(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(Electroluminescence:EL)現象を利用した発光素子として、エレクトロルミネセンス(以下「EL」ともいう)素子が知られている。EL素子は、発光層を構成する発光材料の選択により様々な波長の色で発光させることが可能であり、表示装置や照明器具への応用が進められている。特に、発光材料として有機材料を用いた有機EL素子が注目されている。
【0003】
有機EL素子を表示装置に応用した有機EL表示装置においては、基板上にマトリクス状に配置した各画素に、発光素子としての有機EL素子と、その有機EL素子の発光制御を行うスイッチング素子とが設けられている。そして、画素ごとにスイッチング素子のオン/オフを制御することにより、表示領域全体として任意の画像を表示することが可能である。
【0004】
有機EL表示装置の表示形態として、トップエミッション型とボトムエミッション型の2つが知られている。トップエミッション型とは、有機EL素子で発した光を画素回路が形成されている第1基板(アレイ基板)とは反対側、すなわち第2基板(封止基板)側に取り出す方式であり、ボトムエミッション型とは、有機EL素子で発した光を、アレイ基板側に取り出す方式である。特に、トップエミッション型は、画素回路が形成されている領域上に画素電極を設け、画素電極の大部分を有効な発光領域とできるため、画素の開口率を高く確保できる点で有利である。
【0005】
トップエミッション型の有機EL表示装置においては、画素電極(陽極)と対になる共通電極(陰極)を透過させて光を取り出す必要がある。そのため、トップエミッション型においては、共通電極として、MgAg(マグネシウム−銀合金)を光が十分に透過できる程度の薄膜状に形成して用いたり、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)といった透明導電膜を用いたりすることが多い。
【0006】
このうちITOやIZOといった透明導電膜は、金属膜に比べて抵抗が高い。したがって、表示装置の画面サイズが大きくなると、透明導電膜の抵抗成分に起因する電圧降下の影響が大きくなり、画面内で輝度差が生じるという問題がある。
【0007】
このような現象を解決する方法として、共通電極の形成後に、共通電極上に補助配線を設ける構造が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された技術は、共通電極の上に金属膜からなる補助配線を設けて共通電極の低抵抗化を図るものである。また、特許文献1には、補助配線をバンクの上に設けることにより、補助配線が画素の開口率の低下を招かないような工夫がなされている。なお、バンクとは、画素を区画する樹脂等の絶縁材料で構成された部材である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施の形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0018】
(第1の実施形態)
<表示装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置100の全体構成を示す図である。有機EL表示装置100は、基板101上に形成された、画素部(表示領域)102、走査線駆動回路103、データ線駆動回路104、及びドライバIC105を備えている。ドライバICは、走査線駆動回路103及びデータ線駆動回路104に信号を与える制御部として機能する。
【0019】
なお、データ線駆動回路104は、ドライバIC105に含まれる場合もある。
図1では、基板101上にドライバIC105を一体形成した例を示しているが、ICチップのような形態で別途基板101上に配置してもよい。また、ドライバIC105をFPC(Flexible Printed Circuits)に設けて外付けする形態を採用してもよい。
【0020】
図1に示す画素部102には、複数の画素がマトリクス状に配置される。各画素には、データ線駆動回路104から画像データに応じたデータ信号が与えられる。それらデータ信号を、各画素に設けられたスイッチング素子を介して画素電極に与えることにより、画像データに応じた画面表示を行うことができる。スイッチング素子としては、典型的には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)を用いることができる。但し、薄膜トランジスタに限らず、スイッチング機能を備える素子であれば、如何なる素子を用いても良い。
【0021】
図2は、
図1に示す有機EL表示装置100における画素部102の構成を示す図である。本実施形態において、画素201は、赤(R)に対応するサブ画素201R、緑(G)に対応するサブ画素201G及び青(B)に対応するサブ画素201Bを含む。各サブ画素には、スイッチング素子として薄膜トランジスタ202が設けられる。薄膜トランジスタ202を用いて各サブ画素201R、201G及び201Bをオン/オフ制御することにより、各サブ画素に対応する任意の色を発光させ、1つの画素として様々な色を表現できる。
【0022】
図2では、サブ画素として、RGBの三原色を用いる構成を示したが、本実施形態はそれに限定されるものではなく、RGBに白(W)又は黄(Y)を加えた4つのサブ画素で画素201を構成することもできる。また、画素配列として、同一色に対応する画素がストライプ配列された例を示したが、その他デルタ配列やベイヤー配列、又はペンタイル構造を実現する配列であってもよい。
【0023】
図3は、
図2に示す画素201をIII−III’で切断した断面の構成を示す図である。
図3において、第1基板(アレイ基板)301上には、下地層302として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機材料で構成される絶縁層が設けられ、その上に薄膜トランジスタ303が形成されている。
【0024】
第1基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)を用いることができる。第1基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0025】
薄膜トランジスタ303は、公知の方法で形成すればよい。薄膜トランジスタ303の構造は、トップゲート型であってもボトムゲート型であってもよい。本実施形態の有機EL表示装置100では、薄膜トランジスタ303を覆うように第1の絶縁層304を設け、薄膜トランジスタ303に起因する凹凸を平坦化する構造としている。第1の絶縁層304としては、樹脂材料を用いることが好ましい。例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、エポキシ等の公知の有機材料を用いることができる。平坦化効果を奏するのであれば、有機材料に代えて、酸化シリコン等の無機材料を用いてもよいし、有機材料と無機材料の積層構造とすることも可能である。なお、320で示される層は、薄膜トランジスタ303のゲート絶縁層として機能する酸化シリコン膜等の無機絶縁膜である。
【0026】
第1の絶縁層304上には、画素電極305が設けられる。画素電極305は、第1の絶縁層304に形成されたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタ303に接続されている。本実施形態の有機EL表示装置100において、画素電極305は、有機EL素子を構成する陽極(アノード)として機能する。
【0027】
画素電極305は、トップエミッション型であるかボトムエミッション型であるかで異なる構成とする。例えば、トップエミッション型である場合、画素電極305として反射率の高い金属膜を用いるか、酸化インジウム系透明導電膜(例えばITO)や酸化亜鉛系透明導電膜(例えばIZO、ZnO)といった仕事関数の高い透明導電膜と金属膜との積層構造を用いれば良い。逆に、ボトムエミッション型である場合、画素電極305として上述した透明導電膜を用いれば良い。本実施形態では、トップエミッション型の有機EL表示装置を例に挙げて説明する。
【0028】
隣接する画素電極305の間には、
図3に示すように、バンク306が配置される。バンク306は、各画素電極306の端部(エッジ)を覆うように設けられ、結果として、各画素を区画する部材として機能する。なお、バンク306は、画素電極306の端部を覆うだけでなく、コンタクトホールに起因する凹部を埋める充填材として機能させてもよい。
【0029】
本実施形態では、バンク306としてポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系といった公知の樹脂材料を用いることができる。また、
図3では、バンク306の頂部を含む断面(画素電極の主面に対して垂直な面で切断した断面)の輪郭が曲線状であるバンクを形成した例を示しているが、特に形状を限定する必要はなく、台形状であってもよい。
【0030】
画素電極306及びバンク307の上には、エレクトロルミネセンス層(EL層)307が設けられる。EL層307は、少なくとも発光層を有し、有機EL素子の発光部として機能する。EL層307には、発光層以外に、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層といった各種機能層も含まれ得る。これらの層は、低分子系もしくは高分子系の有機材料を用いて構成される。また、発光層として、有機材料だけでなく、エレクトロルミネセンス型の量子ドットを用いてもよい。
【0031】
本実施形態では、白色光を発光するEL層307を設け、後述するカラーフィルタで色分離する構成とする。EL層307には、公知の構造や公知の材料を用いることが可能であり、特に本実施形態の構成に限定されるものではない。また、EL層307は、各画素電極305上のみに形成され、バンク306上には形成されない、いわゆる塗り分け方式で形成されてもよい。
【0032】
EL層307の上には、有機EL素子の陰極(カソード)として機能する共通電極308が設けられる。本実施形態の有機EL表示装置100は、トップエミッション型であるため、共通電極308として、MgAg薄膜もしくは透明導電膜(ITOやIZO)を用いることとする。共通電極308は、各画素間を跨いで画素部102の全面に設けられる。
【0033】
ここで、本実施形態の有機EL表示装置100においては、共通電極308上の各画素に対応する位置にマスク絶縁体309が配置されている。マスク絶縁体309は、透光性を有する絶縁体であり、典型的には、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系の樹脂を用いることができる。後述するが、充填材(フィル材)311と同一材料とすることが好ましい。また、マスク絶縁体309は、光硬化性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよいが、下層のEL層307への影響を抑えるために、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
マスク絶縁体309は、バンク306で囲まれた区画内(すなわち有効な発光領域上)に設けられ、
図3に示すように、その端部はバンク306に重なる。また、マスク絶縁体309は、画素電極305の主面(EL層307が配置される面)を基準にしたとき、マスク絶縁体309の頂部が、バンク306の頂部(厳密には、バンク306上における共通電極308の頂部)よりも上方に位置するように、その膜厚が設定される。これは、後述する補助配線310を形成する際のストッパーとして機能させるためである。
【0035】
なお、本実施形態では、マスク絶縁体309を公知の溶液吐出法(いわゆるインクジェット法)を用いて形成するため、頂部を含む面の断面が曲線状となっている。すなわち、画素電極305の主面に対して垂直な面でマスク絶縁体309を切断した場合に、マスク絶縁体309の輪郭が曲線状となっている。ただし、実際には、マスク絶縁体309の頂部を含む断面の形状は、バンク306で区画される画素の形状に依存するため、直線部分を含む場合もあり得る。
【0036】
図3において、共通電極308のうちバンク306と重畳する部分の上には、補助配線310が設けられる。つまり、隣接するマスク絶縁体309の間に補助配線310が配置された状態となる。具体的には、複数のマスク絶縁体309の隙間に導電体を含む溶媒を塗布し、その溶媒を揮発させて補助配線310を形成するため、
図3に示すように、補助配線310の端部はマスク絶縁体309に接する構成となる。
【0037】
補助配線310を構成する導電体としては、銀(Ag)、チタン(Ti)を含む金属コロイドや金属ナノワイヤを用いることができる。また、カーボンブラックなどの導電性材料を用いてもよい。これらの導電体を揮発性溶媒に分散させ、塗布した後に溶媒を除去することにより、上述の導電体で構成される補助配線を形成することができる。勿論、共通電極308にダメージを与えない限りにおいて、公知の他の配線形成技術を用いることも可能である。
【0038】
マスク絶縁体309及び補助配線310の上方には、接着材及び保護材として機能する充填材(フィル材)311を介して封止基板が設けられる。充填材311としては、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系の公知の樹脂材料を用いることができる。一方、基板周辺部分で十分な封止、及び第1基板と第2基板とのギャップ保持が実現できるのであれば、充填材311を用いず、中空封止とすることもできる。
【0039】
なお、本実施形態において、「封止基板」とは、第2基板312、第2基板312の主面(第1基板301に対向する面)に設けられたRGBの各色にそれぞれ対応するカラーフィルタ313R、313G、313B、及び、それらカラーフィルタの隙間に設けられたブラックマトリクス314を含む。
【0040】
ただし、封止基板の構造はこれに限定されるものではなく、ブラックマトリクス314を省略してもよい。また、EL層307をRGB各色で分けて設ければ、封止基板からカラーフィルタを省略することも可能である。さらに、カラーフィルタを省略するか第1基板301側に形成すれば、封止基板そのものを省略することも可能である。
【0041】
以上説明した本実施形態の有機EL表示装置100は、マスク絶縁体309を用いて自己整合的に補助配線310が形成されるため、高精細化が進んだとしても、高い位置合わせ精度でバンク306上に補助配線310が配置される。そのため、補助配線310が有効な発光領域上(画素として実効的に機能する領域内)に形成されることがなく、実効的な開口率の低下を防止することができる。同時に、補助配線310が電気的に接続されることにより共通電極308の低抵抗化が可能となり、表示領域102内の輝度の均一性を向上させることができる。
【0042】
以下、上述した構成を備える本実施形態の有機EL表示装置100の製造工程について、
図4〜8を参照して説明する。
【0043】
<表示装置の製造方法>
まず、
図4に示すように、第1基板301上に下地層302を形成し、その上に公知の方法により薄膜トランジスタ(TFT)303を形成する。そして、薄膜トランジスタ303の形成により生じた凹凸を平坦化するように、第1の絶縁層304を形成する。
【0044】
第1基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)等を用いることができる。第1基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0045】
下地層302としては、典型的には、酸化シリコン系絶縁膜、窒化シリコン系絶縁膜またはそれらの積層膜を用いることができる。下地層302は、第1基板301からの汚染物質の侵入を防いだり、第1基板301の伸縮により発生する応力を緩和したりする機能を有する。
【0046】
本実施形態では、薄膜トランジスタ303としてトップゲート型TFTを形成する例を示しているが、ボトムゲート型TFTであっても良い。また、スイッチング素子として機能する素子であれば、薄膜トランジスタなどの三端子素子に限らず、二端子素子を形成しても良いし、画素回路の必要に応じて抵抗素子、容量素子を形成しても良い。
【0047】
第1の絶縁層304は、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系といった公知の樹脂材料を塗布し、その後、塗布した樹脂材料を光もしくは熱により硬化させて形成すれば良い。第1の絶縁層304の膜厚は、薄膜トランジスタ303に起因する凹凸を平坦化するに十分な膜厚であれば良い。典型的には、1〜3μmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
次に、第1の絶縁層304に、薄膜トランジスタ303に達するコンタクトホールを形成した後、公知の方法により画素電極305を形成する。本実施形態では、公知のスパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)とアルミニウム膜との積層膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィにより積層膜をパターン形成して画素電極305を形成する。各画素電極305は、複数の画素に対応する位置にそれぞれ対応するようにパターン形成される。
【0049】
次に、
図5に示すように、樹脂材料で構成されるバンク306を形成する。本実施形態では、溶液吐出法(例えばインクジェット法)を用いて光硬化性樹脂を塗布することによりバンク306を形成する。その際、隣接する画素電極305の間に溶液を塗布できるように位置合わせを行い、溶液塗布後に、光照射により硬化させて形成するため、表面張力によりその頂部を含む断面の輪郭が曲線状となっている。しかし、バンク306の形成に関して、特に形状を限定する必要はなく、台形状であってもよい。したがって、本実施形態では、溶液塗布法を用いてバンク306を形成しているが、公知のフォトリソグラフィを経てパターン形成してもよいし、印刷法により形成してもよい。
【0050】
次に、
図6に示すように、EL層307を形成する。本実施形態では、EL層307を白色光の発光部として形成する。必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電荷発生層といった各種機能層を設けてもよい。また、EL層307は、公知の成膜方法を用いて形成することが可能であり、例えば、スピンコーティング法、インクジェット法、印刷法、蒸着法などを用いることが可能である。
【0051】
EL層307を形成した後、有機EL素子の陰極として機能する共通電極308を形成する。本実施形態において、共通電極308としては、スパッタ法で形成したITO膜又はIZO膜を用いる。勿論、他の透明導電膜を用いてもよいし、MgAgといった金属膜を用いてもよい。
【0052】
次に、
図7に示すように、マスク絶縁体309を形成する。本実施形態では、溶液吐出法(例えばインクジェット法)を用いて、光硬化性のアクリル系樹脂を塗布し、光照射により硬化させてマスク絶縁体309を形成する。そのため、表面張力により、画素電極305の主面に対して垂直な面でマスク絶縁体309を切断した場合、マスク絶縁体309の輪郭は曲線状となる。このとき、共通電極308を外気に曝さないために、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で処理を行うことが望ましい。
【0053】
マスク絶縁体309を形成する際、樹脂材料を含む溶液の粘度又は吐出量に注意が必要である。具体的には、画素電極305の主面を基準にしたとき、マスク絶縁体309の頂部が、バンク306の頂部(厳密には、バンク306上における共通電極308の頂部)よりも上方に位置するように溶液の粘度又は吐出量(換言すれば、マスク絶縁体の膜厚)を調整する。つまり、溶液の粘度又は吐出量を調整して、条件を満たすようにマスク絶縁体309の膜厚を制御する。これは、マスク絶縁体309を、後に補助配線310を塗布する際にストッパー(壁)として機能させるためである。
【0054】
また、第1基板101の主面に対する法線方向からマスク絶縁体309を見た場合における端部(エッジ)が、バンク306と重なるように吐出量を制御することが望ましい。つまり、
図7に示されるように、マスク絶縁体309の端部が、バンク306の頂部を超えない範囲で、バンク306の形状に起因する傾斜部の上に位置するように吐出量を制御する。これは、マスク絶縁体309の端部の位置が、補助配線310の端部の位置になるからである。したがって、上述した位置関係にすることにより、補助配線310が有効な発光領域上に形成されることを防ぐことができる。
【0055】
なお、マスク絶縁体309は、すべての画素において画素ごとに分離している必要はない。つまり、隣接する画素間でマスク絶縁体309が繋がっている箇所が多少存在していても本発明の効果が損なわれるものではない。例えば、隣接する画素間でマスク絶縁体309が繋がっていると、その部分では補助配線310と共通電極308とのコンタクトが確保できない。しかし、共通電極310は全面に同一の電位が与えられるため、複数個所で補助配線310と共通電極308とのコンタクトが確保されていれば、全体として共通電極の低抵抗化が達成される。
【0056】
次に、
図8に示すように、補助配線310を形成する。本実施形態では、溶液吐出法(例えばインクジェット法)を用いて、銀を含む金属コロイドを分散させた溶媒を塗布し、その後、溶媒を揮発させて銀を含む補助配線310を形成する。その際、隣接するマスク絶縁体309の隙間に位置合わせを行って溶媒を塗布することにより、正確にバンク306上に補助配線310を形成することが可能となる。つまり、マスク絶縁体309を用いて自己整合的に補助配線310を形成することができる。
【0057】
補助配線310を形成した後、第2基板312上にカラーフィルタ313R、313G、313B及びブラックマトリクス314を設けた封止基板を形成する。第2基板312は、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の曲げることが可能な基板)等の透光性を有する基板を用いればよい。カラーフィルタ313R、313G、313Bは、各色の顔料を分散させた樹脂材料で形成する。ブラックマトリクス314は、チタン膜またはカーボンブラックを含有させた樹脂膜を用いて形成すればよい。これに限らず、封止基板の構成は、公知の構造及び公知の材料を用いることができる。
【0058】
その後、封止基板を充填材311で貼り合わせて
図3に示した有機EL表示装置100が完成する。充填材311としては、光硬化性の樹脂材料を用いる。本実施形態では、マスク絶縁体309と同一材料を用いることにより、マスク絶縁膜309を除去せずに、そのまま充填材311の一部として利用できるようにしている。勿論、マスク絶縁体309と充填材311とを異なる材料で形成してもよい。マスク絶縁体309と充填材311とを異なる材料で形成する場合、両者の屈折率差を利用して、マスク絶縁体309をマイクロレンズ様として用いることもできる。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る有機EL表示装置の製造方法によれば、画素に対応して配置されたマスク絶縁体309を用いて自己整合的に補助配線310を形成することにより、高い位置合わせ精度でバンク306上に補助配線310を配置することが可能となる。また、マスク絶縁体309と充填材311とを同一材料で形成することにより、マスク絶縁体309を除去する必要がなくなるため、製造プロセスを簡略化することができる。さらに、バンク306やマスク絶縁体309を溶液吐出法を用いて形成することにより、フォトリソグラフィのようなパターニング工程を省略できるため、製造プロセスを簡略化することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置200の画素の構成を示す図である。第1の実施形態との違いは、第2の実施形態に係る有機EL表示装置200は、マスク絶縁体309を除去し、共通電極308及び補助配線310の上に封止膜315を設けた点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0061】
本実施形態の場合、前述の
図8に示すように補助配線310を形成した後、マスク絶縁体309を除去する。除去方法は特に限定されるものではないが、下層に共通電極308が存在するため、酸素もしくはオゾン雰囲気でのアッシング、または、ドライエッチングによる除去が好ましい。具体的な条件は、補助配線310や共通電極308との選択比を考慮して、最適な条件を適宜決定すればよい。
【0062】
そして、マスク絶縁体309を除去した後、
図9に示すように、共通電極308及び補助配線310の上に封止膜315を設ける。封止膜315は、外部からの水分や大気の侵入を防ぎ、EL層307や共通電極308といった水分に弱い材料の劣化を抑制する目的で設けられる。そのため、封止膜315としては、緻密な膜質を備える窒化シリコン系の絶縁層を用いることが好ましい。さらに積層膜として、酸化シリコン系、酸化アルミニウム系の無機絶縁層や、樹脂系の有機絶縁層を設けても良い。
【0063】
なお、本実施形態では、封止膜315を形成した後、さらに封止基板を充填材311で貼り合わせた構成としているが、封止基板や充填材311を省略した構造とすることも可能である。例えば、カラーフィルタを第1基板301側に設けたり、発光層をRGB各色で分けて形成したりした場合、封止基板を省略することが可能である。その場合に、有機EL表示装置200全体の薄型化及び軽量化が可能となる。
【0064】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、画素内に設けたマスク絶縁膜を用いて自己整合的に補助配線を形成する。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置200も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0065】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る有機EL表示装置300の画素の構成を示す図である。第1の実施形態との違いは、第3の実施形態に係る有機EL表示装置300は、マスク絶縁体309を形成した後、その表面にプラズマ処理を施し、マスク絶縁体309の表面に撥水性を持たせた点である。その他の構成は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100と同じである。
【0066】
本実施形態の場合、前述の
図7に示すようにマスク絶縁体309を形成した後、マスク絶縁体309の表面に対してフッ素やフッ素化合物を含むガスを用いてプラズマ処理を行う。
【0067】
図10には、フッ素を含むプラズマ316を形成した雰囲気中にマスク絶縁体309を曝した状態を示している。このとき、樹脂材料で構成されるマスク絶縁体309の表面にはフッ化物317が生成され、撥水性が向上する。その結果、
図8において金属コロイドを含む溶液を塗布した際、プラズマ処理が行われたマスク絶縁膜309の表面で塗布した溶液がはじかれる。そのため、より高い位置合わせ精度でバンク306上に補助配線310を形成することが可能となる。
【0068】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、画素内に設けたマスク絶縁膜を用いて自己整合的に補助配線を形成する。したがって、本実施形態に係る有機EL表示装置300も、第1の実施形態に係る有機EL表示装置100について説明した効果と同様の効果を奏する。
【0069】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0070】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。