特許第6487028号(P6487028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487028エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487028
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/407 20060101AFI20190311BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20190311BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   A61K31/407
   A61P31/04
   A61K9/19
   A61K47/40
   A61K47/02
   A61K47/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-504771(P2017-504771)
(86)(22)【出願日】2015年7月28日
(65)【公表番号】特表2017-528436(P2017-528436A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】KR2015007828
(87)【国際公開番号】WO2016028002
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0108079
(32)【優先日】2014年8月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,ボンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒキュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォルヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジョンテク
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520889(JP,A)
【文献】 特表2006−513188(JP,A)
【文献】 特表2014−501265(JP,A)
【文献】 特表2012−502983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
A61K 31/407
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法であって、
(a)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの溶液のpHを6.5〜8.0の範囲に維持しながら、該溶液にエルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩を溶解する工程;および
(b)工程(a)で得られた溶液を凍結乾燥する工程を含む方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのモル置換度が、0.6〜0.9の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩1当量当たり0.5〜2.0当量の比率で使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エルタペネムの薬学的に許容可能な塩が、エルタペネムモノナトリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記pHが、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびナトリウムt−ブトキシドからなる群から選択される塩基で調整されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを凍結保護剤および安定化剤として使用することを含む、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エルタペネムは、カルバペネム系抗生物質の1つであり、その化学名は、(4R,5S,6S)−3−[(3S,5S)−5−[(3−カルボキシフェニル)カルバモイル]ピロリジン−3−イル]スルファニル−6−(1−ヒドロキシエチル)−4−メチル−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−2−カルボン酸である。エルタペネムの化学構造は、以下で示される。
【化1】
【0003】
エルタペネムは、弱い結晶構造の固体であり、周囲条件で吸湿性であり、室温および冷蔵温度で不安定である。エルタペネムは、塩の形態、すなわちモノナトリウム塩の形態で、大型バッチで製造される。エルタペネムは約−20℃以上の温度では不安定であるので、バルク製造された化合物は、劣化による二量体化や開環副生成物の形成を防ぐため低温(約−20℃)で保存しなければならない。バルク製造により得られたこの不安定なカルバペネム系抗生物質は低温で長期間保存することができるが、静脈内(IV)および筋肉内(IM)に1日1回投与される抗菌剤として使用するには安定な製剤に変換する必要がある。現在、エルタペネムは凍結乾燥製剤に製剤化され、臨床診療において注射の形態で用いられている。
【0004】
韓国特許第10−0756595号には、NaHCOなどの二酸化炭素源を添加剤として使用することを含む、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法が開示されている。しかし、韓国特許第10−0756595号に従って凍結乾燥製剤を製造した場合、NaHCOなどの二酸化炭素源とバルク製造された前記化合物とを含有する溶液を凍結乾燥する工程において、エルタペネムに由来する分解産物が増加し、エルタペネムの含量が低下する。また、得られた凍結乾燥製剤を低温(約−20℃)で保存する場合にも、分解産物の形成によってその安定性が低下する。
【0005】
したがって、凍結乾燥工程における純度の低下および得られた凍結乾燥製剤の安定性の低下という問題を解決することができる、凍結乾燥製剤の製造方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の改良された製造方法を開発するために様々な研究を行った。驚くべきことに、本発明者らは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、凍結乾燥工程における凍結保護剤(すなわち凍結保護物質)として機能するのみならず、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の安定化剤としても機能することができることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを凍結保護剤および安定化剤として使用することを含む、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法であって、(a)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの溶液のpHを6.5〜8.0の範囲に維持しながら、該溶液にエルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩を溶解する工程;および(b)工程(a)で得られた溶液を凍結乾燥する工程を含む方法が提供される。
【0009】
本発明による前記製造方法において、前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのモル置換度は0.6〜0.9の範囲であってもよい。また、前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩1当量当たり0.5〜2.0当量の比率で使用してもよい。
【0010】
一実施形態において、前記エルタペネムの薬学的に許容可能な塩は、エルタペネムモノナトリウム塩である。別の一実施形態において、前記pHは、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびナトリウムt−ブトキシドからなる群から選択される塩基で調整してもよい。
【発明の効果】
【0011】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、凍結乾燥工程において凍結保護剤(すなわち凍結保護物質)として機能するのみならず、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の安定化剤としても機能できることが本発明によって見出された。したがって、本発明の製造方法は、長期間にわたって高い純度を維持することが可能なエルタペネム含有凍結乾燥製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】添加剤としてNaHCOを使用した凍結乾燥製剤および本発明に従って調製した凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度の変化を、調製時および低温(−20℃)での保存中に測定した結果を示す。
図2】添加剤としてNaHCOを使用した凍結乾燥製剤および本発明に従って調製した凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度の変化を、調製時および室温での保存中に測定した結果を示す。
図3】添加剤としてNaHCOを使用した凍結乾燥製剤および本発明に従って調製した凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度の変化を、調製時および加速条件下(40℃、RH75%)での保存中に測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の製造方法であって、
(a)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの溶液のpHを6.5〜8.0の範囲に維持しながら、該溶液にエルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩を溶解する工程;および
(b)工程(a)で得られた溶液を凍結乾燥する工程を含む方法を提供する。
【0014】
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、凍結乾燥工程において凍結保護剤(すなわち凍結保護物質)として機能するのみならず、エルタペネム含有凍結乾燥製剤の安定化剤としても機能できることが本発明によって見出された。さらに、前記二酸化炭素源を含有する溶液との比較において、他の多価アルコールを含有する溶液は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとは異なり、安定化効果を提供することができないことが本発明によって見出された。また、特に他のカルバペネム系抗生物質(例えばドリペネムおよびメロペネム)を含有する凍結乾燥製剤においては、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは凍結保護剤としても安定化剤としても機能せず、エルタペネムを含有する凍結乾燥製剤とは異なることが本発明によって見出された。したがって、前記特定のカルバペネム系抗生物質、すなわちエルタペネムを含有する凍結乾燥製剤において、特定の多価アルコール、すなわちヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみが凍結保護剤および安定化剤として機能する。
【0015】
本発明の製造方法において、エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩は、治療有効量で使用してもよく、治療有効量は従来技術から決定することができる。例えば、エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩は、単位製剤当たり(すなわち単位凍結乾燥製剤当たり)約0.1〜1gの範囲の量で使用してもよい。一実施形態において、エルタペネムの薬学的に許容可能な塩は、エルタペネムモノナトリウム塩である。
【0016】
前記ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのモル置換度は、0.6〜0.9の範囲であってもよい。好ましくは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのモル置換度は、0.65または0.85であってもよい。また、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩1当量当たり0.5〜2.0当量の比率で使用してもよい。
【0017】
前記pHは、薬剤学の分野で従来使用されている塩基、例えば、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびナトリウムt−ブトキシドからなる群から選択される塩基で調整してもよい。
【0018】
工程(a)の溶解は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの溶液にエルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩を溶解させることによって行う。エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩は、一度に前記溶液に加えてもよい。エルタペネムまたはその薬学的に許容可能な塩は、複数に分割して約60分にかけて前記溶液に加えることが好ましい。また、エルタペネムに由来する分解産物の形成が最小限に抑えられるように、好ましくは低温(例えば0〜5℃)で溶解させてもよい。
【0019】
工程(b)の凍結乾燥は、薬剤学の分野で慣用の方法に従い、慣用の凍結乾燥機を用いて行ってもよい。凍結乾燥工程を行う前に、工程(a)で得られた前記溶液を適切な容器(例えばバイアルなど)に充填してもよい。前記凍結乾燥は、得られる凍結乾燥製剤の含水量が、好ましくは約13%以下、より好ましくは2〜10%の範囲に達するまで行ってもよい。
【0020】
以下、実施例を参照することによって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を説明することのみを目的とし、本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1:ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの安定化効果の評価
表1に示した量に従って、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)[モル置換度(MS):0.65または0.85]を蒸留水(16mL)に溶解した。得られた各溶液を0〜5℃に冷却した後、2N NaOH溶液を使用してこれらの溶液のpHを7.8に維持しながら、10分割したエルタペネムモノナトリウム塩(合計1g、同量に分割したもの)を各溶液に60分間かけて順次加えた。得られた各溶液を0〜5℃で4時間保存しながら、各溶液のエルタペネムの純度を順次測定した。比較のため、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの代わりにNaHCO(0.175g、1.0eq.)を使用したこと以外は上記と同様の方法で溶液を調製し、この溶液を0〜5℃で4時間保存しながら、エルタペネムの純度を順次測定した。結果を以下の表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示したように、モル置換度が0.6〜0.9の範囲、好ましくは0.65または0.85のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを、エルタペネムまたはその塩1当量当たり0.5〜2.0当量の比率で使用した場合、得られた溶液は、二酸化炭素源を含有する溶液と比べて同等以上の安定性を示した。特に、モル置換度が0.65のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを、エルタペネムまたはその塩1当量当たり1当量の比率で使用した場合、得られた溶液のエルタペネムの純度の変化は、二酸化炭素源を含有する溶液の2分の1以下に低減した。
【0024】
実施例2:多価アルコールの安定化効果の評価
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン以外の多価アルコールを使用して、エルタペネム含有溶液に対する安定化効果を評価した。表2に示した様々な多価アルコールを使用し、実施例1と同様の方法で溶液を調製した。得られた各溶液を0〜5℃で4時間保存しながら、各溶液のエルタペネムの純度を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2の結果から、二酸化炭素源を含有する溶液との比較において、他の多価アルコールを含有する溶液は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとは異なり、安定化効果を提供しなかったことが分かる。
【0027】
実施例3:凍結乾燥製剤の製造およびその評価
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)[MS=0.65、2.76g(1.0eq.)]を蒸留水(16mL)に溶解した。得られた溶液を0〜5℃まで冷却した後、2N NaOH溶液を使用してこの溶液のpHを7.8に維持しながら、10分割したエルタペネムモノナトリウム塩(合計1g、同量に分割したもの)を該溶液に60分間かけて順次加えた。得られた溶液を0〜5℃で無菌濾過し、バイアルに充填した後、以下のようにして凍結乾燥した。すなわち、−40℃に予備冷却した凍結乾燥機の棚に充填バイアルを載置し、3時間冷却した。棚を減圧(80mTorr)した後、0.5℃/分の速度で−20℃まで棚温度を上昇させた。−20℃および80mTorrの条件下で棚を48時間維持した。0.1℃/分の速度で棚を10℃に加熱し、次いで0.5℃/分の速度で40℃に加熱した。40℃および80mTorrの条件下で棚を3時間維持した。さらに、0.5℃/分の速度で棚を60℃まで加熱し、60℃および80mTorrの条件下で3時間維持した後、25℃に冷却して凍結乾燥を完了させた。比較のため、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの代わりにNaHCO(0.175g、1.0eq.)を使用したこと以外は上記と同様の方法で溶液を調製し、得られた溶液を無菌濾過し、バイアルに充填した後、上記と同様の方法で凍結乾燥した。得られた凍結乾燥製剤の含水量はいずれも約2〜10%である。
【0028】
凍結乾燥前のエルタペネムの純度、凍結乾燥直後のエルタペネムの純度、ならびに各凍結乾燥製剤を低温(−20℃)、室温、および加速条件下(40℃、RH75%)で8週間保存した後のエルタペネムの純度をそれぞれHPLCで測定した。結果を以下の表3および図1図3に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
表3および図1図3に示したように、二酸化炭素源(NaHCO)を含有する溶液から得られた凍結乾燥製剤(比較例1)では、エルタペネムの純度が顕著に低下し、すなわち96.32%から93.88%に低下した(Δ2.44%)。これに対して、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する溶液から得られた凍結乾燥製剤(実施例3)におけるエルタペネムの純度はわずかしか低下せず、すなわち96.32%から95.58%に低下したのみであった(Δ0.74%)。得られた凍結乾燥製剤を低温(−20℃)で8週間保存した場合、比較例1の凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度は、92.36%[Δ1.52%(93.88%−92.36%)]に低下したが、実施例3で得られた凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度は、95.04%[Δ0.54%(95.58%−95.04%)]にしか低下しなかった。また、得られた凍結乾燥製剤を室温および加速条件下で8週間保存した場合、比較例1の凍結乾燥製剤におけるエルタペネムの純度の低下は、実施例3の凍結乾燥製剤におけるものよりも顕著に大きかった。したがって、上記結果から、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、凍結保護剤としてのみならず安定化剤としても機能することが分かる。
【0031】
実施例4:他のカルバペネム系抗生物質の凍結乾燥製剤の製造およびその評価
エルタペネム以外のカルバペネム系抗生物質を含有する凍結乾燥製剤においても、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが凍結保護剤および安定化剤として機能するかどうかを評価した。すなわち、エルタペネムモノナトリウム塩の代わりにドリペネム一水和物およびメロペネム三水和物を使用して、実施例3と同様の方法で凍結乾燥製剤を調製した。凍結乾燥前の純度、凍結乾燥直後の純度、ならびに各凍結乾燥製剤を低温(−20℃)、室温、および加速条件下(40℃、RH75%)で4週間保存した後の純度をHPLCでそれぞれ測定した。結果を以下の表4(ドリペネム)および表5(メロペネム)に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
表4および表5に示すように、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンは、ドリペネムまたはメロペネムを含有する凍結乾燥製剤においては、凍結保護剤としても安定化剤としても機能しなかった。
図1
図2
図3