(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶ユニットが、処理液先端波面の目標停止位置を格納しており、処理液先端波面が前記目標停止位置において停止するように前記吸引停止タイミングが算出されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
前記処理液先端面移動時間の特定が、前記吸引工程の作動開始から、前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する時間を実際に計測することにより行われることを特徴とする請求項1〜2記載の基板処理装置。
前記処理液先端面移動時間が前記記憶ユニットに格納されており、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記記憶ユニットから前記処理液先端面移動時間を読み込むことにより行われることを特徴とする請求項1〜2記載の基板処理装置。
前記算出工程において、前記記憶ユニットに目標停止位置が予め格納されており、処理液先端波面が前記目標停止位置において停止するように前記吸引停止タイミングが算出されることを特徴とする請求項5記載の基板処理方法。
前記処理液先端面移動時間の特定が、前記吸引工程の作動開始から、前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する時間を実際に計測することにより行われることを特徴とする請求項5〜6記載の基板処理方法。
前記処理液先端面移動時間が前記記憶ユニットに格納されており、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記記憶ユニットから前記処理液先端面移動時間を読み込むことにより行われることを特徴とする請求項5〜6記載の基板処理方法。
特定された前記処理液先端面移動時間と、前記記憶ユニットに格納された標準処理液先端面移動時間との差分をとり、差分が規定値以上である場合には吸引異常と判断する吸引異常判断工程をさらに含むことを特徴とする請求項5〜8記載の基板処理方法。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハ等のウエハに対して処理液を用いた処理を施す基板処理装置が用いられる。このような基板処理装置には、複数枚のウエハWに対して一括して処理を施すバッチ型のものと、1枚ずつのウエハに対して処理を施す枚葉型のものとがある。
枚葉型の基板処理装置は、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持されたウエハWに対して処理液を供給する処理液ノズルとを備えている。たとえば、処理液ノズルとしては、一定の位置に吐出部が固定された固定ノズルや、スピンチャックに保持された基板に沿って揺動する揺動アームの先端付近に吐出部を保持し、揺動アームの揺動によって処理液供給位置を基板上でスキャンさせるスキャン型ノズルなどが用いられる。
【0003】
処理液ノズルの直前には処理液供給管が接続される。当該処理液供給管の他端には、処理液バルブが介装され、この処理液バルブの開閉により、処理液供給管に導入され、処理液ノズルから供給される処理液の供給開始/供給停止を行う。
【0004】
しかし、処理液バルブを閉じていても、処理液ノズルの供給口から処理液が液だれする減少、いわゆるボタ落ちが生じる場合がある。ボタ落ちは、基板処理装置の汚染等につながる等の問題があり、特に処理液ノズルがウエハW上に配置されている場合にはウエハに望ましくない影響を与える恐れがある。
このため、ボタ落ちを回避するために、処理液ノズルまたはこれに接続する処理液供給管から残存した処理液を吸引回収する処理である、いわゆるサックバック処理が行われる。サックバック処理を実行するため、処理液供給管から分岐する形で処理液吸引管を設け、処理液吸引管に吸引バルブを介装し、処理液吸引管の他端に吸引ポンプ等の吸引手段が接続される。吸引手段を作動させ、吸引バルブを開くことにより、処理液供給管へと吸引力が伝達され、処理液供給管および処理液ノズルの内部に残存する処理液が、吸引バルブの方向に向かって吸引される。通常、当該吸引は規定の所定時間の間実行され、当該所定時間が経過すると吸引バルブは閉じられ、処理液の吸引も停止し、サックバック処理が終了する。
こうしたサックバック処理は、ウエハへの液だれ回避や、残存処理液の厳密な管理が求められる場面において、広く用いられている。従来技術においては、サックバック処理を適正に行うために、処理液供給管の形状、センサの配置による異常検出などの工夫がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ウエハへの処理液の供給タイミングや処理液の供給量をより精密に制御することが求められている。とりわけ、エッチングレートの厳密な制御が要求されるエッチング処理において、処理液の供給タイミングや供給量を精密に制御することが求められている。
しかし、従来技術における、いわゆるサックバック処理においては、サックバック処理を行った後に処理液供給管または処理液ノズルに残存する処理液の量にばらつきが生じてしまう。言い換えると、処理液供給管または処理液ノズルの内部における残存する処理液先端面の位置にばらつきが生じることとなる。
処理液ノズルから処理液を供給する際には、当該処理液先端面が、背後の処理液に押し出される形で、処理液供給管または処理液ノズルの内部を移動することとなる。当該処理液先端面が処理液ノズルの供給口に達すると同時に、当該処理液ノズルの当該供給口から処理液が供給される。このため、処理液先端面の位置にばらつきがある場合には、処理液の供給開始の実行指示を出してから実際にウエハWへと処理液が供給されるタイミングが異なってしまう。また、初期供給タイミングのばらつきは、ウエハWへ供給される処理液の総量変動にもつながる。
【0007】
こうした問題があるにもかかわらず、従来技術においては、処理液供給管または処理液ノズルに残存する処理液の量が一定量となるようにサックバック処理を行うことが困難である。
従来技術におけるサックバック動作においては、通常、吸引開始から所定時間が過ぎるとサックバックが完了したものとして吸引を停止させる。しかし、処理液が吸引される挙動は、吸引機構の特性、処理液の粘度、処理液供給管や処理液ノズルの流路の形状など様々な要因が影響するため、吸引開始から吸引停止までの時間を一定とするだけでは当該残存する処理液の量が一定量になるとは限らない。
【0008】
また、従来技術において、処理液供給管上に液面センサなどの処理液検知手段を設置し、処理液先端面の通過を検知する手段があるが、これだけでは残存する処理液を一定量とすることは保障されない。
処理液が無くなったことを液面センサが検知したことに基づいて吸引停止の動作を開始したとしても、吸引停止は、具体的には吸引ポンプなどの吸引機構と処理液供給管とを接続する吸引バルブの開閉により行われるため、当該吸引バルブの開閉動作が完了するまでには一定時間かかる。このため、残存する処理液の位置、言い換えると処理液先端面の位置は、液面センサが検知した位置とは異なる位置となるが、この位置は処理液供給管等の配管状態、吸引バルブの状態、吸引ポンプなどの出力ばらつき等の様々な条件によって変動する。
従って、液面センサを用いた従来技術によっても、処理液供給管または処理液ノズルに残存する処理液の量が一定量となるようにサックバック動作を行うことはできない。
【0009】
そこで、この発明の目的は、処理液供給管や処理液ノズルに残存する処理液が所望の分量となるようにサックバック処理を行うことを可能とする基板処理装置ならびに基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を処理するための処理液を吐出するノズル(12)と、 前記ノズルに接続され、前記ノズルに処理液を供給する処理液供給管(25)と、前記処理液供給管に介装され、前記ノズルへの処理液の供給およびその停止を切り替える処理液バルブ(28A、28B)と、前記処理液バルブと前記ノズルとの間に設定された分岐位置(36)で前記処理液供給管に分岐接続され、前記処理液供給管内の処理液を吸引して排出するための処理液吸引管(32)と、この処理液吸引管を介して前記処理液供給管内の処理液を吸引する吸引手段(36)と、前記分岐位置と前記ノズルとの間に設定された所定の波面検出位置で前記処理液供給管内の処理液先端面を検出する処理液先端面検出手段(40)と、前記処理液バルブを閉じた後に、前記吸引手段を作動させて前記処理液供給管内の処理液を吸引して排除する吸引工程を行う制御ユニット(55)と、前記吸引工程が開始されてから前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する処理液先端面移動時間と、吸引停止タイミングとの関係を示す関係性データを格納する記憶ユニット(100)とを含み、前記制御ユニットが、前記吸引手段の作動を開始させ、前記処理液先端面移動時間を特定し、前記関係性データを前記記憶ユニットから読み出し、前記処理液先端面移動時間と前記関係性データに基づいて吸引停止タイミング(T3)を算出し、前記吸引手段の作動を前記吸引停止タイミングにおいて停止させることを特徴とする基板処理装置(1)である。
【0011】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
いわゆるサックバック処理により、処理液供給管や処理液ノズルに残存した処理液を吸引した場合、処理液供給管等の形状、内部状態、吸引手段により付与された吸引力の違いなどにより、吸引された処理液が処理液供給管や処理液ノズルのどの位置まで引き戻される。言い換えると、当該処理液先端面が処理液供給管や処理液ノズルのどこに位置するかは異なる。従って、従来技術にて行われているように、サックバック吸引を既定の一定時間行った場合でも、サックバックされた処理液位置にはばらつきがある。
このばらつきは、処理液供給のタイミングのばらつきや、処理液供給量のばらつきの原因となる。
請求項1記載の発明によれば、前記吸引工程が開始されてから前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する処理液先端面移動時間を特定し、この処理液先端面移動時間に応じた適切な吸引停止タイミングを、記憶ユニットに格納した関係性データから算出することができる。従って、処理液先端面が所望の位置にくるようにサックバック処理を行うことが可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記記憶ユニットが、処理液先端波面の目標停止位置(C)を格納しており、処理液先端波面が前記目標停止位置において停止するように前記吸引停止タイミングが算出されることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置である。
【0013】
この発明によれば、記憶ユニットに格納された目標停止位置にて処理液先端波面が停止するようにサックバックを行うことが可能となる。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記吸引工程の作動開始から、前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する時間を実際に計測することにより行われることを特徴とする請求項1〜2記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、吸引停止タイミングの算出に用いられる処理液先端面移動時間の特定が、実際に前記吸引工程の作動開始から、前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する時間を計測することにより行われる。計測結果は吸引停止タイミングの算出に反映され、吸引手段の作動が当該吸引停止タイミングにおいて停止される。すなわち、処理液先端面移動時間の計測を吸引開始からリアルタイムで行い、この結果を吸引停止動作に反映させる。このことにより、処理液供給管、処理液ノズル、吸引手段の状態などに変動があったとしても、適切な位置で処理液先端波面が停止するようにサックバック処理を行うことが可能となる。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記処理液先端面移動時間が前記記憶ユニットに格納されており、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記記憶ユニットから前記処理液先端面移動時間を読み込むことにより行われることを特徴とする請求項1〜2記載の基板処理装置である。
【0017】
この発明によれば、処理液供給管、処理液ノズル、吸引機構の状態等に大きな変動が見込まれない場合等において、サックバック処理の都度、処理液先端面移動時間を計測するのではなく、処理液先端面移動時間を記憶ユニットに格納しておき、必要に応じてこれを読み出すことが可能である。
【0018】
請求項5記載の発明は、基板処理装置(1)についてサックバック処理を行う基板処理方法であって、(a)処理液ノズルおよびこれに接続する処理液供給管の内部に処理液が充填されている状態において、処理液供給管に接続する吸引手段の作動を開始させる工程と、(b)前記処理液ノズル(12)または前記処理液供給管の内部を移動する処理液先端面を検出することによって、前記処理液先端面移動時間を特定する工程と、(c)前記処理液先端面移動時間と、吸引停止タイミングとの関係を示す関係性データを記憶ユニットから読み出す工程と、(d)前記
吸引手段の作動が開始されてから前記処理液先端面が検出されるまでに要する処理液先端面移動時間と前記関係性データに基づき、吸引停止タイミングを算出する工程と、(e)前記吸引手段の作動を、前記吸引停止タイミングにおいて停止させる工程と、を含むことを含むことを特徴とする基板処理方法である。
【0019】
この発明によれば、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることが可能である。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記算出工程において、前記記憶ユニットに目標停止位置が予め格納されており、処理液先端波面が前記目標停止位置において停止するように前記吸引停止タイミングが算出されることを特徴とする請求項5記載の基板処理方法である。
【0021】
この発明によれば、請求項2記載の発明と同様の効果を得ることが可能である。
【0022】
請求項7記載の発明は、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記吸引工程の作動開始から、前記処理液先端面検出手段により前記処理液先端面が検出されるまでに要する時間を実際に計測することにより行われることを特徴とする請求項5〜6記載の基板処理方法である。
【0023】
この発明によれば、請求項3記載の発明と同様の効果を得ることが可能である。
【0024】
請求項8記載の発明は、前記処理液先端面移動時間が前記記憶ユニットに格納されており、前記処理液先端面移動時間の特定が、前記記憶ユニットから前記処理液先端面移動時間を読み込むことにより行われることを特徴とする請求項5〜6記載の基板処理方法である。
【0025】
この発明によれば、請求項4記載の発明と同様の効果を得ることが可能である。
【0026】
請求項8記載の発明は、特定された前記処理液先端面移動時間と、前記記憶ユニットに格納された標準処理液先端面移動時間との差分をとり、差分が規定値以上である場合には吸引異常と判断する吸引異常判断工程をさらに含むことを特徴とする請求項5〜8記載の基板処理方法である。
【0027】
過去に計測した処理液先端面移動時間と、現在の処理液先端面移動時間に大きな差がある場合、処理液供給管などの詰まり、吸引機構の吸引力の低下などの異常が発生している可能性がある。
この発明によればそうした異常の発生有無を、特定された前記処理液先端面移動時間と、前記記憶ユニットに格納された標準処理液先端面移動時間との差分をとり、差分が規定値以上である場合には吸引異常と判断することにより、検知することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための概念図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハ等の円形のウエハWに処理液を供給して当該ウエハWを処理するためのものである。この基板処理装置1は、内部でウエハWが処理される処理室51と、この処理室51に向けて処理液を供給するための処理液ユニット52とを備えている。
【0030】
なお、
図1に示す上記基板処理装置の装置構成並びに構造は、上述の特許文献2(特許5030767号公報)に示されたものと同様である。本発明の実施においては、サックバック操作に係る部分以外における基本装置構成や装置については、特許文献2等に示される従来技術と同様な使用態様により実施される。
つまり、本発明は、基本的にはこうした従来装置を活用しつつ、以下詳述する実施例に例示されるようにサックバック処理を行うことにより、従来技術が奏しない発明の効果を奏するものである。
以下、基板処理装置1の構成及び動作を順次説明する。
【0031】
処理室51内には、スピンチャック11と、処理液ノズル12と、リンス液ノズル13と、ノズル保持機構16とが収容されている。スピンチャック11は、ウエハWをほぼ水平に保持して鉛直軸線まわりに回転可能なスピンベース14と、このスピンベース14を鉛直軸線まわりに回転させる回転駆動機構15とを含む。
ノズル保持機構16は、ほぼ鉛直方向に沿って配置された回動軸18と、この回動軸18に対して水平方向に沿って取り付けられた揺動アーム19と、回動軸18を鉛直軸線まわりに所定の回動角度範囲で往復回動させることによって揺動アーム19を揺動させる揺動駆動機構20とを備えている。揺動アーム19の先端部に、処理液ノズル12が保持されている。
したがって、揺動駆動機構20を作動させて、揺動アーム19を水平面に沿って揺動させることにより、処理液ノズル12から供給される処理液の着液点は、スピンチャック11に保持されたウエハWの回転中心および周端縁を含む円弧形状の軌跡22を描いて移動することになる。これによって、処理液吐出部15によってウエハWの上面全域をスキャンしながら処理液を供給することができる。
【0032】
処理ユニット52には、処理液供給機構17が収容されている。処理液供給機構17は、処理液ノズル12に処理液を供給する処理液供給管25と、処理液を貯留した処理液タンク26と、処理液タンク26から処理液を汲み出して処理液供給管25へと送り込むポンプ27とを備えている。処理液供給管25には、処理液の流量を調節する流量調節バルブ23、処理液の供給/停止を切り換えるための第1処理液バルブ28Aおよび第2の処理液バルブ28B、処理液の流量を計測するための流量計29、ならびに処理液供給管25に送り込まれる処理液の温度を調整するための温度調節器30が介装されている。
図1の構成では、第1処理液バルブ28Aよりも処理液供給方向上流側に第2処理液バルブ28Bが配置されているが、これらの配置は逆であってもよい。
【0033】
処理液供給管25は、処理液ユニット52を出て処理室51に入り、この処理室51内で処理液ノズル12に接続されている。処理液供給管25と処理液ノズル12とは、別部品であってもよいし、処理液供給管25の先端部を処理液ノズル12として用いてもよい。すなわち、同一部品で処理液供給管25および処理液ノズル12を構成することもできる。
処理液供給管25において温度調節器30と第1処理液バルブ28Bとの間には、処理液を処理液タンク26へと帰還させるためのリターン配管31が分岐接続されている。処理液バルブ28Bが閉じられているときには、ポンプ27によって汲み出された処理液は、温度調節器30を通り、さらにリターン配管31を通って処理液タンク26へと帰還されることによって循環され、これにより、処理液の温度をウエハWの処理に適した一定の温度に保持することができるようになっている。
【0034】
一方、第1処理液バルブ28Aの下流側、この実施形態では流量計29の下流側に設定された分岐位置36には、それよりも下流側の処理液供給管25内の処理液を吸引するための処理液吸引管32が分岐接続されている。この処理液吸引管32は、吸引バルブ33および流量調節バルブ24を介して吸引手段34へと接続されている。この実施形態では、分岐位置36は、処理液ユニット52内に設定されている。
【0035】
分岐位置36よりも下流側には、処理液供給管25内の処理液先端面(液面)を検出するための液面検出部40が設けられている。液面検出部40は、処理液供給管25の一部の区間であり、この実施形態では、処理液ユニット52内に配置されていて、分岐位置36側よりも処理液ノズル12側の方が高くなるように高低差を付けてある。より具体的には、この実施形態では、液面検出部40は、処理液供給管25の途中部の区間を鉛直方向に沿う直管部をなすように保持して構成されている。そして、この液面検出部40に近接する位置には、液面検出部40内の処理液の液面(処理液先端面)を所定の液面検出位置(所定の液面検出高さ)42で検出するための液面センサ41が配置されている。この液面センサ41は、具体的には、液面検出位置42における処理液の有無を検出し、その検出結果に応じた信号を出力するものである。液面検出位置42を処理液先端面が通過することにより、処理液の液面(処理液先端面)が検出されることになる。
なお、液面センサ41は、処理液を光学的に検出する光学センサであってもよいし、超音波を用いて処理液を検出する超音波センサであってもよいし、液面検出位置42付近での静電容量の変化を検出する静電容量センサであってもよい。光学センサは、たとえば、発光素子と受光素子との対で構成されてもよい。このような光学センサとしては、発光素子から発生して処理液供給管25を通過した光を検出する透過型のセンサと、発光素子から発生して処理液供給管25から反射してくる光を検出する反射型のセンサとがあり、いずれも処理液供給管25内の処理液の検出のために用いることができる。
【0036】
基板処理装置1の各部を制御するために、制御ユニット55が備えられている。この制御ユニット55には、液面センサ41の出力が与えられるようになっている。制御ユニット55は、さらに、回転駆動機構15、揺動駆動機構20、吸引手段34および温度調節器30の動作を制御し、また、第1および第2処理液バルブ28A,28Bおよび吸引バルブ33を開閉制御し、流量計29の出力をモニタする。
【0037】
スピンチャック11の側方には、ウエハWの処理に先立ち、処理液ノズル12から処理液をプリディスペンスするためのプリディスペンスポッド38が配置されている。このプリディスペンスポッド38は、処理液ノズル12からプリディスペンスされる処理液を受けて、排液配管39へと導くようになっている。処理液のプリディスペンスを行うことにより、処理液供給管25内に非温度調節状態の処理液が存在していれば、これを予め排出し尽くした後に、適切に温度調節された処理液を処理開始当初からウエハWに供給することができる。
【0038】
次に、基板処理装置1の動作について説明する。
未処理のウエハWは、基板搬送ロボット(図示せず)によって、処理室51内へと搬入され、スピンチャック11に受け渡される。基板搬送ロボットのハンドが処理室51から退出した後、回転駆動機構15によってスピンチャック11のスピンベース14が回転される。したがって、スピンチャック11に保持されたウエハWが鉛直軸線まわりに回転される。
【0039】
揺動アーム19は、初期状態において、処理液ノズル12をプリディスペンスポッド38上に配置した退避位置にある。この状態で、第1処理液バルブ28Aが一定時間だけ開かれることにより、第1処理液バルブ28Aよりも上流側の処理液が処理液供給管25を介して処理液ノズル12へと導かれ、処理液供給管25内は温度調節された状態の処理液で満たされる。
【0040】
プリディスペンス処理を終了すると、第1処理液バルブ28Aが閉じられ、代わって、吸引バルブ33が開かれる。これにより、常時作動状態とされている吸引手段34の働きが有効化され、分岐位置36と処理液ノズル12との間の処理液供給管25内に存在する処理液が吸引して排除される。吸引バルブ33が開いた後、制御ユニット55からの指示によって吸引バルブ34が閉じられ、吸引が停止する。吸引バルブ34が閉じられるタイミングは、処理液が、処理液ノズル12または処理液供給管25における予め定められた所定の位置まで引き込まれた状態で吸引停止するように算出されている。吸引バルブ33が開いてから閉じるまでの一連の処理(サックバック処理)については、後に
図3を参照して詳述する。
【0041】
吸引バルブ33が閉じてサックバック処理が終了した後、揺動駆動機構20が作動され、揺動アーム19がスキャン開始位置へと移動させられる。スキャン開始位置は、たとえば、処理液ノズル12がウエハWの回転中心の直上に配置される位置であってもよいし、処理液ノズル12がウエハWの周縁部の直上に配置される位置であってもよい。
この状態から、第1処理液バルブ28Aが開かれる。これにともない、処理液が処理液供給管25へと流れ込み、処理液供給管25または処理液ノズル12内に残留する処理液の処理液先端面が処理液ノズル12の先端部に向けて移動する。当該処理液は、当該処理液先端面が処理液ノズル12の先端部に到達した後、ウエハW上に向けて供給される。
【0042】
第1処理液バルブ28Aが開かれる動作とほぼ並行して、揺動駆動機構20は、ウエハWの回転中心およびその周端部を含む所定の揺動範囲(ウエハWの半径に相当する範囲または直径に相当する範囲)にわたって処理液の着液点が移動するように、往復揺動させられる。これにより、処理液供給管25を介して処理液ノズル12から吐出される処理液がウエハWの全域に導かれ、このウエハWの表面に対する処理が行われる。
【0043】
処理液タンク26に処理液としてふっ酸などの薬液を貯留し、この薬液を処理液ノズル12からウエハW上に吐出した後には、揺動アーム19は、上述の退避位置へと退避させられ、その後、リンス液ノズル13からウエハWの回転中心に向けて純水(脱イオン水)その他のリンス液が供給される。このリンス液は、回転状態のウエハW上で遠心力を受けてその全域へと広がり、ウエハW上の薬液を置換することになる。
【0044】
こうして一定時間のリンス処理を行った後には、リンス液の供給を停止するとともに、回転駆動機構12によりスピンチャック11を高速回転させて、ウエハWの表面の液滴を振り切るための乾燥処理が行われる。この乾燥処理の後、基板搬送ロボットにより、処理済のウエハWが処理室51から払い出される。
第2処理液バルブ28Bは、第1処理液バルブ28Aが正常に動作している限り、常時、開成状態に保持される。
【0045】
基板処理装置1の一連の動作についての説明は以上である。以下、本発明によるいわゆるサックバック処理の実施形態の例について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
<サックバック処理について>
図2は、第1処理液バルブ28Aが制御ユニット55の指示により開かれてから閉じられるまでの一連の処理(サックバック処理)を説明するためのフローチャートである。
【0047】
[ステップS1]
制御ユニット55は、第1処理液バルブ28Aを閉じた後、吸引バルブ33を開いて、吸引手段34による処理液供給管25に対する吸引動作を有効化する(ステップS1)。
制御ユニット55は、吸引バルブ33を開くように指示したタイミング(サックバック処理開始タイミングT1)を記憶ユニット100に格納する。
吸引バルブ33が開かれる前には、処理液供給管5および処理液ノズル1の内部に処理液が充填されている状態となっている。つまり、当該処理液の境界、すなわち処理液先端面は、処理液ノズル1の吐出口のおよそ端部に位置した状態となっている。ステップS1の実行により吸引バルブ33が開かれることにより、処理液供給管5および処理液ノズル1の内部に充填された処理液が、吸引バルブ33を通って吸引手段34側へと引き込まれていき、これに従い、当該処理液先端面も前記処理液ノズル1の吐出口の位置から、吸引手段34側へと移動していく。
【0048】
[ステップS2]
ステップS2は、処理液先端面が波面検出位置42に達することにより開始する。当該処理液先端面が、波面検出位置42に達すると、波面センサ41が当該処理液先端面が前記波面検出位置42に達したことを検知し、これを制御ユニット55に伝達する。制御ユニット55は、当該伝達のタイミング(センサ検知タイミングT2)を記憶ユニット100に格納する。
記憶ユニット100には、処理液ノズル12の供給口の先端位置に対応する位置Aの情報が予め格納されている。さらに記憶ユニット100には、前記波面検出位置42に対応する位置Bの情報が予め格納されている。例えば、位置Aを表すデータとして「0」、位置Bを表すデータとして、処理液ノズル12の供給口の先端位置から、前記波面検出位置までに至る処理液ノズル12及び処理液供給管25の流路長が格納されている。
なお、このようにステップS2において、サックバック処理の都度、センサ検知タイミングT2を測定するのではなく、過去に測定したセンサ検知タイミングT2を記憶ユニット100に格納しておき、これを適宜読み出す構成としても良い。この場合、処理液先端面の停止位置(指定停止位置Z)が液面検出位置42よりも処理液ノズル12の供給口側に位置するように位置Zを指定することが可能となる。
【0049】
[ステップS3]
引き続き、吸引停止タイミングT3を算出するためのステップS3が開始する。吸引停止タイミングT3とは、処理液供給管5または処理液ノズル12の内部における所望の位置(指定停止位置)に処理液先端面が位置するようにサックバック処理における吸引を停止するためのタイミングである。
【0050】
図3は、ステップS3の動作を説明するための模式図である。
図3における位置Aは、処理液ノズル12の供給口先端部の位置であり、通常、サックバック処理開始直前における処理液先端面がここに位置することとなる。
図3における位置Bは、液面センサ41の液面検出位置42に対応する。
図3における位置Cは、制御ユニット55が吸引バルブ33を閉じる指示を出すタイミングである吸引停止タイミングT3における処理液先端面の位置である。
一般的には、吸引バルブ33が閉じ始めてから完全に閉じるまでには所定の時間がかかり、その間にも処理液は吸引バルブ33を通じて処理液は吸引されつづけ、処理液先端面は移動を続ける。吸引バルブ33が完全に閉じるのとほぼ同時に、当該処理液先端面の移動は停止する。本発明におけるサックバック処理では、処理液先端面のこの最終的な停止位置が所望の目標位置にくるようにサックバック処理を行う。この目標位置が、
図3での位置Zである。
図3における位置Zは、予め指定されており記憶ユニット100に格納されている、サックバック処理における処理液先端面の停止位置(指定停止位置)に対応する。位置Zは処理液供給管25上に位置し、位置Bよりも吸引バルブ33側に位置する。
【0051】
ステップS3において、制御ユニット55は、サックバック処理開始タイミングT1ならびにセンサ検知タイミングT2を記憶ユニット100から読み出し、これらの値と、位置Aと位置Bとの間の流路長L1とから、位置Aと位置Bとの間を処理液先端面が移動する平均速度V1を算出する。
こうして算出された平均速度V1の値と、位置Bと位置Zとの間の流路長L2の値に基づき、センサ検知タイミングT2から何秒後に吸引バルブ33を閉じれば当該処理液先端面が位置Zで停止するかを推定するための関係性データは、予め記憶ユニット100に格納されている。
制御ユニット55は、平均速度V1、位置Bと位置Zとの間の流路長L2に基づき、当該関係性データを用いて、吸引バルブ33を閉じるタイミングである吸引停止タイミングT3を算出する。
【0052】
こうした関係性データとしては様々な態様のものを活用することができる。
関係性データの一つの持ち方としては、処理液先端面の移動挙動を数式モデル化するやり方がある。例えば、もっとも単純なモデルとしては、以下のものがある。(1)処理液ノズル12および処理液供給管25内部の処理液の移動速度がほぼ一様とみなすことが許容でき、(2)吸引バルブ33の開閉による処理液先端面の移動開始/停止が、ほぼ瞬時になされるとみなすことが許容されるような、処理液の移動を簡単なモデルで記述することが可能な場合においては、処理液先端面が吸引バルブ33を開くことにより定速Vで移動し、吸引バルブ33が閉じられることにより処理液先端面の移動も同時に停止するとの仮定に基づき、吸引停止タイミングT3を算出することができる。この単純なモデルにおいては、吸引バルブ33が瞬時に閉じるとみなすことができるため、位置Cと位置Zは同一となる。
すなわち、サックバック処理開始タイミングT1とセンサ検知タイミングT2の値ならびに位置Aと位置Bとの間の流路長L1とから、位置Aと位置Bとの間を処理液先端面が移動する平均速度V1が算出される。当該処理液先端面は引き続き同じ速度V1で位置Bと位置Cとの間の流路長L2を移動するための所要時間はL2をV1で除することで求められる。従って、吸引バルブ33を閉じる吸引停止タイミングT3を算出することができる。
【0053】
処理液ノズル12や処理液供給管25の流路の形状が複雑な場合、処理液の粘度が高い場合、処理液先端面の移動速度が遅い場合、吸引バルブ33の開閉速度が遅い場合などにおいては、上に例示した単純なモデルでは、処理液先端面の移動挙動を適切に記述することが難しい。この場合、実験的に上述の平均速度V1と流路長L2、吸引停止タイミングT3との相関関係を求めておき、より現実の処理液先端面の挙動を適切に記述しうる実験式を作成することで対処できる。
実験式の代わりに、平均速度V1と流路長L2、吸引停止タイミングT3との相関関係を実験データをプロットしたグラフや、ルックアップテーブルに記述しても同様の成果を得ることが可能である。
【0054】
図4は、関係性データとして用いるグラフの一例を図式的に示したものである。
図4のグラフの横軸は、吸引バルブ33を開いたタイミング(T1)を原点とし、以降の時刻の経過を示す。縦軸は、処理液ノズル12の供給口の先端の位置(位置A)を原点とし、処理液ノズル12および処理液供給管25の内部における流路を処理液先端面が移動した距離を示す。このグラフは、処理液先端面が位置Aから位置Bまでを移動する平均速度V1が所定の値をとる場合についてプロットされている。同様なグラフが様々なV1の値について作成されるものとする。
図4グラフに例示されるように、サックバック処理開始タイミングT1において吸引バルブ33が開かれると、処理液先端面は移動を開始する。吸引バルブ33が開いてしばらくの間は、吸引バルブ33が完全に開ききっていないため、処理液先端面の移動速度は遅い。その後、処理液先端面はセンサ検知タイミングT2においては位置Bに位置し、吸引バルブ33を閉じる動作が開始する吸引停止タイミングT3においては位置Cに位置する。その後、吸引バルブ33が完全に閉じられるまで処理液先端面は移動を続け、吸引停止タイミングT3から所定時間が経過した後のT4において、処理液先端面の移動が停止する。
こうしたデータを、様々な平均速度V1について記憶ユニット100に格納しておくことにより、ステップS3における算出処理を適切に行うことが可能である。
【0055】
以上、ステップ3および、ステップ3で用いられる関係性データの具体例等について説明した。再び
図3のフローチャートに戻り、ステップ4の説明を行う。
【0056】
[ステップS4]
制御ユニット55の指示により、先のステップS3で算出された吸引停止タイミングT3において吸引バルブ33が閉じられる。吸引バルブ33が閉じるに伴い、吸引バルブ33を通過する処理液の量は減衰し、吸引バルブ33が完全に閉じることで、吸引バルブ33を通過する処理液の量はゼロとなり、処理液先端面の移動も完全に停止する。この結果、処理液先端面は、予め指定された処理液停止位置Cの位置またはその近傍位置で停止し、一連のサックバック処理が終了する。
【0057】
上記述べた方法によりサックバック処理を行うことで、処理液先端波面が所望の位置で停止するように吸引を行うことができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施態様は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0059】
例えば、本発明の実施形態の上記説明においては、基板処理装置1における処理液ノズル12が、上記の実施形態の説明においては揺動駆動機構20により揺動可能なものとして説明した。しかし、この処理液ノズル12は、ウエハWと対向する遮断板に貫通する孔部に固設される形態であっても良い。この構成においても、処理液ノズル12と接続する処理液供給管25の構造や作用は、上記述べてきた実施形態におけるものと基本的には変わらない。また、この構成においても、本発明におけるサックバック処理を行うことが可能である。
【0060】
また、本発明の実施形態の上記説明においては、基板処理装置1における処理液ノズル12が、ウエハWの表面上部に設置され、当該ウエハWの表面へと処理液を供給する実施態様に基づいて説明した。一方で、半導体洗浄/エッチングの処理においては、ウエハWの裏面に処理液を供給して当該裏面を処理する裏面処理や、ウエハWの表面と裏面の両方に処理液を供給する表面・裏面処理が行われる場合があり、こうした要求に応じた裏面処理装置や表面・裏面処理装置(両面処理装置)が存在する。
これら装置における、ウエハWの裏面に対向する処理液ノズル及び当該処理液ノズルに接続する処理液供給管を含むサックバック機構について、これまで述べた本発明の実施形態におけるサックバック処理を適用することが可能であることは、当業者に明らかである。従って、こうした裏面処理装置や表面・裏面処理装置についてのサックバック処理についても、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で本発明が適用可能である。
【0061】
また、サックバック処理における上述のステップS3における付加的な処理として、上述の平均速度V1を参照値と比較することにより、処理液ノズル12または処理液供給管25内部の流路条件の変化を検知する処理を行っても良い。具体的には、処理液ユニット52の定期メンテナンス後の稼働時(最適な状態で稼働することが期待される)における、ステップS3において算出される平均速度V1を記憶ユニット100に参照値として格納しておく。他の稼働時に、ステップS3を実行して平均速度V1を算出した際、これを上記参照値と比較して、既定の閾値を超える変動が認められた場合には、処理液ノズル12または処理液供給管25内部の流路条件、処理液の粘度、吸引バルブ33の開閉動作、吸引手段34の出力等のいずれかに異常がある可能性がある。従って、ステップS3で算出された平均速度V1と参照値を比較することでこうした異常を検知することが可能である。
【0062】
その他、特許請求の範囲による限定の範囲内において、願書に添付された明細書、請求の範囲、図面に開示された本発明の開示内容を超えない範囲内において、実施態様の種々の変更が可能である。