【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1つ又は2つ以上の陥凹を間に画定するレールが骨対向表面の1つ又は2つ以上の部分に設けられる大腿骨コンポーネントを提供する。例えば、レール及び陥凹機構が、骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分上に設けられ得る。大腿骨は次いで、コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が大腿骨の遠位面と接触するとき、コンポーネントの陥凹の底部と大腿骨の対向表面との間に空間が存在するよう大腿骨コンポーネントを受容するように調製され得る。別の構成において、レール及び陥凹機構は、骨対向表面の遠位部分上に設けられ得る。大腿骨は次いで、コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分が大腿骨のそれぞれの面取り面と接触するとき、コンポーネントの骨対向表面の遠位部分上の陥凹の底部と大腿骨の対向表面との間に空間が存在するよう大腿骨コンポーネントを受容するように調製され得る。
【0010】
したがって、本発明は、脛骨支持表面と関節をなすための対向支持表面と、その反対側の骨対向表面とを有する人工膝関節の大腿骨コンポーネントを提供するものであり、その骨対向表面は、
a.大腿骨とその前方側で係合するための前方部分と、
b.大腿骨とその後方側で係合するための後方部分と、
c.大腿骨の遠位端面と係合するための遠位部分と、
d.前方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、前方部分と遠位部分との間に位置する前方面取り部分と、
e.後方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、後方部分と遠位部分との間に位置する後方面取り部分とを有し、
骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有する。
【0011】
本発明はまた、患者の膝に対する外科手技において使用するためのシステムを提供し、そのシステムは、
a.脛骨支持表面と関節をなすための支持表面と、反対側の骨対向表面とを有する人工膝関節の大腿骨コンポーネントであって、その骨対向表面は、
i.大腿骨とその前方側で係合するための前方部分と、
ii.大腿骨とその後方側で係合するための後方部分と、
iii.大腿骨の遠位端面と係合するための遠位部分と、
iv.前方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、前方部分と遠位部分との間に位置する前方面取り部分と、
v.後方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、後方部分と遠位部分との間に位置する後方面取り部分とを有し、
骨対向表面の遠位部分、前方部分、及び後方部分の各々は、その領域の少なくとも一部にわたって平面的である大腿骨コンポーネントと、
b.前方面取り切断及び後方面取り切断が実施され得る平面の、遠位切除切断の平面に対する位置を画定するように、遠位切除切断がなされている患者の大腿骨の遠位面に締結され得る、平面的な遠位表面を有するガイドブロックであって、(a)前方面取り切断の平面に対して平行に延び、遠位表面の平面と前方面取り切断の平面との交線と、遠位表面の平面と後方面取り切断の平面との交線との間の中間の点で、遠位表面の平面と交差する前方基準線と、(b)前方面取り切断の平面との間の距離はG
Antであり、(a)後方面取り切断の平面に対して平行に延び、遠位表面の平面と前方面取り切断の平面との交線と、遠位表面の平面と後方面取り切断の平面との交線との間の中間の点で、遠位表面の平面と交差する後方基準線と、(b)後方面取り切断の平面との間の距離はG
Postである、ガイドブロックと、を備え、
(A)大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有し、(a)骨対向表面の前方面取り部分に対して平行に延び、遠位部分と前方面取り部分との交点と、遠位部分と後方面取り部分との交点との間の中間の点で、前記表面の遠位部分と交差する前方植え込み基準線と、(b)レールの先端縁部との間の距離はI
AntRailであり、(a)前方植え込み基準線と(b)レール間の陥凹の底部との間の距離はI
AntRecessであり、(I
AntRecess−G
Ant)の値は少なくとも約0.5mmであり、
かつ/又は
(B)大腿骨コンポーネントの骨対向表面の後方面取り部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有し、(a)骨対向表面の後方面取り部分に対して平行に延び、遠位部分と前方面取り部分との交点と、遠位部分と後方面取り部分との交点との間の中間の点で、前記表面の遠位部分と交差する後方植え込み基準線と、(b)レールの先端縁部との間の距離はI
PostRailであり、(a)後方植え込み基準線と(b)レール間の陥凹の底部との間の距離はI
PostRecessであり、(I
PostRecess−G
Post)の値は少なくとも約0.5mmである。
【0012】
ガイドブロック上の基準線は、ガイドブロックの遠位表面の平面に対して、また面取り切断の平面に対して垂直である平面内で延びる。大腿骨コンポーネント上の基準線は、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分及び面取り部分に対して垂直である平面内で延びる。
【0013】
骨対向表面の遠位部分、前方部分、及び後方部分の各々は通常、その領域の少なくとも70%、例えばその領域の少なくとも約85%、又はその領域の少なくとも約95%のうちの大部分にわたって平面的である。
【0014】
本発明の大腿骨コンポーネントの植え込みは、大腿骨コンポーネントを滑り嵌めで受容するように遠位大腿骨が調製される手技において実施され得る。大腿骨は、骨対向表面の前方部分、遠位部分、及び後方部分上において大腿骨と大腿骨コンポーネントとの対面接触が存在するように調製される。大腿骨は、骨対向表面の面取り部分のうちの1つ又は2つ以上において大腿骨と陥凹の底部との間にクリアランスが存在するように調製される。面取り部分における大腿骨と各陥凹の底部との間のクリアランスは好ましくは、骨対向表面の前方部分、遠位部分、及び後方部分上において大腿骨と大腿骨コンポーネントとの間に対面接触が存在するとき、各陥凹の縁部に沿って設けられたレールが大腿骨と接触するようなものであるべきである。
【0015】
大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分のうちの少なくとも1つの上に陥凹を設けることは、植え込み後にコンポーネントが荷重下に置かれるとき、コンポーネントの骨対向表面の遠位骨対向部分上に荷重がかけられ、1つ又は2つ以上の陥凹が設けられている骨対向表面の各面取り部分上に、より低い負荷がかかるようにするのに役立ち得る。
【0016】
内側レール及び外側レールは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分の各々の上に設けられることが好まれ得る。このことは、植え込み後にコンポーネントが荷重下に置かれるとき、コンポーネントの骨対向表面の遠位骨対向部分上に荷重がかけられ、1つ又は2つ以上の陥凹が設けられている骨対向表面の各面取り部分上には、より低い負荷がかかるようにするのに役立ち得る。
【0017】
本発明はまた、患者の膝に対する外科手技において使用するためのシステムを提供し、そのシステムは、
a.脛骨支持表面と関節をなすための支持表面と、反対側の骨対向表面とを有する人工膝関節の大腿骨コンポーネントであって、その骨対向表面は、
i.大腿骨とその前方側で係合するための前方部分と、
ii.大腿骨とその後方側で係合するための後方部分と、
iii.大腿骨の遠位端面と係合するための遠位部分と、
iv.前方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、前方部分と遠位部分との間に位置する前方面取り部分と、
v.後方部分及び遠位部分の各々に対して傾斜する、後方部分と遠位部分との間に位置する後方面取り部分とを有し、
骨対向表面の前方部分、前方面取り部分、後方面取り部分、及び後方部分の各々は、その領域の少なくとも一部にわたって平面的であり、骨対向表面の遠位部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有する、大腿骨コンポーネントと、
b.前方面取り切断及び後方面取り切断が実施され得る平面の、遠位切除切断の平面に対する位置を画定するように、遠位切除切断がなされている患者の大腿骨の遠位面に締結され得る、平面的な遠位表面を有するガイドブロックであって、前方切断の平面と後方切断の平面との交線にガイドブロック基準線を画定し、したがって、基準線と平面的な遠位表面との間の距離がG
Distとなる、ガイドブロックと、を備え、
大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有し、(a)骨対向表面の前方面取り部分の平面と後方面取り部分の平面との交線にある植え込み基準線と、(b)レールの先端縁部との間の距離はI
DistRailであり、(a)植え込み基準線と(b)レール間の陥凹の底部との間の距離はI
DistRecessであり、(G
Dist−I
DistRecess)の値は少なくとも約0.5mmである。
【0018】
ガイドブロック上の基準線は、ガイドブロックの遠位表面の平面に対して、また面取り切断の平面に対して垂直である平面内で延びる。大腿骨コンポーネント上にある基準線は、2つの平面の交線によって画定される。
【0019】
骨対向表面の前方部分、前方面取り部分、後方面取り部分、及び後方部分の各々は通常、その領域の少なくとも70%、例えばその領域の少なくとも約85%、又はその領域の少なくとも約95%のうちの大部分にわたって平面的である。
【0020】
本発明の大腿骨コンポーネントの植え込みは、大腿骨コンポーネントを滑り嵌めで受容するように遠位大腿骨が調製される手技において実施され得る。大腿骨は、骨対向表面の前方部分、前方面取り部分、後方面取り部分、及び後方部分上において大腿骨と大腿骨コンポーネントとの対面接触が存在するように調製される。大腿骨は、骨対向表面の遠位部分において、大腿骨と陥凹又は各陥凹の底部との間にクリアランスが存在するように調製される。大腿骨と陥凹又は各陥凹の底部との間のクリアランスは好ましくは、骨対向表面の前方部分、前方面取り部分、後方面取り部分、及び後方部分上において大腿骨と大腿骨コンポーネントとの間に対面接触が存在するとき、各陥凹の縁部に沿って設けられたレールが大腿骨と接触するようなものであるべきである。
【0021】
大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分の少なくとも1つの上に陥凹を設けることは、植え込み後にコンポーネントが荷重下に置かれるとき、コンポーネントの骨対向表面の前方面取り骨対向部分及び後方面取り骨対向部分上に荷重がかけられ、1つ又は2つ以上の陥凹が設けられている骨対向表面の遠位部分上には、より低い負荷がかかるようにするのに役立ち得る。
【0022】
本発明のいくつかの特徴は、陥凹及びレール機構が大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分上に設けられるか、又は面取り部分のうちの一方若しくは両方に設けられるかにかかわらず、応用可能である。
【0023】
内側レールは大腿骨コンポーネントの内側縁部に位置し、外側レールは大腿骨コンポーネントの外側縁部に位置することが、多くの場合に好まれることになる。レールは次いで、大腿骨コンポーネントの内側壁及び外側壁の延長となる。
【0024】
レールと調製された大腿骨の対向表面部分とが接触することは、大腿骨と大腿骨コンポーネントとの間の適合を観察するとき、大腿骨コンポーネントのうちの陥凹及びレールを有する部分(面取り部分又は遠位部分のいずれか一方又は両方)によって支持される荷重が小さいか又はゼロである(それぞれ遠位部分か又は面取り部分のうちの一方若しくは両方によって支持される荷重よりも低い)場合でも、外科医にとって視認可能となる間隙が、大腿骨と大腿骨コンポーネントの骨対向表面の対応部分の1つ又は各々との間にないことを意味する。この特徴によって、本発明が重要な利点をもたらすことが可能となり得る。例えば、大腿骨と大腿骨コンポーネントの骨対向表面のすべてとの間に間隙が存在しないことは、大腿骨と大腿骨コンポーネントとの間の空間に材料が入る可能性を低減するのに役立ち得る。また、大腿骨が大腿骨コンポーネントと適切に適合するように付形されているという、より大きな確信を外科医にもたらし得る。レールと大腿骨との間の接触はまた、骨組織の内部成長を増進し得、この内部成長は、その骨組織がコンポーネントと骨との間隙に広がる必要なく、レール上で大腿骨コンポーネントと相互作用してコンポーネントを定位置に固定するのに寄与する。
【0025】
大腿骨コンポーネントの面取り部分のうちの一方若しくは両方の上の又は遠位部分の上のレールが、調製された大腿骨に貫入する能力は、レールの幅、レールの形状、レールの長さ、レールの本数などの要素に依存する。骨対向縁部における各レールの幅は、約4mm以下、より好ましくは約3mm以下、例えば約2mm以下であることが好まれ得る。各レールは骨対向縁部に向かって内向きに先細にされることが好まれ得る。例えば、骨対向縁部における幅が約1.5mm以下又は約1mm以下となるように、内向きに先細にされ得る。レールが骨対向縁部に向かって内向きに先細にされているとき、底部におけるレールの幅は、少なくとも約2mm、例えば少なくとも約3mm、又は少なくとも約4mmとなり得る。
【0026】
内側レールと外側レールとの間に設けられる陥凹の深さは、少なくとも約0.5mm、所望により少なくとも1.0mm、又は少なくとも約1.5mmとなり得る。陥凹の深さは、多くの場合は約3.5mm以下、任意選択により約2.5mm以下となる。陥凹の深さは、骨対向表面の前方面取り部分上に陥凹がある場合には(I
AntRecess−I
AntRail)、後方面取り部分上に陥凹がある場合には(I
PostRecess−I
PostRail)、遠位部分上に陥凹がある場合には(I
DistRail−I
DistRecess)の値に等しい。
【0027】
内側レール及び外側レールが骨対向表面の前方面取り部分上に設けられているとき、それらは遠位部分から前方部分へと延びることが好まれ得る。内側レール及び外側レールが骨対向表面の後方面取り部分上に設けられているとき、それらは遠位部分から後方部分へと延びることが好まれ得る。遠位部分から前方又は後方部分(場合に応じて)へと連続的に延びるレールは、大腿骨コンポーネントの内側縁部及び外側縁部の全長に沿って大腿骨コンポーネントと大腿骨との連続的な接触をもたらし得る。このことは、コンポーネントと大腿骨との間の空間に物質が侵入するのを防止するのに役立ち得る。
【0028】
内側レール及び外側レールが骨対向表面の遠位部分上に設けられているとき、それらは前方面取り部分から後方面取り部分へと延びることが好まれ得る。前方面取り部分から後方面取り部分へと連続的に延びるレールは、大腿骨コンポーネントの内側縁部及び外側縁部の全長に沿って大腿骨コンポーネントと大腿骨との連続的な接触をもたらし得る。このことは、コンポーネントと大腿骨との間の空間に物質が侵入するのを防止するのに役立ち得る。
【0029】
大腿骨コンポーネントは、内側レールと外側レールとの間に位置する少なくとも1つの付加的なレールを含み得る。大腿骨コンポーネントの内側縁部及び外側縁部に設けられる内側レール及び外側レールは、大腿骨コンポーネントの縁部に沿って延び得、大腿骨コンポーネントの前方端部と大腿骨コンポーネントの後方端部との間に延びるそれらの縁部と整合され得る。そのようなレールが、調製された大腿骨の表面に貫入するとき、それらのレールは、特に内側−外側の軸線と整合する方向に、大腿骨に対する移動に関してコンポーネントを大腿骨上で位置決めするのに役立ち得る。
【0030】
内側レール及び外側レール、並びに1つ又は2つ以上の任意の付加的なレールを設けることはまた、特に植え込まれたときに面取り領域において大腿骨コンポーネントと大腿骨との間の接触がほとんど又は全くないように設計された大腿骨コンポーネントと比較すると、大腿骨コンポーネントと大腿骨の調製された表面との間の接触面積を増加させることによって、大腿骨への大腿骨コンポーネントの固定に寄与し得る。増加した接触面積は、骨の内部成長を通じた固定の向上をもたらす。
【0031】
大腿骨コンポーネントの内側縁部及び外側縁部に設けられる内側レール及び外側レールは、大腿骨コンポーネントの縁部に沿って延び、したがって、概ね大腿骨コンポーネントの前方端部と大腿骨コンポーネントの後方端部との間に延びる間、それらの縁部に追従するように湾曲される。
【0032】
内側レール及び外側レールと概ね整合され、1つ又は2つ以上の陥凹の前方縁部と後方縁部との間の距離の少なくとも一部を延長する少なくとも1つの付加的なレールが含められ得る。内側レール及び外側レールと概ね整合されるレールは、それらのレールのいずれとも厳密に整合される必要はないが、概ね前方−後方の方向に沿って延びることになる。大腿骨コンポーネントの内側縁部及び外側縁部から離間されるレールは、直線的でありかつ概ね前方−後方の方向に延びるように構成され得る。
【0033】
人工全膝関節の大腿骨コンポーネントの場合、骨対向表面の後方面取り部分は一般に、大腿骨コンポーネントの分離した内側顆状リム及び外側顆状リム上に設けられ、それらの内側顆状リム及び外側顆状リムは、天然の膝の顆間窩に対応する間隙をおいて分離されている。顆状リムの各々上の後方面取り部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、分離した内側レール及び外側レールを有することが好まれ得る。
【0034】
コンポーネントの後方部分及び後方面取り部分における、分離した内側顆状リムと外側顆状リムとの間の間隙は、少なくとも部分的にコンポーネントの遠位部分を横断して前方面取り部分に向かって延び得る。したがって、人工全膝関節の各顆は一般に、少なくとも骨対向表面の後方部分、後方面取り部分及び遠位部分を有することになる。
【0035】
単顆人工膝関節の大腿骨コンポーネントは、コンポーネントの骨対向表面の後方面取り部分を備える1つの顆状リムのみを有する。骨対向表面の後方面取り部分は、少なくとも1つの陥凹を間に有する、分離した内側レール及び外側レールを有し得る。
【0036】
いくつかの状況において、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分が、コンポーネントの溝領域に位する中央リブを有することが適切となり得る。このことは、大腿骨コンポーネントが全人工膝関節のものであるときに適切となり得る。リブは、レールの形態として見られ得る。リブは、前方面取り部分の内側縁部及び外側縁部に設けられたレールよりも幅広となり得る。中央リブは、使用時にコンポーネントにかかる力に対してコンポーネントを補強し、特に溝領域においてコンポーネントを補強し得る。大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分上の中央リブに対処するために、大腿骨の前方面取り領域において骨組織を除去することが必要となり得る。また、骨対向表面の前方面取り部分が、中央リブなしに、またいかなる付加的なレールもなしに、内側縁部及び外側縁部において又はそれに近接して、リブ間の面取り部分の幅全体にわたって連続的に延びる陥凹を有することも構想される。
【0037】
内側レール及び外側レールに対し概ね横向きに、内側レールと外側レールとの間の陥凹を横切って延び、例えば、内側レールと外側レールとの間の距離の一部又は全部にわたって延びる、少なくとも1つの付加的なレールが含められ得る。
【0038】
コンポーネントの骨対向表面の後方面取り部分が、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有しているとき、骨対向表面の後方面取り部分のうちの、陥凹によってもたらされる面積の比率は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、特に少なくとも約65%、例えば少なくとも約75%である。
【0039】
コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分が、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有しているとき、骨対向表面の前方面取り部分のうちの、陥凹によってもたらされる面積の比率(コンポーネントの溝領域に存在する場合は中央リブの面積を無視する)は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、特に少なくとも約65%、例えば少なくとも約75%である。
【0040】
コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が、少なくとも1つの陥凹を間に有する、離間した内側レール及び外側レールを有しているとき、骨対向表面の遠位部分のうちの、陥凹によってもたらされる面積の比率(大腿顆の中へと延びるペグなどの他の機構を無視する)は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、特に少なくとも約65%、例えば少なくとも約75%である。
【0041】
いくつかの大腿骨コンポーネントにおいて、前方−後方の軸線に対して平行に測定した、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方部分と後方部分との間の距離は、少なくとも、後顆の近位端部において、後顆の遠位端部における長さと同等の長さをなす。このようにして、骨対向表面の前方部分及び後方部分は、それらが互いに対して平行となるように、又はそれらが骨対向表面の遠位部分から離れる方向に発散するように構成され得る。骨対向表面の前方部分と後方部分との間の角度は、しばしば、約5°以下となる場合。このことは、調製された大腿骨上への大腿骨コンポーネントの取付けを容易にし得る。
【0042】
骨対向表面の遠位部分は、調製された大腿骨に大腿骨コンポーネントが取り付けられるときに大腿骨コンポーネントが大腿骨に対して移動される方向に対して、およそ垂直となるように構成され得る。コンポーネントの骨対向表面の前方部分及び後方部分が平面的であり、かつ互いに対して平行であるとき、骨対向表面の遠位部分が、前方部分及び後方部分の各々の平面に対して垂直となることが適切となり得る。コンポーネントの骨対向表面の前方部分及び後方部分が発散しているとき、遠位部分と前方部分との間の角度が、遠位部分と後方部分との間の角度と等しくなることが適切となり得る。
【0043】
骨対向表面の遠位部分は、少なくとも1つのペグ、例えば2つのペグを設けられ得、それらのペグは、大腿骨の遠位面の対応するドリル穴内に受容されるように、骨対向表面からそれに対して垂直に延びる。ペグは、その自由端部に向かって内向きに先細にされ得る。
【0044】
本発明の大腿骨コンポーネントは、骨セメントを使用することなく、患者の大腿骨に対して定位置に固定されるように意図されたものであり、したがって、コンポーネントの骨対向表面と、大腿骨コンポーネントが定位置にあるときにその表面が接触する骨の表面との間の相互作用によって固定される。したがって、陥凹及びレール機構が骨対向表面の面取り部分のうちの一方又は両方に設けられるとき、骨対向表面の他の部分(前方部分、遠位部分、及び後方部分、また時には面取り部分のうちの1つ)が(骨の表面に設けられた適切な穴又は他の空洞内に受容されるように意図され得る表面上の任意の突起を無視して)縁部から縁部にわたって平面的であることが好まれ得る。例えば、骨対向表面の平面的な部分の各々は、コンポーネントの骨対向表面とそれに隣接する骨表面との間における緊密な表面間接触の形成を抑止し得るレールをいずれの縁部にも有していないことを特徴とし得る。大腿骨は、そのようなコンポーネントを対応する平面的な表面と接触させるように調製され得る。平面的な表面は、平面的でない表面と比べて、外科医が手術の間に正確に形成することがより容易となり得る。
【0045】
陥凹及びレール機構が骨対向表面の面取り部分のうちの一方又は両方に設けられるとき、骨対向表面の前方部分、遠位部分、及び後方部分の各々が骨セメントを使用することなく骨への固定を促進するように適合されることが好まれ得る。陥凹及びレール機構が骨対向表面の遠位部分上に設けられるとき、骨対向表面の前方部分、前方面取り部分、後方面取り部分、及び後方部分の各々が骨セメントを使用することなく骨への固定を促進するように適合されることが好まれ得る。骨対向表面は、骨組織が中へと成長し得る多孔質構造を設けることによって、そのように適合され得る。骨対向表面は、骨組織との相互作用を促進する材料のコーティング、例えばヒドロキシアパタイト材料のコーティングを設けることによって、そのように適合され得る。
【0046】
大腿骨コンポーネントは、人工膝関節コンポーネントの製造において一般的に使用されている金属材料から作製され得る。例として、コバルトクロムベース合金(コバルト、クロム、及びモリブデンの合金を含む)、チタン及びチタンベース合金、並びに特定のステンレス鋼が挙げられる。
【0047】
大腿骨コンポーネントは、一定範囲の大きさで作製され得、したがって、患者の大腿骨の大きさを考慮して適当である適切なコンポーネントが外科医によって選択され得る。
【0048】
大腿骨コンポーネントは、人工膝関節の他のコンポーネントと共に提供され得る。例えば、脛骨コンポーネントと共に提供され得る。脛骨コンポーネントは支持コンポーネントと共に提供され得る。支持コンポーネントが提供されるとき、その支持コンポーネントは、高分子材料(特に超高分子量ポリエチレン)又はセラミック材料など、大腿骨及び脛骨コンポーネントの材料とは異なる材料から作製され得る。コンポーネントのそのような組み合わせは公知である。
【0049】
患者の大腿骨が本発明の大腿骨コンポーネントを受容するように、特に前方表面、遠位表面、後方表面、前方面取り表面、及び後方面取り表面(多くの場合、平面的な表面となる)の位置に関して、正確に調製されることが重要である。患者の骨の手術前画像をしばしば参照して解剖学的特徴に関して表面の位置を特定するために使用され得る器具は周知であり、本発明の大腿骨コンポーネントを受容するように調製されることになる大腿骨上の表面を特定するために使用され得る。骨切断の各々の他の骨切断に対する正確な位置、及び各切断同士の角度関係が、選択された大腿骨コンポーネントに適切となるべきであることを理解されたい。これらの関係は、適切な切断ブロックを使用して決定され得るが、その切断ブロックは、調製された大腿骨の遠位面が形成されるように遠位切断が行われた後に、大腿骨の遠位面上に配置されるものである。適した切断ブロックの例が、前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断の各々の平面を特定するために使用され得る4−in−1型切断ブロックである。切断ブロックは、それらの切断工程の間に鋸刃を案内するために使用され得る表面を含んでいる。4−in−1型切断ブロックの一例が、欧州公開特許第2774554号に開示されている。
【0050】
前方切断、後方切断、前方面取り切断、及び後方面取り切断の各々の平面を特定するために、1つ又は2つ以上の切断ブロックが使用されてもよい。例えば、第1の切断ブロックが前後の切断を案内するために使用されてもよく、また第2の切断ブロックが面取り切断を案内するために使用されてもよい。面取り切断を案内するために使用され得る切断ブロックの一例が、欧州公開特許第2671523号に開示されている。
【0051】
本発明によって定められているように、2つの部分(遠位部分又は前方面取り部分及び後方面取り部分のうちの一方若しくは両方)の間の界面の1つ又は2つ以上の部分において、骨と大腿骨コンポーネントとの間にクリアランスを持たせて大腿骨コンポーネントを受容するように、大腿骨を調製するために、骨切断を実施するときに刃を案内するために使用される切断ブロックは、切断された骨によって画定される切除平面と、コンポーネントの骨対向表面の遠位部分又は面取り部分のうちの一方若しくは両方にある陥凹の底部との間にクリアランスを設けるように、刃を配置することになる。好ましくは、このクリアランスは、陥凹又は各陥凹を画定するレールが、骨の面取り表面又は各面取り表面上の切断された骨と接触するようなものであるべきである。
【0052】
所望により、レールが骨対向表面の前方面取り部分上に設けられるとき、(G
Ant−I
AntRail)の値は、少なくとも約0.05mm、又は少なくとも約0.2mm、又は少なくとも約0.5mm、又は少なくとも約1mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2mm、そして場合によっては3mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が調製された大腿骨の遠位表面にしっかりと係合する状態で、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の前方面取り表面にレールが埋め込まれる深さの尺度となる。
【0053】
所望により、レールが骨対向表面の後方面取り部分上に設けられるとき、(G
Post−I
PostRail)の値は、少なくとも約0.05mm、又は少なくとも約0.2mm、又は少なくとも約0.5mm、又は少なくとも約1mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2mm、そして場合によっては3mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が調製された大腿骨の遠位表面にしっかりと係合する状態で、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の後方面取り表面にレールが埋め込まれる深さの尺度となる。
【0054】
所望により、レールが骨対向表面の遠位部分上に設けられるとき、(I
DistRail−G
Dist)の値は、少なくとも約0.05mm、又は少なくとも約0.2mm、又は少なくとも約0.5mm、又は少なくとも約1mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2mm、そして場合によっては3mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分が調製された大腿骨の前方面取り表面及び後方面取り表面にしっかりと係合する状態で、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の遠位表面にレールが埋め込まれる深さの尺度となる。
【0055】
所望により、レールが骨対向表面の前方面取り部分上に設けられるとき、(I
AntRecess−G
Ant)の値は、少なくとも約1mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2.0mm、又は少なくとも2.5mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が調製された大腿骨の遠位表面にしっかりと係合する状態で(多くの場合、前方面取り部分上のレールが骨の前方面取り表面内に埋め込まれた状態で)、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の前方面取り表面と大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分との間の空間の深さの尺度となる。
【0056】
所望により、レールが骨対向表面の後方面取り部分上に設けられるとき、(I
PostRecess−G
Post)の値は、少なくとも約1mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2.0mm、又は少なくとも2.5mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分が調製された大腿骨の遠位表面にしっかりと係合する状態で(多くの場合、後方面取り部分上のレールが骨の後方面取り表面内に埋め込まれた状態で)、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の後方面取り表面と大腿骨コンポーネントの骨対向表面の後方面取り部分との間の空間の深さの尺度となる。
【0057】
所望により、レールが骨対向表面の遠位部分上に設けられるとき、(G
Dist−I
DistRecess)の値は、少なくとも約1.0mm、又は少なくとも約1.5mm、又は少なくとも約2.0mm、又は少なくとも2.5mm以上となり得る。これは、大腿骨コンポーネントの骨対向表面の前方面取り部分及び後方面取り部分が調製された大腿骨の前方表面及び後方表面にしっかりと係合する状態で(多くの場合、遠位部分上のレールが骨の遠位表面内に埋め込まれた状態で)、コンポーネントが大腿骨上に着座されるとき、調製された大腿骨の遠位表面と大腿骨コンポーネントの骨対向表面の遠位部分との間の空間の深さの尺度となる。
【0058】
大腿骨コンポーネントは多くの場合、分離した内側顆及び外側顆を有することになり、その内側顆及び外側顆は、天然の膝の顆間窩に対応する。各顆は、少なくとも骨対向表面の後方部分、後方面取り部分及び遠位部分を有することになる。