(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1から第3の末端部(241、251)は、それぞれの長手軸が互いにかつ分画チャンネル(221、212、222)の長手軸に平行であり、溶出流体が第1および第2の閉込め流体に平行に流れるよう、に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
分画チャンネル(221、212、222)に分散流体中の分散相を注入するためのサンプル注入ポート(331)をさらに含み、サンプル注入ポート(331)が、分画チャンネル(221、212、222)内の溶出流体中への分散相の注入を可能とするように配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
第1から第3の注入ポート(311、321)と流体連通し、第3の所定の流量で溶出流体の流れを制御するように適合された、少なくとも1つの第1の流れ制御手段(441)をさらに備え、
少なくとも1つの第1の流れ制御手段(441)が、第1の所定の流量で第1の閉込め流体の流れを制御し、第2の所定の流量で第2の閉込め流体の流れを制御するように、さらに構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
第1および第2の閉込め流体および溶出流体が、それぞれ、分画チャンネル(221、212、222)の第1の端部の第1から第3の末端部(241、251)に対応して、分画チャンネル(221、212、222)内に注入されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
分画条件および/または注入されたサンプルの種類に基づいて、溶出流体および/または第1および第2の閉込め流体の流量を設定するステップ、をさらに備えることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
分散した物体および粒子の分画のための装置は、先行技術から知られている。特に、これらの装置は、細胞サンプルなどの生体物質を分画するために使用することができる。この場合、粒子は、単一細胞または細胞の集合体、また互いに異なるものとすることができる。
【0003】
分画装置はいかなる種類の生体物質に対しても使用できるが、幹細胞を選択して分離するためにそのような装置を使用することに、多くの関心が寄せられている。そのため、以下の記載では、異なる公有の分画方法および装置を、幹細胞として生体物質との関係で記載する。
【0004】
分離する生物初期細胞サンプルは、(サポートまたはスカフォールド上の)接着または生理液への懸濁で増殖する異なる細胞腫によって構成される不均一な細胞集団と等価である。初期サンプルから、最初に、プラスチックサポート上で予め培養中で増殖した接着細胞、および、分散液中に分散させた培養で増殖した他の懸濁種を得ることができる。特に、間充織幹細胞は接着細胞として特定され、一方、他の懸濁種は、血球、リンパ球、赤血球、腫瘍細胞などの細胞である。
【0005】
幹細胞は、損傷した成熟細胞の置換によって、組織の機能的および構造的な完全性を維持するために供される「基本」細胞である。幹細胞は、様々な種類の組織(「効能」の異なる程度)に分化する異なる能力で、および、医学の未来となる再生医療の大きな視点で、区別することができる。
【0006】
再生医学から診断までのアプリケーションのための様々な目的で異なる細胞腫の亜集団を達成するために、実際の供給源から来る複雑で異種のサンプルを単純化する可能性、および、(脂肪組織や新生児の組織として)廃棄された組織を再利用するチャンスは、大変に挑戦的である。近年、診断分野においてバイオマーカーとしての腫瘍細胞、および、それらが細胞性薬物として使用される可能性のため、幹細胞および血液細胞、特に血液に、特に注意が払われている。
【0007】
幹細胞はすべての組織に分布しており、そこから幹細胞を選択することができる、主に骨髄、歯髄、脂肪組織、末梢血、臍帯および胎児膜を含む供給源に配置されるが、それらの組織における局在化は十分に定義されておらず、幹細胞からより多く分化すると共に幹細胞に由来する、すべての異なる細胞から分離された特定の区域において特定することができない。現在、ヒト幹細胞の選択/濃縮は、膜抗原の存在を認識する免疫標識技術を用いて、または、遺伝子選択技術によって行われている。しかしながら、免疫標識は、研究用ではなく医学的および臨床的目的で分析された細胞を使用するための最小限の操作に関する規制を満たしていないため、「難しい」細胞選別技術と考えられていると共に、免疫標識は、幹細胞に損傷を与えたり、幹細胞を望ましくない分化プロセスに誘導したりする。
【0008】
遺伝子選択は、また、特に選別された細胞の生体内での再使用のため、既知の関連問題を有する細胞遺伝学的改変を必要とする。それはまた高価であり、長い処理時間を与える。
【0009】
どのような種類の細胞および組織に分化することができる全能性幹細胞の最初の供給源は、胚である。いずれにせよ、ヒト胚からの全能性幹細胞の実験および使用は、一部の国(イタリアでの2005年6月の国民投票結果として)では禁止されており、多くの国では、強制的な法律によって厳しく制限されているか、生命倫理上の考慮によって阻止されている(他のヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国のように)。
【0010】
多能性幹細胞は、全能性幹細胞の後に、ほとんど全てのヒト組織に存在する多種多様な組織に特化することができる間葉系幹細胞のように、最も「持久力」を有する。
【0011】
胚とは異なる供給源における多能性幹細胞の低い利用可能性は、さらなるアプリケーションのため適切な細胞数を得るために、選択/濃縮のための効率的な技術の使用を必要とする。
【0012】
これらの方法の選択は、細胞分化特性に典型的な免疫学的マーカー(免疫マーカー)の認識に基づいており、幹細胞のパワーの程度が増加するにつれて同定するのが困難であるため、多能性幹細胞は、直接的な免疫タグによって、または、フローサイトメトリーにおけるフローアシストセルソーティング(FACS)または免疫付与磁気ビーズによるマグネチックアシストセルソーティング(MACS)などの特定のマーカーの使用を含む細胞選択技術によって、選択/濃縮することはできない。これらの理由から、確かに間葉細胞であり得るマーカーの完全なパネルは、まだ存在しない。
【0013】
一般に、間葉系幹細胞は、直接免疫標識により表現型の特性に基づいて正確な区別を妨げる、表面抗原の非常に幅広く多様なパネルを発現する多能性細胞である(非特許文献1参照)。
【0014】
FACSおよびMACS技術は、選別された間葉系幹細胞に対する生理学的苦痛、生存細胞の比較的低い回収率、低い再現および増殖能力、分化に対する異なる能力を含み、そのため、所望の分化経路からの逸脱は、望ましくない癌組織の形成をもたらし得る。
【0015】
間葉系幹細胞ではない細胞に対して免疫マーカーを用いる「ネガティブ」選択技術は、細胞集団全体から複数のMSCを排除するために使用される。この技術は、特異的に標識されておらず特定のマーカーに結合していないので、枯渇した集団内のターゲット細胞の存在を完全に保証するものではない。枯渇は、その特異性のために、同じ家系に属する間葉系細胞亜集団の区別を許さず、異なる供給源からの集団間または同じ供給源からの亜集団間の可能性のある差を区別することはできない。
【0016】
間葉系幹細胞は、コストと実行時間の面で面倒で高価であり、高度に専門化された人員と細胞の遺伝子改変を必要とする遺伝子選択プロセス(Gene Transfer Technology、GTT)を介して分類される。
【0017】
しかしながら、既存の技術は、細胞選択の2つの対掌体の表現であり:極めて細胞回復が低いことを意味する特異的であるか、細胞特異性がないことを意味する非特異的である。
【0018】
細胞操作、枯渇技術によって単離された細胞集団の組成についての保証の欠如、いくつかの集団によって構成された複雑なサンプルまたは生のサンプルの分離の不可能性のため、生物学的材料の分画と選択については、選択/濃縮の問題はまだ解決されていない。例えば間葉系細胞であり、細胞の変化や損傷を伴わない比較的単純な方法で、高価ではなく、通常の専門分野の実験室職員によっても操作される、多分化能性幹細胞−特にヒトのもの−のサンプルなどの、付着条件で成長する生物材料の分離/濃縮はさらに問題である。科学的な研究目的とは異なるアプリケーションに対し、物体や粒子の再利用には最小限の操作が不可欠であることを思い出させることが重要である。
【0019】
幹細胞や癌細胞のようなまれな集団について、異なる組織からの細胞の分離について代替技術が評価されており;特に、複雑な集団内の検体の形態学および特異な生物物理学的特性を含む物理的差異のみに基づいて、異なる細胞集団および関連する亜集団を区別することができる、フィールドフロー分画法(Field-Flow Fractionationの略語として以下FFF)が評価されている(非特許文献2)。これらの技術のおかげで、サンプルを単純化し、最小限の操作の基準に残っているターゲット細胞を得ることが可能になる。
【0020】
これらの技術および方法論は、処理された細胞サンプルを開始サンプルに対して変更せずに維持し、補助特性を加えないかまたは固有特性を除去する手順から構成される。我々は、FFF(Field-flow fractionation)、Gr−FFF(Gravitational field-flow fractionation)、Sd−FFF(Sedimentation field flow fractionation)、FDF(Dielectrophoresis FFF)、遠心分離機などの技術に言及している。
【0021】
動的流体条件における、特にFFFに属するものにおける分離技術は、生理食塩水緩衝液中に懸濁した生存細胞を添加して調製した細胞画分の分画方法を提供する。次に、サンプルを分画装置の内部に導入する。導入および分離は、連続流および分画のためにサンプルを毛細管チャンネルに導入することができるシリンジを含む注入システムの両方で行うことができる。次いで、サンプルは、装置によって分離または分画され、または最初のサンプルから単離した粒子または粒子群の挙動に関する調査研究のために観察される。分離は、静的または動的条件で操作することができる。動的な場合、連続的な流れがポンプで送られ、装置からの溶出機構が、装置自体との接触の有無に応じて実行され;静的な場合は、細胞が特定の位置に保持され、細胞が生存する液体の状態および組成に関する変更によって与えられた状態変化に対する応答を観察する。動的分離の方法は、装置の物理的構成要素上で分析/分離される物体との接触を避けるための固定化を防止することができる。次いで、分画装置を通過する間に分離された異なる集団の異なる細胞型を含む画分が集められる。あるいは、研究が完了した時点で、または細胞の老化および生存の理由のために、細胞サンプルは廃棄される。
【0022】
フィールドフロー分画技術に属するいくつかの方法は、細菌集団から上皮細胞への生物学的サンプルの分離に使用されるが;先行技術から公表された方法および装置の実現によって達成される結果は、いくつかの不都合を示す。地球の重力場の結果としての動的な流れ分離条件で動作する技術は、分離目的で利用可能なものの中で最も単純で安価な技術であることから、特定の証拠となる。
【0023】
これらの技術は、詳細が
図14に記載されている分画装置を使用する。分画1100の要素は、注入ポート1102を通って、分画装置内部の流れの方向に(矢印によって指し示される)縦流を導入することができるチャンネル1122を含む。装置は、一般に、流れの方向に対して垂直に作用する力の場、例えば重力にさらされる。
【0024】
チャンネル1122において、装置内部の物体(移動相)の輸送流体の横断流量プロファイルは、層流の結果として放物線状である。縦流のプロファイルについても同様である。従って、分画装置に注入された細胞は、溶出流体と同じ流れプロファイルで流出する。これは、必然的に、ゼロに向かうと共に側壁の表面上でゼロになる、側壁に近接する流れの速度の減少に応じて、分画装置の側壁の近傍にある細胞の固定化を含む。これは、ゼロに等しい速度を有すると共に分画チャンネルの壁に沈着する細胞の固定化の結果として、細胞サンプルの損失を意味する。サンプル損失は、装置の壁のような固体支持体に付着する傾向がある付着した幹細胞の分画に対して明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の段落は、本発明の様々な代表的な実施形態を記載する。例えば、理解を容易にするために、本発明による分画装置を、生物学的物質、特に細胞の分画に関連して記載する。異なる以下の実施形態を参照して説明した解決策は、異なる種類のサンプルの分析および分離にも使用することができ、サンプルとしては、例えば、ポリマー粒子、球状または層状鉱物粒子、カーボン粒子、シリカ粒子、薬物送達用粒子、血清および懸濁細胞、細菌集団、リポソーム小胞などの、数マイクロメーターと数百マイクロメーターとの間に含まれる適切なサイズの有機および無機粒子が挙げられる。
【0036】
分画チャンネルという用語は、本発明による装置の分画要素で得られたくぼみを示すために、明細書の記載および特許請求の範囲で使用され、分画要素の第1の端部に対応して配置された注入点から、第1の端部に対向する分画要素の第2の端部に対応して位置する抽出点まで、くぼみの内部に流体が流れることができる。分画チャンネルは、毛管チャンネルとすることができる。
【0037】
毛細管という用語は、少なくとも1つの次元において、分画チャンネル内の層流の生成を可能にするチャンネルを示すために使用される。毛細管分画チャンネルは、毛細管の定義を満たさない長さおよび幅を示すことができ、一方、層流を得るためにこの定義を満たす厚さを示すことができる。
【0038】
分画チャンネルという用語は、少なくとも1つの次元が前の段落の定義を満たす毛細管チャンネルを意味する。
【0039】
側方バンドという用語は、チャンネルの側壁に隣接する分画チャンネルの一部を示すものであり、チャンネルの長さ全体にわたり側壁に沿って延在し、チャンネルの側壁に垂直な寸法を有し、ここからは幅の用語で示され、ゼロではない。
【0040】
物体(対象物)という用語は、分離プロセスに付される分散相を参照し、分散相としては、例えば、ポリマー粒子、球状または層状鉱物粒子、石炭粒子、シリカ粒子、薬物送達用粒子、血液粒子および懸濁細胞、細菌集団、リポソーム小胞などの、好ましくは微小な小さいサイズの有機または無機粒子の粒子またはクラスターが挙げられる。
【0041】
分散相(dispersed phase)という用語は、分散させる相(dispersing phase)の物理的状態とは異なる物理的状態の要素を指す。分散相は、分散相が均一に分布しているが混和性ではない要素である。例えば、粒子または細胞の場合、分散相または細胞分散物は、液体(分散させる液)中に均一に分散する固体粒子分散(固相)とすることができる。この場合、2つの相が異なる物理的状態にあり相溶性ではない(固体および液体)ので、固体/液体分散と呼ぶことができる。
【0042】
本発明は、従来技術で知られているフィールドフロー分画法の原理を使用する分画装置が、分析されるかまたは分離されるサンプルの無視できない一部分が分画チャンネルの壁に付着する欠点を有するという知見に基づいている。従来の分画装置による微視的な物質分離の方法では、サンプルの約40%が失われる可能性がある。これは、分画チャンネルに、サンプルが注入される溶出流体が層流を有し、流量プロファイルが放物線であるという事実に起因し、ここで最大速度はチャンネルの中心にあり、チャンネルの側壁の近くではゼロである。溶出流体中の全ての物体は、チャンネルの壁の近くでは流量が無く、チャンネルの側壁に付着する傾向がある。従来技術で知られているいくつかの装置の別の問題は、移動相の流れが停止したときすなわち移動相の流れがないときにサンプルがチャンネルに注入され、サンプル注入直後に再び開始されるということである。この場合にも、チャンネルに注入されたサンプルの一部分は、チャンネルの底壁に付着し、試料採取ポートである流出口に向かって搬送されない。さらに、チャンネルの側壁付近の物体が速度ゼロで溶出流体部分に浮遊しているという事実は、これらの物体が側壁に接触することを可能にし、このようにしてそれらの損失をもたらし、結果として分画装置の効率を低下させる。分離する物体が、例えば、細菌集団、細胞、特に上皮細胞または付着性幹細胞のような、シリカ粒子、ポリマー粒子または生物学的物質を備え、それらが壁により容易に付着する場合、この問題は明らかである。
【0043】
本発明による装置は、分画チャンネルの長手方向軸に垂直な方向における溶出流体の流れプロファイルが、装置の最終性能にとって無視できない役割を果たすという認識に基づいている。この場合、チャンネルの長手方向軸は、チャンネルの注入ポートから収集ポートまで一方向に沿って延びる軸のように識別される。特に、本発明は、分離チャンネルへの最適な溶出流体が、好ましくは、理想的な場合、本質的にステップ状または方形状の波形プロファイルを有するという観察に基づいている。実際には、チャンネルの長手方向軸に垂直に向けられた中心にセロでない正面を示し、側壁に近い分画チャンネルの側方バンドではゼロを示す、溶出流れのプロファイルは、チャンネルの側壁へのサンプル接着の低下を引き起こし、このようにして、装置の効率の重要な増加を確実にする。好ましくは、側方バンドの幅は、チャンネルの全幅の10%〜25%の範囲内にある。
【0044】
本発明に従って上述したように溶出流体の流れを可能にする分画装置の詳細は、
図1に示されている。チャンネル221への流体速度の傾向が
図11(B)に示されている。
【0045】
特に、
図1は、分画チャンネル221が得られる分画要素200の平面図を示す。実行方法が
図2に示された実行形態の説明を参照して記載される分画要素200は、第1および第2の流体注入ポート321を備える。第1および第2の注入ポートは、第1および第2の側方ポートという用語と共に以下でも名付けられる。第1の注入ポート321を介して、第1の閉込め流体をチャンネルに注入することが可能であり、一方、第2の注入ポート321を介して、第2の閉込め流体をチャンネルに注入することが可能である。移動相のアリメンテーション(alimentation)のための溶出流体は、以下で中央ポートとも名付けられた、第3の注入ポート311によってチャンネル221に注入されてもよい。第3の注入ポート311は、第1の注入ポート321と第2の注入ポート321との間に設けられる。流路221の第1の端部は、第1〜第3の注入ポート321、311に対応してそれぞれ設けられた第1〜第3の末端部241、251を備える。第1から第3の末端部が構成され、それらは分画チャンネル221に3つの異なる流れを生じさせるような配置を有する。特に、第1および第2の閉込め流体は、それぞれ第1および第2の所定の流量を有することができる2つの側方流れをそれぞれ形成する。第3の注入ポートを介して注入された溶出流体は、第3の所定の流量を有することができる中心流れを定義する。
【0046】
第3の予め規定された流量は、溶出流体を第1および第2の閉込め流体の間に閉じ込めるように、第1および第2の所定の流量よりも高い。また、溶出流体の流量よりも低い流量を有する閉込め流れを生成する好適例は、分画チャンネルの側壁とのサンプルの一部の接触を避けるサンプルのフィールドフロー分画を行うことに同意する、幅を有する中央流れを可能とする。チャンネル形状の選択特に末端部241、251の選択は、フィールドフロー分画方法を効率的に適用することを可能とする。例えば数マイクロメーター特に100マイクロメーター未満の、分画チャンネルの長手方向の軸に沿って全て集束された溶出流体の流れを生成するような、末端部241、251の形状および位置の選択は、サンプルの材料分離を可能にしないであろう。
【0047】
第1および第2の注入ポートを介して注入された流れは、注入ステップ中および分離プロセス中に、閉込め要素としてまたはサンプルの流体ガイドとして作用する。この構成は、分離効率を低下させる溶出流れの細胞損失およびバンドの広がりを防止する。好適には、第1および第2の閉込め流れは、互いにおよび溶出流体の流れまたは中央の流れに平行であってもよい。流体ガイドを得るために、第1から第3の末端部241、251は、それらのそれぞれの長手方向軸が、互いに平行であり、分画チャンネル221の長手方向軸に平行であるように、構成および設けられてもよい。この構成は、溶出流体が第1および第2の閉込め流体の流れと平行に流路の中心を流れるように、互いに平行な層流を容易かつ正確に生成することを可能とする。
【0048】
本発明の有利な形態では、第3の注入ポート311に対応して、以下中央末端部という用語でも呼ばれる、第3の末端部241の基部は、第1および第2の注入ポート321に対応してそれぞれ配置されている、第1および第2の末端部251(以下、第1および第2側末端部という用語でも呼ばれる)の基部よりも大きい。本発明に係る分画チャンネル221の構成において、末端部の基部は、分画チャンネル221に接続された各末端部241、251の部分である。基部とは反対側の各末端部241、251の部分は、以下、通常のように、ポイント末端部の用語で呼ばれる。
【0049】
上述した構成の他の展開において、第1および第2の末端部の基部の幅は、第3の末端部の基部の幅の50%までの値を有してもよい。第1および第2の末端部251の基部の幅は、中央流れが分画チャンネル221の側壁からゼロでない所定の距離、例えば、第3の末端部の基部の幅の25%から50%の範囲内にあることを保証するよう、選択することができる。
【0050】
本発明の例示的な実現において、側方流れは、0.1ml/minの流量を有することができ、1ml/minの流量を有することができる中央の流れに平行とすることができる。より一般的には、第3の末端部241の形状および寸法は、チャンネル221の全幅のほぼ半分に等しい分画チャンネル221の幅全体に沿って細胞サンプルの分布を得るような幅の溶出流体流れ(中央チャンネル)を得るために、選択することができる。第1および第2の末端部251は、チャンネル221の全幅の10%〜25%の範囲の幅を有する側方チャンネルの中央チャンネル側に生成するような形状および形状を有することもできる。側方チャンネルは、第1および第2の閉込め流体の流れによって生成される。このようにして、中央チャンネルは、分画チャンネル221の側壁から、チャンネル221の全幅の10%〜25%の範囲の値に対応する、所定の距離に設けられる。
【0051】
第1〜第3の末端部241、251は、好適にはアーチ型とすることができる。本発明によれば、用語「アーチ型」は一般的である。その結果、末端部は、アーチ形状のものに適した任意のプロファイルを有することができる。これらのプロファイルは、例えば、カスプ形状、V字形またはU字形、または、半円形または多角形である。
【0052】
上述した構成は、示唆された流量と組み合わせて、細胞分離および細胞回収についての良好な結果を示すが、中心チャンネルおよび側方チャンネルの寸法、閉込め流体および溶出流体の流量は、上述したものと異なる値を有することができる。これらの値は、分画装置の利用に依存すると共に装置に注入されたサンプルの性質に依存する。生物学的物質の分離のためのアプリケーションにおいて、中心流量は毎分0.5〜3mlの範囲で選択することができ、幅4〜6cmの範囲、長さ20〜40cmの範囲、厚さ0.1〜0.7mmの範囲とすることができる分画装置の寸法でかなり増加する。また、末端部241、251は、上述されたものとは異なるプロファイルを有することができる。例えば、末端部241、251は、本発明の異なる考え方を意味することなく、多角形のプロファイルを有することができる。
【0053】
図1に記載された構成によれば、サンプルは、溶出流体を分画チャンネル221に注入する前に、第3の注入ポートを介して分画チャンネルに注入されてもよい。この場合、サンプルは、分画チャンネル221の底面上に横たわり、分画チャンネル221の全域に沿って溶出流体によって溶出される。
【0054】
図1に記載された分画装置200は、上述したサンプル注入に関する方法に限定されない。好適には、分画装置200は、分画チャンネル221によって分画されなければならない流体中への物体の懸濁液であるサンプルの注入のための隔壁(
図1には示されていない)によって実現される、サンプル注入ポートを備えることができる。サンプル注入ポートは、例えば、分画チャンネル221の平面に対して垂直に溶出流体の流れに物体を注入することを可能にするために、設けられている。より一般的には、サンプル注入ポートは、分画チャンネルの平面内における流れによってサンプルを注入するために、設けられている。本発明による実行形態において、隔壁は、好適には、溶出流体の流れによって定義された中央チャンネルの中心に、第3の注入ポート311と整列して設けることができる。
【0055】
隔壁を介した注入によって、サンプルは、移動中の溶出流体中に注入され、このようにして、チャンネル221に注入された物体はチャンネル221の底面に付着しない。溶出流体と平行に流れる閉込め流体のおかげで、分画チャンネル221の全長にわたって膨張する注入された物体は、側方流体によって中央チャンネルに閉じ込められ、その結果、チャンネル221に注入された物体は、分画チャンネル221の側壁に付着しない。
【0056】
本発明に従う分画装置は、第1〜第3の注入ポート311、321と流体接続する、少なくとも1つの流れ制御手段441をさらに備えている。流れ制御手段441は、第3の所定の流量を有するように適合された第3の注入ポート311によって注入された溶出流体の流れを制御することを可能にする。流れ制御手段は、さらに、第1および第2の注入ポート321のそれぞれを介して分画チャンネル211に注入された第1および第2の閉込め流体の流れを制御するように適合された、第1および第2の注入ポート321と流体接続している。流れ制御手段441は、第1および第2の所定の流量が第3の所定の流量よりも小さい、第1および第2の所定の流量を有するように適合された、第1および第2の閉込め流体の流れを制御することを可能にする。本発明で報告された場合には、第1および第2の所定の流量は同じ値を有する。あるいは、第1および第2の所定の流量は、異なる値を有することができる。
【0057】
本発明による特定の製造形態では、流れ制御手段441は、例えば、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、膜ポンプ、HPLCポンプなどの、別々の流体チャンネルを介して溶出ポート311、321から溶出する、1つのポンプシステム(図示せず)を備えている。この場合、第1から第3までのすべての所定の流量は、ポンプとそれぞれの溶出ポートとの間の流体装置に設けられたそれぞれのバルブによって制御することができる。上記のポンプのリストは一例に過ぎず、これに限定されるものではない。特に、本発明による分画チャンネルへの流体の流れを制御する全てのポンプは、上述したポンプと同じ有効性で使用することができる。
【0058】
本発明による異なる製造では、流れ制御手段441は、第1および第2の注入ポート321と流体接続する第1および第2のポンプ(図示せず)と、第3の注入ポート311と流体接続する第3のポンプ(図示せず)と、を備えている。この場合、それぞれ第1および第2の所定の流量を有する第1および第2の閉込め流体と、第3の所定の流量を有する溶出流体と、を生成するために、第1から第3のポンプを独立して制御することができる。
【0059】
明らかに、当業者は、流れ制御手段の他の構成を考慮することができる。例えば、第1および第2の閉込め流体が同じ流量を有する場合、第1および第2の注入流量が同じ値を有するとすると、流れ制御手段は、第1および第2の閉込め流体を供給するよう適合された第1のポンプと、溶出流体を供給するように適合された第2のポンプと、を含むことができる。この異なる構成によれば、分画装置の設計および製造形態はより容易で安価である。
【0060】
図2において、分画装置の詳細が、
図1を参照して表現された概念の製造である、本発明の製造形態により示されている。
【0061】
分画装置200の好適な実施形態は、分画装置の蓄積壁となるように適合され、最終的に溶出された画分の収集ポートから提供される少なくとも1つの底部層101と、毛細管チャンネルの側壁輪郭を固定するように適合された1つの中間層と、移動相および細胞サンプルの注入ポートすなわち最終的に溶出された画分の収集ポートが設けられた1つの上部層301と、を含む、少なくとも3層のプラスチック材料を備えている。
【0062】
プラスチック材料層は、着脱可能または恒久的な方法で互いにマッチされ;それによって層が作られる材料は、装置の繰り返し使用の可能性と使い捨てとしての使用の可能性の両方を考慮する。分画装置200はチャンネル221を備える。チャンネルは、順に、底部層または蓄積壁101を含む。蓄積壁は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレンまたはポリメチルメタクリレートのような、プラスチック材料で作ることができる。あるいは、蓄積壁101は、ガラスのような無機材料で作ることができる。ガラスはプラスチック材料よりも極性であるので、この材料は、装置が例えばポリスチレンのようなプラスチック粒子を分離するために使用される場合に、好適に使用することができる。この底部層はこの種の分画装置の蓄積壁である。底部層101の厚さは5〜15mmの範囲であり、好ましくは10mmの厚さである。明らかにこれらは値を限定するものではなく、当業者であれば、設計要件および分画装置の使用に従って示された厚さとは異なる厚さを有する底部層を選択することができることは明らかである。
【0063】
分画装置200は、上部層、または、第3の注入ポートが設けられた供給壁301、または、分画チャンネルの移動相の中央注入ポート311、または、第1および第2の注入ポート、または、移動相の側方注入ポート321、を備えている。
図2は、サンプル注入ポート331を含む
図1に記載の分画装置の製造形態を示す。
【0064】
分画装置200は、溶出した画分収集のための1つの収集ポート341をさらに備える。上部層301は、底部層101と実質的に同じ特性を有し;それは、5〜15mmの範囲、好ましくは10mmの厚さを有するプレートからなる。供給壁301は、ポリ塩化ビニルまたはポリカーボネートのようなプラスチック材料で作ることができる。あるいは、蓄積壁は、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等で作ることができる。上部層301に設けられたポートは5mmのオーダーの断面を有するが、この断面は変化しており、注入チャンネル、注入チャンネルおよび収集チャンネル(それらは本発明の主題ではないため、ここでは図示せず)を有する接合断面に依存する。蓄積壁101と同様に、上に示した厚さおよび直径の値は限定的ではなく、当業者であれば、異なる供給壁の厚さ、および、設計要件および分画装置の使用に従って示された直径とは異なる直径を有する注入ポート、を選択することができる。
【0065】
蓄積壁101と供給壁との間に1つの中間層201があり、これが分画チャンネル221の周辺プロファイルを固定する。毛細管チャンネルのプロファイルは、適切な製造によって中間層内に得ることができる。中間層201および毛細管チャンネル221は、
図3の分解図で見ることができる。中間層201は、例えばポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料で作られ、0.2mm〜0.5mmの範囲内、好ましくは0.25mmの厚さを有する。分画チャンネル211の周辺プロファイルは、長手方向の壁と、収集ポート341に対応して設けられたオジーブ231と、注入ポートまたは中央および側方注入ポート311、321にそれぞれ対応する3つの末端部241、251と、を備えている。この明細書に記載されている製造形態において、末端部はアーチ型である。第1および第2の末端部251は側方末端部という用語によっても示され、第3の末端部241は中央末端部という用語によって示される。毛細管チャンネルの中央注入ポート311および側方注入ポート321は、末端部241、251につながる。
【0066】
図4は、
図1〜
図3の装置の構成要素の平面図である。特に、
図4は、中間層201の一部分の平面図を示す。
図4に示す特定の実施例において、第3の末端部241に対応する中央末端部は、その基部において、側方末端部241の実質的に2倍幅Dである2D幅である。図において、移動相の注入ポート311e、321および注入ポート331は、破線および点線で表されている。注入ポート331は、中央注入ポート311の同じ長手方向軸に、かつ、前記末端部の基線のすぐ下に、設けられる。特に、注入ポート331は、中心流れと側方流れが並んで安定するチャンネルのポイントに好適に設けることができる。末端部241、251は、また、外部先端から全ての末端部の基線の中央に延びる、それらの長手方向軸が、分画チャンネル221の長手軸に平行であり、より一般的には分画装置200に対して平行となるよう、方向付けられる。この配置は平行な層流を可能にする。また、第1および第2の末端部251にそれぞれ対応して、第1および第2の注入ポート321に第1および第2の閉込め流体を注入することによって生じる流れは、第3の注入ポート311を介して第3の末端部241および分画チャンネル221に注入された溶出流体の注入流量よりも小さい注入流量を有する。このようにして、溶出流体は、第1および第2の閉込め流体の間に閉じ込められた中央チャンネルに流入し、正確なサンプル分離を可能にするような幅を有する。
【0067】
図5には、独立して平行に作動することができる複数の分画チャンネル212、222の存在を提供する、本発明による分画装置の第2の製造形態が示されている。
図5は、2つの分画チャンネルを備える分画装置400を示す。いずれの場合においても、本発明はこの構成に限定されず、分画装置は2つ以上の分画チャンネルを備えることができることを暗示している。簡略化のため、2つの分画チャンネル212、222を有する分画装置を参照して、複数のチャンネル構成を記載する。多重分画装置400は、底部層102と、それらは
図5に示されており以下でよりよく説明されている、2つの毛細管チャンネルの周辺プロファイルが製造される中間層202と、上部層または注入壁302と、を備えている。上部層302は中間層202上に配置され、他の3つの下層に分割され、3つの下層は、中間層に接する第1の下層312、第1の下層312上に配置されると共に第1の下層312と接する第2の下層322、および、第2の下層322上に配置されると共に第2の下層322と接触する第3の下層332からなり;第3の下層332は、閉込め流体342を供給するための閉込めポートと、溶出流体を供給するための溶出ポート352と、を含む。第3の下層は、さらに、分離されるべきサンプルを分画チャンネルに注入するためのサンプル注入ポート362と、サンプル出力収集部へのポート112と、を備えている。この構成は限定的なものと考える必要はなく、入力ポートおよび出力ポートは、上述したものとは異なる装置の層に設けられてもよいことが暗示される。例えば、サンプル出力収集のためのポート112は、底部層102上に交互に配置されていてもよい。
【0068】
図6において、複数の毛細管チャンネル400を形成する異なる層および下層が、分解斜視図によって示されている。底部層102は、上述した毛細管チャンネル200の底部層と同様に、プラスチック材料で作られている。
【0069】
中間層202は、プラスチック材料の層であり、好ましくは、毛細管チャンネル200のために前に説明した中間層と同じ特徴を有し、2つのチャンネル212eおよび222の周辺プロファイルが作製され、収集ダクト232によって第1の端部に接続される。分画チャンネル212eおよび222は、例えば、前述した毛細管チャンネル400の同じ周辺プロファイルを有することができる。
【0070】
上部層302は前述した下層を備え;第1の下層312は、溶出流体注入のための各分画チャンネルのための1つの中央注入ポート372、各毛細管チャンネルのための2つの側方注入ポート382、溶出するためのサンプルの注入のためのポート392、および、サンプル出力ポート、を含む。この下層は、好ましくは、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートから成り、例えば、1mmから5mmの範囲の厚さ好ましくは3mmの厚さを有する。
【0071】
第2の下層322は、例えば、PETまたはPETGまたは同様の特性を有する材料から成り、例えば、0.2mmから0.7mmの範囲の厚さ好ましくは0.5mmの厚さを有する。この下層において、第1の下層312の側方注入ポート382の注入ダクト402、中央注入ポート372の注入ダクト412、サンプル注入ポート392の注入ダクト422、および、ポート112の注入ダクト232、が製造される。
【0072】
第3の下層332は、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートから成り、それは、1mmから5mmの範囲の厚さ好ましくは3mmの厚さを有することができる。この下層において、前述したように、上部注入孔342、352、362および112が製造される。
【0073】
本発明による分画装置の動作およびそれを実施する細胞材料分画のための方法は、以下の説明から明らかになる。すでに説明したように、従来技術から知られている分画方法の欠点の1つは、中心から側壁への放物型減少を有する輸送流体の長手方向の速度に関係している。これと部分的に関連する他の問題は、最初に細胞がチャンネルの中心部分に集束する傾向があり、続いてそれらが溶出チャンネルの前面の全体に沿って膨張することである。細胞材料輸送流体の速度は側壁の近くでゼロになる傾向があるので、細胞は減速し、分画効率および細胞回復を悪化させる可能性がある。代わりに、本発明は、サンプルが毛細管チャンネルの壁の全てに接触しないようにして、この装置を最小限の操作規制に完全に対応させている。
【0074】
分画装置の性能を改善するために、本発明による方法は、各分画チャンネルに、チャンネルの長手方向軸線に対応して分散相を輸送する中央流れと、分画チャンネルの側壁に対応する2つの側方流れまたは閉込め流れと、を有するように、分画チャンネル212eおよび222を供給するために使用されるほぼ2つの異なる独立した流量によって、分画チャンネルに移動相を挿入することを示唆している。中央流れに対してより低い流量を有する第1および第2の側方流れは、細胞または生物学的物質としてのサンプルの一部の側壁上への付着を防止し、同時に溶出サンプルを分画チャンネルの全長に対する中央チャンネルに閉じ込める。本発明による分画装置の構成において、チャンネル中央部従って溶出流体の移動相流量は、0.5ml/minから1.5ml/minの範囲内であり、好ましくは0.8−1.0ml/minのオーダーであり;チャンネルの側部における第1および第2の閉込め流れの流量は、中央部流量の5%から15%範囲であり、好ましくはその流量の10%である。
【0075】
本発明による分画チャンネルの側壁全体に沿った第1および第2の閉込め流れの存在は、分画チャンネルの放物線方向の速度に関する機能条件を変更し、「移動」側壁を分画チャンネル内に作成する。
【0076】
また、分画することになっているサンプルは、移動相注入の直ぐ下流に設けられた注入ポートを介して移動相の流れに注入され;この手段は、注入された細胞材料のより良好な閉込めを可能にする。
【0077】
分画装置は、本発明による方法の作業工程に従って試験され;予備試験がグルコースを装置に注入することによって行われている。
図7(A)、(B)のチャートから分かるように、FEMシミュレーションの結果は、明らかに、2つの装置の異なる機能を示している。チャートでは、チャンネルの幅よりも、チャンネルの正面上の位置に関し縦方向速度(7(A))および総流れ(7(B))の変動曲線がそれぞれ示されている。シミュレーションのために、1ml/minでの移動相流量および40.0mmの全分画チャンネル幅が、両方の装置に対し選択された。これらの値は指標であり、異なる寸法および異なる流量を有するチャンネルが本発明と適合性があることは明らかである。より一般的には、本発明は、層流を生成すると共に側方流れと上記中央流れとの流量の間の比を尊重する、分画チャンネル221、212、222を使用して実現可能である。
【0078】
本発明によるチャンネルの異なる傾向(破線)および従来技術(実線)のように、長手方向の速度場プロファイル(
図7(A)参照)の差が明らかに関連している場合、全長手方向の流れのプロファイル(
図7(B)参照)は特に重要である。実際には、流れは、側壁から所定の距離で実質的にゼロに減少したように見え、本発明による装置によって溶出するために試料を閉じ込めるより良い能力を示す。
【0079】
この結果は、以前と同じ条件で計算された、注入された細胞サンプルの表面流れおよび速度場の傾向を結果として与える有限要素シミュレーション(FEM)によって検証され;これらのシミュレーションは、本発明による装置への輸送流体の速度場および全サンプル流が、
図8〜11に示されたチャートに適用されたディザリングに報告されているように、より顕著であり、速度場(10(A)、(B))および総流量(8(A)、(B))の増加に連れてより密であり、溶出したサンプルのより高い集束を確認することを示している。特に、
図8(A)は、従来の分画チャンネルにおける総流量の傾向を示す。この図は、従来の分画チャンネルにおける流れが、分画チャンネルの側壁にどのようにして延びるのか、および、サンプルの一部をチャンネルの側壁に向かって分離するようどのようにして運ぶかを示している。
図8(B)は、本発明による分画チャンネルにおける総流量を示す。本発明による分画チャンネルへの総流量傾向から、分画チャンネルへの流量または中央流の集中が明確に示されている。溶出流れは、分画チャンネルの側壁から所定の距離で分画チャンネルの中心に閉じ込められる。その結果、中央の流れによる注入されたサンプルの材料は、チャネル壁から一定の距離にとどまり、このようにして、側壁へのこの材料の付着が避けられる。
図9(A)および9(B)は、
図8Aおよび8Bを参照して記載したベクトル形式の流れの傾向を示す。
【0080】
図10(A)は、従来の分画チャンネルにおける流量の傾向を示す。従来のチャンネル全体に沿った横断流量の傾向は放物線状であり、速度は分画チャンネルの側壁の近くではゼロである。
図10(B)は、本発明による分画チャンネルへの速度の傾向を示す。この場合の速度プロファイルは、本質的に一定であり、チャンネルの中心では平坦であり、横チャンネルではそれほど顕著ではない。材料を分離することを可能にする横方向の速度場は放物線のまま残り、速度は蓄積壁および注入壁ではゼロである。
図11(A)および11(B)は、
図10(A)および10(B)を参照して説明したベクトル形式の速度傾向を示す。
【0081】
異なる細胞材料のいくつかの分画試験を行い;
図12(A)は、従来技術から公知の分画装置(連続線)および本発明による分画装置および方法(破線)によってそれぞれ分画された2つの幹細胞サンプルの溶出チャートを示す。
【0082】
歯髄からの間葉系幹細胞(DP−MSC)サンプルが両方の装置に注入され;等張PBS+BSA0.1%が移動相として使用された。注入したサンプルは100μl中に300.000個の細胞を含んでいた。チャートは、時間の関数としての吸光度を示す。
【0083】
実験結果は、以下の条件において、本発明による装置を用いたより良好な分離特性およびより高い細胞回復を明確にしめしている:
−分画チャンネルの同じ体積(標準形状で4cm/流体レールで4cm);
−分離のための同じ流体流量(流体ガイドの流量を除いて、分離流れとして0.8ml/min);
−注入された同じサンプル。
【0084】
図12(B)は、同様の実験を示し、50μlの全血液サンプルが、従来技術による分画装置および方法(破線)および本発明による分画装置および方法(連続線)のそれぞれによって溶出され;移動相は生理食塩水およびBSA0.1%であった。
【0085】
分離のための「ストップフロー」ステップが必要な種について、回収率、効率および感度において有意差はない。分離プロセスは採用された実験条件の影響を受けず;逆に、赤血球の保持容量(HRBC)に対応する保持ピークの理論的なガウス分布に対し良好な凝集が観察される。
【0086】
また、写真は従来技術で知られている装置の溶出された画分収集ポートの近くで撮影されるが、細胞材料は、横方向の流れ(
図13(A))および本発明による装置(
図13(B))なしで、移動相の注入ポートの下流側のポートを介して注入される。その注入ポートを介して移動相流に直接注入された細胞は、従来技術に係る装置の場合、両方の配置の入口でより集中しているが、拡張し、セクション全体に沿って分布し、チャンネルの壁に接触する傾向がある。これはサンプルを閉じ込めるものがないために起こり、その結果、横方向の壁の近くで広がる。この作用は、横方向の流れによって細胞が閉じ込められる、本発明による装置では起こらない。
【0087】
本発明による装置は、
図1〜6に示すように、製造することができる。移動相311、321の注入ポートは、好ましくは、毛細管チャンネルの遠端近くに配置される。ポートは、チャンネルの周辺プロファイル211の端部を細分する末端部241、251の頂部に流れる。これらの末端部は、上述したいわゆる「移動壁」をもたらすために、チャンネルへの独立した移動相注入流れの生成を促進する。
【0088】
好適には、溶出予定のサンプル注入ポートは、末端部の基線の近くで、本発明による毛細管チャンネルの縦軸上に配置される。
【0089】
また、
図5および
図6に示す多重分画チャンネル装置は、細胞の百万〜二百万個の範囲内において、細胞として、多数の物体を有するサンプルの処理に特に適している。
【0090】
多チャンネル分画装置の解決法は、複数のチャンネル2に配置された2つ以上の毛細管チャンネルを、移動相のただ1つの注入ダクトで供給するために、それ自身の流れ分配ダクトシステムを有する装置の製造によって与えられ、同様に分画の収集ポートが1つだけ溶出されるようにする。
【0091】
上部層302を構成する下層312、322e、332は、移動相の注入流と、中間層302内に得られた周辺プロファイルによって区別された両方の毛細管チャンネル212、222に注入されたサンプルと、を分割することを可能にする。このようにして、得られた複数の毛細管チャンネルは、従来技術による複数チャンネル装置よりも、よりコンパクトで、より効率的で、より生産性の高い形態で現れる。
【0092】
多チャンネル分画装置は、非常に高い分画性能を可能にし、
図1〜
図3に示された上述した単一の毛細管チャンネルと同じ機能原理に基づいており、
図1〜
図3を参照して説明した特徴もまた、
図5および
図6に記載された構成と互換性がありそれに適用可能であり、その逆も同様である。例えば、
図1に記載された制御手段400は、
図2〜
図6に記載された装置によっても使用可能である。同様に、
図5および
図6を参照して記載した注入壁302を、注入壁301と交互に分画装置200に使用することもできる。
【0093】
両方の装置は、本発明による装置を使い捨てとして使用する可能性を有するように、使用される材料および製造によって構造的に設計される。
【0094】
本発明は、また、分散相の動的分画のための方法を参照する。
図1〜
図13の分画装置を参照して記載した分離プロセスによる特徴は、本発明による方法に適用可能であり、その方法は:第1の注入ポートを介して毛細管チャンネルに注入された第1の閉込め流体と、 第2の注入ポートを介する第2の閉込め流体と、を含む。第1および第2の閉込め流体は、それぞれ、第1および第2の所定の流量で供給される。この方法は、また、第2および第2の注入ポートの間に設けられた第3の注入ポートを通して移動相を供給するために注入された溶出流体を備える。溶出流体は、第1および第2の閉込め流体の間に溶出流体を閉じ込めるために、第1および第2の所定の流量よりも大きい第3の所定の流量を有する。
【0095】
本発明の製造方法によれば、方法は以下のステップを具える:
a)移動相に分散される細胞材料サンプルの調製;
b)生理食塩水および生体適合性溶液(移動相)連続流れによって、ほぼ1つの毛細管チャンネルを備える適切な分画装置の横断面に垂直な方向への、サンプルの注入;
c)装置へのサンプルの溶出;
d)開始サンプルから出発して集団または亜集団において単離された異なる細胞種によって構成される分画収集。
【0096】
サンプル注入ステップの後サンプル溶出ステップの前に、任意に溶出流体流れを停止することができる。あるいは、注入および溶出ステップは、移動相停止流れなしに実施することができ、それにより装置の蓄積壁との接触相互作用を防止してもよい。
【0097】
移動相は、分画装置の側方部近くの分画装置の中央部分への所定の流量で、および、中央部分の流量よりも低い流量で、供給される。
【0098】
本発明の方法では、第1および第2の閉込め流体の第1および第2の注入流量が、溶出流体の第3の所定の移動相流量の5%から25%の範囲内で選択できる。好適な形態において、第1および第2の所定の流量は、第3の所定の流量の10%である。
【0099】
本発明による方法は、また、分画条件および注入されたサンプルの種類に応じて、溶出流体および/または第1および第2の閉込め流体の流量を設定することによって実現される。分画条件という用語は、計装機能および注入された物体の分画に適したすべての成分パラメータを意味する。例えば、移動相組成(異なるpH、塩分、イオン強度、界面活性剤の存在を有する、水性または有機溶液)、溶出の流量および速度、側方および注入流れ、ある時間における1つ以上の流れの停止、サンプル注入量と濃度、分析時間、システムの準備と調整のステップなどが例示される。
【0100】
本発明によれば、上記の方法および装置において、分散相は、生物学的な材料、特に細胞および/または幹細胞によって構成することができる。
【0101】
図1〜
図4および
図7〜
図13を参照して記載した装置および分画装置の特徴は、
図5および
図6に従って記載した装置および分画要素と、明確に互換性を有すると共にそれらで実施可能である。より一般的には、任意の図を参照して記載された実現形態に従って記載された特徴は、残りの図を参照して記載された実現形態で実施することができる。