(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁基板を備え、前記絶縁基板の位置指示器により位置指示される側の第1の面側に表面シートが張り合わされていると共に、前記絶縁基板の前記第1の面とは反対側の第2の面にコイルを構成する導体の少なくとも一部が形成されているセンサ基板本体を生成する第1の工程と、
前記第1の工程で生成された前記センサ基板本体の複数個を、前記第2の面に形成されている前記コイルを構成する導体の少なくとも一部側を露出させた状態で揃えて並べられる第2の工程と、
磁性粉の磁化の方向が、前記磁性粉により構成される層の厚さ方向に直交する方向に揃えられ、前記コイルからの交番磁界を磁化の方向に導く磁性粉材料層と、導電性の金属からなる層であって前記コイルからの交番磁界が外部に漏洩しないようにするための電磁シールド層とが積層され、前記磁性粉材料層の前記電磁シールド層とは反対側の面側に接着材層が形成されているカバーレイ部材シートが巻回されているロール部材から、前記カバーレイ部材シートを引き出して、前記接着材層が、第2の工程で並べられた前記複数個の前記センサ基板本体の前記第2の面と対向するように位置合わせする第3の工程と、
前記第3の工程で引き出された前記カバーレイ部材シートを、前記接着材層により、前記センサ基板本体の前記第2の面に形成されている前記コイルを構成する導体の少なくとも一部に直接被着する第4の工程と、
前記センサ基板本体に前記カバーレイ部材シートを被着した状態で、個々のセンサ基板本体毎に分離するように型抜き切断する第5の工程と、
を備える電磁誘導方式のセンサの製法。
前記カバーレイ部材シートは、絶縁体からなるベース部材の一方の面側に前記接着材層が設けられ、前記一方の面とは反対側の他方の面に、前記磁性粉材料層と前記電磁シールド層とが積層されて形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導方式のセンサの製法。
絶縁基板を備え、前記絶縁基板の位置指示器により位置指示される側の第1の面側に表面シートが張り合わされていると共に、前記絶縁基板の前記第1の面とは反対側の第2の面にコイルを構成する導体の少なくとも一部が形成されているセンサ基板本体を生成する第1の工程と、
前記第1の工程で生成された前記センサ基板本体の複数個を、前記第2の面に形成されている前記コイルを構成する導体の少なくとも一部側を露出させた状態で揃えて並べられる第2の工程と、
磁性粉の磁化の方向が、前記磁性粉により構成される層の厚さ方向に直交する方向に揃えられ、前記コイルからの交番磁界を磁化の方向に導く磁性粉材料層と、導電性の金属からなる層であって前記コイルからの交番磁界が外部に漏洩しないようにするための電磁シールド層とが積層され、前記磁性粉材料層に接着材が含浸されて形成されているカバーレイ部材シートが巻回されているロール部材から、前記カバーレイ部材シートを引き出して、前記磁性粉材料層が、第2の工程で並べられた前記複数個の前記センサ基板本体の前記第2の面と対向するように位置合わせする第3の工程と、
前記第3の工程で引き出された前記カバーレイ部材シートを、前記接着材が含浸されている前記磁性粉材料層を前記センサ基板本体の前記第2の面に形成されている前記コイルを構成する導体の少なくとも一部に直接被着することにより被着する第4の工程と、
前記センサ基板本体に前記カバーレイ部材シートを被着した状態で、個々のセンサ基板本体毎に分離するように型抜き切断する第5の工程と、
を備える電磁誘導方式のセンサの製法。
前記カバーレイ部材シートは、絶縁体からなる保護シートの上に前記電磁シールド層が被着形成され、前記電磁シールド層の上に前記接着材が含浸されている前記磁性粉材料層が被着されて構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁誘導方式のセンサの製法。
【背景技術】
【0002】
ペン型の位置指示器と共に使用される電磁誘導方式の位置検出装置は、いわゆるタブレット端末や、パッド型携帯端末、さらにはPDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報装置の普及と共に、広く普及されるようになってきている。そして、それらの電子機器の薄型化に伴い、電磁誘導方式の位置検出装置に用いられる電磁誘導方式のセンサも、薄型化となってきている。
【0003】
ところで、電磁誘導方式のセンサは、ペン型の位置指示器と電磁結合することにより、位置指示器の指示位置を検出する。このため、位置指示器は、センサとの電磁結合のためのコイルとコンデンサとからなる共振回路を備える。また、電磁誘導方式のセンサは、位置指示器の共振回路と電磁結合するコイル群を備える。
【0004】
そして、電磁誘導方式のセンサは、例えば特許文献1(特開2009−3796号公報)に記載されているように、センサ基板に磁路板と呼ばれる電磁シート部材が被着されて設けられることにより構成される。電磁シート部材は、センサと位置指示器との間での電磁結合において、センサから発生する磁束をできるだけ漏洩なく利用することができるようにするためと、センサの外部との間における電磁シールドの役割をする。
【0005】
センサは、位置指示器による位置指示の入力を受け付ける検出領域において、位置指示器と電磁結合することにより、位置指示器の指示位置を検出する。位置指示器の検出領域は、例えば矩形領域とされ、位置指示器により指示された位置は、X軸方向(横方向)及びY軸方向(縦方向)の2次元平面座標として検出される。
【0006】
図10に、従来のセンサの構成を示す。センサ1を構成するセンサ基板10は、
図10(A)に示すように、例えばPET(polyethylene terephthalate)からなる絶縁基板11の一方の面側にX軸方向ループコイル群12が配置されていると共に、他方の面側にY軸方向ループコイル群13が配置されている。そして、
図10(A)の例では、センサ基板10は、X軸方向ループコイル群12の全体を覆うように、例えばPETフィルムからなる表面シート(カバーレイ)14が形成されていると共に、Y軸方向ループコイル群13の全体を覆うように保護シート(カバーレイ)15が形成されている。
【0007】
ここで、カバーレイは、センサ基板10などのプリント配線基板の外側表面に形成された導体パターンを全面的又は部分的に覆ってカバーするために使用される絶縁材料の層である(出典:「電子回路用語」JPCA−TD01−2008社団法人日本電子回路工業会)。なお、この明細書ではカバーレイを含んで一体的にセンサ基板(後述するセンサ基板本体)と接合されてセンサを構成する部材をカバーレイ部材と称することとする。
【0008】
表面シート14を構成するカバーレイ部材及び保護シート15を構成するカバーレイ部材は、例えば絶縁材料であるPETフィルムの一面側に接着材(図示は省略)が塗布されて構成されている。そして、その接着材により、カバーレイ部材が、X軸方向ループコイル群12及びY軸方向ループコイル群13のそれぞれを覆うようにセンサ基板10に被着される。カバーレイ部材からなる表面シート14および保護シート15が被着されることより、センサ基板10が完成となる。この例では、位置指示器は、表面シート14の側からセンサ基板10に対して位置指示入力がなされるように構成される。
【0009】
次に、磁路板と呼ばれる電磁シート部材2は、
図10(B)に示すように、磁路材を構成する第1の層21と、電磁シールドを行うための第2の層22とを備える。磁路材を構成する第1の層21は、以上のようにして、送受される電磁波に関し、ループコイル群12又は13のループコイルによって生成される交番磁界に対する磁路を形成することで、発生した磁束の発散を防止し、これにより電磁誘導方式のセンサ1としての、位置指示器に対する検出感度を向上させる。また、電磁シールドを行うための第2の層は、電磁誘導方式のセンサ1の保護シート15側の外部に交番磁界が放射されるのを防止する機能を果たすと共に、保護シート側の外部からの電磁波が、上記のようにして表面シート14側において送受される電磁波に対してノイズとして混入しないようにするためのものである。
【0010】
第1の層21としては、高透磁率を有するものであって、最近の電磁誘導方式のセンサの薄型化の要請から、従来はパーマロイやケイ素鋼板などの磁性鉄板が用いられ、特に、最近は、例えば透磁率が1000(H/m)というように非常に大きく、かつ、薄くできる、例えば25ミクロンというような、アモルファス合金が、磁路材としての第1の層21として用いられている。また、第2の層22は、非磁性体であると共に、高い導電性を備えている金属材料、この例では、アルミニウムで構成されている。
【0011】
ところで、アモルファス合金は、電気抵抗が極めて低いために、第1の層21からなる磁路材に印加された磁束に対応した渦電流が発生する。この渦電流は、印加された磁場を打ち消すように作用する。しかしながら、高透磁率を有するアモルファス合金は、渦電流の発生に起因するデメリットを勘案しても、全体として、磁路板としての高い性能を発揮するために、これまで、第1の層21を構成する磁路材としてアモルファス合金が用いられてきた。
【0012】
そして、電磁シート部材2は、保護層を構成するPETフィルム23上に、第2の層22としてのアルミニウム層が被着されると共に、このアルミニウムからなる第2の層22の上に、アモルファス合金からなる第1の層21が形成されて、構成されている。そして、電磁シート部材2においては、アモルファス合金からなる第1の層21に接着材層24が塗布されている。
【0013】
そして、センサ基板10の保護シート15に対して、電磁シート部材2の接着材層24が接着されることにより、
図11に示すように、センサ基板10に対して電磁シート部材2が被着され、電磁誘導方式のセンサ1が構成される。このように、従来は、センサ基板10と電磁シート部材2とがそれぞれ独立に形成され、互いに被着されることで、電磁誘導方式のセンサ1が構成される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明による電磁誘導方式のセンサの実施形態及びその製法の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0031】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による電磁誘導方式のセンサの第1の実施形態の構成例を示す断面図である。この第1の実施形態の電磁誘導方式のセンサ3は、
図1(A)に示すセンサ基板本体31と、
図1(B)に示すカバーレイ部材32とからなり、センサ基板本体31にカバーレイ部材32が被着されることにより一体に構成される(
図1(C)参照)。
【0032】
センサ基板本体31は、
図1(A)に示すように、例えばPETからなる絶縁基板311の一方の面側にX軸方向ループコイル群導体312が配置されると共に、前記一方の面と対向する他方の面側にY軸方向ループコイル群導体313が配置されている。そして、
図1(A)の例では、X軸方向ループコイル群導体312の全体を覆うように、例えばPETフィルムからなる表面シート(カバーレイ)314が被着形成されている。位置指示器は、表面シート314の側からセンサ基板本体31に対して位置指示入力がなされるように構成される。
【0033】
このセンサ基板本体31に設けられたX軸方向ループコイル群導体312及びY軸方向ループコイル群導体313により、位置指示器により指示された位置を検出する構成について、
図2を参照して説明する。なお、このセンサ基板本体31を含む電磁誘導方式のセンサ3と共に使用する位置指示器4は、
図2に示すように、コイル4Lと、このコイル4Lに並列に接続されるコンデンサ4Cとから構成される共振回路を内蔵している。
【0034】
センサ基板本体31においては、
図2に示すように、X軸方向ループコイル群導体312を構成する複数個の矩形のX軸方向ループコイル312Xが、位置指示器4による指示位置の検出領域の横方向(X軸方向)に、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。また、Y軸方向ループコイル群導体313を構成する複数個の矩形のY軸方向ループコイル313Yが、位置指示器4による指示位置の検出領域の、前記横方向に直交する縦方向(Y軸方向)に、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。この例では、X軸方向ループコイル312XはX軸方向にn本配置されており、また、Y軸方向ループコイル313YはY軸方向にm本配置されている。
【0035】
また、センサ3には、センサ回路部が設けられている。このセンサ回路部は、選択回路101、発振器102、電流ドライバ103、送受信切り替え回路104、受信アンプ105、検波回路106、ローパスフィルタ107、サンプルホールド回路108、A/D(Analog to Digital)変換回路109および処理制御部110を備えている。
【0036】
複数個のX軸方向ループコイル312Xのそれぞれ及び複数個のY軸方向ループコイル313Yのそれぞれは、選択回路101に接続される。この選択回路101は、複数個のX軸方向ループコイル312X及び複数個のY軸方向ループコイル313Yのうちの一のループコイルを、処理制御部110からの制御指示に従って順次選択する。
【0037】
発振器102は、周波数f0の交流信号を発生する。この交流信号は、電流ドライバ103に供給されて電流に変換された後に、送受信切り替え回路104へ送出される。送受信切り替え回路104は、処理制御部110の制御により、選択回路101によって選択されたループコイル312X又は313Yが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を、所定時間毎に切り替える。送信側端子Tには電流ドライバ103が、受信側端子Rには受信アンプ105が、それぞれ接続されている。
【0038】
したがって、送信時には、送受信切り替え回路104の送信側端子Tを介して、電流ドライバ103からの交流信号が、選択回路101で選択されているループコイル312X又は313Yに供給される。また、受信時には、選択回路101で選択されたループコイル312X又は313Yに発生する誘導電圧は、選択回路101及び送受信切り替え回路104の受信側端子Rを介して受信アンプ105に供給されて増幅され、検波回路106へ送出される。
【0039】
検波回路106によって検波された信号は、低域フィルタ107およびサンプルホールド回路108を介してA/D変換回路109に供給される。A/D変換回路109では、アナログ信号をディジタル信号に変換し、処理制御部110に供給する。
【0040】
処理制御部110は、位置検出のため制御を行う。すなわち、処理制御部110は、選択回路101におけるループコイル312X又は313Yの選択、送受信切り替え回路104での信号切り替え制御、サンプルホールド回路108のタイミングなどを制御する。
【0041】
処理制御部110は、送受信切り替え回路104を送信側端子Tに接続するように切り替えることにより、選択回路101で選択されているループコイル312X又は313Yを通電制御して電磁波を送出(あるいは交番磁界を生成)させる。位置指示器4のコイル4Lとコンデンサ4Cとからなる共振回路は、このループコイル312X又は313Yから送出された電磁波を受けて(あるいは生成された交番磁界からの誘導起電力を得て)、エネルギーを蓄える。
【0042】
次に、処理制御部110は、送受信切り替え回路104を受信側端子Rに接続するように切り替える。すると、X軸方向ループコイル群導体312及びY軸方向ループコイル群導体313の各ループコイル312X及び313Yには、位置指示器4から送信される電磁波によって誘導電圧が発生する。処理制御部110は、この各ループコイル312X及び313Yに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて、センサ3の検出領域における位置指示器によるX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0043】
次に、カバーレイ部材32について説明する。このカバーレイ部材32は、
図1(B)に示すように、絶縁体材料例えばPETからなり一方の面321a側に、接着材層322を構成する接着材が塗布されているカバーレイベースフィルム321を備える。そして、このカバーレイベースフィルム321の、接着材が塗布されていない他方の面321bに、磁性粉材料層323が被着形成される。この磁性粉材料層323は、センサ基板本体31のX軸方向ループコイル312X及びY軸方向ループコイル313Yによって生成される交番磁界のための磁路を形成するための磁路材を構成する。
【0044】
この例では、この磁性粉材料層323は、高透磁率の磁性体の粉末、例えばアモルファス合金の粉末を、非磁性および非導電性の高分子材料、この例では樹脂と混合したもので構成する。そして、この実施形態では、磁性粉材料は、塗料のような形態として構成して、この塗料形態の磁性粉材料を、カバーレイベースフィルム321の接着材が塗布されていない他方の面321bに塗布することで、磁性粉材料層323を生成する。
【0045】
図3に、カバーレイベースフィルム321に磁性粉材料層323を塗布する方法の一例を示す。
【0046】
図3に示すように、カバーレイベースフィルム321は、供給リール33Sに巻回されており、この供給リール33Sから繰り出されたカバーレイベースフィルム321は、その一面側に磁性粉材料層323が塗布された後、巻き取りリール33Tに巻き取られる。磁性粉材料層323の塗布装置34が、カバーレイベースフィルム321の、供給リール33Sから巻き取りリール33Tへの搬送経路中に設けられる。この塗布装置34は、磁性粉ペースト341の貯め部342を備えると共に、詳細な構成は省略するが、この貯め部342の磁性粉ペースト341を、例えば50〜100μmの厚さで、カバーレイベースフィルム321上に塗布する塗布部343を備える。
【0047】
磁性粉ペースト341は、前述した例えばアモルファス合金の粉末からなる磁性粉材料と、非磁性および非導電性の例えば樹脂からなる高分子材料とを混合して、ペースト状(のり状)に構成したものである。この例では、磁性粉材料に含まれる各磁性粉341Pは、扁平な形状(
図3参照;
図3では、磁性粉341Pは扁平な楕円形)を有している。
【0048】
そして、この例では、塗布装置34と巻き取りリール33Tとの間の移動経路には、磁性粉ペースト341に含まれる磁性粉341Pの磁化の方向を、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向、すなわち、磁性粉材料層323の厚さ方向に直交する方向に揃えるようにするための磁界発生装置35が設けられる。
【0049】
磁界発生装置35は、この例では、塗布装置34により磁性粉ペースト341が塗布されて磁性粉材料層323が一面に形成されているカバーレイベースフィルム321が通る貫通空間351を備える。そして、磁界発生装置35は、その貫通空間351内において、
図3において両方向矢印で示すように、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向(磁性粉材料層323の厚さ方向に直交する方向)に磁界35Fを発生させる。尚、この図では磁界発生装置35は、フィルム面に平行であって、かつ、フィルムの延長方向に沿う方向の磁界35Fを発生するように構成されている。尚、図中の、両方向矢印35Fは、厚さ方向に直交する方向のベクトルであれば、どちらの向きでもよいことを示している。これは、磁性体、あるいは軟磁性体の磁化の方向として、両矢印のどちらか一方にN極が向き他方にS極が向けば磁極の極性の反転を許すことを意味している。
【0050】
塗布装置34においてカバーレイベースフィルム321に磁性粉ペースト341が塗布されて形成された磁性粉材料層323に含まれる磁性粉341Pのそれぞれは、
図3において点線の○印36aによって囲んで示す磁界発生装置35を通る前の位置においては、
図3において、左下部に示すように、扁平な磁性粉341Pのそれぞれの扁平面は、ランダムな方向を向いている。
【0051】
この磁性粉材料層323に含まれる磁性粉341Pは、磁界発生装置35の貫通空間351の磁界35Fを通ると、この磁界35Fにより磁化されて、扁平楕円形状の長半径方向の両端に磁極を生じ、その生じた両端の磁極を結ぶ方向である磁化の方向が、磁界35Fの方向と同じになるように変移させられる。すなわち、カバーレイベースフィルム321に形成された磁性粉材料層323に含まれる磁性粉341Pのそれぞれの扁平面は、
図3において点線の○印36bによって囲んで示す磁界発生装置35を通った後の位置においては、
図3において、右下部の拡大図に示すように、磁界35Fの方向に平行になるように変移されて、全て揃うようにされる。
【0052】
このことを、
図4を参照して更に説明する。
図4は、磁界発生装置35を通る前と通った後の磁性粉材料層323における磁性粉341Pの磁化の方向を示す図である。この
図4は、磁性粉341Pの磁化の方向が磁界発生装置35の前後で変更されることを説明するための模式的な図であり、扁平楕円形の磁性粉341Pの大きさと、磁性粉材料層323の厚さや幅との関係は実際とは異なることは言うまでもない。
【0053】
すなわち、
図4(A)は、カバーレイベースフィルム321に形成された磁性粉材料層323を、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に直交する方向から見た場合における磁性粉341Pの磁化の方向(磁極を結ぶ方向)を説明するための図である。また、
図4(B)は、磁性粉材料層323を、その厚さ方向に直交する方向から見た場合においける磁性粉341Pの磁化の方向(磁極を結ぶ方向)を説明するための図である。
【0054】
この
図4(A)および(B)に示すように、カバーレイベースフィルム321に形成された磁性粉材料層323に含まれる磁性粉341Pのそれぞれの磁化の方向(
図4において各磁性粉341Pに付与した矢印で示す扁平面の方向)は、磁界発生装置35を通ることにより、磁性粉材料層323の厚さ方向に直交する方向の磁界35Fと同じ方向に揃うようにされる。
【0055】
図4(B)のように、磁性粉材料層323に含まれる全ての磁性粉341Pの磁化の方向が、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向に揃えられることにより、この磁性粉材料層323からの漏れ磁束を防ぎ易くすることができる。また、磁性粉材料層の透磁率の制御が容易になると共に、最適な透磁率とする磁性粉材料層の厚さの制御が容易になると言う効果がある。
【0056】
なお、上述の例では更に、
図4(A)のように磁界35Fの方向がカバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向であって、更に、磁性粉材料層323の形成時のカバーレイベースフィルム321の搬送方向であるフィルムの延長方向に沿った方向であるため、磁性粉材料層323に含まれる磁性粉341Pの磁化の方向も、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向であって、かつ、フィルムの延長方向に沿った方向に揃うようにされている。しかし、磁性粉341Pの磁化の方向は、カバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向であれば、全て同じ方向としなくとも良い。
【0057】
なお、磁性粉341Pの扁平形状は、楕円形に限られるものではないことは言うまでもない。磁化の方向を、厚さ方向に鉛直な方向に、極性の反転を許しつつ指向性をもって保持できる形状であれば良く、典型的には、針状のものや棒状とよばれる形状を含む。例えば、磁性粉は、軟磁性体であって、その形状が例えば厚さ方向に直交するある一方向のベクトル成分(主成分)が、その方向に直交する他のベクトル成分に比して大きい形状、であってもよい。
【0058】
この例のカバーレイ部材32は、以上のようにしてカバーレイベースフィルム321に磁性粉材料層323が形成されると共に、カバーレイベースフィルム321の磁性粉材料層323が形成されていない方の面に、接着材層322を構成する接着剤が被着される。更に、磁性粉材料層323に対して電磁シールド層324が被着され、この電磁シールド層324に対して保護シート325が被着されることにより、カバーレイ部材32が構成される。
【0059】
前述したように、従来は、磁路材としての高透磁率のアモルファス合金を単体として用いており、高硬度であるため加工性が悪く、そのため、予め、外形加工をしてセンサ基板とは別部材として構成し、カバーレイ部材を被着したセンサ基板に、後から磁路材を被着するようにする必要があった。すなわち、加工性の悪いアモルファス合金からなる磁路材を、センサの一部を構成するカバーレイ部材に被着しておくことは非常に手間がかかり、実質上困難であった。
【0060】
これに対して、この実施形態では、磁路材を、高透磁率の磁性体の粉末を高分子材料と混合した磁性粉材料層323の構成とした。これにより、上述のように、例えば磁性粉材料を塗料のような構成とすることができ、センサ3の一部を構成するカバーレイ部材32として、カバーレイベースフィルム321に予め被着して構成することができる。
【0061】
しかも、上述したように、カバーレイ部材32に形成された磁性粉材料層323に含まれる磁性粉は扁平な形状を有し、その磁化の方向が、カバーレイ部材32のカバーレイベースフィルム321のフィルム面に平行な方向(磁性粉材料層323の厚さ方向に直交する方向)に揃えられている。したがって、厚さの方向(平面に対して鉛直な方向)に漏れる漏れ磁束を防ぎ易く、また、透磁率やカバーレイ部材32における磁性粉材料層323の厚さの制御が容易であるという効果を奏する。
【0062】
なお、磁性粉材料層323を、カバーレイベースフィルム321に被着する方法は、磁性粉材料を塗料の形態にする方法に限らない。例えば、磁性粉材料に接着材を含浸させておき、その接着材により、接着させることにより、カバーレイベースフィルム321に磁性粉材料層323を被着するように構成することもできる。
【0063】
なお、磁性粉材料層323を構成する磁性粉材料としては、アモルファス合金の粉末の代わりに、パーマロイやフェライト(酸化鉄)の粉末を用いることもできる。また、高分子材料としては、樹脂に限られるものではなく、有機高分子材料、無機高分子材料のいずれであっても良い。例えば、有機高分子材料としては、タンパク質、核酸、多糖類(セルロース、デンプンなど)や天然ゴムなどの天然高分子材料、また、合成樹脂、シリコン樹脂、合成繊維、合成ゴムなどの合成高分子材料を用いることができる。また、無機高分子材料としては、二酸化ケイ素(水晶、石英)、雲母、長石、石綿などの天然高分子材料、また、ガラスや合成ルビーなどの合成高分子材料を用いることができる。
【0064】
カバーレイ部材32においては、この磁性粉材料層323の面には、電磁シールド層324が被着される。この例では、電磁シールド層324は、非磁性体であると共に、交番磁界に対する渦電流を生じさせて、センサ基板本体31のX軸方向ループコイル312X及びY軸方向ループコイル313Yからの交番磁界が外部に漏洩しないようにするために、低抵抗(好ましくは電気抵抗がほぼゼロ)で高い導電性を備えている金属材料、この例では、アルミニウムで構成されている。
【0065】
このアルミニウムからなる電磁シールド層324を、磁性粉材料層323に対して被着する方法としては、接着剤を用いて接着する方法の他、圧着による方法、あるいはアルミニウムを磁性粉材料層323に蒸着するなどの方法を用いることができる。圧着による方法の場合に、磁性粉材料層323には、接着材を含浸させておくようにしても良い。
【0066】
そして、カバーレイ部材32においては、更に、この電磁シールド層324に対して、例えばPETなどの絶縁体からなる保護シート325が例えば接着材(図示は省略)により被着される。この保護シート層325は、センサ3の保護シート325側に配置されるプリント配線基板などに配設される電子部品との間の絶縁を確保するようにする。
【0067】
以上のようにして構成されるセンサ3において、磁路材としての磁性粉材料層323は、例えばアモルファス合金などの高透磁率の材料の粉末に、非磁性および非導電性の高分子材料が混合されるため、アモルファス合金などの高透磁率の材料のみからなるものに比較して、低透磁率であると共に、大きい電気抵抗を有している。そして、アモルファス合金よりも硬度が低いため、切断加工が容易である。
【0068】
ただし、厚さがアモルファス合金の場合には例えば25μmと薄いのに比べて、磁性粉材料層では例えば50〜100μm程度となって若干厚くなる。しかし、この実施形態では、磁性粉材料層323は、カバーレイ部材32に予め塗布されていて、センサ3に一体に構成されている。すなわち、従来のように、カバーレイが施されているセンサ基板に、別部材として構成された電磁シート部材を、接着材を介して接着する必要がないので、電磁シート部材をセンサ基板に接着するための接着材層が不要になり、その分、センサ全体としての厚さを薄くできる。このため、磁性粉材料層323の厚さが、アモルファス合金シートよりも厚くなったとしても、磁路材及び電磁シールド材を含めたセンサ3の全体としては、従来と同等程度の厚さとすることが可能である。
【0069】
図5に、冒頭で述べた特許文献1の電磁シート部材2の第1の層21、すなわち、磁路材(アモルファス合金)と、この実施形態の磁性粉材料層323との特性を比較して示す。この
図5に示すように、特許文献1の第1の層(アモルファス合金)の透磁率は、1000[H/m]と非常に高く、交流磁界に対する磁路としての性能が高く、その一方で電気抵抗は非常に小さい。このため、前述したように、アモルファス合金からなる磁路材においては、電気抵抗が極めて低いために、この磁路材に印加された磁束に対応した渦電流が発生し、印加された磁場を打ち消すように作用するという欠点がある。また、アモルファス合金の磁路材は、高硬度であるため薄さという点では優れているが、加工性が悪いという問題がある。
【0070】
これに対して、実施形態の磁性粉材料層323は、磁性体材料の粉末と非磁性および非導電性の高分子材料とを混合したものであるので、その透磁率は、50〜240[H/m程度であり、低透磁率であるが、電気抵抗は大きく、例えば100kΩの値を有しているために、交番磁界によって発生する渦電流が大きく抑制される。このため、交番磁束は渦電流に起因する影響を回避できる。このために、磁性粉材料層323は、その透磁率が低い値であっても、良好な磁路を形成することが可能となる。
【0071】
したがって、磁性粉材料層323は、X軸方向ループコイル312X及びY軸方向ループコイル313Yで発生する交番磁界や、位置指示器から受信した交番磁界に対する磁束路として十分な性能を有し、これによって、センサ3の感度を良好に維持することができる。
【0072】
しかし、この実施形態の磁性粉材料層323の厚さが薄い場合には、X軸方向ループコイル312X及びY軸方向ループコイル313Yで発生する交番磁界や、位置指示器から受信した交番磁界のうちの一部が、磁性粉材料層323を透過(貫通)して、センサ3の表面シート314側とは反対の側に漏洩する恐れがある。この実施形態では、この交番磁束の漏洩は、カバーレイ部材32において、磁性粉材料層323上に、この例ではアルミニウムからなる電磁シールド層324を配置し、磁性粉材料層323と組み合わせることで遮蔽する。
【0073】
すなわち、磁性粉材料層323から漏洩する交番磁束は許容し得るものとし、漏洩した交番磁界は導電性を有する電磁シールド層324に渦電流を発生させることで、電磁シールド層324から外部に漏洩しないようにする。この構成によって、たとえ磁性粉材料層323を介して漏洩した交番磁界があっても、電磁シールド層324の、磁性粉材料層323とは反対の側への漏洩は防止される。よって、X軸方向ループコイル312X及びY軸方向ループコイル313Yで発生する交番磁界や、位置指示器から受信した交番磁界による交番磁束は、磁性粉材料層323と電磁シールド層324とが組み合わされた構成によりセンサ3の外部への漏洩が防止される。
【0074】
また、センサ3の外部からの電磁ノイズの進入は、電磁シールド層324に発生する渦電流によって防止されることとなる。なお、電磁シールド層324の材料は、アルミニウムに限られるものではなく、例えば、マグネシウム合金、ステンレス(SUS)、銅およびその合金(黄銅など)をも用いることができる。
【0075】
なお、磁性粉材料層323の厚さがある程度の厚さの場合には、交番磁界の漏洩は少なくなるので、センサの下に電子回路等のノイズ発生源がない場合は、電磁シールド層324を配置する必要はなくなる。この場合は、
図7と
図9(E)に記載の実施例の構成を用いることができる。
【0076】
そして、この実施形態のセンサ3の磁性粉材料層323は、磁性体材料の粉末と非磁性および非導電性の高分子材料とを混合したものであるので、硬度が比較的低く、加工性に優れている。また、電磁シールド層324も、硬度が比較的低く、加工性に優れている。そのため、この利点を利用して、この実施形態では、カバーレイ部材32に予め磁性粉材料層323及び電磁シールド層324を形成しておく構成を採用することで、以下のようなセンサ3の製法を採用することができて、センサ3の量産を可能にすることができる。
【0077】
また、磁性粉材料層が、従来のアモルファス合金層よりも層の厚さが厚くなったとしても、この発明の電磁誘導方式のセンサは、カバーレイ部材に磁路材が被着されていて、従来の磁路材に相当する部材が、一体に構成されているので、従来の電磁シールド部材における、アモルファス合金、電磁シールド、保護シートとを接合するための接着材層は、不要となり、その分、厚さを薄くすることができる。
【0078】
[センサ3の製法の実施形態]
図6は、この実施形態のセンサ3の製法を説明するための図である。
図6に示すように、この例においては、カバーレイ部材32は、シート状に構成する。そして、このカバーレイ部材シート32Sの所定長を巻回したカバーレイ部材ロール32Lを用意する。カバーレイ部材シート32Sは、
図1(B)に示した構成のカバーレイ部材32において、カバーレイベースフィルム321の一面321aに被着された接着材322に対して剥離紙326が被着されているものである。
【0079】
図6に示すように、カバーレイ部材ロール32Lから引き出されたカバーレイ部材シート32Sは、当該引き出しと共に、剥離紙326が剥離されて接着材322が露呈する状態となる。
【0080】
そして、絶縁基板311の表裏にX軸方向ループコイル群導体312及びY軸方向ループコイル群導体313を形成し、表面シート314を被着形成してセンサ基板本体31を形成しておく。この場合に、センサ基板本体31は、外形加工を施すが、この外形加工は最終的な精度の良い外形として加工しておく必要はなく、若干、寸法の余裕を持ったものとして形成しておく。ただし、図示は省略するが、最終的な精度の良い外形寸法に加工するための位置基準マークを、外部から確認可能の状態で、このセンサ基板本体31には形成しておくようにする。
【0081】
そして、以上のようにして形成しておいたセンサ基板本体31を、Y軸方向ループコイル群導体313側を、接着材層322に向けた状態で、カバーレイ部材シート32Sの接着材層322上に配置して、カバーレイ部材シート32Sに対して接着するようにする。この際に、前述した位置基準マークを参照しながら、センサ基板本体31に対してカバーレイ部材32が、所定の位置関係となるように位置合わせをする。
【0082】
そして、この製法の実施形態においては、最終的なセンサ3の外形に応じた型抜き加工用のカッター(図示は省略)の下方に、カバーレイ部材シート32Sに被着されたセンサ基板本体31を搬送するようにする。そして、型抜き加工用のカッターに対して前記位置基準マークを参照して位置合わせをした後、当該型抜き加工用のカッターにより、カバーレイ部材シート32Sに被着されたセンサ基板本体31が、最終的な外形となるように型抜き切断加工を実行する。これにより、センサ基板本体31にカバーレイ部材32が被着されているセンサ3が形成される。
【0083】
この場合に、型抜き加工用のカッターを並列に複数個、配設すれば、複数個のセンサ3を同時に製造することができる。
【0084】
以上のようにして、この実施形態のセンサの製法によれば、従来に比較して、簡単な工程でセンサ3を作成することができる。すなわち、従来は、センサ基板と電磁シート部材とをそれぞれ別々に作成する工程をし、その工程で作成したセンサ基板と電磁シート部材のそれぞれに対して外形加工を施す工程を行った後、その外形加工を施したそれぞれのセンサ基板と電磁シート部材とを互いに接着させる工程をすることにより、センサを製造する必要があり、複雑な工程となり、量産が困難であった。
【0085】
これに対して、この実施形態のセンサの製法によれば、センサ基板本体31を作成し、その作成したセンサ基板本体31を、予め用意しているカバーレイ部材シート32Sに被着して、型抜き加工をするという非常に簡単な工程により、センサ3を製造することができる。しかも、この場合に、従来は、電磁シート部材は、磁路材として用いられるアモルファス合金の硬さのために、特別な切断工程を必要としたが、この実施形態のセンサにおいては、磁路材は磁性粉材料層からなり、容易に切断加工が可能であるので、型抜きカッターを用いて容易に型抜き加工ができ、量産に好適である。
【0086】
また、この実施形態のセンサ3によれば、透磁率がアモルファス合金のような高透磁率ではない磁性粉材料を磁路材として用いているので、センサ3の保護シート325の外側に、地磁気などの直流磁界による直流磁束を検出する地磁気センサ(ホール素子など)を配設しても、正確に地磁気をセンシングすることができる。
【0087】
すなわち、アモルファス合金のような高透磁率を磁路材として用いたセンサの近傍に地磁気センサが設けられた場合、地磁気などの直流磁界は、その高透磁率の磁路材を通るように直流磁束の方向が変化してしまい、地磁気センサで正しい地磁気の方向が検出できなくなるおそれがある。
【0088】
これに対して、この実施形態のセンサ3においては、磁性粉材料層323を構成する磁性粉材料は、アモルファス合金などの高透磁率の材料の粉末と、高分子材料との混合比を調整することにより、地磁気などの直流磁界による直流磁束に対して実質的に影響を与えないように抑えるなど所望の透磁率に調整することができる。更に、透磁率の調整に加え磁性粉材料層323に電流が流れにくくするための所望の電気抵抗を備えた磁性粉材料を、比較的容易に作製することができる。
【0089】
なお、上述の第1の実施形態においては、カバーレイ部材32には、磁性粉材料層323のみではなく、電磁シールド層324を備えるように構成したが、電磁誘導式のセンサを設置する周囲の環境等の条件の違いによっては、電磁シールド層324は設けなくても良い。その場合には、
図7(A)に示すセンサ基板本体31(
図1(A)と同じ)に対して、
図7(B)に示すように、
図1(B)のカバーレイ部材32から電磁シールド層324を除いたカバーレイ部材32´とを用いて、接合することにより、
図7(C)に示すセンサ3´を構成することができる。
【0090】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態においては、センサ基板本体31のY軸方向ループコイル群導体313に対しては、カバーレイベースフィルム321からなる絶縁層を介して磁性粉材料層323を被着形成するようにした。しかし、磁性粉材料層323は、
図5の表に示したように、100kΩというような高抵抗であるので、カバーレイベースフィルム321からなる絶縁層を設けなくても、Y軸方向ループコイル群導体313の電気的特性への影響は殆どないと考えられる。そして、カバーレイベースフィルム321からなる絶縁層を設けない構成とすることで、センサの全体の厚さは、第1の実施形態のセンサ3よりも厚さが薄いセンサを実現することができる。
【0091】
この第2の実施形態は、以上のことを考慮して構成した電磁誘導方式のセンサを提供するもので、第1の実施形態のセンサ3と同一部分には、同一参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0092】
図8は、この第2の実施形態の電磁誘導方式のセンサ5を、その製法と共に説明するための図である。
【0093】
この第2の実施形態においては、先ず、センサ基板本体31を、
図8(A)に示すように、第1の実施形態と全く同様に構成する。次に、
図8(B)に示すように、このセンサ基板本体31の絶縁基板311の表面シート314側とは反対側の面に形成されている軸方向ループコイル群導体313の全体を覆うように、磁性粉材料層327を形成する。
【0094】
この磁性粉材料層327を構成する磁性粉材料は、第1の実施形態の場合の磁性粉材料層323と同様に、高透磁率の磁性体の粉末、例えばアモルファス合金の粉末を、非磁性および非導電性の高分子材料、この例では樹脂と混合したもので構成し、これを塗料の構成としたものとする。そして、この塗料の構成の磁性粉材料を、センサ基板本体31の絶縁基板311のY軸方向ループコイル群導体313群導体が形成されている面の全体を覆うように塗布することにより、磁性粉材料層327を形成する。
【0095】
次に、この第2の実施形態においては、保護シート325の一面側に、低抵抗で高い導電性を備える金属材料の例としてのアルミニウムからなる電磁シールド層324を被着形成したシート部材328を用意する。この場合に、第1の実施形態のカバーレイ部材シート32Sと同様に、シート部材328の電磁シールド層324の上面には接着材層329を塗布し、さらに、この接着材層329に剥離紙(図示は省略)が貼着されたものをロール状態に巻回したものを用意する。
【0096】
そして、ロールから引き出したシート部材328の剥離紙を剥離して接着材層329が露呈する状態とする。そして、磁性粉材料層327を塗布したセンサ基板本体31を、シート部材328上に配置して、その接着材層329に磁性粉材料層327を接着するようにする。この場合にも、第1の実施形態と同様の位置合わせをすることは言うまでもない。
【0097】
その後、第1の実施形態と同様にして、シート部材328に被着されたセンサ基板本体31を、型抜き加工用のカッターにより、型抜き加工を施して、切断して、第2の実施形態のセンサ5を構成するようにする。
【0098】
この第2の実施形態の電磁誘導方式のセンサ5によれば、上述した第1の実施形態のセンサ3と同様の効果を奏すると共に、絶縁体からなるカバーレイベースフィルム321が不要になるので、その分だけ、センサ5の厚さは、第1の実施形態のセンサ3よりも薄くなるという効果がある。
【0099】
なお、この第2の実施形態の場合には、Y軸方向ループコイル群導体313を覆うためのカバーレイ部材は、保護シート325がカバーレイベースフィルムの役割をするとともに、この保護シート325と、電磁シールド層324と、磁性粉材料層327とで構成されるものである。
【0100】
なお、上述した第1の実施形態と同様に、この第2の実施形態のセンサの場合にも、電磁シールド層324を設けなくても良い。また、電磁シールド層324を備える場合及び電磁シールド層を設けない場合のいずれにおいても、保護シート325を省略するようにして良い。
【0101】
電磁シールド層324及び保護シート325を省略する場合には、
図8(B)に示したように、センサ基板本体31に磁性粉材料層327を塗布等することにより被着することで、この第2の実施形態のセンサを構成することができる。その場合には、磁性粉材料層327のみで、カバーレイ部材が構成される。また、保護シート325のみを省略する場合には、磁性粉材料層327と電磁シールド層324とによりカバーレイ部材が構成される。
【0102】
[カバーレイ部材の他の構成例]
上述した第2の実施形態では、センサ基板本体31の絶縁基板311の表面シート側とは反対側の面に形成されたY軸方向ループコイル群導体313上に、塗料の構成とされた磁性粉材料を直接に塗布して磁性粉材料層327を構成するようにした。しかし、
図9(A)または
図9(B)に示すようなカバーレイ部材32Aまたは32Bを用意して、センサ基板本体31と接合するような構成としても良い。
【0103】
すなわち、
図9(A)の例のカバーレイ部材32Aは、保護シート325の上に電磁シールド層324を被着形成した後、この電磁シールド層324の上に、磁性粉材料層327Aを塗布等して被着する。そして、カバーレイベースフィルム321は用いずに、磁性粉材料層327Aの上に接着材層329Aを被着し、この接着材層329Aにより、センサ基板本体31と接合する。
【0104】
また、
図9(B)の例のカバーレイ部材32Bは、
図9(A)の例の磁性粉材料層327Aに代えて、接着材を含浸した磁性粉材料層327Bを、電磁シールド層324の上に被着形成したものである。この
図9(B)の例においては、
図9(A)の例の場合に必要であった接着材層329Aを設けなくても、センサ基板本体31と、カバーレイ部材32Bとを接合することができる。
【0105】
この
図9(A)及び
図9(B)の例は、上述の第2の実施形態と同様に、カバーレイベースフィルム321が不要となり、第2の実施形態と同様に、センサ全体として薄型化が可能となる。
【0106】
カバーレイ部材の他の例は、
図9(A)及び(B)の例のみに限らない。
図9(C)は、他の一例のカバーレイ部材32Cを示す。この例のカバーレイ部材32Cは、第1の実施形態におけるカバーレイ部材32から、保護シート325を除いたものに等しい。すなわち、この例のカバーレイ部材32Cにおいては、センサの表面シート314とは反対側に、電気的に接触してはいけないものが存在していない場合を想定し、保護シート325は、省略している。したがって、カバーレイベースフィルム321のセンサ基板本体との接合側の面に接着材322が形成されると共に、カバーレイベースフィルム321の反対側の面には、磁性粉材料層323が被着形成され、さらに、磁性粉材料層323に対して電磁シールド層324が被着形成される。この例のカバーレイ部材32Cは、電磁シールド層324が露呈される。
【0107】
以上の例のカバーレイ部材32A,32B,32Cは、いずれもカバーレイベースフィルム(保護シート325やフィルム321)を有する例である。以下に説明する例は、カバーレイベースフィルムを省略したカバーレイ部材の例である。
【0108】
図3に示したようにしてカバーレイベースフィルム321上に塗布されて形成された磁性粉材料層323は、乾燥後に、カバーレイベースフィルム321から剥離したシート部材として構成することができる。以下に示す2つの例は、この磁性粉材料層をシート部材として構成した場合の例である。
【0109】
図9(D)に示す例のカバーレイ部材32Dは、カバーレイベースフィルムを有せずにシート部材として構成された磁性粉材料層327Dを備え、この磁性粉材料層327Dのセンサ基板本体との接合側の面に接着材322が形成されると共に、磁性粉材料層327Dの反対側の面には電磁シールド層324が被着形成される。この例のカバーレイ部材32Dは、電磁シールド層324が外部に露呈される。
【0110】
また、
図9(E)に示す例のカバーレイ部材32Eは、カバーレイベースフィルムを有せずにシート部材として構成された磁性粉材料層327Eを備え、この磁性粉材料層327Eのセンサ基板本体との接合側の面のみに接着材322が形成され、電磁シールド層は備えない。この
図9(E)の例の場合には、シート部材として構成された磁性粉材料層327Eが外部に露呈される。
【0111】
上述の
図9(D)及び(E)の例のカバーレイ部材32D及び32Eによれば、磁性粉材料層が、従来のアモルファス合金層よりも層の厚さが厚くなったとしても、例えばPETからなるカバーレイベースフィルムを不要としたことにより、当該カバーレイベースフィルムの分だけ、厚さを薄くすることができるので、センサ全体としての厚さの薄型化を維持することができる。
【0112】
[その他の実施形態又は変形例]
上述の実施形態の説明では、磁性粉材料は、塗料の構成としたり、接着材を含浸させて構成したりしたものを用いるようにしたが、高透磁率のアモルファス金属などの粉末を、非磁性および非導電性の高分子材料、この例では樹脂と混合して固めた材料で構成しても良い。その場合にも、上述のような型抜き加工をすることができることは勿論である。
【0113】
もっとも、上述のような型抜き加工であれば、加工工数が減少するが、従来と同様に、カバーレイ部材32も、予め、外形加工を施しておいて、その外形加工したカバーレイ部材32と、外形加工したセンサ基板本体とを接合するような製法を用いて、この発明の電磁誘導方式のセンサを構成するようにしても、勿論良い。
【0114】
また、センサ基板本体に対してカバーレイ部材を接合する方法としては、上述の実施形態の例に限られるものではないことは言うまでもない。例えば、センサ基板本体に対して、カバーレイ部材を構成する各層やシートを、順次に被着形成するようにしても良い。例えば、第2の実施形態においては、センサ基板本体31の絶縁基板311のY軸方向ループコイル群導体313側の面に、当該導体313を覆うように磁性粉材料を塗布して磁性体材料層327を形成した後、電磁シールド層324を構成する例えばアルミニウムを圧着あるいは蒸着などにより被着し、更に、保護シート325を、電磁シールド層324の上に被着するようにしても良い。
【0115】
なお、上述の実施形態では、センサ基板本体は、互いに直交する方向に配置されたX軸方向ループコイル群とY軸方向ループコイル群とを備えるようにしたが、位置指示器による指示位置として、2次元座標ではなくても良い。例えば、1次元座標を検出できれば良い場合には、ループコイル群は、その一次元座標方向にのみ配置されたもので良い。
【0116】
ループコイル群を一次元座標方向(例えばX方向)にのみ配置する場合、あるいは一次元座標方向に配置されたループコイル群のみにより交番磁界を生成する構成とする場合は、厚さ方向に鉛直であって、かつ、その一次元座標方向に向けて、磁化の方向を形成すると好適である。
【0117】
なお、上述の説明における「直交」や「平行」とは、厳密に直交していることや厳密に平行であることを要さず、略直交、略平行である状態を含むことは言うまでもない。磁性粉材料層を構成する磁性粉の集合が、観測したときに、全体として、その磁化の方向が厚さ方向に実質的に直交(あるいは略直交)といえる程度に構成できれば良い。
【0118】
また、上述の実施形態では、絶縁基板の両面にループコイル群導体を形成するようにしたが、絶縁基板の一面側にのみ、ループコイル群導体を形成する電磁誘導方式のセンサにも、この発明は適用可能であることは言うまでもない。