特許第6487020号(P6487020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487020エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6487020
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20190311BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20190311BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B5/02 X
   B66B13/14 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-233209(P2017-233209)
(22)【出願日】2017年12月5日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】丸山 朋哉
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−114111(JP,A)
【文献】 特開平08−085689(JP,A)
【文献】 特開2009−220996(JP,A)
【文献】 特開2012−197152(JP,A)
【文献】 特開2008−120471(JP,A)
【文献】 特開2017−193399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00− 5/28
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの通常運転時に、ドア開閉動作に関する軽異常が検出された階床の情報を保持するドア軽異常検出情報保持部と、
予め設定されたタイミングで、各階床ごとに前記エレベータのドアを所定速度で開閉させ、開閉中にドアモータにかかるトルク値が所定閾値を超えた階床に関し、ドア開閉動作に異常があると判定するドア開閉診断を行う運転制御部と、
前記ドア軽異常検出情報保持部に保持された情報に基づいて、前記軽異常が検出された階床に対しては、前記ドア開閉診断時に、ドア開閉速度を、通常のドア開閉診断中のドア開閉速度よりも低速にするとともにドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータにかかるトルク値の閾値を、通常のドア開閉診断中に用いる閾値よりも低くする診断運転情報変更部と
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記ドア開閉診断が終了すると、すべての階床のドア開閉時に同じ個所で異常が発生していれば、かごドア内の機器に異常が生じているかまたは、かごドア溝内にゴミ等の異物が存在する可能性が高いことを示す診断結果情報を生成し、所定の階床のみの開閉時に同じ個所で異常が発生していれば、該当する階の乗場ドアのドア溝内にゴミ等の異物が存在する可能性が高いことを示す診断結果情報を生成し、所定階床で1回のみの開閉時に異常が発生していれば、衣類の引き込まれ等により一時的に過負荷が生じた可能性が高いことを示す診断結果情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記ドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータにかかるトルク値の閾値は、正常なドアの開閉動作時のトルク値の変動に対応して、開閉動作の開始時から経過した時間ごとに設定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
予め設定されたタイミングで、各階床ごとにエレベータのドアを所定速度で開閉させ、開閉中にドアモータにかかるトルク値が所定閾値を超えた階床に関し、ドア開閉動作に異常があると判定するドア開閉診断を行うエレベータ制御装置が、
前記エレベータの通常運転時に、ドア開閉動作に関する軽異常が検出された階床の情報を保持するドア軽異常検出情報保持ステップと、
前記ドア軽異常検出情報保持ステップで保持された情報に基づいて、前記軽異常が検出された階床に対しては、前記ドア開閉診断時に、ドア開閉速度を、通常のドア開閉診断中のドア開閉速度よりも低速にするとともにドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータにかかるトルク値の閾値を、通常のドア開閉診断中に用いる閾値よりも低くする診断運転情報変更ステップと
を有することを特徴とするエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのドアが戸開閉する際に、利用者の手や衣服、持ち物等が戸袋に引き込まれることを防止するために、乗りかご内のドア制御装置においてドアモータにかかるトルク値を監視している。ドア制御装置は、ドアの開閉中にドアモータにかかるトルク値が所定値を超えるとドアの開閉動作を反転させることで、戸袋への引き込み等の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−286674号公報
【特許文献2】特開平5−330769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、エレベータにおいては、所定期間ごとに自動で遠隔診断運転を実行させることで、保守員が直接エレベータに出向いて点検作業を行うことなく保守管理を行っている。この遠隔診断運転にはドア開閉動作に関する診断(ドア開閉診断)も含まれているが、高層の建物に対して各階で精度の高いドア開閉診断を行うには長時間かかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、通常運転時のドア開閉中にドアモータにかかったトルク値の情報を用いて、所定のタイミングで実行するドア開閉診断を効率よく高い精度で行うためのエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、ドア軽異常検出情報保持部と、運転制御部と、診断運転情報変更部とを有する。ドア軽異常検出情報保持部は、通常運転時にドア開閉動作に関する軽異常が検出された階床の情報を保持する。運転制御部は、予め設定されたタイミングで、ドア開閉診断を行う。診断運転情報変更部は、軽異常が検出された階床に対しては、ドア開閉診断時に、ドア開閉速度を、通常のドア開閉診断中のドア開閉速度よりも低速にするとともにドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータにかかるトルク値の閾値を、通常のドア開閉診断中に用いる閾値よりも低くする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータの遠隔診断システムの構成を示すブロック図。
図2】一実施形態によるエレベータ制御装置の動作を示すフローチャート。
図3】一実施形態によるエレベータ制御装置において、(a)ドア開閉診断時に、第2速度値および第2閾値を用いて検出されるドアモータの実測トルク値を示すグラフ、(b)ドア開閉診断時に、第3速度値および第3閾値を用いて検出されるドアモータの実測トルク値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態によるエレベータ遠隔診断システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態によるエレベータ遠隔診断システムは、エレベータに自動で診断運転を実行させることにより、当該エレベータ内の各機器の稼動状態を遠隔から診断する機能を有するシステムである。以下、遠隔から各機器の稼動状態を診断するためにエレベータに自動で実行させる診断運転を、「遠隔診断運転」と称して説明する。
【0009】
以下の実施形態では遠隔診断運転により、昇降路内に設置されたリミットスイッチのON/OFF動作診断、巻上げ機に備えられたブレーキの動作診断や、各階床における乗りかごの着床位置診断、ドアの開閉診断等を実行する。
【0010】
〈一実施形態によるエレベータ遠隔診断システムの構成〉
本発明の一実施形態によるエレベータ遠隔診断システムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態によるエレベータ遠隔診断システム1は、建物内に設置されたエレベータXと、当該建物から遠隔地にある監視センタに設置された遠隔監視センタ装置10とが、ネットワーク20を介して接続されて構成されている。
【0011】
遠隔監視センタ装置10は、監視対象のエレベータXの遠隔診断運転を所定時間間隔で実行するための遠隔診断スケジュール情報を保持し、エレベータX内に当該遠隔診断スケジュール情報を送信する。また遠隔監視センタ装置10は、エレベータXで実行された遠隔診断の結果を受信して出力する。
【0012】
エレベータXは、昇降路内を昇降する乗りかご30と、乗りかご30およびネットワーク20に接続されたエレベータ制御装置40とを有する。乗りかご30には、ドアモータ31と、パルス発生器32と、トルク値検出部33と、過負荷検出部34と、ドア制御部35とを有する。
【0013】
パルス発生器32は、ドアモータ31の回転数に応じたパルスを発生する。トルク値検出部33は、ドア開閉動作時にドアモータ31にかかる実測トルク値を検出する。過負荷検出部34は、トルク値検出部33で検出された実測トルク値に基づいて、ドアモータ31かかる過負荷を検出する。ドア制御部35は、パルス発生器32から発生したパルス数に基づいてドアの開閉速度値を算出し、算出した速度値が、後述するエレベータ制御装置40から送信されるドア開閉速度指令に追従するように、ドアモータ31のトルク指令値を出力する。またドア制御部35は、過負荷検出部34によるドアモータ31にかかる過負荷等、ドア開閉動作に関する異常が検出された際の該当する階床の情報を含む軽異常情報および異常検出情報を生成してエレベータ制御装置40に送信する。軽異常情報および異常情報の生成処理については、後述する。
【0014】
エレベータ制御装置40は、入出力部41と、運転制御部42と、ドア軽異常検出情報保持部43と、診断運転情報変更部44とを有する。入出力部41は、乗りかご30との間で情報の入出力を行う。運転制御部42は、通常時はエレベータX内の機器に通常運転を実行させ、遠隔監視センタ装置10から送信された遠隔診断スケジュール情報に基づいて遠隔診断運転の開始タイミングが到来したと判断すると遠隔診断運転を実行させる。ドア軽異常検出情報保持部43は、通常運転時に乗りかご30から送信された、ドア開閉動作に関する軽異常検出情報を保持する。
【0015】
診断運転情報変更部44は、運転制御部42が遠隔診断運転の中でドア閉閉診断を実行する時に、ドア軽異常検出情報保持部43に軽異常検出情報が保持されているか否かを判断する。判断の結果、軽異常検出情報が保持されているときには、該当する階床に対しては、ドア開閉診断時のドア開閉速度を低速にするとともに、ドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータ31にかかるトルク値の閾値を低くする。
【0016】
〈一実施形態によるエレベータの遠隔診断システムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータの遠隔診断システムの動作について説明する。本実施形態において、予め、遠隔監視センタ装置10に保持されているエレベータXの遠隔診断スケジュール情報がエレベータ制御装置40に送信される。送信されたエレベータXの遠隔診断スケジュール情報は、エレベータ制御装置40の運転制御部42で取得される。
【0017】
運転制御部42には、予め、通常運転時に用いる通常運転制御情報および遠隔診断運転時に用いる遠隔診断運転制御情報が保持されている。通常運転制御情報には、通常運転中にドアを開閉させる際の速度値である第1速度値、およびドアモータ31のトルク値からドア開閉動作の異常の予兆となる軽異常を検出するための第1閾値が含まれる。遠隔診断運転制御情報には、遠隔診断運転中にドアを開閉させる際の速度値である第2速度値、およびドアモータ31のトルク値からドア開閉動作に関する点検が必要な異常を検出するための第2閾値が含まれる。ドア開閉動作に関し、通常運転中は第1閾値に基づいて「異常の予兆となる軽異常」を検出するのに対し、遠隔診断運転中は第2閾値に基づいて「点検が必要な異常」を検出するため、第1閾値は第2閾値よりも低い値で設定される。
【0018】
これらの情報が保持された状態で、エレベータ制御装置40で実行される処理を、図2のフローチャートに示す。エレベータXの通常運転時は(S1)、運転制御部42により通常運転制御情報に基づいて、登録された乗場呼びまたはかご呼びに応答するための各機器の動作指令が入出力部41から出力される。通常運転中は、ドア開閉動作に異常があるか否かを判定させるためのドアモータ31のトルク値に関する第1閾値が運転制御部42から乗りかご30に出力され、ドア制御部35を介して過負荷検出部34に保持されている。そして、通常運転中にいずれかの階床でドアを開閉させるときには、対応する機器の動作指令として、第1速度値でドアを開閉させるためのドア開閉指令が出力される。
【0019】
入出力部41から出力されたドア開閉指令は乗りかご30のドア制御部35で取得される。ドア制御部35では、パルス発生器32から発生したパルス数に基づいて算出される速度値が、エレベータ制御装置40から出力されたドア開閉指令の第1速度値に追従するように、ドアモータ31のトルク指令値が出力される。
【0020】
運転制御部42から送信されたドア開閉指令に基づいて乗りかご30のドア制御部35によりドアが開閉されているときに、トルク値検出部33で検出されたドアモータ31の実測トルク値が第1閾値を超える過負荷が発生したか否かが過負荷検出部34で監視される。過負荷検出部34において、ドアモータ31に過負荷が生じたと判定されると、ドア制御部35において当該階床のドア開閉動作において軽異常が検出されたと判断され、当該階床の情報を含む軽異常検出情報が生成されてエレベータ制御装置40に送信される。
【0021】
エレベータ制御装置40では、通常運転中に乗りかご30から軽異常検出情報が入力されると(S2の「YES」)、当該軽異常検出情報がドア軽異常検出情報保持部43に保持される(S3)。
【0022】
次に、運転制御部42において、遠隔診断スケジュール情報に基づいて遠隔診断運転の開始タイミングが到来したと判断されると(S4の「YES」)、通常運転から遠隔診断運転に切り替えられる。切り替え後、遠隔診断運転の中のドア開閉診断が開始されると(S5の「YES」)、ドア開閉動作に異常があるか否かを判定させるためのドアモータ31のトルク値に関する第2閾値が運転制御部42から乗りかご30に出力される。エレベータ制御装置40から出力された第2閾値はドア制御部35で取得され、ドア異常検出処理に用いるために過負荷検出部34に保持される。
【0023】
また、ドア開閉診断が開始されると、診断運転情報変更部44において、ドア軽異常検出情報保持部43にドアモータ31の軽異常検出情報が保持された階床があるか否かが判定される(S6)。ここで、軽異常検出情報が保持された階床があると判定されたときには(S6の「YES」)、当該階床に関して通常運転中のドア開閉動作において異常の予兆があったと判断される。そして、該当する階床のドア開閉診断に関しては、ドア異常検出に用いる閾値を第2閾値よりも低い第3閾値に下げるとともに、ドア開閉速度を第2速度値よりも低速の第3速度値に変更する指示が運転制御部42に出力される(S7)。
【0024】
運転制御部42は、ドア開閉診断運転において、診断運転情報変更部44から変更の指示がなかった階床の診断時には、第2速度値でドアを開閉させるためのドア開閉指令を出力する。また、診断運転情報変更部44から変更の指示があった階床の診断時には、第3速度値でドアを開閉させるためのドア開閉指令とともに第3閾値を用いてドア開閉異常の検出処理を実行させるための異常検出指令を出力する。
【0025】
入出力部41から出力されたドア開閉指令は乗りかご30のドア制御部35で取得され、該当する速度値に追従するように、ドアモータ31のトルク指令値がドア制御部35から出力される。そして、ドア開閉指令によるドア開閉動作中にトルク値検出部33で検出されたドアモータ31の実測トルク値が該当する閾値を超えるとこれが過負荷検出部34で検出される。
【0026】
図3(a)は、第2速度値でドアが開閉するようにトルク指令値が出力され、第2閾値を用いて過負荷を検出する場合に、トルク値検出部33で検出された実測トルク値を示すグラフである。図3(a)においては、時間経過とともに変化するトルク指令値を点線で示し、第2閾値を太線で示し、実測トルク値を実線で示す。当該ドアの開閉において、該当階床のドア溝にゴミがあり、当該箇所をドアが通過するとき(経過時間t1)に実測トルク値が瞬間的に増加している。しかし、ここで増加したときの値が第2閾値を超えていないため、過負荷検出部34で過負荷は検出されない。また、当該ドアの開閉において、機器の異常により所定箇所をドアが通過するとき(経過時間t2)に実測トルク値が大きく増加している。ここで増加したときの値は第2閾値を超えているため、過負荷検出部34で過負荷が検出される。
【0027】
図3(b)は、図3(a)と同じ状態のドアに対して、第3速度値でドアが開閉するようにトルク指令値が出力され、第3閾値を用いて過負荷を検出する場合に、トルク値検出部33で検出された実測トルク値を示すグラフである。図3(b)においては、時間経過とともに変化するトルク指令値を点線で示し、第3閾値を太線で示し、実測トルク値を実線で示す。この場合、ドアが低速で動作しているため、ドア溝のゴミがある箇所をドアが通過するとき(経過時間t3)に、図3(a)の場合よりもトルク値が大きく増加する。しかも、第2閾値よりも低い第3閾値で過負荷検出が行われているため、増加したときのトルク値が第3閾値を超え、過負荷検出部34で過負荷が検出される。また、機器の異常がある箇所をドアが通過するとき(経過時間t4)には、図3(a)の場合よりもさらにトルク値が大きく増加し、第3閾値を超えて過負荷検出部34で過負荷が検出される。
【0028】
このように、異常の予兆があった階床に関しては、ドアの開閉速度を低速にして低い閾値でトルク値の過負荷を監視することで、確実にこれらの小さな異常を検出することができる。これにより、機器の異常や利用者の引き込み等のように迅速に対応が必要な場合だけでなく、ドア溝にゴミがある場合を含む機器の異常の予兆となる原因がある場合にも、これらを確実に検出し、次回の遠隔診断時に点検時の確認事項として提示することができる。
【0029】
過負荷検出部34で検出された過負荷の情報はドア制御部35に送出され、ドア制御部35において、当該階床のドア開閉動作に関する異常が検出されたと判断される。そして、当該階床の情報を含む異常検出情報が生成され、エレベータ制御装置40に送信される。この異常検出情報には、当該ドア開閉動作におけるトルク値の変動状況情報が含まれる。
【0030】
エレベータ制御装置40では、遠隔診断運転中に乗りかご30から送信された異常検出情報が入出力部41から入力され(S8の「YES」)、運転制御部42で保持される(S9)。ドア開閉診断が終了するまでの間(S10の「NO」)、異常検出情報が入力される都度、運転制御部42に保持される(S8の「YES」、S9)。
【0031】
ドア開閉診断が終了すると(S10の「YES」)、運転制御部42においてドア開閉診断結果情報が生成される(S11)。ドア開閉診断結果では、例えば、すべての階床のドア開閉時に同じ個所で異常が発生していれば、かごドア内の機器に異常が生じているかまたは、かごドア溝内にゴミ等の異物が存在する可能性が高いことを示す診断結果情報が生成される。また、所定の階床のみの開閉時に同じ個所で異常が発生していれば、該当する階の乗場ドアのドア溝内にゴミ等の異物が存在する可能性が高いことを示す診断結果情報が生成される。また、所定階床で1回のみの開閉時に異常が発生していれば、衣類の引き込まれ等により一時的に過負荷が生じた可能性が高いことを示す診断結果情報が生成される。
【0032】
すべての遠隔診断運転が終了すると(S12の「YES」)、運転制御部42によりすべての診断の結果情報が生成され、ネットワーク20を介して遠隔監視センタ装置10に送信される(S13)。その後、エレベータ制御装置40はステップS1に戻り、通常運転に切り替えられる。
【0033】
遠隔監視センタ装置10では、エレベータ制御装置40から送信された診断結果情報が表示情報や音声情報で出力され、監視員に提供される。
【0034】
以上の実施形態によれば、通常運転時のドア開閉中のドアモータのトルク値の監視情報を利用して、遠隔診断運転時に実行されるドア開閉診断において、精度の高い診断処理を効率よく行うことができる。
【0035】
上述した実施形態においては、図3(a)、(b)に示すように、過負荷を検出する閾値がドア開閉動作の間、一定の場合について説明したが、正常なドアの開閉動作時のトルク値の変動に対応して、開閉動作の開始時から経過した時間ごとに設定するようにしてもよい。このように設定することにより、さらに高い精度で、ドア開閉動作の異常を検出することができる。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…エレベータ遠隔診断システム、10…遠隔監視センタ装置、20…ネットワーク、30…乗りかご、31…ドアモータ、32…パルス発生器、33…トルク値検出部、34…過負荷検出部、35…ドア制御部、40…エレベータ制御装置、41…入出力部、42…運転制御部、43…ドア軽異常検出情報保持部、44…診断運転情報変更部
【要約】      (修正有)
【課題】通常運転時のドア開閉中にドアモータにかかったトルク値の情報を用いて、所定のタイミングで実行するドア開閉診断を効率よく高い精度で行う。
【解決手段】エレベータ制御装置40は、ドア軽異常検出情報保持部43と、運転制御部42と、診断運転情報変更部44とを有する。ドア軽異常検出情報保持部43は、通常運転時にドア開閉動作に関する軽異常が検出された階床の情報を保持する。運転制御部42は、予め設定されたタイミングで、ドア開閉診断を行う。診断運転情報変更部44は、軽異常が検出された階床に対しては、ドア開閉診断時に、ドア開閉速度を低速にするとともにドア開閉動作に異常があるか否かを判定するためのドアモータ31にかかるトルク値の閾値を低くする。
【選択図】図1
図1
図2
図3