【文献】
Cunjun Ruan et al,The development of X-band and W-band sheet beam klystron in IECAS,IEEE International Vacuum Electronics Conference,2014年 4月,pp.21-22
【文献】
Aaron Jensen et al,200 kW CW sheet beam klystron research and development,IEEE International Vacuum Electronics Conference,2014年 4月,pp.23-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のドリフト管区分の前記ドリフト管区分幅が、前記第2のドリフト管区分の前記ドリフト管区分幅より少なくとも0.3%大きい、請求項1に記載の真空電子装置。
それぞれの横モードのための前記少なくとも2つのドリフト管区分からの反射係数のピークの大きさが、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い少なくとも1つのドリフト管区分の前記横モードのためのドリフト共振周波数において0.13デシベル(dB)より小さく、または、
前記ドリフト管区分のそれぞれの端部における2つの共振空洞部からの反射係数の大きさのピーク積は、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い横モードの少なくとも1つのドリフト管区分のための横モードの0.97より小さい、請求項1に記載の真空電子装置。
前記伝播軸に沿った前記中空管構造の第1の端部に結合された電子銃組立体、または、 前記伝播軸に沿った前記中空管構造の第2の端部に結合されたコレクタ組立体、または、
電子ビームを収束するように構成された前記中空管構造の少なくとも一部を覆う磁場収束組立体、または、
永久磁石、周期永久磁石、もしくは電磁石を含む前記磁場収束組立体、
をさらに備えた、請求項1に記載の真空電子装置。
前記第3のドリフト管区分の前記ドリフト管区分幅が、前記第1のドリフト管区分の前記ドリフト管区分幅とは少なくとも0.3%異なり、もしくは前記第2のドリフト管区分の前記ドリフト管区分幅とは少なくとも0.3%異なり、または、
前記第3のドリフト管区分が、前記第3のドリフト管区分の横モードのための第3のドリフト共振周波数を生成するように構成され、前記第3のドリフト共振周波数が、第1のドリフト共振周波数から前記第3のドリフト共振周波数の少なくとも0.7%変化し、第2のドリフト共振周波数から前記第3のドリフト共振周波数の少なくとも0.6%変化する、請求項9に記載の真空電子装置。
前記少なくとも2つの共振空洞手段の前記捕捉モードの反射係数を変更するための前記手段が、前記少なくとも1つのドリフト管区分手段の前記捕捉モードの負荷されたQ値を低下させるための手段、をさらに備える、請求項17に記載の真空電子装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、以下の詳細な説明または示される以下の図において説明される構成要素の構成及び機構の詳細に制限されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態で可能であり、様々な方法において実施されまたは実行される。フローチャートにおいて提供される符号及び工程は、示されるステップ及び操作において明確にするために提供され、必ずしも特定の順序または順番を示さない。他のものを定義しない限り、「or(または)」という語は選択肢(たとえば、離接的演算子、または排他的論理和)の選択、または選択肢(たとえば、結合演算子、及び/または、論理和、またはブール演算子OR)の組み合わせ、に関し得る。
【0017】
本発明は、概して真空電子装置における横モード不安定性の影響を低減させるための、または緩和させるための、調整に関し、より詳細には、シートビームクライストロン(SBK)における横電気(TE)モード不安定性の影響を低減、最小化、緩和、またはある場合において排除さえするための、ドリフト管及び共振空洞部の調整に関する。
【0018】
例示的実施形態は、共振回路組立体のドリフト管区分において共振周波数を変化させ、または共振空洞部からの反射係数を変更することによってドリフト管区分においてQ値を低減させ得る様々なドリフト管及び共振空洞部の調整を示す。特に、様々なドリフト管区分のドリフト管の幅は、共振空洞部の間のドリフト管の増幅特性を変化させるために変更され得るものであり、これはクライストロン(たとえば、シートビームクライストロン)の意図される信号増幅において無視できる影響で不安定性を生じさせるTEモードを低減させることができる。
【0019】
クライストロンのような真空電子装置は、数十メガワット(MW)までの出力動力でマイクロ波の高い動力増幅を提供するために使用され得る。概して、クライストロンは、入力周波数の10%より小さい帯域幅を備え、いくつかの実施例において、入力周波数の1%より小さい帯域幅を備えた挟帯域幅の装置である。従来、帯域幅は、最大周波数値(すなわち、ピーク周波数)の両側における上の周波数と下の周波数との間の差として定義され、上の周波数及び下の周波数は、それぞれ3dBの点によって定義される。3dBの点は、スペクトル密度がその最大値の半分である点である。スペクトル密度は、信号を構成する周波数成分への動力の分配である。
【0020】
マイクロ波は、300メガヘルツ(MHz;1m)から300ギガヘルツ(GHz;1mm)までの間の周波数を備えた、1メートル(1m)から1ミリメートル(1mm)までの範囲の波長を備えた電磁放射の形式であり、極超短波(ultra high frequency)(UHF;300MHz及び3GHz)、センチメートル波(super high frequency)(SHF;3から30GHz)、及びミリ波(extremely high frequency)(EHF;ミリメートル波;30かr300GHz)を含み得る。おおよそ1GHzから100GHzまでの周波数の範囲の電磁エネルギーにより、マイクロ波スペクトルは、L(1〜2GHz)、S(2〜4GHz)、C(4〜8GHz)、X(8〜12GHz)、Ku(12〜18GHz)、K(18〜26.5GHz)、Ka(26.5〜40GHz)、Q(33〜50GHz)、U(40〜60GHz)、V(50〜75GHz)、W(75〜110GHz)、F(90〜140GHz)、及びD(110〜170GHz)のような帯域にさらに分類され得る。帯域Lは、UHFに関連付けられ、帯域SからK
aはSHFに関連付けられ、帯域QからDはEHFに関連付けられる。真空電子装置は概してマイクロ波増幅を提供するクライストロンのようなマイクロ波に関連付けられるが、本明細書に記載の調整及び方法は、より低い赤外線スペクトルにおいて動作するような、より高周波数の装置にも適用し得るものであり、赤外線電磁放射は、300GHz(1mm)から450テラヘルツ(700nm)までの間の周波数の1ミリメートル(1mm)から700ナノメートル(nm)までの範囲の波長を含む。本発明において用いられるように、「マイクロ波」という語の参照は、より低い赤外線スペクトルの周波数も含んでよい。1つの実施例において、「マイクロ波」という語は、300MHzから3THzまでの間の周波数を含む。
【0021】
本発明に係る例示的実施形態の様々な態様を説明するために図がここで参照される。図はこうした例示的実施形態の図表及び概略図であり、本発明を制限するものではなく、あるいはそれらは必ずしも原寸で描かれないことが理解される。
【0022】
例示的クライストロン
図2は例示的クライストロン180のブロック図である。N+2−空洞部クライストロン180は、(電子を放出する)電子銃182、共振回路組立体191におけるN+2空洞部192、194及び196及びコレクタ190を含む。電子銃182は、電位、V
0によってアノード183に向かって速度、u
0へと、エネルギー
で加速される電子のビーム(または電子ビーム)184を生成するカソード181を含み、ここで、m
0は電子ビームの質量であり、eは電荷である。電子ビーム184は、ドリフト管(またはドリフト管区分)と結合された共振空洞部(または「集群(bunch)」空洞部)192、194及び196と称される、複数の空洞部を備えた管(または中空管構造)に入る。電子ビームは、電子ビーム結合部197と称される管に結合される。入力空洞部または「集群化(buncher)」空洞部192と称される、第1の共振空洞部における電子ビームは、V
isinωtとして示される無線周波数(RF)電圧186により駆動され、結合係数M(1より小さい正の値)により低減され、ここでV
iは入力電圧であり、ωは角周波数、ω=2πf、ここでfは(ヘルツ(Hz)で計測される)通常の周波数である。クライストロンは、直流(DC)電子ビーム184における運動エネルギーを無線周波数動力へと変換することによってRF入力信号を増幅する。
【0023】
共振空洞部192、194、及び196の構造は、通常入力周波数近くの特定の共振周波数において定常波を形成するように設計され、これは電子ビーム184において駆動する振動電圧を生成する。電場は電子を「集群」させ、ここで電場が電子の運動に対向するときに共振空洞部を通過する電子は減速され、電子の運動と電場が同じ方向のときに共振空洞部を通過する電子は、加速され、あらかじめ連続的な電子ビームに入力周波数で、または入力周波数近くで集群を形成させる。集群を補強するために、クライストロンは、付加的な共振空洞部または「集群化」空洞部194を含んでも良い。いくつかの実施例において、「集群化」空洞部(または「集群」空洞部)は、第1の共振空洞部に関する。他の実施例において、「集群化」空洞部は、第1の共振空洞部及び付加的な共振空洞部に関する。
図2に示された実施例において、クライストロンは、入力空洞部192及び出力空洞部196と共にN共振空洞部194を有する。共振空洞部(たとえば、N共振空洞部194)は、中間共振空洞部とも称される。概して、通常のチューニング形式構成を備えた従来のクライストロンのため、それぞれの共振空洞部は、概して10デシベル(dB)利得を増加させる。共振空洞部のさらなる付加は、RF利得または帯域幅を増加させることができる。電子ビーム184は、次いでより高速の電子がより低速のものに追いつき、「集群」を形成し、次いで出力空洞部または「捕獲」空洞部196を通る「ドリフト」管を通過する。出力「捕獲」空洞部196、それぞれの電子の集群は、電場が電子の運動に対抗するときにおいて循環内にあるときに空洞部に入り、これにより電子を減速させる。したがって、電子の運動エネルギーは、電場のエネルギーに変換され、振動の振幅を増加させる。出力空洞部196において励起される振動は、増幅された出力信号を生成するために導波管187(または他の実施例において同軸ケーブル)を通して結合される。導波管187に対する電場の結合は、導波管結合198と称される。低減されたエネルギーを備える使用された電子ビームは、コレクタ電極またはコレクタ190によって収集される。
【0024】
例示的シートビームクライストロン
図3は例示的シートビームクライストロン(SBK)100の概略図である。SBKは、電子銃組立体110、共振回路組立体(またはマイクロ波空洞部組立体)120、マイクロ波出力導波管組立体130、及びコレクタ組立体140を含む。電子銃組立体110は、共振回路組立体120の第1の端部にあり、コレクタ組立体140は、共振回路組立体120の第2の端部にある。電子銃組立体110は、電子放出器(図示せず)を含む電子銃(図示せず)を含む。共振回路組立体120は、ソレノイドコイルコネクタ126と冷却インタフェース124(たとえば、入力及び出力)とを備えた磁気リターンボックス122(冷却ボックスとしても機能し得る)を含む。磁気リターンボックス122は、共振空洞部(符号なし)及びドリフト管区分(符号なし)を収容できる。磁気リターンボックス122は、電子銃側ポールピース(図示せず)と共に入力側(または電子銃側)において収容され、且つコレクタ側ポールピース128と共に出力側(またはコレクタ側)において収容され得る。電子銃側ポールピースは、
図3に示されず、したがって、磁気リターンボックス122の内側の共振空洞部及びドリフト管は、示され得る。マイクロ波出力導波管組立体130は、出力導波管H面ベンド132、出力導波管ダブルステップE面変圧器134、出力導波管窓135、出力導波管E面ベンド136、及び出力マイクロ波結合器または出力導波管E型ティー連結138のような様々な導波管構成要素を含み得る。マイクロ波出力導波管組立体130は、出力信号を特定の位置に対して方向付けて結合する。コレクタ組立体140は、コレクタ電極(図示せず)を含み得る。
【0025】
図4A〜
図4Hは、5つの空洞部SBKのマイクロ波空洞部組立体200における共振空洞部及びドリフト管空隙の図を示す。
図4Aは、マイクロ波空洞部組立体200における共振空洞部及びドリフト管空隙の(電子ビームの移動方向に見た)斜視図を示し、
図4Bは上面図を示し、
図4Cは側面図を示し、
図4Hは正面図を示す。
図4Dは、斜視断面図を示し、
図4Eは、yーz面においてマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿って示された断面を備えたマイクロ波空洞部組立体200における共振空洞部及びドリフト管空隙の側部断面図を示す。
図4Fは、斜視断面図を示し、
図4Gはx−z面においてマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿って示された断面を備えたマイクロ波空洞部組立体200における共振空洞部及びドリフト管空隙の上部断面図を示す。
【0026】
マイクロ波空洞部組立体200の構造は、電子ビーム及びRF信号のための導波管として機能する。マイクロ波空洞部組立体200の構造によって形成される空洞部及び空隙は、電子ビーム及びRF入力信号を増幅されたRF出力信号へと変換するために用いられる定常波及び共振周波数を生成するための特徴部を提供する。マイクロ波空洞部組立体200は、管のドリフト管領域220においてドリフト管区分230A〜Fによって結合された共振空洞部210を含む。クライストロンにおける共振空洞部210及びドリフト管220は、適した高い電気導電性及び高い熱伝導性材料で製造されてよく、これはたとえば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、またはセラミック母材複合材(CMC;たとえば、セラミックファイバー強化セラミック(CFRC)またはカーボンファイバー強化シリコンカーバイド(C/SiC))を含み得る。従来の円形ビームクライストロン(図示せず)において、共振空洞部及びドリフト管は、半径、直径、または半主軸を備えた円筒状、円環体、または楕円形状を有する。SBKにおいて、共振空洞部及びドリフト管は、実質的に直方体または矩形直方体形状または実質的に楕円筒形状を有することができる。電子ビームは、電子ビームがZ方向に(またはZ軸に沿い)移動しまたは伝播し、電子ビームの幅方向がx方向にあり(またはx軸に沿い)、電子ビームの薄さ方向がy方向にある(またはy軸に沿う)ように配向される。ドリフト管220のそれぞれの共振空洞部210A〜210E及びそれぞれのドリフト管区分230A〜230Fの空隙は、幅、高さ、及び長さを有する。本明細書において使用されるように、幅は、x軸202(または長軸)に沿った距離に関し、高さはy軸204(または短軸)に沿った距離に関し、長さはz軸206(または伝播軸)、電子ビームの伝播の軸、に沿った距離に関する。
【0027】
たとえば、それぞれの共振空洞部210A〜Eは、(空洞部210A〜Dのための)空洞部幅212及び(出力空洞部210Eのための)218、(空洞部210A〜Dのための)空洞部高さ214A、及び(出力空洞部210Eのための)214E、及び空洞部長さ216を有する。空洞部210A〜Dのための空洞部高さ214Aは、類似するように示されるが、それぞれの共振空洞部は、(共振空洞部のための所望の共振無線周波数場に基づいて)異なる空洞部高さを有することができる。出力空洞部幅218は、(空洞部210A〜Dのための)空洞部幅212とは異なり、出力空洞部高さ214Eは、(空洞部210A〜Dのための)空洞部高さ214Aとは異なる。空洞部210A〜Dのための空洞部幅212は、類似しつつも出力空洞部幅218とは異なるように示されるが、それぞれの共振空洞部は、(共振空洞部のための所望の共振無線周波数場の設計に基づいて)類似する、または異なる空洞部幅を有し得る。
【0028】
共振空洞部は、バーベル特徴部(またはダンベル特徴部246)または凹特徴部240のような共振空洞部の特性(たとえば、横モード、電子ビーム、またはRF信号の特性)を変化させるための様々な特徴部を有し得る。バーベル特徴部(またはバーベル構造)を備えた共振空洞部は、バーベル空洞部(バーベル型空洞部、ダンベル空洞部、またはダンベル型空洞部)と称され得る。バーベル空洞部は、バーベル空洞部にわずかな変化を有し得るダンベル空洞部またはHブロック空洞部と称され得る。バーベル特徴部は、電子ビームの幅に亘り顕著に変化しないRF場を生成することによって平らな電磁場の形状を向上し得る。バーベル特徴部は、(バーベルの内側の)内部空洞部幅211、(空洞部210A〜Dのための)バーベル幅213、または(出力空洞部210Eのための)出力空洞部バーベル幅213E及び(空洞部210A〜Cのための)バーベル高さ215、(空洞部210Dのための)第4の空洞部バーベル高さ215D、または(出力空洞部210Eのための)出力空洞部バーベル高さ215Eを備えた共振空洞部をさらに画定し得る。空洞部210A〜Cのためのバーベル高さ215は、類似するように示されるが、それぞれの共振空洞部は異なるバーベル高さを有し得る。出力空洞部バーベル幅213Eは、(空洞部210A〜Dのための)バーベル幅213とは異なり、第4の空洞部バーベル高さ215D及び出力空洞部バーベル高さ215Eは、(空洞部210A〜Cのための)バーベル高さ215とは異なる。空洞部210A〜Cのためのバーベル215は類似し且つ第4の空洞部バーベル高さ215D及び出力空洞部バーベル高さ215E異なって示されるが、それぞれの共振空洞部は(所望の管特性に基づいて)異なる、または類似するバーベル幅を有し得る。
図4A〜9Jは、バーベル特徴部を備えた共振空洞部を示す。他の実施例において、共振空洞部は、規則的な直方体形状(すなわち、矩形ピルボックスまたは規則的な直方体空洞部)、溝付リッジ導波管、または交差開口空洞部のような他の形式のシートビーム型空洞部を有し得る。
【0029】
凹特徴部240(または凹構造)は共振空洞部における電磁場に対する電子ビームの結合を向上させ得る。凹特徴部は、空隙内への突出部に関する(たとえば、共振空洞部)。凹特徴部は、三角形、三角柱、または傾斜した円屋根形状(
図10Dの242)、または矩形もしくは矩形直方体形状(
図4E及び
図5Eの240)のような、異なる形状または構成を有し得る。凹特徴部の他の形状または構成が使用されてもよい。共振空洞部のそれぞれの側における凹特徴部の間の空隙の最も小さい、または最小の距離は、凹隙間長さ217と称される。概して、凹隙間長さ217は、空洞部長さ216より短い。
【0030】
ドリフト管領域220におけるドリフト管230A〜Fは、ドリフト管幅222、ドリフト管高さ224及びドリフト管領域長さ226を有する。共振空洞部210A〜Eの間、アノードと第1の共振空洞部(または入力共振空洞部または「集群化」空洞部)210Aとの間、最後の共振空洞部(または出力共振空洞部または「捕獲」空洞部または最後の共振空洞部)210Eとコレクタとの間のドリフト管領域は、それぞれドリフト管区分230A〜Fと称され得る。それぞれのドリフト管区分230A〜Fは、ドリフト管区分幅(または管区分幅)232A〜F、ドリフト管区分高さ(または管区分高さ)224、及びドリフト管区分空隙長さ(または管区分長さまたは管区分空隙長さ)236A〜Fを有する。従来、ドリフト管区分幅232A〜Fは、一様であり、それぞれのドリフト管区分230A〜Fにおいて類似し、全体としてドリフト管幅222と称され、ドリフト管区分高さ224は、一様であり、それぞれのドリフト管区分230A〜Fにおいて類似し、全体としてドリフト管高さ224と称される。ドリフト管区分幅232A〜F及びドリフト管区分高さ224は、内部壁またはドリフト管の構造によって定義される。z軸において、ドリフト管区分は、共振空洞部の空隙内へと延びる。ドリフト管区分空隙長さ236A〜Fは、共振空洞部内の点(たとえば、中間点)によって定義され得る。他の実施例(図示せず)において、ドリフト管区分空隙長さは、境界またはドリフト管区分と隣接する共振空洞部との間に切れ目によって定義され得る。共振空洞部の間のドリフト管区分230B〜Dは、類似する、または異なるドリフト管区分空隙高さ236B〜Dを有し得る。第4の共振空洞部と出力共振空洞部との間のドリフト管区分230Eは、出力信号のための電子ビームを減速するために調整(例えば短く)され得る。
【0031】
空洞部幅は、共振空洞部とドリフト管区分との間で空隙内に切れ目を形成するためにドリフト管区分幅とは異なる。実施例において、空洞部幅212または218は、ドリフト管区分幅232A〜Fより大きい。別の構成において、空洞部高さは、共振空洞部とドリフト管区分との間で空隙内に切れ目を形成するためにドリフト管区分高さとは異なる。実施例において、空洞部高さ214A及び214Eは、ドリフト管区分高さ224より高い。いくつかの実施例において、空洞部高さは、ドリフト管区分高さの距離の2倍である。
【0032】
空洞部は、z方向において導波管の端部に構造(たとえば、共振空洞部、またはドリフト管区分)を配置することによって形成され得るものであり、これは、特定の固有振動数において特定の固有モード(すなわち、共振周波数)を支持する構造に至る。振動システムの固有モード(または通常モード)は、システムの全ての部品が同じ周波数及び固定された位相関係で正弦波的に移動する運動のパターンである。固有周波数(または振動の共振周波数)は固有モードが生じる周波数である。クライストロンのような多くの真空電子装置は、電子ビームと相互作用する電磁モード(または横モード、伝搬モード、または固有モード)を有することによって動作する。矩形導波管及び空洞部(すなわち、中空矩形構造)において、矩形モード数は、TE
mnまたはTM
mn、及びTE
mnpまたはTM
mnpのようなモード形式に取り付けられた2または3つの添え数字によって指定され、ここでmは導波管の幅に亘る半波パターンの数であり、nは導波管の高さに亘る半波パターンの数であり、pは空洞部の長さに亘る半波パターンの数である。
【0033】
横モードは、横モード相互作用を強化するための方法で形状化された構造を通して電子ビームを通すことによってたびたび生じる電子ビームと相互作用する。相互作用は、電子ビームに沿った個別の位置または構造の全体体積を通して実行し得る。変化または強化は、特定の方法において電子ビームと相互作用するための壁または構造の形状化によって生成される。
【0034】
概して、共振空洞部及びドリフト管、特に共振空洞部は、所望の利得及び帯域幅を試行して得るために共振空洞部の共振周波数を調整することによってクライストロンの利得または帯域幅を増加させるように設計される。たびたび、収束は、TM
110モード(または共振空洞部の動作モードまたは主モード)上である。他のモードは、真空電子装置(たとえば、クライストロン)内にも存在し得る。SBKはたびたび矩形式形状に基づくため、矩形導波管構造内の伝播モードは、横電気(TE)及び横磁性(TM)モードに関して表され得る。矩形空洞部において、TE
mnp及びTE
mnpモードのための共振周波数は、数式1によって近似される。
数式1
【0035】
ここでm、n、及びpは、非負整数であり、m、n、及びpの少なくとも2つは、正の整数(すなわち、m=0、1、2、...、n=0、1、2、...、p=1、2、..、ここで、m及びnはTEモードにおいて同時に共に0とはなり得ず、または、TMモードにおいてm=1、2、...、n=1、2、...、及びp=0、1、2...)であり、指標m、n、及びpは、導波管がサポートするモード場構造に関し、μは媒体または材料(たとえば、空洞部の体積)の複合透磁率を示し、εは、媒体または材料の複合誘電率を示し、「a」は空隙または空洞部の幅(または幅広い方向)を示し、「b」は空隙または空洞部の高さ(または狭い方向)を示し、「d」はz方向に形成された空隙または空洞部の長さを示す。透磁率、μはそれ自体の内部で磁場の構成を支持するための材料の能力の計測値である。誘電率、εは、媒体において電場を形成するときに引き起こされる抵抗の計測値である。数式1は、矩形導波管構造において共振空洞部及びドリフト管が開口部(且つ場合により特徴部)を有するため、共振空洞部及びドリフト管において共振周波数を補正係数で近似するために使用され得る。補正係数は、構造のシミュレーションによって決定されて良い。
【0036】
電磁波(または横モード)は、周波数(またはモード周波数)が、カットオフ周波数と称される波伝播のための下方閾値周波数または最小周波数を超えるときに伝播する。電磁モードは、電磁モードが導波管(たとえば、2つの共振空洞部を接続するドリフト管区分)内の伝播を許されるとき、「捕捉モード」と称される「捕捉」となり得る。ドリフト管区分(または他の導波管特徴部)が、電磁モードが伝播するのを防ぐとき、電磁モードはカットオフである。電磁モードの周波数がカットオフ周波数未満である場合、電磁モードは導波管構造内を伝播できず、カットオフと称される。TE
mn及びTM
mnモードのカットオフ周波数は、数式2によって示され得る。
数式2
ここで、m及びnは非負整数であり、m及びnの少なくとも1つは正の整数であり(すなわち、TEモードにおいてm及びnの1つのみがゼロとなり得るものであり、m及びnは共に0となり得ず、またはTMモードにおいてm=1、2、...、n=1、2、...、)、m及びnは導波管がサポートするモード場構造に関連し、μは媒体または材料の透磁率を示し、εは媒体または材料の誘電率を示し、「a」は空隙または空洞部の幅(または幅広い方向)を示し、「b」は空隙または空洞部の高さ(または狭い方向)を示す。数式2は、共振空洞部及びドリフト管におけるカットオフ周波数を、数式1との関係において先に説明したように、補正係数で近似するために使用され得る。
【0037】
共振空洞部は、「意図された」空洞部と称され得るものであり、ここでRF構造は電子ビームと相互作用させるために意図的に設計されて配置される。ドリフト管またはドリフト管区分は、「意図されない」空洞部と称され得るものであり、ここでドリフト管空洞部または空隙は共振空洞部(または「意図された」空洞部)の間で捕捉モード(または寄生モード)を生成する。明確にするため、電磁モードからの共振周波数及び振動は共振空洞部及びドリフト管区分の両方において生じ得るものであり、共振空洞部は、共振周波数または振動を強化するために「意図された」ものであり、ドリフト管区分は、導波管構造の「意図されない」結果である。このように、ドリフト管またはドリフト管区分(または導波管構造の他の部品)の構造の変更は、捕捉モードの共振周波数を変化し、振動を低下させ得る。管(または真空電子装置)の変化が意図された空洞部の機能及び性能にも影響し得るため、共振空洞部の機能及び性能における無視できる、または最小限の影響のいくつかの変化は実行により好適となり得る。ドリフト管またはドリフト管区分の設計は、共振空洞部の方法(すなわち、意図された空洞部周波数を重ねることによってクライストロンの利得の強化または最小化を試みる、共振空洞部法)とは反対の方法(すなわち、ドリフト管法)を取る。ドリフト管法のため、ドリフト管区分の空隙または空洞部によって生成された意図されない空洞部周波数は、周波数の間の離間により調整され、または捕捉モードまたは寄生モードのための利得を低く維持するために、周波数の重なりを最小化させる。電子ビームとの無視できない相互作用を有するモードのための負荷された帯域の和より高い周波数が分離される異なるドリフト管空洞部において、対応する共振モードのピークを有すると好適となり得る。
【0038】
多くのシートビーム装置において、再び数式1及び2を参照すると、ドリフト管区分(または共振空洞部を連結する導波管)において「b」は「a」よりかなり小さい。このように、n=0を有するTE場は、0より大きいnを有するTMモード及びTEモードよりかなり低いカットオフ周波数を有し得る。
【0039】
これに対して、中空環状構造は中空矩形構造に対する下方カットオフ周波数を有することができ、したがって従来の円形ビームクライストロンは不安定性が問題となる前にかなり高い動作周波数を要求し得る。多くの従来の円形ビームクライストロンにおいて、円筒状ドリフト管の狭い寸法(たとえば、半径または直径)は、これらの他のTE及びTMモードが伝播できないように多くの電磁モードをカットオフする。SBKのドリフト管区分の形状のため、いくつかの電磁モードは捕捉となり得るものであり、横電気モードが励起されてモード妨害が装置の電子ビームの意図された動作に変更するのに十分となる点まで大きくなる電子ビームのTEモード不安定性のような悪影響を生じさせ得る。TEモード不安定性は、円形ビーム相対クライストロン(たとえば、相対論的クライストロン増幅器)、または拡張相互作用クライストロンのような他の非シートビーム電子装置においても生じ得る。たとえば、円形ビーム相対クライストロンにおいて、TEモード伝播または不安定性に対する類似の試みが生じ、ドリフト管は共振空洞部の間のカットオフではない。TEモード伝播または不安定性(または類似の課題)は、シートビーム加速器においても存在し得る。
【0040】
SBKの開発は、矩形構造及び平らな電子ビームと関連付けられた電気的及び機械的課題によって阻害されてきた。導入されるとき、幅広いドリフト管区分が、捕捉モードが励起されるのを可能とするため、電気的な課題が生じ、これはTEモード不安定性を生じさせ得る。空洞部(たとえば、共振空洞部及びドリフト管区分)は、オーバーモード(たとえば、複数のモードが伝播するのを可能とする)であり得る。
【0041】
平らな電子ビームを生成する真空電子装置(たとえば、SBK)は、課題を有し得るものであるが、平らな電子ビームを生成するこれらの真空電子装置は、いくつかの顕著な利点も有する。たとえば、SBKは、ビームの幅を変化させることによって電流密度を増加させることなくビーム電流の増加を可能とし、カソード電流密度を低減させることを可能とする。電流密度を低下させると、収束磁場(またはB場)要求を低減することができ、カソード負荷を低減することができる。磁場の減少は、少なくとも部分的に下方空間電荷力によるものであり、実行をより容易とし得る永久磁石収束スキームを可能とする。平らな電子ビームのより大きい表面エリアは、温度の低下及び動力損失(たとえば、i
2R損失)のときの冷却要求の減少を支援することもできる。周波数でロールオフする動力は、円形ビームの場合、1/周波数((1/f)
2)の2乗のオーダーの代わりに、1/周波数(1/f)のオーダー(すなわち、おおよそ)であり、これはSBKが、約94GHzのW帯SBKの開発または約1THzのSBKの操作のような、より適した高周波設計(たとえば、75GHzを超える周波数)となることを可能とする。
【0042】
数式1及び2と共に、多くの他の関係、性能、または量も、電子ビームと相互作用するための固有モード空洞部支持の能力と同様に、空洞部を特徴付けるのを支援し得る。1つの関係は、数式3で与えられるような空洞部の全Q値である。
数式3
ここで、全Q値、Q
Tは、2つの要素を有することができ、ビーム負荷されたQ値、Q
b、これは電子ビームとの相互作用を構成し、負荷されたQ値、Q
l、これは空洞部のためのQ値であり、いかなる電子ビームも存在しないときに出る。負荷されたQ値、Q
lは、負荷されないQ値、Q
o及び外部のQ値、Q
eからの寄与を有する。
【0043】
所定のモードに対し、Q値は数式4に示されるように、一定期間に亘り消散される電力量と比較されるエネルギーを保存するための空洞部の性能の測定である。
数式4
ここでωは角周波数(2π×f;またはラジアル周波数またはラジアン周波数)空洞部内のW
Oは全時間平均エネルギー、様々なP
sは動力消散(たとえば、P
bはビーム負荷による動力消散、P
oは損失材料による動力消散、及びPeは空洞部からの(形状及び設計のため)エネルギー放射または伝播による動力消散)を示す。Q
bについて消散された動力は電子ビームとの結合からのものであり、Q
oについて消散された動力は抵抗性のまたは損失性の材料によるものであり、Q
eについて消散された動力は、空洞部から放射または伝播する動力によるものである。空洞部の説明を支援するのに有用な別の関係は、R/Qである(すなわち、R/Qは記号を示し、R割るQではない)。R/Qは、オーム(Ω)の単位により、所定の保存されたエネルギーの量の空洞部の加速電圧を示す。R/Qの物理的記載は、数式5に示されるように、空洞部の相互作用隙間に亘る電圧Vの2乗と空洞部において保存されたエネルギーWとの比、として記載され得るものである。
数式5
ここで、V
cは(空洞部における)相互作用隙間に亘る電圧であり、ω
0は共振周波数であり、
(
、
ここでLは空洞部または回路のインダクタンスであり、Cは空洞部または回路のキャパシタンスであり、)Wは空洞部における平均エネルギーである。クライストロンは通常いくつかの制限された帯域幅を有する共振、狭帯域装置である。クライストロンの帯域幅は、入力が目的の帯域に亘り出力回路を駆動するために十分な基本周波数RF電流(I
i)を生成するときの、主に出力回路のR/Qによって設定される。R/Qは、
としてさらに示され得る。
【0044】
構造における空洞部のインピーダンスZ
n(ω)は、数式6によって示されるように、周波数の関数として等式で示され得るものである。
数式6
ここで、
は第n空洞部のR/Qであり、Q
Tnは第n空洞部の全Q値であり、ω
0は第n空洞部の共振周波数であり、ωは装置の入力または動作周波数である。これらの空洞部パラメータにより、クライストロンは、電子ビームに関連したいくつかのさらなるパラメータまたは関係を概して用いる。電子ビームは電子銃電圧、V
0によって最初に加速され、V
0は所定のDC電流、I
0及び速度、u
0を有する。数式7で与えられるビーム伝播係数(または電子波数)β
e、数式8で与えられるプラズマ波数、β
p、及び数式9で与えられる低減されたプラズマ波数、β
qは、クライストロン装置設計及びクライストロン動作の理解において有用ないくつかのパラメータである。波数(wavenumber)(または波数(wave number))は、波の空間周波数である(たとえば、単一距離毎のサイクルまたは単一距離毎のラジアン)。
数式7
数式8
数式9
ここでω
pはプラズマ周波数であり、Rはプラズマ減少係数である。プラズマ減少係数は、集群の間の空間電荷の効果の減少におけるドリフト管壁の効果を考慮する。ほとんどの相互作用はドリフト管高さ(すなわち、ドリフト管寸法の間)において生じるため、幅広いシートビームにおいて、プラズマ減少係数Rは固定されたビーム幅のため、ドリフト管の幅におけるより小さな依存性を有しても良い。したがって、ドリフト管の幅は、固定されたビーム幅のため低減されたプラズマ波数、β
qの変更における小さなまたは無視できる効果のみにより変更され得る。
【0045】
隙間結合係数、M1は、数式10で与えられる。
数式10
ここでxは空洞部における隙間の距離(たとえば、共振空洞部またはドリフト管区分)であり、βは波数(wavenumber)(または波数(wave numberまたは軸方向の波数))であり、E
cは回路場(たとえば、回路によって生成された電場)であり、ζは回路場が存在するビームに沿った統合の経路である。隙間結合係数、M1(x、β
e)は、平均化された第m空洞部の隙間結合係数M(β
e)を与えるために電子ビームに亘り平均化されることが多い。第m空洞部は、第n空洞部に先行する空洞部に関する。
【0046】
クライストロン理論から、RF変調が電子ビームにおいて長手方向に(すなわち、z軸に沿って)配置され、相互作用が個別の領域に亘り実行され、ドリフト管がカットオフであるとき、2つの空洞部(たとえば、2つの共振空洞部)の間の相互コンダクタンス、g
mnは、数式11によって示され得るものであり、2つの空洞部の間の対応する電圧利得、G
mnは、数式12によって示され得るものである。
数式11
数式12
ここで、V
mは先行する空洞部mの隙間に亘る電圧であり、I
nは電圧V
mに起因する空洞部nにおける駆動電流であり、V
nは空洞部nの隙間に亘る電圧であり、l
mnは第m及び第n空洞部の間の長さ(すなわち、ドリフト管区分長さ)であり、V
oは電子銃電圧であり、I
oは電子銃電流であり、ω
qは低減されたプラズマ周波数であり、M
mは第m空洞部の隙間結合係数であり、M
nは第n空洞部の隙間結合係数である。長さ、l
mnは、電子ビーム及び結合に関連したパラメータによって設定されることが多い。
【0047】
これらの数式(たとえば、数式1〜12)は、可能なフィードフォワード電流経路を合計することによってN空洞部クライストロンの全利得を測定するために使用され得る。結果として生じる相対動力利得G(p)は、数式13として表現され得るものである。
数式13
ここでZ
1は第1の共振空洞部のインピーダンスであり、G
N1はN空洞部に亘る電圧利得であり、Q
e1は第1の共振空洞部の外部Q値であり、Q
eNは第N共振空洞部(または最後の共振空洞部)の外部Q値であり、(R/Q)
1は第1の空洞部のためのR/Qであり、(R/Q)
Nは第N空洞部(すなわち、最後の空洞部)のためのR/Qであり、Aは様々な回路及びビームパラメータを具現化する定数であり、pは相対動力利得の極(pole)であり、p
nはN空洞部の共振空洞部の極であり、z
nは利得関数がゼロへと向かう複素周波数であり、Q
e1は第1の共振空洞部の外部Q値であり、Q
eNは第N共振空洞部(または最後の共振空洞部)の外部Q値である。概して、単一の回転された共振空洞部を備える複合空洞部クライストロンの利得関数は、極(P)より2つ少ないゼロ(z)を有する。数式13において、N極は共振空洞部により、N−2ゼロは相互コンダクタンスに関連したフィードフォワード経路による。中間共振空洞部はクライストロンの利得及び帯域幅を増強するために用いられる。多くの場合、空洞部の共振周波数は所望の利得及び帯域幅を得るように調整される。概して、それぞれの共振空洞部はおおよそ10dB利得を増加させることができる。さらなる共振空洞部の付加は、特にそれらの共振周波数が重なるときにRF利得を増加させることができる。
【0048】
寄生モードまたは捕捉モードは、電子ビームにおけるモードと誘発された電流との間で正のフィードバックが生じるときに増大することができ、これは電子ビームにおいて不安定性を生じさせる。これらの電子ビーム不安定性は、銃電圧に依存し得るものであり(これは数式7〜9により示されたI
o、u
o、及び波数にも影響する)、負の全Q値、Q
Tに基づいて予想され得る。電子ビームによって駆動される寄生モードは、横モードが十分に負荷されないときに増大し得、真空電子装置(すなわち、管;たとえば、クライストロン)動作を混乱させ得る。少なくとも2つの要因が振動を駆動し、第1に、ビームがモードに動力を伝達し、第2に、抵抗性または損失性材料を通して動力が消失され、空洞部において放射されるエネルギーによる動力消失は、電子ビームから得られる動力より小さく、振動を増大させる。ゼロ未満の(Q
T<0)全Q値を得るため、Q
bは負である必要があり、全Q値の負の逆数が大きければ大きいほど自己励起がより容易に生じ得るものであり、これは、電子ビームの不安定性を生じさせる。関係、数式、および上述の記載から望ましくないモードが増大することから減少するように支援するために、少なくとも3つの方法が使用され得るものであり、これは第1に、電子ビームと寄生モードまたは捕捉モード(たとえば、Q
bの増加)との間の結合の減少、第2に、抵抗式損失(たとえば、Q
oの低下)の増加、第3に、モードが空洞部から動力を放射又は伝播(たとえば、Q
eの低下)するのを可能とすること、またはこれらの方法の組み合わせを含む。
【0049】
例示的拡張相互作用クライストロン
望ましくない振動は、SBKと共に多くの形式のクライストロン用途において生じる。特に1つのエリアは、拡張された相互作用空洞部または拡張された相互作用クライストロン(EIK)の場である。EIKは、電子位置線形衝突器のような、高周波数(たとえば、≧8GHz)、高動力(たとえば、≧75MW)、または高電圧(たとえば、≧500キロボルト(kV))の用途のため、高ピーク動力を提供できる。拡張相互作用出力空洞部は、複数の出力空洞部相互作用隙間に亘りRF電圧を分配するため、およびRF停止の回避のため、に使用され得る。空洞部のための最大電場、Eは、RF停止によって制限される。RF停止において、局所的に高い電場は、固体表面(たとえば、空洞部壁)からイオンの破砕及び場消滅を生じさせる。数式11のような記載された多くの数式及び関係は、複数の個別の隙間において実行するビームとモードとの間の相互作用に依存する。EIKは、複数の隙間が用いられるとき、または拡張領域に亘り相互作用が実行されるときにクライストロンにおいて生じる。上述の多くのパラメータは、分析EIK回路にも関連する。EIKにおいて一般的クライストロン理論は、相互作用が一般的領域に亘り一般化されたRF場に起こるところにあてはまる。こうしたRF場は、互いに近傍に配置された空洞部に対応する複数の個別の場領域であって良く、または結合された隙間構造の場は連続場であっても良い。EIKは大きな動力出力、幅広い周波数帯域幅、または高利得を実現するため、より高い周波数(たとえば、ミリメートル(mm)波回路)で用いられることが多い。これらの空洞部において、平均隙間結合係数、Mの大きさは、拡張空洞部の位相速度をビーム速度に同期することによって最適化され得るものであり、空洞部の安定性は、正のビームが負荷されたコンダクタンス、G
bに依存し得る。ビームにおける長手方向(z方向)の波のため、G
bは、数式14によって示され得るものである。
数式14
ここでβ
eは電子波数であり、β
qは低減されたプラズマ波数であり、V
oは電子銃電圧であり、I
oは電子銃電流であり、Mは平均隙間結合係数である。
【0050】
ビーム負荷されたQ値、Q
bは、数式15の関係を用いて計算され得る。
数式15
【0051】
ビーム負荷されたQ値、Q
bも、結合された動力、P
bを監視することによって所定のモードからビーム(すなわち、ビーム動力)へと、数式16を用いることによって直接的に計算され得る。
数式16
ここでJ
mは電子ビームのための電流密度であり、E
mは電子ビームのための電場であり、積分はビームの体積Vを取り、時間間隔、Tに亘り平均化される。
【0052】
例示的相対論的クライストロン増幅器
寄生モードが形成され得る別のクライストロン構造は、相対論的クライストロン増幅器(RKA)である。RKAは、相対電子銃によって生成される電子の流れが相対速度で移動する相対電子ビームを用いる。RKAは、高動力及び高利得を提供するため、概して高電流(たとえば、従来のABKのアンペア(A)範囲の代わりにキロアンペア(kA)範囲)を用いる。いくつかのRKAにおいて、より高いモード(またはより高いオーダーのモード)は、主に円形ドリフト管がカットオフではない中間空洞部の間で生じる。たとえば、寄生モードの励起は、正のフィードバックの形式である。寄生モードの励起を防ぐために、(たとえば、閾値電流がビーム電流より顕著に大きいときに)閾値電流が増加され得る。閾値電流は多数の中間共振空洞部と比例し得るものであり、したがってさらなる中間空洞部が寄生モードを励起する尤度を増加させる。寄生モードを低下させるために使用され得る1つの機構は、ドリフト管の壁内へ抵抗性または損失性の材料を配置または付加することであり、これは負荷されないQ値、Q
oを変化(たとえば、減少)させる。負荷されないQ値、Q
oの減少は、いくつかのRKAの性能を向上し得る寄生モードの抑制を支援し得る。
【0053】
例示的磁場収束
SBKにおいて、TE
m0モードは、ドリフト管において伝播することができ、ここでmはドリフト管の幅(X軸)に亘る半波パターンの数である。TEモードは、製造及び電荷密度変動において生じ得る、不整配列及び機械加工誤差(たとえば、共振空洞部の適合、または出力隙間インピーダンスとビームインピーダンスとの間の適合)のため励起され得る。これらのTEモードがドリフト管において動作する場合、モードがy方向における電場の成分を有するため、TEモードは通常、近くのドリフト管壁に向かってビームを跳ね返す課題を生じさせる。TE
m0モードの自己励起は、不安定性のため異なるSBK設計において試みられてきた。TEモードは、ドリフト管区分と共振空洞部との間の切れ目(たとえば、空隙特徴部の変化)のため捕捉され得る。周期永久磁石(PPM)は周期的に収束するが、尖った磁石(PCM)場及び揺れ動く場が電子ビームを収束及び搬送する試みにおいて用いられ、根本的に、これらの設計はTEモード不安定性を生成する場の大きさのため、不安定であり続けてきた。
【0054】
ソレノイド収束は、TEモード不安定性に対してより影響を受けにくいものとなり得る強いビームを形成するために使用され得る。上述の方法に加え、ソレノイド収束は、ビームの中心をy方向により小さく振動させることができ、数式16に先に示されたように、所定の横モードからビーム内へと動力結合を減少させることができる。しかしながら、電子銃が磁場(たとえば、B場)及びドリフト管から不整配列された場合、または不整配列されたとき、これは通常ある程度生じるが、実際において、電子ビームにおけるいくつかの振動はさらに生じ得るものであり、この振動はさらにTEモードに結合し得る。
【0055】
ドリフト管高さの変更またはチョーク空洞部の付加
共振空洞部及びドリフト管の様々な変化は捕捉モードに影響し得る。実施例において、ドリフト管高さの増加はいくつかのRF場が空洞部から放射するのを可能とし、外部Q値、Q
eを減少させる。しかしながら、様々なドリフト管区分を通してドリフト管高さを一様に変化させることは、共振空洞部の全Q値、Q
Tの減少及びR/Qの減少によって、意図された空洞部(または共振空洞部)の動作において効果を有することもができる。別の実施例において、ドリフト管区分における(y方向の)狭い壁における溝穴、またはドリフト管壁(たとえば、ドリフト管区分の溝付の狭い壁内へと挿入される抵抗性または損失性材料)のドリフト管におけるRF吸収器が捕捉モードを抑制するために使用されてもよい。ドリフト管壁における溝穴及びRF吸収器は、電子ビームとさらに相互作用する可能性があり、クライストロンの製造コストを増加させ得る。別の実施例において、(たとえば、ドリフト管の壁における)損失性の材料または4分の1(1/4)ラムダチョーク空洞部の使用が捕捉モードを抑制するために用いられても良い。1/4ラムダチョーク空洞部(またはチョーク連結部)は、ドリフト管区分の幅広い壁(たとえば、上方、下方または両方の壁)において共振空洞部の端部から(動作周波数の)4分の1波長の奇数倍に配置された狭い空洞部である。チョーク空洞部法は、調整も必要とされ得る空洞部の特別な設定を用い、チョーク空洞部の位置は、モード特有であり、製造の複雑さ及びコストを増加させ得る。構造に対する損失性の材料の挿入及び他のより複雑な変化は、また、特にクライストロンの周波数が増加され、クライストロンの特徴部がより小さくなるときに製造をさらに複雑且つ高コストとし得る。
【0056】
捕捉電磁モードの変化
増幅された信号における小さなまたは無視できる効果を備えた電子ビームと相互作用する捕捉電磁モードの効果を変更するため、少なくとも2つの異なる機構が使用され得る。意図された信号の増幅においてより大きな効果を有する他の機構が使用され得る。他の変化が増幅された信号においてより顕著な効果を有し得る一方で、いくつかの変化は増幅された信号(または動作周波数)において小さなまたは無視できる効果を有し得る。
【0057】
電子ビームと相互作用する捕捉電磁モードの効果を変更するための第1の方法は、機構に沿って複数の空洞部が形成されるときに有用となり得る。クライストロン理論及びより一般的に拡張された相互作用クライストロン理論にかなり類似して、電子ビーム経路に沿った空洞部の周波数は、異なる空洞部における電子ビームとRF場との間の相互作用において大きな効果を有し得る。形成される空洞部を操作することによって(たとえば、空洞部の寸法)、共振周波数は変化し得る。共振周波数の変化は、複数の空洞部が用いられるときに、利得と帯域幅との間の関係において顕著な効果を有することができる。異なる空洞部周波数は、電子ビームと電磁モードとの間の結合において効果を有することができる。特に、ドリフト管空洞部において、増加された帯域幅を犠牲にして、捕捉TEモードの利得を減少させると好適である。
【0058】
第2の方法は、少なくとも2つの対象(たとえば、切れ目)が構造に沿って配置されるときに形成される電磁場の操作を含み、これは空洞部(たとえば、ドリフト管区分)を形成する。構造の端部の間に形成されるこれらの構造または空洞部を操作することによって、形成された空洞部において保存されるエネルギーは、変えられ得る。工程の部分として、反射係数は、特定の横モードのための空洞部の共振周波数を決定すると共に、空洞部を形成するそれぞれの対象(たとえば、ドリフト管壁)からの所定の横モードのための周波数の関数として決定され得る。次いで、周波数の関数として反射係数を変更することによって、または空洞部の共振周波数を変化することによって、RF場が空洞部から放射するのを可能とするように、対象が変更され得るか、または対象の間における空洞部(たとえば、共振空洞部)が変更され得る。
【0059】
これらの技術は、概して真空電子装置または真空管に適用され得るが、示された実施例は、シートビームクライストロンのようなシートビーム装置のドリフト管において形成される捕捉モードに適用される。説明された技術、機構、および方法は、拡張相互作用クライストロン(EIK)及び相対論的クライストロン増幅器(RKA)のような他の真空電子装置に適用することもできる。
【0060】
ドリフト管における捕捉モードの周波数の変化
クライストロンは、その機能が空洞部の周波数に依存する狭帯域装置である。数式6、11及び12との関係において先に説明したように、装置利得(または導波管利得)、Gは、数式17によって示されるような信号経路に亘る空洞部インピーダンス、Z
n(ω)及びドリフト管区分相互コンダクタンス、g
mnの製品の和である。
数式17
ここで、ωは角周波数であり、V
inは装置の入力電圧であり、V
outは装置の出力電圧であり、nは空洞部の数であり、相互コンダクタンス、g
mnは数式11によって表され、インピーダンス、Z
n(ω)は数式6によって表され、電圧利得、G
mnは数式12によって表される。結果として生じる全動力利得は、数式13によって先に表された。分母多項式(たとえば、(p−p
1)...(p−p
N))は、所望の周波数応答を得るために調整される空洞部インピーダンスに依存する。クライストロンは、様々なフィードフォワード時間のため、有限ゼロを有する。単一調整された空洞部を備えた複数の空洞部クライストロンの一般的な利得関数において、クライストロンは極(p
N)より2つ少ないゼロ(たとえば、z
N-2)を有する。利得ピークは反対の極で生じ、利得凹部はゼロの反対で生じる。従来のクライストロン設計において、共振空洞部の共振周波数は、利得が目的の帯域内で完全に平らであるように調整される。利得がゼロ近傍で押し下げられるため、極配列は、通常ゼロが帯域の外側に動かされるか、または隣接した極(すなわち、極ゼロ相殺)によって相殺されるか、のいずれかを提供する。従来、所定の中間空洞部の数のため利得帯域幅トレードオフが生じる。たとえば、クライストロンが高い利得を有するとき、クライストロンは通常下方帯域幅を有する。クライストロンは、同期して調整され得るものであり、ここで全ての共振空洞部は同じ周波数またはかなり類似した周波数に調整される。同期調整は最大利得を生じさせるが、帯域幅はかなり小さくなり得る。クライストロン設計は共振空洞部の周波数を適切に調整、または離間することによって、広帯域(すなわち、幅広い帯域幅)のためさらに調整され得るものであり、これは利得をより低減させ得る。
【0061】
伝統的なクライストロン理論において、電子ビームとRF場との間の相互作用は、異なる空洞部に亘る個別の位置において生じる。数式12によって示されるように、空洞部において隙間に亘り生じる電圧(たとえば、V
n)は、空洞部インピーダンス、Z
n(ω)に依存する。共振において、空洞部インピーダンス、Z
nは高く、したがって、ビーム電流のこの周波数成分において誘発される電圧は高い。拡張相互作用クライストロン(EIK)において、相互作用は、多くの隙間に亘り、または拡張領域を通して生じる。意図されない空洞部は、ドリフト管がカットオフではないときに、2つの意図された空洞部の間のドリフト管区分において形成され得る。これらの意図されない空洞部は、「意図されたクライストロン」設計内で動作する「意図されないクライストロン」の考慮された部分となり得る。意図されないクライストロンは、多くの違いと同様に、従来のクライストロンと類似の複数の特性を有し得る。1つの違いは、意図されないクライストロンにおける電場、RF場、またはE場は、単に長手方向である(すなわち、z方向またはz軸に沿った)代わりに、(y軸に沿った)y方向の電子ビームにおいて相互作用し得る。この特性は、従来のクライストロンに用いられた分析を変更し得る。しかしながら、いくつかのコンセプト、関係、及び数式は、なお保持されて使用され得る。たとえば、意図されない空洞部は(意図された空洞部と同様に)、強い共振周波数を有し得る。空洞部インピーダンスは、これらの共振近傍において高い(数式12参照)。強い相互作用は、電子ビームの運動が空洞部共振近傍で重なる周波数成分を有するときに、空洞部の電子ビームとRF場との間で生じる。したがって、電子ビームとドリフト管区分との間の効果を最小化するため、意図されない空洞部周波数は、それらの共振が重ならないように調整される。したがって、ドリフト管設計(またはドリフト管方法)は、従来の共振空洞部設計とは反対の方法(すなわち、共振空洞部方法)を取り、これは強化し、または利得を最大化する。ドリフト管設計は、捕捉または寄生モードのために利得を低く維持するため、周波数(たとえば、共振周波数及びビーム振動周波数)の重なりを最小化するように意図されない空洞部周波数を調整する。
【0062】
残念ながら、ドリフト管区分の類似の設計のため、多くの従来のシートビームクライストロン設計は、類似する周波数へと調整される多くの意図されない空洞部を有し、これは捕捉または寄生モードを生じさせる。共振空洞部の間の距離を画定するドリフト管区分長さ(たとえば、236A〜F)のようなドリフト管区分のいくつかのパラメータは、他のパラメータによって設定され、または共振空洞部の性能または設計に影響することが多い。したがって、多くのドリフト管区分は、類似の長さまたはこの長さの倍数を有することが多い。意図された空洞部または共振空洞部の空洞部高さ(たとえば、214Aまたは214E)は、動作モードの周波数が類似するため類似することが多い。空洞部高さの変化は、動作モードの周波数において、捕捉または寄生モードの周波数におけるより、かなり大きな効果を有し、これは以下に提供されるシミュレーションデータによって立証される。したがって、同じ周波数近くで調整された複数の意図されない空洞部(すなわち、ドリフト管区分)により、利得及び相互作用は高い。ドリフト管区分の共振周波数を変化させるための1つの方法は、ドリフト管区分幅を変化させることであり、これは意図されたクライストロンのための動作モードの他の重要なパラメータまたは周波数においてほとんど効果は無いが、SBKのような真空電子装置における横電気(TE)モード不安定性の影響を減少、最小化、または除外し得る。
【0063】
図5A〜5Jは、ドリフト管区分幅を変更する5つの空洞部SBKのマイクロ波空洞部組立体250における共振空洞部及びドリフト管空隙の実施形態の図を示す。
図5A〜5Jは、基本設計として、先に
図4A〜4Hに示された5つの空洞部SBKを用いたドリフト管区分幅に対する様々な変化を示す。マイクロ波空洞部組立体250における共振空洞部及びドリフト管空隙の、
図5Aは斜視図を示し、
図5Bは上面図を示し、
図5Cは側面図を示し、
図5Hは(電子ビームの移動方向に見て)正面図を示す。y−z面においてマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿った断面を備えた、マイクロ波空洞部組立体250における共振空洞部及びドリフト管空隙の、
図5Dは斜視断面図を示し、
図5Eは、側部断面図を示す。x−z面においてマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿った断面を備えた、マイクロ波空洞部組立体250における共振空洞部及びドリフト管空隙の、
図5Fは斜視断面図を示し、
図5Gは、上部断面図を示す。
【0064】
マイクロ波空洞部250の構造は、電子ビーム及びRF信号のための導波管として機能する。マイクロ波空洞部組立体250の構造によって形成された空洞部及び空隙は、電子ビーム及びRF入力信号を増幅されたRF出力信号へと変換するために用いられる定常波及び共振周波数を生成するための機能を提供する。マイクロ波空洞部組立体250は、管のドリフト管領域270においてドリフト管区分280A〜Fによって結合される共振空洞部260を含む。クライストロンにおける共振空洞部260及びドリフト管270は、マイクロ波空洞部組立体200との関係において先に説明したような材料及び類似する形状により製造されて良い。ドリフト管270のそれぞれの共振空洞部260A〜E及びそれぞれのドリフト管区分280A〜Fの空隙は、幅、高さ、及び長さを有する。
【0065】
たとえば、それぞれの共振空洞部260A〜Eは(空洞部260A〜Dのための)空洞部幅262及び(出力空洞部260Eのための)268と、空洞部高さ264と、(凹特徴部を備えた空洞部260A及び260Eのための)空洞部長さ266A及び(凹特徴部のない空洞部260B〜Dのための)260Dと、を有する。共振空洞部が凹特徴部を有するとき、共振空洞部260B〜Dは、また、凹隙間長さ267有し、これは凹特徴部の間の空隙の距離である。空洞部260A〜Dのための空洞部高さ264は類似するように示されるが、それぞれの共振空洞部は、(共振空洞部のための所望の共振無線周波数場に基づいて)異なる空洞部高さを有し得る。出力空洞部幅268は、(空洞部260A〜Dのための)空洞部幅262とは異なりまたは類似し得るものであり、空洞部高さ264は空洞部260A〜Eにおいて互いに異なりまたは類似し得る)。
図5D〜5Eは類似するような空洞部高さ264を示す。空洞部260A〜Dのための空洞部幅262は出力空洞部幅268と類似するように且つ異なるように示されるが、それぞれの共振空洞部は、(共振空洞部のための所望の共振無線周波数場の設計に基づいて)類似するまたは異なる空洞部幅を有し得る。概して、SBKにおいて、空洞部幅262または268は空洞部高さ264の距離の少なくとも2倍である。いくつかの実施例において、空洞部幅は、少なくとも空洞部高さの距離の4倍または10倍となり得る。
【0066】
マイクロ波空洞部組立体250はバーベル特徴部247、凹特徴部240、及び非凹特徴部244(すなわち、凹特徴部のない空洞部)を備えて示される。バーベル特徴部は、(バーベルの内側の)内部空洞部幅261と、(空洞部260A〜Dのための)バーベル幅263または(出力空洞部260Eのための)出力空洞部バーベル幅263Eと、(空洞部260Aのための)入力空洞部バーベル高さ265Aと、(空洞部260Bのための)第2の空洞部バーベル高さ265Bと、(空洞部260Cのための)第3の空洞部バーベル高さ265Cと、(空洞部260Dのための)第4の空洞部バーベル高さ265Dまたは(出力空洞部260Eのための)出力空洞部バーベル高さ265Eと、を有し得る。空洞部260A〜Eのためのバーベル高さ265A〜Fは、他の実施例において異なるように示されるが(図示せず)、バーベル高さは、(所望の装置特性に基づいて)共振空洞部とは類似しまたは異なり得る。
【0067】
ドリフト管280A〜Fは、ドリフト管領域270において、様々なドリフト管幅282A〜Fと、ドリフト管高さ274と、ドリフト管領域長さ276と、を有する。共振空洞部260A〜Eの間の、アノードと第1の共振空洞部(または入力共振空洞部または「集群化」空洞部)260Aとの間の、及び、最後の共振空洞部(または出力共振空洞部または「捕獲」空洞部または最後の共振空洞部)260Eとコレクタとの間のドリフト管領域は、それぞれドリフト管区分230A〜Fと称され得る。それぞれのドリフト管区分230A〜Fは、ドリフト管区分幅(または管区分幅)282A〜Fと、ドリフト管区分高さ(または管区分高さ)274と、ドリフト管区分空隙長さ(または管区分長さまたは管区分空隙長さ)286A〜Fと、を有する。ドリフト管区分高さ274は、一様であり、ドリフト管区分230A〜Fのそれぞれと類似し、全体としてドリフト管高さ274と称される。他の実施例において(図示せず)、ドリフト管高さは、設計パラメータに基づいて互いに変更して良い。ドリフト管区分幅282A〜F及びドリフト管区分高さ274は、ドリフト管の内部壁または構造によって定義される。概して、SBKにおいて、ドリフト管区分幅282A〜Fは、ドリフト管区分高さ274の距離の少なくとも2倍である。いくつかの実施例において、ドリフト管区分幅は、ドリフト管区分高さの距離の少なくとも4倍または10倍であり得る。たとえば、ドリフト管区分高さが10mmである場合、ドリフト管区分幅は、20mm(ドリフト管区分高さの少なくとも2倍)、40mm(ドリフト管区分高さの少なくとも4倍)、または100mm(ドリフト管区分高さの少なくとも10倍)に、等しくまたは超え得る。
【0068】
z軸において、ドリフト管区分は、共振空洞部の空隙内へと延びる。ドリフト管区分空隙長さ286A〜Fは、共振空洞部内の点(たとえば、中間点)により定義され得る。他の実施例(図示せず)において、ドリフト管区分空隙長さは、ドリフト管区分と隣接する共振空洞部との間の境界または切れ目によって定義され得る。共振空洞部の間のドリフト管区分280B〜Dは、類似したまたは異なるドリフト管区分空隙高さ286B〜Dを有し得る。第4の共振空洞部(最後から2番目の空洞部または最後から2番目の共振空洞部と称される第2から最後の空洞部)と出力共振空洞部(または最後の共振空洞部)との間のドリフト管区分280Eは、出力信号のための電子ビームを減速させるために調整(たとえば、短く)され得る。
【0069】
空洞部幅262または268は、共振空洞部260A〜Eとドリフト管区分280A〜Fとの間の空隙において切れ目を形成するため、ドリフト管区分幅282A〜Fとは異なる。実施例において、空洞部幅262または268はドリフト管区分幅282A〜Fより大きい。別の構成において、空洞部高さは、共振空洞部とドリフト管区分との間の空隙において切れ目を形成するため、ドリフト管区分高さとは異なる。実施例において、空洞部高さ264はドリフト管区分高さ274より高い。いくつかの実施例において、空洞部高さはドリフト管区分高さの距離の2倍である。
【0070】
ドリフト管区分幅232A〜Fを実質的に変化させるため、ドリフト管区分のRF場の共振周波数は、互いに異なり、共振空洞部の意図された周波数、利得、または帯域幅における最小限の効果で捕捉または寄生モードの利得を減少させる。ドリフト管区分幅の変化は、横モードのいくつかのRF場が空洞部から放射するのを可能とし、こうして外部Q値を減少させる。1つの実施例において、少なくとも2つのドリフト管区分幅(たとえば、282A及び282B、282B及び282C、282C及び282D、または282D及び282E)は、互いに実質的に異なり得る。実質的な変化または違いは、特定の要因により真空電子装置の製作公差を超える違いである(たとえば、製作公差の3または5倍)。概して、製作公差の超過は、装置を所定の仕様から外れて動作させる(たとえば、不適切に動作する)。互いに実質的な変化または違いを備えた2つの寸法は、互いに類似しない2つの寸法である(すなわち、製作公差の外側、または意図的に異なる)。
【0071】
構成において、少なくとも1つのドリフト管区分幅(たとえば、282C)は、別のドリフト管区分幅(たとえば、282D)より少なくとも0.3%大きい。1つの実施例において、異なるドリフト管区分幅を備えたドリフト管区分は、互いに隣接する(1つの共振空洞部により分離される)。たとえば、おおよそ2.856GHzで動作するように設計された5つの空洞部のS帯域SBKにおいて、共振空洞部及びドリフト管区分は、2.856GHz入力信号を増幅するように構成されて良い。ドリフト管区分幅は、共振空洞部1から5、260A〜Eの間で160mmから150mmへと変化し得る。ドリフト管区分または第1のドリフト管区分(たとえば、280D)が153mmの幅(たとえば、282D)を有する場合、次いで別のドリフト管区分または第2のドリフト管区分(たとえば、280C)は、153mmより少なくとも0.46mm(0.3%)大きい幅(たとえば、282C)を有する(153.46mmまたはそれより大きい幅)。製作公差が±76.2μm(152.4μmの全許容差)である場合、次いで少なくとも0.46mmは製作公差の(たとえば、特定の要因の)少なくとも3倍である。別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分幅(たとえば、282C)は、別のドリフト管区分幅(たとえば、282D)より少なくとも2%大きく、したがって、実施例に適用され、他のドリフト管区分幅(たとえば、282C)は少なくとも156mmである。別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分幅(たとえば、282C)は別のドリフト管区分幅(たとえば、282D)の2倍より小さく、したがって、実施例に適用され、他のドリフト管区分幅(たとえば、282C)は306mmより小さい。別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分幅(たとえば、282C)は、別のドリフト管区分幅(たとえば、282D)の1.5倍より小さく、したがって、実施例に適用され、他のドリフト管区分幅(たとえば、282C)は、229.5mmより小さい。
【0072】
中空管構造が第3のドリフト管区分(たとえば、280B)を含む実施例において、第3のドリフト管区分幅(たとえば、282B)は、第1のドリフト管区分幅(たとえば、282D)及び第2のドリフト管区分幅(たとえば、282C)とは実質的に異なり得るものである(たとえば、少なくとも0.3%)。第3のドリフト管区分は、第1のドリフト管区分または第2のドリフト管区分から共振空洞部(たとえば、第4の共振空洞部260B)によって分離され得る。
【0073】
別の構成において、第1のドリフト管区分幅(たとえば、282C)を備えた第1のドリフト管区分(たとえば、280C)は、第1のドリフト共振RF場を生成するように構成され、ドリフト管区分幅(たとえば、282D)を備えた第2のドリフト管区分(たとえば、280D)は、第2のドリフト共振RF場を生成するように構成され、第1のドリフト共振RF場のピークは第2のドリフト共振RF場のピークから第1のドリフト共振RF場のピークの少なくとも0.6%変化する。ここで、2つのドリフト管区分におけるRF場は、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い横モードのための同じ指標m、n、及びp(すなわち、同じモード)を有する。ドリフト共振RF場ピークの違いは、TEモード不安定性のような、モード不安定性に影響する横モードに適用できる。たとえば、おおよそ2.856GHzで動作するように設計されたS帯SBKの実施例を用いると、(他の寸法、パラメータ、及び特徴部が共振空洞部とドリフト管区分との間において類似するとき、)153.3mmのドリフト管幅282Dを備えたドリフト管区分280Dは、TE
302モードのための4.025GHzのピークドリフト共振RF場を生成するように構成され、150mmのドリフト管区分幅282Eを備えたドリフト管区分280Eは、TE
302モードのための4.072GHzのピークドリフト共振RF場を生成するように構成される。ドリフト管幅の変化によるピークドリフト共振RF場の間の違いは47MHzであり、これは4.025GHzのピークドリフト共振RF場の1.17%であり、これは第1のドリフト共振RF場のピークの少なくとも0.6%(すなわち、24MHz)である。別の実施例において、第1のドリフト共振RF場のピークは、第2のドリフト共振RF場のピークから第1のドリフト共振RF場のピークの少なくとも0.25%変化する。実施例にそのように適用し、150mmのドリフト管区分幅282EがTE
302モードのための4.072GHzのピークドリフト共振RF場を有する場合、ドリフト管区分幅282Dは、ドリフト管区分280DのTE302モードのためのピークドリフト共振RF場が、4.072GHzから少なくとも10MHz(すなわち、0.25%)異なるように選択される(すなわち、>4.082GHzまたは<4.052GHz)。別の実施例において、第1のドリフト共振RF場のピークは、第2のドリフト共振RF場のピークから第1のドリフト共振RF場のピークの少なくとも1%変化する。実施例にそのように適用すると、150mmのドリフト管区分幅282EがTE
302モードのための4.072GHzのピークドリフト共振RF場を有する場合、ドリフト管区分幅282Dはドリフト管区分280EのTE
302モードのためのピークドリフト共振RF場が4.072GHzから少なくとも41MHz(すなわち、1%)異なるように選択される(すなわち、>4.113GHzまたは<4.031GHz)。
【0074】
中空管構造が第3のドリフト管区分(たとえば、280B)を含む実施例において、第3のドリフト管区分は、第3のドリフト共振周波数を生成するように構成され得る。第3のドリフト共振周波数は、第1のドリフト共振周波数から第3のドリフト共振周波数の少なくとも0.7%変化し、且つ第2のドリフト共振周波数から第3のドリフト共振周波数の少なくとも0.6%変化し得る。
【0075】
ピークドリフト共振RF場の間の違いは、記号的にさらに示され得る。数式1は閉止された矩形空洞部の横モードのための共振周波数を決定するために主に用いられるが、数式1はドリフト管区分の横モードのための共振周波数をいくつかの変更及び補正を備えた隣接する共振空洞部の開放端で近似するために使用されてもよい。それぞれのドリフト管区分の横モードのためのドリフト共振周波数は数式1で近似され得るものであり、ドリフト共振周波数のピークの間のドリフト共振周波数差が生成され得る。ドリフト管区分の間のドリフト管区分幅の変化は、ドリフト共振周波数差を生成し得る。実施例において、ドリフト共振周波数差は、それぞれの横モードにおいて少なくとも0.25%である。別の実施例において、ドリフト共振周波数差はそれぞれの横モードにおいて少なくとも0.5%である。別の実施例において、ドリフト共振周波数差はそれぞれの横モードにおいて少なくとも1%である。
【0076】
先に示されて説明されたように、ドリフト管区分は、ドリフト管区分長さのそれぞれの端部において開口部を有し、したがって、数式1において「d」によって示されるz方向に形成されたドリフト管区分の空隙または空洞部の長さは近似され、ドリフト管区分のそれぞれの端部の共振空洞部の形状または特徴部(凹特徴部またはバーベル特徴部)のために、補正係数が付加される。たとえば、第1のドリフト管区分の横モードのための第1のドリフト共振周波数が、数式18で近似され、第2のドリフト管区分の横モードのための第2のドリフト共振周波数が数式19により示され、デルタドリフト共振周波数が、数式20により示される。
数式18
数式19
数式20
ここでμ
1は複合透磁率であり、ε
1は第1のドリフト管区分における材料の体積の複合磁性誘電率であり、w
1はドリフト管区分幅(たとえば、282D)であり、h
1はドリフト管区分高さ(たとえば、274)であり、l
1は第1のドリフト管区分のドリフト管区分長さ(たとえば、286D)、第1の共振空洞部の空洞部高さ(たとえば、264)の半分、第2の共振空洞部(たとえば、264)の空洞部高さの半分、並びに第1の共振空洞部、第1のドリフト管区分、及び第2の共振空洞部の特徴部のための補正係数の近似値であり、m、n、及びpは横モードを示す非負整数であり、m及びnは共にゼロではなく、μ
2は複合透磁率であり、ε
2は第2のドリフト管区分における材料の体積の複合磁性誘電率であり、w
2はドリフト管区分幅(たとえば、282E)であり、h2はドリフト管区分高さ(たとえば、274)であり、l2は第2のドリフト管区分のドリフト管区分長さ(たとえば、286E)、第2の共振空洞部の空洞部高さ(たとえば、264)の半分、第3の共振空洞部の空洞部高さ(たとえば、264)の半分、並びに第2の共振空洞部、第2のドリフト管区分、及び第3の共振空洞部の特徴部のための補正係数の近似値である。
【0077】
第1及び第2のドリフト管区分のための特徴部及び形状(すなわち、数式18及び19のパラメータ)がドリフト管区分幅を除いて類似する場合、数式18〜19は数式21〜22によってそれぞれ示され得る。
数式21
数式22
【0078】
ここで、μは複合透磁率であり、εはドリフト管区分における材料の体積の複合誘電率であり、w
1は第1のドリフト管区分のドリフト管区分幅(たとえば、282D)であり、w
2は第2のドリフト管区分のドリフト管区分幅(たとえば、282E)であり、hはドリフト管区分高さ(たとえば、274)であり、lは第1のドリフト管区分のドリフト管区分のドリフト管区分長さ(たとえば、286B〜D)、ドリフト管区分のそれぞれの端部における共振空洞部の空洞部高さ(たとえば、264)の半分、並びにドリフト管区分及びドリフト管区分のそれぞれの端部における共振空洞部の特徴部のための補正係数の近似値であり、m、n、及びpは横モードを示す非負整数であり、m及びnは共にゼロではない。
【0079】
別の構成において、第1のドリフト管区分(たとえば、280D)は、第1のドリフト帯域幅を備えた第1のドリフト共振RF場を生成するように構成され、第2のドリフト管区分(たとえば、280E)は第2のドリフト帯域幅を備えた第2のドリフト共振RF場を生成するように構成され、第1のドリフト共振RF場のピークが、第2のドリフト共振RF場のピークから、第1のドリフト負荷された帯域幅及び第2のドリフト負荷された帯域幅の和の少なくとも1.5倍変化し、ここで、ドリフト負荷された帯域幅は、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い横モードにおいて、共振周波数割る負荷されたQ値(f
O,mnp/Q
1)で与えられる。たとえば、おおよそ2.856GHzで動作するように設計されたS帯SBKの実施例を用いると、153.3mmのドリフト管区分幅282Dを備えたドリフト管区分280Dは、TE
302モードのための4.025GHzのピークドリフト共振RF場と、4.5MHzのドリフト負荷された帯域幅を与える900の負荷されたQ値と、を生成するように構成され、150mmのドリフト管区分幅282Eを備えたドリフト管区分280Eは、(他の寸法、パラメータ、及び特徴部が共振空洞部とドリフト管区分との間で類似するとき、)TE
302モードのための4.071GHzのピークドリフト共振RF場と、4.8MHzのドリフト負荷された帯域幅を与える840の負荷されたQ値と、を生成するように構成される。2つの共振周波数のピーク間の差は、46MHz(すなわち、4.071GHz〜4.025GHz)であり、これは13.95MHzより大きい(すなわち、2つのドリフト負荷された帯域和の1.5倍、1.5×(4.5MHz+4.8MHz))。
【0080】
図5A〜5Hは、ドリフト管区分280A、280E、及び280Fが類似する幅を有する、ドリフト管区分に沿って一様な幅(たとえば、最小ドリフト管幅272)を備えた直方体形状を有するとき、ドリフト管区分280A〜Fを示し、ドリフト管区分280B〜Dは、ドリフト管区分280Bから280Eへの減少ステップパターンにおける徐々により大きい幅を有する。他の実施例において、ドリフト管区分は、異なる形状(たとえば、非一様)とy方向及びz方向の両方における幅構成とを有し得る。
図5I〜5Jは、z軸に沿った変化を示す。
図5Iは、上部断面図から見るときに実質的に台形または線形形状を形成するドリフト区分290A〜Fにおけるドリフト管区分幅282A〜Fのテーパを示す。
図5Jは、上部断面図から見るときに、二重階段形状を形成するドリフト区分291A〜Fにおけるドリフト管区分幅282A〜Fのステップ機能部を示す。指数関数形状、多項式形状またはドリフト管区分の幅に沿った異なる形状の区分的組み合わせのような、他の機能部及び形状が使用されても良い。
図6A〜6Dは、2次、3次、4次、及び5次多項式の実施例を、それぞれ示す。他の次数の多項式が使用されても良い。
図6Eは、例示的指数関数を示す。他の連続関数が使用されても良い。
図6Fは指数関数を備えた線形関数の区分的組み合わせの実施例を示す。他の区分的組み合わせが使用されても良い。
【0081】
1つの構成において、少なくとも1つのドリフト管区分(たとえば、290B〜Dまたは291B〜D)は、互いに実質的に異なる少なくとも2つのドリフト管区分幅(たとえば、282B〜E)を有する。1つの実施例において、それぞれのドリフト管区分幅(たとえば、282A〜F)は、ドリフト管区分高さ(たとえば、274)の少なくとも2倍である。別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分幅(たとえば、282B〜E)はドリフト管区分内の他のドリフト管区分幅(たとえば、282B〜E)とは少なくとも0.3%異なる(たとえば、より大きい)。
【0082】
図7は、共振空洞部(または共振回路空洞部または共振回路空隙)310A〜Eとドリフト管空隙320または320A〜F、5つの空洞部SBK、を含むマイクロ波空洞部302を示す。
図8AはSBKのマイクロ波空洞部組立体及び磁気回路の斜視図を示し、
図8Bは、マイクロ波空洞部組立体120における共振空洞部310及びドリフト管空隙320と、y−z面におけるマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿って取られた断面を備えた磁気回路の斜視断面図を示す。
図9は、共振空洞部構造312A〜E及びマイクロ波空洞部組立体のドリフト管周りに巻かれたソレノイドコイル344A〜Fを示す。先に説明したように、マイクロ波空洞部組立体120は、アノード端ポールピース(プレート)332(入力ボックスポールピースまたは電子銃側ポールピースとも称される)を備えた磁気リターン回路またはボックス122と、コレクタ端ポールピース(プレート)336(出力ボックスポールピースまたはコレクタ側ポールピースとも称される)と、マイクロ波空洞部組立体と熱交換器との間で冷媒を循環させるための冷却インタフェースまたは冷却アダプタ340と、ソレノイドコイルコネクタ342と、を含む。磁気リターンボックス122は出力導波管348の開口部をさらに提供し得る。アノード端ポールピース332はアノード334を含み得る。電子銃は、アノード334を介してマイクロ波空洞部組立体(すなわち、中空管構造はドリフト管区分及び共振空洞部を含む)に電気的に結合され得る。ポールピース332及び336は、共振空洞部構造312または312A〜Eにより画定される共振空洞部310及びドリフト管322により画定されるドリフト管空洞部320または320A〜Fによりマイクロ波空洞部組立体(
図10A〜10Jの300)を支持し得る。マイクロ波空洞部組立体における電子ビームの収束を支援するために用いられる磁石または磁場収束組立体(たとえば、ソレノイドコイル344A〜F(電磁石)、永久磁石、または電磁石及び永久磁石の組み合わせ)の一部は、x−y面においてドリフト管区分を少なくとも部分的に包囲し得る。
【0083】
図10A〜10Jは、
図3及び7〜9に示される5つの空洞部SBKの共振空洞部構造312A〜Eと、ドリフト管区分324A〜Fと、を示す。x−y面における入力共振空洞部310Aの中心区分に沿った断面を備えたマイクロ波空洞部組立体300の、
図10Aは、正面斜視図を示し、
図10Bは側部斜視図を示し、
図10Iは正面断面図を示し、
図10Jは正面斜視断面図を示す。y−z面におけるマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿った断面を備えたマイクロ波空洞部組立体300の、共振空洞部及びドリフト管空隙の、
図10Cは、斜視断面図を示し、
図10Dは側部断面図を示す。x−z面におけるマイクロ波空洞部組立体の中心区分に沿った断面を備えたマイクロ波空洞部組立体300の、共振空洞部及びドリフト管空隙の、
図10Eは斜視断面図を示し、
図10Fは上部断面図を示す。
図10Gは、x−y面における第3の共振空洞部310Cの中心区分に沿った断面を備えたマイクロ波空洞部組立体300の、共振空洞部及びドリフト管空隙の、正面断面図を示す。
図10Hは、x−y面における第2の共振空洞部310Bと第3の共振空洞部310Cとの間のドリフト管区分324Cの中心区分に沿った断面を備えたマイクロ波空洞部組立体300における、共振空洞部及びドリフト管空隙の、正面断面図を示す。
【0084】
RF入力信号は、入力信号開口部328を介して第1の共振空洞部312A(または入力共振空洞部または入力空洞部)内へと放出され得るものであり、増幅されたRF出力信号は出力導波管348を通して最後の共振空洞部312E(または出力共振空洞部または出力共振空洞部)から供給され得る。技術的に知られた機構を用いて、それぞれの共振空洞部は正確な周波数へと調整され得る。共振空洞部312A〜Eは、バーベル特徴部248を含む。他の実施例(図示せず)において、共振空洞部は、他のシートビーム形式の空洞部構成を有し得る。入力空洞部312A及び出力空洞部312Eは、凹特徴部242を有し、中間共振空洞部312B〜Dは非凹特徴部244(すなわち、凹特徴部または非凹共振空洞部のない空洞部)を有する。
【0085】
共振空洞部構造312または312A〜Eは、x−z面における共振空洞部の長さ及び幅に沿った共振空洞部の幅広い上方壁316A〜E及び共振空洞部の幅広い下方壁317A〜Eと、x−y面における共振空洞部の幅及び高さに沿った共振空洞部前端壁318A〜E及び共振空洞部後端壁319A〜Eと、y−z面における共振空洞部の長さ及び高さに沿った共振空洞部側壁または共振空洞部の狭い壁314A〜Dと、を含む。共振空洞部の幅広い壁316A〜Eまたは317A〜Eは、空洞部幅(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)及び空洞部長さ(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)によって画定され、空洞部高さを画定する。共振空洞部端壁318A〜Eまたは319A〜Eは空洞部バーベル高さ(またはバーベル式特徴のない空洞部高さ)(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)及び空洞部幅(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)によって画定され、空洞部長さを画定し、ドリフト管空洞部320A〜Fのための開口部を含み、ドリフト管区分324A〜Fに結合する。共振空洞部の狭い壁314A〜Dは空洞部バーベル高さ(またはバーベル式特徴部のない空洞部高さ)(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)及び空洞部長さ(それぞれの端部の壁の厚さ)によって画定され、空洞部幅を画定する。出力共振空洞部構造312Eは出力共振空洞部構造312Eを出力導波管348から分離する共振空洞部の幅広い壁316Eまたは317Eにおける切れ目のような絞りまたは開口部315を有し得る。他の実施例(図示せず)において、切れ目は、外部共振空洞部端壁318Eまたは319Eにおいて生じ得る。
【0086】
ドリフト管区分324A〜Fは、x−z面においてドリフト管の長さ及び幅に沿ったドリフト管の幅広い上方壁326A〜F及びドリフト管の幅広い下方壁327A〜Fと、y−z面におけるドリフト管の長さ及び高さに沿ったドリフト管側壁またはドリフト管の狭い壁325A〜Fと、を含む。ドリフト管の幅広い壁326A〜Fまたは327A〜Fはドリフト管区分幅382A〜F(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)及びドリフト管区分空隙長さ(またはそれより短い)によって画定され、ドリフト管区分高さを画定する。ドリフト管の幅広い壁326A〜Fまたは327A〜Fは、長軸に沿った主壁と称されても良い。ドリフト管の幅広い壁326A〜Fまたは327A〜Fの比較的幅広いドリフト管区分幅382A〜F及びドリフト管区分(及び装置及び空洞部構造も)において生成される高真空により、ドリフト管の幅広い壁が補強されまたはより厚い壁を有しても良い。いくつかの実施例において、補強材材料(すなわち、第2の材料)がドリフト管の幅広い壁において層状化されて良い。ドリフト管の狭い壁325A〜Fは、ドリフト管区分高さ(加えてそれぞれの端部の壁の厚さ)及びドリフト管区分空隙長さ(またはそれより短い)によって画定され、ドリフト管区分幅382A〜Fを画定する。ドリフト管の狭い壁325A〜Fは長軸に沿った副壁と称されても良い。
【0087】
図10Hはドリフト管の狭いまたは側壁325C〜Fの間の区分の間のドリフト管幅の変化286を示し、
図10Iはドリフト管の狭いまたは側壁325B〜Fの間の区分の間のドリフト管幅の変化384を示す。他の実施例(図示せず)において、様々なドリフト管の狭いまたは側壁325A〜Fは、
図5I〜5J及び6A〜6Fにおいて示されたような異なる形式、表面、またはテクスチャを有してよい。
【0088】
従来、入力共振空洞部と中間共振空洞部との間のドリフト管区分の長さは、類似する。先に説明したように、出力共振空洞部と先行する共振空洞部(すなわち、最後から2番目の空洞部)との間のドリフト管区分長さは、出力信号を生成するため、真空電子装置の動作周波数の4分の1波長関数のように短くされ得る。
【0089】
実施例において、真空電子装置(たとえば、SBK)の中空管構造は、少なくとも3つの共振空洞部(たとえば、入力共振空洞部または中間共振空洞部であり、出力共振空洞部ではない)と、少なくとも2つのドリフト管区分と、を含む。少なくとも2つのドリフト管区分の第1のドリフト管区分は、少なくとも3つの共振空洞部の第1の共振空洞部と第2の共振空洞部との間に配置され、少なくとも2つのドリフト管区分の第2のドリフト管区分は、少なくとも3つの共振空洞部の第2の共振空洞部と第3の共振空洞部との間に配置される。
図5Eを参照すると、第1のドリフト管区分(たとえば、280C)のドリフト管区分長さ(たとえば、286C)は、第2のドリフト管区分(たとえば、280D)のドリフト管区分長さ(たとえば、286D)とは実質的に異なる。構成において、第1のドリフト管区分のドリフト管区分長さは、動作周波数の10分の1(1/10)波長より短いままである一方で、第2のドリフト管区分のドリフト管区分長さより0.7%から15%異なる(たとえば、より長い)。たとえば、第1のドリフト管区分長さ286Dが55mmである場合、次いで第2のドリフト管区分長さ286Cは55.4mmより長く(すなわち、第1のドリフト管区分長さより390μmまたは0.7%長い)、63.3mmより短い(第1のドリフト管区分長さよりすなわち、8.25mmまたは15%長い)。別の実施例において、第1のドリフト管区分及び第2のドリフト管区分のドリフト管区分長さの間の差は、製作公差(たとえば、2.856GHzの装置において76.2μm、または製作公差の5倍の特定の要因において少なくとも0.381mmの許容差)の特定の要因(たとえば、5倍)より大きく、動作周波数の10分の1(1/10)波長より小さい(例えば、約1.05cm)。
【0090】
別の構成において、第1のドリフト管区分の横モードのための第1のドリフト共振周波数は、数式18で近似され、第2のドリフト管区分の横モードのための第2のドリフト共振周波数は、数式19によって示され、ドリフト共振周波数差は数式20によって示され、ここで、デルタドリフト共振周波数は、共振周波数が動作周波数の2倍より小さく、カットオフ周波数の2倍より小さいそれぞれの横モードにおいて、少なくとも0.6%である。たとえば、おおよそ2.856GHzにおいて動作するように設計されたS帯SBKの実施例を用いると、55mmのドリフト管区分長さ286Dを備えたドリフト管区分280Dは、TE
302モードのための4.035GHzのピークドリフト共振RF場を生成するように構成され、56mmのドリフト管区分長さ286Cを備えたドリフト管区分280Cは、TE
302モードのための4.072GHzのピークドリフト共振RF場を生成するように構成される(他の寸法、パラメータ、及び特徴は共振空洞部とドリフト管区分との間で類似するものとする)。ドリフト管区分280Dとドリフト管区分280Cとの間のピークドリフト共振RF場の間の差は、37MHzであり、これは4.035GHzのピークドリフト共振RF場の0.9%、第1のドリフト共振RF場のピークの少なくとも0.6%(すなわち、24.4MHz)である。別の実施例において、ドリフト共振周波数差はそれぞれの横モードの少なくとも0.8%である。
【0091】
ドリフト管区分長さの変化は、隣接した共振空洞部の動作周波数を変化させ得る。隣接した共振空洞部の空洞部高さのような他の寸法及びパラメータは、隣接した共振空洞部のための類似の動作周波数を維持するために変更または変化し得る。
【0092】
別の実施例において、真空電子装置(たとえば、SBK)の中空管構造は、少なくとも3つの共振空洞部と、第1の共振空洞部と第2の共振空洞部との間に配置された第1のドリフト管区分と、第2の共振空洞部と第3の共振空洞部との間に配置された第2のドリフト管区分と、を含む。少なくとも2つのドリフト管区分は、ドリフト管材料を含み得る。ドリフト管材料は中空管構造の残りの壁材料に類似し得る。第2のドリフト管区分は、第2のドリフト管区分の少なくとも1つの内壁(たとえば、ドリフト管の狭い壁325A〜Fの副内壁またはドリフト管の幅広い壁326A〜Fまたは327A〜Fの主内壁)に沿って材料(たとえば、壁材料)を含み得る。いくつかの実施例において、少なくとも1つの内壁に沿った材料は、他の壁または残りの中空管構造(たとえば、他のドリフト管区分及び共振空洞部)の材料とは異なる材料であって良い。材料の電磁特性は、真空の透磁率及び誘電率とは実質的に異なる。電磁特性は透磁率または誘電率を含む。真空の透磁率または真空透磁率は、μ
0=4π×10
-7ニュートン毎アンペア2乗(N/A
2)≒1.2566370614×10
-6N/A
2として示される。相対透磁率、μ
rは、μ
r=μ/μ
0として示される特定の媒体、μの、真空透磁率、μ
0に対する透磁率の比である。真空透磁率とは実質的に異なる透磁率を有する材料は、室温(たとえば、25℃)及び入力周波数において20より大きい相対透磁率を有する。真空の誘電率または真空誘電率は、ε
0=8.8541878176×10−12ファラッド毎メートル(F/m)として示される。相対誘電率、ε
rは、ε
r=ε/ε
0として示される、真空誘電率、ε
0に対する特定の媒体、εの誘電率の比である。真空誘電率とは実質的に異なる誘電率を有する材料は、室温(たとえば、25℃)及び入力周波数において2より大きい相対誘電率を有する。
【0093】
別の構成において、第1のドリフト管区分の横モードのための第1のドリフト共振周波数は、数式18で近似され、第2のドリフト管区分の横モードのための第2のドリフト共振周波数は、数式19により示され、ドリフト共振周波数差は、数式20により示され、ここで、ドリフト共振周波数差は、それぞれの横モードにおいて少なくとも0.6%である。別の実施例において、デルタドリフト共振周波数は、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、カットオフ周波数の2倍より低いそれぞれの横モードにおいて少なくとも0.8%である。
【0094】
反射係数の変更による寄生空洞部Q値の減少
第2の方法またはアプローチにおいて、捕捉または寄生モードにおけるさらなるRF動力は、ドリフト管区分(たとえば、意図されない空洞部)からの放射を可能とする。外部Q値、Q
eは低下され、全Q値、1/Q
Tの逆数は、ドリフト管区分において増加され、これは振動のための閾値を増加させ、捕捉または寄生モードのための増加率を減少させる。
【0095】
伝達ライン理論から、ラインに沿ったインピーダンスの変化はラインにおける場伝播のいくらかの反射となる。反射係数(たとえば、電圧反射係数)、Γは、数式23によって示され得る。
数式23
ここでZ
0は伝達ラインインピーダンスであり、Zはラインにおける外乱のインピーダンスを示す。矩形または直方体導波管(たとえば、SBKドリフト管区分または共振空洞部)において、TE
mnモードのためのインピーダンスZ
w、mnは、数式24で与えられる。
数式24
ここでμは媒体または材料(たとえば、伝達媒体)の透磁率を示し、εは媒体または材料の誘電率を示し、f
c、mnは空洞部と相互作用するTE
mnモードのカットオフ周波数を示し、fは装置の入力または動作周波数を示す。伝達ラインが短く(Z=0)または開放(Z=無限大)伝達された場合、全ての場は反射され、反射係数、Γの大きさは1である。数式6を参照すると、空洞部インピーダンスは共振においてピークを有する。共振において、空洞部インピーダンス、Z
n(ω)は完全に実数であり(すなわち、虚数要素なし)Q
T×(R/Q)に等しい。したがって、ドリフト管における伝播TEモードが空洞部(たとえば、ドリフト管区分)において生じ得るとき、TEモードのため大きな反射係数が共振近傍で生じ得る。伝播TEモードに対する応答を変更するため、伝達ラインインピーダンス、Z
w、mn、空洞部と相互作用するモードのための共振周波数、負荷されないQ値、Q
o、外部Q値、Q
e、または空洞部と相互作用するTEモードのためのR/Qのような様々なパラメータが変更され得る。
【0096】
ドリフト管空洞部は開放共振回路と類似の方式でモデル化されて良い。2つの共振空洞部からの反射は、共振器を形成する。共振のための関係を実現するため、数式25で与えられる位相における関係は、おおよそ満たされるべきである。結果としての外部Q値は、数式26で与えられ、数式25がおおよそ満たされるとき数式27で示されるのとおおよそ同等である。
ここで、
数式25
数式26
数式27
ここで、β
gはガイド波数であり、Γ
1は第1の共振空洞部における反射係数であり、Γ
2は第2の共振空洞部における反射係数であり、Lは共振回路の間の長さ(たとえば、中間点から中間点)であり、qは整数であり、ωは共振回路の入力または動作角周波数であり、μは媒体または材料の透磁率を示し、εは媒体または材料の誘電率を示し、fは入力または動作周波数であり、f
cはカットオフ周波数であり、αは媒体の損失を示す定数(または真空の場合0)であり、Cは真空における光の速度である。反射係数がln|Γ
1|≒1−|Γ
1|またはln|Γ
2|≒1−|Γ
2|の一方に近似することに留意されたい。数式25〜27は導波管の端部における端部効果及び漏れ磁場のための近似であり、したがって、端部効果及び漏れ磁場を考慮するための補正係数が用いられる。Q値の変化による差が数式28で与えられる。
数式28
ここでQはQ値(すなわち、第1のQ値)であり、Q’は別のQ値(すなわち、第2のQ値)であり、Γ
1は第1の共振空洞部における反射係数(すなわち、第1の共振空洞部における第1の反射係数)であり、Γ
2は第2の共振空洞部における反射係数(すなわち、第2の共振空洞部における第1の反射係数)であり、Γ’
1は第1の共振空洞部における別の反射係数(すなわち、第1の共振空洞部における第1の反射係数)であり、Γ’
2は第2の共振空洞部における別の反射係数(すなわち、第2の共振空洞部における第2の反射係数)である。
【0097】
シミュレーションデータ
ドリフト管区分幅のようなドリフト管区分(及び共振空洞部)の変化は、捕捉モードのための共振周波数を変化させることのみができず、これらの変化も反射係数を変化させ得る。シミュレーションデータは、ドリフト管区分及び共振空洞部の変化による効果(たとえば、共振周波数及び反射係数)を実証するために提供される。コンピュータシミュレーション(アンソフト高周波構造シミュレータ(HFSS)固有ソルバの空洞部の動作モード、TM
110モードの結果を含む)は、構造のために用いられる無酸素銅(OFC)を用いて2.856GHzで動作するように意図された他の損失性材料を用いない、5つの空洞部シートビームクライストロン設計に基づく。第3の共振空洞部210Cの寸法は、2.793GHzの共振周波数を生成するために調整され、第4の共振空洞部210Dの寸法は、2.895GHzの共振周波数を生成するために調整される(すなわち、共振空洞部は、TM
110モードのための空洞部高さ214Aまたは214Eの変化においておおよそ40から45MHz毎mm変化する)。空洞部高さ214Aは、シミュレーションに用いられる異なる構成において周波数が顕著に変化しないように変えられた。比較のためシミュレーションに用いられる基本ドリフト管区分230A〜230Fの寸法は、第3の共振空洞部210C及び第4の共振空洞部210Dにおいて得られた計測による、150mmのドリフト管幅222及び9mmのドリフト管高さ224を有する。(共振空洞部210A〜Dの中間点によって定義された)ドリフト管区分空隙長さ236B〜Dは、(最後から2番目の空洞部210Dから最後の空洞部210Eまでの離間の間の中間点によって定義される)ドリフト管区分空隙長さ236Eがより短いのを除いて56mmである。シミュレーションA及び構成Aにおいて、第3の共振空洞部210C(第3の空洞部または空洞部3)は、52.157mmの空洞部高さ214A及び82.089mmのバーベル高さ215、を有し、第4の共振空洞部210D(第4の空洞部または空洞部4)は、50.205mmの空洞部高さ214A及び74.359mmのバーベル高さ215Dを有し、第3及び第4の空洞部210C〜Dは、9mmの空洞部長さ216及び6mmの凹隙間長さ217を備えた凹部形式構造を有する。第3及び第4の空洞部のための負荷されないQ値、Q
Oは、それぞれ5270及び5310であり、R/Qはおおよそ11.5(Ω)である。シミュレーションB及び構成Bにおいて、第4の空洞部はシミュレーションAに類似し、第3空洞部は凹構造及び7mmの空洞部長さ216、56.549mmの空洞部高さ214A、及び99.0mmのバーベル高さ215なしで再設計された。第3の空洞部のための負荷されないQ値、Q
Oは4880であり、R/Qはおおよそ9.5Ωであった(凹構造なし)。シミュレーションC及び構成Cのため、第3の空洞部210Cは、52.231mmの空洞部高さ214Aと82.089mmのバーベル高さ215とを有し(シミュレーションAと類似)、第4の共振空洞部210Dは、50.220mmの空洞部高さ214Aと74.359mmのバーベル高さ215Dとを有し(シミュレーションAと類似)、第3及び第4の空洞部210C〜Dは9mmの空洞部長さ216及び6mmの凹隙間長さ217を備えた凹部形式構造を有する。第3及び第4の空洞部210C〜Dの間のドリフト管区分230Dのドリフト管区分幅222は153.3mmに変更された。第3及び第4の空洞部のための負荷されないQ値、Q
Oは、それぞれ5250及び5310であり(シミュレーションAと類似)、R/Qはおおよそ11.5Ωだった(シミュレーションAと類似)。隙間結合係数、Mは、シミュレーションA〜Cにおいておおよそ0.8だった。凹空洞部から非凹空洞部への第3の空洞部210Cの変更及びドリフト管区分幅の変更の結果の負荷されないQ値、Q
O及びR/Qの最も大きい変化は、共振空洞部のための負荷されないQ値、Q
O及びR/Qにおいて無視できる影響を有した。
【0098】
反射係数は、コンピュータシミュレーション技術(CST)タイムドメインソルバを用いてドリフト管区分230Dの一端において信号を送信することによって計算され、これは共振空洞部210Dへと伝播された。4つの異なるモード、TE
10、TE
20、TE
30、及びTE
40は導波管内へと放出され、ドリフト管区分230Dを示す。
図11A〜11Eは、異なる共振空洞部及びドリフト管構成から反射された様々な放出されたモードにおける周波数に対する反射係数の大きさのグラフを示す。
図11AはTE
10の反射係数の大きさを示す。
図11BはTE
20の反射係数の大きさを示す。
図11CはTE
30の反射係数の大きさを示し、
図11Dは
図11Cの拡張されたプロット図を示す。
図11Eは、TE
40の反射係数の大きさを示す。Cav3凹部は構成Aからの第3の空洞部を示し、Cav4凹部は構成Aからの第4の空洞部を示し、Cav3非凹部は構成Bからの第3の空洞部を示し、Cav3凹部153.3mmは構成Cからの第3の空洞部を示す。Cav3凹部プラス1mmは1mm増加された(たとえば、構成Dにおいて52.157mmから53.157mmへと)空洞部高さ214Aを有する第3の空洞部210Cを示すが、他において構成Aと類似する。異なる結果に示されるように、反射係数は周波数に強い依存性を有する。概して、凹特徴部を備えた共振空洞部は(凹特徴部のない共振空洞部と比較して)より高いR/Q及び負荷されないQ値、Q
Oをより広いピークと同様に有するが、これはより大きい周波数帯に亘る凹部空洞部反射を意味する。構成Dにおいて、空洞部の空洞部高さが1mmシフトされて増加される場合、反射係数のピークが生じるが、空洞部高さの変化は、さらに動作モードの共振周波数を2.793GHzから2.752GHzへと変化させる(41MHzの変化及び他のパラメータにおける小さな影響を有する)。
図4Dに示されるように、構成Cにおいて、ドリフト管区分幅222の変化は、反射係数のピークが生じるところにおいてわずかにシフトも生じさせる(すなわち、減少)。凹構造のない第3の空洞部において最も大きい効果は、構成BにおけるようにR/Q及びQ
Oが反射係数の大きさにおけるわずかな変化と共に変更された(すなわち、減少)ことであった。
【0099】
図11A〜11Eに示されて上述された結果から、共振空洞部は、特定の周波数帯に亘り導波管内へと放出されたTEモードからのほとんどの入力場を反射する。これらの周波数における反射は、反射係数の大きさが周波数から独立したものである(無視できる抵抗性損失及びカットオフ以上の導波管とみなせる)ことを除いて、導波管の端部における開放またはショートの配置に類似する。数式1との関係において述べたように、矩形空洞部は、導波管の端部において導電体を配置することによって形成される。しかしながら、インピーダンスの変化により、反射は空洞部から生成され得る。矩形導波管の端部において空洞部が配置された場合、別の空洞部が形成される(すなわち、ドリフト管区分)。構造のための意図されない空洞部は、意図されない空洞部または共振空洞部の間のドリフト管区分によって形成される。
【0100】
図12または表1は、以下でより詳細に説明されるように、(GHzにおける)共振周波数と、(Cuのための)負荷されたQ値、Q
lと、共振空洞部における中間区分(ドリフト管区分空隙長さ236D及び空洞部高さ214Aによって定義される)を用いたドリフト管区分の計算された共振周波数と、共振空洞部における中間区分及び端部区分(バーベル特徴部及びバーベル高さ215及び215Dによって定義される)を用いたドリフト管区分の計算された共振周波数と、を含む共振空洞部及びドリフト管区分の異なる構成の結果を示す。表1において、サンプルまたはケース1〜6は意図された空洞部または共振空洞部において動作するTM
110モードのための様々な結果を要約する。サンプルまたはケース7〜15は、共振空洞部のドリフト管区分及び異なる配列によって形成された意図されない空洞部において動作するTE
302モードのための結果を提供する。共振空洞部のために負荷されたQ値、Q
lを計算するために、銅及びRF動力がドリフト管区分に含まれないと仮定されたシミュレーションは、(シミュレーション境界に対してドリフト管開放の端部において完全に適合された層(PML)境界を用いて)バックグラウンドシミュレーションドメインに吸収された。
【0101】
図11A〜11Eから示されるように、特定のモードのための空洞部との共振近くの高反射係数を備えたモードは、ドリフト管空洞部に高Q値(Q)を持たせ得る。反射係数の大きさの最も大きい値は、ピークの大きさである。表1(
図12)に示されるように、1200のオーダーの及びそれより上のQは(TE
302モードにおいて)公称値とみなされ得る。モードの反射係数の低下は、Q値を減少させる。Q値の少なくとも33%の差を有するため、Qはドリフト管共振において800より低くされる必要があり、これはQ値の33%のパーセント差を与える実施例において好適となる。3.5の実験定数(α)と共に数式26または27を用いて、反射係数はQ値がおおよそ800(Q〜800)または1200より低くなるまで変更され得る。反射係数の積(すなわち、Γ
1×Γ
2)がおおよそ0.97(0.0985×0.985=0.97)である場合、Q値はおおよそ800である。反射係数の積すなわち0.97は、Qの、1000からの20%の変化、及び1200からの33.3%の変化を示す。0.985の反射係数は、−0.13dBの反射係数としても示され得る。0.98×0.98(−0.176dB)の反射係数の積は、Qを〜600に低減させ、0.975×0.975(−0.22dB)の反射係数の積は、Qを〜500に低減させ、0.97×0.97(−0.265dB)の反射係数の積は、Qを〜400に低減させることに留意されたい。反射係数が比較的固定されて維持される場合、Q値は周波数またはドリフト管区分長さの変化に対してかなり感度が低い(すなわち、感度は主に数式28において示された1/(1−Γ
1Γ
2)要素から)。
【0102】
少なくとも3つの共振空洞部と少なくとも2つのドリフト管区分とを含む真空電子装置の中空管構造を備えた実施例において、それぞれの横モードのための少なくとも2つのドリフト管区分からの反射係数のピークの大きさは、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い横モードの少なくとも1つのドリフト管区分のための横モードのドリフト共振周波数において0.13dBより小さい。
【0103】
少なくとも3つの共振空洞部と少なくとも2つのドリフト管区分とを含む真空電子装置の中空管構造を備えた実施例において、ドリフト管区分のそれぞれの端部における2つの共振空洞部からの反射係数の大きさのピーク積(または反射係数の積)は、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い横モードの少なくとも1つのドリフト管区分のための横モードにおいて0.97より小さい。
【0104】
ケース10は、構成Aを用いた意図されない空洞部230DのためのTE
302モード(すなわち、寄生モード)のシミュレーションの結果を提供する。シミュレーションにおいて、電場(E場)のy成分(すなわち、y軸に沿った)は、ドリフト管壁に向かって存在する電子を跳ね返すように機能する。ケース10の場合、シミュレーションは、構造のために銅が用いられたときに、4.072GHzの共振周波数と1000の負荷されたQ値(1/Q
O+1/Q
e)
-1とを与える。大きなQ値(すなわち、1000)は、意図しない空洞部がドリフト管区分によって形成され、(電子ビームを介して)モード内へと結合された動力のために成長する可能性を有することを示す。ケース10負荷されたQ値(すなわち、おおよそ1000)は、それらの動作モード(すなわち、TM
110モード)における共振空洞部のための品質要因(すなわち、おおよそ5000)と同じオーダーである。構成Aにおけるドリフト管区分のための共振周波数のおおよその予想は、数式1を用いて近似されまたは推定され得る。ドリフト管区分幅222は、「a」の寸法を提供し、ドリフト管区分高さ224は「d」の寸法を提供する。「d」において、ドリフト管区分空隙長さ236A〜Fは、それぞれの共振空洞部のための空洞部高さ214Aの半分と同様に使用され得る。ケース10において中間区分(すなわち、空洞部高さの半分)を用いるドリフト管区分230Dの計算された共振周波数は、4.100GHzである。RF場のいくつかも、共振空洞部の側部部分または領域(すなわち、バーベルエリア)内へと入る。共振周波数のわずかに、より正確な予想は、上の計算を繰り返しつつも93%の空洞部高さ計算及び側部領域による7%を含むことによって計算され得るものであり(公式は経験的に発見された)、共振周波数4.067GHzを与える。中間区分を用いたドリフト管区分の計算された共振周波数(Calc. Res. Freq. Using Mid. Sects.)及び中間及び端部区分を用いたドリフト管区分の計算された共振周波数(Calc. Res. Freq. Using Mid. and End Sects.)も、ケース7〜9及び11〜15において生成され得る。
【0105】
ケース1は、構成Aにおける第3の共振空洞部のための結果を提供し、ケース2は構成Aにおける第4の共振空洞部のための結果を提供する。ケース3は、構成Bにおける第3の共振空洞部のための結果を提供する。ケース4は構成Cにおける第3の共振空洞部のための結果を提供し、ケース5は構成Cにおける第4の共振空洞部のための結果を提供する。ケース6は構成Dにおける第3の共振空洞部のための結果を提供する。
【0106】
ケース7(すなわち、構成E)は、第3及び第4共振空洞部の間のドリフト管区分のための結果を提供し、第3及び第4共振空洞部は、構成Aにおける第3の共振空洞部のための類似の寸法を有する。TE
302モードのケースにおいて(すなわち、ケース7〜15)、ケース7は最も高い負荷されたQ値、Q
l(すなわち、1550)を有する。
図11Dによって示されるように、TE
302モードの共振周波数が生じ、ここで意図しない空洞部の端部を形成する共振空洞部における反射係数が最も大きい。ケース8(すなわち、構成F)は、第3及び第4の共振空洞部の間のドリフト管区分のための結果を提供し、ここで第3及び第4の共振空洞部の両方は、構成Dにおける第3の共振空洞部と類似の寸法を有する。
【0107】
ケース8は寄生モード(すなわち、TE
302モード)のための共振周波数のみを15MHz変化させるが(すなわち、ケース7及び8から4.047〜4.032GHz)、動作モード(すなわち、TM
110モード)共振周波数を41MHz変化させる(すなわち、ケース1及び6から2.793〜2.752GHz)。ケース8によって示されるように、共振周波数における小さな移動は、負荷されたQ値、Qlをわずかにシフトさせる(すなわち、1550から1300へ)。
【0108】
ケース9(すなわち、構成G)は、第3及び第4の共振空洞部の間のドリフト管区分のための結果を提供し、第3及び第4の共振空洞部の両方は、凹構造なしの構成Bにおける第3の共振空洞部と類似した寸法を有する。ケース9において、共振周波数は、より大きい空洞部高さ(すなわち、おおよそ52.157mmの代わりに56.549mm)により82MHz(すなわち、4.047〜3.965GHz)変化する。
図11Dから、ドリフト管区分のための反射係数ピークのピークは、(少なくとも0.15dB)低下され、270の負荷されたQ値を顕著に低下させる。
【0109】
先に説明したように、ケース10は、構成Aを用いて第3及び第4の共振空洞部の間のドリフト管区分に対する結果を提供する。
【0110】
ケース11は、構成Dを用いて第3及び第4の共振空洞部の間のドリフト管区分に対する結果を提供し、これは第3の空洞部に対して空洞部高さに付加された1mmを備えたケース10に類似する。特に意図された空洞部または共振空洞部の共振周波数の変化(すなわち、ケース1と6との間の41MHz=2.793−2.752GHz)と比較したときに、ドリフト管区分の共振周波数の小さな変化のみ(すなわち、8MHz=4.067−4.059GHz)が生じる。ケース11は、反射係数の変化のため、負荷されたQ値(すなわち、1000)ケース10と比較して、下方の負荷されたQ値(すなわち、800)を有する。
【0111】
ケース12(すなわち、構成H)は、ケース11と類似するが、凹構造のない第3の空洞部により4.023GHzの共振周波数及び170の負荷されたQ値となる。反射係数をオフセットすることによって(すなわち、少し反射係数において重ねる)、負荷されたQ値が低下される。
【0112】
ケース13に対して(すなわち、構成I)構成Hが使用されたが、ドリフト管区分空隙長さ(すなわち、共振空洞部の間の距離)は1mmから55mm低減した。ドリフト管区分空隙長さの変化は、17MHz(ケース12及び13の間で4.040〜4.023GHz)の共振周波数を増加させたが、これはさらに負荷されたQ値を150に低下させた。より低い負荷されたQ値は、部分的にRF場またはエネルギーが、第4の空洞部において増加された反射係数から得られたよりも第3の空洞部から消失されたことによるものである。
【0113】
ケース14は、構成Cを用いる第3及び第4の共振空洞部の間のドリフト管区分に対する結果を提供する。ケース14において、構成Cは構成Aに類似するが、2つの共振空洞部の間のドリフト管区分幅は、3.3mm増加される。ドリフト管区分幅における小さな変化は、47MHzの共振周波数の変化となる(すなわち、ケース10及び14の間で4.067〜4.020GHz)。先に説明したように、固定された電子ビームに対して、ドリフト管区分幅の変化は、真空電子装置(たとえば、クライストロン)の他のパラメータにおいて無視できる(すなわち、かなり小さい)影響を有し、ドリフト管区分幅の変化を、ドリフト管区分によって形成された意図されない空洞部の周波数を変化させるためにかなり効率的な方法とする。ケース14において、共振周波数の47MHzの変化は、1000から900へと向かうQ値におけるわずかな減少となる。
【0114】
ケース15において(すなわち、構成J)、構成Hが用いられるが、第3の空洞部201Cの入力側におけるドリフト管区分230C(ドリフト管区分230Dによって形成される意図されない空洞部の部分ではない)は、153.3mmに変えられた(すなわち、3.3mm増加した)。ドリフト管区分の共振周波数は(4.067GHzにおいて)ほとんど変化しなかったが、Q値は1000から840に変化した。より低い負荷されたQ値のケース(たとえば、ケース9、12、及び13)に対するE場の大きさ、RF場はドリフト管区分によって形成された意図しない空洞部から放射する。意図しない空洞部(すなわち、ドリフト管区分)の端部におけるドリフト管区分の間の反射係数の変化は、RF場がドリフト管区分から放射するのを可能ともし、全Q値を低下させるのに有用となり得る。示されるように、構造的変化の変化は、ドリフト管区分の共振周波数を変化させるためになされ得る。
【0115】
表1から示されたように(たとえば、ケース13)、空洞部の間のドリフト管区分空隙長さにおける変化は、共振周波数にも影響する。しかしながら、ドリフト管区分空隙長さの変化は、意図されたクライストロン(たとえば、共振空洞部)の動作も変更し得る。凹構造から非凹構造へと変更するような空洞部設計の変更は、共振周波数も変化させる。非凹部構造の効果は、(類似する共振周波数を生成するための)異なる空洞部高さによるものであった。しかしながら、非凹部空洞部は、R/Q及び負荷されないQ値、Q
Oも低減した。1より大きい相対誘電率または透磁率を有する材料の付加は、共振周波数を変化させ、または共振周波数に影響を与え得る。しかしながら、真空電子装置における異なる材料の使用は、特に寸法がより小さいより高い周波数において製造をより困難とし得る。
【0116】
説明された構造及び設計パラメータは、捕捉モードにおける利得を減少すべくドリフト管区分が互いに有する周波数の重なりを減少させるためにドリフト管区分によって形成された意図されない空洞部の共振周波数を変化させ得るものであり、これは、ドリフト管がカットオフではない複数の空洞部を備えたシートビームクライストロンの設計において有益となり得る。説明したように、多くの機構及び構造はドリフト管区分の共振周波数を変化させ得る。たとえば、SBKにおいて、意図されたクライストロン動作(たとえば、共振空洞部の共振周波数)において最小の効果を有する変化の1つは、ドリフト管区分幅を変化させる。これに加え、またはこれとは別に、空洞部幅の変化または凹部または非凹部特徴部の間の切り替えのような共振空洞部の形状の変化、またはドリフト管区分空隙長さの変化は、ドリフト管区分の共振周波数も変化させ得る(しかし、他のパラメータへの変化はドリフト管区分幅の変化より顕著となり得る)。これらの他の変化は意図されたクライストロンの性能に影響し得るが、クライストロンの設計に基づいた受け入れ可能なトレードオフとなり得る。
【0117】
説明された技術(たとえば、コンセプト、原理、機構、構造、特徴、パラメータ、方法、システム、及び装置)は、TEモード不安定性の影響を減少し、最小化し、低減し、またはある場合において排除し得るものであり、これはシートビームクライストロンの機能が低下された有益性を有する。SBKをRF源として使用する利点は、増加された表面エリアのため低減されたエネルギー及び熱密度から、ビームがより幅広くなるときに可能な低減された電流密度、低減された磁場、カソード負荷及び低減された電流密度に起因するいくらかの不安定性の減少、及び、より低い装置コストの可能性を生じさせることにある。説明された技術を用いることは、これらの利点の実現を支援する。
【0118】
説明された構造、特徴、及びパラメータは、シートビームクライストロンを用いて示されたが、類似した技術、構造、特徴、及びパラメータが拡張相互作用クライストロン(EIK)及び相対論的クライストロン増幅器(RKA)のような他の真空電子装置の寄生モードの抑制を支援するために使用されても良い。
【0119】
コンセプトが特定の実施例(たとえば、特定の周波数)に適用されたが、技術はより一般的であり、特定の実施例において説明されたパラメータの多くに依存しない。技術は、装置の周波数に依存せず、任意の周波数帯に亘り、特にマイクロ波帯において実現され得る。技術は、使用されてきた収束磁場形式に限られず、電磁石(たとえば、ソレノイド)、永久磁石、及び周期磁石形式の収束の両方で使用され得る。示されるように、シートビーム装置において、ドリフト管区分幅は他のパラメータにおける小さいまたは無視できる影響で変更され得る。形状を示す実施例は、必ずしも最適ではないが、説明のため用いられる。同様に、意図されない空洞部の共振周波数の変化は、空洞部壁を変更するというよりはむしろ共振周波数を変化させるためにドリフト管区分における1より大きい透磁率または誘電率を有する材料を配置することによってさらに得ることもできる。しかしながら、加えられた付加的な材料は製造をより困難且つ高価にし得る。ドリフト管区分における材料による共振周波数の変化は、数式1における透磁率及び誘電率の依存性で確認することによって見られ得る。幅a、または長さdを変化させる代わりに、μ及び/またはεに影響を与えるために材料を変化し得る。説明された技術は、シートビームでもあり得る複数の拡張された相互作用式空洞部のために使用され得る。
【0120】
SBK設計のような真空電子装置設計の間、ドリフト管区分幅またはドリフト管区分長さは上述の記載にしたがって変更され得る。
【0121】
実施例において、横電気モード不安定性を減少させるための中空管手段を備えた真空電子装置は、電子ビームを用いて信号を増幅するための少なくとも2つの共振空洞手段であってそれぞれの共振空洞手段が長軸に沿った空洞部幅と短軸に沿った空洞部高さと伝播軸に沿った空洞部長さとを含み、長軸が短軸に対して実質的に直交する少なくとも2つの共振空洞手段と、少なくとも2つの共振空洞手段を分離するための少なくとも1つのドリフト管区分手段であって、それぞれのドリフト管区分手段が長軸に沿ったドリフト管区分幅と短軸に沿ったドリフト管区分高さと伝播軸に沿ったドリフト管区分長さとを含み、空洞部高さがドリフト管区分高さより高い、少なくとも1つのドリフト管区分手段と、少なくとも1つのドリフト管区分手段の第1のドリフト管区分手段であって、少なくとも2つの共振空洞手段の第1の共振空洞手段と第2の共振空洞手段との間に配置された第1のドリフト管区分手段と、中空管手段が少なくとも3つの共振空洞手段及び少なくとも2つのドリフト管区分手段を含むときにおける少なくとも3つの共振空洞手段の第2の共振空洞手段と第3の共振空洞手段との間に配置された少なくとも2つのドリフト管区分の第2のドリフト管区分手段と、少なくとも1つのドリフト管区分手段における捕捉モードの振動を低下させるための少なくとも1つのドリフト管区分手段における捕捉モードの周波数を変化させるための手段、または少なくとも1つのドリフト管区分手段から捕捉モードの無線周波数(RF)場を放射するための少なくとも2つの共振空洞手段の捕捉モードの反射係数を変更するための手段と、を含む。
【0122】
中空管手段の実施例は、シートビームクライストロンと、相対クライストロンと、拡張相互作用クライストロンと、を含む。横電気モード不安定性を緩和するための中空管手段の実施例は、
図5A〜5I、7〜9、10A〜10Jの部分、及び上述のような関連した構造及び特徴部を含む。
【0123】
電子ビームを用いて信号を増幅するための共振空洞手段の実施例は、260A〜E、310A〜E、312A〜E、及び上述のような関連した構造及び特徴部を含む。
【0124】
共振空洞手段を分離するためのドリフト管区分手段の実施例は、280B〜E、290B〜E、291B〜E、320B〜E、324B〜E、325B〜E、326B〜E、327B〜E、及び上述のような関連した構造及び特徴部を含む。
【0125】
ドリフト管区分手段において捕捉モードの振動を低下させるためのドリフト管区分手段における捕捉モード(たとえば、横電気モード)の周波数を変化させるための手段の実施例は、様々なドリフト管幅282B〜Eと、
図5I〜J及び6A〜Fにおいて示された非一様な幅と、様々なドリフト管区分長さ286B〜Dと、少なくとも1つの内壁(たとえば、ドリフト管の幅広い壁326B〜Eまたは327B〜Eのドリフト管の狭い壁325B〜Eまたは主内壁副内壁)に沿った異なる壁材料と、上述のような関連した構造及び特徴部と、を含む。
【0126】
RF場をドリフト管区分手段から放射するための共振空洞手段の反射係数を変更するための手段及びドリフト管区分手段のQ値(たとえば、負荷されたQ値)を低下させるための手段の実施例は、非凹特徴部244と、様々なドリフト管幅282B〜Eと、
図5I〜J及び6A〜Fにおいて示された非一様な幅と、様々なドリフト管区分長さ286B〜Dと、少なくとも1つの内壁(たとえば、ドリフト管の狭い壁325B〜Eの副内壁またはドリフト管の幅広い壁326B〜Eまたは327B〜Eの主内壁)に沿った異なる壁材料と、上述のような関連した構造及び構造部と、を含む。
【0127】
別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分手段において捕捉モードの周波数を変化させるための手段または少なくとも2つの共振空洞手段の捕捉モードの反射係数を変更するための手段は、中空管手段が少なくとも3つの共振空洞手段と少なくとも2つのドリフト管区分手段とを含むときに第2のドリフト管区分手段のドリフト管区分幅とは実質的に異なる第1のドリフト管区分手段のドリフト管区分幅、または少なくとも1つのドリフト管区分の第2のドリフト管区分幅とは実質的に異なる少なくとも1つのドリフト管区分の第1のドリフト管区分幅、または中空管手段が少なくとも3つの共振空洞手段と少なくとも2つのドリフト管区分手段とを含むとき、第2のドリフト管区分手段のドリフト管区分長さとは実質的に異なる第1のドリフト管区分手段のドリフト管区分長さであって、第1のドリフト管区分手段及び第2のドリフト管区分手段は、最後から2番目の共振空洞部と最後の共振空洞部との間のドリフト管ではない、第1のドリフト管区分手段のドリフト管区分長さ、または中空管手段が少なくとも3つの共振空洞手段と少なくとも2つのドリフト管区分手段とを含むとき、第2のドリフト管区分手段の少なくとも1つの内壁に沿った壁材料を含む少なくとも2つの第2のドリフト管区分手段であって、壁材料の電磁特性は、真空及び中空管手段の残りの壁材料の透磁率及び誘電率とは実質的に異なる少なくとも2つの第2のドリフト管区分手段、とを含む。
【0128】
別の実施例において、少なくとも1つのドリフト管区分手段における捕捉モードの周波数を変化させるための手段は、第1のドリフト共振捕捉RF場を生成するための第1のドリフト管区分手段と、第2のドリフト共振捕捉RF場を生成するための第2のドリフト管区分手段と、共振周波数が動作周波数の2倍より低く、共振周波数がカットオフ周波数の2倍より低い捕捉モードのための第2のドリフト共振捕捉RF場のピークから実質的に変化する第1のドリフト共振捕捉RF場のピークと、をさらに含み、第1のドリフト管区分手段及び第2のドリフト管区分手段は、最後から2番目の共振空洞部と最後の共振空洞部との間のドリフト管区分ではない。
【0129】
別の実施例において、少なくとも2つの共振空洞手段の捕捉モードの反射係数を変化するための手段は、少なくとも1つのドリフト管区分手段の捕捉モードの負荷されたQ値を低下させるための手段をさらに含む。
【0130】
本明細書において列挙された全ての参照は、それら全体の詳細な参照により本明細書において組み込まれる。
【0131】
特定の実施形態により特徴、特性、構造、装置、方法、及びシステムが説明されてきたが、当業者は、特定の実施形態に対する多くの変形例が可能であり、したがって任意の変形例が本明細書に開示された原理、コンセプト、及び範囲内であるとみなされるべきことを容易に理解する。したがって、添付の特許請求の範囲の原理、コンセプト、及び範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの変形がなされて良い。さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において適した方法で結合されて良い。前述の記載において、本発明に係る実施形態の十分な理解を提供するために多くの特定の詳細(たとえば、レイアウト及び設計の実施例)が提供された。当業者は、しかしながら、本発明が1つまたは複数の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要素、レイアウト等を備えて実行され得ることを理解する。他の場合において、よく知られた構造、構成要素、または操作は、本発明に係る曖昧な態様を回避するために詳細には示されない、または記載されない。
【0132】
この記載された開示に続く特許請求の範囲は、ここでそれ自体分離した実施形態として確立するそれぞれの請求項を備えてこの記載された開示内に明確に組み込まれる。本開示は、それらの従属請求項と共に独立請求項の全ての変形を含む。さらに、独立及び続く従属請求項から派生可能な付加的な実施形態も記載された本明細書に明確に組み込まれる。これらの付加的な実施形態は、所定の従属請求項の従属性を「請求項(X)から直前請求項までのいずれか1項に記載の」というフレーズにより交換することによって決定され、ここにおいて、括弧を付した語「(X)」は、最も近く列挙された独立請求項の数字に交換される。たとえば、独立請求項1から開始する第1のクレームセットのため、請求項3はこれらの分離した従属性が2つの別個の実施形態を実現させて請求項1及び2のいずれかから従属でき、請求項4はこれらの分離した従属性が3つの別個の実施形態を実現させて請求項1、2、または3のいずれか1項から従属でき、請求項5はこれらの分離した従属性が4つの別個の実施形態を実現させて請求項1、2、3、または4のいずれか1項から従属できる、等である。
【0133】
特許請求の範囲における特徴または要素に対する「第1の」という記載は、こうした特徴または要素の第2または付加的な存在を必ずしも示唆しない。本明細書を通しての「実施例」または「実施形態」についての参照は、実施例に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が本発明に係る少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通した様々な箇所における「実施例」または「実施形態」という語の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照するものではない。ミーンズプラスファンクション形式で特に列挙された要素は、存在する場合、米国特許法第112条第6パラグラフにしたがって本明細書に記載の対応する構造、材料または機能及びその均等のものを包含するものと解釈されることを意図する。独占的所有権または特権が請求される本発明に係る実施形態は、以下に定義される。