(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御部において、外的要因によりモータの回転状態が速度指令信号および回転方向信号の組合せに基づく回転指示状態とは異なる状態になった時点を、前記モータの回転位置を検出する位置検出器から出力される検出信号に基づいて検知し、前記異なる状態となった時点の回転位置からの移動量を測定する測定ステップと、
前記移動量と前記制御部で生成される駆動制御信号の出力状態とが所定の条件となった場合に、モータ駆動部に、駆動信号の出力を停止させる停止制御信号を送信する送信ステップと、
を含むモータ駆動制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るモータ駆動制御装置、モータ駆動制御方法及びチューブポンプについて図面を参照して説明する。なお、図面における各要素の数値の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの数値の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
(実施形態)
以下では、実施形態に係るモータ駆動制御装置が用いられるチューブポンプが、人工透析システムの血液ポンプである場合について説明する。
図1は、実施形態に係る血液ポンプが組み込まれる人工透析システムの構成例を示す図である。
【0012】
図1に示す人工透析システムは、血液ポンプ1と、ダイアライザー3と、透析液供給装置4とを有する。血液ポンプ1は、チューブ2を介して、患者Pの血液をダイアライザー3に搬送する(脱血)。
【0013】
かかるダイアライザー3は、半透膜と、透析液供給装置4から供給される透析液とにより、患者Pの血液に対して、老廃物除去、電解質維持、水分量維持の処理を行う。また、血液ポンプ1は、チューブ2を介して、ダイアライザー3により処理された血液を患者Pに戻す(返血)。
【0014】
図2および
図3は、
図1に示す血液ポンプ1を説明するための図である。
図2に示すように、血液ポンプ1は、モータ装置10と、減速機20と、ポンプシステム30とを有する。なお、
図2は、
図1に示す血液ポンプ1を側面側から見た図であり、
図3は、
図1に示す血液ポンプ1をポンプシステム30側から見た図である。
【0015】
図2において、モータ装置10は、減速機20を介して、ポンプシステム30のロータ32(
図3参照)に回転駆動力を供給する駆動源であり、後述するモータ11(
図7参照)を内蔵する。減速機20は、モータ装置10(モータ11)の回転軸と接続され、モータ11の回転速度を所定の減速比で減速する。ポンプシステム30は、減速機20の回転軸(出力軸)と接続される。
【0016】
ポンプシステム30は、
図3に示すように、ハウジング31と、ロータ32と、ローラ支持部33と、ローラ34aと、ローラ34bとを有する。ハウジング31は、内部にチューブ2およびロータ32の収納空間が形成されている。チューブ2は、ハウジング31が有する円弧状の内周壁面に沿って配設される。ロータ32は、減速機20の回転軸(出力軸)と接続される。
【0017】
ローラ支持部33は、ロータ32に接続され、ロータ32の回転とともに回転する。ローラ支持部33の両端には、ローラ34aおよびローラ34bがそれぞれ取り付けられている。ローラ支持部33は、チューブ2を押圧するローラ34aおよびローラ34bを回転自在に支持する。
【0018】
ローラ34aおよびローラ34bは、ローラ支持部33の回転とともに回転する。すなわち、ローラ34aおよびローラ34bは、モータ装置10(モータ11)の駆動により回転することで、ハウジング31の内周壁面に沿って配設されたチューブ2を押圧し、チューブ2内の液体(血液)を送出する。
【0019】
図4は、実施形態に係るモータ装置10における通電方式の切替動作の一例を説明するための図である。
図4に示すように、モータ装置10におけるモータ11の通電方式には、120度通電方式(以下、120度通電とも呼称する。)と、180度通電方式(以下、180度通電とも呼称する。)とがある。
【0020】
120度通電は、モータ11が低速回転(たとえば、V1〜V2rpm)で駆動する際に用いられる通電方式である。180度通電は、モータ11が中高速回転(たとえば、V3rpm以上)で駆動する際に用いられる通電方式である。以下の実施形態では、一例として、V1〜V2rpmは100rpmより小さく、V3rpmは100rpmより大きく、V4rpmはV3rpmより大きい場合について説明する。
【0021】
120度通電は、低速回転でのトルクが大きいという利点がある一方で、中高速回転になると駆動時の騒音と振動が大きいという欠点がある。一方、180度通電は、120度通電に比べて低速回転でのトルクが小さいという欠点がある一方で、中高速回転での騒音と振動が小さいという利点がある。
【0022】
そこで、実施形態では、モータ11の起動時には120度通電で通電し、実回転速度が所定の回転速度(たとえば、V2rpm)以上になった際に180度通電に切り替える制御が行われる。
【0023】
また、
図4に示した例において、モータ11を低速回転(たとえば、100rpm)で回転させる場合には、次のような制御が行われる。まず、モータ11を120度通電によりPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)デューティ比(以下、デューティ比とも呼称する)を増加させるとD2%でモータ11の回転が開始し、回転速度がV1rpmになる(ステップS1)。
【0024】
引き続いて、デューティ比を増加させて、D3%で回転速度がV2rpm以上になる(ステップS2)と、通電方式は120度通電から180度通電に切り替えられる(ステップS3)。すると、モータ11の回転速度はV2rpmからV4rpmに急激に増加し、目標の回転速度(100rpm)を上回る。
【0025】
次に、180度通電のまま、デューティ比を減少させると、D1%で、回転速度はV3rpmになる(ステップS4)。引き続いて、デューティ比を減少させると、モータ11がトルク不足で回転できないフリー状態で回転速度が低下し、回転速度がV2rpm以下になると通電方式を180度通電から120度通電に切り替える(ステップS5)。
【0026】
そして、回転速度が100rpm以下になるとデューティを増加させるが、モータ11が回転できないフリー状態が続き(ステップS4〜S5〜S1)、モータ11はD2%でふたたび120度通電で回転を再開する(ステップS1)。このように、モータ11が、120度通電(ステップS1〜S2)、180度通電(ステップS3〜S4)、フリー(ステップS4〜S5〜S1)の行程をくり返すことにより、モータ11における回転速度の平均値を目標の回転速度(100rpm)にすることができる。
【0027】
なお、上述したように、実施形態において、モータ11は減速機20によりさらに減速されながら用いられることから、上記の行程をくり返すことにより微視的には回転速度が変動したとしても、実用上問題はない。
【0028】
つづいて、かかるモータ装置10における課題について、
図5および
図6を参照しながら説明する。
図5は、参考例におけるモータ駆動制御装置の処理フローを示す図であり、
図6は、参考例におけるモータ駆動制御装置の各信号要素の関係の一例を示すタイミングチャートである。
【0029】
図5に示すように、モータ駆動部13(
図7参照)は、モータ11(
図7参照)に対して駆動信号を出力することにより、モータ11を駆動する。かかる駆動信号は、モータ駆動部13において120度通電方式または180度通電方式に基づいて生成され、モータ11に出力される。
【0030】
制御部12(
図7参照)は、モータ駆動部13に対して駆動制御信号を出力することにより、モータ駆動部13の各種制御を行う。たとえば、ユーザから指示された速度指令信号とエンコーダ14から出力されたエンコーダ信号(
図7参照)とに基づいて、モータ駆動部13に速度指令を与え、モータ11の回転速度を制御(速度制御)する。
【0031】
ここで、低速運転中のポンプシステム30に対して、外的要因による負荷が瞬間的に増加し、モータ11の回転速度が所定の回転速度(たとえば、V2rpm)より低下した場合、モータ駆動部13は、上述のように通電方式を180度通電から120度通電に切り替える動作に入る。
【0032】
しかしながら、通電方式が120度通電に切り替わる前に、負荷が加わり続けてモータ11が目標の回転方向と反対の方向に回転(0rpm以下)(以下、逆回転とも呼称する。)し、さらに逆回転が所定の回転速度(たとえば、−V2rpm)以下になり、それをモータ駆動部13が検知すると、モータ駆動部13はモータ11を保護する保護動作に入る。
【0033】
なぜなら、ホール素子15(
図7参照;磁気センサの一例)からの前回の信号に基づいて正弦波の駆動波形を生成する180度通電方式では、モータ11が逆回転すると前回と異なる通電順序と認識し、したがって駆動波形を生成することができないからである。なお、モータ駆動部13は、モータ11の回転速度を、モータ装置10に内蔵されるホール素子15で検知することができる。
【0034】
モータ11を保護する保護動作は、たとえば、モータ11の回転を停止させるショートブレーキである。そして、かかる保護動作によりモータ11の回転が停止とみなされる極低速または停止すると、保護動作が解除され、モータ11の回転が復帰する。
【0035】
一方で、かかるモータ駆動部13による保護動作中においては、制御部12からモータ駆動部13に速度指令を与えても、モータ装置10を駆動させることはできない。これにより、モータ11の回転位置制御の偏差(速度指令カウント数−エンコーダ信号カウント数)が増加する。
【0036】
したがって、上述の保護動作が解除されると同時に、かかる回転位置制御の偏差を解消しようと制御が働くため、
図6に示すようにモータ11が急加速してしまい、時間当たりの流量が急増する。さらに、かかる急加速の際にポンプシステム30が高負荷状態であった場合、チューブ2が急激な圧力上昇により破損する恐れがあった。
【0037】
そこで、実施形態に係るモータ駆動制御装置では、制御部12を以下に説明する構成にすることにより、外的要因により回転状態が回転指示状態と異なるモータ11の動作を安全に制御することができる。
【0038】
図7は、
図2に示すモータ装置10の構成例を示すブロック図である。モータ装置10は、
図7に示すように、モータ11と、制御部12と、モータ駆動部13と、エンコーダ14(位置検出器の一例)と、ホール素子15(磁気センサの一例)とを有する。
【0039】
詳細は後述するが、モータ駆動制御装置は、速度指令信号および回転方向信号の入力により、駆動制御信号を生成して出力する制御部12と、駆動制御信号の入力により、駆動信号を生成しモータ11に出力するモータ駆動部13と、モータ11の回転位置を検出し、当該検出結果に基づくエンコーダ信号(検出信号の一例)を出力するエンコーダ14と、を備え、制御部12は、外的要因によりモータ11の回転状態が速度指令信号および回転方向信号の組合せに基づく回転指示状態とは異なる状態になった時点をエンコーダ信号に基づいて検知し、異なる状態となった時点の回転位置からの移動量を測定する測定部と、移動量と駆動制御信号の出力状態とが所定の条件となった場合に、駆動信号の出力を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信する送信部と、を有する。
【0040】
モータ11は、減速機20を介して、ポンプシステム30と接続される。モータ11は、たとえば、3相のブラシレスDCモータである。モータ11は、制御部12およびモータ駆動部13を含むモータ駆動制御装置により駆動制御される。なお、モータ駆動制御装置として、エンコーダ14およびホール素子15が含まれてもよい。
【0041】
制御部12は、外部装置である速度指令信号生成部100と、回転方向信号生成部110とに接続される。制御部12は、たとえば、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)により構成される。制御部12には、速度指令信号生成部100から速度指令信号が入力され、さらに回転方向信号生成部110から回転方向信号が入力され、かかる速度指令信号および回転方向信号に基づいて駆動制御信号を生成する。
【0042】
かかる速度指令信号は、速度指令信号生成部100により生成される信号であり、モータ11の目標回転速度を指定する指令情報である。具体的には、速度指令信号は、カウント数が目標の回転ステップ数となり、単位時間当たりのカウント数が目標の回転速度となるパルス信号である。
【0043】
速度指令信号生成部100は、たとえば、パルス周波数変調(Pulse Frequency Modulation:PFM)により、目標回転速度に応じた周波数のクロック信号を速度指令信号として生成し、制御部12に出力する。
【0044】
また、制御部12には、回転方向信号生成部110から回転方向信号が入力され、かかる回転方向信号に基づいてモータ11の回転方向を制御する。回転方向信号は、モータ11における目標の回転方向(以下、「正方向」とも呼称する。)を指定する指令情報である。具体的には、回転方向信号は、目標の回転方向がCW(時計回り)方向である場合と、CCW(反時計回り)方向である場合とで値が異なるデジタル信号である。
【0045】
そして、制御部12は、たとえば、パルス幅変調(PWM)により、クロック信号に対応する回転速度でモータ11を回転させるためのPWM信号を駆動制御信号として生成する。なお、かかる駆動制御信号は、PWM信号の他に、回転方向信号に基づく回転方向でモータ11を回転させるための制御信号を含む。
【0046】
さらに、制御部12では、速度指令信号と回転方向信号との組み合わせにより、モータ11の回転指示状態が決定される。速度指令信号が0より大きい場合、モータ11が駆動状態と決定され、この場合は回転方向信号が0または1で、モータ11が「CW回転」または「CCW回転」と回転指示状態が決定される。たとえば、回転方向信号が0の場合は「CCW回転」、回転方向信号が1の場合は「CW回転」の指示となる。
【0047】
一方、速度指令信号が0の場合、モータ11は保持状態と決定され、この場合は回転方向信号は使用しない。
【0048】
モータ駆動部13は、直流電源DCに接続され、制御部12が生成した駆動制御信号の入力により、駆動信号を生成しモータ11に出力する。モータ駆動部13は、たとえば、インバータ回路と、アナログ集積回路であるプリドライブ回路とを有する。
【0049】
インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ11に駆動信号を出力し、モータ11が備える3つの電機子コイルに通電する。インバータ回路は、たとえば、直流電源DCの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、3つの電機子コイルの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。そして、かかる2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点にモータ11の各相の端子が接続されている。
【0050】
プリドライブ回路は、制御部12から入力される駆動制御信号に基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。かかる出力信号は、たとえば、インバータ回路の各スイッチ素子に対応する6種類のスイッチング信号である。これらの出力信号がインバータ回路に出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ11に駆動信号が出力されてモータ11の各相に電力が供給される。
【0051】
なお、インバータ回路に出力されるスイッチング信号は、120度通電方式と180度通電方式とでそれぞれ異なるタイミングで出力される。したがって、実施形態では、モータ駆動部13のプリドライブ回路において、モータ11の通電方式を制御している。
【0052】
エンコーダ14は、モータ11(回転子)の回転位置を検出する位置検出器の一例である。エンコーダ14は、速度指令信号(クロック信号)に応じたパルス信号を出力し、かかるパルス信号のカウント数に基づく検出信号(エンコーダ信号)を、制御部12に出力する。
【0053】
エンコーダ14は、モータ11が回転している場合、A相からの信号と、かかるA相との位相差が約90度のB相からの信号とをそれぞれ交互に出力する。制御部12が含む測定部41(
図8参照)は、カウンタにより、A相の出力波形の立ち上がり/立ち下がりの状態変化と、B相の出力波形の立ち上がり/立ち下がりの状態変化とをカウントすることで、実際の回転ステップ数、回転方向および回転速度を測定する。
【0054】
ホール素子15は、モータ11(回転子)における磁極の位置を検出する磁気センサの一例であり、かかる検出結果に基づく位置信号(ホール信号)をモータ駆動部13のプリドライブ回路に出力する。プリドライブ回路は、受信したホール信号に基づいて、インバータ回路の各スイッチ素子のオン、オフ動作を切り替えるタイミングを調整する。
【0055】
また、プリドライブ回路は、受信したホール信号の状態変化に基づいてモータ11の回転速度を検出し、モータ11の通電方式を切り替える。なお、ホール素子15の代わりに、ホールICが用いられる場合であってもよい。
【0056】
制御部12は、速度指令信号(クロック信号)と、エンコーダ14が出力するエンコーダ信号とに基づいて、駆動制御信号(PWM信号)を生成し、モータ駆動部13に出力する。制御部12は、たとえば、クロック信号の入力により、モータ11が回転している間、クロック信号のカウント数(目標の回転ステップ数)と、エンコーダ信号のカウント数(実際の回転ステップ数)とを比較する。
【0057】
そして、クロック信号とエンコーダ信号のカウント数の比率を調整後に、両方のカウント数が異なる場合、制御部12は、両方のカウント数が一致するよう、デューティ比を変更したPWM信号を生成し、モータ駆動部13に出力する。なお、制御部12は、クロック信号の入力によりモータ11が回転している間、エンコーダ14が出力するエンコーダ信号の代わりに、ホール素子15が出力する信号を用いて、モータ11の回転速度を維持する制御を行ってもよい。
【0058】
ところで、モータ装置10には、外的要因による負荷によりモータ11が逆回転した際、モータ11を保護する上述の保護機能が、モータ駆動部13のプリドライブ回路に設けられている。プリドライブ回路は、ホール素子15からのホール信号に基づいてモータ11の実際の回転方向および回転速度を検出する。
【0059】
そして、モータ11が目標の回転方向とは反対の回転方向(以下、逆方向とも呼称する。)へ回転し、さらに逆方向への回転が所定の回転速度以上(すなわち、正方向への回転が所定のマイナス回転速度以下)になったことをホール信号に基づいて検知した場合、プリドライブ回路はモータ11を保護する保護動作を行う。
【0060】
ここで、実施形態では、モータ11が目標の回転方向とは逆方向に回転した場合、モータ11が逆転を開始した時点からの移動量と、駆動制御信号の出力状態とが、高負荷状態を示す所定の条件となった場合、制御部12は、モータ駆動部13に駆動信号の出力を停止させる停止制御信号を送信する。
【0061】
これにより、通電方式が180度通電方式から120度通電方式に切り替わる前に、外的要因によりモータ11の回転状態が回転指示状態と異なり保護動作に入った場合にも、モータ11が急加速してチューブ2が急激な圧力上昇により破損することを抑制することができる。したがって、実施形態によれば、外的要因により状態が回転指示状態と異なるモータ11の動作を安全に制御することができる。
【0062】
図8は、実施形態に係る制御部12の構成例を示すブロック図である。制御部12は、測定部41と、生成部42と、送信部43と、記憶部50とを有する。記憶部50は、目標回転方向情報51と、カウント閾値情報52と、デューティ比閾値情報53とを記憶する。なお、送信部43は、タイマを備えている。
【0063】
記憶部50は、回転方向信号生成部110から回転方向信号を受信して、モータ11の目標回転方向(CW方向またはCCW方向)に関する情報である目標回転方向情報51を記憶する。測定部41は、かかる目標回転方向情報51と、エンコーダ14からのA相エンコーダ信号およびB相エンコーダ信号とに基づいて、モータ11が逆転を開始した回転位置からの移動量をカウントした逆転カウントを測定する。かかる逆転カウントの測定方法については後述する。
【0064】
生成部42は、速度指令信号生成部100から速度指令信号を受信するとともに、回転方向信号生成部110から回転方向を受信し、かかる速度指令信号、回転方向信号および測定部41でエンコーダ信号からカウントされた実際の回転ステップ数に基づいて、駆動制御信号を生成する。そして、生成部42は、生成した駆動制御信号をモータ駆動部13に送信する。生成部42は、また、駆動制御信号の出力状態を送信部43に送信する。かかる駆動制御信号の出力状態とは、たとえば、駆動制御信号(PWM信号)のデューティ比である。後述するように、送信部43は、PWM信号のデューティ比が所定の比率以上となった場合に停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。
【0065】
送信部43は、測定部41で測定される逆転カウントと、記憶部50のカウント閾値情報52に記憶されたカウント閾値(規定の値の一例)とを比較する。なお、かかるカウント閾値は、モータ11が逆転を開始した回転位置からの移動量に対する所定の閾値の一例である。
【0066】
さらに、送信部43は、生成部42から送られるPWM信号のデューティ比と、記憶部50のデューティ比閾値情報53に記憶されたデューティ比閾値とを比較する。
【0067】
そして、逆転カウントが所定のカウント閾値以上になるとともに、PWM信号のデューティ比が所定のデューティ比閾値以上になった場合、送信部43は、ポンプシステム30が高負荷状態であると判断する。そこで、送信部43は、上述の停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。
【0068】
図9は、実施形態に係るモータ駆動中のモータ駆動制御装置における各信号要素の関係の一例を示すタイミングチャートである。なお、
図9に示す例は、モータ11が駆動中であることから、速度指令信号生成部100よりクロック信号が出力されている。また、
図9に示す例では、回転方向信号によりモータ11に指示される目標回転方向が、CCW方向である場合について示している。
【0069】
したがって、
図9に示すように、まずB相エンコーダ信号(ENC−B)の値として「0」(Low信号)が出力され、次にA相エンコーダ信号(ENC−A)の値として「1」(High信号)が出力され、次にB相エンコーダ信号の値として「1」が出力される。つづいてA相エンコーダ信号の値として「0」が出力され、以下、この所定の順番でA相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号とがそれぞれ交互に出力される。
【0070】
なお、モータ11の目標回転方向がCW方向の場合は、まずA相エンコーダ信号の値として「0」が出力され、次にB相エンコーダ信号の値として「1」が出力され、次にA相エンコーダ信号の値として「1」が出力される。つづいてB相エンコーダ信号の値として「0」が出力され、以下、この所定の順番でA相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号とがそれぞれ交互に出力される。また、かかるA相エンコーダ信号の出力とB相エンコーダ信号の出力とが合成されて、エンコーダ合成信号となる。
【0071】
そして、モータ11が所定の回転速度を維持している場合、それぞれ交互に出力されるエンコーダ信号(A相エンコーダ信号およびB相エンコーダ信号)は、速度指令信号(クロック信号)に応じて出力される。また、
図9に示した例では、この際180度通電方式でモータ11を駆動している。
【0072】
しかしながら、外的要因による負荷が増加し、モータ11の回転速度が目標回転速度より低下すると、エンコーダ14から出力されるエンコーダ信号は、クロック信号より遅れる。さらに、時間T1においてモータ11が逆転すると、所定の順番とは異なるエンコーダ信号が出力されるようになる。
【0073】
図9に示す例では、A相エンコーダ信号の値「1」が出力された後に、モータ11が逆転した際、次の順番であるB相エンコーダ信号の値「1」が出力されず、A相エンコーダ信号の値「0」が出力されている。さらに、モータ11の逆転が継続すると、A相エンコーダ信号の値「0」が出力された後に、時間T2において逆転が継続していることを示すB相エンコーダ信号の値「1」が出力される。
【0074】
さらに、逆転が継続した場合、時間T2から計測される上述の逆転カウントが、時間T3において所定の移動量に到達している。ここで、逆転カウントの計測を時間T1からではなく時間T2から開始する理由は、モータ11が極低速回転する際に回転方向がふらつく、いわゆるチャタリング現象が発生した場合の影響を除外するためである。また、測定部41における逆転カウントの具体的なカウント方法については後述する。
【0075】
そして、逆転カウントが所定のカウント値以上になった際、PWM信号のデューティ比が所定の比率(たとえば、80%以上)であった場合には、逆転保護のため、送信部43は駆動信号の出力を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。ここで、
図9に示す例では、時間T3においてPWM信号のデューティ比が100%であることから、その条件を満たしている。
【0076】
したがって、
図9に示す例では、時間T3において停止制御信号が送信部43からモータ駆動部13に送信されるため、モータ11の回転が停止する。このように、モータ11が逆転を開始した位置から所定の量移動するとともに、PWM信号のデューティ比が所定の比率以上である場合に、ポンプシステム30が高負荷状態であると判断する。
【0077】
そして、実施形態では、停止制御信号をモータ駆動部13に送信してモータ11を停止させることにより、モータ11が急加速してチューブ2が急激な圧力上昇により破損することを抑制することができる。
【0078】
続いて、逆転カウントの測定処理について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、実施形態に係るモータ駆動中における逆転カウントの測定処理を説明するフローチャートであり、
図11は、実施形態に係るCW方向とCCW方向とにおけるエンコーダ信号の出力状態を示す模式図である。なお、
図10に示す逆転カウントの測定処理は、A相エンコーダ信号またはB相エンコーダ信号の状態変化を測定部41が受信する毎に行われる。
【0079】
図10に示すように、まず、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と現在のB相エンコーダ信号の値が異なるかどうか、すなわち、現在のA相エンコーダ信号の値が「1」であるとともに現在のB相エンコーダ信号の値が「0」であるか、または現在のA相エンコーダ信号の値が「0」であるとともに現在のB相エンコーダ信号の値が「1」であるか否かを判定し(ステップS101)、かかる条件に適合した場合は(ステップS101,Yes)、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致するかどうかを判定する(ステップS102)。
【0080】
つづいて、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致した場合(ステップS102,Yes)、目標回転方向情報51に基づいて目標回転方向がCW方向でないか否かを判定する(ステップS103)。そして、目標回転方向がCW方向でない場合(ステップS103,Yes)、逆転カウントを1加算して(ステップS104)、処理を終了する。
【0081】
すなわち、「ステップS101,Yes」であり「ステップS102,Yes」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CW方向となる。そして、「ステップS103,Yes」の場合は、目標回転方向がCCW方向であることから、逆転カウントを1加算する。
【0082】
なお、ステップS103の判定条件を満たさなかった場合(ステップS103,No)、すなわちモータ11の回転方向が目標回転方向と同じCW方向の場合、測定部41は、逆転カウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS105)。ここで、逆転カウントが0より大きい場合は(ステップS105,Yes)、逆転カウントを1減算して(ステップS106)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS105,No)、そのまま処理を終了する。
【0083】
また、ステップS102の判定条件を満たさなかった場合(ステップS102,No)、測定部41は、目標回転方向情報51に基づいて目標回転方向がCCW方向でないか否かを判定する(ステップS107)。そして、目標回転方向がCCW方向でない場合(ステップS107,Yes)、逆転カウントを1加算して(ステップS108)、処理を終了する。
【0084】
すなわち、「ステップS101,Yes」であり「ステップS102,No」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CCW方向となる。そして、「ステップS107,Yes」の場合は、目標回転方向がCW方向であることから、逆転カウントを1加算する。
【0085】
なお、ステップS107の判定条件を満たさなかった場合(ステップS107,No)、すなわちモータ11の回転方向が目標回転方向と同じCCW方向の場合、測定部41は、逆転カウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS109)。ここで、逆転カウントが0より大きい場合は(ステップS109,Yes)、逆転カウントを1減算して(ステップS110)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS109,No)、そのまま処理を終了する。
【0086】
さらに、ステップS101の判定条件を満たさなかった場合(ステップS101,No)、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致しないか否かを判定する(ステップS111)。
【0087】
つづいて、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致しない場合(ステップS111,Yes)、目標回転方向情報51に基づいて目標回転方向がCW方向でないか否かを判定する(ステップS112)。そして、目標回転方向がCW方向でない場合(ステップS112,Yes)、逆転カウントを1加算して(ステップS113)、処理を終了する。
【0088】
すなわち、「ステップS101,No」であり「ステップS111,Yes」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CW方向となる。そして、「ステップS112,Yes」の場合は、目標回転方向がCCW方向であることから、逆転カウントを1加算する。
【0089】
なお、ステップS112の判定条件を満たさなかった場合(ステップS112,No)、すなわちモータ11の回転方向が目標回転方向と同じCW方向の場合、測定部41は、逆転カウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS114)。ここで、逆転カウントが0より大きい場合は(ステップS114,Yes)、逆転カウントを1減算して(ステップS115)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS114,No)、そのまま処理を終了する。
【0090】
また、ステップS111の判定条件を満たさなかった場合(ステップS111,No)、測定部41は、目標回転方向情報51に基づいて目標回転方向がCCW方向でないか否かを判定する(ステップS116)。そして、目標回転方向がCCW方向でない場合(ステップS116,Yes)、逆転カウントを1加算して(ステップS117)、処理を終了する。
【0091】
すなわち、「ステップS101,No」であり「ステップS111,No」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CCW方向となる。そして、「ステップS116,Yes」の場合は、目標回転方向がCW方向であることから、逆転カウントを1加算する。
【0092】
なお、ステップS116の判定条件を満たさなかった場合(ステップS116,No)、すなわちモータ11の回転方向が目標回転方向と同じCCW方向の場合、測定部41は、逆転カウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS118)。ここで、逆転カウントが0より大きい場合は(ステップS118,Yes)、逆転カウントを1減算して(ステップS119)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS118,No)、そのまま処理を終了する。
【0093】
このように、ホール素子15より高い分解能を持つエンコーダ14から出力されるエンコーダ信号に基づいて逆転カウントを測定することにより、モータ11が逆転した後すばやくモータ11の逆転を検知することができる。
【0094】
図12は、実施形態に係るモータ駆動中における停止制御信号の送信処理を説明するフローチャートである。
図12に示す停止制御信号の送信処理は、定期的に行われる。ただし、モータ駆動部13による保護動作中は、この処理を行わない。
【0095】
詳細は後述するが、測定部41は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、モータ11の回転が、外的要因により、目標の回転方向とは逆方向に切り替わった時点をエンコーダ信号(検出信号の一例)に基づいて検知し、切り替わった時点におけるモータ11の回転位置から逆方向への移動量を、移動量としてエンコーダ信号に基づいて測定し、送信部43は、移動量が所定の第1移動量以上になり、かつPWM信号のデューティ比が所定の第1デューティ比以上になった場合に、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。
【0096】
また、送信部43は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、エンコーダ信号に基づくモータ11の現在の回転位置が速度指令信号に基づく目標の回転位置より先行した状態で、移動量が第1移動量以上で、かつPWM信号のデューティ比が第1デューティ比を超えない場合には、停止制御信号をモータ駆動部13に送信しない。
【0097】
さらに、送信部43は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、モータ11の現在の回転位置が目標の回転位置より先行した状態で、移動量が第1移動量以上の所定の第2移動量以上になった場合に、PWM信号のデューティ比が第1デューティ比を超えなくても、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。さらに、送信部43は、速度指令信号により設定されるモータ11の回転速度が所定の閾値以上の場合、停止制御信号をモータ駆動部13に送信しない。
【0098】
図12に示すように、まず、送信部43は、速度指令信号により指令される速度指令値が、所定の第1閾値以下であるか否かを判定する(ステップS201)。そして、速度指令値が第1閾値以下である場合(ステップS201,Yes)、送信部43は、エンコーダ信号に基づく現在位置に相当するカウント値が、速度指令信号および回転方向信号に基づく目標位置に相当するカウント値以下であるか否かを判定する(ステップS202)。また、ステップS201の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS201,No)、送信部43は、モータ11が高速回転中であるとみなし、処理を終了する。
【0099】
そして、現在位置を示すカウント値が目標位置に相当するカウント値以下である場合(ステップS202,Yes)、送信部43は、モータ11が目標の回転位置から後退し逆方向に移動しているとみなす。
【0100】
つづいて、送信部43は、逆転カウントが所定の第1移動量に相当するカウント値以上であるか否かを判定する(ステップS203)。なお、かかる第1移動量は、カウント閾値情報52に記憶されるカウント閾値の一例である。
【0101】
そして、逆転カウントが第1移動量以上である場合(ステップS203,Yes)、送信部43は、PWM信号のデューティ比が所定の第1デューティ比(たとえば、デューティ比80%)以上であるか否かを判定する(ステップS204)。なお、かかる第1デューティ比は、デューティ比閾値情報53に記憶されるデューティ比閾値の一例である。また、ステップS203の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS203,No)、処理を終了する。
【0102】
つづいて、送信部43は、PWM信号のデューティ比が第1デューティ比以上である場合(ステップS204,Yes)、モータ11を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信して(ステップS205)、処理を終了する。なお、ステップS204の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS204,No)、処理を終了する。
【0103】
なお、ステップS202の判定条件を満たさなかった場合(ステップS202,No)、送信部43は、モータ11が目標の回転位置から先行しているとみなす。そして、送信部43は、逆転カウントが、所定の第2移動量に相当するカウント値以上であるか否かを判定する(ステップS206)。なお、かかる第2移動量は、カウント閾値情報52に記憶されるカウント閾値の別の一例であり、上述の第1移動量より大きい移動量(移動角度)である。
【0104】
そして、逆転カウントが第2移動量以上である場合には(ステップS206,Yes)、モータ11を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信して(ステップS207)、処理を終了する。また、ステップS206の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS206,No)、処理を終了する。
【0105】
ここまで示したように、モータ11が目標の回転位置から後退し逆方向に移動している場合に、移動量が所定の第1移動量以上であり、かつPWM信号のデューティ比が第1デューティ比以上である場合、送信部43が停止制御信号をモータ駆動部13に送信し、モータ11を停止させる。これにより、正確に高負荷状態を検知して、モータ11を停止させることができる。
【0106】
また、モータ11が目標の回転位置から先行しているが逆方向に移動している場合に、移動量が所定の第1移動量以上であり、かつPWM信号のデューティ比が第1デューティ比以上である場合、送信部43は停止制御信号をモータ駆動部13に送信し、モータ11を停止させる。
【0107】
すなわち、移動量が所定の第1移動量以上であっても、PWM信号のデューティ比が第1デューティ比以上でなければ、送信部43は停止制御信号をモータ駆動部13に送信しない。これにより、高負荷状態でない場合に、モータ11の駆動を継続させることができる。
【0108】
さらに、モータ11が目標の回転位置から先行しているが逆方向に移動している場合に、移動量が第1移動量より大きい所定の第2移動量以上である場合は、PWM信号のデューティ比にかかわらず、送信部43が停止制御信号をモータ駆動部13に送信し、モータ11を停止させる。これにより、ディーティ比からは高負荷状態でないと判定される場合であっても、送液量が大きく変動したと見なしてモータ11を停止させることができる。
【0109】
さらに、速度指令信号が所定の閾値(第1閾値)以上である高速回転中(たとえば、V4rpmよりも大きい)の場合は、モータ11の駆動を停止しない。これにより、制御部12において余計な判断を省略することができることから、制御部12の処理能力を増やすことができる。
【0110】
図13は、実施形態に係るモータ保持中のモータ駆動制御装置における各信号要素の関係の一例を示すタイミングチャートである。
図13に示す例は、モータ11が保持中であることから、速度指令信号生成部100よりクロック信号は出力されていない。
【0111】
図13に示す例では、外的要因による負荷でモータ11がどちらかの方向に回転した場合、モータ駆動制御装置は、モータ11を復元回転方向(負荷とは逆方向)に駆動させて、モータ11が目標の回転位置に保持されるように制御を行う。
【0112】
このように、モータ11を所定の回転位置で保持する制御のことを保持トルク動作とも呼称する。かかる保持トルク動作は、モータ11の停止中だけでなく、たとえば、モータ11の回転と停止とをくり返す間欠駆動を制御部12が実行させる制御により低速回転を実現する際に、停止時に外的要因により回転位置がずれたモータ11を停止位置に戻すために行われる。
【0113】
そして、「復元回転方向」とは、駆動制御信号に含まれる回転方向であり、保持トルク動作により元の位置に戻すための復元用の回転方向である。したがって、負荷が発生した方向とは逆の方向に発生するようになることから、たとえばCW方向に負荷が発生した場合、復元回転方向はCCW方向となる。
【0114】
さらに、復元回転方向は、
図13に示すように、モータ11が停止位置を保持中の場合は「不定(前状態を維持)」となる。かかる状態は、復元回転方向がCW方向かCCW方向かが決まらない状態であり、その前の保持トルク動作時の復元回転方向であった方向を保持しているだけの状態である。
【0115】
図13に示す例では、時間T1から外的要因によりCW方向に負荷が発生し、モータ11がCW方向に回転し始めている。そこで、モータ駆動制御装置は、エンコーダ14の2以上の所定のカウント数(本例では2カウント目である時間T2)からデューティ比を増加させて、復元回転方向(この場合、CCW方向)にモータ11を駆動させる保持トルク動作を行っている。
【0116】
しかしながら、実施形態では、かかる保持トルク動作を行ったとしても、時間T3においてモータ11のずれ量が所定のずれ量の一例である所定のずれカウント以上になり、かつ駆動制御信号のデューティ比が所定の閾値以上になった場合、モータ駆動制御装置は拘束保護を発生させ、モータ11を停止させる。かかる拘束保護は、モータ11が駆動中の場合と同様に、送信部43が停止制御信号をモータ駆動部13に送信することにより行われる。
【0117】
このように、モータ11が保持中に、外的要因により所定のずれ量を超えた場合に拘束保護を発生させることで、外的要因が解除された際、モータ11の急加速を回避することが可能となる。
【0118】
図14は、実施形態に係るモータ保持中のモータ駆動制御装置における各信号要素の関係の別の一例を示すタイミングチャートである。
図14に示す例は、モータ保持中であることから、速度指令信号生成部100よりクロック信号は出力されていない。
【0119】
図14に示す例では、時間T1から外的要因によりCW方向に負荷が発生し、モータ11がCW方向に回転し始めている。そこで、モータ駆動制御装置は、エンコーダ14の2以上の所定のカウント数(本例では2カウント目である時間T2)からデューディ比を増加させて、復元回転方向(この場合、CCW方向)にモータ11を駆動させる保持トルク動作が行われ、所定のずれカウント以内でモータ11の回転自体は停止している(時間T4)。
【0120】
しかしながら、時間T3からPWM信号のデューティ比が所定の閾値以上を維持し、エンコーダ信号が変化した時間T4から所定の時間(たとえば、時間T4から時間T5までの時間)経過した場合、実施形態では、モータ駆動制御装置は拘束保護を発生させ、モータ11を停止させる。
【0121】
このように、モータ11が保持中に、外的要因により所定のずれ量以内でも、PWM信号が所定の閾値以上のデューティ比で所定の時間経過した場合、拘束保護を発生させることで、外的要因が解除された際、モータ11の急加速を回避することが可能となる。
【0122】
図15は、実施形態に係るモータ保持中におけるずれカウントの測定処理を説明するフローチャートである。なお、
図15に示すずれカウントの測定処理は、A相エンコーダ信号またはB相エンコーダ信号の状態変化を測定部41が受信する毎に行われる。また、モータ保持中は、モータ11は停止しており、速度指令信号生成部100からの速度指令信号は出力されておらず、回転方向信号生成部110からの回転方向信号は測定部41で利用しないため、外的要因により回転位置がずれた場合に停止位置に戻すために利用する復元回転方向は、エンコーダ信号カウント数の増減から負荷がかかった回転方向を判定し、それとは逆の回転方向へ回転させる方向とする処理が行われる。
【0123】
図15に示すように、まず、測定部41は、回転位置制御の偏差がゼロより小さいか否かを判定する(ステップS301)。ここで、「回転位置制御の偏差」とは、速度指令カウント数からエンコーダ信号カウント数を減算した値のことであり、CW方向に負荷がかかった場合、エンコーダ信号カウント数が増加するため、回転位置制御の偏差はマイナスになる。また、CCW方向に負荷がかかった場合、エンコーダ信号カウント数が減少するため、回転位置制御の偏差はプラスになる。
【0124】
そして、回転位置制御の偏差がゼロより小さい場合(ステップS301,Yes)、測定部41は、復元回転方向をCCW方向に設定する(ステップS302)。なお、ステップS301の判定条件を満たさなかった場合(ステップS301,No)、測定部41は、復元回転方向をCW方向に設定する(ステップS303)。
【0125】
つづいて、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と現在のB相エンコーダ信号の値が異なるかどうか、すなわち、現在のA相エンコーダ信号の値が「1」であるとともに現在のB相エンコーダ信号の値が「0」であるか、または現在のA相エンコーダ信号の値が「0」であるとともに現在のB相エンコーダ信号の値が「1」であるか否かを判定し(ステップS304)、かかる条件に適合した場合は(ステップS304,Yes)、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致するかどうかを判定する(ステップS305)。
【0126】
つづいて、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致した場合(ステップS305,Yes)、復元回転方向がCW方向でないか否かを判定する(ステップS306)。そして、復元回転方向がCW方向でない場合(ステップS306,Yes)、ずれカウントを1加算して(ステップS307)、処理を終了する。
【0127】
すなわち、「ステップS304,Yes」であり「ステップS305,Yes」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CW方向となる。そして、「ステップS306,Yes」の場合は、復元回転方向がCCW方向であることから、ずれカウントを1加算する。
【0128】
なお、ステップS306の判定条件を満たさなかった場合(ステップS306,No)、すなわちモータ11の回転方向が復元回転方向と同じCW方向の場合、測定部41は、ずれカウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS308)。ずれカウントが0より大きい場合は(ステップS308,Yes)、ずれカウントを1減算して(ステップS309)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS308,No)、そのまま処理を終了する。
【0129】
また、ステップS305の判定条件を満たさなかった場合(ステップS305,No)、測定部41は、復元回転方向がCCW方向でないか否かを判定する(ステップS310)。そして、復元回転方向がCCW方向でない場合(ステップS310,Yes)、ずれカウントを1加算して(ステップS311)、処理を終了する。
【0130】
すなわち、「ステップS304,Yes」であり「ステップS305,No」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CCW方向となる。そして、「ステップS310,Yes」の場合は、復元回転方向がCW方向であることから、ずれカウントを1加算する。
【0131】
なお、ステップS310の判定条件を満たさなかった場合(ステップS310,No)、すなわちモータ11の回転方向が復元回転方向と同じCCW方向の場合、測定部41は、ずれカウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS312)。ここで、ずれカウントが0より大きい場合は(ステップS312,Yes)、ずれカウントを1減算して(ステップS313)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS312,No)、そのまま処理を終了する。
【0132】
さらに、ステップS304の判定条件を満たさなかった場合(ステップS304,No)、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致しないか否かを判定する(ステップS314)。
【0133】
つづいて、測定部41は、現在のA相エンコーダ信号の値と前回処理時のA相エンコーダ信号の値とが一致しない場合(ステップS314,Yes)、復元回転方向がCW方向でないか否かを判定する(ステップS315)。そして、復元回転方向がCW方向でない場合(ステップS315,Yes)、ずれカウントを1加算して(ステップS316)、処理を終了する。
【0134】
すなわち、「ステップS304,No」であり「ステップS314,Yes」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CW方向となる。そして、「ステップS315,Yes」の場合は、復元回転方向がCCW方向であることから、ずれカウントを1加算する。
【0135】
なお、ステップS315の判定条件を満たさなかった場合(ステップS315,No)、すなわちモータ11の回転方向が復元回転方向と同じCW方向の場合、測定部41は、ずれカウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS317)。ここで、ずれカウントが0より大きい場合は(ステップS317,Yes)、ずれカウントを1減算して(ステップS318)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS317,No)、そのまま処理を終了する。
【0136】
また、ステップS314の判定条件を満たさなかった場合(ステップS314,No)、測定部41は、復元回転方向がCCW方向でないか否かを判定する(ステップS319)。そして、目標回転方向がCCW方向でない場合(ステップS319,Yes)、ずれカウントを1加算して(ステップS320)、処理を終了する。
【0137】
すなわち、「ステップS304,No」であり「ステップS314,No」の場合は、
図11に示すように、モータ11の回転方向は、CCW方向となる。そして、「ステップS319,Yes」の場合は、復元回転方向がCW方向であることから、ずれカウントを1加算する。
【0138】
なお、ステップS319の判定条件を満たさなかった場合(ステップS319,No)、すなわちモータ11の回転方向が復元回転方向と同じCCW方向の場合、測定部41は、ずれカウントが0より大きいか否かを判定する(ステップS321)。ここで、ずれカウントが0より大きい場合は(ステップS321,Yes)、ずれカウントを1減算して(ステップS322)処理を終了し、そうでない場合は(ステップS321,No)、そのまま処理を終了する。
【0139】
このように、ホール素子15より高い分解能を持つエンコーダ14から出力されるエンコーダ信号に基づいてずれカウントを測定することにより、モータ11の回転位置がずれた後すばやくモータ11のずれと復元回転方向を検知することができる。
【0140】
図16は、実施形態に係るモータ保持中における停止制御信号の送信処理を説明するフローチャートである。
図16に示す停止制御信号の送信処理は、定期的に行われる。ただし、モータ駆動部13による保護動作中は、この処理を行わない。
【0141】
図16に示すように、まず、送信部43は、速度指令信号により指令される速度指令値が、第1閾値よりも小さい所定の第2閾値以下であるか否かを判定し(ステップS401)、速度指令値が第2閾値以下である場合(ステップS401,Yes)、送信部43は、PWM信号のデューティ比が所定の第2デューティ比以上であるか否かを判定する(ステップS402)。なお、かかる第2デューティ比は、デューティ比閾値情報53に記憶されるデューティ比閾値の別の一例であり、上述したモータ駆動中の送信処理における第1デューティ比以下である。
【0142】
つづいて、送信部43は、PWM信号のデューティ比が第2デューティ比以上である場合(ステップS402,Yes)、ずれカウントが所定の第1ずれ量に相当するカウント値以上であるか否かを判定する(ステップS403)。なお、かかる第1ずれ量は、カウント閾値情報52に記憶されるカウント閾値の別の一例である。
【0143】
なお、ステップS401の判定条件を満たさなかった場合(ステップS401,No)、もしくはステップS402の判定条件を満たさなかった場合(ステップS402,No)、送信部43は、所定時間を再設定して(ステップS407)、処理を終了する。
【0144】
つづいて、送信部43は、ずれカウントが第1ずれ量以上である場合には(ステップS403,Yes)、モータ11を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信して(ステップS404)、処理を終了する。これにより、モータ11は停止する。
【0145】
また、ステップS403の判定条件を満たさなかった場合(ステップS403,No)、送信部43は、ずれカウントが第1ずれ量より小さい所定の第2ずれ量に相当するカウント値以上であるか否かを判定する(ステップS405)。なお、かかる第2ずれ量は、カウント閾値情報52に記憶されるカウント閾値の別の一例であり、上述の第1ずれ量より小さい値である。
【0146】
つづいて、送信部43は、ずれカウントが第2ずれ量以上である場合には(ステップS405,Yes)、所定の時間経過したか否かを判定する(ステップS406)。そして、所定の時間経過していた場合(ステップS406,Yes)、送信部43は、モータ11を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信して(ステップS404)、処理を終了する。これにより、モータ11は停止する。また、所定の時間経過していなかった場合(ステップS406,No)、処理を終了する。
【0147】
なお、ステップS405の判定条件を満たさなかった場合(ステップS405,No)、送信部43は、所定時間を再設定して(ステップS407)、処理を終了する。
【0148】
ここまで示したように、モータ11の回転位置が保持されている場合に、停止位置である目標の回転位置からのずれ量が所定の第1ずれ量以上であり、かつPWM信号のデューティ比が第2デューティ比以上である場合、送信部43が停止制御信号をモータ駆動部13に送信することにより、モータ11は停止する。これにより、モータ保持中の停止位置から外的要因によって負荷が増大し、モータ11の回転状態が回転指示状態と異なり、それに伴い発生する停止位置に戻そうとする力が継続した状態で再駆動することによる急発進を抑えることができる。
【0149】
また、モータ11の回転位置が保持されている場合に判定の閾値とする第2デューティ比を、モータ11が駆動中の場合の閾値である第1デューティ比より小さい値とする。このように、デューティ比の閾値を保持中と駆動中とで区別することにより、たとえば、モータ11が駆動中よりも保持中の方が熱を発生しやすい場合、適切に熱を抑えることができる。
【0150】
さらに、モータ11の回転位置が保持されている場合に、停止位置である目標の回転位置からのずれ量が第1ずれ量より小さい所定の第2ずれ量以上であり、かつPWM信号のデューティ比が第2デューティ比以上である場合、所定の時間経過後に、送信部43が停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、モータ保持中の停止位置に戻そうとする力が継続することによるモータ11の異常発熱を抑制することができる。
【0151】
上述したように、実施形態によれば、エンコーダ14からのエンコーダ信号に基づいてずれカウントを測定するとともに、かかるずれカウントとPWM信号のデューティ比とに基づいて、モータ11を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、外的要因により回転状態が回転指示状態と異なるモータ11の動作を安全に制御することができる。
【0152】
なお、上記の実施形態では、速度指令信号生成部100および回転方向信号生成部110が外部装置である場合について説明したが、速度指令信号生成部100および回転方向信号生成部110の少なくとも一方が、モータ駆動制御装置としてモータ装置10の内部に設置される場合であってもよい。
【0153】
また、上記の実施形態では、モータ11がブラシレスDCモータである場合について説明した。しかしながら、クロック信号に応じたパルス信号を出力する位置検出器(エンコーダ14)が配置され、クロック信号による回転速度制御が可能なモータであれば、実施形態で説明したモータ駆動制御方法を適用することができる。
【0154】
また、上記の実施形態では、チューブ2内の血液を送出する血液ポンプ1をチューブポンプの一例として説明したが、実施形態で説明したモータ駆動制御方法は、たとえば、生理食塩水等の液体を送出するチューブポンプであっても適用することができる。
【0155】
また、上記の実施形態では、位置検出器としてエンコーダ14を用い、磁気センサとしてホール素子15を用いた例について説明した。しかしながら、位置検出器はエンコーダに限られず、磁気センサもホール素子に限られない。
【0156】
以上のように、実施形態に係るモータ駆動制御装置は、速度指令信号および回転方向信号の入力により、駆動制御信号を生成して出力する制御部12と、駆動制御信号の入力により、駆動信号を生成しモータ11に出力するモータ駆動部13と、モータ11の回転位置を検出し、かかる検出結果に基づく検出信号(エンコーダ信号)を出力する位置検出器(エンコーダ14)と、を備える。そして、制御部12は、外的要因によりモータ11の回転状態が速度指令信号および回転方向信号の組合せに基づく回転指示状態とは異なる状態になった時点を検出信号(エンコーダ信号)に基づいて検知し、異なる状態となった時点の回転位置からの移動量を測定する測定部41と、移動量と駆動制御信号の出力状態とが所定の条件となった場合に、駆動信号の出力を停止させる停止制御信号をモータ駆動部13に送信する送信部43と、を有する。これにより、外的要因により回転状態が回転指示状態と異なるモータ11の動作を安全に制御することができる。
【0157】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、駆動制御信号はPWM信号を含み、送信部43は、PMW信号のデューティ比が所定の比率以上となった場合に停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、ポンプシステム30が高負荷状態であることを確実に検出することができる。
【0158】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、測定部41は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、モータ11の回転が、外的要因により、目標の回転方向とは逆方向に切り替わった時点を検出信号(エンコーダ信号)に基づいて検知し、切り替わった時点におけるモータ11の回転位置から逆方向への移動量を、移動量として検出信号(エンコーダ信号)に基づいて測定し、送信部43は、移動量が所定の第1移動量以上になり、かつPMW信号のデューティ比が所定の第1デューティ比以上になった場合に、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、正確に高負荷状態を検知して、モータ11を停止させることができる。
【0159】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、送信部43は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、モータ11の検出信号(エンコーダ信号)に基づく現在の回転位置が速度指令信号に基づく目標の回転位置より先行した状態で、移動量が第1移動量以上で、かつPMW信号のデューティ比が第1デューティ比を超えない場合に、停止制御信号をモータ駆動部13に送信しない。これにより、高負荷状態でない場合に、モータ11の駆動を継続させることができる。
【0160】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、送信部43は、速度指令信号および回転方向信号の入力中に、モータ11の現在の回転位置が目標の位置より先行した状態で、移動量が第1移動量以上の所定の第2移動量以上になった場合に、PMW信号のデューティ比が第1デューティ比を超えなくても、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、高負荷状態でない場合であっても、送液量が大きく変動した場合には、モータ11を停止させることができる。
【0161】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、測定部41は、速度指令信号の入力がない状態で、外的要因によりモータ11の回転が開始した時点を検出信号(エンコーダ信号)に基づいて検知し、開始した時点におけるモータ11の回転位置からのずれ量を、移動量として検出信号(エンコーダ信号)に基づいて測定し、送信部43は、ずれ量が所定の第1ずれ量以上になり、かつPMW信号のデューティ比が所定の第2デューティ比以上になった場合に、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、保持トルク中の停止位置から外的要因によってモータ11の回転状態が回転指示状態と異なり、それに伴い発生する停止位置に戻そうとする力に対して、その位置に維持した状態からの駆動による急発進を抑えることができる。
【0162】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、PMW信号の第2デューティ比は、第1デューティ比以下である。これにより、モータ11が保持中であることを特定して、発熱を抑えることができる。
【0163】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、送信部43は、速度指令信号の入力がない状態で、ずれ量が第1ずれ量より小さい所定の第2ずれ量以上になり、かつPMW信号のデューティ比が第2デューティ比以上になった場合に、所定の時間経過後、停止制御信号をモータ駆動部13に送信する。これにより、保持トルク中の停止位置に戻そうとする力が継続することによるモータ11の異常発熱を抑制することができる。
【0164】
また、実施形態に係るモータ駆動制御装置において、送信部43は、速度指令信号により設定されるモータ11の回転速度が所定の閾値以上の場合、停止制御信号をモータ駆動部13に送信しない。これにより、制御部12において余計な判断を省略することができることから、制御部12の処理能力を増やすことができる。
【0165】
また、実施形態に係るチューブポンプは、モータ11と、モータ11の駆動により回転することでチューブ2を押圧し、かかるチューブ2内の液体を送出するローラ34a、34bと、上述したモータ駆動制御方法を実行するモータ駆動制御装置とを備える。これにより、外的要因により回転状態が回転指示状態と異なるモータ11の動作を安全に制御することができる。
【0166】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。