特許第6487055号(P6487055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6487055多孔質チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487055
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】多孔質チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20190311BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20190311BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
   C09K3/14 520C
   C09K3/14 530G
   C09K3/14 520L
   F16D69/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-541501(P2017-541501)
(86)(22)【出願日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2016075966
(87)【国際公開番号】WO2017051690
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-186940(P2015-186940)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岸 春奈
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−139894(JP,A)
【文献】 特開2015−059143(JP,A)
【文献】 特開平03−179079(JP,A)
【文献】 特開2012−012261(JP,A)
【文献】 特許第6030277(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
C09K 3/14
F16D 69/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、表面に疎水性表面処理剤からなる処理層が形成されていることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【請求項2】
前記疎水性表面処理剤が、一般式(1)で表されるアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
Si(OR4−n …(1)
〔一般式(1)において、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよく、Rはアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項3】
前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、5〜500μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【請求項4】
前記チタン酸塩化合物が、組成式ATi(2n+1)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8]で表されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有していることを特徴とする摩擦材組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の摩擦材組成物を成形してなる、摩擦材。
【請求項7】
基材と、前記基材上に設けられる請求項6に記載の摩擦材とを備える、摩擦部材。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子を製造する方法であって、
チタン源とアルカリ金属塩とをメカニカルに粉砕し、粉砕混合物を準備する工程と、
前記粉砕混合物を乾式造粒し、造粒物を準備する工程と、
前記造粒物を焼成し、焼成物を製造する工程と、
前記焼成物を疎水性表面処理剤により表面処理する工程とを備えることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質チタン酸塩化合物粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種車両、産業機械等のブレーキシステムに用いられる摩擦材は、摩擦係数が高く安定していること、耐摩耗性が優れていることが求められている。これらの特性を満足させるために、チタン酸カリウム繊維、無機充填材、有機充填材等と、これらを結合するフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂(結合材)からなる樹脂組成物が摩擦材として使用されてきた。
【0003】
チタン酸カリウム繊維は、アスベストのような発癌性を有さず、金属繊維のようにローターを傷付けない。しかし、チタン酸カリウム繊維は平均繊維径が0.1〜0.5μm、平均繊維長が10〜20μmのものが多く、世界保健機関(WHO)で推奨されている範囲(吸入性繊維とするWHOファイバー:平均短径が3μm以下、平均繊維長が5μm以上及びアスペクト比が3以上の繊維状化合物以外)には含まれていない。また、チタン酸カリウム繊維は高温域での耐摩耗性が十分ではない。
【0004】
そこで、特許文献1では鱗片状のチタン酸マグネシウムカリウム、特許文献2では鱗片状のチタン酸リチウムカリウム、特許文献3ではアメーバ状のチタン酸カリウムが提案されている。
【0005】
さらに、摩擦材は耐フェード性が優れていることが求められている。フェード現象は、摩擦材の高温化に伴って摩擦材中の有機成分がガス化し、ディスクとの摩擦界面に気層が形成されることに起因する現象であり、摩擦界面の気層の形成を抑制することにより、耐フェード性を改善することができる。それには、摩擦材の気孔率を高めて摩擦界面からガスを逃し易くすることが有効である。摩擦材の気孔率を高める方法として、原料混合物を結着成形する工程での成形圧力を低めに調節設定することが考えられるが、成形圧力を低くすると、摩擦材の強度や耐摩耗性が低下し、摩擦特性が得られなくなる。
【0006】
そこで、特許文献4では、棒状、柱状、円柱状、短冊状、粒状及び/又は板状の形状を有するチタン酸アルカリ粒子が結合した中空体からなるチタン酸アルカリの中空体粉末を提案している。
【0007】
一方、車両のディスクブレーキ、ブレーキライニングに用いられる摩擦材は、一般に耐フェード性の向上、高速効力の向上の目的のため気孔率が10〜30%と高い。そのため、車両を長時間駐車した場合、洗車した場合などに、摩擦材が吸湿、吸水しやすい。摩擦材の表面に水(水分)が付着したり、内部に取り込まれたりして摩擦材が吸湿、吸水すると、乾燥時に比べて摩擦係数が極端に高くなり、その結果、制動時に発生するブレーキノイズ(鳴き)が発生することが知られている。
【0008】
そこで、特許文献5では、シランカップリング剤により表面処理されたアラミド繊維を含有する摩擦材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2002/010069号
【特許文献2】国際公開第2003/037797号
【特許文献3】国際公開第2008/123046号
【特許文献4】特開2009−114050号公報
【特許文献5】特開平9−291271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1〜4で用いられるチタン酸塩化合物では十分な耐フェード性が得られず、WHOファイバーが微量に含まれる可能性がある。また、チタン酸塩化合物は吸湿性が高いため、多孔質状の粒子は、さらに吸湿性が高くなるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、摩擦材に用いた場合に優れた耐フェード性、防湿性を付与することができる多孔質チタン酸塩化合物粒子、摩擦材組成物、摩擦材、摩擦部材、及び多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の多孔質チタン酸塩化合物粒子、摩擦材組成物、摩擦材、摩擦部材、及び多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法を提供する。
【0013】
項1 細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、表面に疎水性表面処理剤からなる処理層が形成されていることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【0014】
項2 前記疎水性表面処理剤が、一般式(1)で表されるアルコキシシランであることを特徴とする、項1に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【0015】
Si(OR4−n …(1)
〔一般式(1)において、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよく、Rはアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0016】
項3 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、5〜500μmであることを特徴とする、項1又は2に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【0017】
項4 前記チタン酸塩化合物が、組成式ATi(2n+1)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8]で表されることを特徴とする、項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子。
【0018】
項5 項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有していることを特徴とする摩擦材組成物。
【0019】
項6 項5に記載の摩擦材組成物を成形してなる、摩擦材。
【0020】
項7 基材と、前記基材上に設けられる項6に記載の摩擦材とを備える、摩擦部材。
【0021】
項8 項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質チタン酸塩化合物粒子を製造する方法であって、チタン源とアルカリ金属塩とをメカニカルに粉砕し、粉砕混合物を準備する工程と、前記粉砕混合物を乾式造粒し、造粒物を準備する工程と、前記造粒物を焼成し、焼成物を製造する工程と、前記焼成物を疎水性表面処理剤により表面処理する工程とを備えることを特徴とする、多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、摩擦材に用いた場合に優れた耐フェード性、防湿性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例1の多孔質チタン酸塩化合物粒子の全体像を示す走査電子顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例1の多孔質チタン酸塩化合物粒子の内部構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<多孔質チタン酸塩化合物粒子>
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、表面に疎水性表面処理剤からなる処理層が形成されていることを特徴とする。すなわち、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が焼結及び/又は融着等により結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子を、疎水性表面処理剤により表面処理してなることを特徴とする。
【0026】
本発明において、上記積算細孔容積は、好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは15%以上である。上記積算細孔容積の好ましい上限値は40%であり、さらに好ましくは30%である。上記積算細孔容積が小さすぎると、摩擦材に用いた場合に、優れた耐フェード性が得られない場合がある。上記積算細孔容積が大きすぎると、チタン酸塩化合物の結晶粒間の結合部分が弱くなり、多孔質構造が保てなくなる場合がある。上記積算細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。
【0027】
また、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子のBET比表面積は、1〜13m/gの範囲内であることが好ましく、3〜9m/gの範囲内であることがさらに好ましい。上記BET比表面積が小さすぎると、摩擦材に用いた場合に、優れた耐フェード性が得られない場合がある。上記BET比表面積が大きすぎると、焼成工程における化学反応が完結していない場合がある。
【0028】
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子の粒子形状は、球状、不定形状等の粉末状であることが好ましく、非繊維状であることが好ましい。特に、球状であることが好ましい。
【0029】
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子の粒子サイズは特に制限されないが、摩擦材組成物中への分散性の点から、平均粒子径が5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。本発明において平均粒子径は、超音波による分散を行わないレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%の粒子径を意味する。これらの各種粒子形状及び粒子サイズは、製造条件、特に原料組成、焼成条件、粉砕処理条件等により任意に制御することができる。
【0030】
チタン酸塩化合物としては、組成式ATi(2n+1)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8]、MTi(2−y)[式中、Mはリチウムを除くアルカリ金属、Aはリチウム、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、銅、鉄、アルミニウム、ガリウム、マンガンより選ばれる1種又は2種以上、x=0.5〜1.0、y=0.25〜1.0]、K0.5〜0.8Li0.27Ti1.733.85〜4、K0.2〜0.8Mg0.4Ti1.63.7〜4等で表されるチタン酸塩化合物を挙げることができる。
【0031】
上述のチタン酸塩化合物の中でも、組成式ATi(2n+1)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8]で表されるチタン酸塩化合物であることが好ましく、組成式ATi13[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上]で表されるチタン酸塩化合物であることがより好ましい。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムがあり、この中でも経済的に有利な点からリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。より具体的には、LiTi13、KTi13、NaTi13等を例示することができる。
【0032】
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子の製造方法は、上述の特性を得ることができれば特に制限されないが、例えば、チタン源とアルカリ金属塩とをメカニカルに粉砕をすることで得られる粉砕混合物を、乾式造粒し、焼成し、得られた焼成物(多孔質チタン酸塩化合物粒子)を疎水性表面処理剤により表面処理して製造する方法等を例示することができる。
【0033】
メカニカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、振動ミルによる粉砕が挙げられる。振動ミルによる粉砕処理を行うことにより、混合粉体の摩砕によるせん断応力が生じ、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、後述の焼成温度を低くでき、粉砕混合物を造粒しても未反応物を低減することができる。メカニカルな粉砕は、原料に効率良くせん断応力を与えるため、水や溶剤を用いない乾式処理が好ましい。
【0034】
メカニカルな粉砕による処理時間は、特に制限されるものではないが、一般に0.1〜2時間の範囲内であることが好ましい。
【0035】
粉砕混合物の造粒は、水及び溶剤を用いない乾式造粒で行われる。乾式造粒は、公知の方法で行うことができ、例えば転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒等を例示するこができる。湿式造粒は、造粒物の乾燥工程において、造粒物内部での液状物の気化に伴い、結果として内部に大きな空洞を有する多孔質粒子が得られ、粉体強度が低下するため好ましくない。また、水及び溶媒を気化させるために加熱が必要となり、量産性も悪い。
【0036】
造粒物を焼成する温度としては、目的とするチタン酸塩化合物の組成により適宜選択することができるが、650〜1000℃の範囲であることが好ましく、800〜950℃の範囲であることがさらに好ましい。焼成時間は0.5〜8時間であることが好ましく、2〜6時間であることがさらに好ましい。
【0037】
チタン源としては、チタン元素を含有して焼成による酸化物の生成を阻害しない原材料であれば特に限定されないが、例えば空気中で焼成することにより酸化チタンに導かれる化合物等がある。かかる化合物としては、例えば酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウェットケーキ、含水チタニア等が挙げられ、酸化チタンが好ましい。
【0038】
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酢酸塩等の有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩等があるが、炭酸塩が好ましい。
【0039】
チタン源とアルカリ金属塩の混合比は、目的とするチタン酸塩化合物の組成により適宜選択することができる。
【0040】
本発明で使用される疎水性表面処理剤としては、例えば、疎水性のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を挙げることできる。この中でも疎水性のシランカップリング剤が好適に使用される。
【0041】
疎水性のシランカップリング剤は、アルキル基、アリール基等の本質的に疎水性の官能基と、チタン酸塩化合物粒子表面の親水性基と反応し得る基を生成する加水分解性の官能基とを有するものであり、このような疎水性のシランカップリング剤の代表例としては、一般式(1)で表されるアルコキシシランを挙げることができる。
【0042】
Si(OR4−n …(1)
〔一般式(1)において、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよく、Rはアルキル基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rが複数存在する場合には互いに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0043】
で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基を挙げることができ、炭素数8〜20のアルキル基であることが好ましい。これらのアルキル基は、環状構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよく、一般に直鎖の炭素数が多いほど疎水性の程度が大きい傾向がある。該アルキル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0044】
で示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、ブテニル基等を挙げることができ、これらは環状構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。該アルケニル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0045】
で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。該アリール基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0046】
上記Rで示される基は、その疎水性を阻害しない限り、それぞれ置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、フッ素原子、(メタ)アクリロキシ基等の疎水性基を置換基が挙げられる。
【0047】
さらに上記のアルキル基は、疎水性の置換基として上記で例示したアリール基を有していてもよいし、上記のアリール基は、疎水性の置換基としてアルキル基を有していてもよい。なお、一般にチタン酸塩化合物粒子と熱硬化性樹脂との密着性向上のためにアミノ基の樹脂との反応性を利用するため、アミノ基を有するシランカップリング剤にてチタン酸塩化合物粒子を表面処理することがあるが、アミノ基はシランカップリング剤の疎水性を阻害するため本発明においては好ましくない。
【0048】
で示されるアルキル基としては、上記のRにて例示したものを挙げることができるが、上記のアルコキシシラン中のアルコキシ基(OR)は加水分解性の基であることから、加水分解性の点からRは炭素数4以下の低級アルキル基が好適である。特にメチル基とエチル基が最も好適に使用される。
【0049】
nは、1〜3から選択される任意の整数を示し、チタン酸塩化合物粒子表面との反応性及び疎水性の観点から、好ましくは1である。
【0050】
上述のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等を挙げることができ、これは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0051】
本発明において表面処理剤の疎水性の度合いは、ガラス板表面を表面処理剤で処理し、該処理面の表面自由エネルギーを測定することで表すことができる。本発明で使用する疎水性表面処理剤の表面自由エネルギーは50mN/m以下であることが好ましく、5〜50mN/mであることがより好ましく、10〜30mN/mであることが更に好ましい。本発明において表面自由エネルギーは、ガラス板へメタノールで10倍希釈した表面処理剤を均一に塗布し、85℃で1時間加熱後、110℃で1時間加熱処理を行い、表面処理剤を塗布した面の表面自由エネルギーを水とデカンの2液静的接触角を測定することから算出することで測定できる。例えば、デシルトリメトキシシランの表面自由エネルギーは28mN/m、3−アミノプロピルトリエトキシシランの表面自由エネルギーは68mN/mである。
【0052】
表面処理剤を多孔質チタン酸塩化合物粒子表面へ処理する方法として、公知の方法を使用することができ、例えば、加水分解を促進する溶媒(例えば、水、アルコール又はこれらの混合溶媒)に表面処理剤を溶解して溶液とし、その溶液を多孔質チタン酸塩化合物粒子に噴霧、乾燥する方法でなされる。その表面処理濃度は、多孔質チタン酸塩化合物粒子100質量%に対して0.1〜3.0質量%が好ましく、0.2〜2.0質量%がより好ましく、0.3〜1.0質量%がさらに好ましい。
【0053】
本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、上述のように細孔直径が小さいことから、多孔質粒子内へ熱硬化性樹脂が含浸するのを抑制できる。そのため、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子を含有する摩擦材組成物を成形してなる摩擦材は、この多孔質粒子がフェードガスの抜け穴となる。このため、原料混合物を結着成形する工程での成形圧力を低めに調節設定しなくても、優れた耐フェード性が得られるものと考えられる。更に、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、耐フェード性を向上させるだけでなく、非繊維形状の多孔質体であることから、WHOファイバーが含まれない摩擦調整材としても期待される。
【0054】
また、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子は、上述のように疎水性表面処理剤にて表面処理されていることから、多孔質粒子内に吸湿されるのを抑制でき、多孔質チタン酸塩化合物粒子の防湿性を向上することができる。さらに、理由は定かではないが、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子を含有する摩擦材組成物を成形してなる摩擦材の防湿性が向上することができ、制動時に発生するブレーキノイズ(鳴き)が低減することが期待される。
【0055】
なお、表面処理後の多孔質チタン酸塩化合物粒子における、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積及び細孔分布の極大値並びにBET比表面積は、表面処理前の多孔質チタン酸塩化合物粒子と同程度である。
【0056】
<摩擦材組成物>
本発明の摩擦材組成物は、上記多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有することを特徴とする。本発明の摩擦材組成物は、必要に応じて、その他材料をさらに含有することができる。以下に、本発明の摩擦材組成物の各構成成分について説明する。
【0057】
(多孔質チタン酸塩化合物粒子)
多孔質チタン酸塩化合物粒子は、上述のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0058】
摩擦材組成物における多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量は、摩擦材組成物の合計量100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましい。多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量を3〜30質量%の範囲とすることで、優れた摩擦特性を得ることができる。
【0059】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、多孔質チタン酸塩化合物粒子等を一体化し、強度を与える結合材として用いられるものであり、結合材として用いられる公知の熱硬化性樹脂の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばフェノール樹脂;アクリルエラストマー分散フェノール樹脂、シリコーンエラストマー分散フェノール樹脂等のエラストマー分散フェノール樹脂;アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;ホルムアルデヒド樹脂;メラミン樹脂;エポキシ樹脂;アクリル樹脂;芳香族ポリエステル樹脂;ユリア樹脂;等を挙げることができ、これらの1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも良好な耐熱性、成形性、摩擦特性の点からフェノール樹脂、変性フェノール樹脂が好ましい。
【0060】
摩擦材組成物における熱硬化性樹脂の含有量は、摩擦材組成物の合計量100質量%に対して、3〜20質量%であることが好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を3〜20質量%の範囲とすることで配合材料の隙間に適切な量の結合材が充填され、優れた摩擦特性を得ることができる。
【0061】
(その他材料)
本発明の摩擦材組成物は、上記の多孔質チタン酸塩化合物粒子、熱硬化性樹脂の材料以外に、必要に応じてその他の材料を配合することができる。その他の材料としては、例えば、以下の繊維基材、摩擦調整材等を挙げることができる。
【0062】
繊維基材としては、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、フェノール樹脂繊維等の有機繊維、スチール繊維、銅繊維、アルミナ繊維、亜鉛繊維等の金属繊維;ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、生分解性繊維、生体溶解性繊維、ワラストナイト繊維等の無機繊維;炭素繊維;等が挙げられ、これらの1種単独又は2種以上を組み合わして使用することができる。
【0063】
摩擦調整材としては、各種ゴム粉末(生ゴム粉末、タイヤ粉末)、カシューダスト、メラミンダスト等の有機充填材;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、クレー、マイカ、タルク等の無機粉末、銅、青銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、錫等の金属粉末、本発明の多孔質チタン酸塩化合物粒子以外の球状、層状、板状、柱状、ブロック状、不定形状等の粒子形状のチタン酸塩化合物粉末等の無機充填材;シリコンカーバイト(炭化ケイ素)、酸化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(二酸化ケイ素)、マグネシア(酸化マグネシウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、ケイ酸ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、クロマイト、石英等の研削材;合成又は天然黒鉛(グラファイト)、リン酸塩被覆黒鉛、カーボンブラック、コークス、三硫化アンチモン、二硫化モリブデン、硫化スズ、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)等の固体潤滑材;等が挙げられ、これらの1種単独又は2種以上を組み合わして使用することができる。
【0064】
摩擦材組成物におけるその他材料の含有量は、摩擦材組成物の合計量100質量%に対して、60〜94質量%であることが好ましい。
【0065】
(摩擦材組成物の製造方法)
本発明の摩擦材組成物は、(1)混合機(レーディゲミキサー、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー等)で各成分を混合する方法;(2)所望する成分の造粒物を調製し、必要により他の成分を混合機(レーディゲミキサー、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー等)で混合する方法;等により製造することができる。
【0066】
本発明の摩擦材組成物の各成分の含有量は、所望する摩擦特性、柔軟性により適宜選択することができる。
【0067】
また、本発明の摩擦材組成物は、特定の構成成分を高い濃度で含むマスターバッチを作製し、このマスターバッチに熱硬化性樹脂等を添加し混合することにより調製してもよい。
【0068】
<摩擦材及び摩擦部材>
本発明の摩擦材は、本発明の摩擦材組成物を、常温にて仮成形し、得られた仮成形物を加熱加圧成形(成形圧力10〜40MPa、成形温度150〜200℃)し、必要に応じて、得られた成形体に加熱炉内で熱処理(150〜220℃、1〜12時間保持)を施し、しかる後その成形体に機械加工、研磨加工を加えて所定の形状に製造することができる。
【0069】
本発明の摩擦材は、該摩擦材を摩擦面となるように形成した摩擦部材として用いられる。摩擦材を用いて形成することができる摩擦部材としては、例えば、(1)摩擦材のみの構成、(2)裏金等の基材と、該基材の上に設けられ、摩擦面を本発明の摩擦材組成物からなる摩擦材とを有する構成等が挙げられる。
【0070】
上記基材は、摩擦部材の機械的強度の向上のために用いるものであり、材質としては、金属又は繊維強化樹脂等を用いるができる。例えば、鉄、ステンレス、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維樹脂等が挙げられる。
【0071】
本発明の摩擦材は、各種車両や産業機械のブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等の摩擦部材に用いることができる。また、本発明の摩擦材は、自然環境への配慮の観点から、銅粉末、銅繊維等の銅を含有しなくても優れた摩擦特性を得ることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0073】
<チタン酸塩化合物粒子の製造>
(実施例1)
Ti:K=3:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸カリウムを振動ミルにて粉砕しながら10分間混合した。得られた粉砕混合物をハイスピードミキサーにて乾式造粒した後、電気炉にて850℃で4時間焼成することで粉末を得た。
【0074】
得られた粉末は、X線回折測定装置(リガク社製、UltimIV)により、KTi13単相であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−2100)により169μmであった。
【0075】
得られた粉末の形状は、電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)を用いて観察し、得られた粉末が微粒子間に1μmに満たない微細な空隙を有する球状粒子であることを確認した。図1に粒子の全体像のSEM写真、図2に粒子の内部構造のSEM写真を示した。
【0076】
得られた多孔質チタン酸塩化合物粒子の細孔は、水銀ポロシメーター(Quanta Chrome社製、ポアマスター60−GT)を用いて測定し、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は21.1%、細孔分布の極大値は0.11μmであった。
【0077】
又、得られた多孔質チタン酸塩化合物粒子についてBET比表面積を測定した結果、5.9m/gであった。
【0078】
得られた多孔質チタン酸塩化合物粒子に対して、デシルトリメトキシシランのメタノール溶液を用いて表面処理を行うことで、本実施例の多孔質チタン酸塩化合物粒子を得た。表面処理は、多孔質チタン酸塩化合物粒子100質量%に対してデシルトリメトキシシランが0.5質量%となるように行った。
【0079】
(比較例1)
デシルトリメトキシシランで表面処理を行う前の無処理の多孔質チタン酸塩化合物粒子を比較例1の多孔質チタン酸塩化合物粒子とした。
【0080】
(比較例2)
実施例1で得た多孔質チタン酸塩化合物粒子に対して、3−アミノプロピルトリエトキシシランのメタノール溶液を用いて表面処理を行うことで、比較例2の多孔質チタン酸塩化合物粒子を得た。表面処理は、チタン酸塩化合物粒子100質量%に対して3−アミノプロピルトリエトキシシランが0.5質量%となるように行った。
【0081】
(比較例3)
Ti:K:Li=1.73:0.8:0.27(モル比)となるように秤量した酸化チタン、炭酸カリウム及び炭酸リチウムを常法により混合し、原料混合物を振動ミルにて粉砕しながら30分間混合した。得られた粉砕混合物を電気炉にて1000℃で4時間焼成後、焼成物を粉砕することで、粉末を得た。得られた粉末を水中に分散させ10質量%スラリーとし、さらに硫酸を添加しpHを9に調製した。このスラリーの固形分を濾取し、乾燥した。乾燥後、電気炉にて600℃で1時間焼成することで粉末を得た。
【0082】
得られた粉末は、X線回折測定装置によりレピドクロサイト型層状結晶のチタン酸リチウムカリウム(K0.7Li0.27Ti1.733.95)であることを確認した。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置により15μmであった。粉末の形状は、SEMを用いて板状粒子であることを確認した。
【0083】
(比較例4)
比較例3で得た板状チタン酸塩化合物粒子に対して、デシルトリメトキシシランのメタノール溶液を用いて表面処理を行うことで粉末を得た。表面処理は、チタン酸塩化合物粒子100質量%に対してデシルトリメトキシシランが0.5質量%となるように行った。
【0084】
(比較例5)
以下のようにして、上記特許文献4に開示された中空状のチタン酸塩化合物粒子を製造した。
【0085】
Ti:K=3:1(モル比)となるように秤量した酸化チタン及び炭酸カリウムを振動ミルにて粉砕しながら10分間混合した。得られた粉砕混合物を、電気炉にて1050℃で4時間焼成し、焼成物を粉砕機にて粉砕し、平均短径1.9μm、平均長径3.1μm、平均アスペクト比1.7の柱状粉末を得た。
【0086】
得られた柱状粉末、エチルセルロース系バインダー、ポリカルボン酸アンモニウム塩を用いてスラリーを製造し、得られたスラリーを噴霧乾燥した。次に噴霧乾燥して得られた粉末を900℃で2時間熱処理を行った。
【0087】
得られた粉末の評価は、実施例1と同様に行った。その結果、KTi13の単相であり、平均粒子径は141μm、0.01〜1.0μmの細孔直径範囲にある積算細孔容積は2.8%、細孔分布の極大値は1.9μmの球状粒子であることを確認した。得られた粉末をSEMを用いて観察し、1〜5μmの空隙を多く持つ中空状の球状粒子であることを確認した。
【0088】
又、得られた粉末についてBET比表面積を測定した結果、0.6m/gであった。
(比較例6)
比較例5で得られた粉末を乳鉢で粉砕し、柱状粉末を得た。
【0089】
<摩擦材の製造>
表1に示す配合比率に従って材料を配合し、レーディゲミキサーにて混合することで摩擦材組成物を得た。得られた摩擦材組成物を仮成形(25MPa)し、加熱成形(150℃、20MPa)し、さらに熱処理(220℃)を行った。得られた成形体を面積5.5cmの扇形に加工して摩擦材を得た。
【0090】
<摩擦材の評価>
摩擦材の摩擦試験(フェード試験)は、汎用のフルサイズダイナモ試験機を用いてJASO C−406に準拠して行った。
【0091】
摩擦材の気孔率は、JIS D4418に準拠して、油中含浸により測定を行った。結果を表1に示した。
【0092】
摩擦材の吸水性は、20℃、50%RHの環境室内で、20μLの水を摩擦材の表面に直接滴下し、吸水時間を測定することにより行った。
【0093】
摩擦材の吸水率は、摩擦材を水に10分間浸漬し、摩擦材の浸漬前後の質量により以下式に基づき吸水率を算出した。
【0094】
吸水率〔%〕={(浸漬後摩擦材質量〔g〕−浸漬前摩擦材質量〔g〕)/浸漬前摩擦材質量〔g〕}×100
【0095】
なお、比較例11及び12については、摩擦試験の結果が良くなかったので、吸水性及び吸水率を評価していない。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、本発明に従う実施例1の多孔質チタン酸化合物粒子を用いた実施例2は、比較例1〜6のチタン酸塩化合物粒子を用いた比較例7〜12に比べ、フェード試験項目における制動10回中の最低摩擦係数(μ)が高くなっており、また吸水に時間を要することから、優れた耐フェード性、防湿性を示すことが分かる。
図1
図2