特許第6486945号(P6486945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6486945
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】拡張システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20190311BHJP
   A61B 17/56 20060101ALN20190311BHJP
【FI】
   A61B17/02
   !A61B17/56
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-544408(P2016-544408)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-500980(P2017-500980A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2014072318
(87)【国際公開番号】WO2015103066
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】14/147,345
(32)【優先日】2014年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】サイダ・ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ブートワラ・ゾハー
(72)【発明者】
【氏名】フェン・マット
(72)【発明者】
【氏名】ラトリッジ・ヘンリー
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−540196(JP,A)
【文献】 米国特許第05776110(US,A)
【文献】 特開2011−161226(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0083688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/02
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張システムであって、
長手方向軸、近位端、遠位端、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面を有する、細長い本体を含む第1拡張器であって、前記第1拡張器の前記細長い本体は実質的に長円形の横断面を有し、前記第1拡張器の前記細長い本体の前記実質的に長円形の横断面が長軸及び短軸を有し、前記短軸が前記長軸に対して実質的に垂直である、第1拡張器と、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第2拡張器であって、前記第2拡張器の前記細長い本体は実質的に長円形の横断面を有し、前記第2拡張器の前記細長い本体の前記実質的に長円形の横断面が長軸及び短軸を有し、前記第2拡張器の前記短軸が前記第2拡張器の前記長軸に対して実質的に垂直であり、前記第2拡張器の前記穴が、前記第1拡張器を嵌合状に受容するよう構成されており、これにより、前記第2拡張器の前記長軸が、前記第1拡張器の前記短軸に揃い、かつ前記第2拡張器の前記短軸が、前記第1拡張器の前記長軸に揃う、第2拡張器と、を含む、拡張システム。
【請求項2】
前記第1拡張器の前記細長い本体が、前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有し、前記第1拡張器の前記穴が、前記第1拡張器の前記長手方向軸に揃う、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項3】
前記第1拡張器の前記細長い本体が、前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有し、前記第1拡張器の前記穴が、前記第1拡張器の前記長手方向軸に対してずれている、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項4】
前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、請求項2に記載の拡張システム。
【請求項5】
前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、請求項3に記載の拡張システム。
【請求項6】
前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項7】
前記第1拡張器の前記細長い本体の前記外表面が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、前記チャネルが、前記第1拡張器の前記細長い本体の前記近位端から前記遠位端まで前記外表面に沿って延在し、かつ前記第1拡張器の前記長軸と交差する、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項8】
前記第2拡張器の前記細長い本体の前記外表面が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、前記チャネルが、前記第2拡張器の前記細長い本体の前記近位端から前記遠位端まで前記外表面に沿って延在し、かつ前記第2拡張器の前記長軸と交差する、請求項7に記載の拡張システム。
【請求項9】
前記第2拡張器の前記細長い本体の前記外表面が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、前記チャネルが、前記第2拡張器の前記細長い本体の前記近位端から前記遠位端まで前記外表面に沿って延在し、かつ前記第2拡張器の前記長軸と交差する、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項10】
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第3拡張器であって、前記第3拡張器が実質的に円形の横断面を有し、前記第3拡張器の前記穴が、前記第2拡張器を嵌合状に受容するよう構成されている、第3拡張器を更に含む、請求項1に記載の拡張システム。
【請求項11】
前記第3拡張器の前記細長い本体の前記外表面が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、前記チャネルが、前記第3拡張器の前記細長い本体の前記近位端から前記遠位端まで前記外表面に沿って延在する、請求項10に記載の拡張システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明概念及び本明細書の請求項は、外科処置を実施するためのシステム及び方法に関するものであり、より具体的には、外科処置を実施するため外科的標的部位にアクセスするためのシステム及び方法に関するものであるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
本技術分野は、外科的ラテラルアクセスアプローチについて述べる場合、典型的に、神経モニタリングプローブ、拡張器、及びリトラクターといった外科用器具を使用することからなる。手術レベルが特定され、切開が形成された後、拡張器を使用して、外科的アクセス部位を形成する。この後にしばしば、リトラクター又はその他の専用ツールを使用して、外科的アクセス通路を形成する。
【0003】
患者の脊椎へのラテラルアプローチ中に、脊椎、特に、椎間板腔、又は患者の脊柱内の1つ若しくは2つ以上の椎体にアクセスするために、脊椎の両側にある腰筋が分割される。そのような処置中に、腰筋内にある腰神経叢の神経要素又は神経を回避することが望ましい。腰筋の前側3分の1は典型的に、筋肉分割の安全ゾーンと見なされる。
【0004】
腰筋の神経要素又は神経は、刺激プローブを用いてマッピングすることができる。このようにして、腰筋の最も後側の神経領域又は無神経領域を、位置決め及び特定することができる。刺激プローブは、腰筋の安全な組織分割を開始するために、神経要素又は神経がない最も後側の組織領域を経て腰筋を貫通するか、あるいは、神経要素又は神経がないほぼあらゆる他の領域を貫通して挿入され、脊椎に向かうか又は椎間板腔に入る。次に、拡張器がプローブを覆って配置され、外科的アクセス部位を形成して拡大する。拡張器を使用した後、リトラクター又は他の専用ツールを使用して、この外科的アクセス通路を更に拡大する。
【0005】
同軸性拡張器は筋肉を径方向に分割し、これにより、刺激プローブのすべての側にある組織を均等に押し拡げる。これは、安全ゾーンの外にある神経要素又は神経を圧迫する可能性がある。同軸性拡張器に伴うこの問題を克服するため、方向性拡張器が提案されている。方向性拡張システムは、既知の神経要素を回避するのに有効であるが、組織損傷の程度を軽減しながら同時に、連続的に近くの神経をモニターし、かつ望ましい形状の外科的アクセス部位を形成する能力は限定的である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に開示する本発明の概念を当業者が実現し使用するのに役立てるため、添付図及び概略図を参照するが、これらの図は縮尺通りに描くことを意図したものではなく、図中において、一貫性を保つため、同様の参照番号は同一の又は類似の要素を指すことがある。明確にする目的で、すべての図で必ずしもすべての構成要素にラベル付けしていない場合がある。図面の特定の特徴及び特定の表示は、明確さ及び簡潔さを目的として、縮尺を誇張するか又は概略的に示される場合がある。図面は、以下の通りである。
図1】本明細書において開示される発明概念に従って構築された拡張システムの実施形態の斜視図である。
図2図1の拡張システムの平面図である。
図3】本明細書において開示される発明概念に従って構築された第1拡張器の斜視図である。
図4図3の第1拡張器の平面図である。
図4A】本明細書で開示される発明概念に従って構成された第1拡張器の別の実施形態の平面図である。
図5】本明細書において開示される発明概念に従って構築された第2拡張器の斜視図である。
図6図5の第2拡張器の平面図である。
図7】本明細書において開示される発明概念に従って構築された第3拡張器の斜視図である。
図8図7の第3拡張器の平面図である。
図9A】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図9B】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図9C】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図9D】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図9E】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図9F】この拡張システムを用いて、腰筋の外科的開口部を拡張する方法を示す。
図10】本明細書で開示される発明概念に従って構成された拡張システムの別の実施形態の平面図である。
図11図10の拡張システムの第1拡張器の平面図である。
図12図10の拡張システムの第2拡張器の平面図である。
図13図10の拡張システムの第3拡張器の平面図である。
図14】本明細書で開示される発明概念に従って構成された拡張システムの別の実施形態の平面図である。
図15図14の拡張システムの第1拡張器の平面図である。
図16図14の拡張システムの第2拡張器の平面図である。
図17図14の拡張システムの第3拡張器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明概念の実施形態についての以下の詳細な説明において、発明概念がより完全に理解されるように、多数の具体的な詳細を記述している。しかしながら、本明細書で開示される発明概念がこれらの具体的な詳細を伴わずに実施され得ることが、当業者には明らかとなろう。他の例において、本開示を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴については詳細に説明されていない。
【0008】
本明細書で用いられるとき、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変化形は、非排他的な包含を論ずることを意図したものである。例えば、一連の要素若しくは工程を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素若しくは工程のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない又はそれに本来存在しない他の要素、工程若しくは特徴を含んでもよい。
【0009】
相反する明示的な記載がない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは:Aが真であり(又は存在し)及びBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか一つによって充足される。
【0010】
それに加えて、「ある(「a」又は「an」)」の使用は、本明細書における実施形態の要素及び構成要素について記載するために用いられるものである。これは、単に便宜を図るため、また発明概念の一般的な意味を与えるためになされるものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読み取られるべきであり、単数形は、そうでないことを意味することが明白でない限り、複数形も含む。
【0011】
本開示及び請求項の全体において、「約(about)」、「およそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」などの語は、修飾されている事項が、指定された厳密な値に限定されないが、例えば、計測誤差、製造公差、各部品に及ぼされる応力、摩耗及び破損、又はそれらの組み合わせを原因とする、その値からのわずかな変動又は偏差を含むことを示すように意図したものである。
【0012】
「少なくとも1つ」という用語の使用は、1及び1より大きい任意の数量を含み、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100、並びにすべての整数のそれぞれ、並びにそれらの間を含むが、これらに限定されないことが理解されるであろう。用語「少なくとも1つ」は、それに続く用語に応じて、100又は1000又はそれ以上にまで拡大されることがある。更に、100/1000の数量は限定的に見なすべきものではなく、これを上回る限度であっても、満足のいく結果を生み出し得る。別途記載のない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。
【0013】
本明細書で用いられる「又はそれらの組み合わせ」という用語は、この用語に先行する列挙された項目のすべての並べ換え及び/又は組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、そして特定の状況において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つを含むことを意図したものである。引き続き前記の例に関して、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等のような、1つ又は2つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば、文脈から明白でない限り、一般的に、任意の組み合わせにおける項目又は用語の数には制限がないことを理解するであろう。
【0014】
最後に、本明細書において「一実施形態」又は「実施形態」と述べている場合、それは、当該実施形態に関連して述べられている特定の要素、特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではないが、本明細書で開示される本発明の発明概念は、本明細書で開示される実施形態の1つ又は2つ以上の特徴を含むすべての組み合わせ及び順列を包含することが意図されている。
【0015】
当業者には概ね理解されるように、拡張システムは、脊椎へのアクセス又は外科処置の実施に関連して本明細書で詳細に記述されるが、本明細書で開示される発明概念による拡張システムは、外科医が皮膚を切開し、体壁を貫通して内腔へのアクセスを得て、この切開を拡げた状態に保ち、これにより外科用器具を内腔に挿入できるようするために用いる、任意の所望の整形外科処置又は他の外科処置における使用を見出すこともできる。例えば、本明細書で開示される発明概念による拡張システムは、脊椎に前方又は後方からアクセスするのに使用することができ、脊椎の胸部又は頸部領域へのアクセスに使用することができ、あるいは、ヒト若しくは動物の身体の任意の部分、腔、又は臓器にアクセスするのに使用することができる。
【0016】
本明細書で開示される発明概念による拡張システムの実施形態は、2つ以上の一連の拡張器を外科的開口部に連続的に挿入し、その拡張器を回転させて外科的開口部を拡張することで、外科的開口部を徐々にかつ非外傷的に拡張するのに使用することができる。いくつかの実施形態において、第1拡張器を挿入し、この第1拡張器を回転させ、この第1拡張器を覆って1つ又は2つ以上の第2拡張器を挿入し、後続の各拡張器をそれぞれ回転させて、外科的開口部を拡張させることができる。更に、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される発明概念による拡張システムは、標準又は固定サイズの刺激プローブを備えた、低減された直径の拡張器を含み得る。
【0017】
図1〜2を参照すると、拡張システム100の実施形態が示されている。拡張システム100は、長手方向軸108を中心に互いに嵌合して連結されるよう構成された、第1又は初期拡張器102、1つ又は2つ以上の第2又は中間拡張器104、及び第3又は最終拡張器106を含む。本明細書で開示される発明概念による拡張システムは、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上など、任意の所望の数の拡張器を含み得ることが理解されよう。拡張システム100は、後述されるように電気パルスを伝達するための、モニタリングKワイヤ又は刺激プローブ(図9Aに示す刺激プローブ170など)と組み合わせて使用するよう構成される。
【0018】
ここで図3〜4を参照し、第1拡張器102は、長手方向軸112、近位端114、遠位端116、及び外表面118を有する細長い本体110を含む。細長い本体110は穴120を含み得る。細長い本体110は実質的に長円形の横断面を有し、互いに実質的に垂直である(例えば、互いに実質的に直交する)長軸122及び短軸124を含む。細長い本体110は、長軸122に沿った第1直径(例えば、横径)と、短軸124に沿った第2直径(例えば、共役直径)とを有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【0019】
外表面118は、それ自体に形成された、近位端114から遠位端116まで外表面118に沿って延在する、少なくとも1つのチャネル126を含み得る。チャネル126は、刺激プローブ(例えば図9Bに示す刺激プローブ170a)をスライド可能に受容するよう構成される。チャネル126は外表面118に沿って延在してよく、これにより、いくつかの実施形態において、チャネル126が細長い本体110の長軸122と交差する。いくつかの実施形態において、チャネル126は短軸124と交差してもよく、長軸122若しくは短軸124に接するか若しくは近接して配置されてもよく、及び/又は長軸122と短軸124のいずれにも交差しないよう配置されてもよいことが理解されよう。更に、本明細書で開示される発明概念のいくつかの実施形態において、任意の数のチャネル126を、第1拡張器102に実装することができ、例えば2つ又はそれ以上のチャネル126を実装することができる。複数のチャネル126が実装されるいくつかの実施形態において、本開示の利益を有するよう、1つ又は2つ以上の第1チャネル126が長軸122と交差してもよく、1つ又は2つ以上の第2チャネル126が短軸124と交差してもよいことが、当業者には理解されよう。
【0020】
外表面118は遠位端116近くで内向きに先細になっていてよく、これにより第1拡張器102は、第1拡張器102の遠位端116が組織に挿入されるときに、組織に対する外傷を最小限に抑えるように構成される。いくつかの実施形態において、外表面118は、細長い本体110の近位端114近くでそれ自体に形成された複数の把持刻み128を含み得る。把持刻み128は、外科医が第1拡張器102を把持し(例えば、手作業で、又は好適な外科用ツール若しくはロボットアームを介して)、後述のように第1拡張器102を操作することができるように、構成され得る。
【0021】
再び図1を参照して、第1拡張器102の細長い本体110は、拡張システム100が組立てられて後述のように使用される際に、細長い本体110の一部(例えば、把持刻み128を含む近位端114及び/又は外表面118の一部)が依然としてアクセス可能であるように、第2拡張器104に対するサイズが決められる。
【0022】
穴120は、近位端114から遠位端116まで細長い本体110を貫通して延在してよく、その中に刺激プローブ又はガイドワイヤをスライド可能に受容するよう構成される。図3〜4に示す実施形態において、穴120は実質的に長手方向軸112に沿っている。しかしながら、いくつかの実施形態において、穴120は長手方向軸112から横方向にずれた位置にあってよく、又は省略されてもよい。穴120は実質的に円筒形であるものとして示されているが、本明細書で開示される発明概念のいくつかの実施形態において、穴120は任意の所望の形状、サイズ、及び断面を有し得ることが、理解されよう。例えば、図4Aに示すように、第1拡張器102aの実施形態は、第1拡張器102と同様に実装され得るが、長手方向軸112aからずれた穴120aを含み得る。
【0023】
第1拡張器102は、例えばステンレス鋼、外科用鋼、チタン、金属、陽極酸化アルミニウム、非金属、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリマー、樹脂、又はこれらの組み合わせなど、任意の所望の材料で構築することができ、例えば機械加工、流延成形、鋳型成形、又はこれらの組み合わせなどの任意の所望の製造技法を用いて構築することができる。いくつかの実施形態において、本開示の利益を有するよう、当業者に理解されるように、第1拡張器102には、外科医に適切な挿入深さを示すための、視覚的又は触覚的マーキングが設けられる(例えば、外表面118に沿って)。
【0024】
ここで図5〜6を参照して、第2拡張器104は、第1拡張器102と同様に実装することができ、長手方向軸132、近位端134、遠位端136、近位端134と遠位端136との間に延在する外表面138、及び近位端134から遠位端136まで延在する穴140を有する細長い本体130を含む。細長い本体130は実質的に長円形の横断面を有し、長軸142と、長軸142に対して実質的に垂直である(例えば、実質的に直交する)短軸144を含む。細長い本体130は、長軸142に沿った第1直径(例えば、横径)と、短軸144に沿った第2直径(例えば、共役直径)とを有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【0025】
穴140は、その中に第1拡張器102を嵌合状かつスライド可能に受容するようなサイズ、形状、及び構成にされ、これによって、第2拡張器104の長軸142は、第1拡張器102の短軸124に揃い、第2拡張器104の短軸144は、第1拡張器102の長軸122に揃う。
【0026】
外表面138は、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネル146を有し、このチャネル146は近位端134から遠位端136まで延在し、かつ細長い本体130の長軸142と交差する。いくつかの実施形態において、チャネル146は短軸144と交差してもよく、長軸142若しくは短軸144に接するか若しくは近接して配置されてもよく、及び/又は長軸142と短軸144のいずれにも交差しないよう配置されてもよいことが理解されよう。更に、本明細書で開示される発明概念のいくつかの実施形態において、任意の数のチャネル146を、第2拡張器104に実装することができ、例えば2つ又はそれ以上のチャネル146を実装することができる。複数のチャネル146が実装されるいくつかの実施形態において、本開示の利益を有するよう、1つ又は2つ以上のチャネル146が長軸142と交差してもよく、1つ又は2つ以上のチャネル146が短軸144と交差してもよいことが、当業者には理解されよう。
【0027】
外表面138は遠位端136近くで先細になっていてよく、これにより組織内への挿入が容易になる。第1拡張器102の全体的な形状は、非外傷的である。いくつかの実施形態において、外表面138は、細長い本体130の近位端134近くでそれ自体に形成された複数の把持刻み148を含み得る。把持刻み148は、外科医が第2拡張器104を把持し(例えば、手作業で、又は好適な外科用ツールを介して)、後述のように第2拡張器104を操作することができるように、構成され得る。
【0028】
再び図1を参照して、第2拡張器104の細長い本体130は、拡張システム100が組立てられて後述のように使用される際に、細長い本体130の一部(例えば、把持刻み148を含む近位端134及び/又は外表面138の一部)が依然としてアクセス可能であるように、第3拡張器106に対するサイズが決められる。
【0029】
当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、拡張システム100には所望の数の第2又は中間拡張器104を実装することができ、例えば1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の第2拡張器104を実装することができる。例えば、複数の第2拡張器104が実施形態の拡張システム100に実装されている場合、連続する第2拡張器104はそれぞれに、その中に、先行する第2拡張器104を嵌合状に(例えば、スライド可能に)受容するよう構成された穴140を有し得、これによって、先行する第2拡張器104のうち1つの長軸142は、後続の第2拡張器104の短軸144に実質的に揃い、先行する第2拡張器104の短軸144は、後続の第2拡張器104の長軸142に実質的に揃う。
【0030】
ここで図7〜8を参照して、第3拡張器106は、第1拡張器102と同様に実装することができ、長手方向軸152、近位端154、遠位端15、近位端154と遠位端156との間に延在する外表面158、及び近位端154から遠位端156まで延在する穴160を有する細長い本体150を含む。細長い本体150は、実質的に円形の横断面を有するよう図示されており、いくつかの実施形態において、第3拡張器106がリトラクター(例えばマルチブレードリトラクター)に接合できるようになっている。
【0031】
外表面158は、その中に刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネル166を含み得る。チャネル166は、近位端154から遠位端156まで延在してよく、第2拡張器104が第3拡張器106に嵌合状に受容されたときに、細長い本体130の短軸144と交差するように配置することができる。いくつかの実施形態において、チャネル166は、長軸142に接するか若しくは近接して配置されてもよく、及び/又は長軸142から間隔をあけて配置されてもよいことが理解されよう。更に、本明細書で開示される発明概念のいくつかの実施形態において、任意の数のチャネル166を、第3拡張器106に実装することができ、例えば2つ又はそれ以上のチャネル166を実装することができる。
【0032】
外表面158は遠位端156近くで先細になっていてよく、これにより組織内への挿入が容易になる。第2拡張器104の全体的な形状は、非外傷的である。いくつかの実施形態において、外表面158は、細長い本体150の近位端154近くでそれ自体に形成された複数の把持刻み159を含み得る。把持刻み159は、外科医が第3拡張器106を把持し(例えば、手作業で、又は好適な外科用ツールを介して)、後述のように第3拡張器106を操作することができるように、構成され得る。
【0033】
穴160は実質的に長円形の横断面を有し、長軸162及び短軸164を含み、これらは互いに実質的に直交し得る。穴160は、長軸162に沿った第1直径(例えば、横径)と、短軸164に沿った第2直径(例えば、共役直径)とを有し、第1直径は第2直径よりも大きい。穴160は、その中に第2拡張器104を嵌合状かつスライド可能に受容するように構成され、これによって、細長い本体130の長軸142は、穴160の長軸162に揃い、細長い本体130の短軸144は、穴160の短軸164に揃う。
【0034】
当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、いくつかの実施形態において、第3拡張器106は省略してもよく、またいくつかの実施形態において、複数の第3拡張器106を実装してもよく、連続する第3拡張器106はそれぞれその中に、先行する第3拡張器106を嵌合状に受容するよう構成されている穴160を有する。
【0035】
ここで図9A〜9Fを参照し、ラテラルアプローチで脊椎の腰部にアクセスするための、拡張システム100を用いる方法の代表的な実施形態が本明細書で記述される。ただし、患者の身体の他の部分において、同様又は同じ方法を、拡張システム100と共に使用することができる。
【0036】
刺激プローブ170及び筋電計(EMG)(図示なし)を、米国特許出願公開第2011/0208226号(その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記述されているものと同様にして使用することにより、外科医は、関心対象の組織(例えば、腰筋)における安全ゾーン(例えば、神経要素又は神経を概ね含まないゾーン)をマッピングすることができる。例えば、ヒトの腰筋では、腰筋の前側3分の1が概ね安全ゾーンと見なされる。安全ゾーンが確立されたら、術中透視診断法により、解剖学的配置を確認することができる。
【0037】
安全ゾーンが確立された状態で、術中透視診断法により、解剖学的配置を確認することができる。外科医は、図9Aに示すように、腰筋を貫通して患者の脊椎に向けて刺激プローブ170を挿入する。手術が椎間板腔に対して実施される場合、刺激プローブ170の遠位端を、所望の椎間板腔の環の中に挿入するか、又は、刺激プローブ170の先端が患者の脊椎174に近接するように配置することができる。いくつかの実施形態において、刺激プローブ170は、安全ゾーンの最も後側の部分を通して挿入することができる。
【0038】
図9Bに示すように、外科医は、刺激プローブ170を覆うように第1拡張器102を、(例えば、刺激プローブ170が第1拡張器102の穴120にスライド可能に受容されるように)挿入するか又はスライドさせることができ、更に、第1拡張器102の遠位端116及び/又は細長い本体110の一部を挿入して、患者の脊椎174に向けて腰筋172に貫通させることができる。いくつかの処置手順において、第1拡張器102は、刺激プローブ又はガイドワイヤを使用せずに、腰筋に貫通させることができる。第1拡張器102の挿入による腰筋172の外傷を最小限に抑えるために、第1拡張器102は、長軸122が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に平行な向きになり、短軸124が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に垂直な向きになるように、腰筋172に挿入される。第1拡張器102を腰筋に挿入した状態で、追加の又は第2の刺激プローブ170aをチャネル126に挿入することができ、これにより外科医が、神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。
【0039】
図9Cに示すように、外科医は次に、第1拡張器102を長手方向軸112を中心に約90°又は約270°(例えば、時計方向又は反時計方向に)回すことができ、これにより長軸122が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に垂直な向きになり、短軸124が挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に平行な向きになる。刺激プローブ170aを、第1拡張器102の回転の前、最中、及び/又は回転中に利用して、神経要素又は神経の近接度合を判定するために、EMGを介して1つ又は2つ以上の電気パルスを刺激プローブに伝達することができる。例えば、第1拡張器102を回転させて、長手方向軸112に対して完全1回転又は2回転以上させることにより、外科医が刺激プローブ170aを介して、安全ゾーンの位置を特定し、及び/又は、神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。第1拡張器102の長軸122が短軸124よりも大きいことから、挿入部位は、第1拡張器102の回転によって拡張又は拡大される。刺激プローブ170aは、第1拡張器102を上述のように回転させた後、第1拡張器102から除去することができる。
【0040】
図9Dに示すように、外科医は、第2拡張器104の穴140に第1拡張器102を受容させることにより、第1拡張器102を覆うように、患者の脊椎174に向けて、第2拡張器104を挿入することができ、これによって、第2拡張器104の短軸144が第1拡張器102の長軸122に揃い、第2拡張器104の長軸142が第1拡張器102の短軸124に揃う。この第2拡張器104の第1拡張器102に対する配置により、第2拡張器104の遠位端136が最初に腰筋172に挿入され、これによって、第2拡張器104の短軸144が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に垂直な向きになり、長軸142が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に平行な向きになる。第2拡張器104を腰筋172に挿入した状態で、刺激プローブ170aをチャネル146に挿入することができ、これにより外科医が、神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。
【0041】
図9Eに示すように、外科医は、第2拡張器104を長手方向軸132を中心に約90°又は約270°(例えば、時計方向又は反時計方向に)回すことができ、これにより長軸142が、挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に垂直な向きになり、短軸144が挿入部位に隣接する腰筋線維176の優勢な方向又は向きに対して実質的に平行な向きになる。刺激プローブ170aを、第2拡張器104の回転の前、最中、及び/又は回転中に利用して、神経要素又は神経の近接度合を判定するために、EMGを介して1つ又は2つ以上の電気パルスを刺激プローブ170aに伝達することができる。例えば、第2拡張器104を回転させて、長手方向軸132に対して完全1回転又は2回転以上させることにより、外科医が刺激プローブ170aを介して、神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。刺激プローブ170aは、第2拡張器104を上述のように回転させた後、除去することができる。
【0042】
第1拡張器102は、第2拡張器104の穴140に嵌合状に受容され、これによって、第2拡張器104を回転させたときに、第2拡張器104と第1拡張器102とが1つのユニットとして動く。第2拡張器104の長軸142が第2拡張器104の短軸144よりも大きいことから、挿入部位は更に、第2拡張器104の回転によって拡張又は拡大される。
【0043】
外科医は、同様にして、1つ又は2つ以上の第2又は中間拡張器104を挿入し、挿入した後に、連続する第2拡張器104をそれぞれ、約90°又は約270°(例えば、時計方向又は反時計方向に)回すことができる。
【0044】
図9Fに示すように、外科医は、例えば第3拡張器106の穴160に第2拡張器104をスライド可能に受容させることにより、第2拡張器104を覆うように、第3又は最終拡張器106を挿入することができ、これによって、第2拡張器104の長軸142が穴160の長軸162に揃い、短軸144が穴160の短軸164に揃う。第2拡張器104は、第3拡張器106の穴160に嵌合状に受容され、これによって、第3拡張器106を回転させたときに、第3拡張器106と第2拡張器104とが1つのユニットとして動く。第3拡張器106を腰筋172に挿入した状態で、刺激プローブ170aをチャネル166に挿入することができ、これにより外科医が、EMGを介して1つ又は2つ以上の電気パルスを刺激プローブに伝達することにより、神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。例えば、外科医は、第3拡張器106を長手方向軸152を中心に約0°〜約360°の間で回転させ(時計方向又は半時計方向)、EMGを介して1つ又は2つ以上の電気パルスを刺激プローブ170dに伝達することにより、外科医が神経要素又は神経の近接度合を判定することができる。
【0045】
第3拡張器106は、第3拡張器106を覆って挿入され得るリトラクター(図示なし)に接合することができ、これにより、続けて組織を引っ張り、拡張システム100並びに刺激プローブ170及び170aを除去することが可能になる。
【0046】
当業者には理解されるように、いくつかの例において、拡張システムの拡張器の外径により、特定の拡張システムに使用可能なリトラクターのサイズが決まる。リトラクターが比較的小さな直径を有する場合には、リトラクターを挿入する前に筋肉を拡張させるために、一般的に小さな拡張器が使用される。しかしながら、小さな直径の拡張器は、その中にプローブチャネルを収容するための十分な厚さを有さない場合がある。この問題は特に、順次互いに覆って挿入される第2及び後続の拡張器の直径に該当する。この問題に対処するために、第1拡張器は、全体の直径をできる限り小さく構成し、同時に、第1拡張器がその中に刺激プローブ穴又はチャネルを収容できるようにすることができる。第2及び後続の拡張器は、それぞれの刺激プローブチャネルの部分が、先行の拡張器を受容するための穴へと延在するように、改変することができ、これによって、標準又は固定サイズの刺激プローブを使用しながら、各拡張器の直径及び拡張システム全体の直径を低減できる。
【0047】
ここで図10〜13を参照すると、拡張システム100aの実施形態が示されている。拡張システム100aは、第1又は初期拡張器180、第2又は中間拡張器182、及び第3又は最終拡張器184を含む。拡張システム100aは、上記のように電気パルスを伝達するための、モニタリングKワイヤ又は刺激プローブと組み合わせて使用するよう構成され得る。
【0048】
図11に示すように、第1拡張器180は、長手方向軸190、穴192、及び外表面194を有する細長い本体188を含む。細長い本体188は、細長い本体110と同様に実装することができる。穴192は穴120と同様に実装することができ、例えば刺激プローブ170などの刺激プローブをスライド可能に受容するようなサイズ及び構成にされる。一実施形態において、穴192は細長い本体110では省略することができる。
【0049】
外表面194は実質的に円形の横断面を有するが、チャネル196、キースロット198、及び溝200を有する。外表面194は、細長い本体188の遠位端近くで先細になっていてよく、これにより組織内への挿入が容易になる。第1拡張器180の全体的な形状は、非外傷的である。
【0050】
チャネル196はチャネル126と同様に実装することができ、例えば刺激プローブ170aなどの刺激プローブを、その中にスライド可能に受容するよう構成される。キースロット198はその中にキーピンを受容するよう構成され、これにより第1拡張器180と第2拡張器182との互いに対する向きを固定する。キースロット198は所望の形状、サイズ、又は断面を有してよく、細長い本体188の近位端近くに配置することができ、あるいは、いくつかの実施形態において、細長い本体188の外表面194に沿って部分的に又は実質的に完全に延在していてもよく、これにより、第1拡張器180の使用中に、組織に外傷を与えず、また外科的開口部を拡張するのを妨げないようにできることが、理解されよう。
【0051】
溝200は、外表面194に形成され、細長い本体188に沿って延在し、これにより、溝200は、後述のように第2拡張器182に形成された対応する溝に揃っていてよく、これにより、刺激プローブ(例えば、刺激プローブ170a)を受容するための組み合わせ側穴202(図10)が形成される。いくつかの実施形態において、溝200は外表面194に形成され、これにより、溝200は、任意の所望の距離又は角度で、チャネル196からずれている。図11に示す実施形態において、溝200は、外表面194に沿ってチャネル196に径方向に相対しているが、いくつかの実施形態において、溝200は、チャネル196に対して近接していてよく、接していてよく、又は外表面194に沿って任意の所望の位置に配置されていてよい。
【0052】
ここで図12を参照し、第2拡張器182は、穴206、及び外表面208を有する細長い本体204を含む。穴206は、その中に形成された溝210及びキーピン212を含み、その中に第1拡張器180を嵌合状にスライド可能に受容するようなサイズ、形状、及び構成にされており、これにより、第1拡張器180が穴206内に嵌合状に受容されているとき、溝210が第1拡張器180の溝200に揃い、これによって溝210と溝200とが互いに協働して、刺激プローブ(例えば刺激プローブ170a)を受容するための側穴202(図10)を画定する。当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、溝200及び210は、刺激プローブ(例えば刺激プローブ170a)が側穴202に挿入されたときに、刺激プローブ170の一部が溝200内に受容され、かつ刺激プローブ170の一部が溝210内に受容されるように構成される。例を挙げると、刺激プローブ170aの直径は約3mmであってよく、一方細長い本体206の全体的な厚さは約1mm〜約3mmの範囲であってよい。
【0053】
キーピン212は、キースロット198内に嵌合状に受容されるよう構成されており、これによって、第1拡張器180が第2拡張器182内に嵌合状に受容され、溝210が溝200に揃って、側穴202を形成する。
【0054】
外表面208は、溝214及びキースロット216を含む。外表面208は、細長い本体204の遠位端近くで先細になっていてよく、これにより組織内への挿入が容易になる。第2拡張器182の全体的な形状は、非外傷的である。
【0055】
溝214は、溝200と同様に実装することができ、細長い本体204に沿って延在し、これにより、溝214は、後述のように第3拡張器184に形成された対応する溝に揃っていてよく、これにより、その中に刺激プローブを受容するための側穴218(図10)が形成される。溝214は、外表面208の任意の所望の位置に形成することができる。いくつかの実施形態において、溝214は、外表面208に沿って配置することができ、これにより、第1拡張器180が第2拡張器182により嵌合状に受容されているときに、溝214がチャネル196に揃う。
【0056】
キースロット216は、キースロット198と同様に実装することができ、その中にキーピンを受容するよう構成される。キースロット216は、任意の所望の位置に配置することができ、本明細書で開示される発明概念のいくつかの実施形態において、溝214、キーピン212、及び溝210からずれていてもよい。
【0057】
ここで図13を参照し、第3拡張器184は、第3拡張器106と同様に実装することができ、穴222及び外表面224を有する細長い本体220を含む。穴222は、穴206と同様に実装することができ、溝226及びキーピン228を含む。穴222は、その中に第2拡張器182を嵌合状に受容するよう構成されており、これにより、第2拡張器182が穴222内に嵌合状に受容されているとき、溝226が第2拡張器182の溝214に揃い、これによって溝226と溝214とが互いに協働して、刺激プローブ(例えば刺激プローブ170)をその中に受容するための側穴218(図10)を画定する。例を挙げると、刺激プローブ170aの直径は約3mmであってよく、一方細長い本体220の全体的な厚さは約1mm〜約3mmの範囲であってよい。
【0058】
更に、キーピン228は第2拡張器182のキースロット216に嵌合状に受容され、これにより、上述のように、第2拡張器182及び第3拡張器184のそれぞれに対して揃う。
【0059】
外表面224は、第3拡張器184がリトラクターと接合するように構成され、これにより、続けて組織を引っ張り、拡張システム100a及び刺激プローブを除去することが可能になる。
【0060】
当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、拡張システム100aは、例えば2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の、任意の数の拡張器を実装することができる。
【0061】
ここで図14〜17を参照すると、本明細書で開示される発明概念に従って構成された拡張システム100bの別の実施形態が示されている。拡張システム100bは、互いに嵌合して連結されるよう構成された、第1又は初期拡張器230、第2又は中間拡張器232、及び第3又は最終拡張器234を含む。拡張システム100bは、電気パルスを伝達するための、モニタリングKワイヤ又は刺激プローブ(例えば刺激プローブ170)と組み合わせて使用するよう構成される。
【0062】
ここで図15を参照すると、第1拡張器230は、長手方向軸242、穴244、及び外表面246を有する細長い本体240を含む。穴244は穴120と同様に実装することができ、例えば刺激プローブ170などの刺激プローブをその中にスライド可能に受容するように構成される。
【0063】
外表面246は、チャネル248及び溝250を含む。チャネル248はチャネル126と同様に実装することができ、刺激プローブをその中にスライド可能に受容するよう構成される。溝250は、溝200と同様に実装することができ、後述のように、その中に第2拡張器の一部を受容するよう構成される。
【0064】
ここで図16を参照すると、第2拡張器232は、側壁254、穴256、外表面258、及びチャネル260を有する細長い本体252を含む。側壁254は厚さ262を有する。穴256は穴206と同様に実装することができ、その中に第1拡張器230を嵌合状に受容するよう構成される。
【0065】
チャネル260は、細長い本体252の側壁254に形成される。いくつかの実施形態において、チャネル260は、標準又は固定サイズの刺激プローブ(例えば刺激プローブ170a)を受容するようなサイズ及び構成にされ、側壁254の厚さ262より大きい直径264を有し、これにより、側壁254のブリッジ部分266が穴256内に内向きに延在する。ブリッジ部分266は、第2拡張器232が第1拡張器230を覆って配置されたときに、溝250内に嵌合状に受容されるよう構成される。例を挙げると、刺激プローブ170aの直径は約3mmであってよく、一方細長い本体252の側壁254の全体的な厚さは約1mm〜約3mmの範囲であってよい。
【0066】
外表面258は溝268を含む。溝268は、溝250と同様に実装することができ、後述のように、その中に第3拡張器234の一部を受容するよう構成される。当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、いくつかの実施形態において、溝268は、外表面258に沿って、任意の所望の角度又は距離で、チャネル260からずれて配置され得る。
【0067】
ここで図17を参照し、第3拡張器234は、第2拡張器232と同様に実装することができ、側壁272、穴274、外表面276、及びチャネル278を有する細長い本体270を含む。細長い本体270は、上述のように、細長い本体252と同様に実装することができる。側壁272は幅280を有する。穴274は穴256と同様に実装することができ、その中に第2拡張器232を嵌合状に受容するよう構成される。チャネル278は細長い本体270の側壁272内に形成され、標準又は固定サイズの刺激プローブ(例えば刺激プローブ170a)を受容するようなサイズ及び構成にされる。チャネル278は、側壁272の幅280より大きな直径282を有し、これにより、側壁272のブリッジ部分284が、穴274内に内向きに延在する。例を挙げると、刺激プローブ170aの直径は約3mmであってよく、一方細長い本体270の側壁272の全体的な厚さは約1mm〜約3mmの範囲であってよい。ブリッジ部分284は、第2拡張器232が穴274に嵌合状に挿入されたときに、溝268内に嵌合状に受容されるよう構成される。当業者には理解されるように、本開示の利益を有するよう、上述のように溝268がチャネル260からずれて配置されているため、チャネル278はチャネル260からずれて配置される。
【0068】
上述の説明により、本明細書に開示し特許請求する発明概念が、目的を実施するため、並びに本明細書で言及した利点及び本発明に固有の利点を達成するため、十分に適合されていることは明白である。発明概念の例示的な実施形態について本開示において説明してきたが、当業者には容易に連想され、添付の特許請求の範囲で開示されかつ/又は定義されるような発明概念の趣旨の範囲で達成される多数の変更がなされ得ることが理解されよう。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 拡張システムであって、
長手方向軸、近位端、遠位端、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面を有する、細長い本体を含む第1拡張器であって、前記第1拡張器が長軸及び短軸を有し、前記短軸が前記長軸に対して実質的に垂直である、第1拡張器と、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第2拡張器であって、前記第2拡張器が長軸及び短軸を有し、前記第2拡張器の前記短軸が前記第2拡張器の前記長軸に対して実質的に垂直であり、前記第2拡張器の前記穴が、前記第1拡張器を嵌合状に受容するよう構成されており、これにより、前記第2拡張器の前記長軸が、前記第1拡張器の前記短軸に揃い、かつ前記第2拡張器の前記短軸が、前記第1拡張器の前記長軸に揃う、第2拡張器と、を含む、拡張システム。
(2) 前記第1拡張器の前記細長い本体が、前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有し、前記第1拡張器の前記穴が、前記第1拡張器の前記長手方向軸に揃う、実施態様1に記載の拡張システム。
(3) 前記第1拡張器の前記細長い本体が、前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有し、前記第1拡張器の前記穴が、前記第1拡張器の前記長手方向軸に対してずれている、実施態様1に記載の拡張システム。
(4) 前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、実施態様2に記載の拡張システム。
(5) 前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、実施態様3に記載の拡張システム。
【0070】
(6) 前記第2拡張器の前記穴が、前記第2拡張器の前記長手方向軸に揃う、実施態様1に記載の拡張システム。
(7) 前記第1拡張器の前記細長い本体が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、該チャネルが、前記近位端から前記遠位端まで延在し、かつ前記第1拡張器の前記長軸と交差する、実施態様1に記載の拡張システム。
(8) 前記第2拡張器の前記細長い本体が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、該チャネルが、前記近位端から前記遠位端まで延在し、かつ前記第2拡張器の前記長軸と交差する、実施態様7に記載の拡張システム。
(9) 前記第2拡張器の前記細長い本体が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、該チャネルが、前記近位端から前記遠位端まで延在し、かつ前記第2拡張器の前記長軸と交差する、実施態様1に記載の拡張システム。
(10) 長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第3拡張器であって、該第3拡張器が実質的に円形の横断面を有し、前記第3拡張器の前記穴が、前記第2拡張器を嵌合状に受容するよう構成されている、第3拡張器を更に含む、実施態様1に記載の拡張システム。
【0071】
(11) 前記第3拡張器の前記細長い本体が、刺激プローブを受容するための少なくとも1つのチャネルを有し、該チャネルが、前記近位端から前記遠位端まで延在する、実施態様10に記載の拡張システム。
(12) 腰筋を貫通して患者の脊椎に至るアクセス開口部を形成する方法であって、前記腰筋は複数の筋線維を有し、前記方法は、
長軸及び短軸を有する拡張器を、前記拡張器の前記長軸が、前記腰筋の前記筋線維に対して実質的に平行な関係にある状態で、前記腰筋を貫通させて前記患者の脊椎に向けて挿入する工程と、
前記拡張器の前記長軸を、前記腰筋の前記筋線維に対して実質的に垂直な関係に位置付けるように、前記拡張器を回転させる工程と、を含む、方法。
(13) 前記腰筋を貫通させて前記拡張器を挿入する前に、前記腰筋内の安全ゾーンの位置を特定するために、刺激プローブを前記腰筋に挿入する工程を更に含み、前記拡張器を挿入する工程が、前記刺激プローブを覆うように前記拡張器を挿入する工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記腰筋内の安全ゾーンの位置を特定するように、前記拡張器の近位端から遠位端まで延在し、前記拡張器の前記長軸と交差するチャネルに、第2の刺激プローブを挿入する工程を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記拡張器が第1拡張器であり、前記方法が、
長軸及び短軸を有する第2拡張器を、前記第2拡張器の前記長軸が、前記腰筋の前記筋線維に対して実質的に平行な関係にある状態で、前記腰筋を貫通させて前記患者の脊椎に向けて、前記第1拡張器を覆うように挿入する工程と、
前記第2拡張器の前記長軸を、前記腰筋の前記筋線維に対して実質的に垂直な関係に位置付けるように、前記第2拡張器及び前記第1拡張器を回転させる工程と、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
【0072】
(16) 前記腰筋内の安全ゾーンの位置を特定するように、前記第2拡張器の近位端から遠位端まで延在し、前記第2拡張器の前記長軸と交差するチャネルに、刺激プローブを挿入する工程を更に含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 円形の横断面を有する第3拡張器を、前記腰筋を貫通させて前記患者の脊椎に向けて、前記第2拡張器を覆うように挿入する工程を更に含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記腰筋内の安全ゾーンの位置を特定するように、前記第3拡張器の近位端から遠位端まで延在するチャネルに、第2の刺激プローブを挿入する工程を更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 拡張システムであって、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び前記近位端から前記遠位端まで延在する実質的に中心にある穴を有する、細長い本体を含む第1拡張器であって、前記外表面が、刺激プローブを受容するための第1側穴と、前記近位端から前記遠位端まで延在する第1溝と、を含む、第1拡張器と、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び、前記第1拡張器を受容するための前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第2拡張器であって、前記穴が、前記第1拡張器の前記第1溝に揃うよう構成された第2溝を含み、これにより、前記第1溝と前記第2溝が互いに協働して、刺激プローブを受容するための第2側穴を画定する、第2拡張器と、を含む、拡張システム。
(20) 前記第2拡張器の前記外表面が、その中に形成される第3溝を更に含む、実施態様19に記載の拡張システム。
【0073】
(21) 長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び、前記第2拡張器を受容するための前記近位端から前記遠位端まで延在する穴を有する、細長い本体を含む第3拡張器であって、前記穴が、前記第2拡張器の前記第3溝に揃うよう構成された第4溝を含み、これにより、前記第3溝と前記第4溝が互いに協働して、刺激プローブを受容するための第3側穴を画定する、第3拡張器を更に含む、実施態様20に記載の拡張システム。
(22) 拡張システムであって、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、及び、刺激プローブを受容するための前記近位端から前記遠位端まで延在する第1穴を有する、細長い本体を含む第1拡張器であって、前記外表面が、刺激プローブを受容するための第1チャネル、及び第1溝を含む、第1拡張器と、
長手方向軸、近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端との間に延在する外表面、前記第1拡張器を嵌合状に受容するための前記近位端から前記遠位端まで延在する第2穴、及び、前記第2穴内に少なくとも部分的に延在する第2チャネルを有する、細長い本体を含む第2拡張器であって、これにより、前記第1拡張器が前記第2拡張器の前記第2穴内に嵌合状に受容されているとき、前記第2チャネルの一部が、前記第1拡張器の前記溝内に受容される、第2拡張器と、を含む、拡張システム。
(23) 前記第2拡張器が、前記第2穴を画定しかつ第1幅を有する側壁を更に含み、前記第2チャネルが、前記第1幅よりも大きい第2直径を有する、実施態様22に記載の拡張システム。
(24) 前記第2拡張器の前記外表面が、第2溝を更に含む、実施態様22に記載の拡張システム。
(25) 前記拡張システムが、細長い本体と、前記第2拡張器を嵌合状に受容するための第3穴と、該第3穴内に少なくとも部分的に延在する第3チャネルとを含む第3拡張器を更に含み、これにより、前記第2拡張器が前記第3拡張器の前記第3穴内に嵌合状に受容されているとき、前記第3チャネルの一部が、前記第2拡張器の前記第2溝内に受容される、実施態様24に記載の拡張システム。
【0074】
(26) 前記第3拡張器が、前記第3穴を画定する第2幅を有する第2側壁を更に含み、前記第3チャネルが、前記第2側壁の前記第2幅よりも大きい第2直径を有する、実施態様25に記載の拡張システム。
図1
図2
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図4A
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図9A
図9B
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