【文献】
Accession No. FN545816, Clostridium difficile R20291 complete genome, [online], 掲載日: 2009/10/1, Database EMBL, <http://www.ebi.ac.uk/ena/data/view/FN545816>
【文献】
Infect. Control Hosp. Epidemiol.,2002年,Vol.23, No.11,pp.641−647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
殺細菌活性を有するR型の高分子量(hmw)バクテリオシンをコードする単離された核酸分子であって、ここで、当該核酸分子は、配列番号4〜15からなるポリペプチドと、又は配列番号66〜77からなるポリペプチドと、少なくとも90%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドをコードし、
当該バクテリオシンが、配列番号4〜15からなるポリペプチドと、又は配列番号66〜77からなるポリペプチドと、少なくとも90%同一であるポリペプチドを発現する天然に存在する対応するClostridium difficileの株のものとは異なる殺菌スペクトルを有し、
そして前記R型の高分子量(hmw)バクテリオシンのレセプター結合ドメイン(RBD)が、配列番号4〜15からなるポリペプチドと、又は配列番号66〜77からなるポリペプチドと、少なくとも90%同一であるポリペプチドを発現する前記天然に存在する対応するClostridium difficileの株とは異なるClostridium difficileの株に由来し、又は、当該RBDが、Clostridium difficileに感染するバクテリオファージに由来し、又はプロファージに由来する、核酸分子。
前記細胞が、非病原性でかつ非偏性嫌気性の細菌であり、当該非病原性でかつ非偏性嫌気性の細菌が、Bacillus、Lactobacillus、およびListeriaからなる群より選択される細菌の属由来の種である、請求項7に記載のプロデューサー細胞。
前記プロデューサー細胞が、非病原性でかつ非偏性嫌気性の細菌であり、当該非病原性でかつ非偏性嫌気性の細菌が、Bacillus、Lactobacillus、およびListeriaからなる群より選択される細菌の属由来の種であり、かつ当該プロデューサー細胞が、R型の高分子量(hmw)バクテリオシンを産生するように誘導されるとき、溶解しないものである、請求項9に記載の産生方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1-1】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-2】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-3】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-4】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-5】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-6】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-7】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-8】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-9】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-10】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-11】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-12】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-13】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-14】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-15】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-16】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-17】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-18】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-19】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-20】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-21】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-22】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-23】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-24】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-25】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-26】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-27】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-28】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-29】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
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図1-30】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-31】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図1-32】
図1は、配列番号1〜80の核酸またはアミノ酸の配列を示す。
【
図2】
図2。臨床的なC.difficile単離体に対するディフォシン類の殺菌活性。指標株の番号は、行列の上に沿って示す;星印の株は、NAP1/027/BI株である。試験したディフォシン類のC.difficile供給源の特定は、左の縁に沿って示す。株は、LC Fortier(4および16)、ATCC(43593)、またはRM Alden Research Lab、Culver City,CAから入手した。
【
図3】
図3は、dif16の走査電子顕微鏡写真を示す。花状のテールファイバー(tail fiber)付属物に注目のこと。
【
図4】
図4は、標的株Cd19135上のdif4のスポット試験の結果の写真を示す。精製されたディフォシンは、10倍連続希釈して、5μlのアリコートの希釈物を、標的のC.difficile細菌叢の上にスポットした。37℃で一晩の嫌気性のインキュベーション後、ディフォシンの殺傷は、細菌叢上の増殖の除去によって示される。
【
図5】
図5は、dif4(「4」)およびdif16(「16」)の濾過(filtered)(「F」)および非濾過(unfiltered)(「UF」)調製物の両方の銀染色SDS−PAGEの写真を示す。この矢印は、切り出されて、質量分析法によって特定されたバンドを示す。
【
図6】
図6は、Cd630およびCd16由来のディフォシン遺伝子クラスターの模式図を示す。この遺伝子座は、Myoviridaeのファージテール装置に典型的な構造タンパク質および構造アセンブリタンパク質をコードするORFであるORF1362〜ORF1375(このマップの下に示す)から構成された。これらの遺伝子に隣接するのは、推定のファージ様調節性タンパク質をコードする遺伝子であった。下の矢印は、ORFが転写される方向を示しており、ORFの推定の機能は、マップの上に示される。
【
図7】
図7は、C.difficile株19099の細菌叢で試験されるBacillus subtilisBDR123−488(セクター1)およびBDR123−491(セクター2)によって産生されるdif16のスポット試験の画像を示す。
【
図8-1】
図8は、活性なディフォシン類を産生したC.difficileの5株の各々由来のORF1374遺伝子によってコードされる部分的アミノ酸配列(それぞれ、出現順で、配列番号81〜86)のClustalW分析の結果を示す。整列した配列の各々の列の下で「
*」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのアミノ酸同一性を示し、「:」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置での高度に類似のアミノ酸を示し、そして「.」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのある程度類似のアミノ酸を示し;そして配列の整列における所定の位置でのブランクは、全ての5つの遺伝子によってコードされるアミノ酸類似性がないことを示す。
【
図8-2】
図8は、活性なディフォシン類を産生したC.difficileの5株の各々由来のORF1374遺伝子によってコードされる部分的アミノ酸配列(それぞれ、出現順で、配列番号81〜86)のClustalW分析の結果を示す。整列した配列の各々の列の下で「
*」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのアミノ酸同一性を示し、「:」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置での高度に類似のアミノ酸を示し、そして「.」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのある程度類似のアミノ酸を示し;そして配列の整列における所定の位置でのブランクは、全ての5つの遺伝子によってコードされるアミノ酸類似性がないことを示す。
【
図8-3】
図8は、活性なディフォシン類を産生したC.difficileの5株の各々由来のORF1374遺伝子によってコードされる部分的アミノ酸配列(それぞれ、出現順で、配列番号81〜86)のClustalW分析の結果を示す。整列した配列の各々の列の下で「
*」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのアミノ酸同一性を示し、「:」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置での高度に類似のアミノ酸を示し、そして「.」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのある程度類似のアミノ酸を示し;そして配列の整列における所定の位置でのブランクは、全ての5つの遺伝子によってコードされるアミノ酸類似性がないことを示す。
【
図8-4】
図8は、活性なディフォシン類を産生したC.difficileの5株の各々由来のORF1374遺伝子によってコードされる部分的アミノ酸配列(それぞれ、出現順で、配列番号81〜86)のClustalW分析の結果を示す。整列した配列の各々の列の下で「
*」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのアミノ酸同一性を示し、「:」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置での高度に類似のアミノ酸を示し、そして「.」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのある程度類似のアミノ酸を示し;そして配列の整列における所定の位置でのブランクは、全ての5つの遺伝子によってコードされるアミノ酸類似性がないことを示す。
【
図8-5】
図8は、活性なディフォシン類を産生したC.difficileの5株の各々由来のORF1374遺伝子によってコードされる部分的アミノ酸配列(それぞれ、出現順で、配列番号81〜86)のClustalW分析の結果を示す。整列した配列の各々の列の下で「
*」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのアミノ酸同一性を示し、「:」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置での高度に類似のアミノ酸を示し、そして「.」は、全ての5つの遺伝子によってコードされるその位置でのある程度類似のアミノ酸を示し;そして配列の整列における所定の位置でのブランクは、全ての5つの遺伝子によってコードされるアミノ酸類似性がないことを示す。
【
図9】
図9は、BDR123−580によって産生される「Dif4」および「Dif4−16」のスポット試験の画像である。後者は、Bacillus subtilis BDR123−587によって産生され、ここではdif4のorf1374(配列番号49)が、dif16のorf1374(配列番号17)に切り替わっていた。これらのB.subtilisによって産生される2つのディフォシンは両方とも、示すとおり、株19137および19145の細菌叢で試験した。「Dif4−16」による殺傷の特異性は、dif4の特異性からdif16の特異性に切り替わった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において用いる場合、「R型の高分子量(hmw)バクテリオシン」とは、単純に、「R型のバクテリオシン」としても公知であり、そしてR型のピオシン類、ディフォシン類、モノシン類(monocins)、エンテロコリチシン類(enterocoliticins)、メニンゴシン類(meningocins)、または他の高分子量(hmw)バクテリオシン(myoviridae科のバクテリオファージに構造的にまたは遺伝的に関連する)が挙げられる。R型のバクテリオシンとしては、改変バージョンのR型のピオシン類、ディフォシン類、エンテロコリチシン類、モノシン類およびメニンゴシン類が挙げられる(Williamsら、2008;Strauchら、2001;Kingsbury,1966;Zinkら、1995)。
【0019】
本明細書において用いる場合、「ディフォシン」という用語は、Clostridium difficileから単離されるか、またはそれに由来するR型の高分子量バクテリオシンを指し、これには、C.difficileから得られる天然の粒子、および天然でないプロデューサー細胞におけるディフォシン遺伝子クラスターの発現を通じて得られる粒子が挙げられる。ディフォシンはまた、C.difficileの1つ以上の株由来の遺伝子によってコードされ、かつ配列番号2〜23、49および62〜80の1つ以上のポリペプチドに対して80%以上同一であるポリペプチドから構成される遺伝子操作された粒子であってもよい。
【0020】
本発明のR型のバクテリオシンは、熱不安定性で、軽度酸耐性で、トリプシン耐性で、約65,000×gの遠心分離によって沈降性で、かつ電子顕微鏡によって解像可能であり得る(Kageyamaら、1962;Bradley,1967;Dawら、1996;Jabraneら、2002;Fortierら、2007)。多くの場合、本明細書で開示される遺伝子操作されたR型のバクテリオシンは、これらの特性のうち1つ以上を任意の組み合わせで有する。本明細書に開示されるR型のバクテリオシンに共通の追加的な特性は、それらが核酸を含まず、従って、複製欠損であり、その結果、多くのバクテリオファージで可能であるように、標的細菌の殺傷後、またはその間、それら自体を再生できないということである。それらは、純粋なタンパク質であって、生物体ではない。
【0021】
本明細書で開示されるR型のバクテリオシンは、複数のタンパク質、またはポリペプチド、サブユニットを含む複雑な分子であり、myoviridae科のバクテリオファージのテール構造を模倣する。天然に存在するR型のバクテリオシンでは、サブユニット構造は、C.difficileまたはP.aeruginosaのゲノムのような細菌ゲノムによってコードされ、他の細菌に対して天然の防御として機能するR型のバクテリオシンを形成する(Kageyama,1975)。感受性の標的細菌は、典型的には、単一のR型のバクテリオシン分子によって殺傷される(Kageyamaら、1964;Kageyamaら、1964a;Morseら、1980;Strauchら、2001)。
【0022】
「標的細菌」または「標的細菌」とは、開示のR型のバクテリオシンによって結合されるか、および/またはその増殖、生存もしくは複製がそのバクテリオシンによって阻害される細菌(単数または複数)を指す。いくつかの実施形態では、この標的細菌は、Clostridum属由来である。特定の実施形態では、この細菌は、Clostridium difficileである。一態様では、C.difficileの2つ以上の株が標的される。C.difficileの例示的な株としては限定するものではないが、NAP1/BI/リボタイプ027、および
図2に列挙される株が挙げられる。
【0023】
「成長阻害」という用語、またはその変化型は、細菌細胞の分裂の速度の減速もしくは停止、または細菌細胞分裂の休止、あるいは細菌(単数または複数)の死滅を指す。
【0024】
本明細書において用いる場合、「核酸」または「核酸分子」とは典型的に、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマー(純粋または混合)を、一本鎖型または二本鎖型で指す。この用語は、ヌクレオチドアナログもしくは改変骨格残基もしくは連結を含む核酸であって、合成、天然に存在するおよび天然には存在せず、参照核酸と同様の結合、構造または機能的特性を有し、そして参照ヌクレオチドと同様の方式で代謝される、核酸を包含する。このようなアナログの例としては限定するものではないが、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−0−メチルリボヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる。核酸という用語は、いくつかの状況では、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドと交換可能に用いられ得る。
【0025】
特定の核酸配列は、その保存的に改変された改変体(縮退コドン置換、など)、および相補配列、ならびに明示された配列も包含する。特に、縮退コドン置換は、1個以上の選択された(または全ての)コドンの第三(「ウォッブル(wobble)」)の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成されてもよい。従って、本明細書で開示するタンパク質配列をコードする核酸配列は、本明細書で記載されるとおり、その改変された改変体も包含する。
【0026】
「セグメント」という用語は、アミノ酸配列に関して、本明細書において用いる場合、10、12、15、20、25、50または100アミノ酸残基長であり得るアミノ酸の連続配列を指す。
【0027】
本明細書において用いる場合、「異種」という用語は、タンパク質または核酸配列の一部に関して用いる場合、この配列が、自然にはお互いと同じ関係で通常は見いだされない2つ以上の配列を含むということを示す。一例では、この異種配列は、異なる種の細菌由来である。別の例では、異種配列は、同じ種の細菌の異なる株由来である。一態様では、異種配列は、C.difficileの異なる株由来である。別の態様では、異種配列は、細菌およびバクテリオファージ由来であるか、または細菌および合成の非天然のDNAの配列由来である。
【0028】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、通常、本明細書において交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを意味する。アミノ酸は、本明細書では、一般に公知の3文字記号で表してもよいし、またはIUPAC‐IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号で表してもよい。
【0029】
毒性因子は、生物体の病原性に寄与するが、その一般的な生存能には必ずしも寄与しない分子である。毒性因子が消失すれば、生物の病原性は下がるが、必ずしも生存能が下がるとは限らない。毒性因子は、多くの機能、例えば、遺伝子発現の制御、接着性もしくは移動性の提供、毒素の提供、毒素の注入、抗生物質の排出、またはバイオフィルムを含む防御皮膜の形成のうちのいずれか1つを有し得る。
【0030】
適応性因子(fitness factor)とは、生物のその環境下での一般的な生存能、増殖速度、または競合性に寄与する分子である。適応性因子が消失すれば、その生物体は生存能または競合性が低下し、この障害によって、間接的に病原性が低下する。適応性因子はまた、多数の機能、例えば、栄養素、イオンもしくは水の摂取、細胞膜もしくは細胞壁の構成要素もしくは保護剤の形成、核酸の複製、修復もしくは変異誘発、環境的なもしくは競合的な攻撃からの防御もしくはそれに対する攻撃の提供のうちのいずれか1つを保有してもよい。
【0031】
「プロデューサー細胞」という用語は、本明細書において用いる場合、ディフォシンコード核酸分子を産生できるか、または発現できて、このような核酸分子を天然には含まない細胞を指す。プロデューサー細胞は、酸素の存在下で生存および増殖し得、そして、ディフォシンをコードする核酸分子を含むベクターで形質転換されており、このベクターは、このプロデューサー細胞の染色体に組み込まれてもよいし、またはエピソーム性であってもよい。このプロデューサー細胞は、グラム陽性細菌であり得る。特定の実施形態では、プロデューサー細胞は、Bacillus、Lactobacillus、Clostridium、またはListeriaという属由来の細菌であってもよい。いくつかの実施形態では、細菌は、subtilis、amyloliquefaciens、およびmegateriumからなる群より選択されるBacillus属由来の種である。一態様では、この細菌は、Bacillus subtilisである。特定の態様では、プロデューサー細胞は、PBSX遺伝子クラスターを欠くB.subtilis株である。他の実施形態では、この細菌は、acidophilus、casei、およびbulgaricusからなる群より選択されるLactobacillus属由来の種である。さらに他の実施形態では、この細菌は、Listeria innocuaである。別の実施形態では、非病原性プロデューサー細胞は、Escherichia coliであっても、またはClostridium属の細胞であってもよい。
【0032】
本開示を実施する形態の詳細な説明
C.difficileから単離されたR型バクテリオシンは殺菌活性を有する。
殺菌活性について試験するため、2つのC.difficile株の溶解物、Cd4およびCd16(LC Fortier由来)を、厳密な嫌気性の条件下で完全に細胞を中対数期まで増殖すること、次いでこの培養物を3μg/mlのマイトマイシンCに曝すことによって作製した。細菌細胞が溶解した後、溶解液中の粒子を濃縮して、高速の遠心分離によって精製した(実施例1を参照のこと)。これらの調製物は、電子顕微鏡によって、濃い頭部なしのファージ様粒子を含むことが示された(
図3)。濃縮および精製の後、沈殿物をスポットプレート法によって殺菌活性について評価し、それによってサンプルを標的のC.difficile細菌の積層の細菌叢に、再度、厳密な嫌気性の条件下で加えた。ほとんどのファージテール様のバクテリオシンは、典型的には標的の産生細菌とは異なる株を標的するので、29のC.difficileの臨床単離体のパネルから最初に構成されている標的株を試験した。一晩のインキュベーション後、プレートを、精製した物質をスポットした、C.difficile細菌の細菌叢における排除によって示される殺傷活性の存在について試験した。
図4は、C.difficile株、Cd19135上にスポットしたCd4由来のディフォシン(dif4)の典型的なスポットアッセイを示す。
【0033】
dif4(Cd4由来のディフォシン)およびdif16(Cd16由来のディフォシン)は、スポットアッセイに基づく異なる殺菌スペクトルを示した(
図2)。dif4は、29のC.difficileの臨床単離体株のうち10個で殺菌活性を示したが、dif16は、29株のうち8つに対して活性を有した。両方のディフォシン類に対して影響を受けやすい株にはある程度の重複があるが、2つのディフォシン類は、別個の殺菌スペクトルを有した。Cd108およびCd43593由来のディフォシン類は、極めて類似の殺傷スペクトルを有し、かつ29個のC.difficile臨床単離体のパネルにおける10個のNAP1/027/BI超毒性株のうち少なくとも9つを殺傷した。さらに試験した場合、dif43593は、全ての18個の追加の独立したNAP1/027/BI単離体を殺傷した。従って、dif43593は、NAP1/027/BI C.difficileの全ての28個の試験された株を殺傷する(
図2)。
【0034】
ディフォシン遺伝子座の特定
ディフォシン粒子(株Cd4から単離して精製した)を変性し、そのタンパク質成分を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)によって分離して、銀染色によって検出した(
図5)。2つの個々のバンド(約200kDおよび約40kD)を、切り出して、質量分析によって分析した。40kDのバンド由来のペプチドは、参照株Cd630(GenBankアクセッション番号NC_009089.1)を含む、完全なゲノムが配列決定された、いくつかのC.difficile株においてコードされる2つのC.difficileオープンリーディングフレーム(ORF)由来の予測される生成物に適合することが見出された。これらの最初は、ORF1363(配列番号5)、39,192ダルトンのファージ様のタンパク質であった。このバンドにおける第二の優勢なポリペプチドは、ORF1371(配列番号14)、39,565ダルトンのファージ様のベースプレートタンパク質に相当した。これらのタンパク質は、分子量では偶然、極めて近いので、それらは、同じSDS PAGEのバンドで泳動した。200kDのバンドは、2つの他のファージ様ORFのすぐ下流、ORF1374(配列番号17)のC末端の一部に相当する優勢なポリペプチドを生じた。
【0035】
これらのORFは、Cd630ゲノム内で極めて近位にマッピングされるので、周囲の領域を分析した。プロファージ様のエレメントが、ORF1360A−1379を含む、塩基1574593と1596384との間で見出された(
図6および配列番号1〜23)。特に注目されるのは、この領域中でコードされる構造遺伝子が、典型的なMyoviridaeファージのテール構造の成分にのみ対応するということであった;カプシド、カプシドアセンブリタンパク質、またはポータル(portal)タンパク質の遺伝子は見出されなかった。また、推定のDNA複製、またはDNAパッケージング機構をコードするORFもなかった。従って、この遺伝子座は、R型の(ミオウイルス科ファージテール様)バクテリオシンの遺伝子座と一致した。構造遺伝子に隣接するのは、推定のファージ様の調節性タンパク質をコードするいくつかのORFであった。この遺伝子座由来のいくつかのORFは、ディフォシン粒子に見出されるポリペプチドをコードし、および遺伝子クラスターは、R型のバクテリオシンのものを模倣したという事実のために、本発明者らは、この領域へディフォシン遺伝子座を割り当てた。
【0036】
この構造遺伝子は全て、一本鎖上にコードされ、そして同じ方向に転写された。この遺伝子の機構は、R型のピオシン類および多くのミオウイルス科ファージの遺伝子の機構を模倣した。構造タンパク質のいくつかは、ファージΦ119およびΦC2を含めて公知の
C.difficileバクテリオファージに対して配列類似性を示した(Gohら、2007;Govindら、2006)。C.difficile株Cd630はまた、2つのインタクトなプロファージをコードすることが公知であり、そのプロファージの両方とも誘導性であることが公知であった(Gohら、2007)。ディフォシンORFのいくつかは、C.difficileの株Cd630のプロファージ1および2に対して配列類似性を有し、これによって、これらのC.difficileミオウイルス科ファージおよびディフォシン類が、共通の祖先を共有するということが示唆される。
【0037】
特に注目されるのは、ディフォシンのORF1374(配列番号17)であった。この遺伝子は、ORF1373、配列番号16のすぐ下流に位置する大きいポリペプチドをコードし、このクラスター中の位置は、ORF1374が、R型のバクテリオシンテールファイバーの一部、すなわち、レセプター結合ドメイン(RBD)であることを示した。ディフォシン類と命名されたものの電子顕微鏡写真によって、テールファイバー領域で大きい花状の構造が明らかになったので、この構造は、大きいタンパク質を含むということが明らかになった。ORF1373(配列番号16)は、ディフォシンテールファイバーのベースプレートアタッチメント領域(BPAR)をコードし、RBDをコードしたC.difficileのファージにおける類似のORF1373の短縮型、およびBPARである(このようなファージがORF1374を欠くと仮定する場合)、ことが明らかになった。従って、天然に存在するディフォシン類のテールファイバーは、2つのタンパク質、ORF1373およびORF1374から構成され、このタンパク質は、結合されたテールファイバーを形成するが、C.difficileのバクテリオファージは、単一のタンパク質(BPARおよびRBD機能を提供するいくらか長いORF1373)から構成されるテールファイバーを有する。この知識があれば、ORF1373(配列番号16)またはORF1374(配列番号17)のいずれかをコードする核酸は、基質として本明細書に就かれ、これから新規なRBD特異性の機能を遺伝子操作する。
【0038】
ディフォシン類は、C.difficile単離体の中で広く伝播される。
C.difficileの一連の独立した臨床単離体を、異なる殺菌スペクトルを有し得るディフォシン粒子を産生する能力のために試験した。臨床単離体Cd19123、Cd19145、Cd19126、Cd19108(RM Alden Research Laboratory、Culver City、CA由来)、およびATCC Cd43593を、厳密な嫌気性の条件下でマイトマイシンCを用いて誘導し、続いて、産生された粒子を精製および濃縮した。次いで、精製された材料を、臨床収集物中の他のC.difficile株の細菌叢上に別々にスポットして、殺菌活性を検出した。この結果、これらの単離体の各々が、異なる殺菌スペクトルを有する粒子を産生することが示された(それぞれ、臨床単離体Cd19123、Cd19145、Cd19126、Cd19108、およびATCC Cd43593由来のdif123、dif145、dif126、dif108、およびdif43593と命名されたディフォシン類)(
図2)。dif108およびdif43593は、極めて類似でかつ広範なスペクトルを有したが、株Cd19145は、狭い殺菌スペクトルを有する粒子を産生した。Cd19113およびCd19150を含めて、誘導について試験されたいくつかの単離体は、マイトマイシンに対する暴露後に溶解したが、検出可能なディフォシン粒子は産生しなかった。
【0039】
ゲノム配列決定された実験室株Cd630がディフォシン遺伝子座をコードすることが本明細書で認識され;そして、実際には、このゲノムは本明細書において、ディフォシン遺伝子を特定するために用いられた。株Cd630は、マイトマイシンCでの誘導後に溶解したが、検出可能なディフォシン粒子が産生された。代わりに、少量のプロファージ1およびプロファージ2が産生された。
【0040】
ディフォシンクラスターの特定およびクローニング
Cd630は、マイトマイシンCによる溶解の誘導の際に、検出可能なディフォシン粒子を産生しなかった。従って、Cd16由来のディフォシン遺伝子クラスターを代わりにクローニングした。Cd16のドラフトゲノム配列を最初に得た。Cd630のものと類似のディフォシン遺伝子座を、特定して、アノテーションした。プロデューサー株Cd16由来の全体的なディフォシン遺伝子クラスターを、BAC中にクローニングして(配列番号1)、引き続き、非病原性の微生物および非偏性嫌気性の菌である微生物中で活性なディフォシンを産生するのに必要な全ての遺伝子を含むことを実証した。C.difficileは、両方とも病原性であって、かつ偏性嫌気性の細菌であり、これによって、C.difficileは、天然のディフォシン類または組み換えDNA遺伝子操作によって改変されるディフォシン類について非実用的な産生細胞となる。単離されたディフォシンクラスターはまた、組み換えDNA技術によって遺伝子操作されて、プロデューサー微生物の培養培地または誘導培地に添加される非毒性の低分子のインデューサーまたはデ−リプレッサーに対して応答する異種プロモーターによってその発現を調節されてもよい。このような低分子としては、限定するものではないが、テトラサイクリン、無水テトラサイクリン、ラクトース、アラビノース、キシロース、およびそれらの非代謝性アナログ、例えば、IPTG(ラクトースを置き換える)が挙げられる。
【0041】
ディフォシン類
ディフォシン類は、C.difficileの他の株に対して殺菌性である、Clostridium difficileから単離されたR型のhmwバクテリオシンである。ディフォシン類は、マイトマイシンCの存在下で嫌気性の条件下で増殖されたC.difficile株から単離され得る。いくつかの実施形態では、ディフォシンは、C.difficileの臨床単離体Cd4、Cd16、Cd19123、Cd19145、Cd19126、Cd19108、またはATCC Cd43593(それぞれ、dif4、dif16、dif123、dif145、dif126、dif108、およびdif43593と命名される)由来である。一態様では、ディフォシンは、Cd4由来であり;別の態様では、ディフォシンはCd16由来である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、Clostridium属の細菌のゲノムに由来するディフォシンをコードする単離された核酸分子が提供される。一態様では、この核酸分子は、配列番号1の遺伝子クラスターを含む。別の態様では、核酸分子は、配列番号61の遺伝子クラスターを含む。他の実施形態では、この核酸分子は、配列番号2〜23;49、62〜80からなる群より選択される1つ以上のポリペプチドを含むディフォシンをコードする。さらに他の実施形態では、この核酸分子は、配列番号4〜16、18、19、および66〜80からなる群より選択される1つ以上のポリペプチドを含むディフォシンをコードする。一態様では、この核酸分子は、配列番号2〜23のポリペプチドをコードする。別の態様では、この核酸分子は、配列番号49および62〜80のポリペプチドをコードする。
【0043】
また、改変体のディフォシン類も提供される。改変体ディフォシン類としては、配列番号4〜16、18、19、および66〜80からなる群より選択されるポリペプチドに対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するディフォシン類が挙げられる。他の実施形態では、改変体ディフォシンは、配列番号4〜16、18、19、および66〜80からなる群より選択されるポリペプチドに対して少なくとも85%、88%、89%、90%、95%、96%、97%)、98%、または実に99%同一である、アミノ酸配列を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、改変体ディフォシンは、異種のベースプレートアタッチメント領域(BPAR)を含んでもよく、ここでこのBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも80%同一である。別の実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも85%同一である。別の実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも89%同一である。別の実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも90%同一である。さらに別の実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも95%同一である。さらに別の実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも98%同一である。さらなる実施形態では、このBPARは、配列番号16、54〜56、および78のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも99%同一である。
【0045】
さらなる実施形態では、改変体ディフォシンは、異種のレセプター結合ドメイン(RBD)を含んでもよく、ここでこのRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも80%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも80%同一である。別の実施形態では、RBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも85%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも85%同一である。別の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも89%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも89%同一である。別の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも90%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも90%同一である。別の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも95%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも95%同一である。別の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも98%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも98%同一である。別の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53のうちの1つ以上の対応するセグメントに対して少なくとも99%同一であるか、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合ドメイン(RBD)領域を含むポリペプチドに対して少なくとも99%同一である。いくつかの実施形態では、このレセプター結合ドメイン(RBD)領域は、配列番号54、55、または56のアミノ酸残基51からカルボキシ末端残基を含む。
【0046】
別の実施形態では、ディフォシン類は、ディフォシンORF1373の生成物に対してファージテールRBDを融合することによって、変化した殺菌スペクトルを有するように遺伝子操作されてもよい。ORF1374は、天然のディフォシン類の一次スペクトル決定因子またはRBDをコードするが、この極めて大きいタンパク質は、ORF1373タンパク質と複合して、ORF1373タンパク質は、BPARを提供し、すなわち、これは、ORF1374タンパク質のRBDを、ディフォシンベースプレート構造に結合する。ORF1373は、ΦCD2(配列番号54)、ΦCD119(配列番号55)、およびΦCD27(配列番号56)のようなミオウイルス科バクテリオファージのテールファイバー遺伝子と、ならびにR型のピオシン類のテールファイバーと類似であり、アミノ酸配列同一性を共有する。ディフォシン類のORF1373(例えば、配列番号16または78)は、C.difficileのミオウイルス科ファージ、ΦCD2(配列番号54)のテールファイバーと、特にN末端部分の最初の160アミノ酸またはBPARで、有意な配列同一性を共有する。しかし、ファージのテールファイバーは、ディフォシンORF1373タンパク質よりも長く、かつそれらの細菌標的を認識するためのC末端RBDを含む。ディフォシン類のORF1373タンパク質は、この後者のドメインを含まず、そのRBD機能は、ORF1374によってコードされる、別のポリペプチドによって置き換えられる。従って、ORF1374は、ディフォシンクラスターから完全に欠失されてもよく、ファージテールファイバーのRBD、例えば、ΦCD2のRBDを、ORF1373によってコードされるディフォシンBPARに融合して、それによってファージテールファイバー様のタンパク質を有し、従って、ドナーファージの宿主範囲に関連する殺菌スペクトルを有するディフォシンを生成してもよい。重要なことに、C.difficileファージテールファイバーとORF1373タンパク質との間のアミノ酸配列相同性の領域は、2つの間の首尾よい機能的融合を可能にするので、当業者は、突然変異したまたは非突然変異のC.difficileファージから宿主範囲改変体を選択可能で、このC.difficileファージは次に、新規な殺菌スペクトルを有する改変ディフォシン類を創出するための新規なRBDの供給源となり得る。
【0047】
遺伝子操作したディフォシンの一実施形態では、RBDがC.difficileの別の株由来のRBDで、またはC.difficileに感染するバクテリオファージ由来のRBDで置換されている、ディフォシンが提供される。一実施例では、この核酸分子は、配列番号16または78をコードする配列を含むが、対応する天然のRBD(すなわち、それぞれ、配列番号17または49をコードする配列)を含まず;代わりに、この天然のRBDは、RBDをコードする異種配列で置換されている。特定の実施形態では、この核酸分子は、C.difficileの異なる株のR型のバクテリオシンのレセプター結合ドメイン(RBD)をコードする異種配列を含む。一態様では、核酸分子は、配列番号16または78をコードする配列、および配列番号49〜53からなる群より選択されるポリペプチドまたは配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合領域をコードする配列を含む。別の態様では、この核酸分子は、配列番号2〜16および18〜23または配列番号62〜80をコードする配列、ならびに配列番号17および49〜56からなる群より選択されるポリペプチド由来のRBDをコードする異種配列から構成される。
【0048】
遺伝子操作されたディフォシンの他の実施形態では、ディフォシンのRBDは、天然のRBDの改変型で置換されてもよい。「天然のRBD」とは、C.difficileの株から、またはC.difficileに感染するバクテリオファージから単離もしくはクローニングされたRBDに対して同一であるアミノ酸配列を有するRBDを指す。多数のC.difficile株由来の例示的な天然のRBDは、配列番号17および49〜53を含む。C.difficileに感染するバクテリオファージ由来の例示的な天然のRBDは、配列番号54〜56(例えば、アミノ酸残基51からカルボキシ末端残基)を含む。いくつかの実施形態では、改変RBDは、天然のRBDに対してRBDのアミノ酸配列における変化を含む。アミノ酸配列における変化の非限定的な例としては、置換、挿入(または付加)、または1つ以上のアミノ酸の欠失が挙げられる。さらなる実施形態では、ディフォシンは、2006年1月8日公開の米国特許出願公開第2006/0121450(あたかも全体が示されるかのように参照によって本明細書に援用される)に記載されるように、多様性発生レトロエレメント(Diversity Generating Retroelement)(DGR)を配置することによって構造を多様化する生物体由来のRBDでの置換、またはそのRBDの挿入を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、改変型は、対応する未改変または天然のRBDとは異なる殺菌性スペクトルを有する。特定の実施形態では、この改変型は、天然のRBDと少なくとも80%同一である。他の実施形態では、このRBDは、配列番号17および49〜53からなる群より選択されるポリペプチド、または配列番号54〜56からなる群より選択されるポリペプチドのレセプター結合領域に対して、少なくとも85%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%、または実に99%同一であるアミノ酸配列を有し、この改変されたRBDは、対応する未改変のまたは天然のRBDとは異なる殺菌スペクトルを有する。
【0050】
標的細菌
患者から単離されたClostridium difficile株は、パルスゲル電気泳動によって、およびそれらの病原性において広く変化する。BI/NAP1またはリボタイプ027株(毒素を過剰産生する)は、毒素Aおよび毒素Bの発現レベルを負に調節する遺伝子tcdCの機能をそれらが消失しているという結果として特に悪性である(McDonaldら、2005)。
【0051】
実際、tcdC遺伝子の特定の変異体対立遺伝子を保有するC.difficile株は、医療機関でまたはその間で流行性に伝播することが示された。これらの流行性および高度に悪性の株は、特に重要な標的細菌であり、これは、伝統的な抗生物質治療の開始の前または直後にディフォシンの経口適用によってキャリア患者のGI管から予防的に排除され得る。野生型レベルの毒素AおよびBを生じるC.difficile細菌は、重要な標的病原体であるのは、50歳超の患者または合併症のある患者には特に、潜在的に致死性でもあるからである(Bartlett JG,2002)。
【0052】
過剰プロデューサーであってもなくても、C.difficile株で広がっている、S層タンパク質のような表面アクセス可能な毒性または適応性因子を標的することによって、それらが、標的のR型バクテリオシンに対して耐性で出現する場合、このような病原体がそれらの毒性または適応性を損なうようにさせる魅力的な手段が提供される。ディフォシン類のRBDの高い特異性のせいで、C.difficile以外の生物体は、標的ではなく、ディフォシン類の別個のかつ強力な利点である。なぜなら、それらは、GI管の片利共生生物細菌(正常なGI機能および良好な健康に必要な細菌)の巻き添えの傷害を生じないからである。
【0053】
「感染」とは、被験体もしくは組織、または非細菌の細胞などの中での細菌の増殖であって、ここで、この細菌が、実際にもしくは潜在的に、被験体組織、または非細菌の細胞内において疾患または症状を引き起こし得る増殖を指す。感染の処置は、dif43593のようなディフォシン類を産生し得る解毒されたC.difficile細菌の物質、材料、プロデューサー細胞、または芽胞での予防的処置を包含し得る。処置された対象物の非限定的な例としては、示される臓器、組織および細胞;医療的装置、例えば、呼吸器または透析装置;または創傷、例えば、術中または術後の創傷が挙げられる。他の用途としては、さらなる増殖の際に問題を生じ得る標的細菌の除去が挙げられる。さらなる実施形態では、hmwバクテリオシンを用いて、細菌による感染もしくは汚染がある食品、植物または植物の収穫部分を処理するか、または、病院もしくは商業的な環境などにおいて標的細菌の環境中での存在を処理する。
【0054】
上記されるとおり、抗菌のR型のバクテリオシンを用いて、特定の細菌の増殖、生存または複製を阻害してもよい。細菌は、病原性であっても、もしくは環境的に有害な株であってもよいし、または予防的な方法で処理されてもよい。病原性微生物は一般には、時には特定の環境でのみ、疾患を生じる。
【0055】
ディフォシン類の調製および使用
ディフォシン類は、約一千万ダルトンの粒子であり、従って、種々の遠心分離、差分濾過、水性二相分離、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿および/またはイオン交換クロマトグラフィーによって単離および精製して、生物製剤等級の経口抗菌剤を生成してもよい。R型バクテリオシンは、凍結融解に安定であることが見出されており、安定な処方物を作製するために噴霧乾燥されてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、R型のhmwバクテリオシンを産生する方法が提供される。この方法は、R型のバクテリオシンの発現をもたらす濃度で、誘導剤に感受性の誘導性プロモーターに対して作動可能に連結されたR型のhmwバクテリオシンをコードする核酸配列に対してプロデューサー細胞を暴露すること、およびこの発現されたR型バクテリオシンを精製することを包含する。一態様では、R型の高分子量(hmw)バクテリオシンは、配列番号2〜23または配列番号49および62〜80からなる群より選択される1つ以上のポリペプチドを含む。この核酸分子は、プロデューサー細胞の天然の核酸に対して異種であり、かつプロデューサー細胞の染色体に含まれてもよいし、またはエピソーム発現ベクターに含まれてもよい。
【0057】
標的される場合、強力な抗菌剤、ディフォシン類は、CDADを予防するため、ヒトおよび他の動物の下部GI管からC.difficileを除去または独立させるために用いられる。広範なスペクトルの抗生物質で処置される動物およびヒトは、もしC.difficileによって感染された場合、潜在的に致死性のCDADを発症するリスクが高い。コロニー除去は、C.difficileが健康なGIの微生物叢と争うという理由で、ディフォシンの特に魅力的な有用性である。さらに、ディフォシン類は、急性のCDADにおける病原体負荷を低下するため、および/または他の方法による首尾よい処置後のCDADの高い出現率もしくは再発生もしくは再発を低下するために、ディフォシン類を産生できる解毒されたC.difficile細菌の投与されたプロデューサー細胞または芽胞を介して直接または間接的に投与されてもよい。
【0058】
投与の方式
R型のバクテリオシンは、給餌された胃および上部十二指腸を正常に機能する酸性度である、pH4.0以下で不活性化される。しかし、ディフォシン類は、上部GI管を通過して、下部GI管を優先的に感染させる標的化細菌病原体に到達しなければならない。従って、ディフォシンは、上部GI管の酸およびプロテアーゼから脆弱な剤を保護してこのような剤を活性な状態で遠位の上部GI管または下部GI管に送達する、1または複数の公知の方法によって処方され得る。さらに、動物は、R型バクテリオシンの経口投与前に胃の酸性化を防ぐために、シメチジンまたはプロトンポンプインヒビターなどの抗ヒスタミン剤で処置され得る。従って、適切に処方されたディフォシン類、ディフォシン類を産生できるプロデューサー細胞、またはディフォシン産生性の解毒されたC.difficile細菌の芽胞を、正常な胃のヒトもしくは動物に対して、または酸性化が薬学的に妨げられたものに対して経口投与することは、腸の感染した部分への送達を可能にし、それによって有効にできる。腸の通過時間に基づいて、無症候性の人または動物を感染除去するためのディフォシンの直接的または間接的な経口投与の頻度は、6時間ごと、12時間ごと、18時間ごと、24時間ごと、毎週、または毎月であってもよい。ディフォシンはまた、CDADを有する患者に、または最近、CDADを「治癒した」患者に、同じ以上の頻度で投与されてもよい。特に活性なCDADの管理のために、ディフォシン類は、坐剤、浣腸またはコロニー灌流によって、直腸用に処方されて、直接または間接的に投与されてもよい。
【0059】
本開示の遺伝子操作されたディフォシンは、ディフォシンに対して影響を受けやすい細菌による感染もしくは汚染で影響されるか、影響されたと診断されるか、または影響されていると疑われる任意の被験体に対して投与され得る。このような被験体の非限定的な例としては、動物(哺乳動物、爬虫類、両生動物、鳥類および魚類)の種、ならびに昆虫、植物および真菌が挙げられる。哺乳動物種の代表的で、非限定的な例としては、ヒト;非ヒト霊長類;ウシ、ブタ、ヤギ、およびヒツジなどの農業関連の種;マウス、およびラットなどのげっ歯類;イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、およびウマなどのペット、展示、またはショーのための哺乳動物;ならびにイヌおよびウマなどの作業用の哺乳動物が挙げられる。鳥類の種の代表的で非限定的な例としては、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ならびにオウムおよびインコなどのペットまたはショーのための鳥類が挙げられる。本開示の遺伝子操作されたディフォシンで処置される動物被験体とはまた、四足動物、二足動物、水生動物、脊椎動物、または昆虫を含む無脊椎動物であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、処置されるべき被験体は、ヒトの子供、またはまだ成熟期に達していないその他の若い動物である。従って、本開示は、本開示のディフォシンに対して感受性の細菌またはその他の微生物による感染を含む小児の状態の処置を包含する。
【0061】
本開示は、ヒト被験体または非ヒト動物の微生物叢中に存在する細菌の望ましくない増殖から生じるような、日和見感染の処置または予防を提供する。日和見感染は、被験体の免疫抑制状態の結果、または泌尿生殖器(GU)もしくは胃腸(GI)管の共生細菌叢を変化させる抗生物質治療の結果である場合がある。従って、本開示はまた、免疫抑制状態の被験体、および他の薬剤に曝された被験体の処置、または予防を提供する。抗細菌活性を有するディフォシンは、非限定的な例として抗生物質、もしくは抗真菌剤などの別の抗細菌剤、または抗微生物剤と組み合わせて用いられてもよい。「抗微生物剤」とは、単細胞生物の増殖を阻害する、もしくはこれを死滅させるために用いられ得る薬剤、または化合物である。抗微生物剤としては、抗生物質、化学療法剤、抗体(補体あり、もしくはなしで)、DNA、RNA、タンパク質、脂質、もしくは細胞膜の合成または機能の化学的インヒビターが挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、ディフォシン、プロデューサー細胞、またはディフォシンを産生できる無毒化C.difficile細菌の芽胞は、「薬理学的に許容される」賦形剤、腸溶性コーティングまたは担体と共に製剤される。そのような成分とは、過度な有害な副作用なしにヒト、動物、および/または植物に用いるのに適する成分である。有害な副作用の非限定的な例としては、毒性、刺激、および/またはアレルギー性の応答が挙げられる。賦形剤または担体は、典型的には、合理的なリスク対効果比に見合ったものである。非限定的な薬学的に許容される担体としては、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。例としては、限定するものではないが、リン酸緩衝食塩水、水、水中油型エマルジョンなどのエマルジョン、および様々な種類の湿潤剤などの、標準的な薬学的賦形剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、または懸濁液が挙げられ、食塩水および緩衝媒体が含まれる。非経口のビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、体液および栄養素の補充液、および電解質補充液(リンゲルデキストロースを主体としたものなど)などが挙げられる。
【0063】
本明細書で開示するさらなる製剤および医薬組成物は、細菌病原体に特異的な単離されたディフォシン;同じ細菌病原体を標的とする2、3、5、10、もしくは20種類以上の異なるディフォシンの混合物、プロデューサー細胞またはディフォシンを産生できる無毒化C.difficile細菌の芽胞;および、異なる細菌病原体、または同じ細菌病原体の異なる株を標的とする2、3、5、10、もしくは20種類以上の混合物を含む。
【0064】
必要に応じて、本開示のディフォシンまたはプロデューサー細胞を含む組成物はまた、本技術分野で周知の手段を用いて噴霧乾燥されても、凍結乾燥されてもよい。当該分野で公知のとおり、その後、再構成して使用することが実際的であり得る。
【0065】
ディフォシンは典型的には、「安全かつ効果的な」量または濃度で用いられるが、これは、上述のような過度で有害な副作用を起こすことなく、所望の治療応答をもたらすのに十分な量を意味する。ディフォシンは、また、「治療効果のある」量または濃度で用いてもよく、それは、所望の治療反応を得るのに有効な量を指し、例えば、限定するものではないが、細菌細胞の分裂速度を遅延させるか、または細菌細胞の分裂を停止させるか、または細菌を死滅させるかもしくは細菌の個体数の増加速度を低下させるのに有効な量である。安全でかつ効果的な量、または治療上もしくは予防上有効な量は、様々な要因で変わるが、熟練した医師であれば、過度な実験をすることなく容易に決定し得る。要因の非限定的な例としては、治療を行う特定の状態、被験体の身体状態、治療を受けている被験体の種類、治療の期間、併用する治療(もしあれば)の性質、および使用される具体的な製剤が挙げられる。
【0066】
本発明の主題事項を一般的に説明したが、以下に示す実施例を参照することで、同じ内容がより容易に理解され、その実施例は、特に断りのない限り、説明のために提供するのであって、本開示を限定することを意図したものではない。
実施例
【0067】
1.ディフォシン類の殺菌活性の決定
C.difficile培養物を、厳密な嫌気性の条件下で、Forma Scientific environmentalチャンバの中で、10%CO
2、10%H
2、80%N
2の雰囲気を用いて増殖した。全ての培地、緩衝液、およびプレートを、使用前に少なくとも24時間この雰囲気中で還元した。培養物を、C.difficileの選択寒天プレート(BD Diagnostics,BBL Cat.222228)上に画線して、37℃で2日間インキュベートした。これらのプレートを、次にストックとして大気温度で嫌気的に保管した。
【0068】
ディフォシン類を誘導するために、C.difficile細菌を、Brucella培地(Difco)を用いて液体培地中37℃で、振盪せずに増殖させた。約0.2というOD
600で、マイトマイシンCを、3μg/mlの最終濃度まで添加した。次いで、培養物を3〜16時間インキュベートした。細菌溶解は、培養物の視覚的な浄化によって検出した。
【0069】
培養物を、嫌気性のチャンバから取り出して、細胞破砕物を、5,000×gの遠心分離によって除去した。次いで、上清は0.2μmの酢酸セルロースシリンジフィルターを通過させた。その濾液を90,000×gで2時間遠心分離して、ディフォシン粒子をペレットにした。そのペレットを、10mMのTris(pH7.5)、50mMのNaCl、3%マンニトール中に、もとの培養容積の1/50で再懸濁した。
【0070】
標的株を、Brucellaブロス中で37℃で一晩増殖させた。100μlという培養容積を5mlのテンパリングした、還元したBrucella積層アガー(0.5%寒天)に加え、Brucella寒天プレート(1.5%寒天)上に注ぎ、固めさせた。5μlのディフォシン調製物のサンプルを、プレート上にスポットして、風乾させた(約30分)。次いで、そのプレートを、37℃で一晩、嫌気的にインキュベートした。細菌活性は、サンプルを細菌叢に加えた位置またはスポットでの、浄化、または細菌増殖の欠失によって決定した。
【0071】
2.Cd16ディフォシン遺伝子座のクローニング
C.difficile株Cd16のドラフトゲノム配列を、ゲノムDNAの454装置の配列分析によって得た。全体的なdif16遺伝子座またはクラスター(配列番号1)を、株Cd630に対する比較によって得た(上記を参照のこと)。
【0072】
骨格のBACベクターを調製する。出発のベクターは、pETcocolであった(Novagen)。これは、BbsI末端を有する、プライマーAV1419(配列番号24)およびAV1420(配列番号25)を有する2つのXhoI部位を除去するように改変された。こう改変するために、特定の領域を、これらのプライマーを用いてpETcocol DNAから増幅して、引き続き、PCR生成物を、BbsIで切り出して、より大きいpETcocolベクターフラグメント(これはXhoIで事前に切断していた)中に戻して連結した。この連結は、pETcocolの2つのXhoI部位を破壊した。次いで、後者のプラスミドを、同様のストラテジーによってさらに改変して、プライマーAV1416(配列番号26)およびAV1245(配列番号27)を用いてEcoRI部位を破壊した。得られたベクターをSW251と名付けた。
【0073】
ディフォシンクラスターのフラグメントを受容するためのpUC19ベクター調製。pUC19のポリリンカー(New England BioLabs)を、EcoRIおよびHindIIIで消化すること、ならびにオリゴAV1372(配列番号28)、AV1373(配列番号29)、AV1374(配列番号30)、およびAV1375(配列番号31)に連結することによって改変した。これによって、ポリリンカーを、NotI−NheI−KpnI−XhoI−EcoRV−BstBI−BbsI−EcoRI−NsiI−SphI−BamHI−AscIに変化した。これを、SW232と命名した。
【0074】
ディフォシンクラスターのSW232中へのクローニング。ディフォシンクラスターの3つのフラグメント、配列番号1は、Cd16のDNAからPCRによって個々に増幅された。5’フラグメント(配列番号32)は、それぞれ、NotIおよびXhoI末端を有する、プライマー1368(配列番号35)および1289(配列番号36)を用いて増幅した。中央フラグメント(配列番号33)は、それぞれXhoIおよびEcoRI末端を有するプライマーAV1288(配列番号37)およびAV1366(配列番号38)を用いて増幅した。3’フラグメント、配列番号34は、それぞれEcoRIおよびBamHI末端を有するプライマーAV1367(配列番号39)およびAV1300(配列番号40)を用いて増幅した。これらの3つのPCRフラグメントは、それぞれ、5’、中央、および3’位置について、SW232中に別々にクローニングして、SW241、SW242、およびSW243と名付けた。
【0075】
BAC SW251中へのディフォシンクラスターのクローニング。ディフォシンクラスターの3つのフラグメント(SW241、SW242、およびSW243中)(各々が、E.coli中にクローニングすることによって増殖され、かつ精製される)を、SW241、SW242、およびSW243ベクターから切り出した。SW241は、NotIおよびXhoIを用いて消化して、SW242は、XhoIおよびEcoRIを用いて消化し、そしてSW243は、EcoRIおよびAscIを用いて消化した。(このAscI部位は、上記の改変されたSW232ポリリンカーの一部であったことに注意のこと)。
【0076】
これらの3つのフラグメントを、NotIおよびAscIで最初に消化したSW251中にアセンブルした。得られたプラスミドは、DG461と命名し、全体的なdif16クラスターを含んだ。これを、E.coli中で増幅した。
【0077】
B.subtilis中での発現のためのディフォシン組み込みベクター作製。B.subtilis組み込みベクターであるpDR111(クローニング/プロモーター領域に隣接するamyE遺伝子、およびスペクチノマイシン耐性遺伝子の一部を含む)を用いた。
【0078】
pDR111ポリリンカーは、HindIIIおよびSphIを用いてベクターを消化すること、ならびにオリゴDG1(配列番号41)およびDG2(配列番号42)中に連結することによって改変した。これは、NotIおよびAscI部位をpDR111に追加した。次に、改変したポリリンカーとともに全体的なamyE前部および後部領域を含む領域を、両方ともがBsaI末端を有する、プライマーDG9(配列番号43)およびDG10(配列番号44)を用いて増幅した。このフラグメントを、SW251のNotIおよびAscI部位中に連結して(この2つの部位の破壊を生じる)、DG487を創出した。pDR111由来の挿入物の改変ポリリンカーによって、新規なNotIおよびAscI部位がDG487中に導入されたことに注目のこと。
【0079】
E.coliでのDG487の増殖後、次に、DG461由来のディフォシンクラスターを含むNotI/AscIフラグメントを切り出して、DG487のNotI/AscI部位中にクローニングした。この新規な構築物を、DG488と名付けて、そのベクターを用いて、全体的なディフォシン遺伝子クラスターをB.subtilis(下記)に導入した。
【0080】
3.Bacillus subtilisにおけるディフォシン遺伝子クラスターの発現
天然のディフォシンプロデューサーは、偏性の嫌気性菌であるC.difficileである。微量の酸素に曝された場合でさえ、C.difficile細菌は、胞子形成して、即座に死滅する。培養されたC.difficileからごく微量のディフォシンを生成する能力でさえ、困難でかつ苦労が多く、予防的または治療的な適用に有用な量のディフォシンの産生は確実に、必要とされる厳密な嫌気性の条件下では現実的ではない。従って、C.difficile由来の全体的なディフォシン遺伝子クラスターを最初に特定し、次いで分子クローニングによって単離して、さらなる遺伝子操作および産生のために、好気性グラム陽性細菌、Bacillus subtilis中にこのクラスターを導入した。
【0081】
Bacillus subtilis組み込みベクターであるDG488は、実施例2に記載のように作製し、全体的な22,827塩基のディフォシン遺伝子座(配列番号1)を含んだ。このベクターを用いて、ディフォシン遺伝子座をBacillus subtilisのゲノム中に組み換えた。
【0082】
レシピエントのBacillus subtilis株は、amyE遺伝子内にクロラムフェニコール耐性マーカーが挿入されたBDR123であった。この株をDG488で形質転換した場合、ベクター内の前部および後部のamyE配列と、ゲノムのamyE配列との間で組み換えが生じた。これによって、ディフォシン遺伝子座を含むDG488の前部および後部のamyE領域と、スペクチノマイシン耐性遺伝子との間の全配列のBDR123ゲノムへの挿入が生じた。首尾よい組み換え体は、スペクチノマイシン耐性であったが、組み換え事象の結果としてゲノムマーカーの損失に起因してクロラムフェニコール感受性になった。このB.subtilis株は、BDR123−488と命名された。
【0083】
全体的なディフォシン遺伝子座を、DG488ベクター(実施例2)中に挿入したので、従って、これは、その全体がBDR123−488中に挿入された。この挿入されたディフォシン遺伝子座は、Clostridium中での正常な発現に必要な全ての調節性遺伝子を含み、そして構造的なディフォシン粒子遺伝子は、これらの遺伝子および/または調節性エレメントの制御下であった。BacillusおよびClostridiumは、関連の細菌であったので、これらのディフォシン調節性エレメントは、Bacillusのバックグラウンドで機能し、それらの天然の状態でのように、RecA媒介性の機構を通じてDNA損傷によって導入されることが予測された。これは、実際に事実であり、ディフォシン粒子産生は、DNA損傷剤マイトマイシンCおよび殺傷された株Cd19099との接触によってBDR123−488中で誘導された(
図7)。
【0084】
ディフォシン調節性遺伝子(ORF1359、1360、1361)は、構造遺伝子に関連する遺伝子座の5’領域に位置した。調節性遺伝子(ORF1377(配列番号20)、1378(配列番号21)、および1379(配列番号23))はまた、構造遺伝子に対して下流3’に位置した。これらの後者を排除するために、調節性遺伝子DG491を、シングル・スリー・ウェイ・ライゲーション(single three way ligation)でDG488から生成した。1つのPCRフラグメントは、プライマーDG13(配列番号45)およびDG14(配列番号46)を用いるPCR増幅によってDG488から作製し、他のフラグメントは、プライマーDG15(配列番号47)およびDG16(配列番号48)を用いてPCR増幅によって作製した。両方のPCRフラグメントは、AscIおよびSphIで消化した。次いで、DG488を、SphIで消化し、2つの消化されたPCRフラグメントを、SphIで消化したDG488由来の大きいベクターフラグメント中に連結して、DG491を産生した。DG491を、BDR123(BDR123−491)中に形質転換して、ディフォシン遺伝子クラスターを含み、orf(オープンリーディングフレーム)1377(配列番号20)、1378(配列番号21)、および1379(配列番号23)を欠いている、組み換え体B.subtilisを生成した。これらのORFを欠いているこの改変されたディフォシンクラスターは、野生型のディフォシンクラスターがBDR123−488中で発現するように、マイトマイシンCに曝された際に活性なディフォシンを発現した(
図7)。
【0085】
4.複数のディフォシン類からの殺菌性スペクトル決定配列の特徴づけ
Cd16ディフォシン遺伝子座(配列番号1)とCd630との比較、ならびに配列決定された他のCd株(QCD−66c26;QCD−23m63;QCD−32g58;QCD−63q42)およびCd4(配列番号61)との比較によって、1つを除いて、オープンリーディングフレーム(配列番号1および61)の全てが、89〜100%のアミノ酸配列同一性を共有することが示された。例外は、ORF1374であった。この例外的な配列は、配列決定されたディフォシン全ての間で変動したが、サイズは同様であり、共有したのはわずか30%程度の配列同一性であった。ディフォシンクラスター内のORF1374の位置は、レセプター結合ドメインの位置と一致した。単離された活性なディフォシンのORF1374の配列を決定して、それらの配列が高度に変動し過ぎたことを見出した(配列番号17、49〜53)。これらの配列の比較を
図8に示す。さらに、単離されたディフォシン類のスペクトル(
図2)は、ORF1374のアミノ酸配列の類似性または相違点を反映した(
図8)。例えば、dif16および(配列番号17)およびdif126(配列番号52)のORF1374の配列は、アミノ酸1個だけが異なり、それらの殺菌スペクトルはほぼ同一であった。dif16(配列番号17)およびdif108(配列番号50)のORF1374の配列は、188アミノ酸異なり、それらの殺菌スペクトルは、極めて似ておらず、重複はわずかであった。この理由、およびORF1374が、遺伝子クラスター中で唯一の可変性のタンパク質であったという理由で、ORF1374は、標的の認識決定因子であり、各々の特定のディフォシンの固有のスペクトルを担うと結論された。
【0086】
5.B.subtilisにおけるDif4のクローニングおよび発現
ディフォシン4遺伝子座は、ディフォシン16についての方法と同様の方法によってCd4からクローニングした。しかし、dif4遺伝子クラスター、配列番号61内にEcoRI部位がないせいで、ある程度の改変が必要であった。プラスミドSW251(上の実施例2を参照)を改変して、オリゴDG211、配列番号57およびDG212、配列番号58を用いてポリリンカー中にXhoI部位を有するように改変して、それぞれNotIおよびAscI部位を導入した。これによって、ベクターDG577を創出した。
【0087】
Cd4のDNA由来のディフォシンクラスターを、3つのフラグメント中で増幅した。第一は、プライマーDG210(配列番号59)およびAV1288(配列番号37)を用いて、XhoIおよびNcoI部位を導入した。第二は、プライマーDG209(配列番号60)およびDG15(配列番号47)を用いて、NcoIおよびAscI部位を導入した。これらの2つを、事前にXhoI/AscIで切断されたDG577中にクローニングしてDG578を創出した。三番目のフラグメントを、AV1368(配列番号35)およびAV1289(配列番号36)を用いて増幅して、XhoIおよびNotI部位を導入して、XhoIおよびNotIで事前に切断された、DG578中にクローニングして、DG579を創出した。dif4クラスター(配列番号61)を含んでいる後者の構築物は、dif16についてDG491の等価物であり、すなわち、これは、ディフォシンの構造的遺伝子の下流の不必要な推定の調節性配列であるorf1377、orf1378およびorf1379を欠いていた。B.subtilisへdif4クラスターを導入するための組み込みベクターは、DG579からNotI AscIフラグメントを取ること、およびこれをDG487中にクローニングすることによって作製した(上記の実施例2を参照のこと)。この構築されたプラスミドはDG580であった。
【0088】
B.subtilis中でdif4を発現するために、orf1377−1379(配列番号61)のない、dif4遺伝子座を含むDG580を、Bacillus subtilisのゲノム中に組み込んだ。レシピエントのBacillus subtilis株は、amyE遺伝子中に挿入されたクロラムフェニコール耐性マーカーを有するBDR123であった。この株をDG580で形質転換したとき、ベクター内の前面および後面のamyE配列と、ゲノムのamyE配列との間で組み換えが生じた。これによって、ディフォシン遺伝子座を含むDG580の前面および後面のamyE領域と、ストレプトマイシン耐性遺伝子との間の全配列のBDR123ゲノム中への挿入が生じた。首尾よい組み換え体は、スペクチノマイシン耐性であったが、組み換え事象の結果としてそのゲノムマーカーを欠くせいで、クロラムフェニコール感受性になった。このB.subtilis株をBDR123−580と命名した。
【0089】
この組み込まれたdif4遺伝子座は、C.difficile中の正常なディフォシン発現に必要な調節性遺伝子の全てを含み、そして予想どおりおよびB.subtilisにおけるdif16について以前に示したとおり、dif4粒子産生は、BDR123−580中で、マイトマイシンCとの接触によって誘導された(
図9)。従って、本実施例は、dif4およびdif16の両方についての遺伝子座のクローニング、ならびにB.subtilis(非病原性好気性産生細菌の例)における各々の発現を提供する。
【0090】
6.Orf1374は、ディフォシン類の殺菌スペクトルを決定する。
Orf1374は、精製されたディフォシン構築物の一部であることが質量分析法によって示された大きい予想ポリペプチド(約200kDa)をコードする。ディフォシン16およびディフォシン4の遺伝子クラスターを比較するとき、遺伝子産物のほとんど(特に、構造的な成分であることが予測される遺伝子産物)は、アミノ酸レベルでほぼ同一である。2つのクラスターの間の大きいアミノ酸配列相違は、orf1374である。この理由、および下に考察される他の理由のために、この遺伝子産物は、ディフォシン類の標的特異性を付与すると推測された。これを試験するために、dif4のOrf1374(すなわち、配列番号49をコードする配列)を、DG580中で、Cd16由来のOrf1374(すなわち、配列番号17をコードする配列)で置き換えて、DG587を創出した。DG587を、B.subtilis BDR123のゲノム中に組み込んで、BDR123−587組み換え体を、dif16およびdif4について上記のように作製した。得られたBDR123−587を、マイトマイシンに曝して、溶解液を処理して、ディフォシン類を調製した。得られたディフォシン粒子は、ディフォシン16に対して感受性のC.difficile株19145に対して殺菌活性を有し、かつdif4に対して感受性である株19137を殺傷する能力は欠いていた(
図9)。この実験をさらに洗練した。DG587の構築によって、Cd4およびCd16のキメラであるOrf1373を生じた。構築物は、DG587のOrf1373が、もとのCd4 1373、配列番号78と100%同一であることが回復されるように作製し、これによって、Orf1374、配列番号17のみがきれいに置換されている構築物を創出した。この構築物をDG603と命名した。この構築物をB.subtilisのBDR123ゲノム中に組み込んで、上記のようにマイトマイシンCで誘導した。この得られたディフォシン粒子は、株19099および19145に対して殺菌活性を有し、かつ19137を殺傷する能力は欠いていた。従って、ディフォシンの殺菌スペクトルは、orf1374によってコードされるタンパク質によって決定され、orf1374が変化すれば、本明細書で示すように、ディフォシンの殺菌性スペクトルは変化した。
【0091】
7.RecAが活性化されたとき溶解しない、PBSXのないプロデューサー細胞
PBSXプロファージは、野生型Bacillus subtilisに偏在する。このプロファージは、誘導された場合、発育不良の(stunted)頭部(ヘッド)構造を保有し、DNAの小さい、ランダムなフラグメントしか含まないという点で欠損性である。これは、RecAの制御下であり、従って、DNA損傷剤、例えば、マイトマイシンC、および他の形態の細菌に対する重度のストレスによって誘導される。誘導された場合、これは細菌の溶解およびPBSX粒子の放出を生じる。PBSX粒子による培養培地の汚染を回避するため、およびBacillus subtilisプロデューサー細菌の溶解を排除するため、(ディフォシン類の発現がrecAまたはdinR/lexA活性を調節することによって調節されるとき)、PBSX遺伝子クラスターを、Bacillus subtilis BDR11細菌から排除した。
【0092】
Liuらによって概説される手順に従って、PBSXノックアウトを構築した。要するに、Liuの論文で用いられるプライマーおよび重複の伸長PCR技術を用いて、親株BDR11のaraR遺伝子を欠失させて、Bacillusのアラビノースのプロモーター、P
araA−neo
Rのもとでネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子と置き換えて、株BDG2を作製した。araR遺伝子の欠失は、PCRによって、およびカナマイシンに対する耐性の付与によって確認した。
【0093】
次に、DNA構築物を作製して、PBSX遺伝子座自体を欠失した。この構築物を作製するために、以下の5つのPCR産物を、1つの大きい生成物(BDR11から増幅した、1kbのxylB遺伝子の配列5’;BDR11から増幅した、1kbのxylA遺伝子の配列3’;プラスミドpJW034から増幅したクロラムフェニコール耐性遺伝子cat;BDR11から増幅したaraR;および最後に、BDR11から増幅した、1kbのxylB遺伝子を含有する配列)への重複伸長PCRによってスプライシングした。重複した伸長PCR産物を、pUC19のXmaIおよびSpeI部位にクローニングした。次いでこの構築物を、SacIIで直線化して、株BDG2細菌中に形質転換して、これを、1mlあたり5μgのクロラムフェニコールを補充したLB寒天プレート上にプレートした。コロニーをこのプレートからピックアップして、1mlあたり5μgのクロラムフェニコール、または1mlあたり20μgのカナマイシンのいずれかを補充したLB寒天プレート上にパッチした。クロラムフェニコール耐性およびカナマイシン感受性であった株を、抗生物質選択なしのLBブロス中で4時間増殖し、次いで、1mlあたり20μgのカナマイシンを補充したLB寒天プレート上にプレートした。これらのプレート上で増殖したコロニーを、PBSX遺伝子の存在下でコロニーPCRによって試験した。PBSX遺伝子クラスターの欠失は、wt(野生型)株BD123中のPBSX遺伝子の部位にまたがったPCR産物を配列決定することによって、株BDG9中で確認した。さらに、分析によって、Bacillus subtilis株BD123またはBDG2とは異なり、BDG9は、3μgマイトマイシンC/mlの存在下でPBSX粒子を溶解も産生もしないことが示された。
【0094】
PBSX欠失株、BDG9を、プラスミドDG580で形質転換して、BDG27を創出した。Cd4ディフォシンクラスターの組み込みは、スペクチノマイシン耐性によって確認した。BDG27を増殖して、上記のようにマイトマイシンCで誘導した。16時間後、細胞を回収して、BugBuster(Novagen)で溶解して、細胞を破壊した。なぜなら、PBSXなしでは、本発明者らは、ディフォシン類が細胞内で蓄積すると予想したからである。BugBusterで細胞を溶解した後、細片を遠心分離によって除去して、上清を株19137に対して殺菌活性について試験した。BDG27によって産生されるディフォシンは、Cd19137に対する活性を示したが、Cd19099に対しては示さず、従って、ディフォシン4が、この非溶解性PBSX欠失株で産生されたことが示された。
【0095】
「含む、包含する、備える(comprising)」という用語は、「含む、包含する、備える(including)」、「含む、含有する(containing)」または「〜によって特徴づけられる(characterized by)」と交換可能に用いられて、包括的または制限のない言語であり、追加の、言及してない要素、または方法工程を排除するものではない。「〜からなる(consisting of)」という句は、特許請求の範囲で特定されていない、いかなる要素、工程または成分も排除する。「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」という句は、特許請求の範囲を、特定の材料または工程、および特許請求された発明の基本的および新規な特徴に物質的に影響しないものに限定する。本発明の開示は、これらの句の各々の範囲に相当する、本発明の組成物および方法の実施形態を考慮する。従って、言及される要素または工程を含む組成物または方法は、この組成物または方法が、それらの構成要素または工程から本質的になるか、またはなる、特定の実施形態を考慮する。
【0096】
特許、特許出願および刊行物を含む、本明細書に言及される全ての引用文献は、前に詳細に援用されていても、または援用されていなくても、その全体が参照によって本明細書に援用されている。
【0097】
ここで本発明を詳細に記載してきたが、当業者には、広範な範囲の等価なパラメーター、濃度および条件内で、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつ過剰な実験なしに同じことを行うことができることが理解される。
【0098】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載してきたが、さらなる改変が可能であることが理解される。本出願は、概して、本開示の原理に従い、そして本発明が関与する当該分野の範囲内の公知のまたは従来の実践の範囲内となるような、および本明細書において上述される本質的な特徴に適用することができるような、本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変動、使用または適合を包含するものとする。
【0099】
本発明は、上記の実施例を参照して記載してきたが、改変および変動は、本発明の趣旨および範囲内に包含されることが理解される。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0100】
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