(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、S成分は、再循環ガスをスクラバにて洗浄した場合であっても再循環ガス中に残留することがある。また、洗浄後の再循環ガ
スに含まれる液滴は、スクラバの下流に配置されるデミスタユニット内において除去されるが、デミスタユニットを通過した再循環ガス中の水分が過給機の圧縮機に達するまでに凝縮する可能性がある。
【0006】
再循環ガス中に凝縮した液滴は、S成分及びCl成分が含まれることにより、水素イオン濃度(pH)が1〜2程度となる。ここで、過給機の圧縮機の羽根車には、軽量かつ高強度なAl合金基材を用いているが、再循環ガス中に含まれる液滴によりAl合金基材が腐食される(コロージョンが発生する)恐れがある。
【0007】
再循環ガス中に凝縮した液滴は、圧縮機の羽根車に衝突する
。これにより、羽根車が塑性変形し、その繰り返しによって減耗する(エロージョンが発生する)恐れがある。
【0008】
上記の問題点に対する第1の対策として、羽根車のAl合金基材に陽極酸化処理を施す方法が考えられるが、この方法は耐エロージョン性及び耐コロージョン性が十分に得られない可能性がある。
【0009】
また、上記の問題点に対する第2の対策として、羽根車のAl合金基材表面に、物理蒸着法あるいは化学蒸着法によるセラミック層をコーティングする方法が考えられる。このセラミック層は、耐コロージョン性のある高硬膜となる。しかしながら、この方法では、セラミック層に液滴が衝突した際に、内側のAl合金基材にまで衝撃が伝わり、該Al合金基材が変形することで、セラミック層に割れが発生し、セラミック層とAl合金基材とが剥離する恐れがある。また、上記液滴が、割れた部分あるいは剥離した部分からAl合金基材に浸透し、Al合金基材を腐食する恐れがある。さらに、セラミック層に初めから(コーティング成膜の時点で)欠陥が存在し、上記液滴がその欠陥からAl合金基材に浸透して、Al合金基材を腐食する恐れもある。
【0010】
さらに、上記の問題点に対する第3の対策として、羽根車のAl合金基材表面に、Ni‐P合金等の無電解めっきを施す方法が考えられるが、めっき皮膜中にS成分が微量含有されるため、耐コロージョン性が十分に得られない可能性がある。
【0011】
上記の技術的課題に鑑み、本発明では、耐エロージョン性と耐コロージョン性とを兼備した
積層部材、並びに、これを用いた羽根車、圧縮機及びエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1の発明に係る
積層部材は、
Al合金基材と、
前記Al合金基材の表面に形成された無電解めっき層と、
前記無電解めっき層の表面に形成されたSi層と、
前記Si層の表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン層とを備え
、
前記無電解めっき層が、前記Al合金基材よりも硬質であり、かつ、前記Si層が、前記ダイヤモンドライクカーボン層と前記無電解めっき層との中間的な硬度を有する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係る
積層部材は、
Al合金基材と、
前記Al合金基材の表面に形成された無電解めっき層と、
前記無電解めっき層の表面に形成されたSi層と、
前記Si層の表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン層と、
前記ダイヤモンドライクカーボン層の表面に形成された高分子電着層とを備える
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第3の発明に係る
積層部材は、
上記第2の発明に係る
積層部材において、
前記無電解めっき層が、前記Al合金基材よりも硬質であり、かつ、前記Si層が、前記ダイヤモンドライクカーボン層と前記無電解めっき層との中間的な硬度を有する
ことを特徴とする。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
上記課題を解決する第
4の発明に係る羽根車は、
上記第1から
3のいずれか1つの発明に係る
積層部材により形成される
ことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第
5の発明に係る圧縮機は、
上記第
4の発明に記載の羽根車と、
前記羽根車を内部に収容するコンプレッサケーシングとを備える
ことを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第
6の発明に係るエンジンは、
エンジン本体と、
前記エンジン本体の給気側に接続された上記第
5の発明に記載の圧縮機、及び、該圧縮機に連結され、前記エンジン本体の排気側に接続されたタービンを有する過給機と、
前記タービンの排気側と前記圧縮機の給気側との間に接続されたEGRシステムとを備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る
積層部材、並びに、これを用いた羽根車、圧縮機及びエンジンによれば、耐エロージョン性と耐コロージョン性とを兼備することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明に係るエンジン及び圧縮機を説明する概略図である。
図1に示すように、本発明に係るエンジン(舶用エンジン10)は、エンジン本体11、過給機12、エアクーラ(冷却器)13、及び、EGRシステム14を備えている。
【0025】
エンジン本体11は、例えば、ユニフロー掃排気式のディーゼルエンジンであって、2ストロークディーゼルエンジンであり、シリンダ11a内の掃排気の流れを下方から上方への一方向とし、排気の残留を無くすようにしたものである。エンジン本体11には、S成分の多い燃料が用いられる。エンジン本体11は、掃気トランク11b内の燃焼用ガスをシリンダ11aに供給して、シリンダ11a内で燃料とともに燃焼させ、燃焼によって生じた排ガスをシリンダ11aから排気マニホールド11cに排出する。本発明のエンジン本体11の掃気トランク11bは給気用配管G1と、排気マニホールド11cは排気用配管G2と、それぞれ連結されている。
【0026】
過給機12は、エンジン本体11の掃気トランク11bに接続された圧縮機(コンプレッサ21)と、エンジン本体11の排気マニホールド11cに接続されたタービン22とが一体に回転するように回転軸を介して連結されて構成されている。過給機12は、エンジン本体11に連結された排気用配管G2から流れ込む排ガスによりタービン22が回転し、タービン22の回転が伝達されてコンプレッサ21が回転する。コンプレッサ21が回転することにより燃焼用ガスが圧縮され、圧縮された燃焼用ガスは給気用配管G1を通じてエンジン本体11に供給される。
【0027】
コンプレッサ21は、コンプレッサケーシング(図示せず)と、羽根車(図示せず)を備えている。コンプレッサケーシングは、コンプレッサにて圧縮される燃焼用ガスを羽根車に導くとともに、圧縮された燃焼用ガスを給気用配管G1に導く。羽根車は、コンプレッサケーシングの内部に設けられ、回転軸中心に回転自在に構成されている。羽根車はAl合金(例えば、JIS A2618)を基材とする後述の耐環境部材により形成される。コンプレッサ21の燃焼用ガスの入口側には、サイレンサ21aがさらに接続されている。
【0028】
サイレンサ21aは、図示しない複数のサイレンサエレメントを周方向に備えた筒状の装置である。サイレンサは、コンプレッサ21の駆動により生じる騒音が、エンジン本体11が配置される機関室に抜けないように構成されている。さらに、サイレンサ21aは、コンプレッサ21に燃焼用ガスを導くための通路を形成する。ここで、サイレンサ21aは、サイレンサエレメント間から機関室の空気を燃焼用空気としてコンプレッサ21に導く経路を備えるとともに、サイレンサ21aの軸方向から再循環ガスをコンプレッサ21に導く排ガス再循環用配管G6に接続されている。EGR運転時には、排ガス再循環用配管G6からの再循環ガスと燃焼用空気とが混合されることで、燃焼用ガスが生成される。
【0029】
タービン22は、タービン22を回転させた排ガスを排出する排気用配管G3が連結されており、この排気用配管G3は、図示しない排ガス処理装置を介して煙突(ファンネル)に連結されている。
【0030】
エアクーラ13は、コンプレッサ21により圧縮されて高温となった燃焼用ガスと冷却水とを熱交換することで燃焼用ガスを冷却し、燃焼用ガスにおける酸素密度を高めるものである。
【0031】
EGRシステム14は、排ガス再循環用配管G4,G5,G6、スクラバ23、デミスタユニット24、及び、EGRブロワ25を備え、タービン22の排気側とコンプレッサ21の給気側との間に接続されている。EGRシステム14は、エンジン本体11から排出され、タービン22を通過した排ガスの一部を再循環ガスとしてエンジン本体11に再循環させる。再循環ガスは有害物質が除去されたのち、燃焼用空気と混合したのち、コンプレッサ21により圧縮して、燃焼用ガスとしてエンジン本体11に再循環するものである。
【0032】
スクラバ23は、再循環ガスに対して液体を噴射することで、含有するSOx(S成分)や煤塵等微粒子(PM)といった有害物質を除去するものである。また、スクラバ23は、有害物質が除去された再循環ガス及び排液を排出する、排ガス再循環用配管G5に連結されている。
【0033】
デミスタユニット24は、有害物質が除去された再循環ガスと排液を分離し、再循環ガス中の液滴を除去ものである。また、デミスタユニット24は、排液をスクラバ23に循環する排液循環用配管W1が設けられている。そして、この排水循環用配管W1は、排液を一時的に貯留するホールドタンク31、及び、ポンプ32が設けられている。
【0034】
EGRブロワ25は、スクラバ23からの再循環ガスを排ガス再循環用配管G5からデミスタユニット24に導くものである。
【0035】
本発明に係るエンジンは、コンプレッサ21の羽根車に、耐エロージョン性と耐コロージョン性とを兼備する本発明に係る
積層部材を用いられる。
【0036】
なお、本発明に係るエンジンは舶用エンジンに限定されるものではなく、低圧EGRシステムを有するエンジン全般に適用可能である。
以下、本発明に係る
積層部材について、各実施例
及び参考例にて図面を用いて説明する。
【0037】
[実施例1]
図2は、本実施例に係る
積層部材を説明する模式的断面図である。
図2に示すように、本実施例に係る
積層部材は、Al合金基材41、Al合金基材41の表面(図中上側。以下同様)に形成された無電解めっき層42、無電解めっき層42の表面に形成されたSi層43、及び、Si層43の表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン(DLC)層44を備える。
【0038】
無電解めっき層42は、具体例として、無電解Ni‐Pめっき若しくは無電解Ni‐Bめっき、又は、SiC他の硬質粒子を複合した無電解Ni‐Pめっき若しくは無電解Ni‐Bめっきを用いる。なお、無電解めっきにSiC他の硬質粒子を複合することにより、硬度が高くなり、より変形しにくくなる。
【0039】
また、無電解めっき層42は、S成分を低減させためっきとする。これは、めっきを形成する工程において、S成分の低い安定剤及び界面活性剤を用いためっき液を使用することで実現される。
【0040】
本実施例に係る
積層部材は、上記構成とすることで、耐エロージョン性と耐コロージョン性とを兼備することができる。すなわち、Al合金基材41の表面に無電解めっき層42及びDLC層44を形成することにより、液滴の衝突による割れの発生を防止することができる。すなわち、硬質であるDLC層44を設けることで、耐エロージョン性の及び耐コロージョン性の確保が可能となる。
【0041】
また、無電解めっき層42は、S成分を低減することにより、無電解めっき層42自体の耐コロージョン性を向上させることができる。無電解めっき層42は、その材質には限定されるものではなく、Ni−PあるいはNi−B化合物の非結晶皮膜を適用することができる。
【0042】
さらに、本実施例に係る
積層部材は、DLC層44と無電解めっき層42との間にSi層43を設けることで、コーティング成膜時の貫通欠陥(Al合金基材41の表面まで到達した欠陥)による腐食を防止することができる。
【0043】
また、仮に無電解めっき層42を設けていない場合、DLC層44が耐エロージョン性を備えていたとしても、液滴衝突時に内側(図中下側。以下同様)のAl合金基材41が変形してしまうことで、DLC層44が変形し、割れの発生の要因となる。そこで、本実施例では、Al合金基材41とDLC層44との間に、Al合金基材41よりも硬質の無電解めっき層42を設けることで、上層のDLC層44の変形を抑制し、割れの発生を防止することができる。すなわち、DLC層44は単層では割れの発生を防止する効果が小さいが、内側に無電解めっき層42を形成することにより割れの発生を防止することができるのである。
【0044】
そして、DLC層44と無電解めっき層42の間にSi層43を設けることで、無電解めっきとの密着性を確保し(DLC層44と無電解めっき層42との中間の硬度を有するSi層43により密着性が向上する)、DLC層44の貫通欠陥を防止することができる。
【0045】
なお、DLC層44はSi系のガスを用いた化学蒸着法で形成することから、DLC層44と無電解めっき層42との間に設ける層としては、上述のごとくSi層43を用いることで、無電解めっき層42との密着性を高めることができる。この点において、上記特許文献2では、炭素中にSiを含有した化合物の中間層であるため、本実施例に比べめっき層との密着性を向上することができない。
【0046】
この点につき詳述すると、無電解めっき層42表面にSi層43を用いる理由は、めっき層42とDLC層44のそれぞれの硬さの中間的な硬さの層を設けることにより、表層に向かって段階的に硬さを増大させ、各層の界面での剥離を防止するためである。この構成は、上記特許文献2のSiを含有した炭素化合物層に比較し、均等な硬さの増加が可能となり、液滴衝突時の衝撃力に対する変形に対し対応力が増し、各層間での剥離防止能力が増すこととなる。
【0047】
[実施例2]
図3は、本実施例に係る
積層部材を説明する模式的断面図である。
図3に示すように、本実施例に係る
積層部材としては、Al合金基材41、Al合金基材41の表面に形成された無電解めっき層42、無電解めっき層42の表面に形成されたSi層43、Si層43の表面に形成されたDLC層44、及び、DLC層44の表面に形成された高分子電着層61を備える。
【0048】
すなわち、本実施例に係る
積層部材は、実施例1に係る
積層部材の最表面部分であるDLC層44の表面に、高分子電着層61が形成されたものである。
【0049】
高分子電着層61の具体例として、エポキシ、ポリイミド、フッ素又はポリイミドアミド材を用いる。また、高分子電着層61の厚さは5μm以上とする。これは、厚さ5μm未満では欠陥発生の可能性があるためである。より好ましくは10〜40μmである。なお、電着層であるため製造上の上限は略50μmである。
【0050】
さらに、DLC層44の表面に、微粒子によるショットブラスト、又は、粘弾性粒子中に硬質セラミック粒子を含有したメデアによるショットを施す。その上に高分子電着層61を形成することで、高分子電着層61とDLC層44との密着性を向上させることができる。
【0051】
このようにして設けられた高分子電着層61は、液滴の衝撃力を緩和させる役割と耐コロージョン性を向上させる役割がある。さらに、コーティング成膜時の貫通欠陥による腐食を、より確実に防止することができる。
【0052】
[
参考例1]
図4は、本
参考例に係る
積層部材を説明する模式的断面図である。
図4に示すように、本
参考例に係る
積層部材としては、Al合金基材41、Al合金基材41の表面に形成された無電解めっき層42、無電解めっき層42の表面に形成された耐食性金属層53、及び、耐食性金属層53の表面に形成されたセラミック層54を備える。
【0053】
無電解めっき層42は、具体例として、無電解Ni‐Pめっき若しくは無電解Ni‐Bめっき、又は、SiC他の硬質粒子を複合した無電解Ni‐Pめっき若しくは無電解Ni‐Bめっきを用いる。また、無電解めっき層42は、S成分を低減させためっきとする。これは、めっきを形成する工程において、S成分の低い安定剤及び界面活性剤を用いためっき液を使用することで実現される。これらの点については、実施例1と同様である。
【0054】
また、セラミック層54は、具体的にはCrN、TiN、TiCN又はTiAlN等の、窒化物又は炭窒化物とする。そして、耐食性金属層53の具体例としては、セラミック層54がCrを含む場合にはCrを用い、セラミック層54がTiを含む場合にはTiを用いるものとする。
【0055】
本
参考例に係る
積層部材は、上記構成とすることで、耐エロージョン性と耐コロージョン性とを兼備することができる。すなわち、Al合金基材41の表面に無電解めっき層42及びセラミック層54を形成することにより、液滴の衝突による割れの発生を防止することができる。すなわち、硬質であるセラミック層54を設けることで、耐エロージョン性の確保と耐食性確保を向上させることができる。
【0056】
また、実施例1同様、無電解めっき層42は、S成分を低減することにより、無電解めっき層42自体の耐コロージョン性を向上させることができる。
【0057】
さらに、本
参考例に係る
積層部材は、セラミック層54と無電解めっき層42の間に耐食性金属層53を設けることで、コーティング成膜時の貫通欠陥による腐食を防止することができる。
【0058】
また、仮に無電解めっき層42を設けていない場合、セラミック層54が耐エロージョン性を備えていたとしても、液滴衝突時に内側のAl合金基材41が変形してしまうことで、セラミック層54が変形し、割れの発生の要因となる。そこで、本
参考例では、Al合金基材41とセラミック層54との間に、Al合金基材41よりも硬質の無電解めっき層42を設けることで、上層のセラミック層54の変形を抑制し、割れの発生を防止することができる。すなわち、セラミック層54は単層では割れの発生を防止する効果が小さいが、内側に無電解めっき層42を形成することにより割れの発生を防止することができるのである。
【0059】
そして、セラミック層54と無電解めっき層42との間に耐食性金属層53を設けることで、無電解めっき層42との密着性を確保し(セラミック層54と無電解めっき層42との中間の硬度を有する耐食性金属層53により密着性が向上する)、セラミック層54の貫通欠陥を防止することができる。
【0060】
なお、セラミック層54は、物理蒸着法で形成する。例えば、セラミック層54がCrNの場合には、Cr板をアーク放電で溶かして蒸着させ、セラミック層54がTiNの場合には、Ti板をアーク放電で溶かして蒸着させる。よって、セラミック層54と無電解めっき層42との間に設ける耐食性金属層53としては、セラミック層54がCrを含む場合にはCrを用い、セラミック層54がTiを含む場合にはTiを用いる。これにより、無電解めっき層42とセラミック層54を強固に維持することができる。この点において、上記特許文献2では、炭素中にSiを含有した化合物の中間層であるため、主にセラミック層54との密着性が向上できない。
【0061】
この点につき詳述すると、無電解めっき層42表面に、例えば、セラミック層54がCrNの場合にはCr層、セラミック層54がTiNの場合にはTi層を設ける理由は、めっき層42とセラミック層54のそれぞれの硬さの中間的な硬さの層を設けることにより、表層に向かって段階的に硬さを増大させ、各層の界面での剥離を防止するためである。この構成は、上記特許文献2のSiを含有した炭素化合物に比較し、均等な硬さの増加が可能となり、液滴衝突時の衝撃力に対する変形に対し対応力が増し、各層間での剥離防止能力が増すこととなる。
【0062】
[
参考例2]
図5は、本
参考例に係る
積層部材を説明する模式的断面図である。
図5に示すように、本
参考例に係る
積層部材は、Al合金基材41、Al合金基材41の表面に形成された無電解めっき層42、無電解めっき層42の表面に形成された耐食性金属層53、耐食性金属層53の表面に形成されたセラミック層54、及び、セラミック層54の表面に形成された高分子電着層61を備える。
【0063】
すなわち、本
参考例に係る
積層部材は、
参考例1に係る
積層部材の最表面部分であるセラミック層54の表面に、高分子電着層61が形成されたものである。
【0064】
高分子電着層61の具体例としては、実施例2と同様に、エポキシ、ポリイミド、フッ素又はポリイミドアミド材とする。また、高分子電着層61の厚さは5μm以上とし、より好ましくは10〜40μmとする。
【0065】
さらに、セラミック層54の表面に、微粒子によるショットブラスト、又は、粘弾性粒子中に硬質セラミック粒子を含有したメデアによるショットを施す。その上に高分子電着層61を形成することで、高分子電着層61とセラミック層54との密着性を向上させることができる。
【0066】
このようにして設けられた高分子電着層61は、液滴の衝撃力を緩和させる役割と耐コロージョン性を向上させる役割がある。さらに、コーティング成膜時の貫通欠陥による腐食を、より確実に防止することができる。