特許第6487273号(P6487273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6487273
(24)【登録日】2019年3月1日
(45)【発行日】2019年3月20日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20190311BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20190311BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20190311BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20190311BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20190311BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20190311BHJP
【FI】
   C04B24/26 E
   C04B28/02
   C04B22/10
   C04B22/14 B
   C08K3/26
   C08L101/08
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-105657(P2015-105657)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-216321(P2016-216321A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】谷本 理勇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲一
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−167797(JP,A)
【文献】 特開2009−040666(JP,A)
【文献】 特開2013−193951(JP,A)
【文献】 特開平10−120457(JP,A)
【文献】 特開2000−247702(JP,A)
【文献】 特開2010−235361(JP,A)
【文献】 特開2007−191334(JP,A)
【文献】 特開2013−063882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C08K 3/26
C08L 101/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有し、炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)が0.25以上8以下である、水硬性組成物用添加剤。
【請求項2】
水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有し、炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)が0.25以上8以下である、水硬性組成物。
【請求項3】
ポリカルボン酸系分散剤を水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上3.0質量部以下含有する、請求項に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
炭酸塩を水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上3.0質量部以下含有する、請求項2又は3に記載の水硬性組成物。
【請求項5】
重炭酸塩を水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上3.0質量部以下含有する、請求項2〜4の何れかに記載の水硬性組成物。
【請求項6】
水硬性粉体として、セメント及び石膏を配合してなる請求項2〜5の何れかに記載の水硬性組成物。
【請求項7】
セメント100質量部に対して、石膏を5質量部以上100質量部以下配合してなる、請求項に記載の水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性組成物用の分散剤は、セメント粒子を分散させることにより、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させ、水硬性組成物の作業性等を向上させるために用いる化学混和剤である。分散剤には、従来、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレン系やカルボン酸とアルキレングリコール鎖を有する単量体との共重合体等のポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミン系等が知られている。
【0003】
また、水硬性組成物に対する流動性の付与、流動性の保持性(流動保持性)、硬化遅延の防止など、種々の性能を付与することを目的として、上記の分散剤に他の化合物を併用することが知られている。
特許文献1は、ポルトランドセメントと、アルミナセメントと、石膏とを含有する無機成分Iに、特定のビニル系単量体aとアクリル酸又はメタクリル酸の水溶性塩であるビニル系単量体bの共重合体からなる共重合体成分IIを含有する自己流動性水硬性組成物を開示している。
また特許文献1は、自己流動性水硬性組成物に、炭酸リチウム、酒石酸ナトリウム類及び重炭酸ナトリウムからなる群より選択される一種以上の凝結調整剤をさらに含有することを開示している。
特許文献2は、高性能減水剤を使用したグラウトモルタルのセメント分に対し、特定量のオキシカルボン酸又はその塩を添加することを特徴とするグラウトモルタルの作業性改良法を開示している。
また特許文献2は、グラウトモルタルに、炭酸ナトリウムをさらに含有することを開示している。
特許文献3は、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント混和剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−40666号公報
【特許文献2】特開昭59−69458号公報
【特許文献3】特開2006−347879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水硬性組成物の流動性を向上できる水硬性組成物用添加剤を提供する。
また、本発明は、流動性に優れた水硬性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有する水硬性組成物用添加剤に関する。
【0007】
また、本発明は、水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有する水硬性組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水硬性組成物の流動性を向上できる水硬性組成物用添加剤が提供される。
また、本発明によれば、流動性に優れた水硬性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水硬性組成物用添加剤>
本発明の水硬性組成物用添加剤は、ポリカルボン酸系分散剤を含有する。
【0010】
ポリカルボン酸系分散剤としては、(1)ポリアルキレングリコールとアクリル酸とのモノエステル、ポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのモノエステルから選ばれる一種以上のモノエステルと、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上のカルボン酸等との共重合体(特開平8−12397号公報に記載の化合物等)、(2)ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上のカルボン酸等との共重合体、(3)ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと、マレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。
【0011】
ポリカルボン酸系分散剤は、下記一般式(A1)で表される単量体(A1)と下記一般式(A2)で表される単量体(A2)とを含む単量体を重合して得られる共重合体〔以下、共重合体(A)という〕が好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
〔式中、
、R:それぞれ独立に、水素原子又はメチル基
m1:0以上2以下の整数
AO:炭素数2又は3のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であって、4以上300以下の数
X:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
を示す。〕
【0014】
【化2】
【0015】
〔式中、
、R、R:それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は(CHm2COOM
、M:それぞれ独立に、対イオンを示し、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2イオン)、有機アンモニウムイオン、又はアンモニウムイオン、
m2:0以上2以下の整数
を示す。〕
【0016】
共重合体(A)は、前記一般式(A1)で表される単量体(A1)と前記一般式(A2)で表される単量体(A2)とを含む単量体を重合して得られる共重合体である。
【0017】
一般式(A1)中、R、Rは、それぞれ、水素原子又はメチル基である。Rは水硬性組成物の流動性の観点から、水素原子が好ましい。Rは水硬性組成物の流動性の観点から、メチル基が好ましい。
m1は、水硬性組成物の流動性の観点から、0以上2以下の整数であり、0が好ましい。
AOは、水硬性組成物の流動性の観点から、炭素数2のアルキレンオキシ基及び炭素数3のアルキレンオキシ基から選ばれるアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基が好ましい。
n1は、AOの平均付加モル数であり、4以上300以下の数である。n1は水硬性組成物の流動性の観点から、9以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。そして、200以下が好ましく、130以下がより好ましく、100以下が更に好ましく、80以下がより更に好ましく、50以下がより更に好ましく、30以下がより更に好ましい。
Xは、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、水硬性組成物の流動性の観点から、水素原子又は炭素数1のアルキル基が好ましく、炭素数1のアルキル基がより好ましい。
【0018】
単量体(A1)としては、(1)メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸とのエステル化物、(2)アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。単量体(A1)は、水硬性組成物の流動性の観点から、メトキシポリエチレングリコールが好ましい。
【0019】
一般式(A2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は(CHm2COOMである。水硬性組成物スラリーの流動性の観点から、R、Rは、それぞれ、水素原子、Rは、メチル基が好ましい。M、Mは、それぞれ、水素原子または対イオンを示し、水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2イオン)、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンであり、水硬性組成物の流動性の観点から、水素イオン、又はアルカリ金属イオンが好ましく、水素原子がより好ましい。
【0020】
単量体(A2)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、及びこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2以上8以下)アンモニウム塩が挙げられる。水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、並びに無水マレイン酸から選ばれる単量体であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる単量体である。メタクリル酸及びメタクリル酸のアルカリ金属塩から選ばれる単量体が更に好ましい。
【0021】
共重合体(A)の、単量体(A1)と単量体(A2)のモル比(A1)/(A2)は、水硬性組成物の流動性、及び流動保持性の観点から、10/90以上が好ましく、20/80以上がより好ましく。そして、60/40以下が好ましく、50/50以下がより好ましく、35/65以下が更に好ましく、30/70以下がより更に好ましい。
【0022】
共重合体(A)の全構成単量体中、単量体(A1)と単量体(A2)の合計量は、水硬性組成物の流動性、及び流動保持性の観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、そして、100質量%以下が好ましく、100質量%であっても良い。
【0023】
単量体(A1)と単量体(A2)の合計質量に対する単量体(A2)の質量の割合は、水硬性組成物の流動性、及び流動保持性の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましく、そして、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下がより更に好ましく、50質量%以下がより更に好ましい。
【0024】
共重合体(A)の重量平均分子量は、水硬性組成物の流動性の観点から、10000以上が好ましく、20000以上がより好ましく、30000以上が更に好ましく、そして、200000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。
なお、共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(ポリエチレングリコール換算)によるものであり、具体的な条件は下記の通りである。
*ゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量87500、250000、145000、46000、24000の単分散ポリエチレングリコール)
【0025】
共重合体(A)は、例えば、特開平8−12397の製造例12の条件で製造することができる。例えば、共重合体(A)は、反応容器に単量体(A1)と単量体(A2)と水を仕込み、所定の温度になるまで昇温し、単量体(A1)と単量体(A2)とを重合開始剤や連鎖移動剤の存在下、所定のモル比(A1)/(A2)で反応させ、熟成後、中和することにより製造することができる。
【0026】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩を含有する。炭酸塩は、水硬性組成物の流動性の観点から、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、重炭酸塩、即ち炭酸水素塩を含有する。重炭酸塩は、重炭酸アルカリ金属塩、重炭酸アルカリ土類金属塩、及び重炭酸アンモニウム塩から選ばれる一種以上であり、より具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素リチウム、及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる一種以上の炭酸水素塩が挙げられる。重炭酸塩は、水硬性組成物の流動性、及び添加剤の保存安定性の観点から、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムから選ばれる一種以上の炭酸水素塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0028】
本発明の水硬性組成物用添加剤において、ポリカルボン酸系分散剤と炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の質量比(分散剤/炭酸塩)は、水硬性組成物の流動性の観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、5以上がより更に好ましく、そして、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましい。
【0029】
本発明の水硬性組成物用添加剤において、ポリカルボン酸系分散剤と重炭酸塩の質量比(分散剤/重炭酸塩)は、水硬性組成物の流動性の観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、5以上がより更に好ましく、そして、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましい。
【0030】
本発明の水硬性組成物用添加剤において、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)は、水硬性組成物の流動性の観点から、0.25以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、そして、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、2.5以下がより更に好ましく、2.0以下がより更に好ましい。
【0031】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物を調製する際の作業性の観点から、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、重炭酸塩、並びに水を含む液体組成物、好ましくは水溶液として用いることができる。前記液体組成物、好ましくは水溶液中のポリカルボン酸系分散剤の含有量は、水硬性組成物の流動性、添加剤の保存安定性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。前記液体組成物、好ましくは水溶液中の炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の含有量は、水硬性組成物の流動性、保存安定性の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。前記液体組成物、好ましくは水溶液中の重炭酸塩の含有量は、水硬性組成物の流動性、添加剤の保存安定性の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0032】
本発明の水硬性組成物用添加剤の水硬性組成物への添加量は、水硬性組成物の流動性の観点から、水硬性粉体(セメント等)100質量部に対して固形分換算で0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上が更に好ましく、そして、6質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましい。水硬性組成物用添加剤について固形分とは、水以外の成分を言う。
【0033】
尚、本発明の水硬性組成物用添加剤は公知の添加剤(材)と併用することができる。例えばAE剤、AE減水剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、防水剤、防泡剤、保水剤、セルフレベリング剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤等や、珪砂、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が挙げられる。
【0034】
<水硬性組成物>
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有する。
ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩の種類及び好ましい態様は、それぞれ本発明の水硬性組成物用添加剤と同じである。
【0035】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことである。水硬性粉体としては、セメント、石膏等が挙げられる。水硬性粉体としては、好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、及び耐硫酸塩セメントから選ばれる一種以上のセメントが挙げられる。また、前記セメントに、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる一種以上の粉体が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等のセメントが挙げられる。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。
【0036】
本発明の水硬性組成物において、水硬性粉体は、セメント及び石膏であることが好ましい。すなわち、水硬性粉体として、セメント及び石膏を含有する、あるいは水硬性粉体として、セメント及び石膏を配合してなることが好ましい。
【0037】
セメントには通常石膏が含まれる。セメント中の石膏量は、一般に三酸化硫黄に換算されて表示される。例えば、日本の普通ポルトランドセメント中には、三酸化硫黄がセメントに対して約2重量%含まれていることが、国内主要セメントメーカーの開示情報からわかる。例えば、太平洋セメント(株)のホームページには三酸化硫黄が2.10重量%含まれていることが記載されている(インターネット<URL:http://www.taiheiyo-ement.co.jp/service_product/cement/pdf/ncement_v3.pdf>[2015年5月22日検索])。住友大阪セメント(株)のホームページには三酸化硫黄が1.95重量%含まれていることが記載されている(インターネット<URL:http://www.soc.co.jp/pdf/service/cement/c_products/cement01/fpc.pdf>[2015年5月22日検索])。宇部三菱セメント(株)のホームページには三酸化硫黄が2.16重量%含まれていることが記載されている(インターネット<URL:https://www.umcc.co.jp/html_set/products/main_seihin_fs_seihin_new.html/>[2015年5月22日検索])。
【0038】
本発明の水硬性粉体には、セメントに更に石膏を添加することが好ましい。更に石膏を添加する場合の添加量は、水硬性組成物の凝結時間、及び圧縮強度向上の観点から、セメント100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましく、そして、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の水硬性組成物において、ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、水硬性組成物の流動性、流動保持性、及び凝結時間の観点から、水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、0.01質量部以上がより更に好ましく、0.05質量部以上がより更に好ましい。そして、6.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましく、1.0質量部以下がより更に好ましく、0.5質量部以下がより更に好ましく、0.2質量部以下がより更に好ましい。
【0040】
本発明の水硬性組成物は、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩を含有する。炭酸塩は、水硬性組成物の流動性の観点から、炭酸ナトリウムが好ましい。
本発明の水硬性組成物において、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の含有量は、水硬性組成物の流動性、及び凝結時間の観点から、水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、0.01質量部以上がより更に好ましい。そして、6.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましく、1.0質量部以下がより更に好ましく、0.1質量部以下がより更に好ましく、0.05質量部以下がより更に好ましい。
【0041】
本発明の水硬性組成物は、重炭酸塩を含有する。重炭酸塩の具体例、及び好ましい態様は本発明の水硬性組成物用添加剤と同じである。
本発明の水硬性組成物において、重炭酸塩の含有量は、水硬性組成物の流動性、及び凝結時間の観点から、水硬性粉体100質量部に対して0.0005質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましく、0.01質量部以上がより更に好ましい。そして、6.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましく、1.0質量部以下がより更に好ましく、0.1質量部以下がより更に好ましく、0.05質量部以下がより更に好ましい。
【0042】
本発明の水硬性組成物において、ポリカルボン酸系分散剤と炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の質量比(分散剤/炭酸塩)は、水硬性組成物の流動性、保存安定性、及び凝結時間の観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、5以上がより更に好ましく、そして、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましい。
【0043】
本発明の水硬性組成物において、ポリカルボン酸系分散剤と重炭酸塩の質量比(分散剤/重炭酸塩)は、水硬性組成物の流動性、保存安定性、及び凝結時間の観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、5以上がより更に好ましく、そして、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましい。
【0044】
本発明の水硬性組成物において、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)は、流動性の観点から、0.25以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、そして、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、2.5以下がより更に好ましく、2.0以下がより更に好ましい。
【0045】
本発明の水硬性組成物において、水/水硬性粉体×100〔水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記されることがある。〕は、水硬性組成物の流動性、及び凝結時間の観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下が更に好ましい。
【0046】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2302で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2303で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0047】
本発明の水硬性組成物中の骨材の含有量は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、水硬性組成物の体積あたり1700kg/m以上が好ましく、1720kg/m以上がより好ましく、そして、1800kg/m以下が好ましく、1760kg/m以下がより好ましい。
【0048】
本発明の水硬性組成物中の骨材(a)中の細骨材(s)の容積比〔s/a×100(%)〕は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、45%以上が好ましく、47%以上がより好ましく、そして、55%以下が好ましく、53%以下がより好ましい。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物中の空気量増大現象による強度低下を抑制する観点から、更に消泡剤を含有することができる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0050】
本発明の水硬性組成物は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0051】
<水硬性組成物の製造方法>
本発明の水硬性組成物の製造方法は、水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を混合して水硬性組成物を得る工程を有する。
この製造方法では、本発明用の水硬性組成物用添加剤、水硬性組成物で述べた事項を、適宜適用することができる。
【0052】
また本発明の水硬性組成物の製造方法において、水硬性粉体はセメントと石膏であることが好ましい。セメントは、その製造過程において、石膏が添加されている場合、その添加量はセメントに算入するものとする。セメントと別に用いられる石膏の割合は、水硬性組成物の凝結時間、及び圧縮強度向上の観点から、セメント100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましく、そして、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましい。
【0053】
<本発明の態様>
本発明のより具体的な態様を以下に例示する。これらの態様には、本発明の水硬性組成物用添加剤、水硬性組成物、水硬性組成物の製造方法で述べた事項を適宜適用することができる。
【0054】
<1>
ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有する水硬性組成物用添加剤。
【0055】
<2>
ポリカルボン酸系分散剤が、(1)ポリアルキレングリコールとアクリル酸とのモノエステル、及びポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのモノエステルから選ばれる一種以上のモノエステルと、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上のカルボン酸との共重合体、(2)ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる一種以上のカルボン酸との共重合体、並びに(3)ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと、マレイン酸との共重合体から選ばれる一種以上の共重合体である、前記<1>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0056】
<3>
ポリカルボン酸系分散剤が、下記一般式(A1)で表される単量体(A1)と下記一般式(A2)で表される単量体(A2)とを含む単量体を重合して得られる共重合体(A)である、前記<1>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0057】
【化3】
【0058】
〔式中、
、R:それぞれ独立に、水素原子又はメチル基
m1:0以上2以下の整数
AO:炭素数2又は3のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であって、4以上300以下の数
X:水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
を示す。〕
【0059】
【化4】
【0060】
〔式中、
、R、R:それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は(CHm2COOM
、M:それぞれ独立に、対イオンを示し、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン(1/2イオン)、有機アンモニウムイオン、又はアンモニウムイオン、
m2:0以上2以下の整数
を示す。〕
【0061】
<4>
一般式(A1)中、Rが水素原子であり、Rがメチル基である、前記<3>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0062】
<5>
一般式(A1)中、m1が0である、前記<3>又は<4>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0063】
<6>
一般式(A1)中、AOがエチレンオキシ基である、前記<3>〜<5>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0064】
<7>
一般式(A1)中、n1が、好ましくは9以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上であり、そして、好ましくは200以下、より好ましくは130以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは80以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは30以下である、前記<3>〜<6>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0065】
<8>
一般式(A1)中、Xが、好ましくは水素原子又は炭素数1のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1のアルキル基である、前記<3>〜<7>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0066】
<9>
一般式(A2)中、R、Rが、それぞれ、水素原子であり、Rが、メチル基である、前記<3>〜<8>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0067】
<10>
一般式(A2)中、M、Mが、それぞれ、好ましくは水素イオン、又はアルカリ金属イオンであり、より好ましくは水素原子である、前記<3>〜<9>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0068】
<11>
単量体(A1)が、(1)メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、及びエトキシポリエチレンポリプロピレングリコールから選ばれる片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸とのエステル化物、(2)アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸から選ばれるカルボン酸へのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる付加物、から選ばれる一種以上の単量体であり、好ましくはメトキシポリエチレングリコールである、前記<3>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0069】
<12>
単量体(A2)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸から選ばれるモノカルボン酸系単量体、及びマレイン酸、イタコン酸、フマル酸から選ばれるジカルボン酸系単量体、並びにこれらの無水物又は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよい炭素数2以上8以下であるモノ、ジ、トリアルキルアンモニウム塩から選ばれる塩、から選ばれる一種以上の単量体であり、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、並びに無水マレイン酸から選ばれる単量体であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる単量体であり、更に好ましくはメタクリル酸及びメタクリル酸のアルカリ金属塩から選ばれる単量体である、前記<3>又は<11>記載の水硬性組成物用添加剤。
【0070】
<13>
共重合体(A)の単量体(A1)と単量体(A2)のモル比(A1)/(A2)が、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、そして、好ましくは60/40以下、より好ましくは50/50以下、更に好ましくは35/65以下、より更に好ましくは30/70以下である、前記<3>〜<12>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0071】
<14>
共重合体(A)の全構成単量体中、単量体(A1)と単量体(A2)の合計量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、あるいは100質量%である、前記<3>〜<13>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0072】
<15>
単量体(A1)と単量体(A2)の合計質量に対する単量体(A2)の質量の割合が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である、前記<3>〜<14>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0073】
<16>
下記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件で測定された共重合体(A)の重量平均分子量が、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上、更に好ましくは30000以上、そして、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下である、前記<3>〜<15>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
*ゲルパーミエーションクロマトグラフィー条件
装置:GPC(HLC−8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量87500、250000、145000、46000、24000の単分散ポリエチレングリコール)
【0074】
<17>
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩が、炭酸ナトリウムである、前記<1>〜<16>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0075】
<18>
重炭酸塩が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素リチウム、及び炭酸水素アンモニウムから選ばれる一種以上の炭酸水素塩であり、好ましくは炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムから選ばれる一種以上の炭酸水素塩であり、より好ましくは炭酸水素ナトリウムである、前記<1>〜<17>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0076】
<19>
ポリカルボン酸系分散剤と炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の質量比(分散剤/炭酸塩)が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは5以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下である、前記<1>〜<18>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0077】
<20>
ポリカルボン酸系分散剤と重炭酸塩の質量比(分散剤/重炭酸塩)が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは5以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下である、前記<1>〜<19>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0078】
<21>
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)が、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは2.0以下である、前記<1>〜<20>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0079】
<22>
水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を含有する水硬性組成物。
【0080】
<23>
水硬性粉体が、セメント、及び石膏から選ばれる一種以上であり、好ましくは、普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、及び耐硫酸塩セメントからから選ばれる一種以上のセメント、並びに、前記セメントに、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる一種以上の粉体が添加されたセメント、から選ばれる一種以上のセメントである、前記<22>記載の水硬性組成物。
【0081】
<24>
水硬性粉体として、セメント及び石膏を含有する、あるいは水硬性粉体として、セメント及び石膏を配合してなる、前記<22>記載の水硬性組成物。
【0082】
<25>
セメント100質量部に対して、石膏を、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下配合してなる、前記<24>記載の水硬性組成物。
【0083】
<26>
ポリカルボン酸系分散剤を水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下、より更に好ましくは0.2質量部以下含有する、前記<22>〜<25>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0084】
<27>
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩を水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下含有する、前記<22>〜<26>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0085】
<28>
重炭酸塩を水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは1.0質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下含有する、前記<22>〜<27>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0086】
<29>
ポリカルボン酸系分散剤と炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の質量比(分散剤/炭酸塩)が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下である、前記<22>〜<28>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0087】
<30>
ポリカルボン酸系分散剤と重炭酸塩の質量比(分散剤/重炭酸塩)が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは5以上、そして、好ましくは60以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは15以下、より更に好ましくは10以下である、前記<22>〜<29>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0088】
<31>
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩と重炭酸塩の質量比(炭酸塩/重炭酸塩)が、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、より更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.0以下である、前記<22>〜<30>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0089】
<32>
水/水硬性粉体×100(質量%)が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である、前記<22>〜<31>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0090】
<33>
更に、細骨材及び粗骨材から選ばれる一種以上の骨材を含有する、前記<22>〜<32>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0091】
<34>
細骨材が、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂、及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、人工及び天然の軽量細骨材、並びに再生細骨材から選ばれる一種以上である、前記<33>記載の水硬性組成物。
【0092】
<35>
粗骨材が、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、及びこれらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、人工及び天然の軽量粗骨材、並びに再生粗骨材から選ばれる一種以上である、前記<33>又は<34>記載の水硬性組成物。
【0093】
<36>
骨材を水硬性組成物の体積あたり、好ましくは1700kg/m以上、より好ましくは1720kg/m以上、そして、好ましくは1800kg/m以下、より好ましくは1760kg/m以下含有する、前記<33>〜<35>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0094】
<37>
骨材(a)中の細骨材(s)の容積比〔s/a×100(%)〕が、好ましくは45%以上、より好ましくは47%以上、そして、好ましくは55%以下、より好ましくは53%以下である、前記<33>〜<36>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0095】
<38>
更に、消泡剤を含有し、好ましくはシリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる一種以上の消泡剤であり、より好ましくはジメチルポリシロキサン、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、及びポリアルキレングリコールエーテルから選ばれる一種以上の消泡剤である、前記<22>〜<37>の何れかに記載の水硬性組成物。
【0096】
<39>
水硬性粉体、水、ポリカルボン酸系分散剤、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩、並びに重炭酸塩を混合して水硬性組成物を得る工程を有する、水硬性組成物の製造方法。
【0097】
<40>
水硬性粉体、水、及び前記<1>〜<21>の何れかに記載の水硬性組成物用添加剤を混合して水硬性組成物を得る工程を有する、水硬性組成物の製造方法。
【0098】
<41>
水硬性組成物用添加剤を、液体組成物、好ましくは水溶液として用いる、前記<40>記載の水硬性組成物の製造方法。
【0099】
<42>
水硬性組成物用添加剤の液体組成物、好ましくは水溶液中のポリカルボン酸系分散剤の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である、前記<41>記載の水硬性組成物の製造方法。
【0100】
<43>
水硬性組成物用添加剤の液体組成物、好ましくは水溶液中の炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる一種以上の炭酸塩の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、前記<41>又は<42>記載の水硬性組成物の製造方法。
【0101】
<44>
水硬性組成物用添加剤の液体組成物、好ましくは水溶液中の重炭酸塩の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、前記<41>〜<43>の何れかに記載の水硬性組成物の製造方法。
【0102】
<45>
水硬性組成物用添加剤の添加量が、水硬性粉体100質量部に対して固形分換算で、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である、前記<40>〜<44>の何れかに記載の水硬性組成物の製造方法。
【0103】
<46>
水硬性粉体がセメントと石膏である、前記<39>〜<45>の何れかに記載の水硬性組成物の製造方法。
【0104】
<47>
石膏がセメント100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下の割合である、前記<46>記載の水硬性組成物の製造方法。
【実施例】
【0105】
表1に示した分散剤、炭酸塩、及び重炭酸塩は、以下のものを用いた。なお表1中の分散剤の含有量は固形分換算の量である。
(分散剤)
・PCE:ポリカルボン酸系分散剤(下記製造例で製造、固形分濃度20質量%の水溶液)
・NSF:ナフタレン系分散剤(花王株式会社性、マイテイ150、固形部濃度40質量%の水溶液)
(炭酸塩)
・炭酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製、試薬
・炭酸カリウム:和光純薬工業(株)製、試薬
・炭酸リチウム:和光純薬工業(株)製、試薬
(重炭酸塩)
・炭酸水素ナトリウム:和光純薬工業(株)製、試薬
【0106】
<PCEの製造例>
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水333gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23:NKエステルM230G、新中村化学工業株式会社製)300g、メタクリル酸(試薬:和光純薬工業株式会社製)69.7g、及び3−メルカプトプロピオン酸6.3gを水200gに混合溶解した水溶液と、過硫酸アンモニウム12.3gを水45gに溶解した水溶液の2者を、それぞれ1.5時間かけて上記反応容器中に滴下した。その後、80℃で1時間熟成し、更に過硫酸アンモニウム4.9gを水15gに溶解した水溶液を30分かけて滴下し、引き続き80℃で1.5時間熟成した。熟成終了後に40℃以下に冷却した後、48%水酸化ナトリウム水溶液50.2gで中和し、重量平均分子量43000の共重合体を得た(中和度0.7)。その後、水を用いて固形分20質量%に調整した。単量体1/[単量体1+単量体2]は75モル%である。
【0107】
<水硬性組成物の作製方法>
500ml容器に、表1に従いセメント(C)と石膏(G)並びに、分散剤、炭酸塩、及び重炭酸塩を含む水(W)を投入し、ハンドミキサー(National製、型番 MK−H3)の低速で、実施例5及び比較例10〜13は45秒混練し、実施例1〜4、6〜7及び比較例1〜9、14〜19は、105秒混練し、ペーストを得た。
表1中のセメント(C)、石膏(G)、水(W)の成分は以下の通りである。
セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
石膏(G):焼石膏(吉野石膏(株)製)
水(W):上水道水
W/Pは、[水(W)の含有量]/[水硬性粉体(P)の含有量(セメント(C)の含有量と石膏(G)の含有量の合計)]×100の質量%を示す。
【0108】
<流動性の評価>
得られたペーストを円筒状コーン(φ50mm×50mm)に充填し、垂直に引き上げた時の広がり(もっとも長い直径の長さとそれと垂直方向の長さの平均値)をペーストフローとして測定した。測定は、混練終了直後(0分後)に測定した。
【0109】
これらの結果を表1に示した。
【0110】
【表1】