(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱処理装置では、温調された熱処理プレート上に基板を載置することによって、基板を冷却または加熱する。しかしながら、基板の外周部は周囲への放熱が大きいのに対し、基板の中央部は周囲への放熱が小さい。このため、基板の外周部と中央部とで、目標温度に到達するまでの時間が異なる。したがって、単に目標温度に設定された熱処理プレート上に基板を載置するだけでは、基板の外周部および中央部を含む全面を目標温度に到達させるのに、長時間を要する。その場合、前後の工程とタクトタイムを合わせるために、多数の熱処理プレートを設け、基板を並行して熱処理する必要がある。
【0006】
一方、熱処理プレートの温度を目標温度よりも過剰な温度に設定すれば、基板が目標温度に到達するまでの時間を短縮できる。しかしながら、その場合には、基板の外周部または中央部が、過剰な熱処理を受ける虞がある。すなわち、従来の熱処理装置では、基板を短時間に熱処理することと、基板の全面を均一に熱処理することとを両立させることが、困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、基板の全面を均一かつ短時間に熱処理できる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、基板を目標温度に冷却または加熱する熱処理装置であって、基板を載置する熱処理プレートと、前記熱処理プレートを温調する温調機構と、前記熱処理プレート内に設けられた複数のリフトピンと、前記複数のリフトピンを昇降させる昇降機構と、前記熱処理プレート上に載置された基板の中央部の温度を計測する中央温度センサと、
前記熱処理プレート上に載置された基板の外周部の温度を計測する外周温度センサと、前記中央温度センサ
および前記外周温度センサの計測結果に基づいて、前記昇降機構を制御する制御部と、を備え、前記複数のリフトピンは、基板の
前記外周部を支持する複数の第1リフトピンと、前記複数の第1リフトピンよりも内側に位置し、基板の前記中央部を支持する複数の第2リフトピンと、を含み、
前記昇降機構は、前記複数の第1リフトピンを同時に昇降させる第1昇降機構と、前記複数の第2リフトピンを同時に昇降させる第2昇降機構と、を含み、前記温調機構は、前記熱処理プレートのうち、
基板の前記外周部が配置される外周エリアと、基板の前記中央部が配置される中央エリア
との双方を、前記目標温度よりも過剰な温度に温調し、前記制御部は、
基板の前記外周部および前記中央部を前記熱処理プレートに接触させて、熱処理
を開始
した後、
前記外周温度センサにより計測される温度が、前記目標温度に到達したら、前記第1昇降機構を動作させて、前記第1リフトピンを上昇させ、前記中央温度センサにより計測される温度が、前記目標温度に到達したら、前記
第2昇降機構を動作させて、前記第2リフトピンを上昇させる。
本願の第2発明は、基板を目標温度に冷却または加熱する熱処理装置であって、基板を載置する熱処理プレートと、前記熱処理プレートを温調する温調機構と、前記熱処理プレート内に設けられた複数のリフトピンと、前記複数のリフトピンを昇降させる昇降機構と、前記熱処理プレート上に載置された基板の中央部の温度を計測する中央温度センサと、前記熱処理プレート上に載置された基板の外周部の温度を計測する外周温度センサと、前記中央温度センサおよび前記外周温度センサの計測結果に基づいて、前記昇降機構を制御する制御部と、を備え、前記複数のリフトピンは、基板の前記外周部を支持する複数の第1リフトピンと、前記複数の第1リフトピンよりも内側に位置し、基板の前記中央部を支持する複数の第2リフトピンと、を含み、前記第1リフトピンの上端部の高さと、前記第2リフトピンの上端部の高さとが、互いに相違し、前記温調機構は、前記熱処理プレートのうち、基板の前記外周部が配置される外周エリアと、基板の前記中央部が配置される中央エリアとの双方を、前記目標温度よりも過剰な温度に温調し、前記制御部は、基板の前記外周部および前記中央部を前記熱処理プレートに接触させて、熱処理を開始した後、前記外周温度センサにより計測される温度が、前記目標温度に到達したら、前記昇降機構を動作させて、前記第1リフトピンの上端部を、前記熱処理プレートの上面から突出させ、前記中央温度センサにより計測される温度が、前記目標温度に到達したら、前記昇降機構を動作させて、前記第2リフトピンの上端部を、前記熱処理プレートの上面から突出させる。
【0012】
本願の第
3発明は、第1発明
または第2発明の熱処理装置であって、環境温度よりも高温の基板を、前記目標温度に冷却する。
【0013】
本願の第
4発明は、第1発明から第
3発明までのいずれか1発明の熱処理装置であって、前記目標温度は、環境温度付近の温度である。
【0014】
本願の第
5発明は、第1発明から第
4発明までのいずれか1発明の熱処理装置であって、前記中央温度センサは、基板の表面温度を非接触で計測する。
【0015】
本願の第
6発明は、基板を目標温度に冷却または加熱する熱処理方法であって、a)熱処理プレートの温調を開始する工程と、b)前記熱処理プレートの上面に基板を載置する工程と、c)前記熱処理プレート上に載置された基板の中央部
および外周部の温度を計測する工程と、d)前記工程c)の計測結果に基づいて、前記熱処理プレートから基板を引き離す工程と、を含み、前記工程a)では、前記熱処理プレートのうち、
基板の前記外周部が配置される外周エリアと、少なくとも基板の前記中央部が配置される中央エリア
との双方を、前記目標温度よりも過剰な温度に温調し、
前記工程b)では、基板の前記外周部および前記中央部を前記熱処理プレートに接触させ、前記工程d)
は、
d−1)基板の前記外周部の温度が、前記目標温度に到達したら、基板の前記外周部を、前記熱処理プレートから引き離す工程と、d−2)基板の前記中央部の温度が、前記目標温度に到達したら、
基板の前記中央部を、前記熱処理プレートか
ら引き離す
工程と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明から第
6発明によれば、少なくとも熱処理プレートの中央エリアを目標温度よりも過剰な温度で温調し、基板の中央部が目標温度に到達したら、基板の中央部を熱処理プレートから引き離す。これにより、基板の中央部を基準として、基板の全面を均一かつ短時間に熱処理できる。
【0017】
特に、本願の第
1発明によれば、基板の外周部と中央部とが、それぞれ目標温度に到達した時点で、個別に熱処理プレートから引き離す。これにより、基板の全面をより均一に熱処理できる。
【0019】
特に、本願の第
2発明によれば、基板の外周部と中央部とが、それぞれ目標温度に到達した時点で、個別に熱処理プレートから引き離す。これにより、基板の全面をより均一に熱処理できる。また、昇降機構を複数設ける必要がない。
【0020】
特に、本願の第
4発明によれば、目標温度と環境温度とが近いため、熱処理プレートから引き離された基板を、目標温度に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<1.第1実施形態>
<1−1.基板処理装置の構成>
図1は、第1実施形態に係る熱処理装置を備えた基板処理装置100の構成を示した概略図である。本実施形態の基板処理装置100は、液晶表示装置に用いられる矩形のガラス基板9(以下、単に「基板9」と称する)に対して、レジスト液の塗布、露光、および露光後の現像を行う装置である。
【0024】
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサ10、洗浄部11、デハイドベーク部12、塗布部13、減圧乾燥部14、プリベーク部15、インターフェース部16、露光部17、現像部18、リンス部19、およびポストベーク部20を有する。基板処理装置100のこれらの処理部10〜20は、上記の順に互いに隣接して配置される。基板処理装置100は、
図1中の破線矢印のように、これらの処理部10〜20の間で基板9を搬送しながら、基板9に対して順次に処理を行う。
【0025】
インデクサ10は、処理前の基板9を収容するとともに、洗浄部11に対して基板9を1枚ずつ供給する。また、インデクサ10は、処理後の基板9をポストベーク部20から受け取り、基板処理装置100の外部へ排出する。洗浄部11は、インデクサ10から搬入された基板9を洗浄し、基板9の表面に付着したパーティクル、有機汚染物質、金属汚染物質、油脂、自然酸化膜等を除去する。
【0026】
デハイドベーク部12は、加熱部と冷却部とを有する。加熱部は、例えば、環境温度よりも高い所定の温度に保たれた加熱プレート上に、洗浄後の基板9を載置する。これにより、基板9が加熱され、基板9の表面に付着した洗浄液が気化して、基板9が乾燥する。冷却部は、温調された冷却プレート上に、加熱後の基板9を載置する。これにより、基板9の温度が目標温度まで低下する。
【0027】
塗布部13は、乾燥後の基板9の表面に、レジスト液を塗布する。塗布部13では、例えば、水平に配置された基板9の表面に沿って、スリット状の吐出口を有するノズルを移動させつつ、当該ノズルから基板9の表面に向けて、レジスト液を吐出する。これにより、基板9の表面にレジスト液が塗布される。減圧乾燥部14は、基板9の表面に塗布されたレジスト液を乾燥させる。減圧乾燥部14では、例えば、基板9の周囲の圧力を低下させることによって、基板9の表面に塗布されたレジスト液から溶媒成分を気化させる。これにより、基板9の表面にレジスト膜が形成される。
【0028】
プリベーク部15は、加熱部と冷却部とを有する。加熱部は、例えば、環境温度よりも高い所定の温度に保たれた加熱プレート上に、減圧乾燥後の基板9を載置する。これにより、基板9が加熱され、基板9の表面に形成されたレジスト膜中に残存する溶媒成分が除去されて、基板9の表面に形成されたレジスト膜が固化する。冷却部は、温調された冷却プレート上に、加熱後の基板9を載置する。これにより、基板9の温度が目標温度まで低下する。
【0029】
インターフェース部16は、プリベーク部15と露光部17と現像部18との間で、基板9の受け渡しを行う。露光部17は、基板9の表面に形成されたレジスト膜に、所定の回路パターンを露光する。インターフェース部16から露光部17へ搬入された基板9は、露光部17内のステージ上に水平に載置される。そして、露光部17内の光源から、フォトマスクを介して基板9の表面に光が照射される。これにより、フォトマスク上のパターンが、基板9のレジスト膜に転写される。
【0030】
その後、基板9は、露光部17から搬出され、インターフェース部16を介して現像部18へ搬送される。現像部18は、露光後の基板9を現像液に浸して、現像処理を行う。これにより、基板9の上面にパターンが形成される。リンス部19は、基板9の表面をリンス液ですすぐことによって、基板9の表面から現像液を洗い流す。これにより、現像処理の進行が停止する。
【0031】
ポストベーク部20は、加熱部と冷却部とを有する。加熱部は、例えば、環境温度よりも高い所定の温度に保たれた加熱プレート上に、リンス後の基板9を載置する。これにより、基板9が加熱され、基板9の表面に付着したリンス液が気化して、基板9が乾燥する。冷却部は、温調された冷却プレート上に、加熱後の基板9を載置する。これにより、基板9の温度が目標温度まで低下する。
【0032】
その後、基板9は、ポストベーク部20から再びインデクサ10へ搬送される。
【0033】
<1−2.熱処理装置の構成>
続いて、上述したデハイドベーク部12内の冷却部、プリベーク部15内の冷却部、およびポストベーク部20内の冷却部のそれぞれに適用できる熱処理装置1の構成について説明する。
【0034】
図2は、第1実施形態に係る熱処理装置1の概略断面図である。
図3は、熱処理装置1の概略上面図である。本実施形態の熱処理装置1は、環境温度よりも高温の基板9を、環境温度付近の目標温度まで冷却する装置である。
図2および
図3に示すように、熱処理装置1は、熱処理プレート30、温調機構40、複数のリフトピン50、昇降機構60、温度計測部70、および制御部80を有する。
【0035】
熱処理プレート30は、略水平に配置された平板状の基板支持台である。本実施形態では、熱処理プレート30の上面視における形状は、基板9よりもやや大きい矩形となっている。熱処理プレート30の少なくとも上面31は、熱伝導性の高い材料(例えば、アルミニウム等の金属)により形成される。熱処理装置1に搬入された基板9は、熱処理プレート30の当該上面31に、水平に載置される。なお、熱処理プレート30の上面31に微小な突起を設け、当該突起の上に基板9を載置するようになっていてもよい。
【0036】
本実施形態では、基板9のうち、後述する複数の第1リフトピン51に支持される部分を「外周部91」と称し、後述する複数の第2リフトピン52に支持される部分を「中央部92」と称する。
図2に示すように、熱処理プレート30の上面31は、基板9の外周部91が配置される外周エリアA1と、基板9の中央部92が配置される中央エリアA2とを有する。
【0037】
温調機構40は、熱処理プレート30の内部に設けられた熱媒体の流路401と、熱媒体を温調しつつ循環させる温調源402とを有する。
図2および
図3では、熱処理プレート30内の流路401が形成される範囲を、破線で示している。流路401は、熱処理プレート30の中央付近から外周部付近に亘って、熱処理プレート30の内部に満遍なく形成されている。熱媒体には、例えば、水などが用いられる。熱処理プレート30の上面31は、流路401内を流れる熱媒体によって、温調される。温調源402は、熱処理プレート30内の流路401から排出される熱媒体を回収し、当該熱媒体を冷却して、再び熱処理プレート30内の流路401へ送給する。
【0038】
本実施形態では、熱処理プレート30の内部に、1本の連続した流路401が形成されている。そして、単一の温調源402から当該流路401に、熱媒体が送給される。これにより、熱処理プレート30の上面31のうち、外周エリアA1と中央エリアA2とを含む全体が、目標温度よりも低い温度(目標温度よりも過剰な温度)に温調される。温調された熱処理プレート30の上面31に高温の基板9が載置されると、基板9は、目標温度に向けて冷却される。
【0039】
複数のリフトピン50は、熱処理プレート30の上方に基板9を支持するための支持部材である。熱処理プレート30には、上面31に対して垂直に延びる複数の貫通孔32が設けられている。複数のリフトピン50は、各々の上端部が貫通孔32内に配置された状態(退避状態)と、各々の上端部が貫通孔32から熱処理プレート30の上方に突出した状態(突出状態)との間で、上下に昇降可能となっている。
【0040】
本実施形態の複数のリフトピン50は、複数の第1リフトピン51と、複数の第2リフトピン52とを含んでいる。複数の第1リフトピン51は、熱処理プレート30の外周エリアA1に設けられた貫通孔32内に配置される。また、複数の第1リフトピン51の各々の下端部は、熱処理プレート30の下方に位置する第1枠体510によって、互いに接続されている。したがって、複数の第1リフトピン51は、一体として上下に昇降移動する。
【0041】
複数の第2リフトピン52は、複数の第1リフトピン51よりも内側に位置する。複数の第2リフトピン52は、熱処理プレート30の中央エリアA2に設けられた貫通孔32内に配置される。また、複数の第2リフトピン52の各々の下端部は、熱処理プレート30の下方に位置する第1枠体510とは別の第2枠体520によって、互いに接続されている。したがって、複数の第2リフトピン52は、一体として上下に昇降移動する。
【0042】
昇降機構60は、複数のリフトピン50を昇降させるための機構である。本実施形態の昇降機構60は、第1昇降機構61と第2昇降機構62とを有する。第1昇降機構61は、モータやエアシリンダなどの動力を利用して、第1枠体510を上下に昇降させる。これにより、第1枠体510とともに、複数の第1リフトピン51が同時に昇降する。第2昇降機構62は、モータやエアシリンダなどの動力を利用して、第2枠体520を上下に昇降させる。これにより、第2枠体520とともに、複数の第2リフトピン52が同時に昇降する。すなわち、昇降機構60は、複数の第1リフトピン51と、複数の第2リフトピン52とを、熱処理プレート30に対して個別に昇降させることができる。
【0043】
複数の第1リフトピン51を上昇させると、複数の第1リフトピン51の各々の上端部が、熱処理プレート30の上面31よりも上方へ突出する。そして、基板9の外周部91が、複数の第1リフトピン51の上端部に支持される。また、複数の第2リフトピン52を上昇させると、複数の第2リフトピン52の各々の上端部が、熱処理プレート30の上面31よりも上方へ突出する。そして、基板9の中央部92が、複数の第2リフトピン52の上端部に支持される。一方、複数の第1リフトピン51および複数の第2リフトピン52を下降させると、基板9の全体が、熱処理プレート30の上面31に載置される。
【0044】
温度計測部70は、熱処理プレート30の上面31に載置された基板9の温度を計測するための機構である。本実施形態の温度計測部70は、外周温度センサ71と中央温度センサ72とを有する。外周温度センサ71および中央温度センサ72には、例えば、赤外線放射温度計が用いられる。外周温度センサ71は、基板9の外周部91の上方に配置され、外周部91の表面温度を非接触で計測する。中央温度センサ72は、基板9の中央部92の上方に配置され、中央部92の表面温度を非接触で計測する。また、外周温度センサ71および中央温度センサ72は、得られた計測結果を示す計測信号を、制御部80へ送信する。
【0045】
なお、外周温度センサ71および中央温度センサ72に、放射温度計以外の温度計を用いてもよい。例えば、基板9にプローブを接触させても差し支えない状況であれば、接触式の温度計を用いてもよい。また、温度計測部70は、外周温度センサ71および中央温度センサ72を、それぞれ複数備えていてもよい。
【0046】
制御部80は、熱処理装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図2中に概念的に示したように、制御部80は、CPU等の演算処理部81、RAM等のメモリ82、およびハードディスクドライブ等の記憶部83を有するコンピュータにより構成されている。記憶部83内には、基板9に対する熱処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0047】
図4は、制御部80と、熱処理装置1内の各部との接続構成を示したブロック図である。
図4に示すように、制御部80は、上述した温調機構40、第1昇降機構61、第2昇降機構62、外周温度センサ71、および中央温度センサ72と、それぞれ電気的に接続されている。制御部80は、記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ82に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部81が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する(
図2参照)。これにより、基板9に対する熱処理が進行する。
【0048】
<1−3.熱処理装置の動作>
続いて、第1実施形態に係る熱処理装置1の動作について、説明する。
図5は、熱処理装置1を用いて、基板9を目標温度に冷却する処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
基板9を冷却するときには、まず、熱処理プレート30の温調を開始する(ステップS11)。すなわち、温調機構40を動作させて、熱処理プレート30内の流路401に、熱媒体を送給する。これにより、熱処理プレート30の外周エリアA1および中央エリアA2を含む上面31の全体を、目標温度よりも低い温度に温調する。例えば、目標温度が23℃であり、許容誤差範囲が±1℃の場合、熱処理プレート30の上面31を、許容誤差範囲の最も低い温度である22℃よりもやや低い20℃に設定する。
【0050】
次に、熱処理プレート30の上面31に、基板9を載置する(ステップS12)。ステップS12では、まず、昇降機構60を動作させて、複数のリフトピン50(複数の第1リフトピン51および複数の第2リフトピン52)を、熱処理プレート30の上面31から突出させる。そして、加熱部において加熱された基板9を、所定の搬送ロボットによって、複数のリフトピン50上に載置する。その後、昇降機構60を再び動作させて、複数のリフトピン50を下降させる。複数のリフトピン50の上端部が、貫通孔32内に収納されると、熱処理プレート30の上面31に、基板9が水平姿勢で載置される。
【0051】
温調された熱処理プレート30の上面31に高温の基板9が載置されると、基板9の冷却が開始される。すなわち、基板9の温度が、目標温度へ向けて低下を始める。その後、外周温度センサ71および中央温度センサ72は、基板9の外周部91および中央部92の温度を、それぞれ計測する(ステップS13)。そして、外周温度センサ71および中央温度センサ72は、計測結果を示す信号を、制御部80へ送信する。
【0052】
基板9の外周部91および中央部92は、それぞれ、熱処理プレート30への熱吸収と、周囲への放熱とによって、冷却される。ただし、基板9の外周部91は、中央部92に比べて放熱の効果が大きい。このため、基板9の外周部91の温度は、中央部92の温度よりも、速く低下する。
【0053】
制御部80は、まず、外周温度センサ71の計測結果が、目標温度まで低下したか否かを監視する(ステップS14)。そして、外周温度センサ71の計測結果が目標温度まで低下すると、第1昇降機構61を動作させて、複数の第1リフトピン51を上昇させる(ステップS15)。これにより、基板9の外周部91を上方へ撓ませて、熱処理プレート30の上面31から、基板9の外周部91を引き離す。なお、このステップS15の時点では、基板9の中央部92は、熱処理プレート30の上面31に接触した状態を維持している。
【0054】
続いて、制御部80は、中央温度センサ72の計測結果が、目標温度まで低下したか否かを監視する(ステップS16)。そして、中央温度センサ72の計測結果が目標温度まで低下すると、第2昇降機構62を動作させて、複数の第2リフトピン52を上昇させる(ステップS17)。これにより、熱処理プレート30の上面31から、基板9の中央部92を引き離す。
【0055】
このように、本実施形態の熱処理装置1では、熱処理プレート30の上面31の全体を、目標温度よりも低い温度に温調する。これにより、基板9の温度を短時間に低下させることができる。また、基板9の外周部91と中央部92とが、それぞれ目標温度に到達した時点で、外周部91と中央部92とを、熱処理プレート30の上面31から個別に引き離す。このため、基板9の外周部91が過剰に冷却されることを防止して、基板9の全面を均一に冷却できる。
【0056】
また、本実施形態では、目標温度が、環境温度付近の温度である。このため、基板9の外周部91を熱処理プレート30から引き離した後、基板9の中央部92を熱処理プレート30から引き離すまでの間、先に引き離した外周部91の温度を、目標温度に維持することができる。
【0057】
<2.第2実施形態>
<2−1.熱処理装置の構成>
続いて、本発明の第2実施形態について、説明する。なお、本実施形態の熱処理装置1も、第1実施形態の熱処理装置1と同じように、基板処理装置100のデハイドベーク部12内の冷却部、プリベーク部15内の冷却部、およびポストベーク部20内の冷却部のそれぞれに、適用することができる。
【0058】
図6は、第2実施形態に係る熱処理装置1の概略断面図である。
図7は、熱処理装置1の概略上面図である。
図6および
図7に示すように、本実施形態の熱処理装置1は、熱処理プレート30、温調機構40、複数のリフトピン50、昇降機構60、温度計測部70、および制御部80を有する。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する部分については、重複説明を省略する。
【0059】
本実施形態の温調機構40は、第1温調機構41と第2温調機構42とを有する。第1温調機構41は、熱処理プレート30の内部に設けられた熱媒体の第1流路411と、熱媒体を温調しつつ循環させる第1温調源412とを有する。第1流路411は、熱処理プレート30の外周エリアA1の下方に設けられている。すなわち、本実施形態では、基板9の外周部91と、熱処理プレート30の外周エリアA1と、第1流路411とが、平面視において互いに重なる位置に配置される。
【0060】
一方、第2温調機構42は、熱処理プレート30の内部に設けられた熱媒体の第2流路421と、熱媒体を温調しつつ循環させる第2温調源422とを有する。第2流路421は、熱処理プレート30の中央エリアA2の下方に設けられている。すなわち、本実施形態では、基板9の中央部92と、熱処理プレート30の中央エリアA2と、第2流路421とが、平面視において互いに重なる位置に配置される。
【0061】
熱処理プレート30の上面31のうち、外周エリアA1は、第1温調機構41の第1流路411を流れる熱媒体によって、温調される。一方、熱処理プレート30の上面31のうち、中央エリアA2は、第2温調機構42の第2流路421を流れる熱媒体によって、温調される。本実施形態では、第1温調機構41の設定温度よりも、第2温調機構42の設定温度を、低い温度に設定する。これにより、熱処理プレート30の外周エリアA1を、目標温度付近の温度に温調し、熱処理プレート30の中央エリアA2を、目標温度よりも低い温度(目標温度よりも過剰な温度)に温調する。
【0062】
本実施形態の複数のリフトピン50は、複数の第1リフトピン51と、複数の第2リフトピン52とを含んでいる。複数の第1リフトピン51は、熱処理プレート30の外周エリアA1に設けられた貫通孔32内に配置される。複数の第2リフトピン52は、熱処理プレート30の中央エリアA2に設けられた貫通孔32内に配置される。ただし、本実施形態では、全てのリフトピン50の下端部が、熱処理プレート30の下方に位置する共通の枠体500によって、互いに接続されている。したがって、複数の第1リフトピン51および複数の第2リフトピン52は、全体が一体として上下に昇降移動する。
【0063】
本実施形態の昇降機構60は、モータやエアシリンダなどの動力を利用して、枠体500を上下に昇降させる。これにより、枠体500とともに、複数のリフトピン50が同時に昇降する。すなわち、本実施形態の昇降機構60は、複数の第1リフトピン51および複数の第2リフトピン52を、熱処理プレート30に対して同時に昇降させる。
【0064】
複数のリフトピン50を上昇させると、複数のリフトピン50の各々の上端部が、熱処理プレート30の上面31よりも上方へ突出する。そして、基板9の全体が、複数のリフトピン50の上端部に支持される。一方、複数のリフトピン50を下降させると、基板9の全体が、熱処理プレート30の上面31に載置される。
【0065】
本実施形態の温度計測部70は、中央温度センサ72のみを有する。中央温度センサ72は、基板9の中央部92の上方に配置され、中央部92の表面温度を非接触で計測する。また、中央温度センサ72は、得られた計測結果を示す計測信号を、制御部80へ送信する。
【0066】
図8は、本実施形態の制御部80と、熱処理装置1内の各部との接続構成を示したブロック図である。
図8に示すように、制御部80は、上述した第1温調機構41、第2温調機構42、昇降機構60、および中央温度センサ72と、それぞれ電気的に接続されている。制御部80は、記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ82に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部81が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、基板9に対する熱処理が進行する。
【0067】
<2−2.熱処理装置の動作>
続いて、第2実施形態に係る熱処理装置1の動作について、説明する。
図9は、第2実施形態に係る熱処理装置1を用いて、基板9を目標温度に冷却する処理の流れを示すフローチャートである。
【0068】
基板9を冷却するときには、まず、熱処理プレート30の温調を開始する(ステップS21)。すなわち、第1温調機構41を動作させて、熱処理プレート30内の第1流路411に、熱媒体を送給する。これにより、熱処理プレート30の外周エリアA1を目標温度付近の温度に温調する。また、第2温調機構42を動作させて、熱処理プレート30の第2流路421に、熱媒体を送給する。これにより、熱処理プレート30の中央エリアA2を目標温度よりも低い温度に温調する。例えば、目標温度が23℃であり、許容誤差範囲が±1℃の場合、外周エリアA1を23℃に温調し、中央エリアA2を20℃に温調する。
【0069】
次に、熱処理プレート30の上面31に、基板9を載置する(ステップS22)。温調された熱処理プレート30の上面31に高温の基板9が載置されると、基板9の冷却が開始される。すなわち、基板9の温度が、目標温度へ向けて低下を始める。その後、中央温度センサ72は、基板9の中央部92の温度を計測する(ステップS23)。そして、中央温度センサ72は、計測結果を示す信号を、制御部80へ送信する。
【0070】
基板9の外周部91および中央部92は、それぞれ、熱処理プレート30への熱吸収と、周囲への放熱とによって、冷却される。ただし、基板9の外周部91は、中央部92に比べて放熱の効果が大きい。そこで、本実施形態では、熱処理プレート30の中央エリアA2の温度を、外周エリアA1の温度よりも低く設定している。これにより、基板9の外周部91と中央部92とが、略同一の速さで冷却される。
【0071】
制御部80は、中央温度センサ72の計測結果が、目標温度まで低下したか否かを監視する(ステップS24)。そして、中央温度センサ72の計測結果が目標温度まで低下すると、昇降機構60を動作させて、第1リフトピン51および第2リフトピン52の双方を上昇させる(ステップS25)。これにより、熱処理プレート30の上面31から、基板9の全体を引き離す。
【0072】
このように、本実施形態の熱処理装置1では、熱処理プレート30の中央エリアA2を、目標温度よりも低い温度に温調する。これにより、基板9の中央部92の温度を、短時間に低下させることができる。また、熱処理プレート30の外周エリアA1と中央エリアA2とを、異なる温度に温調しておくことで、放熱効果の大きい基板9の外周部91と、放熱効果の小さい基板9の中央部92とを、略同一の速さで冷却することができる。そして、基板9の中央部92が目標温度に到達した時点で、基板9の全体を熱処理プレート30の上面31から引き離す。これにより、基板9の全面を、均一かつ短時間に冷却できる。
【0073】
また、本実施形態の熱処理装置1では、昇降機構60を複数設けることなく、また、基板9を撓ませることなく、水平姿勢のまま熱処理プレート30から基板9を引き離すことができる。
【0074】
<3.変形例>
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
図10は、一変形例に係る熱処理装置1の概略断面図である。以下、
図10の熱処理装置1について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
図10の例では、複数のリフトピン50は、複数の第1リフトピン51と、複数の第2リフトピン52とを含んでいる。複数の第1リフトピン51は、熱処理プレート30の外周エリアA1に設けられた貫通孔32内に配置される。複数の第2リフトピン52は、熱処理プレート30の中央エリアA2に設けられた貫通孔32内に配置される。ただし、本実施形態では、全てのリフトピン50の下端部が、熱処理プレート30の下方に位置する共通の枠体500によって、互いに接続されている。したがって、複数の第1リフトピン51および複数の第2リフトピン52は、全体が一体として上下に昇降移動する。
【0077】
また、
図10の例では、第1リフトピン51の上端部の高さと、第2リフトピン52の上端部の高さとが、互いに相違する。具体的には、第1リフトピン51の上端部の高さが、第2リフトピン52の上端部の高さよりも、高くなっている。
【0078】
制御部80は、熱処理の開始後、外周温度センサ71の計測結果が目標温度まで低下すると、昇降機構60を動作させて、複数のリフトピン50を上昇させる。これにより、複数の第1リフトピン51の上端部を、熱処理プレート30の上面31から突出させる。そうすると、基板9の外周部91が、熱処理プレート30の上面31から引き離される。ただし、この時点では、基板9の中央部92は、熱処理プレート30の上面31に接触している。このため、基板9の中央部92は、引き続き熱処理プレート30によって冷却される。
【0079】
続いて、制御部80は、中央温度センサ72の計測結果が目標温度まで低下すると、昇降機構60を動作させて、複数のリフトピン50をさらに上昇させる。これにより、複数の第2リフトピン52の上端部を、熱処理プレート30の上面31から突出させる。そうすると、基板9の中央部92が、熱処理プレート30の上面31から引き離される。
【0080】
このように、
図10の例では、第1リフトピン51と第2リフトピン52の上端部の高さを相違させている。このため、複数の昇降機構を設けることなく、基板9の外周部91と中央部92とを、それぞれが目標温度に到達した時点で、個別に熱処理プレート30から引き離すことができる。したがって、基板9の全面を均一に熱処理できる。
【0081】
また、上記の実施形態では、基板9を、外周部91および中央部92の2つの領域に分けて熱処理する例を示した。しかしながら、基板9を、3つ以上の領域に分けて、各領域に対して熱処理を行ってもよい。すなわち、基板9の各領域に対応するように、昇降機構や温調機構が、3つ以上設けられていてもよい。また、温度計測部も、3つ以上の温度センサを有していてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態では、熱処理の例として、冷却処理を行う場合について説明した。しかしながら、本発明の熱処理装置は、加熱処理を行う装置であってもよい。加熱処理の場合には、熱処理プレートの少なくとも中央エリアを、目標温度よりも高い温度(目標温度よりも過剰な温度)に温調すればよい。そして、制御部は、加熱処理の開始後、中央温度センサの計測結果が目標温度まで上昇したら、昇降機構を動作させて、第2リフトピンを上昇させればよい。
【0083】
また、熱処理装置の処理空間は、大気圧環境であってもよく、減圧環境であってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態の熱処理装置1は、基板処理装置100の一部であった。しかしながら、本発明の熱処理装置は、他の処理部とともに設置されない独立した装置であってもよい。
【0085】
また、上記の実施形態の熱処理装置は、液晶表示装置用ガラス基板を処理対象としていた。しかしながら、本発明の熱処理装置は、PDP用ガラス基板、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、カラーフィルタ用基板、記録ディスク用基板、太陽電池用基板などの他の精密電子装置用基板を処理対象とするものであってもよい。また、基板の形状は円板状であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。