(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イオン性ポリマーがスルホ基を有するフッ素含有樹脂を含み、イオン性ポリマーの割合が、半導体100重量部に対して1〜100重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換層。
半導体が、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化スズナノ粒子から選択された少なくとも1種の半導体粒子を含み;(a)前記半導体粒子の焼結層に、色素と、炭素数6〜16のフルオロアルキルカルボン酸、炭素数6〜24のフルオロアルキルエーテルカルボン酸、及びその塩から選択された少なくとも一種のイオン性低分子化合物とが吸着又は担持された光電変換層、又は(b)イオン性ポリマーを含み、前記半導体粒子が分散した分散層と、この分散層に含浸された色素及び/又はイオン性低分子化合物とを含み;前記イオン性低分子化合物を、色素1モルに対して0.5〜1.5モルの割合で含む光電変換層である請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換層。
電極としての導電性基板上に形成された請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換層と、前記電極に対向して配置される対極と、これらの電極間に封止された電解質相とを備えている請求項7記載の光電変換素子。
電極としての導電性基板上に形成された光電変換層と、この電極に対向して配置される対極と、これらの電極間に封止された電解質相とを備えた光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換層を、(a)導電性基板上に形成された半導体粒子の多孔質焼結層に、色素と、請求項1〜3のいずれかに記載のイオン性低分子化合物とを吸着又は担持させるか、又は(b)導電性基板上に形成され、かつイオン性ポリマーを含み、前記半導体粒子が分散した分散層に、色素及び/又はイオン性低分子化合物を含浸させて形成する、光電変換素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の光電変換層は、少なくとも半導体及び色素を含んでおり、(A)半導体と色素とを含む光電変換層と、(B)半導体と色素とイオン性ポリマーとを含む光電変換層とに大別できる。このような光電変換層(A)(B)は、光電変換効率を向上させるため、さらに単官能イオン性低分子化合物を含んでいる。
【0025】
(半導体)
半導体は、光電変換可能な光半導体である限り特に制限されず、有機半導体であってもよいが、耐久性などの点から、無機半導体が好ましく、通常、金属酸化物(複合酸化物を含む)、金属硫化物、金属窒化物などで構成されている。
【0026】
無機半導体の構成元素は、例えば、周期表第2族元素(Ca、Sr、Baなど)、第3族金属(Sc、Y、Laなど)、第4族金属(Ti、Zr、Hfなど)、第5族金属(V、Nb、Taなど)、第6族金属(Cr、Mo、Wなど)、第7族金属(Mnなど)、第8族金属(Feなど)、第9族金属(Coなど)、第10族金属(Niなど)、第11族金属(Cuなど)、第12族金属(Zn、Cdなど)、第13族金属(Al、Ga、In、Tlなど)、第14族金属(Ge、Snなど)、第15族金属(As、Sb、Biなど)、第16族元素(Teなど)などから選択できる。半導体は、これらの元素を単独で又は二種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0027】
金属酸化物としては、例えば、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ビスマスなどが例示でき;これらの金属を複数含む複合酸化物としては、例えば、第4族金属と第2族元素などとの複合酸化物(チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなど)、第11族金属(Cu、Agなど)と、第2族金属、第3族金属及び第13族金属から選択された少なくとも一種の金属との複合酸化物(SrCu
2O
2、CuYO
2、CuAlO
2、CuGaO
2、CuInO
2、AgInO
2など);第11族金属(Cuなど)と遷移金属との複合酸硫化物又は複合酸セレン化物(LaCuOS、LaCuOSeなど)などが例示できる。
【0028】
半導体は、金属窒化物(窒化タリウムなど)、金属硫化物[例えば、CdS、硫化銅(CuS、Cu
2S)、複合硫化物(例えば、CuGaS
2、CuInS
2などの第11族金属(Cuなど)と第13族金属との複合硫化物)など]、金属リン化物(InPなど)、金属セレン化物(CdSe、ZnSeなど)、第13族金属−第15族金属化合物(GaAs、InSbなど)、第12族金属−第16族金属化合物(CdTeなど)などの金属化合物;金属単体(例えば、ケイ素、ゲルマニウム)などであってもよい。
【0029】
半導体は、他の元素(又はイオン)をドープした半導体であってもよい。これらの半導体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。半導体は、酸化クロム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ビスマス、複合酸化物(SrCu
2O
2、CuYO
2、CuAlO
2、CuGaO
2、CuInO
2、AgInO
2など)などのp型半導体であってもよいが、好ましい半導体はn型半導体である。好ましい半導体(n型半導体)としては、例えば、金属酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化タングステン(WO
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、これらの複合酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなど;硫化カドミウム;これらの金属化合物のドープ体などが例示される。これらの半導体のなかでも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタンは、TiO
2、Ti
2O
5、Ti
2O
3、含水酸化チタン(メタチタン酸、オルトチタン酸など)などであってもよく、通常、TiO
2(二酸化チタン)が汎用される。
【0030】
酸化チタンは、無定形であってもよく、結晶形(ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型など)であってもよく、結晶形(特に、ルチル型及び/又はアナターゼ型)が好ましい。特に、アナターゼ型を用いると、基板に対する密着性を向上でき、ルチル型を用いると、導電性(電荷の輸送性)や耐久性を向上でき、両者を組み合わせてもよい。
【0031】
半導体(例えば、酸化チタンなどの金属酸化物)の形状は、特に限定されず、粒子状、繊維状(又は針状又は棒状)、板状、正八面体状、星状などであってもよく、これらの形状は混在していてもよい。好ましい半導体の形態は、粒子状、針状又は繊維状が好ましく、粒子状が特に好ましい。
【0032】
半導体粒子(粒子状又は針状半導体)は微細なナノ粒子(酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化スズナノ粒子など)であるのが好ましい。半導体粒子(粒子状又は針状半導体)の平均粒径(平均一次粒子径)は、1〜1000nm(例えば、1〜700nm)程度の範囲から選択でき、通常、ナノサイズ(ナノメータサイズ)、例えば、1〜500nm(例えば、3〜300nm)、好ましくは5〜150nm(例えば、10〜100nm)、さらに好ましくは10〜50nm(例えば、15〜30nm)程度であってもよい。一次粒径が小さすぎると粒子が凝集し導電性が低下しやすく、一次粒径が大きすぎると実効表面積をあまり大きくできない。平均一次粒径は、慣用の方法、例えば、レーザー回折法などにより測定できる。なお、ナノメータサイズの半導体粒子は、可視光線に対する透明性が高く、少なくとも可視光の波長域を含む入射光を効率よく光電変換できる。
【0033】
針状(又は繊維状)半導体の平均繊維径は、例えば、1〜300nm(例えば、3〜200nm)、好ましくは10〜200nm(例えば、50〜100nm)程度であってもよく、平均繊維長は、10〜2000nm(例えば、50〜1000nm)、好ましくは100〜500nm程度であってもよい。なお、針状又は繊維状の半導体は、ナノファイバー(例えば、酸化チタンナノファイバー(TNF))を形成してもよく、ナノチューブ(例えば、酸化チタンナノチューブ(TNT))を形成してもよい。
【0034】
半導体(例えば、粒子状又は繊維状の半導体)のBET比表面積は、例えば、1〜500m
2/g(例えば、3〜300m
2/g)、好ましくは5〜200m
2/g(例えば、10〜100m
2/g)程度であってもよく、150〜350m
2/g(例えば、200〜350m
2/g)程度であってもよい。
【0035】
なお、半導体(酸化チタンなど)は、市販品を利用してもよく、慣用の方法を利用して合成して使用してもよい。例えば、酸化チタンの分散液は、特許第4522886号公報などに記載の方法により得ることができる。
【0036】
(色素)
色素は、増感剤(増感色素、光増感色素)として機能する成分であれば特に限定されず、例えば、有機色素、無機色素(例えば、炭素系顔料、クロム酸塩系顔料、カドミウム系顔料、フェロシアン化物系顔料、金属酸化物系顔料、ケイ酸塩系顔料、リン酸塩系顔料など)などであってもよい。
【0037】
有機色素(有機染料又は有機顔料)としては、慣用又は公知の色素が使用でき、例えば、ルテニウム錯体色素、オスミウム錯体色素、ポルフィリン系色素(マグネシウムポルフィリン、亜鉛ポルフィリンなど)、クロロフィル系色素(クロロフィルなど)、キサンテン系色素(ローダミンB、スルホローダミンB、エリスロシンなど)、シアニン系(又はポリメチン系)色素(メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなど)、フタロシアニン系色素(この色素は、「TT1」色素と称されるように、有機溶媒に対する溶解性を高めるための複数のアルキル基(3つのt−ブチル基など)とカルボキシル基とを有していてもよい)、アゾ系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、クマリン系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、ジフェニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素、インジゴ系色素、ピラゾロン系色素、スチルベン系色素、チアゾール系色素、キノリン系色素、アクリジン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系色素、アゾメチン系色素、キノフタロン系色素、キナクリドン系色素、インドリン系色素(「D149」色素と称される色素など)、イソインドリン系色素、ニトロソ系色素、ピロロピロール系色素、キサンテン系色素、カルバゾール系色素(例えば、「MK−2」色素と称される色素(2−シアノ−3−[5’’’−(9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)−3’,3”,3’’’,4−テトラ−n−ヘキシル−[2,2’,5’,2”,5”,25’’’]−クアテル チオフェン−5−イル]アクリル酸)など)、塩基性色素(メチレンブルー、ベーシックブルー12など)などが挙げられる。
【0038】
さらに、色素は、チオフェン系又はアクリル酸系色素(3−{5’−[N,N−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)フェニル]−2,2’−ビスチオフェン−5−イル}−2−シアノアクリル酸(「JK2」色素と称される場合がある)、2−シアノ−3−(5−(4−エトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸(「P5」色素と称される場合がある)など)、チアゾール系色素(3−カルボキシメチル−5−(3−(4−スルホブチル)−2(3H)−ベンゾチアゾリデン)−2−チオキソ−4−チアゾリジノン ナトリウム塩(「NK3705」色素)など)、金属フリーのパンクロマチック色素(例えば、電子供与体としてのフェノキサジンと電子受容体としてのローダミンとが導入された色素)などであってもよい。
【0039】
前記ルテニウム錯体色素としては、ルテニウムのピリジン系錯体、例えば、ルテニウムのビピリジン錯体[例えば、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ビステトラブチルアンモニウム(別名:「N719」色素、「レッドダイ」)、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)(別名:「N3」色素)、シス−ビス(イソチオシアナト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(別名:Z−907色素)、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、シス−ビス(シアニド)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、トリス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ジクロリド、シス−ビス(チオシアナト)ビス(2,2’−ビキノリル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)など];ルテニウムのターピリジン錯体[例えば、トリス(イソチオシアナト)ルテニウム(II)−2,2’:6’,2’’−ターピリジン−4,4’,4’’−トリカルボン酸 トリステトラブチルアンモニウム塩(別名:「N749」色素,「ブラックダイ」)など]などが例示できる。このようなピリジン系錯体は、ピリジンカルボン酸単位(ピリジンカルボン酸、ビピリジルジカルボン酸、ターピリジルトリカルボン酸から選択された少なくとも一種)と、イソチオシアナトとがルテニウムに配位し、高い光電変換効率をもたらす場合が多い。ルテニウム錯体色素には、フェナントロリンとの錯体なども含まれる。
【0040】
色素(ルテニウムのピリジン系錯体を含む)は市販品を用いてもよく、公知の文献、例えば、J.Am.Chem.Soc.115(1993)6382、J.Am.Chem.Soc.123(2001)1613、Inorganica Chimica Acta.322(2001)7などを参照して合成してもよい。
【0041】
これらの色素は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの色素のうち、有機色素(例えば、ルテニウム錯体色素)が好ましい。色素を、吸着(物理吸着、化学吸着)、化学結合により、半導体に対して付着又は結合(又は固定化)させるため、色素は、例えば、カルボキシル基、エステル基、スルホ基、シアノ基などの官能基を有する色素(例えば、「N719」色素、「N749」色素などのカルボキシル基を有するルテニウム色素、「TT1」色素などのカルボキシル基を有するフタロシアニン色素、「JK2」色素、「P5」色素、「MK−2」色素などのカルボキシル基及びシアノ基を有するカルバゾール系色素やチオフェン系色素又はアクリル酸系色素、「NK3705」色素などのスルホ基などを有するチアゾール系色素など)を選択してもよい。このような色素は、酸化チタンなどの半導体表面と結合して脱離しにくいだけでなく、半導体の励起状態と電子的にカップリングし、光電変換効率を高める上で有用であると思われる。
【0042】
色素の割合は、半導体100重量部に対して、例えば、0.1〜20重量部(例えば、0.5〜15重量部)、好ましくは1〜10重量部(例えば、2〜8重量部)、さらに好ましくは2.5〜6重量部程度であってもよい。
【0043】
[単官能イオン性低分子化合物]
イオン性低分子化合物は、極性が高く、双極子モーメントが大きな構造を有する単官能性化合物であり、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、酸素原子、窒素原子などを有していてもよい。この単官能イオン性低分子化合物は、通常、疎水性炭化水素基又はフルオロ炭化水素基と、アニオン性基又は酸性官能基(カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(リン酸基)及びこれらの塩から選択された一種のアニオン性基)とを有している。特に、疎水性を高めるためにはフッ素原子を有しているのが好ましく、極性を高めるためには酸素原子を含むアニオン性基を有するのが好ましい。このような単官能性化合物は、アニオン性基又は酸性官能基を有しているため、化学結合、配位結合、イオン結合などの種々の結合形態で、半導体(酸化チタンなど)に対して結合させるのに有利である。なお、単官能性化合物の吸収域は、色素の吸収域(特に、吸収極大波長域)と重複しないのが好ましい。
【0044】
イオン性低分子化合物の分子量(又は数平均分子量)は、例えば、5000以下(例えば、200〜3000程度)、好ましくは2000以下(例えば、300〜1500程度)、さらに好ましくは1000以下(例えば、350〜800程度)であってもよく、400〜600程度であってもよい。なお、分子量は、分子式に基づいて算出することができ、必要であれば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で測定してもよい。
【0045】
前記単官能性化合物の疎水性炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
1−20アルキル基、ブテニル、ペンテニル、オクテニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C
2−20アルケニル基など)、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基(例えば、シクロヘキシル基などのC
3−20シクロアルキル基、シクロヘキセニル基などのC
3−20シクロアルケニル基、ノルボルニル基などのC
8−20ビシクロアルケニル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC
6−20アリール基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基などのC
1−10アルキル−C
6−20アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基などのC
6−12アリール−C
1−4アルキル基など)などが例示できる。これらの炭化水素基のうち、アルキル基は、例えば、直鎖状又は分岐鎖状C
4−20アルキル基(例えば、C
6−20アルキル基)、好ましくはC
6−18アルキル基(例えば、C
6−16アルキル基)、さらに好ましくはC
7−14アルキル基(例えば、C
8−12アルキル基)などであってもよい。
【0046】
フルオロ炭化水素基は、前記例示の炭化水素基がフッ素化されたフルオロ炭化水素基、例えば、フルオロアルキル基(鎖状又は分岐鎖状パーフルオロC
6−20アルキル基、好ましくはパーフルオロC
6−18アルキル基(例えば、パーフルオロC
6−16アルキル基)、さらに好ましくはパーフルオロC
7−14アルキル基(例えば、パーフルオロC
8−14アルキル基)など)などであってもよい。また、フルオロ炭化水素基を有する化合物は、前記フッ素化されたフルオロ炭化水素基(パーフルオロアルキル基などの少なくとも部分的にフッ素化された前記フルオロアルキル基)と、前記アニオン性基を有するアルキル基(例えば、C
1−10アルキル基、好ましくはC
1−6アルキル基、さらに好ましくはC
1−4アルキル基)とが、エーテル結合又はエステル結合した化合物であってもよい。
【0047】
このような1つのアニオン性基又は酸性官能基を有する単官能イオン性低分子化合物としては、例えば、安息香酸、ナフトエ酸などのC
6−10アレーン−カルボン酸、ペンチル安息香酸などのC
1−10アルキル−C
6−10アリール−カルボン酸なども使用できるが、化合物の種類によっては光吸収域が色素の吸収域と重複する場合がある。
【0048】
好ましい単官能イオン性低分子化合物としては、例えば、アルキルカルボン酸(オクタン酸、ノナン酸、デシル酸、ドデシル酸、テトラデシル酸、ヘキサデシル酸などのC
4−24アルキル−カルボン酸、好ましくはC
6−20アルキル−カルボン酸)、フルオロアルキルカルボン酸(パーフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、フルオロデシル酸、フルオロテトラデシル酸などのフルオロC
4−24アルキル−カルボン酸、好ましくはフルオロC
6−20アルキル−カルボン酸)、フルオロアルキルエーテルカルボン酸(2−(2−(パーフルオロブチル)エトキシ)エチルカルボン酸、2−(2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ)エチルカルボン酸、2−(2−(パーフルオロノニル)エトキシ)エチルカルボン酸CF
3(CF
2)
8(CH
2)
2O(CH
2)
2COOH(PFECA)、2−(2−(パーフルオロオクチル)エトキシ)エチルカルボン酸などのフルオロC
4−24アルキルエーテル−C
1−6アルキル−カルボン酸、好ましくはフルオロC
6−18アルキルエーテル−C
1−6アルキル−カルボン酸)、これらの化合物に対応するスルホン酸[アルキルスルホン酸(オクタンスルホン酸、デシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸などのC
6−20アルキルスルホン酸など)、フルオロアルキルスルホン酸(パーフルオロオクタンスルホン酸などのフルオロC
6−20アルキルスルホン酸など)、フルオロアルキルエーテルスルホン酸]やホスホン酸[アルキルホスホン酸(デシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸などのC
6−20アルキルホスホン酸、11−ヒドロキシウンデカホスホン酸などのカルボキシル基、ヒドロキシル基を有するC
6−20アルキルホスホン酸など)、フルオロアルキルホスホン酸(パーフルオロブチル−エチルホスホン酸、パーフルオロヘキシル−エチルホスホン酸、パーフルオロオクチル−エチルホスホン酸などのフルオロC
6−20アルキルホスホン酸など)、フルオロアルキルエーテルホスホン酸など]などが例示できる。
【0049】
これらの化合物の塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウムなどのアルカリ土類金属塩;ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類との塩;アンモニウム塩などが挙げられる。
【0050】
これらのイオン性低分子化合物は単独で又は二種以上組合せて使用できる。光電変換効率を高めるため、イオン性低分子化合物はフッ素原子を有するのが好ましい。好ましい単官能イオン性低分子化合物は、フルオロ炭化水素基(又はフルオロ炭化水素鎖)、特に、フルオロアルキル基(又はフルオロアルキル鎖)(鎖状又は分岐鎖状フルオロC
6−20アルキル基、好ましくはフルオロC
6−18アルキル基(例えば、フルオロC
6−16アルキル基)、さらに好ましくはフルオロC
8−14アルキル基(又はフルオロアルキル鎖))を有していてもよい。また、好ましい単官能イオン性低分子化合物の総炭素数は、6〜26(例えば、7〜24)、好ましくは8〜20(例えば、8〜16)程度であってもよい。より具体的には、低分子化合物は、例えば、炭素数6〜16(好ましくは7〜14、さらに好ましくは7〜12)程度のフルオロアルキルカルボン酸(例えば、フルオロC
6−16アルキル−カルボン酸、好ましくはフルオロC
7−14アルキル−カルボン酸、さらに好ましくはフルオロC
8−12アルキル−カルボン酸など)、炭素数6〜24(好ましくは10〜20、さらに好ましくは14〜18)程度のフルオロアルキルエーテルカルボン酸(例えば、フルオロC
8−18アルキルエーテル−C
1−4アルキル−カルボン酸、好ましくはフルオロC
10−16アルキルエーテル−C
1−3アルキル−カルボン酸、さらに好ましくはフルオロC
12−14アルキルエーテル−C
1−3アルキル−カルボン酸など)などであってもよい。
【0051】
色素とイオン性低分子化合物とを光電変換層に共存させると、光電変換効率を大きく改善できる。そのため、イオン性低分子化合物の割合は、広い範囲から選択でき、例えば、色素1モルに対して0.1〜5モル(例えば、0.3〜2.5モル)程度であってもよく、通常、0.4〜2モル(例えば、0.5〜1.5モル)、好ましくは0.7〜1.3モル(例えば、0.8〜1.2モル)程度であってもよい。なお、色素に対するイオン性低分子化合物の割合が等モルに近づくにつれて、光電変換効率が高くなるようである。
【0052】
また、紫外−可視光(UV−Vis)吸収スペクトルにおいて、色素が会合すると、長波長側へのピークシフトが観察され、色素の会合が防止されると、短波長側へのピークシフトが観察される。本発明では、前記色素と前記イオン性低分子化合物とを共存させても、ピークシフトが認められない。そのため、本発明での光電変換効率及び電流密度の向上は、色素の会合防止に起因するものではないと思われる。
【0053】
なお、本発明では、前記単官能イオン性低分子化合物を用いればよく、必要であれば、共吸着剤として知られる化合物を併用することもできる。このような化合物としては、例えば、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、リトコール酸などの胆汁酸、コラン酸、アロコラン酸などが例示できる。
【0054】
(イオン性ポリマー又はイオン性バインダー)
半導体とイオン性ポリマー(又はイオン性バインダー)とを組み合わせることにより、焼結しなくても、光電変換特性に優れた光電変換層を形成できる。この理由は定かではないが、イオン性ポリマーにより半導体の分散性を向上するだけでなく、イオン性ポリマーが半導体(半導体ナノ粒子)に結合(化学結合、水素結合など)して、半導体の励起状態と電子的にカップリングし、半導体からの電荷を輸送する電解質(固体電解質)としても機能するのかもしれない。また、イオン性ポリマーがバインダーとして作用し、光電変換特性を長期に亘って保持でき、基板に対する光電変換層の密着性も向上できる。
【0055】
なお、光電変換層の形成には、半導体の種類に応じて、イオン性ポリマーを選択してもよく、例えば、(i)n型半導体では、アニオン性ポリマーを含むイオン性ポリマーを選択し、(ii)p型半導体では、カチオン性ポリマーを含むイオン性ポリマーを選択してもよい。
【0056】
イオン性ポリマーは、電解質性を有するポリマー(すなわち、高分子電解質)であればよくアニオン性基及びカチオン性基の双方を有する両性ポリマーであってもよいが、通常、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー(特にアニオン性ポリマー)を使用してもよい。特に、イオン性ポリマーは、イオン交換樹脂(又はイオン交換性固体高分子電解質)であってもよい。イオン性ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
アニオン性ポリマーは、通常、酸基(又は酸性基)、例えば、カルボキシル基、スルホ基(又はスルホン酸基)などを有しており、単一の酸性基、又は異種の複数の酸性基を有していてもよい。なお、酸基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
【0058】
代表的なアニオン性ポリマーとしては、陽イオン交換樹脂(酸型イオン交換樹脂)、例えば、カルボキシル基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂(例えば、(メタ)アクリル酸系樹脂(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体などの(メタ)アクリル酸と共重合性単量体との共重合体など)、カルボキシル基を有するフッ素含有樹脂(パーフルオロカルボン酸樹脂)など)、スルホン酸基(スルホ基)を有する強酸性陽イオン交換樹脂が例示できる。
【0059】
好ましいアニオン性ポリマーは強酸性陽イオン交換樹脂を含む。強酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スルホ基を有するスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレンスルホン酸、スチレン系重合体のスルホン化物など);スルホ基を有するフッ素含有樹脂(又はフッ素樹脂)、例えば、疎水性ポリ(フルオロC
2−3アルキレン)主鎖と、スルホ基を有するフルオロC
2−8アルキル側鎖又はスルホ基を有するフルオロC
2−8アルキルエーテル側鎖とを有するフルオロスルホン酸樹脂などが挙げられる。このフルオロスルホン酸樹脂としては、フルオロアルケン(テトラフルオロエチレンなどのパーフルオロC
2−3アルケンなど)と、スルホフルオロアルキル−フルオロビニルエーテル(スルホパーフルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテルなど)との共重合体、例えば、テトラフルオロエチレンと、[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレン又は[2−(2−スルホテトラフルオロエチル)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレンとの共重合体など]などのフルオロスルホン酸樹脂(特に、パーフルオロスルホン酸樹脂)などが挙げられる。なお、スルホ基を有するフッ素含有樹脂は、デュポン社から商品名「ナフィオン」シリーズなどとして入手可能であり、水溶液又は水分散液の形態で入手してもよい。
【0060】
アニオン性ポリマーの塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類との塩;アンモニウム塩などが挙げられる。
【0061】
カチオン性ポリマーは、塩基性基、例えば、アミノ基(例えば、アミノ基、第1級、第2級又は第3級アミノ基)、イミノ基、第4級アンモニウム塩基(例えば、トリメチルアンモニウム塩基などのトリアルキルアンモニウム塩基)などを有しており、単一の塩基性基、又は異種の複数の塩基性基を有していてもよい。なお、塩基性基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
【0062】
代表的なカチオン性ポリマーとしては、陰イオン交換樹脂(塩基型イオン交換樹脂)、例えば、アリルアミン系単量体の単独又は共重合体、ビニルアミン系単量体の単独又は共重合体、アミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、ヘテロ環式アミン系ポリマー(例えば、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドンなど)、アミン変性樹脂(アミン変性エポキシ樹脂など)、イミン系単量体の単独又は共重合体(例えば、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなど);第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどが挙げられる。
【0063】
好ましいカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどの強塩基性のカチオン性ポリマーである。第4級アンモニウム塩基含有ポリマーとしては、例えば、N,N,N−トリアルキル−N−(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム塩(例えば、トリメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライドなどのトリC
1−6アルキル(メタ)アクリロイルオキシC
2−4アルキルアンモニウム塩)の単独又は共重合体;N,N,N−トリアルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのトリC
1−16アルキル(ビニル−C
6−10アリールC
1−4アルキル)アンモニウム塩)、N,N−ジアルキル−N−アラルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのN,N−ジC
1−6アルキル−N−C
6−10アリールC
1−4アルキル−N−(ビニル−C
6−10アリールC
1−4アルキル)アンモニウム塩))の単独又は共重合体など;カチオン化セルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシC
2−4アルキルセルロースと、第4級アンモニウム塩基を有するエポキシ化合物(例えば、N,N,N−トリアルキル−N−グリシジルアンモニウム塩)との反応物)、第4級アンモニウム塩基を導入したスチレン系樹脂などが挙げられる。
【0064】
なお、カチオン性セルロース(カチオン化セルロース)は、(株)ダイセルから、商品名「ジェルナー」、ポリアリルアミンは、ニットーボーメディカル(株)から商品名「PAA」シリーズ、アミン変性シリコーン樹脂は、信越化学工業(株)から、商品名「KF」シリーズなどとして入手できる。
【0065】
カチオン性ポリマーの塩としては、例えば、ハロゲン化物塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩などのアルカン酸塩)、スルホン酸塩などが挙げられる。
【0066】
なお、イオン性ポリマーの水溶液又は水分散液のpHは、イオン性ポリマーの種類に応じて、酸性、中性、アルカリ性のpHから選択できる。例えば、アニオン性ポリマーのpH(25℃)は、例えば、3〜14、好ましくは4〜12、さらに好ましくは6〜11(例えば、7〜9)程度であってもよい。カチオン性ポリマーのpH(25℃)は、例えば、6〜14(例えば、7〜13)、好ましくは8〜13(例えば、9〜13)、さらに好ましくは10〜13程度であってもよい。pHは、慣用の中和方法で調整できる。
【0067】
なお、イオン性ポリマーは、架橋構造を有していてもよいが、架橋構造を有していない(又は架橋度が非常に低い)イオン性ポリマーが好ましい。
【0068】
イオン性ポリマー(イオン交換樹脂)において、イオン交換容量は、0.1〜5.0meq/g(例えば、0.2〜4.0meq/g)、好ましくは0.3〜3.0meq/g(例えば、0.4〜2.0meq/g)、さらに好ましくは0.5〜1.5meq/g(例えば、0.5〜1.0meq/g)程度であってもよい。
【0069】
なお、イオン性ポリマーの分子量は、溶媒に対して溶解もしくは分散できる範囲であれば特に制限されない。なお、スルホ基を有するフッ素含有樹脂(フッ素樹脂)などはナノメータサイズで分散し、正確に分子量が測定できない場合がある。
【0070】
一般に、バインダーの割合が大きくなると、光電変換効率が低下するように思われるが、本発明では、イオン性ポリマーを用いることにより、半導体に対するイオン性ポリマーの量的割合が多くても、高い光電変換特性を有する光電変換層を形成できるだけでなく、導電性基板に対する光電変換層の密着性を向上できる。そのため、光電変換特性及び基板に対する密着性を高めることができる。イオン性ポリマーの割合は、半導体100重量部に対して、1〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、3〜75重量部(例えば、4〜60重量部)、好ましくは5〜50重量部(例えば、6〜40重量部)、さらに好ましくは7〜30重量部(例えば、10〜25重量部)、通常、5〜20重量部(例えば、10〜15重量部)程度であってもよい。なお、イオン性ポリマーの量が少なすぎると、密着性が低下するおそれがあり、多すぎると、光電変換特性が低下するおそれがある。
【0071】
[光電変換層及びそれを備えた光電変換体、並びにその製造方法]
前記(A)半導体と色素とを含む光電変換層、及び(B)半導体と色素とイオン性ポリマーとを含む光電変換層には、前記単官能イオン性低分子化合物が含有されていればよく、イオン性低分子化合物及び色素は、半導体と協働して光電変換可能な形態、例えば、前記半導体と接触した(吸着又は担持された)形態又は近接した形態で光電変換層に含有又は導入されている。前記光電変換層(A)(B)は、通常、導電性基板上に形成され、光電変換体を構成する。
【0072】
導電性基板は、導電体で形成してもよいが、通常、ベース基板と、この基板上に形成された導電層(又は導電膜)とを備えていてもよい。ベース基板としては、無機基板(例えば、ガラス基板、セラミックス基板など)、プラスチック基板又はプラスチックフィルム[例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロース系樹脂(セルローストリアセテートなど)、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルスルホンなど)、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド樹脂などのプラスチックで形成された基板又はフィルムなど]などが挙げられる。本発明では、半導体の焼結工程が不要であるため、ベース基板としてプラスチック基板(プラスチックフィルム)を使用できる。ベース基板は、通常、透明基板である。
【0073】
導電層は、例えば、導電性金属酸化物[例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンドープ金属酸化物(アンチモンドープ酸化スズなど)、スズドープ金属酸化物(スズドープ酸化インジウムなど)、アルミニウムドープ金属酸化物(アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、ガリウムドープ金属酸化物(ガリウムドープ酸化亜鉛など)、フッ素ドープ金属酸化物(フッ素ドープ酸化スズなど)など]などで形成できる。これらの導電層は、前記成分を単独で又は2種以上組み合わせて形成してもよい。導電層は、通常、透明導電層であってもよい。
【0074】
前記光電変換層(A)では、イオン性低分子化合物及び色素は、通常、(a)前記半導体に吸着又は担持された形態で導入されている。特に、半導体粒子の焼結層(又は多孔質焼結層、多孔質半導体層)に色素とイオン性低分子化合物とが吸着又は担持(付着又は固定化)されている場合が多い。
【0075】
このような光電変換層(A)を備えた光電変換体は、半導体(特に、半導体粒子)を含む組成物を導電性基板に塗布し、乾燥し、焼結(又は焼成)して半導体(特に半導体粒子)の焼結層(又は多孔質焼結層)を形成し、この焼結層に色素とイオン性低分子化合物とを吸着又は担持させて導入することにより調製できる。
【0076】
半導体(特に、半導体粒子)を含む組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよく、有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルカノール類)、炭化水素類(トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ラクトン系溶媒(β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、σ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル)、セロソルブアセテート類(メチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート、並びにセロソルブアセテートに類するプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートなど)、カルビトールアセテート類、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ系溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0077】
なお、必要であれば、前記組成物は、焼成又は焼結に伴って消失可能な成分、例えば、昇華性成分、界面活性剤などを含んでいてもよい。
【0078】
前記組成物に塗布には、慣用の方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ドクターブレード法、スキージ法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、インクジェット印刷法などが採用できる。塗布後、塗膜を所定の温度(例えば、室温〜150℃、好ましくは50〜120℃程度の温度)で乾燥させてもよい。
【0079】
焼成又は焼結は、塗膜を高温(例えば、400〜700℃程度)で加熱処理ことにより行うことができ、前記半導体(特に、半導体粒子)の焼結層(又は多孔質焼結層)を形成できる。
【0080】
このようにして形成された焼結層(又は多孔質焼結層)に色素及びイオン性低分子化合物を導入して収縮することにより光電変換層(A)を形成できる。色素及びイオン性低分子化合物は、通常、前記と同様の溶媒に溶解して使用され、溶液中の色素及び/又はイオン性低分子化合物の濃度は、0.1〜30重量%(例えば、0.5〜10重量%、好ましくは1〜10重量%)程度であってもよい。
【0081】
焼結層(又は多孔質焼結層)に対する色素及びイオン性低分子化合物の吸着又は担持処理(含浸処理)は、焼結層(又は多孔質焼結層)を、色素を含む溶液及びイオン性低分子化合物を含む溶液のうち一方の溶液(例えば、色素を含む溶液)で処理した後、他方の溶液(例えば、イオン性低分子化合物を含む溶液)で順次に処理してもよく、色素及びイオン性低分子化合物を含む溶液で処理(同時に処理)してもよい。この処理において、イオン性低分子化合物を含む溶液で予め処理した後、色素を含む溶液で処理すると、光電変換効率が向上する場合がある。吸着又は担持処理(含浸処理)は、噴霧により行ってもよく、通常、色素及び/又はイオン性低分子化合物を含む溶液に、焼結層(又は多孔質焼結層)を浸漬し、必要より洗浄し、乾燥することにより行うことができ、焼結層(又は多孔質焼結層)に色素及びイオン性低分子化合物が付着又は吸着した光電変換層(A)を形成できる。
【0082】
前記光電変換層(B)では、イオン性ポリマーが製膜性を有するため、導電性基板上に、イオン性ポリマーを含み、前記半導体(半導体粒子)が分散した分散層を形成できる。しかも、焼成することなく、光電変換層(B)を形成できる。そのため、色素及びイオン性低分子化合物は、種々の形態で(b)前記半導体とイオン性ポリマーとを含む分散層に存在し又は導入されていればよく、分散層に含浸又は含有された形態で導入してもよい。この分散層は、多孔質状であってもよい。このような形態の光電変換層(B)でも、光電変換層(B)又は分散層(b)の半導体に色素及びイオン性低分子化合物が吸着又は担持されているようである。
【0083】
より具体的には、前記半導体(半導体粒子)とイオン性ポリマーと前記と同様の溶媒とを含む組成物を導電性基板に塗布し、乾燥し、生成した分散層(半導体(半導体粒子)が分散した塗膜)を、前記と同様に、色素及び/又はイオン性低分子化合物を含む溶液で順次に又は同時に含浸又は担持処理(又は吸着処理)してもよい。なお、分散層は多孔質であってもよい。このような処理により、前記イオン性低分子化合物及び色素は、前記分散層に含浸して存在しており、分散層の半導体に吸着又は担持されている。
【0084】
さらに、前記半導体(半導体粒子)を、色素及び/又はイオン性低分子化合物を含む溶液で予め処理した後、必要により洗浄及び乾燥し、処理された半導体(半導体粒子)とイオン性ポリマーとを含む組成物(コーティング組成物)を調製し、この組成物を導電性基板に塗布し、乾燥することにより光電変換層(B)を形成することもできる。すなわち、半導体(酸化チタンなど)は、分散液(水分散液など)として、色素及びイオン性低分子化合物と混合し、半導体に対して吸着又は固定化処理して、イオン性ポリマーと混合し、組成物(コーティング組成物)を調製してもよい。なお、前記半導体(半導体粒子)の処理は、前記焼結層の処理と同様に、色素を含む溶液及びイオン性低分子化合物を含む溶液のうち一方の溶液(例えば、イオン性低分子化合物を含む溶液)で処理した後、他方の溶液(色素を含む溶液)で順次に処理してもよく、色素及びイオン性低分子化合物を含む溶液で処理(同時に処理)してもよい。
【0085】
さらには、前記半導体(半導体粒子)、色素、イオン性低分子化合物及びイオン性ポリマーとを含む組成物(コーティング組成物)を導電性基板に塗布し、乾燥して光電変換層(B)を形成してもよい。
【0086】
なお、イオン性ポリマーを含む組成物(コーティング組成物)において、固形分(又は不揮発性成分)の割合は、例えば、0.1〜50重量%(例えば、1〜30重量%)、好ましくは5〜25重量%(例えば、10〜20重量%)程度であってもよい。
【0087】
光電変換層の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm(例えば、3〜30μm)、さらに好ましくは3〜20μm(例えば、5〜20μm)程度であってもよい。このようにして導電層(導電性基板)と光電変換層とを有する光電変換体(色素増感光電変換体又は積層体)が得られ、光電変換体は、光電変換素子の電極(光電極)として利用できる。
【0088】
[光電変換素子及びその製造方法]
光電変換体(光電極)を備えた光電変換素子は、光電変換可能な種々の用途、代表的には太陽電池(色素増感太陽電池)に利用できる。
【0089】
太陽電池は、例えば、電極としての導電性基板上に形成された光電変換体と、この電極(電極の光電変換層側)に対向して配置される対極と、これらの電極間に封止された電解質相(又は電解質層)とを備えている。このような光電変換素子は、前記光電変換体と同様に、例えば、前記導電性基板に前記光電変換層(A)(B)を形成する工程を含む方法により製造できる。前記電解質相(又は電解質)は、両電極の周縁部を封止材[例えば、熱可塑性樹脂(アイオノマー樹脂など)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)などを含む封止剤]で封止処理することにより、両電極間の空間又は空隙内に封入されている。
【0090】
なお、半導体がn型半導体(光電極が負極)であるとき、対極は正極を形成し、半導体がp型半導体(光電極が正極)であるとき、対極は負極を形成する。
【0091】
対極は、前記光電変換体と同様に、導電性基板と、この導電性基板上(又は導電性基板の導電層上)に形成された触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)とを備えている。なお、還元能力を有する導電層では、必ずしも触媒層を設ける必要はない。対極の導電性基板は、前記と同様の基板の他、ベース基板上に導電層と触媒層とを兼ね備えた層(導電触媒層)を形成した基板などであってもよい。また、触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、特に限定されず、導電性金属(金、白金など)、カーボンなどで形成できる。
【0092】
触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、非多孔質層(又は非多孔性層)であってもよく、多孔質層であってもよい。多孔質層(多孔質触媒層)は、多孔性触媒成分(多孔質触媒成分)で構成してもよく、多孔性成分(多孔質成分)とこの多孔性成分に担持された触媒成分とで構成してもよく、これらを組み合わせて構成してもよい。すなわち、多孔質層(多孔質触媒層)は、多孔性を有するとともに、触媒として機能する。
【0093】
多孔性触媒成分としては、例えば、金属微粒子(例えば、白金黒など)、多孔質カーボン[活性炭、グラファイト、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック(カーボンブラック集合体)、カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ集合体)など]などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。多孔質触媒成分として、活性炭などを使用してもよい。
【0094】
多孔性成分としては、上記多孔質カーボンの他、金属化合物粒子[例えば、前記例示の導電性金属酸化物(例えば、スズドープ酸化インジウムなど)の粒子(微粒子)など]などが挙げられる。これらの成分も単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、触媒成分としては、導電性金属(例えば、白金)などが挙げられる。
【0095】
多孔性触媒成分及び多孔性成分の形状(又は形態)は、特に限定されず、粒子状、繊維状などであってもよく、好ましくは粒子状である。粒子状の多孔性触媒成分及び多孔性成分(多孔性粒子)の平均粒径は、例えば、1〜1000μm(例えば、10〜500μm)、好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜150μm(例えば、70〜100μm)程度であってもよい。多孔性触媒成分及び多孔性成分の比表面積は、例えば、1〜4000m
2/g(例えば、50〜2000m
2/g)、好ましくは100〜1500m
2/g(例えば、200〜1000m
2/g)、さらに好ましくは300〜700m
2/g程度であってもよい。
【0096】
なお、多孔質層(多孔質触媒層)は、必要に応じて、バインダー成分(樹脂成分)、例えば、セルロース誘導体(メチルセルロースなど)などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などを含んでいてもよい。バインダー成分の割合は、多孔質層(多孔質触媒層)全体に対して、例えば、0.1〜50重量%(例えば、1〜40重量%)、好ましくは2〜30重量%(例えば、3〜20重量%)、さらに好ましくは5〜15重量%程度であってもよい。
【0097】
電極(対極)は、少なくとも多孔質層を備えている場合が多く、通常、少なくとも導電性基板と多孔質触媒層とを備えている。代表的な多孔質層を有する電極(対極)は、(i)導電性基板と、この導電性基板(又は導電層)上に形成され、多孔性触媒成分で構成された多孔質触媒層とを備えた電極(又は積層体)、(ii)導電性基板と、この導電性基板上に形成され、多孔性成分および触媒成分(例えば、触媒成分が担持された多孔性成分)を含む多孔質触媒層とを備えた電極(又は積層体)などであってもよい。
【0098】
多孔質層(多孔質触媒層)の厚みは、例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。
【0099】
電解質層は、電解質と溶媒とを含む電解液で形成してもよく、電解質を含む固体層(又はゲル)で形成してもよい。電解液の電解質としては、特に限定されず、汎用の電解質、例えば、ハロゲン(ハロゲン分子)とハロゲン化物塩との組み合わせ[例えば、臭素と臭化物塩との組み合わせ、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせなど]などが挙げられる。ハロゲン化物塩を構成するカウンターイオン(カチオン)としては、金属イオン[例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)など]、第4級アンモニウムイオン[テトラアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩(例えば、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム塩)など]などが挙げられる。電解質は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0100】
好ましい電解質には、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせ、特に、ヨウ素と、ヨウ化金属塩[例えば、アルカリ金属塩(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)]や第4級アンモニウム塩などとの組み合わせが挙げられる。
【0101】
電解液の溶媒としては、特に限定されず、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルカノール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類)、ニトリル類(アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、エーテル類(1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなどの環状エーテル類)、スルホラン類(スルホランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、水などが挙げられる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0102】
なお、電解液は、中性溶媒又は非酸性溶媒(又は非プロトン性溶媒)であってもよい。
【0103】
なお、電解液において、電解質の濃度は、例えば、0.01〜10M、好ましくは0.03〜8M、さらに好ましくは0.05〜5M程度であってもよい。また、ハロゲン(ヨウ素など)とハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ハロゲン/ハロゲン化物塩(モル比)=1/0.5〜1/100、好ましくは1/1〜1/50、さらに好ましくは1/2〜1/30程度であってもよい。
【0104】
また、固体層の電解質としては、前記例示の電解質の他、固体状電解質{例えば、樹脂成分[例えば、チオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、カルバゾール系重合体(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)など)など]、低分子有機成分(例えば、ナフタレン、アントラセン、フタロシアニンなど)などの有機固体成分;ヨウ化銀などの無機固体成分など}などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0105】
なお、固体層は、前記電解質や電解液をゲル基材[例えば、熱可塑性樹脂(ポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)など]に保持させた固体層であってもよい。
【0106】
このような構造の光電変換素子は、色素(増感色素)の吸収波長域で光線を吸収して効率よく光電変換でき、太陽電池として適している。また、複数のセルを配設したタンデム型光電変換素子に比べて、極めてシンプルな構造で、光電変換効率を向上できる。さらに、吸収波長の異なる光電変換層の間に電極基板、電解液などが介在しないため、光吸収の損失が少なく、高価な導電性基板などの部材を削減でき、光電変換素子を安価に製造できる。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0108】
(
比較例1)
アセトンで洗浄したフッ素ドープ酸化スズ(FTO)透明導電ガラスに、酸化チタンペースト(SOLARONIX社製Ti-Nanoxide T/SP、平均一次粒子径20nm)をスクリーン印刷法により厚み10μmの正方形(4mm角)に成膜した。ホットプレートで、100℃で乾燥させた後、500℃で1時間焼成して酸化チタン電極を形成した。
【0109】
ノナン酸(東京化成(株))4.75mgとN719色素(SOLARONIX社製)35.6mgとを、アセトニトリル50mlとt−ブタノール50mlとの混合溶媒に溶解した。この溶液に上記酸化チタン電極を浸漬し、室温下で24時間静置し、酸化チタン電極(酸化チタン表面)にノナン酸およびN719色素を吸着させた。色素溶液から取り出した酸化チタン電極をアセトンで洗浄し、乾燥させて色素吸着酸化チタン電極を得た。
【0110】
得られた色素吸着酸化チタン電極のFTO層側(色素吸着側)と、対極(スパッタリング法によりITO層側に形成された白金薄膜(厚み0.003μm)を備えたITO付ガラス基板(ジオマテック(株)製、10Ω/□))のITO層側(白金薄膜側)とをスペーサ(三井・デュポンポリケミカル製、「ハイミラン」)を介して挟み、両基板間に形成された空隙(又は封止材で封止された空間)内に電解液を充填し、色素増感太陽電池を作製した。なお、電解液には、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドを0.5M、ヨウ化リチウムを0.1M、ヨウ素を0.05M含むアセトニトリル溶液を用いた。
【0111】
(実施例
1)
ノナン酸4.75mgに代えてパーフルオロノナン酸(PFNA)13.9mgを用いる以外、
比較例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0112】
(実施例
2)
PFNAの量を6.95mgに変えた他は、実施例
1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0113】
(実施例
3)
5%重量ナフィオン分散液(デュポン社製、nafion DE520、イオン交換容量0.9meq/g、pH(25℃)=1)をイソプロピルアルコールで2倍希釈した後、5重量%水酸化リチウム水溶液(水酸化リチウム(東京化成(株)製)をイオン交換水に溶解させて調製)で中和し、pH7の2.5重量%ナフィオン分散液を調製した。
【0114】
得られたpH7の2.5重量%ナフィオン分散液200重量部に酸化チタン粒子(日本アエロジル(株)製、「P25」、平均一次粒子径30nm)30重量部を添加して混合して酸化チタン分散液を調製した。
【0115】
得られた酸化チタン分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(ジオマテック製、サイズ12mm×25mm、表面抵抗10Ω/□)のITO層側に塗布した後、大気中90℃で乾燥した。余分な膜を除去して4mm角で厚み10μmの酸化チタン膜を得た。
【0116】
得られた酸化チタン膜を、実施例
1のN719色素及びPFNAを含む溶液に浸漬し、室温下で24時間静置し、酸化チタン膜(酸化チタン表面)にPFNAおよびN719色素を吸着させた。色素溶液から取り出した酸化チタン電極をアセトンで洗浄、乾燥させて色素吸着酸化チタン電極を得た。得られた色素吸着酸化チタン電極を用いる以外、
比較例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0117】
(比較例
2)
ノナン酸を用いることなく、
比較例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0118】
(比較例
3)
ノナン酸4.75mgに代えて、ケノデオキシコール酸(CDCA)11.7mgを用いる以外、
比較例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
【0119】
各実施例および比較例の色素増感太陽電池の性能を、ソーラーシミュレーター((株)三永電機製作所製「XES-301S+EL-100」)を用い、AM 1.5、100mW/cm
2、25℃の条件で評価した。出力特性グラフを
図1に示す。
【0120】
図1から明らかなように、半導体に対する色素及びイオン性低分子化合物の吸着により、光電変換効率を大きく向上できる。