されるため、単一不飽和のオレフィンを用いて、シリルヒドリド含有ポリマーを架橋することができる。例えば、SL6020 D1(MD15DH30M)のようなシリルヒドリドポリシロキサンを、本発明のコバルト触媒の存在下に1−オクテンと反応させて、架橋したエラストマー材料を生成することができる。ヒドリドポリマー及び架橋に用いるオレフィンの鎖長を変化させることによって、この方法により多種多様の新たな材料を生成可能である。従って、本発明のプロセスに用いられる触媒は、有用なシリコーン製品の調製に用途を有し、それらにはコーティング、例えば剥離コーティング、室温硬化性物質、シーラント、接着剤、農業用及びパーソナルケア用製品、並びにポリウレタンフォーム安定化用のシリコーン海面活性剤などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
さらにまた、脱水素シリル化は、多数の不飽和ポリオレフィン、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン又はEPDM型のコポリマーのいずれについても、これらの商業的に重要なポリマーをシリル基で官能化したり、従来よりも低い温度において、複数のSiH基を含むヒドロシロキサンの使用を介してそれらを架橋したりするために実行してよい。これによって、これらの既に価値のある材料の用途を、新たな商業的に有用な領域に拡張する潜在性がもたらされる。
【0084】
1つの実施形態では、脱水素シリル化は式(I)のコバルト触媒を用いることによって行われ、式中R6及び/又はR7はアリール基又は置換アリール基を含む。1つの実施形態では、R6及び/又はR7
【化25】

であり、式中、R18、R19、R20、R21、及びR22の各々は独立して、水素、C1〜C18アルキル、C1〜C18置換アルキル、アリール、置換アリール、又は不活性置換基であり、1又はより多くのR18−R22は水素以外の場合、任意選択で少なくとも1つのヘテロ原子を含む。1つの実施形態では、R18及びR22は独立してメチル、エチル、又はイソプロピル基を含んでいてよく、またR20は水素又はメチルであってよい。1つの実施形態では、R18、R20、及びR22は各々メチルであり、R19及びR21は水素である。1つの実施形態では、脱水素シリル化プロセスに用いられるコバルト錯体は、式(II)の錯体、式(III)の錯体、又はそれらの組み合わせである。
【0085】
本発明の触媒錯体は、脱水素シリル化反応を触媒するについて効率的及び選択的である。例えば本発明の触媒錯体が、アルキル封鎖アリルポリエーテル又は不飽和基含有化合物の脱水素シリル化に用いられる場合、反応生成物は本質的に、未反応アルキル封鎖アリルポリエーテル及びその異性化生成物や、不飽和基を有する未反応化合物を含まない。また、不飽和基含有化合物が不飽和アミン化合物である場合、脱水素シリル化生成物は本質的に、不飽和化合物の内部付加生成物及び異性化生成物を含まない。1つの実施形態では、不飽和の出発物質がオレフィンであるとき、反応は脱水素シリル化生成物に対して高度に選択性があり、反応生成物は本質的に、どのようなアルケン副生物も含まない。ここで使用するとき、「本質的に含まない」とは、脱水素シリル化生成物の全重量に基づいて、10重量%を越えない、好ましくは5重量%を越えないことを意味する。「内部付加生成物を本質的に含まない」は、ケイ素が末端炭素原子に付加することを意味する。
【0086】
コバルト錯体はまた、シリルヒドリド及び少なくとも1つの不飽和基を有する化合物を含む組成物の、ヒドロシリル化触媒としても使用可能である。このヒドロシリル化プロセスは、組成物を、担持又は非担持の式(I)のコバルト錯体と接触させることを含み、シリルヒドリドと、少なくとも1つのアルファ不飽和基を有する化合物との反応を生じさせて、ヒドロシリル化生成物を生成する。ヒドロシリル化生成物は、触媒組成物からの成分を含んでいてよい。ヒドロシリル化反応は任意選択的に、溶媒の存在下で、減圧下又は過圧下に、そしてバッチ式又は連続式プロセスで行うことが可能である。ヒドロシリル化反応は、約−10℃から約200℃の温度で行うことができる。所望ならば、ヒドロシリル化反応が完了したときに、触媒組成物を反応生成物から、濾過によって除去することができる。ヒドロシリル化は、脱水素シリル化についての場合と同じ種類のシリルヒドリド1モルを、同じ種類の不飽和化合物1モルと反応させることによって行うことができる。
【0087】
プロセスを実行するために成分のそれぞれを相互に添加する仕方又は順序は特に限定されず、所望に応じて選択可能である。1つの実施形態では、シリルヒドリドをコバルト錯体及び不飽和オレフィンを含有している混合物に対して添加可能である。別の実施形態では、不飽和オレフィンをコバルト錯体及びシリルヒドリドを含有している混合物に対して添加可能である。さらに別の実施形態では、シリルヒドリドと不飽和オレフィンの混合物を、コバルト錯体、シリルヒドリド及び不飽和オレフィンの混合物に対して添加可能である。上記の実施形態における最初の混合物は、残りの成分の添加に先立って加熱又は予備反応させてよいことが理解されよう。
【0088】
上述したように、触媒は式(I)のコバルト錯体を含むことができる。1つの実施形態では、ヒドロシリル化プロセスについて、コバルト錯体は式(I)におけるR6及び/又はR7がアルキルのものである。1つの実施形態では、R6及びR7はメチルである。1つの実施形態では、ヒドロシリル化プロセスは、式(IV)、式(V)、又はそれらの組み合わせのコバルト錯体を使用可能である。
【0089】
本発明のコバルト錯体は、効率的且つ選択的にヒドロシリル化反応を触媒する。例えば、本発明の金属錯体が、アルキル封鎖アリルポリエーテルと不飽和基含有化合物のヒドロシリル化に用いられるとき、反応生成物は本質的に、未反応アルキル封鎖アリルポリエーテル及びその異性化生成物を含まない。1つの実施形態では、反応生成物は、未反応アルキル封鎖アリルポリエーテル及びその異性化生成物を含まない。1つの実施形態では、ヒドロシリル化プロセスは、いくらかの脱水素シリル化生成物を生成しうる。しかしながら、このヒドロシリル化プロセスは、ヒドロシリル化生成物に対して高度に選択的であることが可能であり、生成物は本質的に、脱水素生成物を含まない。ここで使用するとき、「本質的に含まない」とは、ヒドロシリル化生成物の全重量に基づいて、10重量%を越えない、5重量%を越えない、3重量%を越えない、さらには1重量%を越えないことを意味する。「内部付加生成物を本質的に含まない」は、ケイ素が末端炭素原子に付加することを意味する。
【0090】
触媒組成物は、脱水素シリル化又はヒドロシリル化反応のいずれについても、所望とする金属濃度をもたらすのに十分な量で提供可能である。1つの実施形態において、触媒の濃度は、反応混合物の全重量に基づいて約5%(50000ppm)又はそれ以下;約1%(10000ppm)又はそれ以下;反応混合物の全重量に基づいて5000ppm又はそれ以下;約1000ppm又はそれ以下;反応混合物の全重量に基づいて約500ppm又はそれ以下;約100ppm又はそれ以下;反応混合物の全重量に基づいて約50ppm又はそれ以下;さらには反応混合物の全重量に基づいて約10ppm又はそれ以下である。1つの実施形態では、触媒の濃度は約10ppmから約50000ppm;約100ppmから約10000ppm;約250ppmから約5000ppm;さらには約500ppmから約2500ppmである。1つの実施形態では、金属原子の濃度は、反応混合物の全重量に基づいて、約100から約1000ppmである。金属(例えばコバルト)の濃度は、約1ppmから約5000ppm;約5ppmから約2500ppm;約10ppmから約1000ppm、さらには約25ppmから約500ppmであることができる。ここで、また本明細書及び請求の範囲の他の個所でも同様に、数値は組み合わせて新たな、非開示の範囲を形成することができる。
【0091】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明することを意図したものであるが、いかなる意味でも限定するものではない。特に別様に言及しない限り、部及びパーセントは全て重量基準であり、全ての温度は摂氏である。本出願において参照した全ての刊行物及び米国特許は全体を、その参照によって本明細書に取り入れるものとする。
【実施例】
【0092】
全般的な考察
空気及び水分の影響を受けやすい全ての操作は、標準的なシュレンク技術を用いて、又は精製窒素雰囲気を含んでいるMBraun社の不活性雰囲気ドライボックスを用いて行った。空気及び水分の影響を受けやすい操作のための溶媒は、溶媒用のシステムカラムを通過させることによって乾燥及び脱酸素し、ドライボックス中に4Åのモレキュラーシーブと共に格納した。ベンゼン-d6はCambridge IsotopeLaboratoriesから購入し、ナトリウムで乾燥し、ドライボックス中に4Åのモレキュラーシーブと共に格納した。錯体(MesPDI)CoMe及び(CyAPDI)CoMeは、Humphries, M. J.;Tellmann, K. P.;Gibson, V. C.;White, A. J. P.;Williams, D. J. Organometallics2005, 24, 2039-2050に記載の手順に従って調製した。Py2Co(CH2TMS)2は、Zhu, D.;Janssen, F. F. B.J.;Budzelaar,P. H. M. Organometallics 2010, 29, 1897に記載の手順に従って調製した。
【0093】
基質はLiAlH4又はCaH2で乾燥し、使用前に高真空で脱ガスした。NMRスペクトルは、Varian社製INOVA-500又はBruker社製-500MHz分光計を用いて取得した。1H NMRスペクトルの化学シフト(δ)は1000000分の1(ppm)単位で与えられ、ベンゼン-d6の残留溶媒(7.16ppm)を参照とした。
【0094】
GC分析は、Shimadzu AOC-20sオートサンプラーとShimadzu SHRXI-5MSキャピラリーカラム(15m×250μm)を備えた、島津製作所製のShimadzuGC-2010ガスクロマトグラフを用いて行った。この装置は、注入量を1μL、注入口スプリット比を20:1、並びに注入口及び検出器温度をそれぞれ250℃及び275℃に設定した。UHPグレードのヘリウムをキャリアガスとして、1.82mL/分の流量で用いた。全ての分析について用いた温度プログラムは次の通りである:60℃、1分;15℃/分で250℃へ、2分。
【0095】
以下の文における触媒充填量は、コバルト錯体のモル%(molCo錯体/molオレフィン×100)で報告されている。
【0096】
実施例1:アロキシジフェニルシランの合成
【化26】

アロキシジフェニルシランの合成は、Bergens, S. H.;Noheda, P.;Whelan, J.;Bosnich, B. J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 2121-2128記載の修正された文献手順に従い、空気中で行った。Et2O(250mL)中のアリルアルコール(2.9g, 50mmol)とトリエチルアミン(5.1g, 50mmol)の溶液をアイスバスで冷却した。迅速に撹拌しながら、この溶液にクロロジフェニルシラン(11g, 50mmol)を滴下して処理した。大量のふわふわした白色の沈殿物(Et3NHCl)が直ちに観察された。この混合物を室温まで加温し、1時間にわたって撹拌した。得られた溶液をCelite(セライト)で濾過し、Et2Oで洗浄した。濾液を濃縮すると無色の油が生じ、これを蒸留すると(84-85℃, 65mmTorr)所望の生成物が無色の油として、80%の収率で得られた。1H NMR(400MHz, ベンゼン-d6)δ 7.74-7.62(m, 4H), 7.27-7.06(m, 6H), 5.81(ddt, J=17.1, 10.6, 4.6Hz,1H), 5.69(s, 1H), 5.31(dq, J=17.1, 1.8Hz, 1H), 5.00(dq, J=10.6, 1.8Hz, 1H),4.16(dt, J=4.6, 1.8Hz, 2H)。13C NMR(126MHz, C6D6)δ 136.73, 135.11, 134.31, 130.66, 128.39, 128.25, 128.06, 127.87,114.77, 65.60。
【0097】
実施例2:アロキシジメチルシランの合成
【化27】

アロキシジメチルシラン、アロキシジフェニルシランと同様の方法で合成した。Et2O(250mL)中のアリルアルコール(2.9g, 50mmol)とトリエチルアミン(5.1g, 50mmol)の溶液をアイスバスで冷却した。迅速に撹拌しながら、この溶液にクロロジメチルシランを(4.7g, 50mmol)を滴下添加した。大量のふわふわした白色の沈殿物(Et3NHCl)が直ちに観察された。この混合物を室温まで加温し、1時間にわたって撹拌した。得られた溶液をCelite(セライト)で濾過し、Et2Oで洗浄した。濾液を濃縮すると無色の油が生じ、これを分別蒸留すると(79-83℃)生成物が無色の油として、50%の収率で得られた。1H NMR(400MHz, クロロホルム-d)δ 5.93(ddt, J=17.2, 10.1, 5.0Hz, 1H),5.26(dq, J=17.2, 1.8Hz, 1H), 5.12(dq, J=10.4, 1.6Hz, 1H), 4.68-4.55(m, 1H),4.18(dt, J=5.0, 1.7Hz, 2H), 0.23(s, 3H), 0.23(s, 3H)。
【0098】
実施例3:(MesPDI)Co(Ph2SiOC3H5)の合成
【化28】

グローブボックス中で、1mLのEt2O中の(MesPDI)CoMeの紫色の溶液(47mg, 0.1mmol)と、アロキシジフェニルシラン(24mg, 0.1mmol)のEt2O(1mL)溶液を混合し、0.5時間撹拌した。栗色の溶液が観察された。この溶液を(セライト)で濾過し、真空下に濃縮した。得られた溶液をペンタンと積層して−35℃で2日間貯蔵し、栗色の結晶を生成した。1H NMR(400MHz, ベンゼン-d6)δ 7.77(d, J=7.6Hz, 1H), 7.70(d, J=7.6, 1H), 7.31(t, J=7.6Hz, 1H),7.10-6.94(m, 8H), 6.88-6.82(m, 2H), 6.73-6.64(m, 2H), 6.62(s, 1H), 6.57(s, 1H),5.24(dd, J=9.9, 5.4Hz, 1H), 4.78(br, 1H), 3.49(t, J=10.4Hz, 1H), 3.16(d,J=8.7Hz, 1H), 2.72(d, J=12.5Hz, 1H), 2.05(s, 3H), 2.01(s, 3H), 1.87(s, 3H),1.76(s, 3H), 1.65(s, 3H), 1.44(s, 3H), 1.42(s, 3H), 1.02(s, 3H)。13C NMR(126MHz, ベンゼン-d6)δ 154.33, 150.22, 149.42, 148.74, 147.28,146.88, 144.56, 140.38, 137.90, 134.80, 134.69, 134.49, 133.16, 133.01, 132.25,129.94, 129.87, 129.54, 129.33, 129.12, 129.07, 128.84, 128.57, 127.63, 127.58,127.50, 126.34, 125.70, 122.72, 121.14, 115.77, 75.83, 71.26, 61.22, 20.81,20.76, 20.55, 18.69, 18.04, 17.12, 15.60, 15.26。
【0099】
実施例4:(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)の合成
【化29】

グローブボックス中で、トルエン中の(MeAPDI)Co(CH2TMS)2(42mg, 0.1mmol)の茶色の溶液に、アロキシジフェニルシラン(24mg, 0.1mmol)を添加した。この反応混合物を8時間撹拌し、紫色の溶液が観察された。この溶液をCelite(セライト)で濾過し、真空下に濃縮した。得られた溶液をペンタンと積層して−35℃で2日間貯蔵し、所望の生成物が紫色の結晶として得られた。1H NMR(500MHz, ベンゼン-d6)δ 7.58(d, J=7.6Hz, 1H), 7.49(dd, J=7.6Hz, 1H), 7.19-6.94(m, 7H),6.87(t, J=7.6Hz, 2H), 6.56-6.50(m, 2H), 5.43-5.36(m, 1H), 4.32-4.22(m, 2H),3.35-3.29(m, 1H), 2.89−2.91(m, 1H), 2.39(s, 3H), 1.83(s, 3H), 1.62(s, 3H), 1.40(s, 3H)。13C NMR(126MHz, C6D6)δ 152.63,149.63, 145.92, 145.80, 144.01, 138.30, 132.15, 131.93, 128.35, 128.15, 127.97,127.37, 127.23, 127.21, 126.83, 121.17, 119.50, 114.13, 70.81, 69.00, 47.09,39.65, 35.26, 22.76, 14.56, 13.42。
【0100】
実施例5:(MesPDI)Co(Me2SiOC3H5)の合成
【化30】

グローブボックス中で、トルエン(1mL)中の(MesPDI)CoMe(47mg, 0.1mmol)の紫色の溶液にアロキシジメチルシラン(16mg, 0.12mmol)を添加し、2時間撹拌して赤色の溶液を得た。この溶液をCelite(セライト)で濾過し、真空下に濃縮した。得られた溶液をペンタンと積層して−35℃で1日間貯蔵し、所望の生成物が赤色の結晶として得られた。1H NMR(300MHz, ベンゼン-d6)δ 7.71(dd, J=7.6, 1.1Hz, 1H), 7.65(dd, J=7.7, 1.1Hz, 1H), 7.06(t, J=7.7Hz,1H), 6.76(s, 1H), 6.70−6.65(m, 3H), 5.05(dd, J=9.8, 5.6Hz, 1H), 4.90−4.75(m, 1H),3.30(t, J=10.4Hz, 1H), 3.15(d, J=8.6Hz, 1H), 2.65(d, J=12.3Hz, 1H), 2.14(s,3H), 2.07(s, 6H), 2.05(s, 3H), 1.91(s, 6H), 1.68(s, 3H), 1.46(s, 3H), 1.28(s,3H), -0.18(s, 3H), -0.45(s, 3H)。13C NMR(126MHz, ベンゼン-d6)δ 152.01, 147.97, 147.69, 147.49, 144.98, 144.56, 134.64, 134.53,133.64, 132.68, 129.71, 129.62, 129.60, 129.45, 129.41, 129.01, 128.66, 128.35,128.16, 127.97, 121.19, 120.85, 114.52, 76.52, 71.16, 59.70, 20.83, 20.81,20.38, 19.91, 19.12, 18.31, 15.45, 15.44, 3.41, 1.93。
【0101】
実施例6:(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)の合成
【化31】

この化合物は、(MesPDI)Co(Me2SiOC3H5)(実施例5)に類似の方法で調製された。グローブボックス中で、ペンタン(1mL)中の(MeAPDI)Co(CH2TMS)2(42mg, 0.1mmol)の茶色の溶液及びEt2O(5滴)に対し、アロキシジメチルシラン(16mg, 0.12mmol)を添加し、6時間撹拌した。紫色の溶液と固形物の沈殿が観察された。固形物は濾過によって分離し、トルエン中に溶解しCelite(セライト)を通過させることによって精製した。得られた溶液をペンタンと積層して−35℃で1日間貯蔵し、所望の生成物が紫色の結晶として得られた。1H NMR(500MHz, ベンゼン-d61H NMR(300MHz, ベンゼン-d6)δ 7.63(dd, J=7.6, 1.1Hz, 1H), 7.51(dd, J=7.7,1.2Hz, 1H), 6.99(t, J=7.6Hz, 1H), 5.17(dd, J=10.0, 6.4Hz, 1H), 4.40-4.12(m,1H), 4.04(t, J=10.2Hz, 1H), 3.43(dd, J=9.3, 1.3Hz, 1H), 2.99(dd, J=12.3, 1.3Hz,1H), 2.60(s, 3H), 2.24(s, 3H), 2.05(s, 3H), 1.87(s, 3H), -0.01(s, 3H), -0.93(s,3H)。13C NMR(126MHz, ベンゼン-d6)δ 151.02, 148.49, 145.32, 142.84, 120.04, 119.50, 113.29, 70.99,68.12, 48.17, 40.03, 35.68, 14.30, 14.20, 3.80, -1.94。
【0102】
実施例7:(MeAPDI)CoCH---2TMSの合成
【化32】

(MeAPDI)Co(CH2TMS)2(50mg, 0.12mmol)の茶色の固体をTHF(5mL)に溶解した。この溶液を窒素雰囲気下に24時間、室温で放置した。(MeAPDI)Co(CH2TMS)が形成されると、溶液の色は紫色に変化した。THF溶媒を0.5mLまで減らし、1mLのペンタンと積層した。この溶液を−35℃で結晶化させると、紫色の固形分が80%の収率で得られた。1H NMR(300MHz, ベンゼン-d6)δ 9.85(t, J=7.7Hz, 1H), 7.24(d, J=7.7Hz, 2H), 4.00(s, 6H), 1.23(s, 2H),-0.10(s, 9H), -0.55(s, 6H)。
【0103】
実施例8:(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)の合成
【化33】

グローブボックス中で、ペンタン(2mL)中の(MeAPDI)Co(CH2TMS)(200mg, 0.60mmol)の紫色の溶液にアロキシジメチルシラン(76mg, 0.66mmol, 1.1当量)を添加し、2時間撹拌した。固形分の沈殿が観察された。この固形分を濾過して、92%の収率で分離した。1H NMR分光法によればこの固形分はクリーンであり、触媒作用に適している。不純物が観察された場合は、この固形分をトルエン及びペンタン中で−35℃において再結晶化することによって精製可能である。1H NMR(500MHz, ベンゼン-d61H NMR(300MHz, ベンゼン-d6)δ 7.63(dd, J=7.6, 1.1Hz, 1H), 7.51(dd, J=7.7,1.2Hz, 1H), 6.99(t, J=7.6Hz, 1H), 5.17(dd, J=10.0, 6.4Hz, 1H), 4.40-4.12(m,1H), 4.04(t, J=10.2Hz, 1H), 3.43(dd, J=9.3, 1.3Hz, 1H), 2.99(dd, J=12.3, 1.3Hz,1H), 2.60(s, 3H), 2.24(s, 3H), 2.05(s, 3H), 1.87(s, 3H), -0.01(s, 3H), -0.93(s,3H)。13C NMR(126MHz, ベンゼン-d6)δ 151.02, 148.49, 145.32, 142.84, 120.04, 119.50, 113.29, 70.99,68.12, 48.17, 40.03, 35.68, 14.30, 14.20, 3.80, -1.94。
【0104】
実施例9:HSi(OEt)3での1−オクテンのヒドロシリル化のための触媒の選別
グローブボックス中で、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)を、撹拌棒を備えたバイアル中に秤量した。固形のCo触媒(2−3mg, 0.5mol%)を別のバイアル中に秤量し、次いで基質中に添加した。バイアルをキャップでシールし、撹拌した。1時間後、空気に曝露することによって反応を急冷した。生成混合物をシリカゲルを介して濾過し、ヘキサンで溶出させた。この生成混合物は、シリカゲルのプラグ(Fluka(登録商標)高純度グレード、孔径60、粒径230−400メッシュ、粒径40−63μm、フラッシュクロマトグラフィー用)を通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。粗反応混合物はGCによって分析した。次いで粗反応混合物から揮発性物質を除去し、得られた混合物を1H及び13C NMR分光法によって分析した。
【化34】
【0105】
実施例10:(MesPDI)Co(Ph2SiOC3H5)を用いたグローブボックス中でのHSi(OEt)3による1−オクテンの脱水素シリル化
【化35】

グローブボックス中で、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(82mg, 0.5mmol)を、撹拌棒を備えたバイアル中に秤量した。(MesPDI)Co(Ph2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)の紫色の固体を別のバイアル中に秤量し、次いで基質と合わせた。バイアルをキャップ及び絶縁テープでシールし、ボックスから取り出し、オイルバス中50℃で撹拌した。12時間後、空気に曝露することによって反応を急冷した。反応混合物は直接GCに注入した。基質は定量的にアリルシラン及びオクタンへと変換されていた(転化率>98%出発オレフィン)。残存物はシリカゲルを通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。得られた溶液は真空下に乾燥し、1H及び13C NMR分光法によって分析してGCの結果を確認した。
【0106】
実施例11:(MesPDI)Co(Me2SiOC3H5)を用いたグローブボックス中でのHSi(OEt)3による1−オクテンの脱水素シリル化
【化36】

グローブボックス中で、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(82mg, 0.5mmol)を、撹拌棒を備えたバイアル中に秤量した。紫色の(MesPDI)Co(Me2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)を別のバイアル中に秤量し、次いで基質と合わせた。バイアルをキャップ及び絶縁テープでシールし、ボックスから取り出し、オイルバス中50℃で撹拌した。2時間後、空気に曝露することによって反応を急冷した。反応混合物は直接GCに注入した。基質は完全にアリルシラン及びオクタンへと変換されていた(転化率>98%出発オレフィン)。残存物はシリカゲルを通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。得られた溶液は真空下に乾燥し、1H及び13C NMR分光法によって分析してGCの結果を確認した。
【0107】
実施例12:(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)を用いたグローブボックス中でのHSi(OEt)3による1−オクテンのヒドロシリル化
【化37】

グローブボックス中で、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)を、撹拌棒を備えたバイアル中に秤量した。紫色の(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)を別のバイアル中に秤量し、次いで基質と合わせた。この混合物を室温で1時間にわたって撹拌した。反応は空気に曝露することによって急冷した。反応混合物は直接GCに注入した。残存物はシリカゲルを通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。得られた溶液は真空下に乾燥し、1H及び13C NMR分光法によって分析してGCの結果を確認した。
【0108】
実施例13:(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)を用いたグローブボックス中でのHSi(OEt)3による1−オクテンのヒドロシリル化
【化38】

グローブボックス中で、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)を、撹拌棒を備えたバイアル中に秤量した。紫色の(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)を別のバイアル中に秤量し、次いで基質と合わせた。この混合物を室温で1時間にわたって撹拌した。反応は空気に曝露することによって急冷した。反応混合物は直接GCに注入した。残存物はシリカゲルを通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。得られた溶液は真空下に乾燥し、1H及び13C NMR分光法によって分析してGCの結果を確認した。
【0109】
実施例14:(MesPDI)Co(Ph2SiOC3H5)をアルゴン下で用いたHSi(OEt)3での1−オクテンのベンチトップ脱水素シリル化
【化39】

撹拌棒を備えた50mLのシュレンクフラスコに、1−オクテン(224mg,2mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)をグローブボックス中で入れた。このフラスコをガラスストッパーで封し、ボックスから取り出した。紫色の(MesPDI)Co(Ph2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)をバイアル中に秤量し、ボックスから取り出して10分間空気に曝露した。アルゴン流下に、この固体触媒をシュレンクフラスコに添加した。フラスコをガラスストッパーで封し、オイルバス中50℃で加熱した。12時間後、反応は空気に曝露することによって急冷した。反応混合物はGCによって分析し、完全な変換と>95%のアリルシランが示された。残存物はシリカゲルを通して濾過し、ヘキサンで溶出させた。得られた溶液は真空下に乾燥し、1H及び13C NMR分光法によって分析した。
【0110】
実施例15:(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)をアルゴン下で用いたHSi(OEt)3での1−オクテンのベンチトップヒドロシリル化
【化40】

撹拌棒を備えた50mLのシュレンクフラスコに、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)をグローブボックス中で入れた。このフラスコをガラスストッパーで封し、ボックスから取り出した。紫色の(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)をバイアル中に秤量し、ボックスから取り出して10分間空気に曝露した。アルゴン流下に、この固体触媒をシュレンクフラスコに添加した。フラスコをガラスストッパーで封し、1時間撹拌した。反応は空気に曝露することによって急冷した。反応混合物はGC及び1H NMR分光法によって分析し、逆マルコフニコフヒドロシリル化生成物の収率が>98%であることが示された。
【0111】
実施例16:(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)をアルゴン下で用いたHSi(OEt)3での1−オクテンのベンチトップヒドロシリル化
【化41】

撹拌棒を備えた50mLのシュレンクフラスコに、1−オクテン(112mg,1mmol)とトリエトキシシラン(164mg,1mmol)をグローブボックス中で入れた。このフラスコをガラスストッパーで封し、ボックスから取り出した。紫色の(MeAPDI)Co(Me2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)をバイアル中に秤量し、ボックスから取り出して10分間空気に曝露した。アルゴン流下に、この固体触媒をシュレンクフラスコに添加した。フラスコをガラスストッパーで封し、1時間撹拌した。反応は空気に曝露することによって急冷した。反応混合物はGC及び1H NMR分光法によって分析し、収率が>98%の逆マルコフニコフヒドロシリル化生成物と痕跡量の脱水素シリル化生成物が示された。
【0112】
実施例17:(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)をアルゴン下で用いたベンチトップでのシロキサン架橋
【化42】

SL6100及びSL6020を空気中で保存し、さらに精製することなしに使用した。撹拌棒を備えた50mLのシュレンクフラスコに、SL6100(1g)及びSL6020 D1(44mg)を空気中で入れた。この混合物に、トルエンを1滴添加した。フラスコをアルゴンで1分間パージした。(MeAPDI)Co(Ph2SiOC3H5)(2mg, 0.5mol%)をバイアル中に秤量し、ボックスから取り出し、5分間空気に曝露した。空気曝露した固体触媒は、アルゴン流下にシュレンクフラスコに添加した。このフラスコをガラスストッパーで封した。1時間にわたって、ゲルの生成が観察された。
【0113】
実施例18:MeAPDICo(Me2SiOアリル)を用いたMDHMでのMViMViのシリル化
窒素を充填したドライボックス中で、シンチレーションバイアルに0.090g(0.483mmol)のMViMViと約0.002g(0.005mmol)のMeAPDICo(Me2SiOアリル)(1mol%)を入れた。この混合物中に次いでMDHM(0.215g, 0.966mmol)を添加し、室温で1時間撹拌して反応を行った。その後、混合物を空気に曝露することによって急冷した。生成混合物はシリカゲルを通じて濾過し、ヘキサンで溶出させた。粗生成混合物はGCによって分析した。次いで粗混合生成物から揮発性物質を除去し、得られた混合物を1H及び13C NMR分光法によって分析した。1H NMRスペクトルの〜0.5ppm領域における多重項(逆マルコフニコフ生成物を示す)及び〜1.0ppm領域における2重項(マルコフニコフ生成物)は、生成物の比を判定するための診断用信号である。
【化43】
【0114】
実施例19:MeAPDICo(Me2SiOアリル)を用いたMDHMでのビニルトリメチルシランのシリル化
窒素を充填したドライボックス中で、シンチレーションバイアルに0.090g(0.898mmol)のビニルトリメチルシランと約0.002g(0.005mmol)のMeAPDICo(Me2SiOアリル)(1mol%)を入れた。この混合物中に次いでMDHM(0.200g, 0.898mmol)を添加し、室温で1時間撹拌して反応を行い、その後、混合物を空気に曝露することによって急冷した。生成混合物はシリカゲルを通じて濾過し、ヘキサンで溶出させた。粗生成混合物はGCによって分析した。次いで粗混合生成物から揮発性物質を除去し、得られた混合物を1H及び13C NMR分光法によって分析した。1H NMRスペクトルの〜0.5ppm領域における多重項(逆マルコフニコフ生成物を示す)及び〜1.0ppm領域における2重項(マルコフニコフ生成物)は、生成物の比を判定するための診断用信号である。
【化44】
【0115】
実施例20:MeAPDICo(Me2SiOアリル)を用いたペンタメチルジシロキサンでの1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ビニルトリシロキサンのシリル化
窒素を充填したドライボックス中で、シンチレーションバイアルに0.221g(0.891mmol)の1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ビニルトリシロキサンと約0.003g(0.009mmol)のMeAPDICo(Me2SiOアリル)(1mol%)を入れた。この混合物中に次いでペンタメチルジシロキサン(0.132g, 0.891mmol)を添加し、室温で1時間撹拌して反応を行い、その後、混合物を空気に曝露することによって急冷した。生成混合物はシリカゲルを通じて濾過し、ヘキサンで溶出させた。粗生成混合物はGCによって分析した。次いで粗混合生成物から揮発性物質を除去し、得られた混合物を1H及び13C NMR分光法によって分析した。1H NMRスペクトルの〜0.5ppm領域における多重項(逆マルコフニコフ生成物を示す)及び〜1.0ppm領域における2重項(マルコフニコフ生成物)は、生成物の比を判定するための診断用信号である。
【化45】
【0116】
以上の記述には多くの具体例を含んでいるが、それらの具体例は本発明の範囲に対する限定としてではなく、単に本発明の好ましい実施形態の例証として解釈されるべきである。当業者は、ここに付属の請求の範囲に定義された発明の思想及び範囲内に含まれる、他の多くの可能な変形を想起するであろう。